(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119326
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】軸受装置及び潤滑剤状態検出方法
(51)【国際特許分類】
F16C 19/18 20060101AFI20240827BHJP
F16C 41/00 20060101ALI20240827BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20240827BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20240827BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20240827BHJP
F16J 15/3232 20160101ALI20240827BHJP
F16N 29/00 20060101ALI20240827BHJP
G01N 21/47 20060101ALI20240827BHJP
B60B 35/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F16C19/18
F16C41/00
F16C33/66 Z
F16C33/58
F16C33/78 Z
F16J15/3232 201
F16N29/00 D
G01N21/47 Z
B60B35/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026143
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】平川 裕雅
【テーマコード(参考)】
2G059
3J006
3J216
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059AA05
2G059BB04
2G059CC14
2G059DD20
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2G059HH02
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2G059KK02
3J006AE23
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3J006AE40
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3J006CA01
3J216AA02
3J216AA03
3J216AA14
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3J701FA48
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】潤滑剤の状態を的確に把握可能であり、制作コストやメンテナンス性に優れた、軸受装置及び潤滑剤状態検出方法を提供する。
【解決手段】軸受装置は、内周面に外輪軌道面を有する外輪部材と、外周面に内輪軌道面を有する内輪部材と、外輪軌道面と内輪軌道面との間の軌道に転動自在に設けられた複数の転動体と、外輪部材の内周面と内輪部材の外周面との間の軸受空間内に配置された潤滑剤と、潤滑剤の状態を検出するセンサと、を備える。センサは、潤滑剤が接触する検出面を有する透光性樹脂からなる本体部と、本体部に埋め込まれて検出面へ向かって光を照射する発光体と、本体部に埋め込まれて検出面と潤滑剤との界面で反射する光を受光して検出信号を出力する受光体と、を有する。発光体及び受光体は、検出面で光軸が交差するように本体部に埋め込まれ、且つ、外輪部材の径方向外側に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に外輪軌道面を有する外輪部材と、
外周面に内輪軌道面を有する内輪部材と、
前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間の軌道に転動自在に設けられた複数の転動体と、
前記外輪部材の前記内周面と前記内輪部材の前記外周面との間の軸受空間内に配置された潤滑剤と、
前記潤滑剤の状態を検出するセンサと、
を備える軸受装置であって、
前記センサは、
前記潤滑剤が接触する検出面を有する透光性樹脂からなる本体部と、
前記本体部に埋め込まれて前記検出面へ向かって光を照射する発光体と、
前記本体部に埋め込まれて前記検出面と前記潤滑剤との界面で反射する光を受光して検出信号を出力する受光体と、
を有し、
前記発光体及び前記受光体は、前記検出面で光軸が交差するように前記本体部に埋め込まれ、且つ、前記外輪部材の径方向外側に配置される
軸受装置。
【請求項2】
前記外輪部材は、前記外輪部材の前記内周面から外周面まで径方向に貫通する貫通孔を有し、
前記センサの前記本体部は、互いに接続する径方向内側部及び径方向外側部を有し、
前記径方向内側部は、前記検出面を有し、前記貫通孔に挿入され、
前記径方向外側部は、前記発光体及び前記受光体が埋め込まれ、前記外輪部材の前記外周面に配置される
請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記センサは、前記外輪部材の軸方向端部に配置され、
前記センサの前記本体部は、互いに接続する径方向内側部及び径方向外側部を有し、
前記径方向内側部は、前記外輪部材の前記軸方向端部の内周面に内嵌され、前記外輪部材よりも軸方向外側まで延在し、
前記径方向外側部は、前記径方向内側部の軸方向外側端部から径方向外側に延在し、前記発光体及び前記受光体が埋め込まれる、
請求項1に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記センサの内周面と前記内輪部材との間に、前記軸受空間を封止するシール部材が設けられている、
請求項3に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記センサの前記本体部には、前記発光体及び前記受光体と、前記検出面と、の間に、光軸の方向を変える鏡が埋め込まれる
請求項1に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記センサの前記本体部には、前記発光体及び前記受光体と、前記検出面と、の間に、面取りが形成され、
前記面取りは、光軸の方向を変える鏡面である、
請求項1に記載の軸受装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の軸受装置における潤滑剤状態検出方法であって、
前記センサの前記発光体から光を照射させ、
前記センサの前記受光体からの検出信号に基づいて、前記検出面と前記潤滑剤との界面で反射した前記発光体の反射光の光量を検出し、
前記光量に基づいて、前記潤滑剤の劣化状態を判定する、
潤滑剤状態検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置及び潤滑剤状態検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内周面に複列の転走面を有する外方部材と、転走面に対向する転走面を有する内方部材と、外方部材及び内方部材の対向する転走面間に介在した複列の転動体と、を有し、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が開示されている。この車輪用軸受装置は、外輪の内周面に互いに傾き角度を持った発光素子と受光素子とからなり、潤滑剤の反射光の変化により潤滑剤に含まれる異物量を判定するセンサと、外輪の外周面に設けられ、センサからのデータを記録するICタグと、外輪の貫通孔を挿通するセンサとICタグの通信手段と、を有しており、潤滑剤の劣化判定を行っている。
【0003】
