(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119313
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】鉄筋検査方法及び鉄筋検査装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240827BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20240827BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
G01B11/02 H
E04G21/12 105Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026120
(22)【出願日】2023-02-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100213388
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 康司
(72)【発明者】
【氏名】八代 成美
(72)【発明者】
【氏名】西川 寧
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA21
2F065AA26
2F065AA30
2F065FF04
2F065FF05
2F065FF33
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065QQ23
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065RR06
2F065SS02
5L096AA09
5L096BA03
5L096EA06
5L096FA64
5L096FA67
5L096HA09
(57)【要約】
【課題】本発明は、鉄筋の隣接する節53の間に形成される欠損部54に着目し、画像50における欠損部54から鉄筋の種類を特定することができる鉄筋検査方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る鉄筋検査方法は、対象鉄筋52を含む画像50に対し、対象鉄筋52の長手方向に沿った方向にぼかし処理を実行して第1処理画像を得て、第1処理画像における長手方向に直交する方向の明るさの変化に基づいて対象鉄筋52の隣接する節53の間にある欠損部54の高さH1を計測し、画像50に対し、対象鉄筋52の直交する方向にぼかし処理を実行して第2処理画像を得て、第2処理画像における長手方向に沿った方向の明るさの変化に基づいて対象鉄筋52の欠損部54の幅L1を計測し、あらかじめ用意された複数種類の鉄筋データを備えるデータベースから高さH1及び幅L1の欠損部54を有する鉄筋の種類を特定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象とする対象鉄筋を含む画像に対し、前記対象鉄筋の長手方向に沿った方向にぼかし処理を実行して第1処理画像を得て、前記第1処理画像における前記長手方向に直交する方向の明るさの変化に基づいて前記対象鉄筋の隣接する節の間にある欠損部の高さを計測し、
前記画像に対し、前記対象鉄筋の前記直交する方向にぼかし処理を実行して第2処理画像を得て、前記第2処理画像における前記長手方向に沿った方向の明るさの変化に基づいて前記対象鉄筋の欠損部の幅を計測し、
あらかじめ用意された複数種類の鉄筋データを備えるデータベースから前記高さ及び前記幅の欠損部を有する鉄筋の種類を特定することを特徴とする、鉄筋検査方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記画像は、ステレオカメラで撮影された複数の画像の内から選択されることを特徴とする、鉄筋検査方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記画像は、撮影された画像における前記対象鉄筋の傾きを補正して前記画像に対して前記対象鉄筋が平行に配置された状態とした後に、前記高さ及び前記幅を計測することを特徴とする、鉄筋検査方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記幅は、前記対象鉄筋の欠損部の上端における幅であることを特徴とする、鉄筋検査方法。
【請求項5】
検査対象とする対象鉄筋を含む画像を取得する画像取得部と、
前記画像に対し、前記対象鉄筋の長手方向に沿った方向にぼかし処理を実行して第1処理画像を作成し、かつ、前記対象鉄筋の前記長手方向に直交する方向にぼかし処理を実行して第2処理画像を作成する画像処理部と、
