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特開2024-119350発電制御装置、発電制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119350
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】発電制御装置、発電制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60L 1/00 20060101AFI20240827BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240827BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240827BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240827BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240827BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240827BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240827BHJP
   B60L 58/30 20190101ALI20240827BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20240827BHJP
【FI】
B60L1/00 L
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/0432
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
B60L50/60
B60L58/12
B60L58/30
B60L50/70
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026179
(22)【出願日】2023-02-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】吉永 寛史
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD02
5H125CD05
5H125EE27
5H125EE36
5H125EE70
5H125FF21
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC15
5H127BA02
5H127BB02
5H127DB53
5H127DB99
5H127DC79
5H127DC96
5H127DC97
(57)【要約】
【課題】開回路電圧を回避しつつ、電力が必要な負荷に電力を供給する。
【解決手段】発電制御装置20は、車両に電力を供給する燃料電池スタック及びバッテリの電力供給を制御する発電制御装置20であって、燃料電池スタックの電圧とバッテリの充電率とを取得する取得部221と、電圧が第1閾値より大きく、かつ充電率が第2閾値以下である場合には、燃料電池スタックからバッテリに電力を供給させ、電圧が第1閾値より大きく、かつ充電率が第2閾値より大きい場合には、燃料電池スタックから車両が備える冷凍機の第1コンプレッサに電力を供給させる供給制御部231と、を有する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に電力を供給する燃料電池スタック及びバッテリの電力供給を制御する発電制御装置であって、
前記燃料電池スタックの電圧と前記バッテリの充電率とを取得する取得部と、
前記電圧が第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値以下である場合には、前記燃料電池スタックから前記バッテリに電力を供給させ、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が前記第2閾値より大きい場合には、前記燃料電池スタックから前記車両に搭載された架装物に電力を供給させる供給制御部と、
を有する発電制御装置。
【請求項2】
前記架装物は、第1コンプレッサを有し、冷却機能を備える設備であって、
前記供給制御部は、前記電圧が前記第1閾値より大きく、且つ前記充電率が前記第2閾値より大きい場合には、前記燃料電池スタックから前記第1コンプレッサに電力を供給させる、
請求項1に記載の発電制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記架装物が備える蓄冷器の温度を取得し、
