(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119371
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】巻線界磁型回転電機および巻線界磁型回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/28 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
H02K1/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026225
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】大重 成希
(72)【発明者】
【氏名】知念 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 侑典
(72)【発明者】
【氏名】石崎 優太
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601BB20
5H601CC01
5H601CC14
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601GB04
5H601GB12
5H601GB33
5H601GB48
5H601GD03
5H601GD08
5H601GD18
5H601GD22
(57)【要約】
【課題】大型化を抑制しながら、ロータコイルを保持する部分の機械的強度を確保することが可能な巻線界磁型回転電機および巻線界磁型回転電機の製造方法を提供する。
【解決手段】この巻線界磁型回転電機100は、ステータ1と、ステータ1に対向するように配置され、軸方向に貫通したシャフト挿入孔22aを含むロータコア22、シャフト挿入孔22aに挿入されたロータシャフト21、および、ロータコア22に配置されたロータコイル23を含むロータ2とを備える。ロータコア22は、シャフト挿入孔22aが設けられ、ロータコイル23が集中巻きにより巻回された第1コア部22bと、第1コア部22bとは別個に分割して設けられ、第1コア部22bに取り付けられる第2コア部22cとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアに対して界磁巻線としてのロータコイルが配置されたロータを備える巻線界磁型回転電機であって、
ステータと、
前記ステータに対向するように配置され、軸方向に貫通したシャフト挿入孔を含む前記ロータコア、前記シャフト挿入孔に挿入されたロータシャフト、および、前記ロータコアに配置された前記ロータコイルを含む前記ロータとを備え、
前記ロータコアは、
前記シャフト挿入孔が設けられ、前記ロータコイルが集中巻きにより巻回された第1コア部と、
前記第1コア部とは別個に分割して設けられ、前記第1コア部に取り付けられる第2コア部とを有する、巻線界磁型回転電機。
【請求項2】
前記第1コア部および前記第2コア部は、それぞれ、前記ロータシャフトの回転中心軸線回りの周方向に交互に並んで配置された第1ティースおよび第2ティースを有する、請求項1に記載の巻線界磁型回転電機。
【請求項3】
前記第2コア部は、前記第1コア部とは別個に分割して設けられた前記第2ティースにより構成されており、
前記第2ティースには、前記ロータコイルが巻回されていないとともに、前記第1ティースには、前記ロータコイルが集中巻きにより巻回されている、請求項2に記載の巻線界磁型回転電機。
【請求項4】
前記第2ティースは、前記ロータシャフト側に設けられ、前記第1コア部における前記シャフト挿入孔側の内径部分に係合する係合部を有する、請求項3に記載の巻線界磁型回転電機。
【請求項5】
ロータコアに対して界磁巻線としてのロータコイルが配置されたロータを備える巻線界磁型回転電機の製造方法であって、
ステータに対向して設けられた前記ロータの前記ロータコアにおいて、シャフト挿入孔が設けられた第1コア部の第1ティースに前記ロータコイルを集中巻きにより巻回するステップと、
