(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119353
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】シートベルト構造
(51)【国際特許分類】
B60R 22/12 20060101AFI20240827BHJP
B60R 22/18 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B60R22/12
B60R22/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026186
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】宮下 知子
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】星川 賢
(72)【発明者】
【氏名】藤原 忍
(72)【発明者】
【氏名】橋口 聡明
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 博行
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018BA08
3D018BA12
3D018CB06
(57)【要約】
【課題】シートベルトの脱着作業を容易に行うことができるシートベルト構造を提供する。
【解決手段】車両の幅方向に並んだ第1座席7Rと第2座席7Lとを有するシート3と、第1座席7R及び第2座席7Lに座る乗員CR,CLを拘束するシートベルト5とを備えたシートベルト構造1において、シート3の第1座席7Rと第2座席7Lとの間に、シート側バックル15を設け、シート3の上方に位置する天井Vに、天井側バックル17を設け、シートベルト5が、第1座席7Rに座る乗員CRを拘束する第1ベルト部19と、第2座席7Lに座る乗員CLを拘束する第2ベルト部21とを有し、第1ベルト部19と第2ベルト部21とを、シート側バックル15と天井側バックル17とに対して着脱可能な、共通の1つのタング43に接続した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の幅方向に並んだ第1座席と第2座席とを有するシートと、
前記第1座席及び前記第2座席に座る乗員を拘束するシートベルトと、
を備え、
前記シートの前記第1座席と前記第2座席との間には、シート側バックルが設けられ、
前記シートの上方に位置する天井には、天井側バックルが設けられ、
前記シートベルトは、前記第1座席に座る乗員を拘束する第1ベルト部と、前記第2座席に座る乗員を拘束する第2ベルト部とを有し、
前記第1ベルト部と前記第2ベルト部とは、前記シート側バックルと前記天井側バックルとに対して着脱可能な、共通の1つのタングに接続されているシートベルト構造。
【請求項2】
前記天井には、前記タングが前記天井側バックルに装着された状態で、前記シートベルトが前記天井側に引き上げられた状態を保持する保持部が設けられている請求項1に記載のシートベルト構造。
【請求項3】
前記保持部は、前記天井に対して、前記天井側バックルと車室内の側壁との間を移動可能に配置され、前記天井側バックルから前記タングが離脱しているときに、前記天井側バックルに近接して配置され、前記天井側バックルに前記タングが装着されたときに、前記シートベルトに係合し、前記シートベルトとの係合を保持したまま、前記車室内の側壁に向けて移動される請求項2に記載のシートベルト構造。
【請求項4】
前記第1ベルト部及び第2ベルト部は、前記第1座席及び前記第2座席に座る乗員を3点式に拘束し、
前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部の3点のうち前記シートの上方に位置する上方点は、上下方向に移動可能に設けられ、
前記上方点は、前記タングが前記天井側バックルに装着された状態で、上側に移動される請求項1から3のいずれか1項に記載のシートベルト構造。
【請求項5】
