(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119368
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】オートミルク発酵物含有肌保湿用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240827BHJP
A23C 9/123 20060101ALI20240827BHJP
A23C 9/13 20060101ALI20240827BHJP
A23L 7/104 20160101ALI20240827BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240827BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240827BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20240827BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20240827BHJP
【FI】
A23L33/105
A23C9/123
A23C9/13
A23L7/104
A23L5/00 J
A23L5/00 N
A61Q19/00
A61K8/9794
A61K8/97
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026218
(22)【出願日】2023-02-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】391004126
【氏名又は名称】株式会社キティー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大木 妙子
【テーマコード(参考)】
4B001
4B018
4B023
4B035
4C083
【Fターム(参考)】
4B001AC20
4B001AC31
4B001BC04
4B001BC08
4B001BC12
4B001BC13
4B001BC14
4B001BC99
4B001DC50
4B001EC05
4B018LB01
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4B018MD49
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4B018ME14
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4B023LC09
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4B035LP55
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4C083AA031
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4C083EE07
4C083EE12
4C083EE13
(57)【要約】
【課題】本発明は、改善された肌保湿効果を提供する、オートミルク由来成分を含む組成物を開発することを目的とする。
【解決手段】オートミルク発酵物を含む肌保湿用組成物であって、当該オートミルク発酵物が、オートミルクを含む原料の乳酸菌による発酵物である、肌保湿用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートミルク発酵物を含む肌保湿用組成物であって、前記オートミルク発酵物が、オートミルクを含む原料の乳酸菌による発酵物である、肌保湿用組成物。
【請求項2】
前記乳酸菌が、ラクチプランチバチルス属(Lactiplantibacillus)に属する菌である、請求項1に記載の肌保湿用組成物。
【請求項3】
前記ラクチプランチバチルス属に属する菌が、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)である、請求項2に記載の肌保湿用組成物。
【請求項4】
前記ラクチプランチバチルス属に属する菌が、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)KTF001株(受託番号NITE P-03783)である、請求項3に記載の肌保湿用組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の肌保湿用組成物を含む、食品。
【請求項6】
請求項1に記載の肌保湿用組成物を含む、化粧料。
【請求項7】
(a)オートミルクを含む原料を乳酸菌により発酵させてオートミルク発酵物を得る工程と、
(b)前記オートミルク発酵物を含む肌保湿用組成物を調製する工程と、