前記第1ティースに前記ロータコイルを集中巻きにより巻回した後、前記シャフト挿入孔に挿入されるロータシャフトの回転中心軸線回りの周方向において、前記第1コア部に対して隣り合う位置に、前記第1コア部とは別個に分割して設けられた第2コア部の第2ティースを配置するステップとを備える、巻線界磁型回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線界磁型回転電機および巻線界磁型回転電機の製造方法に関し、特に、ロータコアに対して界磁巻線としてのロータコイルが配置されたロータを備える巻線界磁型回転電機および巻線界磁型回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータコアに対して界磁巻線としてのロータコイルが配置されたロータを備える巻線界磁型回転電機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ロータコアに対して界磁巻線としてのコイル(ロータコイル)が配置されたロータを備える回転電機(巻線界磁型回転電機)が開示されている。この回転電機は、ステータと、ロータと、回転シャフトと、コイルとを備えている。ロータは、ベース部材および分割コアを有するロータコアを含んでいる。ベース部材には、回転シャフトが圧入される固着孔が形成されている。ベース部材は、分割コアを保持する保持部を有している。分割コアは、ベース部材とは別個に分割して設けられている。コイルは、分割コアに集中巻きにより巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の回転電機では、ロータを回転させた際に、分割コアの重量および分割コアに巻回されたコイルの重量に応じて発生する遠心力が、ベース部材の保持部にかかる。ここで、ロータは比較的高速で回転するので、ベース部材の保持部において上記遠心力に抗して分割コアに巻かれたコイルを保持するために、ベース部材の保持部の機械的強度を高める必要がある。このため、上記特許文献1の回転電機では、ベース部材の保持部の機械的強度を高めるために、ベース部材の保持部を大きくすることが考えられるが、回転電機が大型化する。したがって、大型化を抑制しながら、コイル(ロータコイル)を保持する部分の機械的強度を確保させることが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、大型化を抑制しながら、ロータコイルを保持する部分の機械的強度を確保することが可能な巻線界磁型回転電機および巻線界磁型回転電機の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における巻線界磁型回転電機は、ロータコアに対して界磁巻線としてのロータコイルが配置されたロータを備える巻線界磁型回転電機であって、ステータと、ステータに対向するように配置され、軸方向に貫通したシャフト挿入孔を含むロータコア、シャフト挿入孔に挿入されたロータシャフト、および、ロータコアに配置されたロータコイルを含むロータとを備え、ロータコアは、シャフト挿入孔が設けられ、ロータコイルが集中巻きにより巻回された第1コア部と、第1コア部とは別個に分割して設けられ、第1コア部に取り付けられる第2コア部とを有する。
【0008】
この発明の第1の局面における巻線界磁型回転電機では、上記のように、ロータコアは、シャフト挿入孔が設けられ、ロータコイルが集中巻きにより巻回された第1コア部と、第1コア部とは別個に分割して設けられ、第1コア部に取り付けられる第2コア部とを有する。ここで、シャフト挿入孔が設けられてロータシャフトに取り付けられる第1コア部にロータコイルが巻回されることにより、ロータを回転させた際に、第1コア部に巻回されたロータコイルの重量に応じて発生する遠心力が、第1コア部におけるロータシャフトに取り付けられる環状の部分(内径部分)にかかる。したがって、ロータが回転することによりロータコイルの重量に応じて遠心力が発生した際、上記遠心力に抗して、第1コア部におけるロータシャフトに取り付けられる環状の部分(内径部分)の全周でロータコイルを保持することができる。これにより、第1コア部における第2コア部の取付部分を大きくすることなく、第1コア部にロータコイルを巻回するだけで、ロータコイルを保持する機械的強度を確保することができるので、大型化を抑制しながら、ロータコイルを保持する部分の機械的強度を確保することができる。
【0009】
上記第1の局面による巻線界磁型回転電機において、好ましくは、第1コア部および第2コア部は、それぞれ、ロータシャフトの回転中心軸線回りの周方向に交互に並んで配置された第1ティースおよび第2ティースを有する。
【0010】
このように構成すれば、第2コア部は第1コア部とは別個に分割して設けられていることにより、第1ティースにロータコイルを巻回する際、第2ティースを第1コア部から分割して取り外すことができるので、第2ティースを取り外した分だけ隣接する第1ティースとの間に大きな空間を形成することができる。その結果、第1ティースにロータコイルを巻回するための装置(たとえば、ノズル装置またはフライヤ装置)が、第1ティースにロータコイルを巻回する際に通る移動経路を、上記空間により容易に確保することができる。これにより、第2ティースを設ける部分を上記移動経路と共通にすることができるので、共通にした分だけ第1ティースと隣接する第1ティースとの間のスペースを小さくすることができる。その結果、ロータの大型化を抑制することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、第2コア部は、第1コア部とは別個に分割して設けられた第2ティースにより構成されており、第2ティースには、ロータコイルが巻回されていないとともに、第1ティースには、ロータコイルが集中巻きにより巻回されている。