前記保持部は、フック状に形成されている請求項2又は3に記載のシートベルト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートベルト構造としては、幅方向に並んだ3人分の座席を有するシートと、座席に座る乗員を拘束する3点式のシートベルトとを備えたものが知られている(特許文献1参照)。このシートベルト構造では、シートの3人分の座席のうち外側に位置する2人分の座席に対するシートベルトが、それぞれ3点式のシートベルトとなっている。シートには、3人分の3つのバックルが設けられている。3人分のそれぞれのシートベルトには、バックルに対して、着脱可能なタングがそれぞれ設けられている。このようなシートベルト構造では、それぞれのシートベルトのタングを、それぞれのバックルに装着することにより、シートベルトが乗員を拘束する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1のようなシートベルト構造では、シートに座る人数分のシートベルト及びタングがそれぞれ設けられ、シートにそれぞれのタングに対応した人数分のバックルが設けられている。このため、タングを、どのバックルに装着してよいのか迷うことがあった。加えて、同乗者が子供や身体に障碍があるなど、同乗者のシートベルトの脱着作業を補助する必要がある場合、自分の脱着作業と同乗者の脱着作業を別々に行わなければならず、シートベルトの脱着作業が困難であった。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、シートベルトの脱着作業を容易に行うことができるシートベルト構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るシートベルト構造は、車両の幅方向に並んだ第1座席と第2座席とを有するシートと、前記第1座席及び前記第2座席に座る乗員を拘束するシートベルトとを備え、前記シートの前記第1座席と前記第2座席との間には、シート側バックルが設けられ、前記シートの上方に位置する天井には、天井側バックルが設けられ、前記シートベルトは、前記第1座席に座る乗員を拘束する第1ベルト部と、前記第2座席に座る乗員を拘束する第2ベルト部とを有し、前記第1ベルト部と前記第2ベルト部とは、前記シート側バックルと前記天井側バックルとに対して着脱可能な、共通の1つのタングに接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シートベルトの脱着作業を容易に行うことができるシートベルト構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るシートベルト構造のタングをシート側バックルに装着してシートベルトが乗員を拘束したときの正面図である。
【
図2】本実施形態に係るシートベルト構造のタングを天井側バックルに装着してシートベルトが乗員の拘束を解放したときの正面図である。
【
図4】本実施形態に係るシートベルト構造のタングをシート側バックルに装着するときの斜視図である。
【
図5】本実施形態に係るシートベルト構造のタングを天井側バックルに装着して第1保持部及び第2保持部が第1状態であるときの斜視図である。
【
図6】本実施形態に係るシートベルト構造のタングを天井側バックルに装着して第1保持部及び第2保持部が第2状態であるときの斜視図である。
【
図7】本実施形態に係るシートベルト構造のタングを天井側バックルに装着したときの正面図である。
【
図9】本実施形態に係るシートベルト構造のシートベルトの構成の第1例を示す模式図である。
【
図10】本実施形態に係るシートベルト構造のシートベルトの構成の第2例を示す模式図である。
【
図11】本実施形態に係るシートベルト構造のシートベルトの構成の第3例を示す模式図である。
【
図12】本実施形態に係るシートベルト構造のシートベルトの構成の第4例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本実施形態に係るシートベルト構造について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係るシートベルト構造1は、例えば、車両の車室内に適用される。
図1~
図8に示すように、シートベルト構造1は、シート3と、シートベルト5とを備えている。
【0011】
図4に示すように、シート3は、例えば、車両の後部座席として用いられる。シート3は、幅方向に並んだ2人分の第1座席7Rと第2座席7Lとを有する。第1座席7R及び第2座席7Lは、それぞれ乗員CR,CL(
図1参照)が座る座面部9と、乗員CR,CLの背中を支持する背もたれ部11と、乗員CR,CLの頭を支持するヘッドレスト13とを有する。座面部9と背もたれ部11とヘッドレスト13とは、クッション性を有する。背もたれ部11は、シート3の外面に設けられたレバーやボタンなどによって、機械式、或いは電動式に座面部9に対する傾斜角度を変更可能となっている。