前記供給制御部は、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が前記第2閾値より大きい場合に、前記蓄冷器の温度が第3閾値より大きいことを条件として前記第1コンプレッサに電力を供給させる、
請求項2に記載の発電制御装置。
【請求項4】
前記供給制御部は、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が前記第2閾値より大きい場合に、前記蓄冷器の温度が前記第3閾値以下であることを条件として、前記第1コンプレッサと異なる第2コンプレッサに電力を供給させる、
請求項3に記載の発電制御装置。
【請求項5】
前記供給制御部は、前記第1コンプレッサへの電力の供給を開始させた後に、前記電圧が前記第1閾値以下の第4閾値より大きい場合、前記第1コンプレッサに供給する電力量を大きくする、
請求項2に記載の発電制御装置。
【請求項6】
前記供給制御部は、前記バッテリ又は前記第1コンプレッサへの電力の供給を開始させた後に、前記電圧が前記第1閾値以下の第4閾値以下に変化したことを条件として、前記バッテリ又は前記第1コンプレッサへの電力の供給を停止させる、
請求項2に記載の発電制御装置。
【請求項7】
車両が備えるプロセッサが実行する、
燃料電池スタックの電圧とバッテリの充電率とを取得するステップと、
前記電圧が第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値以下である場合には、前記燃料電池スタックから前記バッテリに電力を供給させ、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値より大きい場合には、前記燃料電池スタックから前記車両に搭載された架装物に電力を供給させるステップと、
を有する発電制御方法。
【請求項8】
車両が備えるプロセッサに、
燃料電池スタックの電圧とバッテリの充電率とを取得するステップと、
前記電圧が第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値以下である場合には、前記燃料電池スタックから前記バッテリに電力を供給させ、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値より大きい場合には、前記燃料電池スタックから前記車両に搭載された架装物に電力を供給させるステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電制御装置、発電制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の燃料電池システムは、車両内の当該燃料電池システムが停止されたときに、ドライブトレイン等の主負荷に供給していた電力を補助負荷に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5091584号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池システムの停止時に、主負荷に供給していた電力を補助負荷に供給することで開回路電圧を回避することができる。しかしながら、補助負荷が電力を必要としない場合であっても補助負荷に電力を供給してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、開回路電圧を回避しつつ、電力が必要な負荷に電力を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る発電制御装置は、車両に電力を供給する燃料電池スタック及びバッテリの電力供給を制御する発電制御装置であって、前記燃料電池スタックの電圧と前記バッテリの充電率とを取得する取得部と、前記電圧が第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値以下である場合には、前記燃料電池スタックから前記バッテリに電力を供給させ、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が前記第2閾値より大きい場合には、前記燃料電池スタックから前記車両に搭載された架装物に電力を供給させる供給制御部と、を有する。
【0007】
前記架装物は、第1コンプレッサを有し、冷却機能を備える設備であって、前記供給制御部は、前記電圧が前記第1閾値より大きく、且つ前記充電率が前記第2閾値より大きい場合には、前記燃料電池スタックから前記第1コンプレッサに電力を供給させてもよい。
【0008】
前記取得部は、前記架装物が備える蓄冷器の温度を取得し、前記供給制御部は、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が前記第2閾値より大きい場合に、前記蓄冷器の温度が第3閾値より大きいことを条件として前記第1コンプレッサに電力を供給させてもよい。
【0009】