しかし、特許文献1の軸受装置においては、発光素子と受光素子の光軸をグリース表面で交差させることができないので、受光素子が受ける光は乱反射光となる。したがって、受光素子が受けた光量は潤滑剤の表面位置などの外乱に影響されるので、受光素子が受けた光量とグリース劣化度との相関が弱くなり、センサの検出精度を高めるのが難しい。さらに、外方部材の内周面に発光素子と受光素子を精度良く取り付けて配線する作業や、故障時の交換作業は、困難を伴う。さらに、汎用品の発光素子や受光素子やこれらの制御器は、軸受内の空間に内蔵できるほど小さくないため、特注品の製作を行う必要があるが、通常の軸受装置の1品番当たりの生産量(例えば、数千~数万個/月)を考慮すれば、特注品の製作は高コストとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、潤滑剤の状態を的確に把握可能であり、制作コストやメンテナンス性に優れた、軸受装置及び潤滑剤状態検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記構成からなる。
(1) 内周面に外輪軌道面を有する外輪部材と、
外周面に内輪軌道面を有する内輪部材と、
前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間の軌道に転動自在に設けられた複数の転動体と、
前記外輪部材の前記内周面と前記内輪部材の前記外周面との間の軸受空間内に配置された潤滑剤と、
前記潤滑剤の状態を検出するセンサと、
を備える軸受装置であって、
前記センサは、
前記潤滑剤が接触する検出面を有する透光性樹脂からなる本体部と、
前記本体部に埋め込まれて前記検出面へ向かって光を照射する発光体と、
前記本体部に埋め込まれて前記検出面と前記潤滑剤との界面で反射する光を受光して検出信号を出力する受光体と、
を有し、
前記発光体及び前記受光体は、前記検出面で光軸が交差するように前記本体部に埋め込まれ、且つ、前記外輪部材の径方向外側に配置される
軸受装置。
(2) 前記外輪部材は、前記外輪部材の前記内周面から外周面まで径方向に貫通する貫通孔を有し、
前記センサの前記本体部は、互いに接続する径方向内側部及び径方向外側部を有し、
前記径方向内側部は、前記検出面を有し、前記貫通孔に挿入され、
前記径方向外側部は、前記発光体及び前記受光体が埋め込まれ、前記外輪部材の前記外周面に配置される
(1)に記載の軸受装置。
(3) 前記センサは、前記外輪部材の軸方向端部に配置され、
前記センサの前記本体部は、互いに接続する径方向内側部及び径方向外側部を有し、
前記径方向内側部は、前記外輪部材の前記軸方向端部の内周面に内嵌され、前記外輪部材よりも軸方向外側まで延在し、
前記径方向外側部は、前記径方向内側部の軸方向外側端部から径方向外側に延在し、前記発光体及び前記受光体が埋め込まれる、
(1)に記載の軸受装置。
(4) 前記センサの内周面と前記内輪部材との間に、前記軸受空間を封止するシール部材が設けられている、
(3)に記載の軸受装置。
(5) 前記センサの前記本体部には、前記発光体及び前記受光体と、前記検出面と、の間に、光軸の方向を変える鏡が埋め込まれる
(1)に記載の軸受装置。
(6) 前記センサの前記本体部には、前記発光体及び前記受光体と、前記検出面と、の間に、面取りが形成され、
前記面取りは、光軸の方向を変える鏡面である、
(1)に記載の軸受装置。
(7) (1)~(6)のいずれか一つに記載の軸受装置における潤滑剤状態検出方法であって、
前記センサの前記発光体から光を照射させ、
前記センサの前記受光体からの検出信号に基づいて、前記検出面と前記潤滑剤との界面で反射した前記発光体の反射光の光量を検出し、
前記光量に基づいて、前記潤滑剤の劣化状態を判定する、
潤滑剤状態検出方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、潤滑剤の状態を的確に把握可能であり、制作コストやメンテナンス性に優れた、軸受装置及び潤滑剤状態検出方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る軸受装置の断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の変形例1-1に係る軸受装置の断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の変形例1-2に係る軸受装置の断面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る軸受装置の断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る軸受装置をナックルに取り付けた状態を示す図である。
【
図8】
図8は、外輪の貫通孔の変形例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、変形例2-1に係る軸受装置における、
図6に相当する部分の拡大断面図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の変形例2-2に係る軸受装置の断面図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態の変形例2-3に係る軸受装置の断面図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態の変形例2-4に係る軸受装置の断面図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態の変形例2-5に係る軸受装置の断面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態の変形例2-6に係る軸受装置の断面図である。
【
図16】
図16は、第3実施形態に係る軸受装置の断面図である。
【
図17】
図17は、観察用貫通孔の径方向から見た形状が丸孔である場合、観察用貫通孔111に嵌め込まれる潤滑剤劣化検出窓材を径方向から見た図である。
【
図18】
図18は、観察用貫通孔の径方向から見た形状が軸方向に長い長孔形状である場合、観察用貫通孔に嵌め込まれる潤滑剤劣化検出窓材を径方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る軸受装置100の断面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿った断面図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る軸受装置100は、第3世代のハブユニット軸受であり、従動輪用として用いられる。なお、自動車への組み付け状態で車体の幅方向外側となる、
図1の左側を「アウトボード側」と称す。また、反対に車体の幅方向中央側となる
図1の右側を、「インボード側」と称す。「軸方向」とは、軸受装置の回転軸Oが延びる方向を表し、
図1中の左右方向である。「径方向外側」とは、回転軸Oから遠ざかる方向を表し、
図1中の上下方向両側である。「径方向内側」及び「径方向中心側」とは、回転軸Oに近づく方向を表し、
図1中の上下方向中央側である。「周方向」とは、回転軸Oを中心に旋回する方向を表す。
【0011】
このハブユニット軸受からなる軸受装置100は、内周面に一対の外輪軌道面101,101を有する外輪(外輪部材)102と、外周面に一対の内輪軌道面103,103を有する内輪部材104と、一対の外輪軌道面101,101と一対の内輪軌道面103,103との間のそれぞれの軌道に転動可能に設けられる複数の玉(転動体)105と、複数の玉105を周方向に略等間隔に保持する一対の保持器106,106と、一対のシール(シール部材)107,107aと、を備える。
図2に示すように、外輪102の内周面と内輪部材104の外周面との間の軸受空間S内には、潤滑剤Gが配置される。軸受空間Sは、軸方向両側の一対のシール(シール部材)107,107aによって封止され、潤滑剤Gが外部に流出することが防止される。後に詳述するように、軸受装置100は、潤滑剤Gの状態を検出するセンサ10を備える。
【0012】
内輪部材104は、ハブ輪104eと、ハブ輪104eに形成された小径段部104dに外嵌合された内輪104aと、を含む。内輪104aは、外周面に内輪軌道面103を有する。この軸受装置100は、ハブ輪104eの小径段部104dに内輪104aを外嵌合した状態で加締められて組み立てられる加締めタイプのハブユニット軸受である。なお、軸受装置100は、ハブ輪104eの小径段部104dに内輪104aを外嵌合した状態でナット締めして組み立てられるナット締めタイプのハブユニット軸受でもよい。また、軸受装置100は、ハブ輪104eの中心部にCVJ(等速ジョイント)と係合するスプライン孔を設けた駆動輪用のハブユニット軸受でもよい。
【0013】
