IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-中継装置 図1
  • 特開-中継装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119315
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】中継装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/023 20060101AFI20240827BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240827BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20240827BHJP
   H04L 12/46 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B60R16/023 P
B60R16/02 660N
H04L12/28 100A
H04L12/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026122
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 政明
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 佑樹
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA04
5K033BA06
5K033DB25
(57)【要約】
【課題】車両の消費電力を低減させる。
【解決手段】車両の外部機器と電子制御ユニットとの通信を中継する中継装置であって、前記外部機器を通信可能に接続する外部通信コネクタと、前記外部通信コネクタに接続された前記外部機器と前記電子制御ユニットとの通信を制御する通信制御部を備え、前記通信制御部は、前記車両のイグニッションがオフ状態に遷移した後に、前記外部機器と前記電子制御ユニットとの間の通信を遮断する、中継装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部機器と電子制御ユニットとの通信を中継する中継装置であって、
前記外部機器を通信可能に接続する外部通信コネクタと、
前記外部通信コネクタに接続された前記外部機器と前記電子制御ユニットとの通信を制御する通信制御部を備え、
前記通信制御部は、
前記車両のイグニッションがオフ状態に遷移した後に、前記外部機器と前記電子制御ユニットとの間の通信を遮断する、中継装置。
【請求項2】
前記通信制御部は、
前記車両のイグニッションがオフ状態に遷移した後、所定時間経過後に、前記外部機器と前記電子制御ユニットとの間の通信を遮断する、請求項1記載の中継装置。
【請求項3】
前記通信制御部は、前記外部機器からの通信要求に対し、前記通信要求を前記電子制御ユニットに中継しないことにより、前記外部機器と前記電子制御ユニットとの間の通信を遮断する、請求項1又は請求項2記載の中継装置。
【請求項4】
前記通信制御部は、前記外部機器からの通信要求に対して拒否応答することにより、前記外部機器と前記電子制御ユニットとの間の通信を遮断する、請求項1又は請求項2記載の中継装置。
【請求項5】
前記通信制御部は、
前記車両が特定の状態である場合に、前記外部機器と前記電子制御ユニットとの間の通信を遮断しない、請求項1又は請求項2記載の中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車両用制御システムは、複数のECU(Electronic Control Unit)と、これらECU間の通信や車両外部との通信を中継する中継装置等が車載ネットワークによって相互に通信可能に接続されて構成されている。このような車両用制御システムでは、各ECUが直接または中継装置を介して各種情報をやり取りしながら車両の走行に必要な電子機器やセンサを制御している。
【0003】
前述のECUには、車載式故障診断装置(OBD:On-Board Diagnostics)が備えられ、制御対象である電子機器やセンサに機能異常等の不具合が生じた場合に、故障に関する情報として故障コード(DTC:Diagnostic Trouble Code)が自動的に記録される。電子機器やセンサにおける検出値やECUに記録された故障コードを含む情報は、中継装置に設けられた車載式故障診断装置用の外部通信コネクタ(OBDポート)に外部診断機(スキャンツール)を接続することで読み取ることができる。
【0004】
すなわち、中継装置は、OBDポートに接続されたスキャンツールからの通信要求を受け付けると、これを通信要求先のECUに中継し、当該ECUを省電力状態(スリープ)に遷移させずに通常動作状態(ウェイクアップ)に維持してECUを応答させることで前述の情報をスキャンツールに送信させている。
【0005】
このような中継装置の一例として、特許文献1には、外部機器接続用コネクタを介して中継装置に接続された診断機の状態を判定し、診断機が正常であると判定した場合に電子制御ユニット(ECU)を通信ができる状態へ遷移させ、診断機が異常であると判定した場合に電子制御ユニット(ECU)を通信ができる状態へ遷移させないようにする中継装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5949538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、OBDポートには、故障診断を目的としない第三者製の外部機器であって、例えば、レーダー探知機やドライブレコーダ等の車両の製造者がOBDポートへの接続を想定していない外部機器がユーザによって接続されることがある。このような外部機器には、外部機器が正常に動作している場合であってもOBDポートに接続されている間に車両側に対する通信要求を継続して行うものがある。この場合、車両のイグニッションがオフ状態であっても当該外部機器からの通信要求に応答するために各ECUが常に通常動作状態に維持され、車両の電力を必要以上に消費してしまう問題がある。