図1~
図8に示すように、シート3の第1座席7Rと第2座席7Lとの間には、1つのシート側バックル15が設けられている。シート3の上方に位置する車室内の天井V(
図1参照)には、1つの天井側バックル17(
図1参照)が設けられている。なお、天井側バックル17の天井Vにおける位置は、シート側バックル15に対して、左右方向が一致する位置に限るものではない。例えば、天井側バックル17を、シート側バックル15より左寄りに配置させるなど、シート側バックル15と天井側バックル17との左右方向の配置位置を異ならせてもよい。加えて、シート側バックル15のシート3における位置は、シート3の中央部に限るものではない。例えば、第1座席7Rと第2座席7Lとの幅が異なる場合には、第1座席7Rと第2座席7Lとの間に位置するように、シート側バックル15をシート3に配置すればよい。
図1に示すように、シート3の第1座席7R及び第2座席7Lに座る乗員CR,CLは、シートベルト5によって拘束される。
【0012】
図1~
図8に示すように、シートベルト5は、例えば、高強度ナイロンを編み込んでベルト状に形成されている。
図1に示すように、シートベルト5は、第1座席7R及び第2座席7Lに座る乗員CR,CLを3点式に拘束する。なお、以下では、3点式の3点を、シート3の外側で下方に位置する下方点と、シート3の上方に位置する上方点と、シート3の内側のシート側バックル15に固定される内方点として説明する。シートベルト5は、第1座席7Rに座る乗員CRを拘束する3点式の第1ベルト部19と、第2座席7Lに座る乗員CLを拘束する3点式の第2ベルト部21とを有する。
【0013】
図1に示すように、第1ベルト部19は、第1下方点23と、第1上方点25と、第1内方点27とを有するように、第1座席7Rに座る乗員CRを3点式に拘束する。第1下方点23と第1上方点25とは、車室内の側壁WRに設けられている。第1下方点23と第1内方点27との間は、乗員CRの腰付近を拘束する第1下拘束部29となっている。第1上方点25と第1内方点27との間は、乗員CRの肩から腰付近までを拘束する第1上拘束部31となっている。第1上方点25は、車室内の側壁WRに対して、上下方向に移動可能に設けられている。第1上方点25は、乗員CRを拘束するときの第1ベルト部19にかかる荷重、或いは乗員CRが第1座席7Rに座ったときの頭や肩などの位置を検出するセンサによって、機械式、或いは電動式に側壁WRに対する配置位置が変動する。第1上方点25を上下方向に移動可能とすることにより、第1ベルト部19が乗員CRを安定して3点式に拘束することができる。
図2に示すように、第1上方点25は、第1ベルト部19が乗員CRを拘束していないとき、第1ベルト部19が乗員CRの降車を妨げることがないように、側壁WRに対して天井V側に配置される。
【0014】
図1に示すように、第2ベルト部21は、第2下方点33と、第2上方点35と、第2内方点37とを有するように、第2座席7Lに座る乗員CLを3点式に拘束する。第2下方点33と第2上方点35とは、車室内の側壁WLに設けられている。第2内方点37は、第1内方点27と同一の位置に配置されている。第2下方点33と第2内方点37との間は、乗員CLの腰付近を拘束する第2下拘束部39となっている。第2上方点35と第2内方点37との間は、乗員CLの肩から腰付近までを拘束する第2上拘束部41となっている。第2上方点35は、車室内の側壁WLに対して、上下方向に移動可能に設けられている。第2上方点35は、乗員CLを拘束するときの第2ベルト部21にかかる荷重、或いは乗員CLが第2座席7Lに座ったときの頭や肩などの位置を検出するセンサによって、機械式、或いは電動式に側壁WLに対する配置位置が変動する。第2上方点35を上下方向に移動可能とすることにより、第2ベルト部21が乗員CLを安定して3点式に拘束することができる。
図2に示すように、第2上方点35は、第2ベルト部21が乗員CLを拘束していないとき、第2ベルト部21が乗員CLの降車を妨げることがないように、側壁WLに対して天井V側に配置される。
【0015】