を含む、肌保湿用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肌保湿用組成物に関し、具体的には、オートミルクを含む原料の乳酸菌による発酵物であるオートミルク発酵物を含む、肌保湿用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オートミルク(一般的に「オーツミルク」と記載されることもある)とは、オート麦(「燕麦、エンバク」ともいう)から作られる植物性ミルクであり、近年動物由来乳製品の代替品として注目されている。さらにオートミルクは、食品としての使用だけでなく、その安全性から、化粧料原料としての使用も注目されている。例えば、特許文献1は、化粧料組成物または飲食品組成物に配合する成分の一つとしてエンバクを記載している。また、特許文献2は、オートミルクなどの植物由来の乳代替用加工物を含む乳化化粧料を開示している。
【0003】
一方、スキンケアにおいては肌の保湿が重要とされている。しかし、オートミルクを含む既存の飲食品組成物および化粧料はいずれも、肌に十分な保湿効果をもたらすものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-203628号公報
【特許文献2】特開2022-34982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、改善された肌保湿効果を提供する、オートミルク由来成分を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願人は、オートミルクを含む原料の乳酸菌による発酵物であるオートミルク発酵物が、優れた肌保湿効果を有することを見出した。
【0007】
本発明の第1の態様は、肌保湿用組成物である。
【0008】
一実施形態において、本発明の肌保湿用組成物は、オートミルク発酵物を含み、当該オートミルク発酵物は、オートミルクを含む原料の乳酸菌による発酵物である。
【0009】
本発明の肌保湿用組成物において、乳酸菌は、ラクチプランチバチルス属(Lactiplantibacillus)に属する菌であることが好ましい。
【0010】
本発明の肌保湿用組成物において、ラクチプランチバチルス属に属する菌は、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)であることが好ましい。
【0011】
本発明の肌保湿用組成物において、ラクチプランチバチルス属に属する菌は、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)KTF001株(受託番号NITE P-03783)であることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様における肌保湿用組成物を含む、食品である。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1の態様における肌保湿用組成物を含む、化粧料である。
【0014】
本発明の第4の態様は、
(a)オートミルクを含む原料を乳酸菌により発酵させてオートミルク発酵物を得る工程と、
(b)前記オートミルク発酵物を含む肌保湿用組成物を調製する工程と、
を含む、肌保湿用組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の肌保湿用組成物は、オートミルクを含む原料の乳酸菌による発酵物であるオートミルク発酵物を含むことにより、経口摂取または皮膚への塗布を通じて優れた肌保湿効果を提供することができる。また、本発明の食品は、本発明の肌保湿用組成物を含むことにより、優れた肌保湿効果を提供することができる。本発明の化粧料は、本発明の肌保湿用組成物を含むことにより、優れた肌保湿効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例2に記載する、表皮角化細胞におけるHAS3mRNAの発現量の測定結果である。
【
図2】
図2は、実施例3に記載する、表皮角化細胞におけるヒアルロン酸産生量の測定結果(0.1%DMSO含有培地および0.001%試料含有培地)である。
【
図3】
図3は、実施例3に記載する、表皮角化細胞におけるヒアルロン酸産生量の測定結果(0.1%DMSO含有培地、0.001%試料含有培地および0.01%試料含有培地)である。
【
図4】
図4は、実施例4に記載する、ヒトにおける角質水分量の測定結果である。
【
図5】
図5は、実施例4に記載する、ヒトにおける経皮水分蒸散量の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(肌保湿用組成物)
本発明の第1の態様は、肌保湿用組成物である。本発明の肌保湿用組成物の第1の実施形態は、オートミルク発酵物を少なくとも含み、オートミルク発酵物は、オートミルクを含む原料の発酵物である。本発明の肌保湿用組成物は、オートミルク発酵物を含むことにより、オートミルクそのものを含む組成物と比較して、優れた肌保湿効果をもたらすことができる。
【0018】