前記第1処理画像における前記直交する方向の明るさの変化に基づいて前記対象鉄筋の隣接する節の間にある欠損部の高さを計測し、かつ、前記第2処理画像における前記長手方向に沿った方向の明るさの変化に基づいて前記対象鉄筋の欠損部の幅を計測する計測部と、
あらかじめ用意された複数種類の鉄筋データを備えるデータベースから前記高さ及び前記幅の欠損部を有する鉄筋の種類を特定する鉄筋特定部と、
を含むことを特徴とする、鉄筋検査装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記画像取得部に前記画像を提供するステレオカメラと、
前記画像と前記鉄筋特定部が特定した鉄筋データの少なくとも一部とを表示する表示部と、
をさらに含むことを特徴とする、鉄筋検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋検査方法及び鉄筋検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造、鉄筋鉄骨コンクリート造、鉄骨造等の建築物の工事現場では、配筋された柱や梁の配筋検査が行われる。このような配筋検査に用いる鉄筋検査支援装置として、検査対象とする鉄筋を撮影する撮影手段と、撮影によって得られた画像から鉄筋の隣接する複数の節の画像を検出する検出手段と、複数の節の画像に基づいて隣接する節の間の距離を導出する導出手段と、導出手段によって導出された距離に対応する鉄筋の径を記憶手段から読み出すことにより鉄筋の径を特定する特定手段と、を備える装置が提案されている(特許文献1)。この鉄筋検査支援装置における導出手段は、画像から鉄筋の長さと節の数を求めて、鉄筋の長さを節の数で除算して節間距離を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常、鉄筋の検査は複数の鉄筋が入り組んで配筋された状態で行われるため、鉄筋同士が重なり合う場所が多くあり、そのような場所では節を検出できない場合がある。特許文献1の発明は、隣接する複数の節の一部を検出することができない場合には節間距離の算出ができないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、鉄筋の隣接する節の間に形成される欠損部に着目し、画像における欠損部から鉄筋の種類を特定することができる鉄筋検査方法及び鉄筋検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0007】
[1]本発明に係る鉄筋検査方法の一態様は、
検査対象とする対象鉄筋を含む画像に対し、前記対象鉄筋の長手方向に沿った方向にぼかし処理を実行して第1処理画像を得て、前記第1処理画像における前記長手方向に直交する方向の明るさの変化に基づいて前記対象鉄筋の隣接する節の間にある欠損部の高さを計測し、
前記画像に対し、前記対象鉄筋の前記直交する方向にぼかし処理を実行して第2処理画像を得て、前記第2処理画像における前記長手方向に沿った方向の明るさの変化に基づいて前記対象鉄筋の欠損部の幅を計測し、
あらかじめ用意された複数種類の鉄筋データを備えるデータベースから前記高さ及び前記幅の欠損部を有する鉄筋の種類を特定することを特徴とする。
【0008】
[2]上記鉄筋検査方法の一態様において、
前記画像は、ステレオカメラで撮影された複数の画像の内から選択されることができる。
【0009】
[3]上記鉄筋検査方法の一態様において、
前記画像は、撮影された画像における前記対象鉄筋の傾きを補正して前記画像に対して前記対象鉄筋が平行に配置された状態とした後に、前記高さ及び前記幅を計測することができる。
【0010】
[4]上記鉄筋検査方法の一態様において、
前記幅は、前記対象鉄筋の欠損部の上端における幅であることができる。
【0011】
[5]本発明に係る鉄筋検査装置の一態様は、
検査対象とする対象鉄筋を含む画像を取得する画像取得部と、
前記画像に対し、前記対象鉄筋の長手方向に沿った方向にぼかし処理を実行して第1処理画像を作成し、かつ、前記対象鉄筋の前記長手方向に直交する方向にぼかし処理を実行して第2処理画像を作成する画像処理部と、
前記第1処理画像における前記直交する方向の明るさの変化に基づいて前記対象鉄筋の隣接する節の間にある欠損部の高さを計測し、かつ、前記第2処理画像における前記長手方向に沿った方向の明るさの変化に基づいて前記対象鉄筋の欠損部の幅を計測する計測部と、
あらかじめ用意された複数種類の鉄筋データを備えるデータベースから前記高さ及び前記幅の欠損部を有する鉄筋の種類を特定する鉄筋特定部と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
[6]上記鉄筋検査装置の一態様において、
前記画像取得部に前記画像を提供するステレオカメラと、
前記画像と前記鉄筋特定部が特定した鉄筋データの少なくとも一部とを表示する表示部と、
をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る鉄筋検査方法の一態様及び鉄筋検査装置の一態様によれば、画像における鉄筋同士が重なり合う部分が多くても少なくとも1つの欠損部を用いて鉄筋の種類を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る鉄筋検査装置のブロック図である。
【
図2】対象鉄筋を含む画像を模式的に示す図である。
【
図3】本実施形態に係る鉄筋検査方法のフローチャートである。
【
図4】対象鉄筋を含む画像と第1処理画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0016】
1.鉄筋検査装置
本実施形態に係る鉄筋検査装置の一態様は、検査対象とする対象鉄筋を含む画像を取得
する画像取得部と、前記画像に対し、前記対象鉄筋の長手方向に沿った方向にぼかし処理を実行して第1処理画像を作成し、かつ、前記対象鉄筋の前記長手方向に直交する方向にぼかし処理を実行して第2処理画像を作成する画像処理部と、前記第1処理画像における前記直交する方向の明るさの変化に基づいて前記対象鉄筋の隣接する節の間にある欠損部の高さを計測し、かつ、前記第2処理画像における前記長手方向に沿った方向の明るさの変化に基づいて前記対象鉄筋の欠損部の幅を計測する計測部と、あらかじめ用意された複数種類の鉄筋データを備えるデータベースから前記高さ及び前記幅の欠損部を有する鉄筋の種類を特定する鉄筋特定部と、を含むことを特徴とする。
【0017】
図1及び
図2を用いて、本発明の一実施形態に係る鉄筋検査装置10について説明する。
図1は、本実施形態に係る鉄筋検査装置10のブロック図であり、
図2は、対象鉄筋52を含む画像50を模式的に示す図である。
【0018】
図1に示すように、鉄筋検査装置10は、少なくとも画像取得部21と、画像処理部22と、計測部23と、鉄筋特定部24と、を含む。鉄筋検査装置10は、例えば、演算部20及び記憶部37を備える本体11と、本体11に少なくとも通信可能な状態で接続されたステレオカメラ15及び表示部38とを備える。本体11とステレオカメラ15と表示部38とは一体化された筐体に設けられてもよいし、別々に設けられてもよく、例えば市販のタブレット端末のカメラをステレオカメラ15の一方のカメラとしてタブレット端末に他方のカメラを装着してもよいし、タブレット端末を演算部20、記憶部37及び表示部38としてもよい。また、演算部20及び記憶部37の一部が本体11に内蔵されなくてもよく、各部をネットワークに接続されたサーバに設けてもよい。鉄筋検査装置10は、演算部20にさらに出力部25を備えてもよい。
【0019】
本体11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体、液晶や有機ELなどのディスプレイ、高速データ通信を行う通信インターフェース、及びタッチパネルやキーボードなどのユーザインターフェースを備えることができる。鉄筋検査装置10は、工事現場において携帯可能な端末であることが好ましく、例えば、ノートパソコンやタブレット端末のような形態が好ましい。
【0020】
ステレオカメラ15は、所定間隔で配置された2つのカメラを備える。ステレオカメラ15は、少なくとも一本以上の鉄筋を含む配筋を撮影し、画像取得部21に撮影した画像を提供する。ステレオカメラ15を有することにより三角測量の原理でステレオカメラ15と対象鉄筋の距離を算出できる。本実施形態では、ステレオカメラ15で撮影された画像の視差から、三角測量の原理でステレオカメラ15と鉄筋の距離を演算部20で算出して三次元配筋データを作成する例について説明するが、鉄筋の検査だけであればステレオカメラ15ではなく単体のカメラであってもよい。その際は、対象鉄筋とカメラとの距離が他の手段でわかるようにする。
【0021】
鉄筋検査装置10は、例えばステレオカメラ15を用いて三次元配筋データを作成する配筋検査装置の一部であってもよく、配筋検査装置としては公知の装置であってもよい。例えば、配筋検査装置は、事前準備処理の後に、姿勢推定工程と、三次元配筋データを得る工程と、鉄筋検査工程と、を実行することができる。事前準備処理は、例えば、ステレオカメラ15でキャリブレーションボードを撮影してキャリブレーションを行い、ステレオカメラ15の内部パラメータ(焦点距離及び歪行列)と外部パラメータ(移動及び回転)を推定してキャリブレーション情報として記憶部37に保存する。姿勢推定工程は、例えば、ステレオカメラ15の画像からステレオカメラ15の姿勢(計測開始時の初期フレ