図1に示すように、第1ベルト部19の第1内方点27と第2ベルト部21の第2内方点37とは、共通の1つのタング43に接続されている。タング43は、シート側バックル15と天井側バックル17とに対して、着脱可能となっている。タング43は、シート側バックル15に差し込まれると、シート側バックル15に装着された状態が保持される。タング43は、シート側バックル15に装着された状態で、例えば、シート側バックル15に設けられた解除ボタン(不図示)を押圧すると、シート側バックル15から離脱される。タング43は、天井側バックル17に差し込まれると、天井側バックル17に装着された状態が保持される。タング43は、天井側バックル17に装着された状態で、例えば、天井側バックル17に設けられた解除ボタン(不図示)を押圧すると、天井側バックル17から離脱される。なお、シート側バックル15及び天井側バックル17の解除ボタンは、隣り合う乗員CR,CLのいずれも操作可能なように、シート側バックル15及び天井側バックル17の両側面にそれぞれ設けるとよい。
【0016】
ここで、シートベルト5の構成例を以下に示す。
【0017】
シートベルト5の構成の第1例としては、
図9に示すように、第1下拘束部29と第1上拘束部31とが連続する1本のベルト49と、第2下拘束部39と第2上拘束部41とが連続する1本のベルト51とを有する。ベルト49の両端は、それぞれ第1下方点23と第1上方点25とに配置される。第1下方点23と第1上方点25との少なくとも一方には、ベルト49を引出可能とする巻き取り装置(不図示)が設けられている。ベルト51の両端は、それぞれ第2下方点33と第2上方点35とに配置される。第2下方点33と第2上方点35との少なくとも一方には、ベルト51を引出可能とする巻き取り装置(不図示)が設けられている。2本のベルト49,51は、タング43が第1内方点27及び第2内方点37(
図1参照)に位置できるように、それぞれタング43に挿通される。
【0018】
シートベルト5の構成の第2例としては、
図10に示すように、第1上拘束部31と第2上拘束部41とが連続する1本のベルト53と、第1下拘束部29と第2下拘束部39とが連続する1本のベルト55とを有する。ベルト53の両端は、それぞれ第1上方点25と第2上方点35とに配置される。第1上方点25と第2上方点35との少なくとも一方には、ベルト53を引出可能とする巻き取り装置(不図示)が設けられている。ベルト55の両端は、それぞれ第1下方点23と第2下方点33とに配置される。第1下方点23と第2下方点33との少なくとも一方には、ベルト55を引出可能とする巻き取り装置(不図示)が設けられている。2本のベルト53,55は、タング43が第1内方点27及び第2内方点37(
図1参照)に位置できるように、それぞれタング43に挿通される。
【0019】
シートベルト5の構成の第3例としては、
図11に示すように、第1上拘束部31と第2下拘束部39とが連続する1本のベルト57と、第1下拘束部29と第2上拘束部41とが連続する1本のベルト59とを有する。ベルト57の両端は、それぞれ第1上方点25と第2下方点33とに配置される。第1上方点25と第2下方点33との少なくとも一方には、ベルト57を引出可能とする巻き取り装置(不図示)が設けられている。ベルト59の両端は、それぞれ第1下方点23と第2上方点35とに配置される。第1下方点23と第2上方点35との少なくとも一方には、ベルト59を引出可能とする巻き取り装置(不図示)が設けられている。2本のベルト57,59は、タング43が第1内方点27及び第2内方点37(
図1参照)に位置できるように、それぞれタング43に挿通される。
【0020】
シートベルト5の構成の第4例としては、
図12に示すように、第1下拘束部29と、第1上拘束部31と、第2下拘束部39と、第2上拘束部41とを、それぞれ構成する4本のベルト61,63,65,67を有する。4本のベルト61,63,65,67の一端は、それぞれ第1下方点23と、第1上方点25と、第2下方点33と、第2上方点35とに配置される。第1下方点23と第1上方点25と第2下方点33と第2上方点35とには、それぞれのベルトを引出可能とする巻き取り装置(不図示)が設けられている。4本のベルト61,63,65,67の他端は、タング43が第1内方点27及び第2内方点37(
図1参照)に位置できるように、タング43に固定される。
【0021】
このように構成されたシートベルト5は、タング43がシート側バックル15及び天井側バックル17から離脱している状態において、巻き取り装置によって巻き取られる。巻き取り装置によって巻き取られるシートベルト5は、
図5に示すように、タング43が天井側バックル17に装着されると、少なくとも第1上拘束部31と第2上拘束部41とが、天井V側に引き上げられた状態で保持される。
【0022】