本発明の肌保湿用組成物において、「オートミルク発酵物」とは、オートミルクを含む原料の発酵物を指す。本発明におけるオートミルク発酵物は、オートミルクを含む原料を発酵させて得られるものであれば、いかなるものでもよい。本発明の肌保湿用組成物において、オートミルク発酵物の含有量は、肌保湿用組成物の全重量に対して、20~100重量%、好ましくは50~100重量%、より好ましくは80~100重量%とすることができる。また、本発明の肌保湿用組成物は、オートミルク発酵物のみからなるものでもよい。
【0019】
「オートミルク」とは、オート麦を原料として作られる植物性ミルクであり、一般的には、オート麦を水に浸漬し、粉砕および/または煮た後に固形分と分離することで製造される。本明細書において、「オート麦」とは、イネ科カラスムギ属に属する植物を指す。本発明の原料において、オートミルクは、オート麦を原料とするものであれば特に限定されず、あらゆるオートミルクを使用することができる。また、飲料または調理用として一般に市販されているオートミルクを使用してもよい。市販されているオートミルクとしては、例えば、オーツミルクの素(群栄化学工業株式会社)、濃縮オーツミルク「OAT糖化液」(アピ株式会社)、濃縮オートミルクT(株式会社コーセーフーズ)などが挙げられる。なお、本明細書において「オートミルク」とは、甘味料、調味料、酸味料、着色料、保存料、乳化剤、香料、油脂、酸化防止剤、増粘剤、安定剤、栄養強化剤などの種々の添加剤を含んでいるものも含む。したがって、このような添加剤を含む市販のオートミルクも、本発明において同様に使用することができる。本発明の肌保湿用組成物の原料において、オートミルクの含有量は、原料の全重量に対して、10~100重量%、好ましくは15~100重量%、より好ましくは20~100重量%とすることができる。
【0020】
本発明の原料は、さらに水を含むことができる。オートミルクを含む原料において使用することができる水は、特に限定されないが、例えば水道水、精製水、ミネラルウォーターなどが挙げられる。存在する場合、本発明の原料において、水の含有量は、原料の全重量に対して、20~90重量%、好ましくは35~85重量%、より好ましくは50~80重量%とすることができる。
【0021】
オートミルクを含む原料は、他の材料をさらに含んでもよい。他の材料としては、例えば、これらに限定されるものではないが、糖類(グルコース、ラクトース、スクロース、フルクトース、デンプン加水分解物、廃糖蜜など)、タンパク質(カゼインの加水分解物、大豆タンパク質の加水分解物、馬鈴薯の加水分解物など)、食物繊維、脂肪酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸など)、脂質、ビタミン、ミネラル(カルシウム、マグネシウム、カリウムなど)、エキス類(肉エキス、魚肉エキス、酵母エキスなど)などが挙げられる。存在する場合、オートミルクを含む原料において、他の材料の含有量は、原料の全重量に対して、0.01~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%とすることができる。なお、オートミルクを含む原料は、オートミルクのみからなるものでもよい。
【0022】
オートミルクを含む原料の発酵に用いる菌は、乳酸菌が好ましい。乳酸菌とは、代謝によって糖から乳酸をつくる嫌気性微生物の総称であり、例えば、これらに限定されるものではないが、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、ラクチカゼイバチルス(Lacticaseibacillus)属、レビラクトバチルス(Levilactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属などに属する菌が挙げられる。本発明における乳酸菌は、好ましくは、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属に属する菌である。
【0023】
本発明において使用することのできるラクチプランチバチルス属に属する菌としては、これらに限定されるものではないが、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、ラクチプランチバチルス・パラプランタルム(Lactiplantibacillus paraplantarum)、ラクチプランチバチルス・プランタルム・サブスピーシーズ・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum subsp. plantarum)、ラクチプランチバチルス・ペントサス(Lactiplantibacillus pentosus)、ラクチプランチバチルス・ダオリエンシス(Lactiplantibacillus daoliensis)、ラクチプランチバチルス・ダオワイエンシス(Lactiplantibacillus daowaiensis)、ラクチプランチバチルス・ドンリエンシス(Lactiplantibacillus