ームのステレオカメラ15の位置に対する、現時点のステレオカメラ15の回転と並進移動の差分である)を推定する。三次元配筋データを得る工程は、例えば、ステレオカメラ15によって撮影された少なくとも一組の配筋画像に基づいて複数の配筋ラインの三次元座標を算出し、基準三次元座標系に複数の配筋ラインを配置して三次元配筋データを合成する。配筋ライン40は、各鉄筋をデータ化して三次元座標系に配置するもので、各鉄筋の中心軸線に沿った仮想直線である。鉄筋検査工程は、後述する鉄筋検査方法として説明する。
【0022】
演算部20は、例えばプロセッサであって、画像取得部21と、画像処理部22と、計測部23と、鉄筋特定部24と、出力部25と、を含む。演算部20は、複数のプロセッサで構成されてもよい。
【0023】
画像取得部21は、検査対象とする対象鉄筋52を含む画像50(
図2)を取得する。画像取得部21は、三次元配筋データを作成する場合には、所定時間内に複数組の画像を取得してもよく、これら複数組の画像の中から画像50を選択してもよい。
【0024】
図2に示すように、画像50は、少なくとも1本の対象鉄筋52を含む。対象鉄筋52は、鉄筋コンクリート造等に用いる鉄筋であり、例えば主筋やあばら筋等に用いる異形鉄筋である。対象鉄筋52は、対象鉄筋52の長手方向に間隔を空けて突出する複数の節53と、隣接する節53の間にある欠損部54と、対象鉄筋52の長手方向に沿って延びるリブ55と、を有する。
図2における長手方向は、X軸に沿った方向である。異形鉄筋には複数の種類の鉄筋形態が市場で流通しているが、通常、鉄筋の種類は、鉄筋の径を用いて表され、隣接する節53の間隔等によって特定することができる。そこで、本願発明者等は、対象鉄筋52が撮影された画像50から隣接する節53の間にある欠損部54の寸法を計測することによって鉄筋の種類を特定することに想到した。
【0025】
図2における右端において欠損部54の範囲がわかりやすくなるように欠損部54を網掛け処理で示す。欠損部54は、隣接する節53の間に形成される溝であり、通常、欠損部54の位置で鉄筋径(公称直径)を測定する。欠損部54の高さH1は、対象鉄筋52の長手方向に直交する方向(
図2ではY軸に沿った方向)における欠損部54の下端54bから上端54aまでの距離である。
図2の対象鉄筋52では欠損部54の上端54aは、節53のX軸に沿った方向における左右両端になる。計測部23によって計測される欠損部54の幅L1は、対象鉄筋52の欠損部54の上端54aにおける幅L1である。幅L1を計測しやすくするために鉄筋検査装置10は照明16をさらに備えてもよい。照明16は、画像50に表示される対象鉄筋52における端面(
図4、
図5では下端面)側に光が当たるように配置することが好ましい。節53と節53に隣接する上端54aとの明るさの変化が際立ち、画像50に表示される対象鉄筋52の特に端面にある節53と欠損部54を利用して寸法を計測しやすくなるためである。照明16は、ステレオカメラ15と一体化されてもよいし、ステレオカメラ15の撮影に合わせて点灯するように構成してもよい。照明16は、例えばLED等の照明である。また、照明16の代わりに、画像処理によって一方の端面側から光が当たっている効果を用いてもよい。
【0026】
画像処理部22は、
図4の(a)に示すような画像取得部21で取得した画像50から
図4の(b)に示すような第1処理画像50aと、
図5の(b)に示すような第2処理画像50bと、を作成する。計測部23は、第1処理画像50aと第2処理画像50bに基づいて高さH1、幅L1を計測する計測工程を実行する。鉄筋特定部24は、計測結果から鉄筋の種類を特定する特定工程を実行する。「鉄筋の種類」とは、JISで規定される鉄筋の「公称直径」または「呼び名」である。画像処理部22、計測部23、鉄筋特定部24及び出力部25における処理の詳細については、後述の「2.鉄筋検査方法」において説明する。
【0027】
記憶部37は、例えばRAM等の記憶媒体であって、演算部20と通信可能に接続される。記憶部37は、鉄筋検査装置10の各処理部において実行されるプログラムが保存される。また、記憶部37は、鉄筋特定部24において施工された配筋が設計仕様に合致した鉄筋であるかを照合する際に用いる例えば
図7に示すようなデータベース37aが保存される。
【0028】
表示部38は、例えば液晶画面であって、出力部25の指令により各種情報を表示する。表示部38は、画像50と鉄筋特定部24が特定した鉄筋データの少なくとも一部とを表示する。例えば、
図8に示すように、表示部38は、画像50の対象鉄筋52の上に鉄筋データである鉄筋の種類60(例えば呼び名)を重ねて表示する。このように画像50と鉄筋データの少なくとも一部とを表示することで検査された鉄筋の種類が容易に識別できるようになる。また、このような表示を記憶部37に保存することができる。
【0029】
2.鉄筋検査方法