シート3の第1座席7R及び第2座席7Lに乗員CR,CLが座ってシートベルト5を使用する場合には、タング43を天井側バックル17から離脱させる。次に、
図1に示すように、第1座席7R及び第2座席7Lに乗員CR,CLが座った状態で、タング43をシート側バックル15に装着する。このとき、第1上方点25及び第2上方点35は、乗員CR,CLの体格に合わせて側壁WR,WLに対する配置位置を変動する。タング43をシート側バックル15に装着した状態では、第1ベルト部19が第1座席7Rに座る乗員CRを3点式に拘束し、第2ベルト部21が第2座席7Lに座る乗員CLを3点式に拘束する。
【0023】
乗員CR,CLに対するシートベルト5の拘束を解放する場合には、タング43をシート側バックル15から離脱させる。次に、
図5に示すように、タング43を天井側バックル17に装着する。このとき、第1上方点25及び第2上方点35は、
図2に示すように、天井V側に向けて移動され、側壁WR,WLに対して待機位置に配置される。タング43を天井側バックル17に装着した状態では、シートベルト5の少なくとも第1上拘束部31と第2上拘束部41とが、天井V側に引き上げられた状態で保持される。このため、乗員CR,CLが降車するときに、シートベルト5が干渉することを抑制することができる。
【0024】
このようなシートベルト5は、3点式の第1ベルト部19と、3点式の第2ベルト部21とが、共通の1つのタング43に接続されている。このため、1つのタング43を、1つのシート側バックル15に装着すれば、同時に、2人の乗員CR,CLを第1ベルト部19と第2ベルト部21とで3点式に拘束することができる。このため、1つのタング43に対応するシート側バックルは、1つのシート側バックル15しかないので、タング43の装着を迷うことがない。また、タング43をシート側バックル15から離脱させ、1つのタング43を1つの天井側バックル17に装着すれば、同時に、2人の乗員CR,CLを第1ベルト部19と第2ベルト部21との拘束から解放することができる。このため、シートベルト5の脱着作業を容易に行うことができる。加えて、同乗者が子供や身体に障碍があるなど、同乗者のシートベルト5の脱着作業を補助する必要がある場合であっても、2人分のシートベルト5の脱着作業を1度に行うことができる。
【0025】
なお、天井側バックル17は、昇降可能に設けられてもよい。昇降可能な天井側バックル17は、タング43がシート側バックル15から離脱したときに、乗員CR,CLの頭付近まで下降する。乗員CR,CLの頭付近まで天井側バックル17が下降することにより、乗員CR,CLが第1座席7R及び第2座席7Lに座ったまま、タング43を天井側バックル17に装着することができる。昇降可能な天井側バックル17は、タング43が装着されると、天井V側に向けて上昇する。タング43が装着されて天井V側に配置された天井側バックル17は、乗員CR,CLが第1座席7R及び第2座席7Lに座ると、センサなどの検出により、乗員CR,CLの頭付近まで下降する。乗員CR,CLの頭付近までタング43が装着された天井側バックル17が下降することにより、乗員CR,CLが第1座席7R及び第2座席7Lに座ったまま、タング43を天井側バックル17から離脱することができる。このように天井側バックル17を昇降可能とすることにより、天井側バックル17に対するタング43の着脱作業を容易に行うことができる。
【0026】
ここで、シートベルト5は、
図5に示すように、タング43が天井側バックル17に装着された状態で、第1上拘束部31と第2上拘束部41とが天井V側に引き上げられた状態で保持される。このとき、シートベルト5の第1下拘束部29と第2下拘束部39とは、シート3の背もたれ部11(
図4参照)にかかるように配置された状態となる。シート3の背もたれ部11にシートベルト5が配置されていると、乗員CR,CLが降車するときに、シートベルト5が邪魔になることがある。
【0027】
そこで、天井Vには、タング43が天井側バックル17に装着された状態で、シートベルト5が天井V側に引き上げられた状態を保持する保持部としての第1保持部45及び第2保持部47が設けられている。
図3,
図5,
図6,
図7,
図8に示すように、第1保持部45及び第2保持部47は、シートベルト5を引っ掛けることができるフック状に形成されている。第1保持部45及び第2保持部47をフック状に形成することにより、天井Vと反対側に位置するシートベルト5の下側に係合することができ、シートベルト5が天井V側に引き上げられた状態を保持することができる。
図1,
図2,
図5~