dongliensis)、ラクチプランチバチルス・ファビファーメンタンス(Lactiplantibacillus fabifermentans)、ラクチプランチバチルス・ハーバラム(Lactiplantibacillus herbarum)、ラクチプランチバチルス・モデスティサリトレランス(Lactiplantibacillus modestisalitolerans)、ラクチプランチバチルス・ムダンジアンゲンシス(Lactiplantibacillus mudanjiangensis)、ラクチプランチバチルス・ナンガンゲンシス(Lactiplantibacillus nangangensis)、ラクチプランチバチルス・ピンファンゲンシス(Lactiplantibacillus pingfangensis)、ラクチプランチバチルス・プラジョミ(Lactiplantibacillus plajomi)、ラクチプランチバチルス・アルゲントラテンシス(Lactiplantibacillus argentoratensis)、ラクチプランチバチルス・ソンベイエンシス(Lactiplantibacillus songbeiensis)、ラクチプランチバチルス・シャンファンゲンシス(Lactiplantibacillus xiangfangensis)などが挙げられ、好ましくは、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)である。さらに好ましくは、本発明における乳酸菌は、植物由来乳酸菌であるラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)KTF001株である。
【0024】
ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)KTF001株は、受託番号NITE P-03783として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに受託されている(受託日:2022年11月25日)。
【0025】
オートミルク発酵物を得るためのオートミルクを含む原料を発酵させる方法は、オートミルク発酵物を得ることができれば特に限定されない。オートミルク発酵物は、例えば、オートミルクを含む原料に乳酸菌を接種し、発酵させることで得ることができる。原料に接種する乳酸菌の量は、例えば、0.01~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.5~10重量%とすることができる。発酵時の温度は、15~60℃、好ましくは20~50℃、より好ましくは25~40℃の温度とすることができる。発酵時間は、1~48時間、好ましくは12~36時間、より好ましくは22~26時間とすることができる。また、発酵は、好気条件下または嫌気条件下のどちらでも行うことができる。好気条件下で発酵させる場合、酸素濃度は、例えば、0.5~30%とすることができる。嫌気条件下で発酵させる場合、酸素濃度は、例えば、0~0.5%未満とすることができる。
【0026】
本発明の肌保湿用組成物の第2の実施形態は、オートミルク発酵物と、追加の成分とを含む。オートミルク発酵物については、肌保湿用組成物の第1の実施形態において説明したとおりである。
【0027】
追加の成分は、pH調節剤を含むことができる。pH調節剤としては、これらに限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、塩酸およびリン酸などの無機塩またはそれらの塩、ならびに乳酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸およびコハク酸などの有機酸またはそれらの塩などが挙げられる。本発明の肌保湿用組成物において、pH調節剤は、好ましくは水酸化ナトリウムである。存在する場合、本発明の肌保湿用組成物において、pH調節剤の含有量は、肌保湿用組成物の全重量に対して、0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.5~3重量%とすることができる。
【0028】
オートミルク発酵物にpH調節剤を添加することで、オートミルク発酵物のpHを調節することができる。オートミルク発酵物のpHは、4.0~8.0、好ましくは5.0~7.0、より好ましくは5.5~6.5の範囲とすることができる。
【0029】
本発明の肌保湿用組成物における追加の成分は、別の添加剤をさらに含むことができる。本発明の肌保湿用組成物において使用することのできる添加剤としては、本発明の肌保湿用組成物の効果を損なうものでない限り特に限定されず、例えば、食品用添加物または化粧料用添加物などが挙げられる。食品用添加物としては、例えば、香料、甘味料、調味料、着色料、増粘剤、安定剤、抗酸化剤、栄養強化剤、保存料、賦形剤(デキストリンなど)などが挙げられる。化粧料用添加物としては、例えば、香料、色素、増粘剤、安定剤、乳化剤、流動化剤、抗酸化剤、保存料、賦形剤(デキストリンなど)が挙げられる。存在する場合、本発明の肌保湿用組成物において、添加剤の含有量は、肌保湿用組成物の全重量に対して、0.01~10重量%、好ましくは0.05~5重量%、より好ましくは0.1~3重量%とすることができる。