前記供給制御部は、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が前記第2閾値より大きい場合に、前記蓄冷器の温度が前記第3閾値以下であることを条件として、前記第1コンプレッサと異なる第2コンプレッサに電力を供給させてもよい。
【0010】
前記供給制御部は、前記第1コンプレッサへの電力の供給を開始させた後に、前記電圧が前記第1閾値以下の第4閾値より大きい場合、前記第1コンプレッサに供給する電力量を大きくしてもよい。
【0011】
前記供給制御部は、前記バッテリ又は前記第1コンプレッサへの電力の供給を開始させた後に、前記電圧が前記第1閾値以下の第4閾値以下に変化したことを条件として、前記バッテリ又は前記第1コンプレッサへの電力の供給を停止させてもよい。
【0012】
本発明の第2の態様に係る発電制御方法は、車両が備えるプロセッサが実行する、燃料電池スタックの電圧とバッテリの充電率とを取得するステップと、前記電圧が第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値以下である場合には、前記燃料電池スタックから前記バッテリに電力を供給させ、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値より大きい場合には、前記燃料電池スタックから前記車両に搭載された架装物に電力を供給させるステップと、を有する。
【0013】
本発明の第3の態様に係るプログラムは、車両が備えるプロセッサに、燃料電池スタックの電圧とバッテリの充電率とを取得するステップと、前記電圧が第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値以下である場合には、前記燃料電池スタックから前記バッテリに電力を供給させ、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値より大きい場合には、前記燃料電池スタックから前記車両に搭載された架装物に電力を供給させるステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、開回路電圧を回避しつつ、電力が必要な負荷に電力を供給するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
図2】発電制御装置20の構成を示す図である。
図3】FCスタック1が負荷に電力を供給する動作を説明するための図である。
図4】発電制御装置20における処理シーケンスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<車両Sの概要>
図1は、本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。図1に示す車両Sは、FC(Fuel Cell)スタック1a、1b、1cと、FCVCU(Fuel Cell Vehicle Control Unit)2と、バッテリ3a、3b、3cと、バッテリVCU(Vehicle Control Unit)4と、インバータ5と、モータ6と、駆動輪12と、発電制御装置20と、を備える。車両Sは、架装物Kを搭載した車両であり、FCスタック1a、1b、1c及びバッテリ3a、3b、3cからモータ6及び第1コンプレッサ7に電力を供給する機能を有する。架装物Kは、冷蔵設備又は冷凍設備のような、冷却するための設備を有する。架装物Kは、例えば、積載物を冷却、もしくは冷凍した状態で搬送するための、冷蔵庫又は冷凍庫である。架装物Kは、第1コンプレッサ7と、凝縮器8と、膨張弁9と、蓄冷器10と、温度センサ11と、を有する。架装物Kは、FCスタック1及びバッテリ3の少なくとも一方から電力を供給されることにより稼働する。
【0017】
FCスタック1a、1b、1c(以下、「FCスタック1」という場合がある)は、複数の燃料電池セルを積層(スタック)した燃料電池スタックであり、例えば、水素ガス等の燃料ガスと、空気中の酸素等の酸化剤ガスとの化学反応により発電を行う。FCスタック1は、発電した電気をモータ6又は第1コンプレッサ7に供給する。FCスタック1は、FCVCU2を介して電力を出力する。
【0018】
FCVCU2は、FCスタック1の発電量とFCスタック1からモータ6又は第1コンプレッサ7に供給する電気の供給量とを決定する処理、及びFCスタック1の電圧を検出する処理を実行する。FCVCU2は、電子部品を含む筐体を有していてもよく、電子部品が実装されたプリント基板であってもよい。
【0019】
バッテリ3a、3b、3c(以下、「バッテリ3」という場合がある)は、充放電可能な蓄電池であり、モータ6、第1コンプレッサ7又は車両Sが備える電装品(不図示)に電気を供給する。また、バッテリ3は、FCスタック1が発電した電気とモータ6が発生した回生電力とを充電する。バッテリ3は、バッテリVCU4を介して充放電を行う。
【0020】