【0012】
このように構成すれば、ロータを回転させた際に、第2コア部においてロータコイルの重量に応じた遠心力が発生しないので、第2コア部にロータコイルを巻回した場合と異なり、第1コア部における第2コア部を保持する部分を大きくして第1コア部の保持部の機械的強度を高めなくとも、十分に第2コア部を保持することができる。また、ロータが回転することによりロータコイルの重量に応じて遠心力が発生した際、第1コア部におけるロータシャフトに取り付けられる環状の部分(内径部分)の全周で、上記遠心力に抗して、ロータコイルを保持することができるので、十分な機械的強度でロータコイルを保持することができる。
【0013】
上記ロータコイルが巻回されていない第2ティースが設けられた第2コア部を含むロータコアを備える巻線界磁型回転電機において、好ましくは、第2ティースは、ロータシャフト側に設けられ、第1コア部におけるシャフト挿入孔側の内径部分に係合する係合部を有する。
【0014】
このように構成すれば、第1コア部において機械的強度の高い内径部分に第2ティースを係合させるので、係合部を比較的大きく設けた場合でも第1コア部の機械的強度を確保することができる。
【0015】
この発明の第2の局面における巻線界磁型回転電機の製造方法は、ロータコアに対して界磁巻線としてのロータコイルが配置されたロータを備える巻線界磁型回転電機の製造方法であって、ステータに対向して設けられたロータのロータコアにおいて、シャフト挿入孔が設けられた第1コア部の第1ティースにロータコイルを集中巻きにより巻回するステップと、第1ティースにロータコイルを集中巻きにより巻回した後、シャフト挿入孔に挿入されるロータシャフトの回転中心軸線回りの周方向において、第1コア部に対して隣り合う位置に、第1コア部とは別個に分割して設けられた第2コア部の第2ティースを配置するステップとを備える。
【0016】
この発明の第2の局面における巻線界磁型回転電機の製造方法では、上記のように、シャフト挿入孔が設けられた第1コア部の第1ティースにロータコイルを集中巻きにより巻回するステップを備える。ここで、シャフト挿入孔が設けられてロータシャフトに取り付けられる第1コア部にロータコイルが巻回されることにより、ロータを回転させた際に、第1コア部に巻回されたロータコイルの重量に応じて発生する遠心力が、第1コア部におけるロータシャフトに取り付けられる環状の部分(内径部分)にかかる。したがって、ロータが回転することによりロータコイルの重量に応じて遠心力が発生した際、上記遠心力に抗して、第1コア部におけるロータシャフトに取り付けられる環状の部分(内径部分)の全周でロータコイルを保持することができる。これにより、第1コア部における第2コア部の取付部分を大きくすることなく、第1コア部にロータコイルを巻回するだけで、ロータコイルを保持する機械的強度を確保することができるので、大型化を抑制しながら、ロータコイルを保持する部分の機械的強度を確保することが可能な巻線界磁型回転電機の製造方法を提供することができる。また、第1ティースにロータコイルを集中巻きにより巻回した後、シャフト挿入孔に挿入されるロータシャフトの回転中心軸線回りの周方向において、第1コア部に対して隣り合う位置に、第1コア部とは別個に分割して設けられた第2コア部の第2ティースを配置するステップを備える。これにより、第1ティースにロータコイルを巻回する際、第2ティースを第1コア部から分割して取り外した状態で第1ティースにロータコイルを巻回することができるので、第2ティースを取り外した分だけ隣接する第1ティースとの間に大きな空間を形成することができる。その結果、第1ティースにロータコイルを巻回するための装置(たとえば、ノズル装置またはフライヤ装置)が、第1ティースにロータコイルを巻回する際に通る移動経路を、上記空間により容易に確保することができる。これにより、第2ティースを設ける部分を上記移動経路と共通にすることができるので、共通にした分だけ第1ティースと隣接する第1ティースとの間のスペースを小さくすることができる。その結果、ロータの大型化を抑制することができる。
【0017】
なお、上記第1の局面における巻線界磁型回転電機において、以下のような構成も考えられる。
【0018】