【0030】
本発明の肌保湿用組成物は、任意の形態とすることができる。任意の形態としては、これらに限定されるものではないが、粉末、顆粒、液体、ペースト、ゲル、固形物などが挙げられる。固形物には、錠剤、タブレットなどが含まれる。この中で、粉末、顆粒および固形物は、保存性が高く、運搬に適するといった利点がある。
【0031】
(肌保湿用組成物を含む食品)
本発明の第2の態様は、本発明の肌保湿用組成物を含む食品である。本明細書において、「食品」は、飲料を含む。本発明の肌保湿用組成物を含む食品としては、肌保湿効果を提供することができるものであれば特に限定されないが、例えば、米飯、ベーカリー食品(パン、ケーキなど)、菓子類(クッキー、飴、ガム、ゼリー、チョコレート、スナック菓子、せんべい、あられなど)、栄養補助食品、保健機能食品(機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品)、サプリメント、飲料(ジュース、清涼飲料、栄養ドリンク、アルコール飲料、ノンアルコール飲料など)などが挙げられる。本発明の食品において、本発明の肌保湿用組成物の含有量は、食品の全重量に対して、0.1重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、より好ましくは5重量%~20重量%とすることができる。また、本発明の食品において、本発明の肌保湿用組成物の含有量は、1日あたりの摂取量として1~2000mg、好ましくは500mg~1500mg、より好ましくは750~1250mgとすることができる。
【0032】
本発明の肌保湿用組成物は、任意の方法で食品に加えることができる。例えば、食品原料として本発明の肌保湿用組成物を使用してもよく、既存の食品に添加してもよい。理論により拘束されるものではないが、本発明の食品は、本発明の肌保湿用組成物を含むことにより皮膚中のヒアルロン酸産生量を増加させることができ、それによって肌保湿効果をもたらすものと考えられる。
【0033】
(肌保湿用組成物を含む化粧料)
本発明の第3の態様は、本発明の肌保湿用組成物を含む化粧料である。本発明における化粧料は、肌保湿効果を提供することができれば特に限定されない。化粧料としては、これらに限定されるものではないが、スキンケア製品(化粧水、乳液、日焼け止め、ハンドクリーム、リップクリーム、アイクリームなど)、メイクアップ製品(化粧下地、ファンデーションなど)などが挙げられる。本発明の化粧料において、本発明の肌保湿用組成物の含有量は、化粧料の全重量に対して、0.01~20重量%、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%とすることができる。
【0034】
本発明の化粧料は、添加剤をさらに含んでもよい。本発明の化粧料において使用することのできる添加剤としては、これらに限定されるものではないが、乳化剤、保存料、酸化防止剤、pH調節剤、緩衝剤、香料、湿潤剤、皮膚軟化剤、抗炎症剤、UV吸収剤、美白剤、抗菌剤、抗しわ剤、角質除去剤、保湿剤、ビタミン、ミネラルなどが挙げられる。
【0035】
本発明の肌保湿用組成物は、任意の方法で化粧料に加えることができる。例えば、化粧料原料として本発明の肌保湿用組成物を使用してもよく、既存の化粧料に添加してもよい。理論により拘束されるものではないが、本発明の化粧料は、本発明の肌保湿用組成物を含むことにより皮膚中のヒアルロン酸産生量を増加させることができ、それによって優れた肌保湿効果をもたらすものと考えられる。
【0036】
(肌保湿用組成物の製造方法)
本発明の第4の態様は、本発明の肌保湿用組成物の製造方法である。本発明の肌保湿用組成物の製造方法は、(a)オートミルクを含む原料を乳酸菌により発酵させてオートミルク発酵物を得る工程と、(b)オートミルク発酵物を含む肌保湿用組成物を調製する工程と、を含む。
【0037】
工程(a)は、オートミルク発酵物を得る工程である。本発明の製造方法における工程(a)の第1の実施形態は、
(a1)オートミルクを含む原料を発酵させる工程
を含む。
【0038】
工程(a1)は、オートミルクを含む原料に乳酸菌を接種することと、乳酸菌によりオートミルクを含む原料を発酵させることと、を含む。乳酸菌によってオートミルクを含む原料を発酵させるための条件は、オートミルクを含む原料を発酵させることができれば、特に限定されない。原料に接種する乳酸菌の量は、例えば、0.01~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.5~10重量%とすることができる。発酵時の温度は、15~60℃、好ましくは20~50℃、より好ましくは25~40℃とすることができる。発酵時間は、1時間~48時間、好ましくは12時間~36時間、より好ましくは22~26時間とすることができる。また、発酵は、好気条件下または嫌気条件下のどちらでも行うことができる。好気条件下で発酵させる場合、酸素濃度は、例えば、0.5~30%とすることができる。嫌気条件下で発酵させる場合、酸素濃度は、例えば、0~0.5%未満とすることができる。