【0008】
本発明は、このような状況に対処することを課題としている。すなわち、外部機器とECUとの通信を制御して、車両の消費電力を低減させること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明による中継装置は、以下の構成を具備する。
すなわち、本発明の一態様は、車両の外部機器と電子制御ユニットとの通信を中継する中継装置であって、前記外部機器を通信可能に接続する外部通信コネクタと、前記外部通信コネクタに接続された前記外部機器と前記電子制御ユニットとの通信を制御する通信制御部を備え、前記通信制御部は、前記車両のイグニッションがオフ状態に遷移した後に、前記外部機器と前記電子制御ユニットとの間の通信を遮断する、中継装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する中継装置によれば、車両の消費電力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る中継装置を含む車両用制御システムの概略構成を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る中継装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1に、本発明の実施形態に係る中継装置が適用された車両用制御システム1の概略構成を示す。図1に示すように、車両用制御システム1は、車両100の走行に必要な種々の電子機器類(不図示)と、これらの電子機器類を制御する複数のECU(Electronic Control Unit)10と、各ECU10間の通信を中継すると共に車両100の外部機器200と各ECU10との通信を中継する中継装置としてのCGW(Central Gateway)4と、を備えている。
【0014】
車両用制御システム1は、CGW4、ECU10、及び、ECU10の制御対象である電子機器(以下、制御対象機器という)がCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等のバスライン3A,3B,3Cにより相互に通信可能に接続され、車載ネットワークを構成している。
【0015】
各ECU10は、各々の制御対象である電子機器(以下、制御対象機器という)に接続され、制御対象機器から取得した制御対象機器の動作に係る情報をバスライン3A,3B,3Cへ出力する。また、各ECU10は、バスライン3A,3B,3Cを介して他のECU10等から情報を取得し、この情報に基づいて各々の制御対象機器の動作を制御する。
【0016】
各ECU10は、バッテリ(不図示)から供給される電力によって動作し、各々の制御対象機器の動作を行う通常動作状態(ウェイクアップ)と各々の制御対象機器の動作を行わない省電力状態(スリープ)とが適宜切り替えられる。すなわち、各ECU10には、通常動作状態においては、バッテリから各々の制御対象機器の動作を行うために必要な電力が供給され、省電力状態においては、バッテリから供給される電力が最小限となるように抑制される。
【0017】
ECU10は、その制御対象機器の機能に応じて、エンジンやトランスミッション等の制御を行うパワー・トレイン系、サスペンションやステアリング等の制御を行うシャーシ系、及び、エアコンやドア等の制御を行うボディ系の何れかの機能系統に分類され、各自が属する機能系統ごとにバスライン3A,3B,3Cに接続されている。
【0018】
つまり、CGW4には、エンジンやトランスミッション等の機器を制御するパワー・トレイン系のECU10がバスライン3Aを介して接続され、サスペンションやステアリング等の機器を制御するシャーシ系のECU10がバスライン3Bを介して接続され、エアコンやドア等の機器を制御するボディ系のECU10がバスライン3Cを介して接続されている。以下の説明において、バスライン3A,3B,3Cの全てを示す場合には、単にバスライン3と記す。
【0019】
CGW4は、外部機器200を通信可能に接続する外部通信コネクタ9と、この外部通信コネクタ9とECU10との通信を制御する通信制御部41とを備えている。外部通信コネクタ9には、車両100の外部からOBD用のスキャンツールやその他の様々な外部機器200が接続される。CGW4には、バッテリから電力が供給され、車両100のイグニッションの状態に拘わらず動作が可能であり、車両100のイグニッションがオフ状態であっても外部機器200からの通信要求を受け付けることができる。
【0020】
CGW4及び各ECU10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えて構成することができる。また、CGW4及び各ECU10が実行する動作の一部又は全部を、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)やGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアにより実現することもできる。
【0021】