本実施形態に係る鉄筋検査方法の一態様は、検査対象とする対象鉄筋を含む画像に対し、前記対象鉄筋の長手方向に沿った方向にぼかし処理を実行して第1処理画像を得て、前記第1処理画像における前記長手方向に直交する方向の明るさの変化に基づいて前記対象鉄筋の隣接する節の間にある欠損部の高さを計測し、前記画像に対し、前記対象鉄筋の前記直交する方向にぼかし処理を実行して第2処理画像を得て、前記第2処理画像における前記長手方向に沿った方向の明るさの変化に基づいて前記対象鉄筋の欠損部の幅を計測し、あらかじめ用意された複数種類の鉄筋データを備えるデータベースから前記高さ及び前記幅の欠損部を有する鉄筋の種類を特定することを特徴とする。
【0030】
図3~
図7を用いて、本発明の一実施形態に係る鉄筋検査方法について説明する。
図3は、本実施形態に係る鉄筋検査方法のフローチャートであり、
図4は、対象鉄筋52を含む画像50と第1処理画像50aの一例であり、
図5は、第2処理画像50bの一例であり、
図6は、第3処理画像の一例であり、
図7は、データベース37aの一例であり、
図8は、表示部38に表示された画像50の一例である。以下の鉄筋検査方法の説明では、
図1に示す鉄筋検査装置10を用いた例について説明するが、これに限定されるものではない。また、「1.鉄筋検査装置」の説明と重複する説明は省略する。
【0031】
図3に示すように、鉄筋検査方法の一態様は、少なくとも画像処理工程(S20)と、計測工程(S30)と、特定工程(S40)とをこの順に含む。鉄筋検査方法の一態様は、画像処理工程S20の前に画像取得工程S10を含んでもよく、特定工程(S40)の後に表示工程(S50)を含んでもよい。
【0032】
画像取得工程(S10):鉄筋検査装置10は、ステレオカメラ15で検査対象である対象鉄筋52を撮影する。照明16によってまたは画像処理によって対象鉄筋52の下端側または上端側が明るくなるように照らしてもよい。画像取得部21は、ステレオカメラ15で撮影された例えば
図4の(a)に示す画像50を取得する。画像50は、検査対象とする対象鉄筋を含む。画像50には対象鉄筋52以外の鉄筋が含まれていてもよく、鉄筋検査装置10が三次元配筋データを作成する配筋検査装置の一部である場合には、画像50は、複数の鉄筋が含まれる配筋画像であってもよい。画像取得工程(S10)の前に三次元配筋データが得られている場合には、画像50に表示された対象鉄筋52に三次元配筋データの一部である配筋ライン40を対象鉄筋52の中心軸線に沿って表示してもよい。
【0033】
画像50は、ステレオカメラ15で撮影された複数の画像の内から選択されてもよい。複数の画像から選択することにより、対象鉄筋52の欠損部54を認識しやすい画像50
に基づいて以下の処理を実行することができる。複数の画像からの画像50の選択は、あらかじめ記憶部37に保存されたプログラムに従って画像処理部22が自動的に実行してもよい。
【0034】
画像処理工程(S20):画像処理部22は、
図4の(a)に示す画像50に対し、対象鉄筋52の長手方向に沿った方向(
図4ではX軸に沿った方向)にぼかし処理を実行して
図4の(b)に示す第1処理画像50aを得る。また、画像処理部22は、
図5の(a)に示す画像50に対し、対象鉄筋52の長手方向に直交する方向(
図5ではY軸に沿った方向)にぼかし処理を実行して
図5の(b)に示す第2処理画像50bを得る。「ぼかし処理」は、画像50を所定の方向に直線的に移動させて表れる残像のような効果を得る画像処理技術である。ぼかし処理は、公知の画像処理効果であるモーションブラー、ガウシアンブラー等を利用することができる。ぼかし処理を実行する方向は、画像50における対象鉄筋52の向きに合わせてその長手方向及びこれに直交する方向に合わせてもよいし、あらかじめステレオカメラ15を対象鉄筋52の長手方向と平行になるように配置して撮影した画像50を用いてX軸に沿った方向及びY軸に沿った方向にしてもよい。また、三次元配筋データの配筋ライン40を利用して配筋ライン40に沿った方向及びこれに直交する方向にぼかし処理を実行してもよい。
【0035】
また、画像50は、画像処理工程(S20)に先立って撮影された画像50における対象鉄筋52の傾きを補正して画像50に対して対象鉄筋52が平行に配置された状態とした後に、画像処理工程(S20)を実行し、さらに計測工程(S30)において高さH1及び幅L1を計測することができる。傾きによる遠近感は画像50における対象鉄筋52の太さの変化として表れる。欠損部54の寸法を計測するためには、画像50に表示される対象鉄筋52が画像50の面内で同じ太さ(縮尺)で表示されることが望ましい。そのため、ステレオカメラ15と対象鉄筋52の中心軸線とが平行になった状態で撮影した画像50で検査することが好ましく、複数の画像がある場合には対象鉄筋52の太さが均一な画像50(対象鉄筋52の歪が少ない画像50)を選択することができる。しかし、そのような画像がない場合には、例えば三次元配筋データに基づいて平行な状態になるように画像50を補正(遠近感による歪を解消)してもよいし、ステレオカメラ15で撮影した画像でない場合であっても距離測定器等で対象鉄筋52の傾きをあらかじめ計測してそれに基づいて補正してもよい。