【0039】
本発明の製造方法における工程(a)の第2の実施形態は、
(a2)オートミルクを含む原料を殺菌する工程と、
(a1)オートミルクを含む原料を発酵させる工程と、
を含む。
【0040】
(a1)オートミルクを含む原料を発酵させる工程は、工程(a)の第1の実施形態において説明したとおりである。
【0041】
工程(a2)は、オートミルクを含む原料を殺菌する工程である。工程(a1)の前に工程(a2)を含むことで、工程(a1)において望ましくない菌が増殖することを防ぐことができる。殺菌工程はいかなる方法で行ってもよく、例えば、90℃~180℃、好ましくは100~150℃の温度で10~20分間加熱することにより行うことができる。
【0042】
工程(b)は、オートミルク発酵物を含む肌保湿用組成物を調製する工程である。工程(b)は、本発明の肌保湿用組成物を調製することができれば、いかなる工程を含んでもよい。工程(b)は、例えば、追加の成分を添加する工程、殺菌工程、所望の形態のオートミルク発酵物を得る工程などを含むことができる。
【0043】
本発明の製造方法における工程(b)の第1の実施形態は、
(b1)オートミルク発酵物を殺菌する工程
を含む。
【0044】
工程(b)が工程(b1)を含むことにより、工程(a)で得られたオートミルク発酵物中の乳酸菌を死滅させ、発酵を停止させることができる。工程(b1)において、殺菌はいかなる方法で行ってもよく、例えば、90~180℃、好ましくは100~150℃の温度で10~20分間加熱することにより行うことができる。
【0045】
本発明の製造方法における工程(b)の第2の実施形態は、
(b2)追加の成分を添加する工程
を含む。
【0046】
本発明の肌保湿用組成物において使用することのできる追加の成分は、肌保湿用組成物の第2の実施形態において説明したとおりである。
【0047】
本発明の製造方法における工程(b)の第3の実施形態は、
(b3)所望の形態のオートミルク発酵物を得る工程
を含む。
【0048】
工程(b3)において所望の形態のオートミルク発酵物を得るための方法としては、例えば、これらに限定されるものではないが、ろ過、遠心分離、凍結乾燥、粉砕、ゲル化、打錠などを挙げることができる。また、これらの方法を任意の順で組み合わせて使用してもよい。所望の形態のオートミルク発酵物を得るための方法は、好ましくは、凍結乾燥を含む。得られた所望の形態のオートミルク発酵物は、そのまま本発明の肌保湿用組成物とすることができるが、さらなる他の工程に提供されてもよい。
【0049】
工程(b)は、工程(b1)、(b2)および(b3)はそれぞれ組み合わせて含んでもよい。すなわち、工程(b)は、工程(b1)および(b2)、工程(b2)および(b3)、または工程(b1)および(b3)を含むものでもよい。また、工程(b)は、工程(b1)、(b2)および(b3)をすべて含むことができる。さらに、工程(b1)、(b2)および(b3)はそれぞれ任意の順とすることができる。
【実施例0050】
(実施例1)
肌保湿用組成物の調製
市販のオートミルクおよび水道水を体積で1:2の割合で混合して原料とし、加熱加圧滅菌処理した。ここにラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)KTF001株(受託番号NITE P-03783)を1重量%接種し、室温で一昼夜発酵させた。発酵終了後、pHが弱酸性になるまで市販の40%水酸化ナトリウム水溶液を加え、加熱加圧滅菌処理した。得られたオートミルク発酵物を凍結乾燥し、粉砕することで、粉末形態の本発明の肌保湿用組成物を得た。
【0051】
(実施例2)
表皮角化細胞(PHK16-0b)におけるHAS3mRNA発現量の測定
ヒアルロン酸は、皮膚中に多く存在する物質であり、その役割の1つとして肌の保湿機能の維持を担っていると考えられている。皮膚中のヒアルロン酸量の減少は、肌の保湿機能を低下させ、乾燥などの原因となることから、皮膚中のヒアルロン酸量は、肌の保湿機能を評価する上での1つの指標となるものである。
【0052】
皮膚の表皮において、ヒアルロン酸はヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)によって合成される。HAS3の活性はHAS3mRNAの発現の影響を受けることが知られており、HAS3mRNAの発現が増加すると、ヒアルロン酸の産生量が増加することも一般的に知られている。すなわち、HAS3mRNAの発現の増加は、表皮におけるヒアルロン酸の合成量の増加を表すといえる。さらに、表皮中のヒアルロン酸量の増加は、肌の保湿機能の改善をもたらすと考えられる。
【0053】