CGW4において、CPU等のプロセッサがROMに格納されたプログラムをRAM等のメモリに読み込んで実行することにより、通信制御部41として機能する。通信制御部41は、外部通信コネクタ9に外部機器200が接続されて、外部機器200からCGW4に対して通信要求が送信された場合に、外部機器200と通信要求先のECU10との通信を制御する。
【0022】
すなわち、通信制御部41は、外部機器200と通信要求先のECU10との通信を行わせる場合には、通信要求先のECU10に外部機器200からの通信要求を送信(中継)し、ECU10を省電力状態(スリープ)に遷移させずに通常動作状態(ウェイクアップ)に維持する。この状態で、通信制御部41が、外部機器200からの通信要求に係る情報をECU10に送信(中継)すると共に、外部機器200からの通信要求に応じた情報をECU10から受信して外部機器200に送信(中継)する。
【0023】
通信制御部41は、外部機器200から通信要求を受信している場合であっても、車両100のイグニッションがオフ状態に遷移した後は、外部機器200とECU10との間の通信を遮断する。
【0024】
外部機器200とECU10との間の通信の遮断は、例えば、次のように行うことができる。すなわち、通信制御部41は、外部機器200からの通信要求に対して拒否応答をすることにより、外部機器200とECU10との通信を遮断することができる。また、通信制御部41は、外部機器200からの通信要求に対して、当該通信要求をECU10に送信(中継)しないことで、外部機器200とECU10との通信を遮断することもできる。
【0025】
なお、通信制御部41は、外部機器200から通信要求を受信している場合において、車両100のイグニッションがオフ状態に遷移し、予め定めた所定時間経過後に、外部機器200とECU10との間の通信を遮断することとしてもよい。
【0026】
また、通信制御部41は、車両が特定の状態である場合においては、外部機器200とECU10との間の通信を遮断しない。ここで、特定の状態には、例えば、車両100の出荷前などのヒューズ状態や、特定のセキュリティ状態、すなわち、CGW4が予め認可されたユーザによる操作のみを受け付けるモードに設定されている状態などが含まれる。
【0027】
以下、このように構成された車両用制御システム1のCGW4における動作について、図2に示すフローチャートに従って説明する。
【0028】
外部通信コネクタ9に外部機器200が接続されている状態において、外部機器200からCGW4に対して通信要求が送信され(ステップS101のYES)、車両100の状態が予め定めた特定の状態でない場合には(ステップS102のNO)、CGW4は、車両100のイグニッションがオン状態であるか判定する(ステップS103)。
【0029】
CGW4では、車両100のイグニッションがオン状態の場合(ステップS103のYES)、通信制御部41が外部機器200と通信要求先のECU10との通信を実行し、外部機器200とECU10との間で必要な情報の送受信を行う(ステップS104)。すなわち、通信制御部41はCGW4が外部機器200から受信した通信要求をECU10に送信し、これに応答して当該ECU10から送信された要求に応じた情報を受信し、CGW4が受信した情報を外部機器200に送信する。
【0030】
この間、CGW4は、外部機器200からの通信要求の有無を監視すると共に、車両100のイグニッションの状態を監視する(ステップS105,ステップS106)。通信制御部41は、外部機器200からの通信要求が停止すると(ステップS105のYES)、外部機器200とECU10との通信を終了させる(ステップS109)。
【0031】
外部機器200からの通信要求が停止していない状態で(ステップS105のNO)、車両100のイグニッションがオフ状態となると(ステップS106のYES)、通信制御部41は、所定時間経過後(ステップS107のYES)に、外部機器200とECU10との通信を遮断する(ステップS108)。
【0032】
一方、ステップS102の処理において、車両100の状態が予め定めた特定の状態である場合には(ステップS102のYES)、車両100のイグニッションがオン状態であるかオフ状態であるかに拘わらず、外部機器200と通信要求先のECU10との通信を実行し、外部機器200とECU10との間で必要な情報の送受信を行う(ステップS110)。
【0033】
この間、CGW4は、外部機器200からの通信要求の有無を監視し(ステップS111)、外部機器200からの通信要求が停止すると(ステップS111のYES)、外部機器200とECU10との通信を終了させる(ステップS109)。外部機器200とECU10との通信の終了後、ECU10は省電力状態に遷移する。
【0034】
以上述べたように、本実施形態に係る中継装置によれば、車両100のイグニッションがオン状態である場合には、外部機器200からの通信要求をECU10に中継し、ECU10を通常動作状態に維持して外部機器200とECU10との通信を行わせる。一方、車両100のイグニッションがオフ状態となった後は、ECU10が外部機器200からの通信要求に応答しないように、外部機器200とECU10との通信を遮断する。
【0035】
車両100のイグニッションがオフ状態において、外部機器200とECU10との通信が遮断されて通信が終了すると、ECU10は省電力状態に遷移する。このようにすることで、外部機器とECU10との通信を要しない状況下において、ECU10が通常動作状態となるのを抑制し、車両の消費電力を低減させることができる。
【0036】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1:車両用制御システム、3,3A,3B,3C:バスライン、9:外部通信コネクタ
41:通信制御部、100:車両、200:外部機器
図1
図2