(付記項1)
上記第1ティースを有する第1コア部および第2ティースを有する第2コア部を含む巻線界磁型回転電機において、第2コア部は、シャフト挿入孔が設けられているとともに、ロータシャフトの延びる方向において第1コア部とは別個に分割して設けられており、第1ティースには、ロータコイルが集中巻きにより巻回されているとともに、第2ティースには、ロータコイルが集中巻きにより巻回されている。
【0019】
このように構成すれば、第2コア部におけるロータシャフトに取り付けられる環状の部分(内径部分)の全周で、上記遠心力に抗して、ロータコイルを保持することができるので、十分な機械的強度でロータコイルを保持することができるとともに、第1コア部におけるロータシャフトに取り付けられる部分全周で、上記遠心力に抗して、ロータコイルを保持することができるので、十分な機械的強度でロータコイルを保持することができる。
【0020】
(付記項2)
上記ロータコイルが巻回されていない第2ティースが設けられた第2コア部を含むロータコアを備える巻線界磁型回転電機において、ロータは、ロータシャフトの回転中心軸線の延びる方向に直交する径方向において、ステータの内側に配置されたインナーロータである。
【0021】
このように構成すれば、インナーロータを回転させた際に、第2コア部においてロータコイルの重量に応じた遠心力が発生しないので、インナーロータの第2コア部にロータコイルを巻回した場合と比較して、第2コア部において発生する遠心力を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態の巻線界磁型回転電機の平面図である。
【
図2】実施形態の巻線界磁型回転電機のロータの斜視図である。
【
図3】実施形態の巻線界磁型回転電機のロータの平面図である。
【
図4】実施形態の巻線界磁型回転電機の第1コア部の平面図である。
【
図5】実施形態の巻線界磁型回転電機の第2コア部の平面図である。
【
図6】実施形態の巻線界磁型回転電機の製造方法のフローチャートである。
【
図7】実施形態の巻線界磁型回転電機において第1コア部に第2コア部を取り付ける状態を示した分解斜視図である。
【
図8】実施形態の第1変形例における巻線界磁型回転電機の第1コア部および第2コア部の分解斜視図である。
【
図9】実施形態の第2変形例における巻線界磁型回転電機の第1コア部および第2コア部の分解斜視図である。
【
図10】実施形態の第3変形例における巻線界磁型回転電機の第1コア部および第2コア部の平面図である。
【
図11】実施形態の第4変形例における巻線界磁型回転電機の第1コア部および第2コア部の平面図である。
【
図12】実施形態の第5変形例における巻線界磁型回転電機の第1コア部および第2コア部の平面図である。
【
図13】実施形態の第6変形例における巻線界磁型回転電機の第1コア部および第2コア部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1~
図7を参照して、実施形態による巻線界磁型回転電機100の構成について説明する。
【0025】
巻線界磁型回転電機100は、巻線界磁式の同期モータ(Electrically Excited Synchronous Motor、EESM)である。巻線界磁型回転電機100は、駆動用モータとして車両に搭載されることが想定されている。
【0026】
図1に示すように、具体的には、巻線界磁型回転電機100は、ステータ1と、ロータ2とを備えている。巻線界磁型回転電機100は、ステータ1の内側にロータ2を対向させて配置したインナーロータ型の回転電機である。
【0027】
ここで、ロータ2の後述するロータシャフト21の延びる方向をZ方向とし、Z方向のうちの一方をZ1方向とし、他方をZ2方向とする。また、ロータシャフト21回りの周方向をR方向とする。ロータシャフト21の延びる方向に直交する径方向をD方向とし、D方向のうちの外側をD1方向とし、D方向のうちの内側をD2方向とする。
【0028】
(ステータ)
図1に示すように、ステータ1は、ステータコア11と、ステータコイル12とを備えている。ステータコア11は、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されており、磁束を透過可能に構成されている。ステータコア11は、複数のティース部11aを有している。複数のティース部11aの各々は、ステータコア11のD1方向側の外径部からD2方向に突出している。ステータコイル12は、ステータコア11の複数のティース部11aの各々に巻回されている。これにより、ステータコイル12は、ステータコア11に配置されている。ステータコイル12は、電流が供給されることにより、磁界を発生させるマグネットワイヤにより構成されている。ステータコイル12は、図示しない外部電源に接続されている。ステータコイル12には、外部電源から電流(たとえば、3相交流電力)が供給される。