図7に示すように、第1保持部45は、天井Vにおいて、天井側バックル17と第1上方点25との間の任意の範囲を、例えば、電動モータなどの駆動源によって、移動可能に配置されている。第2保持部47は、天井Vにおいて、天井側バックル17と第2上方点35との間の任意の範囲を、例えば、電動モータなどの駆動源によって、移動可能に配置されている。第1保持部45及び第2保持部47の移動は、例えば、天井Vに設けられたレールなどによって、ガイドされる。
【0028】
図1に示すように、第1保持部45及び第2保持部47は、タング43が天井側バックル17から離脱しているとき、天井側バックル17に近接して配置されている。このとき、不図示であるが、第1保持部45及び第2保持部47は、天井に設けられた収容部に収容され、フック状の部分が、シートベルト5と干渉しないように配置される。なお、第1保持部45及び第2保持部47が、天井側バックル17に近接して配置された状態を第1状態とする。
【0029】
図5に示すように、第1保持部45及び第2保持部47は、タング43が天井側バックル17に装着されると、フック状の部分がシートベルト5を引っ掛けるように、収容部から出てきて、シートベルト5の下側に係合する。シートベルト5に係合した第1保持部45及び第2保持部47は、シートベルト5との係合を保持したまま、第1上方点25及び第2上方点35に向けて移動される。このとき、シートベルト5は、第1保持部45及び第2保持部47の移動により、天井V側に向けて引き上げられる。
【0030】
図2,
図6,
図7に示すように、第1保持部45及び第2保持部47が、第1上方点25及び第2上方点35に近接して配置されると、シートベルト5が天井V側に引き上げられた状態で保持される。このため、タング43を天井側バックル17に装着した状態では、シートベルト5がシート3に配置されることがなく、シートベルト5が乗員CR,CLの降車の邪魔をすることがない。なお、第1保持部45及び第2保持部47が、第1上方点25及び第2上方点35に近接して配置された状態を第2状態とする。
【0031】
第2状態の第1保持部45及び第2保持部47は、タング43を天井側バックル17から離脱させると、第1状態となるように移動される。第1状態の第1保持部45及び第2保持部47は、天井Vの収容部に収容される。このため、乗員CR,CLがシートベルト5を使用するときには、第1保持部45及び第2保持部47が、シートベルト5と干渉することがない。
【0032】
このように第1保持部45及び第2保持部47を移動可能とすることにより、乗員CR,CLがシートベルト5を操作しなくても、第1保持部45及び第2保持部47によってシートベルト5を天井V側に引き上げることができる。このため、乗員CR,CLの負担を軽減することができる。
【0033】
なお、天井側バックル17を、乗員CR,CLより車両の前方側(例えば、
図3の左側)に配置してもよい。また、第1保持部45及び第2保持部47の移動をガイドするレールを、天井側バックル17から第1上方点25及び第2上方点35に向けて、乗員CR,CLの周囲に位置するように湾曲させて形成してもよい。天井側バックル17を前方側に配置することにより、タング43を天井側バックル17に装着するときに、シートベルト5が乗員CR,CLと干渉することを抑制することができる。また、レールを乗員CR,CLの周囲に位置するように湾曲させて形成することにより、第1保持部45及び第2保持部47の移動によって天井V側に引き上げられるシートベルト5が乗員CR,CLと干渉することを抑制することができる。
【0034】
このようなシートベルト構造1では、車両の幅方向に並んだ第1座席7Rと第2座席7Lとを有するシート3と、第1座席7R及び第2座席7Lに座る乗員CR,CLを拘束するシートベルト5とを備えている。また、シート3の第1座席7Rと第2座席7Lとの間には、シート側バックル15が設けられている。さらに、シート3の上方に位置する天井Vには、天井側バックル17が設けられている。また、シートベルト5は、第1座席7Rに座る乗員CRを拘束する第1ベルト部19と、第2座席7Lに座る乗員CLを拘束する第2ベルト部21とを有する。そして、第1ベルト部19と第2ベルト部21とは、シート側バックル15と天井側バックル17とに対して着脱可能な、共通の1つのタング43に接続されている。
【0035】