バッテリVCU4は、バッテリ3からモータ6、第1コンプレッサ7又は車両Sが備える電装品に供給する電気の供給量を決定する処理、及びバッテリ3の充電率を検出する処理を実行する。バッテリVCU4は、電子部品を含む筐体を有していてもよく、電子部品が実装されたプリント基板であってもよい。
【0021】
インバータ5は、FCスタック1及びバッテリ3が出力した直流の電流を交流の電流に変換してモータ6に出力する。モータ6は、FCスタック1及びバッテリ3が出力した電気を、インバータ5を介して取得し、車両Sの駆動輪12を駆動するための動力を発生させる動力源である。モータ6は、車両Sがブレーキ(不図示)を用いて減速する場合に回生電力を発生し、インバータ5を介してバッテリ3に電気を供給する。
【0022】
第1コンプレッサ7、凝縮器8、膨張弁9及び蓄冷器10は、車両Sが備える冷蔵設備又は冷凍設備に用いられる。第1コンプレッサ7は、冷媒を圧縮して凝縮器8に送るための圧縮機である。凝縮器8は、第1コンプレッサ7から取得した冷媒と外部の空気とを熱交換することにより冷媒を凝縮させる熱交換器である。膨張弁9は、凝縮器8から取得した冷媒を噴霧することで減圧し、冷媒の流量を調整する調整弁である。蓄冷器10は、膨張弁9が噴霧した冷媒を気化させて周囲の熱を吸収することにより、車両Sが備える保冷コンテナ等に備えられた冷凍板を凍結させる。温度センサ11は、蓄冷器10が凍結させる冷凍板の温度を検出する。
【0023】
発電制御装置20は、FCスタック1が発電した電気及びバッテリ3が充電している電気を、モータ6又は第1コンプレッサ7に供給するか否かを決定する処理を実行する。モータ6又は第1コンプレッサ7に供給することを決定した場合、発電制御装置20は、FCスタック1が発電した電気をFCVCU2に供給させ、バッテリ3が充電している電気をバッテリVCU4に供給させる。発電制御装置20は、電子部品を含む筐体を有していてもよく、電子部品が実装されたプリント基板であってもよい。
【0024】
ところで、FCスタック1においては、触媒金属として用いられる白金がカーボン担体に塗布されている。白金は、FCスタック1を開回路電圧に近い電圧で動作させるとカーボン担体の劣化が進むことによりカーボン担体から脱落する。開回路電圧は、FCスタック1からモータ6及び第1コンプレッサ7等の負荷に電流が流れていない場合の電圧である。したがって、車両Sの停止時又はアイドリング時のように、モータ6に電気を供給しないことによりFCスタック1の電圧が開回路電圧に近くなる場合は、白金のカーボン担体からの脱落によりFCスタック1が劣化しやすくなる。
【0025】
そこで、車両Sの停止時又はアイドリング時には、バッテリ3にFCスタック1から電力を供給することにより、FCスタック1の電圧が開回路電圧に近くなることを回避できる。しかしながら、バッテリ3が電気を必要としない状態(すなわち、充電率が高くて充電できない状態)であっても電力を供給してしまうという問題が生じ得る。この問題を解決するために、発電制御装置20は、FCスタック1の電圧とバッテリ3の充電率とに基づいて、バッテリ3に電力を供給するか否かを決定し、バッテリ3に電力を供給しない場合は、第1コンプレッサ7に電力を供給することを決定する。このように動作することで、FCスタック1の開回路電圧を回避しつつ、電力が必要な負荷に電力を供給できる。
以下、発電制御装置20の構成及び動作を詳細に説明する。
【0026】
<発電制御装置20の構成>
図2は、発電制御装置20の構成を示す図である。発電制御装置20は、記憶部21と、制御部22と、を有する。制御部22は、取得部221と、供給制御部231と、を有する。供給制御部231は、決定部222と、供給指示部223と、を有する。
【0027】
記憶部21は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部21は、制御部22が実行するプログラムを記憶している。記憶部21は、FCスタック1が発生した電力を供給する負荷を決定するための各種の情報を記憶している。
【0028】
制御部22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサである。制御部22は、記憶部21に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部221及び供給制御部231として機能する。なお、制御部22は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
以下、制御部22により実現される各部の構成を説明する。
【0029】
取得部221は、FCスタック1の電圧とバッテリ3の充電率と車両Sが備える蓄冷器10の温度とを取得する。例えば、取得部221は、FCVCU2が検出したFCスタック1の電圧と、バッテリVCU4が検出したバッテリ3の充電率と、温度センサ11が検出した、蓄冷器10が有する冷凍板の温度とを取得する。FCスタック1の電圧は、例えば、FCスタック1に含まれる複数の燃料電池セルの電圧の平均値である。