【0029】
(ロータ)
ロータ2は、D方向において、ステータ1のD2方向側(内側)に配置されたインナーロータにより構成されている。
【0030】
具体的には、
図2に示すように、ロータ2は、ロータシャフト21(点線で表示)と、ロータコア22と、ロータコイル23とを含んでいる。このように、巻線界磁型回転電機100は、ロータコア22に対して界磁巻線としてのロータコイル23が配置されたロータ2を備えている。
【0031】
ロータシャフト21は、巻線界磁型回転電機100の回転中心となる軸部材である。ロータシャフト21は、回転中心軸線Cの延びる方向に沿って延びている。ロータシャフト21は、ロータコア22の後述するシャフト挿入孔22a(
図3を参照)に挿入されている。
【0032】
ロータコア22は、D方向において、ステータ1に対向するように配置されている。
【0033】
具体的には、
図3に示すように、ロータコア22は、シャフト挿入孔22aと、第1コア部22bと、第2コア部22cとを有している。
【0034】
シャフト挿入孔22aは、Z方向に第1コア部22bを貫通している。シャフト挿入孔22aは、第1コア部22bのD2方向側の内径部分221bに設けられている。
【0035】
〈第1コア部〉
本実施形態の第1コア部22bには、ロータコイル23が集中巻きにより巻回されている。このような第1コア部22bは、複数の電磁鋼板がZ方向に積層されることにより形成されている。第1コア部22bは、強磁性体材料で形成されているので、磁束を透過するように構成されている。
【0036】
具体的には、
図4に示すように、第1コア部22bは、内径部分221bと、第1ティース222bと、係合部223bとを有している。
【0037】
内径部分221bは、Z1方向側から見て、第1コア部22bにおけるシャフト挿入孔22aの周囲の環状の部分である。内径部分221bは、D方向において、シャフト挿入孔22aのD1方向側の縁と第1ティース222bのD2方向側の端部との間の部分である。
【0038】
第1ティース222bは、内径部分221bからD1方向に突出している。第1ティース222bは、内径部分221bと一体的に設けられている。第1ティース222bには、ロータコイル23が集中巻きにより巻回されている。第1ティース222bは、R方向(周方向)に等角度間隔で並んで内径部分221bに一体的に複数(4つ)設けられている。複数の第1ティース222bの互いの間には、空間Mが形成されている。空間Mは、複数の第1ティース222bの数に合わせて複数(4つ)形成されている。空間Mは、R方向およびD方向の各々において、ロータコイル23(
図3を参照)を配置可能な寸法を有している。空間Mは、R方向およびD方向の各々において、第2コア部22c(
図3を参照)を配置可能な寸法を有している。また、空間Mは、R方向およびD方向の各々において、ロータコイル23の巻くためのノズル装置またはフライヤ装置を通過可能な寸法を有している。なお、第1ティース222bは、R方向(周方向)に等角度間隔で並んで、1~3個、または、5個以上設けられてもよい。
【0039】
係合部223bは、第2コア部22c(
図5を参照)と係合するように構成されている。係合部223bは、内径部分221bのD1方向側の端部をD2方向に窪ませて形成された溝である。係合部223bは、Z1方向側から見て、多角形形状(略五角形形状)を有している。係合部223bは、Z方向において、第1コア部22bの内径部分221bを貫通している。係合部223bは、R方向(周方向)に等角度間隔で並んで内径部分221bに複数(4つ)設けられている。なお、係合部223bは、第2コア部22cの数に合わせて設けられていればよく、1~3個、または、5個以上設けられてもよい。
【0040】
〈第2コア部〉
図5に示すように、第2コア部22cは、第1コア部22bとは別個に分割して設けられている。第2コア部22cは、第1コア部22bとは別個に分割して設けられた第2ティース221cにより構成されている。第2ティース221cは、内径部分221bからD1方向に突出している。第2ティース221cは、内径部分221bとは別個に設けられている。第2ティース221cには、ロータコイル23が集中巻きにより巻回されていない。第2ティース221cは、R方向(周方向)に等角度間隔で並んで複数(4つ)設けられている。ここで、第2ティース221cは、ロータシャフト21の回転中心軸線C回りのR方向(周方向)に第1ティース222bと交互に並んで配置されている。複数の第2ティース221cの各々は、R方向において、空間M(