外輪102の外周面のインボード側には、径方向外側に突出するフランジ部102bが形成されている。このフランジ部102bには、軸方向に貫通する複数の孔102cが形成されている。フランジ部102bの孔102cには、例えば、懸架装置の被取付部へ固定するためのボルト(図示略)が挿通される。
【0014】
ハブ輪104eの外周面のアウトボード側には、径方向外側に突出する他のフランジ部104bが形成されている。このフランジ部104bには、軸方向に貫通する複数の孔104cが周方向に等間隔で形成されている。フランジ部104bの孔104cには、例えば、ホイール及びブレーキロータを固定するためのボルト110が挿通される。
【0015】
なお、これらの孔102c,104cに雌ネジを形成し、被取付側のボルトを締結してもよく、また、孔102c,104cに予めスタッドボルトを取り付けてもよい。
【0016】
各列の複数の玉105は、保持器106のポケットに転動可能に保持されている。
【0017】
外輪102の軸方向両端部の一対の張出部102a,102aの内周面と、内輪104a及びハブ輪104eの外周面と、の間にはそれぞれ、組合せシール107aとシール107が設けられて、軸受空間Sが封止されている。
【0018】
外輪102は、外輪102の内周面から外周面まで径方向に貫通する貫通孔108を有する。貫通孔108は、軸方向において、一対の外輪軌道面101,101の間に配置される。貫通孔108は、径方向に延びる円柱形状である。貫通孔108には、後述のように、センサ10の径方向内側部23が挿入されて固定される。
【0019】
図1及び
図2に示すように、センサ10は、潤滑剤Gが接触する検出面21を有する透光性樹脂からなる本体部20と、検出面21に付着した潤滑剤Gの状態を検出するセンサ部30と、を有する。センサ10は、検出面21が径方向内側の軸受空間Sに対向するように、外輪102の貫通孔108に径方向外側から挿入されて、軸受空間S内の潤滑剤Gの状態を検出する。
【0020】
センサ10は、外輪102の周方向の少なくとも一か所に設けられている。なお、センサ10は、外輪102における周方向の複数箇所に設けてもよい。ただし、潤滑剤Gが玉105によって撹拌されて流動することを考慮すれば、外輪102の周方向の一か所に設けることで、潤滑剤Gの状態の検出機能を十分に得ることが可能である。
【0021】
本体部20は、透明度が高く、かつ耐熱性に優れた樹脂材料から形成するのが好ましく、例えば、アクリルやポリカーボネート等の樹脂材料が用いられる。本体部20は、互いに径方向に接続する径方向内側部23及び径方向外側部25を有する。
【0022】
本体部20の径方向内側部23は、径方向に延びる円柱形状であり、その径方向内側端部に検出面21を有する。本実施形態の径方向内側部23は、外輪102の貫通孔108と略同一形状とされる。そして径方向内側部23が貫通孔108に挿入された際には、径方向内側部23の外周面及び径方向両端面が、貫通孔108の内周面及び径方向両端部の開口と略一致するように位置する。すなわち、径方向内側部23は貫通孔108に、隙間なく挿入される。
【0023】
本体部20の径方向外側部25は、径方向内側部23の径方向外側端部に接続して、径方向内側部23と一体的に形成される。径方向外側部25は、例えば、径方向内側部23よりも大径の円柱形状とされる。したがって、径方向外側部25は、径方向内側部23よりも、軸方向両側に突出するとともに(
図1参照)、周方向に突出する(
図2参照)。
【0024】
径方向外側部25は、センサ部30の発光体31及び受光体33が埋め込まれ、外輪102の外周面に配置される。なお、本実施形態では、
図2に示すように、外輪102の外周面に、径方向外側に突出する座面109が形成され、この座面109に径方向外側部25が載置される。したがって、径方向外側部25に埋め込まれた発光体31及び受光体33は、外輪102の径方向外側に配置される。
【0025】
センサ部30は、発光ダイオード(LED)等の発光体31と、照度センサ等の受光体33と、を有している。これらの発光体31及び受光体33は、本体部20の径方向外側部25に、互いに周方向に離間するように埋め込まれている。
【0026】
センサ10は、径方向内側部23のうち径方向内側面(軸受空間S側の面)が検出面21とされている。そして、センサ10は、検出面21に付着した潤滑剤Gの状態をセンサ部30によって検出する。上述のように本実施形態の径方向内側部23は外輪102の貫通孔108と略同一形状とされるので、径方向内側部23の検出面21は、外輪102の貫通孔108の径方向内側の開口108aと略同一位置に配置され、したがって、外輪102の内周面と径方向位置が略一致する(面一とされる)。
【0027】
図2に示すように、発光体31及び受光体33は、センサ10の軸方向から視て、それぞれの光軸31a,33aが、検出面21へ向かって次第に近接するように傾斜された状態で配置されている。これにより、センサ10の軸方向(
図2における上下方向。軸受装置100の径方向。)に対して、発光体31の光軸31aは傾斜角αで傾斜し、受光体33の光軸33aは傾斜角βで傾斜している。そして、これらの発光体31及び受光体33の光軸31a,33aは、検出面21で交差している。発光体31の光軸31aの傾斜角α及び受光体33の光軸33aの傾斜角βは、それぞれ0°~20°の範囲とされている。なお、発光体31の光軸31aの傾斜角α及び受光体33の光軸33aの傾斜角βは、5°~15°で、かつ互いに同一角度(α=β)であるのが好ましい。
【0028】
センサ部30では、発光体31によって検出面21に付着した潤滑剤Gに光が照射される。そして、この検出面21と潤滑剤Gとの界面で反射した光が受光体33によって受光されると、受光体33は、受光した光を電気信号に変換して検出信号として出力する。
【0029】
センサ部30を構成する発光体31及び受光体33は、有線または無線によって検出装置(図示略)との間で信号の送受信が行われる。なお、無線の場合は、トランスミッター等を介して検出装置と通信される。ここで、センサ10が装着された外輪102を静止輪として軸受装置100が使用される場合は、有線による通信方式とすることにより、コストが抑えられる。これに対して、センサ10が装着された外輪102を回転輪として軸受装置100が使用される場合は、無線による通信方式とすることにより、回転するセンサ部30と円滑に通信できる。
【0030】
検出装置は、発光体31から光を照射させるとともに、受光体33からの検出信号を受信し、検出信号の電圧等に基づいて、潤滑剤Gの色(明度)をパラメータとして潤滑剤Gの状態を監視する。
【0031】
ここで、潤滑剤Gは、基油の酸化や、添加剤の消耗、外輪軌道面101及び内輪軌道面103と玉105との接触により発生する摩耗物の混入による劣化等によって、初期状態の色(着色料の色)から変化する。例えば、初期状態で褐色の潤滑剤Gは、劣化することで黒色に変化するため、明度が低下する。その結果、発光体31から照射される光が検出面21と潤滑剤Gとの界面で反射して受光体33へ到達する際の光量が減少する。受光体33に到達する反射光の照度は、受光体33からの検出信号の電圧に対して、例えば、比例関係を有する。したがって、受光体33に到達する反射光の照度が低下すると、受光体33から出力される検出信号の電圧が低下する。
【0032】
そして、検出装置は、この受光体33からの検出信号に基づき、受光体33での光量が低下し、検出信号の電圧が予め設定した閾値を下回った際に、潤滑剤Gが劣化したと判定する。例えば、検出装置は、潤滑剤Gの劣化状態を、要注意状態、要交換状態、あるいは寿命到達状態であると判定する。
【0033】
このように、第1実施形態に係る軸受装置100によれば、受光体33からの検出信号に基づいて、発光体31から照射されて検出面21と潤滑剤Gとの界面で反射した反射光の光量を検出するので、外乱の影響を受け難く、検出面21に付着している潤滑剤Gの状態を的確に把握できる。
また、発光体31及び受光体33は、検出面21で光軸31a,33aが交差するように本体部20に埋め込まれ、且つ、外輪102の径方向外側に配置される。したがって、特許文献1のように、発光素子及び受光素子が外方部材の内周面に設けられる場合と比較し、取付精度を高めることができ、配線作業や故障時の交換も容易になる。
また、発光体31及び受光体33は、外輪102の径方向外側に配置されるので、寸法が大きい汎用品であっても問題なく配置することができ、特注品を用いる必要がなくなるため、センサ10のコストを下げることができる。