【0030】
決定部222は、車両Sの停止時又はアイドリング時(すなわち、FCスタック1がモータ6に電力を供給しない時間)において、FCスタック1が発生した電力を供給する供給先を決定する。決定部222は、FCスタック1の電圧が第1閾値より大きく、かつバッテリ3の充電率が第2閾値以下である場合には、FCスタック1からバッテリ3に電力を供給することを決定する。第1閾値は、FCスタック1に含まれる各燃料電池セルの電圧の範囲(例えば0.8V~0.9V)と、FCスタック1に含まれる燃料電池セルの数とに基づいて決定された値である。第1閾値は、記憶部21に記憶されていてもよいし、決定部222が記憶部21を参照することにより各燃料電池セルの電圧の範囲と燃料電池セルの数とを特定し、算出してもよい。第2閾値は、バッテリ3が充放電可能な充電容量の範囲(例えば、30%~90%)の上限値であり、記憶部21に記憶されている。
【0031】
図3は、FCスタック1が供給先に電力を供給する動作を説明するための図である。図3(a)は、FCスタック1の電圧を示し、図3(b)は、バッテリ3の充電率を示し、図3(c)は、蓄冷器10の温度を示す。図3の横軸は時刻を示し、図3(a)の縦軸は電圧、図3(b)の縦軸は充電率、図3(c)の縦軸は温度を示す。図3(a)に示す「OCV」は開回路電圧であり、「A1」は第1閾値A1であり、「A4」は第4閾値A4である。図3(b)に示す「A2」は第2閾値A2である。図3(c)に示す「A3」は第3閾値A3である。第3閾値A3及び第4閾値A4については、後述する。
【0032】
時刻T1において、決定部222は、FCスタック1の電圧V1が第1閾値A1より大きく、かつバッテリ3の充電率L1が第2閾値A2以下であることを特定し、FCスタック1からバッテリ3に電力を供給することを決定する。時刻T1から時刻T2において、決定部222は、FCVCU2及びバッテリVCU3を介して、FCスタック1が発生した電力をバッテリ3に充電させる。時刻T2において、決定部222は、バッテリ3の充電率L2が第2閾値A2を超えたことを特定し、FCスタック1からバッテリ3への電力の供給を停止する。
【0033】
決定部222が上記のように動作することで、車両Sの停止時又はアイドリング時において、バッテリ3に充電することが可能な場合にFCスタック1が発生した電力をバッテリ3に供給することができる。その結果、FCスタック1の電圧が開回路電圧に近くなることを回避しつつ、バッテリ3に充電可能な電気を供給できる。
【0034】
決定部222は、FCスタック1の電圧が第1閾値A1より大きく、かつバッテリ3の充電率が第2閾値A2より大きい場合には、FCスタック1から架装物Kが備える冷凍機又は冷蔵機の第1コンプレッサ7に電力を供給することを決定する。決定部222は、例えば、FCスタック1の電圧が第1閾値A1より大きく、かつバッテリ3の充電率が第2閾値A2より大きい場合に、蓄冷器10の温度が第3閾値A3より大きいことを条件として第1コンプレッサ7に電力を供給することを決定する。第3閾値A3は、蓄冷器10の冷却下限温度であり、例えば、冷凍機であれば-30℃、冷蔵機であれば0℃である。
【0035】
具体的には、図3に示すように、時刻T2において、決定部222は、FCスタック1の電圧V2が第1閾値A1より大きく、バッテリ3の充電率L2が第2閾値A2より大きいことを特定する。そして、決定部222は、蓄冷器10の温度E1が第3閾値A3より大きいことを特定し、FCスタック1が発生した電力を第1コンプレッサ7に供給することを決定する。決定部222がこのように動作することで、車両Sの停止時又はアイドリング時に、バッテリ3に充電することができない場合であっても、バッテリ3と異なる負荷である第1コンプレッサ7に電力を供給することができる。
【0036】
決定部222は、供給指示部223が第1コンプレッサ7への電力の供給を開始させた後に、FCスタック1の電圧が第1閾値A1以下の第4閾値A4より大きい場合、第1コンプレッサ7に供給する電力量を大きくすることを決定してもよい。第4閾値A4は、FCスタック1が電力を供給することが可能な電圧の下限値であり、実験又はシミュレーションにより定められた値である。具体的には、図3に示す時刻T2から時刻T3において、決定部222は、FCスタック1の電圧が第2閾値A4よりも大きいことを特定し、第1コンプレッサ7に供給する電力量を大きくする。決定部222がこのように動作することで、蓄冷器10の温度が第3閾値A3に達するまでの時間を短くすることができる。
【0037】