図4を参照)に配置されている。なお、第2ティース221cは、R方向(周方向)に等角度間隔で並んで、1~3個、または、5個以上設けられてもよい。
【0041】
第2ティース221cには、ロータシャフト21の回転中心軸線C側に係合部222cが設けられている。係合部222cは、係合部223bの形状に合わせて、Z1方向側から見て、多角形形状(略五角形形状)を有している。係合部222cは、第1コア部22bにおけるシャフト挿入孔22a側の内径部分221bに係合するように構成されている。すなわち、係合部222cは、内径部分221bに設けられた係合部223b(
図4を参照)に係合する。ここで、第2コア部22cは、係合部222cにおいて係合部223bと、圧入、焼き嵌め、嵌合、または、締結などにより係合する。
【0042】
〈ロータコイル〉
図3に示すように、ロータコイル23は、第1コア部22bの複数の第1ティース222bの各々に巻回されている。このように、ロータコイル23は、ロータコア22に設けられている。ロータコイル23は、電流が供給されることにより、磁界を発生させるマグネットワイヤにより構成されている。ロータコイル23には、外部電源から電流が供給される。これにより、ロータコイル23は、外部電源から供給された電流により、磁界を発生させるように構成されている。
【0043】
(巻線界磁型回転電機の製造方法)
図6および
図7を参照して、巻線界磁型回転電機100の製造方法について説明する。
【0044】
図6に示すように、ステップS1において、複数の電磁鋼板を積層させることにより、シャフト挿入孔22aが形成された第1コア部22bが形成される。また、複数の電磁鋼板を積層させることにより、第2コア部22cが形成される。ステップS2において、第1コア部22bの第1ティース222bにロータコイル23が集中巻きにより巻回されてる(
図7を参照)。すなわち、ステップS2は、ステータ1に対向して設けられたロータ2のロータコア22において、シャフト挿入孔22aが設けられた第1コア部22bの第1ティース222bにロータコイル23を集中巻きにより巻回するステップである。
【0045】
この際、第1ティース222bと隣接する第1ティース222bとの間にノズル装置またはフライヤ装置を通過させることにより、第1コア部22bの第1ティース222bにロータコイル23が集中巻きにより巻回される。
【0046】
ここで、第1コア部22bに対して第2コア部22cは分割された状態であるので、第1コア部22bにおいて、第1ティース222bと隣接する第1ティース222bとの間の空間は、第2コア部22cが配置されていない分だけ大きい。したがって、第1ティース222bと隣接する第1ティース222bとの間には、ロータコイル23の巻くためのノズル装置またはフライヤ装置を通過させる十分な寸法が確保されている。
【0047】
ステップS3において、第1コア部22bに第2コア部22cが取り付けられる。すなわち、第2コア部22cの係合部222cが、第1コア部22bの係合部223bにZ1方向側から挿入(圧入)される(
図7を参照)。このように、ステップS3は、第1ティース222bにロータコイル23を集中巻きにより巻回した後、シャフト挿入孔22aに挿入されるロータシャフト21の回転中心軸線C回りのR方向において、第1コア部22bに対して隣り合う位置に、第1コア部22bとは別個に分割して設けられた第2コア部22cの第2ティース221cを配置するステップである。
【0048】
ステップS4において、ステータ1の内側にロータ2が配置された後、巻線界磁型回転電機100の製造方法が終了する。
【0049】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0050】
本実施形態では、上記のように、ロータコア22は、シャフト挿入孔22aが設けられ、ロータコイル23が集中巻きにより巻回された第1コア部22bと、第1コア部22bとは別個に分割して設けられ、第1コア部22bに取り付けられる第2コア部22cとを有している。ここで、シャフト挿入孔22aが設けられてロータシャフト21に取り付けられる第1コア部22bにロータコイル23が巻回されることにより、ロータ2を回転させた際に、第1コア部22bに巻回されたロータコイル23の重量に応じて発生する遠心力が、第1コア部22bにおけるロータシャフト21に取り付けられる環状の部分(内径部分221b)にかかる。したがって、ロータ2が回転することによりロータコイル23の重量に応じて遠心力が発生した際、上記遠心力に抗して、第1コア部22bにおけるロータシャフト21に取り付けられる環状の部分(内径部分221b)の全周でロータコイル23を保持することができる。