【0034】
また、外輪102は、外輪102の内周面から外周面まで径方向に貫通する貫通孔108を有し、センサ10の本体部20は、互いに接続する径方向内側部23及び径方向外側部25を有し、径方向内側部23は検出面21を有し貫通孔108に挿入され、径方向外側部25は発光体31及び受光体33が埋め込まれ外輪102の外周面に配置される。
したがって、径方向内側部23を貫通孔108に挿入することで、センサ10を軸受装置100へ容易に精度良く固定できる。
【0035】
(変形例1-1)
次に、第1実施形態における変形例1-1について説明する。なお、上記第1実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明を省略する。
図3は、第1実施形態の変形例1-1に係る軸受装置100の断面図である。
【0036】
上述の第1実施形態においては、センサ10の本体部20の径方向内側部23に設けられた検出面21の径方向位置が、外輪102の内周面の径方向位置と略一致していた(
図1及び
図2参照)。しかしながら、
図3に示すように、センサ10の本体部20の径方向内側部23は、外輪102の内周面よりも径方向内側に延在してもよい。この場合、センサ10によって、ハブ輪104e近傍の潤滑剤Gの劣化度合いを判定することができる。
【0037】
(変形例1-2)
次に、第1実施形態における変形例1-2について説明する。なお、上記第1実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明を省略する。
図4は、第1実施形態の変形例1-2に係る軸受装置100の断面図である。
【0038】
上述の第1実施形態においては、発光体31と受光体33とは互いに周方向に離間して配置されていた(
図2参照)。しかしながら、
図4に示すように、発光体31と受光体33とは互いに軸方向に離間して配置されていてもよい。この場合、発光体31及び受光体33は、センサ10の周方向から視て、それぞれの光軸31a,33aが、検出面21へ向かって次第に近接するように傾斜された状態で配置されている。
【0039】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る軸受装置200の断面図である。
図6は、
図5のVI部の拡大断面図である。
図5及び
図6に示すように、第2実施形態に係る軸受装置200は、懸架装置を構成するナックルとハブ輪との間に複列円すいころ軸受を嵌合させた第1世代と称される構造のハブユニット軸受である。
【0040】
第2実施形態及びその変形例において、「軸方向内側」とは、一対の外輪軌道面231又は一対の内輪軌道面241が互いに近づく方向(
図5の左右方向中央側。
図6の左側。)を表し、「軸方向外側」とは、一対の外輪軌道面231,231又は一対の内輪軌道面241,241が互いに離れる方向(
図5の左右方向両側。
図6の右側。)を表す。
【0041】
軸受装置200は、内周面に一対の外輪軌道面231、231を有する外輪(外輪部材)230と、外周面に一対の内輪軌道面241,241を有する内輪部材240と、一対の外輪軌道面231,231と一対の内輪軌道面241,241との間のそれぞれの軌道に転動可能に設けられる複数の円すいころ(転動体)250と、各列の複数の円すいころ50を周方向に略等間隔に保持する一対の保持器260、260と、備える。後に詳述するように、軸受装置200は、外輪230と内輪部材240との間の軸受空間S内の潤滑剤Gの状態を検出するセンサ10を備える。なお、潤滑剤G(
図2参照)は、
図5及び
図6には不図示であるが、軸受空間S内に充填されている。
【0042】
一対の外輪軌道面231,231は、軸方向に関して互いに離れる方向に向かうほど直径が大きくなる方向に傾斜した部分円すい状の凹面である。また、一対の内輪軌道面241,241は、軸方向に関して互いに離れる方向に向かうほど直径が大きくなる方向に傾斜した部分円すい状の凸面である。
【0043】
内輪部材240は、内輪軌道面241をそれぞれ有する一対の内輪242,242を軸方向に突き合わせて構成されている。内輪242は、内輪軌道面241に対して大径側端部に設けられる大鍔部243と、内輪軌道面241に対して小径側端部に設けられる小鍔部244と、を有する。
【0044】
円すいころ250は、大径側の端面からなる大径側端面251と、小径側の端面からなる小径側端面252と、周面からなる転動面253と、を有する。
【0045】
保持器260は、大径側円環部261と、小径側円環部262と、大径側円環部261と小径側円環部262とを軸方向に連結し、周方向に略等間隔に設けられる複数の柱部263と、周方向に互いに隣り合う柱部263の間で、大径側円環部261及び小径側円環部262により囲まれて形成され、円すいころ250を転動可能に保持するポケット264と、を有する。
【0046】
また、軸受装置200は、一対の組合せシール(シール部材)270、270を備える。組合せシール270,270は、軸方向の両側において、外輪230の張出部232の内周面と、内輪242の大鍔部243の外周面243aと、の間に設けられて、外輪230と内輪部材240との間の軸受空間Sを封止する
【0047】
組合せシール270は、シールリング271と、磁性体のステンレス鋼板等からなる断面略L字形状のスリンガ272と、を備えている。なお、スリンガ272には、磁性ゴムからなるエンコーダ273が加硫成形により固着されており、磁性ゴムには、N極とS極とが周方向に交互に、且つ等ピッチで着磁されている。
【0048】
シールリング271は、芯金274と、弾性材275とから構成されている。芯金274は、軟鋼板等の金属板により、断面略L字形状に形成されている。弾性材275は、例えば、ゴム等の弾性材料から形成されており、芯金274に対して加硫接着成形によって結合されている。
【0049】
外輪230の軸方向両端部の張出部232には、その内周面から外周面まで径方向に貫通する貫通孔233が形成される。貫通孔233は、軸方向において、外輪軌道面231(外輪軌道面231上に配置される円すいころ250)と組合せシール270との間に配置される。貫通孔233は、径方向に延びる円柱形状である。貫通孔233には、後述のように、センサ10の径方向内側部23が挿入されて固定される。
【0050】
センサ10は、上述の第1実施形態と同様の構成を含む。すなわち、センサ10は、潤滑剤Gが接触する検出面21を有する透光性樹脂からなる本体部20と、検出面21に付着した潤滑剤Gの状態を検出するセンサ部30と、を有する。センサ10は、検出面21が径方向内側の軸受空間Sに対向するように、外輪230の貫通孔233に径方向外側から挿入されて、軸受空間S内の潤滑剤Gの状態を検出する。
【0051】
センサ10は、外輪230の周方向の少なくとも一か所に設けられている。なお、センサ10は、外輪230における周方向の複数箇所に設けてもよい。ただし、潤滑剤Gが円すいころ250によって撹拌されて流動することを考慮すれば、外輪230の周方向の一か所に設けることで、潤滑剤Gの状態の検出機能を十分に得ることが可能である。
【0052】
本体部20は、互いに径方向に接続する径方向内側部23及び径方向外側部25を有する。
【0053】
本体部20の径方向内側部23は、径方向に延びる円柱形状であり、その径方向内側端部に検出面21を有する。本実施形態の径方向内側部23は、外輪230の貫通孔233と略同一形状とされる。そして径方向内側部23が貫通孔233に挿入された際には、径方向内側部23の外周面及び径方向両端面が、貫通孔233の内周面及び径方向両端部の開口と略一致するように位置する。すなわち、径方向内側部23は貫通孔233に、隙間なく挿入される。
【0054】
本体部20の径方向外側部25は、径方向内側部23の径方向外側端部に接続して、径方向内側部23と一体的に形成される。径方向外側部25は、例えば、径方向内側部23よりも大径の円柱形状とされる。したがって、径方向外側部25は、径方向内側部23よりも、軸方向両側に突出するとともに(
図6参照)、周方向に突出する。
【0055】
図6には径方向外側部25は、センサ部30の発光体31及び受光体33が埋め込まれ、外輪230の外周面に配置される。したがって、径方向外側部25に埋め込まれた発光体31及び受光体33は、外輪230の径方向外側に配置される。