また、決定部222は、供給指示部223がバッテリ3又は第1コンプレッサ7への電力の供給を開始させた後に、FCスタック1の電圧が第1閾値A1以下の第4閾値A4以下に変化したか否かを判定する。そして、第4閾値A4以下に変化したと判定した場合、決定部222は、バッテリ3又は第1コンプレッサ7への電力の供給を停止することを決定してもよい。具体的には、図3に示す時刻T3において、決定部222は、FCスタック1の電圧が第4閾値A4と同じ値であることを特定し、第1コンプレッサ7への電力の供給を停止する。決定部222がこのように動作することで、車両Sの停止時又はアイドリング時にFCスタック1が電力を供給しなくても開回路電圧を回避できる場合は、FCスタック1からの電力の供給を停止できる。
【0038】
決定部222は、バッテリ3、第1コンプレッサ7と異なる他の負荷に電力を供給してもよい。決定部222は、例えば、FCスタック1の電圧が第1閾値A1より大きく、かつ充電率が第2閾値A2より大きい場合に、蓄冷器10の温度が第3閾値A3以下であることを条件として、第1コンプレッサ7と異なる第2コンプレッサ(不図示)に電力を供給することを決定する。第2コンプレッサは、例えば、車両Sが備えるエアブレーキが有するコンプレッサである。決定部222がこのように動作することで、車両Sの停止時又はアイドリング時において、FCスタック1が電力を供給する供給先の数を増やすことができる。その結果、FCスタック1の電圧が開回路電圧に近くなる蓋然性を低くすることができる。
【0039】
供給指示部223は、FCスタック1から、決定部222が決定したバッテリ3、第1コンプレッサ7、又は第2コンプレッサに電力を供給させる。例えば、供給指示部223は、FCVCU2及びバッテリVCU4の少なくともいずれかに供給指示情報を送信することにより、FCスタック1からバッテリ3に電力を供給させる。供給指示情報は、電力の供給元、電力の供給先、電力供給の開始又は停止を示す情報を含む。供給指示情報は、供給する電力量を含んでもよい。供給指示部223は、第1コンプレッサ7又は第2コンプレッサに電力を供給する場合、供給指示情報をFCVCU2に送信する。
【0040】
<発電制御装置20における処理シーケンス>
図4は、発電制御装置20における処理シーケンスの例を示す図である。図4に示す処理シーケンスは、FCスタック1の電圧とバッテリ3の充電率と蓄冷器10の温度とに基づいて、FCスタック1から第1コンプレッサ7又は第2コンプレッサに電力を供給することを決定する動作を示す。発電制御装置20は、図4に示す動作を一定時間ごとに繰り返す。
【0041】
取得部221は、FCVCU2が検出したFCスタック1の電圧と、バッテリVCU4が検出したバッテリ3の充電率とを取得する(S11)。FCスタック1の電圧が第1閾値A1以下である場合(S12のNO)、発電制御装置20は、処理を終了する。すなわち、FCスタック1は負荷に電力を供給しない。FCスタック1の電圧が第1閾値A1より大きい場合(S12のYES)、バッテリ3の充電率が第2閾値A2以下であるか否かを判定する(S13)。
【0042】
バッテリ3の充電率が第2閾値A2以下である場合(S13のNO)、決定部222は、FCスタック1が発生した電力をバッテリ3に供給することを決定する(S14)。バッテリ3の充電率が第2閾値A2より大きい場合(S13のYES)、取得部221は、温度センサ11が検出した蓄冷器10の温度を取得する(S15)。
【0043】
蓄冷器10の温度が第3閾値A3より大きい場合(S16のYES)、決定部222は、FCスタック1が発生した電力を第1コンプレッサ7に供給することを決定する(S17)。蓄冷器の温度が第3閾値A3以下である場合(S16のNO)、決定部222は、FCスタック1が発生した電力を第2コンプレッサに供給することを決定する(S18)。
【0044】
<変形例>
以上の説明においては、車両Sの停止時又はアイドリング時において、FCスタック1が発生した電力をモータ6と異なる負荷(すなわち、バッテリ3、第1コンプレッサ7及び第2コンプレッサ)に供給する動作を例示したが、これに限らない。発電制御装置20は、車両Sが走行中であっても、FCスタック1の電圧、バッテリ3の充電率、及び蓄冷器10の温度に基づいて、FCスタック1からバッテリ3、第1コンプレッサ7及び第2コンプレッサに電力を供給することを決定してもよい。
【0045】
<発電制御装置20による効果>
以上説明したように、発電制御装置20は、FCスタック1の電圧とバッテリ3の充電率とを取得する取得部221と、FCスタック1の電圧が第1閾値より大きく、かつバッテリ3の充電率が第2閾値以下である場合には、FCスタック1からバッテリ3に電力を供給させ、FCスタック1の電圧が第1閾値より大きく、かつバッテリ3の充電率が第2閾値より大きい場合には、FCスタック1から車両Sが備える第1コンプレッサ7に電力を供給させる供給制御部231と、を有する。
【0046】
発電制御装置20がこのように構成されることで、発電制御装置20は、車両Sの停止時又はアイドリング時であっても、バッテリ3が充電可能な充電率であれば充電させたり、蓄冷器10が冷却可能であれば第1コンプレッサに電気を供給して冷却させたりすることができる。その結果、FCスタック1が、電気の供給先がないことにより発電しない状況になることを抑制できるため、FCスタック1の電圧が開回路電圧に近くなることを回避できるとともに、電力が必要な供給先に電力を供給できる。