シートベルト5は、第1ベルト部19と、第2ベルト部21とが、共通の1つのタング43に接続されている。このため、1つのタング43を、シート側バックル15に装着すれば、同時に、2人の乗員CR,CLを第1ベルト部19と第2ベルト部21とで拘束することができる。このため、1つのタング43に対応するシート側バックルは、1つのシート側バックル15しかないので、タング43の装着を迷うことがない。また、タング43をシート側バックル15から離脱させ、1つのタング43を天井側バックル17に装着すれば、同時に、2人の乗員CR,CLを第1ベルト部19と第2ベルト部21との拘束から解放することができる。このため、シートベルト5の脱着作業を容易に行うことができる。加えて、同乗者が子供や身体に障碍があるなど、同乗者のシートベルト5の脱着作業を補助する必要がある場合であっても、2人分のシートベルト5の脱着作業を1度に行うことができる。
【0036】
従って、このようなシートベルト構造1では、シートベルト5の脱着作業を容易に行うことができる。
【0037】
また、天井Vには、タング43が天井側バックル17に装着された状態で、シートベルト5が天井V側に引き上げられた状態を保持する保持部としての第1保持部45及び第2保持部47が設けられている。
【0038】
このため、タング43が天井側バックル17に装着された状態では、シートベルト5がシート3に配置されることがなく、シートベルト5が乗員CR,CLの降車の邪魔をすることがない。
【0039】
さらに、第1保持部45及び第2保持部47は、天井Vに対して、天井側バックル17と車室内の側壁WR,WLとの間を移動可能に配置されている。また、第1保持部45及び第2保持部47は、天井側バックル17からタング43が離脱しているときに、天井側バックル17に近接して配置される。そして、第1保持部45及び第2保持部47は、天井側バックル17にタング43が装着されたときに、シートベルト5に係合し、シートベルト5との係合を保持したまま、車室内の側壁WR,WLに向けて移動される。
【0040】
このため、乗員CR,CLがシートベルト5を操作しなくても、第1保持部45及び第2保持部47によってシートベルト5を天井V側に引き上げることができ、乗員CR,CLの負担を軽減することができる。
【0041】
また、第1ベルト部19及び第2ベルト部21は、第1座席7R及び第2座席7Lに座る乗員CR,CLを3点式に拘束する。さらに、第1ベルト部19及び第2ベルト部21の3点のうちシート3の上方に位置する上方点としての第1上方点25及び第2上方点35は、上下方向に移動可能に設けられている。そして、第1上方点25及び第2上方点35は、タング43が天井側バックル17に装着された状態で、上側に移動される。
【0042】
このため、第1座席7R及び第2座席7Lに座る乗員CR,CLに合わせて、第1上方点25及び第2上方点35が配置位置を変動することができ、第1ベルト部19及び第2ベルト部21が乗員CR,CLを安定して3点式に拘束することができる。また、第1ベルト部19及び第2ベルト部21が乗員CR,CLを拘束していないときに、第1上方点25及び第2上方点35が上側(天井V側)に位置することにより、シートベルト5が乗員CR,CLと干渉することを抑制することができる。
【0043】
さらに、第1保持部45及び第2保持部47は、フック状に形成されている。
【0044】
このため、第1保持部45及び第2保持部47が、シートベルト5を安定して保持することができ、シートベルト5が天井V側に引き上げられた状態を安定して保持することができる。
【0045】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0046】
例えば、本実施形態に係るシートベルト構造では、第1保持部及び第2保持部が、移動式となっているが、これに限らず、第1保持部及び第2保持部を、固定してもよい。この場合には、第1保持部及び第2保持部を、第1上方点及び第2上方点に近接して配置させる。タングを天井側バックルに装着した状態で、シートに位置するシートベルトを、乗員が、第1保持部及び第2保持部に保持するようにしてもよい。このような固定式の第1保持部及び第2保持部であっても、シートベルトが天井側に引き上げられた状態を保持することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 シートベルト構造
3 シート
5 シートベルト
7R 第1座席
7L 第2座席
15 シート側バックル
17 天井側バックル
19 第1ベルト部
21 第2ベルト部
25 第1上方点
35 第2上方点
43 タング
45 第1保持部
47 第2保持部
CR,CL 乗員
WR,WL 側壁