【0056】
発光体31と受光体33とは、本体部20の径方向外側部25に、互いに周方向に離間するように埋め込まれている。発光体31と受光体33とが互いに周方向に離間している様子は
図6には示されていないが、
図2と同様の配置であるので図示しない。
【0057】
センサ10は、径方向内側部23のうち径方向内側面(軸受空間S側の面)が検出面21とされている。そして、センサ10は、検出面21に付着した潤滑剤Gの状態をセンサ部30によって検出する。上述のように本実施形態の径方向内側部23は外輪230の貫通孔233と略同一形状とされるので、径方向内側部23の検出面21は、外輪230の貫通孔233の径方向内側の開口108aと略同一位置に配置され、したがって、外輪230の貫通孔233の内周面と径方向位置が略一致する(面一とされる)。
【0058】
図2で示した第1実施形態と同様、第2実施形態の発光体31及び受光体33も、センサ10の軸方向から視て、それぞれの光軸31a,33aが、検出面21へ向かって次第に近接するように傾斜された状態で配置されている。これにより、センサ10の軸方向に対して、発光体31の光軸31aは傾斜角αで傾斜し、受光体33の光軸33aは傾斜角βで傾斜している。そして、これらの発光体31及び受光体33の光軸31a,33aは、検出面21で交差している。
なお、第2実施形態のセンサ10は、外輪230の両端部に近接する肉薄部に取付けられている為、第1実施形態に比べ、発光体31の光軸31aの傾斜角α及び受光体33の光軸33aの傾斜角βを大きくすることが出来る。
具体的には、傾斜角α及び傾斜角βはそれぞれ0°~45°の範囲とされている。なお、発光体31の光軸31aの傾斜角α及び受光体33の光軸33aの傾斜角βは、15°~30°で、かつ互いに同一角度(α=β)であるのが好ましい。
【0059】
センサ部30では、発光体31によって検出面21に付着した潤滑剤Gに光が照射される。そして、この検出面21と潤滑剤Gとの界面で反射した光が受光体33によって受光されると、受光体33は、受光した光を電気信号に変換して検出信号として出力する。
【0060】
ここで、潤滑剤Gは、基油の酸化や、添加剤の消耗、外輪軌道面231及び内輪軌道面241と円すいころ250との接触により発生する摩耗物の混入による劣化等によって、初期状態の色(着色料の色)から変化する。例えば、初期状態で褐色の潤滑剤Gは、劣化することで黒色に変化するため、明度が低下する。その結果、発光体31から照射される光が検出面21と潤滑剤Gとの界面で反射して受光体33へ到達する際の光量が減少する。受光体33に到達する反射光の照度は、受光体33からの検出信号の電圧に対して、例えば、比例関係を有する。したがって、受光体33に到達する反射光の照度が低下すると、受光体33から出力される検出信号の電圧が低下する。
【0061】
そして、検出装置は、この受光体33からの検出信号に基づき、受光体33での光量が低下し、検出信号の電圧が予め設定した閾値を下回った際に、潤滑剤Gが劣化したと判定する。例えば、検出装置は、潤滑剤Gの劣化状態を、要注意状態、要交換状態、あるいは寿命到達状態であると判定する。
【0062】
このように、第2実施形態に係る軸受装置200によれば、受光体33からの検出信号に基づいて、発光体31から照射されて検出面21と潤滑剤Gとの界面で反射した反射光の光量を検出するので、外乱の影響を受け難く、検出面21に付着している潤滑剤Gの状態を的確に把握できる。
また、発光体31及び受光体33は、検出面21で光軸31a,33aが交差するように本体部20に埋め込まれ、且つ、外輪230の径方向外側に配置される。したがって、特許文献1のように、発光素子及び受光素子が外方部材の内周面に設けられる場合と比較し、取付精度を高めることができ、配線作業や故障時の交換も容易になる。
また、発光体31及び受光体33は、外輪230の径方向外側に配置されるので、寸法が大きい汎用品であっても問題なく配置することができ、特注品を用いる必要がなくなるため、センサ10のコストを下げることができる。
【0063】
また、外輪230は、外輪230の内周面から外周面まで径方向に貫通する貫通孔233を有し、センサ10の本体部20は、互いに接続する径方向内側部23及び径方向外側部25を有し、径方向内側部23は検出面21を有し貫通孔233に挿入され、径方向外側部25は発光体31及び受光体33が埋め込まれ外輪230の外周面に配置される。
したがって、径方向内側部23を貫通孔233に挿入することで、センサ10を軸受装置100へ容易に精度良く固定できる。
【0064】
特に本実施形態では、センサ10が外輪230の軸方向両端部の張出部232に設けられるので、貫通孔233の径方向幅が第1実施形態の貫通孔108の径方向幅よりも短くなる。したがって、貫通孔233の施工が容易となり、加工コストを低減できる。なお、センサ10は、外輪230の軸方向両側の一対の張出部232、232のうち、両方に設けてもよく、一方に設けてもよい。
【0065】
軸受装置200の転動体としては、円すいころ250に限られるものではなく、例えば玉を適用しても構わない。しかしながら、本実施形態のように軸受装置200が円すいころ250を用いて円すいころ軸受タイプのハブユニット軸受の場合、貫通孔233が形成される外輪230の張出部232の径方向幅が、第1実施形態の貫通孔108が形成される外輪102の張出部102aの径方向幅に比べて短くなる。
【0066】
図7は、第2実施形態に係る軸受装置200をナックル280に取り付けた状態を示す図である。
図7に示すように、軸受装置200は、軸受取付穴281が軸方向に貫通していない盲孔のナックル280に取り付けられている。ナックル280が盲孔であるので、軸方向一方側(図中、右側)にはシール270(
図6参照)を設けなくてよい。
【0067】
ナックル280には、径方向に貫通する貫通孔283が設けられる。貫通孔283は、外輪230の貫通孔233と連続するように配置される。より詳細には、二つの貫通孔233,283の中心軸が一致するように配置される。
【0068】
このように、ナックル280に貫通孔283が設けられる場合、軸方向一方側(図中、右側)のセンサ10を、ナックル280に取り付けることが可能である。なお、軸方向他方側(図中、左側。)のセンサ10は、
図5で示した例と同様、外輪230に取り付けられる。
【0069】
センサ10の径方向内側部23は、径方向に延びる円柱形状であり、その径方向内側端部に検出面21を有する。本実施形態の径方向内側部23は、ナックル280の貫通孔283と略同一形状とされる。そして径方向内側部23が貫通孔283に挿入された際には、径方向内側部23の外周面及び径方向両端面が、ナックル280の貫通孔283の内周面及び径方向両端部の開口と略一致するように位置する。すなわち、径方向内側部23は貫通孔283に、隙間なく挿入される。
【0070】
センサ10の径方向外側部25は、ナックル280の外周面に形成された平面状のセンサ座面285に配置される。外輪230は焼入れ後研削されるが、センサ10の径方向外側部25を設置するために平面状とされるセンサ座面の存在は、研削加工の際に砥石の砥粒の脱落に対して有害である(粗さの悪化や輪郭の直線性に悪影響がでる)。ナックル280は焼入れも研削も行われない部品の為、比較的容易にセンサ座面285を加工することができる。
【0071】
なお、
図7に破線で示したように、センサ10は光軸が軸方向に延びるように配置しても構わない。この場合、ナックル280の貫通孔283は、ナックル280を軸方向に貫通するように設けられる。そして、この貫通孔283にセンサ10が配置される。図示の例では、センサ10は、円すいころ250の大径側端面251と軸方向に対向している。なお、貫通孔283内に固定されるセンサ10の軸方向内側部24は、軸方向に延びる円柱形状であり、その軸方向内側端部に検出面21を有する。軸方向内側部24は、ナックル280の貫通孔283と略同一形状とされる。そして軸方向内側部24が貫通孔283に挿入された際には、軸方向内側部24の外周面及び軸方向両端面が、ナックル280の貫通孔283の内周面及び軸方向両端部の開口と略一致するように位置する。すなわち、軸方向内側部24は貫通孔283に、隙間なく挿入される。センサ10の軸方向外側部26は、ナックル280の軸方向外側面に配置される。
【0072】
図8は、外輪230の貫通孔233の変形例を説明するための図である。