したがって、表皮細胞中のHAS3mRNAの増加が認められれば、肌の保湿機能が改善されたということができる。そこで、本発明の肌保湿用組成物を表皮角化細胞に適用し、表皮角化細胞におけるHAS3mRNAの発現量を測定することで、本発明の肌保湿用組成物の肌保湿効果を評価した。
【0054】
1.培地の調製
以下に記載する方法に従い、培地A~Dを調製した。なお、レチノイン酸がHAS3mRNAの発現を増加させることは広く知られていることから、10μMレチノイン酸含有培地において同様に試験を行うことにより、実験操作の妥当性の確認を行った。
【0055】
A.0.001%試料含有培地
実施例1で調製した肌保湿用組成物10mgにDMSO100μLを加え、5分間超音波処理し、試料原液とした。この試料原液2μLを、HuMedia-KB培地(クラボウ)1.998mLに加え、0.001%(w/v)試料含有培地を調製した。
【0056】
B.0.01%試料含有培地
培地Aの調製で使用した試料原液20μLを、HuMedia-KB培地1.98mLに加え、0.01%(w/v)試料含有培地を調製した。
【0057】
C.0.1%DMSO含有培地(コントロール)
HuMedia-KB培地4995μLにDMSO5μLを加え、0.1%(v/v)DMSO含有培地を調製した。
【0058】
D.10μMレチノイン酸含有培地(ポジティブコントロール)
HuMedia-KB培地4995μLに10mMのレチノイン酸溶液5μLを加え、10μMレチノイン酸含有培地を調製した。
【0059】
2.HAS3mRNAの発現量の測定
まず、PHK16-0b細胞(JCRB細胞バンク)をHuMedia-KB培地(クラボウ)に懸濁させ、12ウェルプレートに播種(3×105個/ml/ウェル)し、37℃、5%CO2で24時間培養した。培地を除去し、新たに抗菌剤含有培地を1ml/ウェルの量で加え、37℃、5%CO2でさらに24時間培養した。なお、抗菌剤含有培地は、HuMedia-KB培地500mLに抗菌剤(ゲンタマイシン50mg/ml、アンフォテリシンB50μg/ml)0.5mlを加え、混合することで調製した。
【0060】
培養後の12ウェルプレートから培地を除去し、0.001%および0.01%試料含有培地、0.1%DMSO含有培地、並びに10μMレチノイン酸含有培地を、それぞれ1ml/ウェルの量で、3ウェルずつ添加した。この12ウェルプレートを37℃、5%CO2で24時間培養した。
【0061】
培養後、それぞれのウェルから細胞を回収し、PureLink RNA mini kit(Invitrogen by Thermo Fisher Scientific)を用いてRNAを抽出した。抽出したRNAに逆転写酵素を加え、逆転写反応を行うことでcDNAを合成した。
【0062】
合成したcDNAを鋳型とし、QuantStudio3リアルタイムPCRシステム(Thermo Fisher Scientific)を用いたリアルタイムPCR法により、HAS3遺伝子の定量を行った。定量は相対定量法により行い、内部標準遺伝子としてGAPDH(グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素)遺伝子を選択した。結果の解析にあたっては、GAPDH遺伝子の量によりHAS3遺伝子の量を補正し、その結果を元にPHK16-0b細胞におけるHAS3mRNAの発現量を求めた。結果を
図1に示す。
【0063】
なお、10μMレチノイン酸含有培地で培養した細胞は、実験操作の妥当性を確認するために使用した。レチノイン酸が表皮角化細胞中のHAS3mRNAの発現量を増加させることは広く知られている。そのため、リアルタイムPCR法を行うにあたり、10μMレチノイン酸含有培地で培養した細胞を用いて同様に操作を行い、細胞中のHAS3mRNA量が増加していることが確認されれば、実験操作に問題はないと判断できると考えられる。実際の測定結果においては、10μMレチノイン酸含有培地で培養したPHK16-0b細胞でHAS3mRNAの発現量の増加が認められたことから、実験操作は有効なものと判断した。
【0064】
3.結果
図1から明らかなとおり、0.1%DMSO含有培地と比較して、0.001%および0.01%試料含有培地においてHAS3mRNAの発現が増加していた。このことから、本発明の肌保湿用組成物が、表皮角化細胞におけるHAS3mRNAの発現を増加させることにより、ヒアルロン酸産生量を増加させ、それにより肌の保湿効果をもたらすことが示された。
【0065】
(実施例3)
表皮角化細胞(PHK16-0b)におけるヒアルロン酸産生量の測定
さらに、表皮角化細胞に本発明の肌保湿用組成物を適用し、実際のヒアルロン酸産生量を測定することで、本発明の組成物の肌保湿効果を評価した。ヒアルロン酸量の測定は、ヒアルロン酸測定キット(PGリサーチ)を用いて、競合ELISA法により行った。
【0066】
1.培地の調製
培地A~Dを実施例2の手順1.培地の調製と同様に調製した。
【0067】
2.ヒアルロン酸量の測定