【0047】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0048】
1 FCスタック
1a FCスタック
1b FCスタック
1c FCスタック
2 FCVCU
3 バッテリ
3a バッテリ
3b バッテリ
3c バッテリ
4 バッテリVCU
5 インバータ
6 モータ
7 第1コンプレッサ
8 凝縮器
9 膨張弁
10 蓄冷器
11 温度センサ
12 駆動輪
20 発電制御装置
21 記憶部
22 制御部
221 取得部
222 決定部
223 供給指示部
231 供給制御部
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に電力を供給する燃料電池スタック及びバッテリの電力供給を制御する発電制御装置であって、
前記燃料電池スタックの電圧と前記バッテリの充電率とを取得する取得部と、
前記電圧が第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値以下である場合には、前記燃料電池スタックから前記バッテリに電力を供給させ、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が前記第2閾値より大きい場合には、前記燃料電池スタックから前記車両に搭載された架装物に電力を供給させる供給制御部と、
を有し、
前記架装物は、第1コンプレッサを有し、冷却機能を備える設備であって、
前記取得部は、前記架装物が備える蓄冷器の温度を取得し、
前記供給制御部は、前記電圧が前記第1閾値より大きく、且つ前記充電率が前記第2閾値より大きい場合には、前記蓄冷器の温度が第3閾値より大きいことを条件として、前記燃料電池スタックから前記第1コンプレッサに電力を供給させる、
電制御装置。
【請求項2】
前記供給制御部は、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が前記第2閾値より大きい場合に、前記蓄冷器の温度が前記第3閾値以下であることを条件として、前記第1コンプレッサと異なる第2コンプレッサに電力を供給させる、
請求項に記載の発電制御装置。
【請求項3】
前記供給制御部は、前記第1コンプレッサへの電力の供給を開始させた後に、前記電圧が前記第1閾値以下の第4閾値より大きい場合、前記第1コンプレッサに供給する電力量を大きくする、
請求項に記載の発電制御装置。
【請求項4】
前記供給制御部は、前記バッテリ又は前記第1コンプレッサへの電力の供給を開始させた後に、前記電圧が前記第1閾値以下の第4閾値以下に変化したことを条件として、前記バッテリ又は前記第1コンプレッサへの電力の供給を停止させる、
請求項に記載の発電制御装置。
【請求項5】
車両が備えるプロセッサが実行する、
燃料電池スタックの電圧とバッテリの充電率とを取得するステップと、
前記電圧が第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値以下である場合には、前記燃料電池スタックから前記バッテリに電力を供給させ、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値より大きい場合には、前記燃料電池スタックから前記車両に搭載された架装物に電力を供給させるステップと、
を有し、
前記架装物は、第1コンプレッサを有し、冷却機能を備える設備であって、
前記取得するステップにおいて、前記架装物が備える蓄冷器の温度を取得し、
前記電力を供給させるステップにおいて、前記電圧が前記第1閾値より大きく、且つ前記充電率が前記第2閾値より大きい場合には、前記蓄冷器の温度が第3閾値より大きいことを条件として、前記燃料電池スタックから前記第1コンプレッサに電力を供給させる、
電制御方法。
【請求項6】
車両が備えるプロセッサに、
燃料電池スタックの電圧とバッテリの充電率とを取得するステップと、
前記電圧が第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値以下である場合には、前記燃料電池スタックから前記バッテリに電力を供給させ、前記電圧が前記第1閾値より大きく、かつ前記充電率が第2閾値より大きい場合には、前記燃料電池スタックから前記車両に搭載された架装物に電力を供給させるステップと、
を実行させ
前記架装物は、第1コンプレッサを有し、冷却機能を備える設備であって、
前記取得するステップにおいて、前記架装物が備える蓄冷器の温度を取得し、
前記電力を供給させるステップにおいて、前記電圧が前記第1閾値より大きく、且つ前記充電率が前記第2閾値より大きい場合には、前記蓄冷器の温度が第3閾値より大きいことを条件として、前記燃料電池スタックから前記第1コンプレッサに電力を供給させる、
ログラム。