図8に示すように、貫通孔233は、径方向内側に配置されセンサ10の径方向内側部23と寸法が略等しい小径の内側部233aと、径方向外側に配置されセンサ10の径方向外側部25よりも寸法が僅かに大きい大径の外側部233bと、を有する。
【0073】
貫通孔233の内側部233aには、センサ10の径方向内側部23が挿入され、貫通孔233の外側部233bには、センサ10の径方向外側部25が載置される。このとき、センサ10の径方向外側部25は、外輪230の外径よりも内側に収まっている。したがって、センサ10とナックルハウジングとの干渉を避けることが可能である。
【0074】
(変形例2-1)
図9は、変形例2-1に係る軸受装置200における、
図6に相当する部分の拡大断面図である。
図10は、
図9のX-X線に沿った断面図である。本変形例のセンサ10は、
図9及び
図10に示すように、径方向内側部23を省略している。この場合、センサ10の検出面21は、径方向外側部25の径方向内側端面に設けられる。そして、外輪230の外周面を平面加工して設けたセンサ座面235に、検出面21でもある径方向外側部25の径方向内側端面を取り付けることができる。
【0075】
この構造によれば、発光体31と受光体33の光軸31a,33aの交差角を大きくとることで、発光体31と受光体33の干渉を防止しつつ、貫通孔233の径を抑制することができる。
【0076】
この場合、発光体31の光軸31aの傾斜角α及び受光体33の光軸33aの傾斜角βは、それぞれ0°~70°の範囲とされている。なお、発光体31の光軸31aの傾斜角α及び受光体33の光軸33aの傾斜角βは、20°~40°で、かつ互いに同一角度(α=β)であるのが好ましい。
【0077】
(変形例2-2)
次に、第2実施形態における変形例2-2について説明する。なお、上記第2実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明を省略する。
図11は、第2実施形態の変形例2-2に係る軸受装置200の断面図である。
【0078】
上述の第2実施形態においては、センサ10の本体部20の径方向内側部23に設けられた検出面21の径方向位置が、外輪230の張出部232の内周面の径方向位置と略一致していた(
図6参照)。しかしながら、
図11に示すように、センサ10の本体部20の径方向内側部23は、外輪230の張出部232よりも径方向内側に延在してもよい。この場合、検出面21は、第2実施形態(
図6)のように径方向内側部23の方向内側端部に径方向内側を向くように設けられても構わないが、
図11に示すように、径方向内側部23の径方向内側端部に軸方向内側を向くように設けられても構わない。
【0079】
本変形例の検出面21は、外輪軌道面231や円すいころ250の大径側端面251に対して軸方向に対向するように設けられている。これにより、センサ10は、外輪軌道面231から押し出された潤滑剤Gの劣化度合いを判定可能としている。
【0080】
なお、貫通孔233に径方向内側部23を挿入するため、径方向内側部23のうち貫通孔233に挿入される径方向外側の部分は円柱状とする必要がある。しかしながら、径方向内側部23のうち貫通孔233から径方向内側に突出した部分に形成された検出面21は、径方向内側部23の円柱形状の一部(
図11の左側部分)を軸方向内側に向くように平面状に切り欠くようにして設けられている。このように、検出面21を円筒面ではなく平面とすることで、受光体33に到達する反射光の散乱をさらに防止できる。
【0081】
本変形例においては、径方向内側部23内部の径方向内側端部に、発光体31及び受光体33の光軸31a,33aを変える鏡40が埋め込まれている。鏡40は、軸方向に対して45°傾いて配置されている。したがって、発光体31から径方向内向きに照射された出射光は、鏡40によってその向きが軸方向内向きに変えられ、検出面21に到達する。そして、検出面21と潤滑剤Gとの界面で軸方向外向きに反射した反射光は、鏡40によってその方向が径方向外向きに変えられ、受光体33に到達する。このように、本変形例においても、検出面21で発光体31及び受光体33の光軸31a,33aが交差するように構成されている。
【0082】
なお、センサ10は、発光体31、受光体33、鏡40、検出面21まで一体的に設けられているので、屈折(光の波長で屈折率が変化すること)の発生が防止され、受光体33に到達する反射光の散乱が防止される。
【0083】
検出面21は、円すいころ250の大径側端面251の接線と平行となるようにテーパ形状としてもよい。このようにすれば、円すいころ250の大径側端面251と検出面21との距離を縮められ、検出面21へ潤滑剤Gを付着させやすくできるとともに、検出面21に付着する潤滑剤Gの入れ替わりを促進できる。しかも、検出面21に付着する潤滑剤Gによって円すいころ250の大径側端面251が潤滑され、潤滑剤Gの大鍔部243の大鍔面243bへの還流が促進されるので、軸受装置200におけるトルクを低減し、焼付きを抑制できる。
【0084】
(変形例2-3)
次に、第2実施形態における変形例2-2について説明する。なお、上記第2実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明を省略する。
図12は、第2実施形態の変形例2-3に係る軸受装置200の断面図である。
【0085】
本変形例では、外輪230にセンサ10を固定するための貫通孔233が設けられないので、貫通孔233の加工コストが不要となる。
【0086】
センサ10は、外輪230の軸方向端部の張出部232に配置され、全体として断面略L字形状を呈する。センサ10の本体部20は、互いに接続する径方向内側部23及び径方向外側部25を有する。径方向内側部23は、外輪230の張出部232の内周面に内嵌固定され、外輪230よりも軸方向外側まで軸方向に延在する断面略直線形状である。径方向外側部25は、径方向内側部23の軸方向外側端部から径方向外側に延在する断面略直線形状であり、外輪230の張出部232と軸方向に当接する。径方向外側部25は、外輪230の張出部232よりも径方向外側に突出し、この突出部分に発光体31及び受光体33が埋め込まれる。
【0087】
本変形例の検出面21は、軸方向に延びる径方向内側部23に設けられ、外輪軌道面231や円すいころ250の大径側端面251に対して軸方向に対向する。これにより、センサ10は、外輪軌道面231から押し出された潤滑剤Gの劣化度合いを判定可能としている。
【0088】
本変形例においては、径方向内側部23内部の軸方向外側端部に、発光体31及び受光体33の光軸31a,33aを変える鏡40が埋め込まれている。鏡40は、軸方向に対して45°傾いて配置されている。したがって、発光体31から径方向内向きに照射された出射光は、鏡40によってその方向が軸方向内向きに変えられ、検出面21に到達する。そして、検出面21と潤滑剤Gとの界面で軸方向外側に向かって反射した反射光は、鏡40によってその方向が径方向外向きに変えられ、受光体33に到達する。このように、本変形例においても、検出面21で発光体31及び受光体33の光軸31a,33aが交差するように構成されている。なお、検出面21は、円すいころ250の大径側端面251の接線と平行となるようにテーパ形状としてもよい。
【0089】
軸受空間Sを封止する組合せシール270は、センサ10の径方向内側部23の内周面と、内輪242の大鍔部243の外周面243aと、の間に設けられている。この場合、センサ10は、内周面が組合せシール270の嵌合面となるため、外輪230の張出部232への圧入後に組合せシール270を圧入すると、この圧入する組合せシール270によってセンサ10が軸方向へ移動してしまうおそれがある。したがって、センサ10に対して予め芯金274を圧入することで組合せシール270を組付け、これらセンサ10及び組合せシール270を同時に、内輪242の大鍔部243と外輪230の張出部232との間の空間に嵌合するのが好ましい。これにより、センサ10及び組合せシール270を、内輪242の大鍔部243と外輪230の張出部232との間の適切な位置に固定できる。
【0090】
なお、
図12に示すように、センサ10の径方向内側部23の内周部に、組合せシール270の芯金274を係止する係止部23aが、径方向内側に突出するように形成されてもよい。これにより、互いに組付けたセンサ10及び組合せシール270を、内輪242の大鍔部243と外輪230の張出部232との間の空間に嵌合する際の圧入性を高めることができる。なお、組合せシール270の芯金274は、センサ10の径方向内側部23に対してモールド固定してもよい。