【0036】
計測工程(S30):計測部23は、第1処理画像50aにおける長手方向に直交する方向(
図4ではY軸に沿った方向)の明るさの変化に基づいて対象鉄筋52の隣接する節53の間にある欠損部54の高さH1を計測する。
図4の(b)に示すように、欠損部54は他の部分より暗い画素となるため、第1処理画像50aの明るさの変化によって欠損部54の高さH1が計測できる。例えばピクセルをmm換算するような処理によって具体的な寸法を算出することができる。また、計測部23は、第2処理画像50bにおける長手方向に沿った方向(
図5ではX軸に沿った方向)の明るさの変化に基づいて対象鉄筋52の欠損部54の幅L1を計測する。
図5の(b)に示すように、欠損部54の上端54aは、節53の部分より暗い画素となるため、第2処理画像50bの明るさの変化によって欠損部54の幅L1が計測できる。特に、
図2に示すように照明16または照明16に代えて画像50の一方から光を当てる画像処理(画像50の明るさの補正処理)を用いて節53に光を当てることで、節53と上端54aとの明るさの変化が際立つ。幅L1は、欠損部54の上端54aにおける幅L1であり、すなわち欠損部54を挟む上端54aと上端54aとの間隔である。高さH1及び幅L1の寸法は、対象鉄筋52とステレオカメラ15との距離がわかっていれば第1処理画像50a及び第2処理画像50bにおける具体的な寸法を算出できる。
【0037】
また、
図6に示すように、画像50の一部をトリミング処理して第3処理画像50cを
作成し、第3処理画像50cを画像50の代わりに用いて第1処理画像50a及び第2処理画像50bを作成してもよい。トリミング処理としては、例えば
図6のように節53の高さに水平を合わせて、節53より下の部分をトリミングにより切除してもよいし、対象鉄筋52の影57(
図4(a)、
図5(a))が背景に写り込んでいる画像50の上側をトリミングにより切除してもよい。トリミング処理を行うことにより、対象鉄筋52以外のピクセルを多く排除することができるため、高さH1や幅L1の算出精度が向上する。
【0038】
特定工程(S40):鉄筋特定部24は、
図7に示すようなあらかじめ用意された複数種類の鉄筋データを備えるデータベース37aから高さH1及び幅L1の欠損部54を有する鉄筋の種類60の種類を特定する。データベース37aは、鉄筋の種類60に対して、設計資料として鉄筋メーカ各社から提供される寸法データに基づく高さH1の範囲、幅L1の範囲が関連付けられている。例えば、D10では、
図4及び
図5によって計測された高さH1が0.8mmで幅L1が5mmである場合には、鉄筋特定部24が鉄筋の種類60を「D10」と特定することができる。なお、対象鉄筋52の欠損部54の幅L1については気温の変化によって長さが変化するため、納入された鉄筋をあらかじめ実状に合った(気温によって変化した)幅L1の寸法を計測しておき、その計測した寸法にデータベース37aの寸法データを補正しておくことが好ましい。なお、鉄筋データの特定方法として、高さH1×幅L1の欠損部54の面積から、あらかじめ用意された複数種類の鉄筋の欠損部54の面積データから、鉄筋の種類60を特定する方法でもよい。
【0039】
表示工程(S50):
図8に示すように、出力部25は、例えば、鉄筋特定部24で特定された例えば鉄筋の種類60を表示部38に表示する指令を出力する。表示部38は、この指令に従って対象鉄筋52の上に鉄筋の種類60(例えば呼び名)を重ねて表示する。このように画像50と鉄筋データの一部とを表示することで検査された鉄筋の種類が容易に識別できるようになる。特定された鉄筋の種類60は、三次元配筋データに合成してもよい。また、このような表示を検査結果として記憶部37に保存することができる。
【0040】
対象鉄筋52と鉄筋の種類60を合成した画像50は、施工された配筋が設計仕様に合致した鉄筋であることを証明資料として用いることができる。
【0041】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0042】
10…鉄筋検査装置、11…本体、15…ステレオカメラ、16…照明、20…演算部、21…画像取得部、22…画像処理部、23…計測部、24…鉄筋特定部、25…出力部、37…記憶部、37a…データベース、38…表示部、40…配筋ライン、50…画像、50a…第1処理画像、50b…第2処理画像、50c…第3処理画像、52…対象鉄筋、53…節、54…欠損部、54a…上端、54b…下端、55…リブ、57…影、60…鉄筋の種類、L1…幅、H1…高さ