まず、PHK16-0b細胞をHuMedia-KB培地に懸濁させ、12ウェルプレートに播種(3×105個/ml/ウェル)し、37℃、5%CO2で24時間培養した。培地を除去し、新たに抗菌剤含有培地を1ml/ウェルの量で加え、37℃、5%CO2でさらに24時間培養した。抗菌剤含有培地は、HuMedia-KB培地500mLに抗菌剤(ゲンタマイシン50mg/ml、アンフォテリシンB50μg/ml)0.5mlを加え、混合することで調製した。
【0068】
培養後の12ウェルプレートから培地を除去し、0.1%DMSO含有培地、0.001%試料含有培地および0.01%試料含有培地をそれぞれ1ml/ウェルの量で加え、37℃、5%CO2で培養した。培養時間は48時間(0.1%DMSO含有培地と0.001%試料含有培地との比較)または72時間(0.1%DMSO含有培地と0.001%試料含有培地と0.01%試料含有培地との比較)とした。
【0069】
培養後の上清を回収して、競合ELISA法の試料とした。競合ELISA法はヒアルロン酸測定キットを用いて、使用説明書に従って行った。測定はn=3で行い、得られた吸光度の結果から試料中のヒアルロン酸量を算出した。結果を
図2~3に示す。
【0070】
なお、10μMレチノイン酸含有培地で培養した細胞は、実験操作の妥当性を確認するために使用した。レチノイン酸が表皮角化細胞中のヒアルロン酸量を増加させることは広く知られている。そのため、ヒアルロン酸量の測定を行うにあたり、10μMレチノイン酸含有培地で培養した細胞を用いて同様に操作を行い、細胞中のヒアルロン酸が増加していることが確認されれば、実験操作に問題はないと判断できると考えられる。実際の測定結果においては、10μMレチノイン酸含有培地で培養したPHK16-0b細胞でヒアルロン酸量の増加が認められたことから、実験操作は有効なものと判断した。
【0071】
4.結果
図2は、0.1%DMSO含有培地および0.001%試料含有培地におけるヒアルロン酸産生量を比較した結果であり、
図3は、0.1%DMSO含有培地、0.001%試料含有培地、および0.01%試料含有培地におけるヒアルロン酸産生量を比較した結果である。
図2、
図3から明らかなように、0.1%DMSO含有培地に対して、0.001%試料含有培地および0.01%試料含有培地においてヒアルロン酸産生量が有意に増加した。この結果から、本発明の肌保湿用組成物がヒアルロン酸産生量の増加を通じて肌保湿効果をもたらすことが示された。
【0072】
(実施例4)
ヒトにおける肌保湿効果の評価
ヒトにおいて、本発明の食品組成物を摂取した際の肌の保湿効果について評価した。健康な成人男女5名に実施例1で調製した肌保湿用組成物1000mgを、1日1回、朝食後30分以内を目安に水またはぬるま湯と共に摂取させた。試験期間は8週間とした。
【0073】
1.評価方法
肌保湿効果の評価は、角質水分量の測定、経皮水分蒸散量(TEWL)の測定により行った。角質水分量およびTEWLの測定は、摂取開始日、および摂取開始から2週間、5週間、8週間の時点で行った。ただし、被験者Eは2週間後の角質水分量の測定ができなかったため、当該データは欠落している。角質水分量の測定は前腕内部で行い、モイスチャーチェッカーMY-808S(スカラ株式会社)を使用した。TEWLの測定は手の甲で行い、ポータブル水分蒸散計VapoMeter(Delfin Technologies社)を使用した。測定はすべて試験担当者が行い、被験者全員が同じ条件となるように行った。いずれのパラメーターも3回ずつ測定を行い、それぞれの平均値を算出した。また、摂取開始から8週間後にアンケート(自由記載)を実施した。結果を表1~2、および
図4~5に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
2.結果
表1は角質水分量の測定結果であり、表2は経皮水分蒸散量の測定結果である。表1および表2中、各被験者の結果は、被験者ごとの測定(3回)結果の平均値であり、全測定値の平均値および全測定値の標準偏差は、被験者5名の全ての測定結果、すなわち合計15回分(角質水分量の2週間後は合計12回分)の測定結果から求めた平均値および標準偏差である。また、
図4は、角質水分量の全測定値の平均をグラフで表したものであり、
図5は、経皮水分蒸散量の全測定値の平均をグラフで表したものである。
図4から明らかなように、本発明の肌保湿用組成物の摂取開始後2週間~8週間において、角質水分量の有意な増加が認められた。また、
図5から明らかなように、本発明の肌保湿用組成物の摂取開始後2週間~8週間において、経皮水分蒸散量の有意な減少が認められた。これらの結果から、本発明の肌保湿用組成物は、経口摂取により、肌の保湿効果をもたらすことが示された。
【0077】
また、アンケートでは、「季節の変わり目で痒くなることがなくなった」「肌の赤みが減った」との回答が得られた。アンケートの回答からも、本発明の肌保湿用組成物が肌保湿効果をもたらすことが示された。
本発明の肌保湿用組成物は、それ自体を食品として、または他の食品への添加物として、使用することができる。また、本発明の組成物は、化粧料の添加物として使用することもできる。