【0091】
(変形例2-4)
次に、第2実施形態における変形例2-4について説明する。なお、上記第2実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明を省略する。
図13は、第2実施形態の変形例2-4に係る軸受装置200の断面図である。
【0092】
本変形例2-4においては、上述の変形例2-3の鏡40に代えて、センサ10の本体部20に、発光体31及び受光体33と検出面21との間に面取り50が形成される。当該面取り50は、光軸31a,33aの方向を変える鏡面とされる。面取り50は、軸方向に対して45°傾くように形成されている。
【0093】
面取り50の鏡面加工は、銀、錫、アルミ等の鏡に使用できる金属材料を蒸着、真空鍍金で表面に固定する方法や、ミラースプレー吹付などの方法で行われる。鏡面加工の方法は特に限定されず、切削加工による鏡面加工や、研磨加工による鏡面加工を適用しても構わない。鏡面加工後、エナメルやシーリング材の塗布で面取り50を保護すれば、鏡40を埋め込む場合に比べ、安価に光軸31a,33aを曲げる機能を得ることができる。
【0094】
(変形例2-5)
次に、第2実施形態における変形例2-5について説明する。なお、上記第2実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明を省略する。
図14は、第2実施形態の変形例2-5に係る軸受装置200の断面図である。
【0095】
本変形例2-5のセンサ10は、変形例2-3(
図12参照)の断面略L字形状のセンサ10と比較し、断面略U字形状とした点で異なる。
【0096】
本変形例のセンサ10は、外輪230の軸方向端部の張出部232に配置され、全体として断面略U字形状を呈する。センサ10の本体部20は、互いに接続する径方向内側部23及び径方向外側部25を有する。径方向内側部23は、外輪230の張出部232の内周面に内嵌固定され、外輪230よりも軸方向外側まで軸方向に延在する断面略直線形状である。
【0097】
径方向外側部25は、径方向内側部23の軸方向外側端部から径方向外側に延在する第一部分25aと、第一部分25aの径方向外側端部から軸方向内側に延在する第二部分25bと、を有する断面略L字形状である。
【0098】
径方向外側部25の第一部分25aは、外輪230の張出部232と軸方向に当接する。第二部分25bの軸方向内側端部には、発光体31及び受光体33が埋め込まれる。
【0099】
また、本変形例の外輪230の外周面においては、軸方向端部の張出部232の外径が他の部分と比較して小径とされており、当該張出部232の外周面が小径段部232aとされている。この小径段部232aに径方向外側部25の第二部分25bが外嵌固定される。第二部分25bの外周面の外径は、外輪230の外周面の外径と略等しく、したがって、第二部分25bの外周面と外輪230の外周面とは面一とされる。
【0100】
径方向内側部23内部の軸方向外側端部と、径方向外側部25内部の第一部分25a及び第二部分25bの接続部と、にはそれぞれ、発光体31及び受光体33の光軸31a,33aを変える鏡40が埋め込まれている。鏡40は、軸方向に対して45°傾いて配置されている。したがって、発光体31から軸方向外側に向けて照射された出射光は、一対の鏡40,40によってその方向が径方向内向き及び軸方向内向きに順次変えられ、検出面21に到達する。そして、検出面21と潤滑剤Gとの界面で軸方向外側に向かって反射した反射光は、一対の鏡40,40によってその方向が径方向外向き及び軸方向内向きに順次変えられ、受光体33に到達する。なお、検出面21は、円すいころ250の大径側端面251の接線と平行となるようにテーパ形状としてもよい。
【0101】
以上のように、本変形例においては、外輪230の外周面に小径段部232aを設け、この小径段部232aに発光体31及び受光体33が埋め込まれた本体部20を配置可能であるので、センサ10がナックル寸法へ与える影響を少なくできる。すなわち、センサ10とナックルの干渉部分を減らし、ナックルの部分除肉部を減らすことができる。なお、部分除肉はフライス加工が必要で、旋削に比べて著しくコストが上昇する。このように、ナックルのコスト低減可能であると共に、ハブユニット軸受の組付け時、センサ10とナックルが不用意に衝突してセンサ10の抜けや破損が生じることが防止される。
【0102】
(変形例2-6)
次に、第2実施形態における変形例2-6について説明する。なお、上記第2実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明を省略する。
図15は、第2実施形態の変形例2-6に係る軸受装置200の断面図である。
【0103】
本変形例2-6においては、上述の変形例2-5の一対の鏡40,40に代えて、センサ10の本体部20に、発光体31及び受光体33と検出面21との間に一対の面取り50,50が形成される。当該面取り50は、光軸31a,33aの方向を変える鏡面とされる。面取り50は、軸方向に対して45°傾くように形成されている。
【0104】
面取り50の鏡面加工は、銀、錫、アルミ等の鏡に使用できる金属材料を蒸着、真空鍍金で表面に固定する方法や、ミラースプレー吹付などの方法で行われる。鏡面加工の方法は特に限定されず、切削加工による鏡面加工や、研磨加工による鏡面加工を適用しても構わない。鏡面加工後、エナメルやシーリング材の塗布で面取り50を保護すれば、鏡40を埋め込む場合に比べ、安価に光軸31a,33aを曲げる機能を得ることができる。
【0105】
(第3実施形態)
図16は、第3実施形態に係る軸受装置100Aの断面図である。
図16に示すように、第3実施形態に係る軸受装置100Aは、転動体が円すいころ250である第3世代のハブユニット軸受であり、転動体が玉105であった第1実施形態の軸受装置100(
図1参照)と主要部分の構成は同様である。したがって、第1実施形態の軸受装置と同一部分に関しては、図面に同一符号を付すことでその説明を省略する。
【0106】
外輪102の軸方向両端部の張出部102aには、その内周面から外周面まで径方向に貫通する貫通孔108が形成される。貫通孔108はそれぞれ、軸方向において、外輪軌道面101とシール107,107aとの間に配置される。貫通孔108は、径方向に延びる円柱形状である。アウトボード側の貫通孔108には、センサ10の径方向内側部23が挿入されて固定される。
【0107】
図16には、第3実施形態に係る軸受装置100Aをナックル280に取り付けた状態が示されている。ナックル280と外輪102の軸方向における間には、ブレーキシュー等の各種ブレーキ部品が装着されるバッキングプレート112が支持固定される。
【0108】
ナックル280には、径方向に貫通する貫通孔283が設けられる。貫通孔283は、外輪102のインボード側の貫通孔108と連続するように配置される。そして、二つの貫通孔283,108の中心軸が一致するように配置される。
【0109】
このように、ナックル280に貫通孔283が設けられる場合、インボード側のセンサ10を、ナックル280に取り付けることが可能である。なお、アウトボード側のセンサ10は、外輪102に取り付けられる。
【0110】
本実施形態の軸受装置100Aの外輪102には、さらに、少なくとも一つの観察用貫通孔111が設けられる。図示の例では、一対の観察用貫通孔111,111が、外輪102の軸方向両端部の張出部102aに、その内周面から外周面まで径方向に貫通するように形成される。観察用貫通孔111はそれぞれ、軸方向において、外輪軌道面101,101とシール107,107aとの間に配置される。これら一対の観察用貫通孔111,111は、上述した貫通孔108とは周方向において異なる位相に配置される。なお、
図16に破線で示すように、観察用貫通孔111は、列間(一対の外輪軌道面101,101の間)に設けても構わない。
【0111】
観察用貫通孔111は任意の形状であってよく、例えば径方向から見た形状が丸孔であってもよく、径方向から見た形状が軸方向に長い長孔形状であってもよい。
【0112】
観察用貫通孔111には、潤滑剤劣化検出窓材120が挿入されて固定される。これにより、軸受空間S内の潤滑剤の色相を目視確認することができる。潤滑剤劣化検出窓材120は、例えば、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などの耐熱性が高く、透光性を有する樹脂から形成される。
【0113】
図17は、観察用貫通孔111の径方向から見た形状が丸孔である場合、観察用貫通孔111に嵌め込まれる潤滑剤劣化検出窓材120を径方向から見た図である。
図17の潤滑剤劣化検出窓材120は、径方向から見て丸形であり、径方向外側から順に複数のシグナルカラー123、複数の色見本122、及び透明部124が配置されて、インジケータを構成している。
【0114】
図18は、観察用貫通孔111の径方向から見た形状が軸方向に長い長孔形状である場合、観察用貫通孔111に嵌め込まれる潤滑剤劣化検出窓材120を径方向から見た図である。
図18の潤滑剤劣化検出窓材120は、径方向から見て軸方向に長い、長孔に対応する形状である。潤滑剤劣化検出窓材120は、軸方向一方側から順に、複数のシグナルカラー123、複数の色見本122、及び複数の透明部124が周方向に繰り返し配置されてインジケータを構成している。
【0115】
潤滑剤劣化検出窓材120の径方向内側面は潤滑剤が付着する面であり、軸受空間S内の潤滑剤の色相は、透明部124を介して目視可能となる。複数の色見本122は、透明部124を介して目視される潤滑剤の色相と比較するためのものであり、潤滑剤の劣化度に応じた色、例えば、白色122a(新品状態)、薄茶色122b(熱劣化を受けた状態)、黒色122c(軸受にフレーキング等の損傷が生じた状態)、濃茶色122d(軸受空間S内に水侵入した状態)、がこの順で配置される。また、シグナルカラー123は、潤滑剤の劣化度により監視者に指示を与えるものであり、例えば、緑色(問題なし)123a、黄色(要注意)123b、赤色(寿命の為、要交換)123c、紫色(水侵入の為、要交換)123dが配置される。
【0116】
そして、潤滑剤劣化検出窓材120の径方向内側面に付着させた潤滑剤の色相を径方向外側から定期点検時などに目視で観察し、色見本122と比べることで、潤滑剤の劣化度を判定する。
【0117】
即ち、潤滑剤は、基油の酸化劣化、添加剤の消耗、軌道面や大鍔面と円すいころの接触によりから発生する摩耗分の混入により、新品状態の色(例えば白)から褐色を経て黒色へと変化してゆく。その変化する潤滑剤の色相を色見本122と比較することで、グリースの劣化状態を判断することができる。
【0118】
本実施形態のセンサ10は発光体31から発射される光を検出面21に付着した潤滑剤で反射させ、その反射量を受光体33で測定し、潤滑剤の劣化量を判定しているが、光の反射量は、潤滑剤の色だけでなく、検出面21に付着した潤滑剤の厚さにも影響される。即ち、検出面21に付着した潤滑剤が薄いと、潤滑剤を透過する光の量が増え、反射量が減り、同じ色の潤滑剤であっても受光体がより劣化が進んだ(色が濃い、反射光が少ない)状態と判定する虞がある。しかしながら、潤滑剤劣化検出窓材120を設けた本実施形態の場合は、潤滑剤の外観観察が可能になる為、受光体33の誤報を補うことができる。
【0119】
なお、軸受装置100が、内輪回転の第2世代のハブユニットまたは第3世代のハブユニットである場合には、軸受装置100の外輪102とナックル280の取付け位相が一義的に決まる為、ナックル280を介してのセンサ挿入や潤滑剤観察も可能である。
図16には、ナックル280に、観察用貫通孔111と周方向及び軸方向において重なる位置に、径方向に貫通する観察用貫通孔287が設けられた例が示されている。この観察用貫通孔287を介して、外輪102の観察用貫通孔111に固定された潤滑剤劣化検出窓材120を用いて潤滑剤観察が可能である。
【0120】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0121】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 内周面に外輪軌道面を有する外輪部材と、
外周面に内輪軌道面を有する内輪部材と、
前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間の軌道に転動自在に設けられた複数の転動体と、
前記外輪部材の前記内周面と前記内輪部材の前記外周面との間の軸受空間内に配置された潤滑剤と、
前記潤滑剤の状態を検出するセンサと、
を備える軸受装置であって、
前記センサは、
前記潤滑剤が接触する検出面を有する透光性樹脂からなる本体部と、
前記本体部に埋め込まれて前記検出面へ向かって光を照射する発光体と、
前記本体部に埋め込まれて前記検出面と前記潤滑剤との界面で反射する光を受光して検出信号を出力する受光体と、
を有し、
前記発光体及び前記受光体は、前記検出面で光軸が交差するように前記本体部に埋め込まれ、且つ、前記外輪部材の径方向外側に配置される
軸受装置。
(2) 前記外輪部材は、前記外輪部材の前記内周面から外周面まで径方向に貫通する貫通孔を有し、
前記センサの前記本体部は、互いに接続する径方向内側部及び径方向外側部を有し、
前記径方向内側部は、前記検出面を有し、前記貫通孔に挿入され、
前記径方向外側部は、前記発光体及び前記受光体が埋め込まれ、前記外輪部材の前記外周面に配置される
(1)に記載の軸受装置。
(3) 前記センサは、前記外輪部材の軸方向端部に配置され、
前記センサの前記本体部は、互いに接続する径方向内側部及び径方向外側部を有し、
前記径方向内側部は、前記外輪部材の前記軸方向端部の内周面に内嵌され、前記外輪部材よりも軸方向外側まで延在し、
前記径方向外側部は、前記径方向内側部の軸方向外側端部から径方向外側に延在し、前記発光体及び前記受光体が埋め込まれる、
(1)に記載の軸受装置。
(4) 前記センサの内周面と前記内輪部材との間に、前記軸受空間を封止するシール部材が設けられている、
(3)に記載の軸受装置。
(5) 前記センサの前記本体部には、前記発光体及び前記受光体と、前記検出面と、の間に、光軸の方向を変える鏡が埋め込まれる
(1)~(4)のいずれか一つに記載の軸受装置。
(6) 前記センサの前記本体部には、前記発光体及び前記受光体と、前記検出面と、の間に、面取りが形成され、
前記面取りは、光軸の方向を変える鏡面である、
(1)~(4)のいずれか一つに記載の軸受装置。
(7) (1)~(6)のいずれか一つに記載の軸受装置における潤滑剤状態検出方法であって、
前記センサの前記発光体から光を照射させ、
前記センサの前記受光体からの検出信号に基づいて、前記検出面と前記潤滑剤との界面で反射した前記発光体の反射光の光量を検出し、
前記光量に基づいて、前記潤滑剤の劣化状態を判定する、
潤滑剤状態検出方法。
【符号の説明】
【0122】
10 センサ
20 本体部
21 検出面
23 径方向内側部
23a 係止部
24 軸方向内側部
25 径方向外側部
25a 第一部分
25b 第二部分
26 軸方向外側部
30 センサ部
31 発光体
31a 光軸
33 受光体
33a 光軸
40 鏡
50 面取り
100 軸受装置
101 外輪軌道面
102 外輪(外輪部材)
102a 張出部(軸方向端部)
102b フランジ部
102c 孔
103 内輪軌道面
104 内輪部材
104a 内輪
104b フランジ部
104c 孔
104d 小径段部
104e ハブ輪
105 玉(転動体)
106 保持器
107 シール(シール部材)
107a 組合せシール(シール部材)
108 貫通孔
108a 開口
109 座面
110 ボルト
111 観察用貫通孔
112 バッキングプレート
120 潤滑剤劣化検出窓材
122 色見本
123 シグナルカラー
124 透明部
200 軸受装置
230 外輪(外輪部材)
231 外輪軌道面
232 張出部(軸方向端部)
232a 小径段部
233 貫通孔
235 センサ座面
240 内輪部材
241 内輪軌道面
242 内輪
243 大鍔部
243a 外周面
243b 大鍔面
244 小鍔部
250 円すいころ(転動体)
251 大径側端面
252 小径側端面
253 転動面
260 保持器
261 大径側円環部
262 小径側円環部
263 柱部
264 ポケット
270 組合せシール(シール部材)
271 シールリング
272 スリンガ
273 エンコーダ
274 芯金
275 弾性材
280 ナックル
281 軸受取付穴
283 貫通孔
285 センサ座面
287 観察用貫通孔
G 潤滑剤
O 回転軸
S 軸受空間