これにより、第1コア部22bにおける第2コア部22cの取付部分を大きくすることなく、第1コア部22bにロータコイル23を巻回するだけで、ロータコイル23を保持する機械的強度を確保することができるので、大型化を抑制しながら、ロータコイル23を保持する部分の機械的強度を確保することができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、第1コア部22bおよび第2コア部22cは、それぞれ、ロータシャフト21の回転中心軸線C回りのR方向に交互に並んで配置された第1ティース222bおよび第2ティース221cを有している。これにより、第2コア部22cは第1コア部22bとは別個に分割して設けられていることにより、第1ティース222bにロータコイル23を巻回する際、第2ティース221cを第1コア部22bから分割して取り外すことができるので、第2ティース221cを取り外した分だけ隣接する第1ティース222bとの間に大きな空間Mを形成することができる。この結果、第1ティース222bにロータコイル23を巻回するための装置(たとえば、ノズル装置またはフライヤ装置)が、第1ティース222bにロータコイル23を巻回する際に通る移動経路を、上記空間Mにより容易に確保することができる。これにより、第2ティース221cを設ける部分を上記移動経路と共通にすることができるので、共通にした分だけ第1ティース222bと隣接する第1ティース222bとの間のスペースを小さくすることができる。この結果、ロータ2の大型化を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、第2コア部22cは、第1コア部22bとは別個に分割して設けられた第2ティース221cにより構成されている。第2ティース221cには、ロータコイル23が巻回されていない。第1ティース222bには、ロータコイル23が集中巻きにより巻回されている。これにより、ロータ2を回転させた際に、第2コア部22cにおいてロータコイル23の重量に応じた遠心力が発生しないので、第2コア部22cにロータコイル23を巻回した場合と異なり、第1コア部22bにおける第2コア部22cを保持する部分を大きくして第1コア部22bの保持部の機械的強度を高めなくとも、十分に第2コア部22cを保持することができる。また、ロータ2が回転することによりロータコイル23の重量に応じて遠心力が発生した際、第1コア部22bにおけるロータシャフト21に取り付けられる環状の部分(内径部分)の全周で、上記遠心力に抗して、ロータコイル23を保持することができるので、十分な機械的強度でロータコイル23を保持することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、第2ティース221cは、ロータシャフト21側の根元に設けられ、第1コア部22bにおけるシャフト挿入孔22a側の内径部分221bに係合する係合部222cを有している。これにより、第1コア部22bにおいて機械的強度の高い内径部分221bに第2ティース221cを係合させるので、係合部222cを比較的大きく設けた場合でも第1コア部22bの機械的強度を確保することができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、巻線界磁型回転電機100の製造方法は、シャフト挿入孔22aが設けられた第1コア部22bの第1ティース222bにロータコイル23を集中巻きにより巻回するステップS2を備えている。ここで、シャフト挿入孔22aが設けられてロータシャフト21に取り付けられる第1コア部22bにロータコイル23が巻回されることにより、ロータ2を回転させた際に、第1コア部22bに巻回されたロータコイル23の重量に応じて発生する遠心力が、第1コア部22bにおけるロータシャフト21に取り付けられる環状の部分(内径部分221b)にかかる。したがって、ロータ2が回転することによりロータコイル23の重量に応じて遠心力が発生した際、上記遠心力に抗して、第1コア部22bにおけるロータシャフト21に取り付けられる環状の部分(内径部分221b)の全周でロータコイル23を保持することができる。これにより、第1コア部22bにおける第2コア部22cの取付部分を大きくすることなく、第1コア部22bにロータコイル23を巻回するだけで、ロータコイル23を保持する機械的強度を確保することができるので、大型化を抑制しながら、ロータコイル23を保持する部分の機械的強度を確保することが可能な巻線界磁型回転電機100の製造方法を提供することができる。また、第1ティース222bにロータコイル23を集中巻きにより巻回した後、シャフト挿入孔22aに挿入されるロータシャフト21の回転中心軸線C回りの周方向において、第1コア部22bに対して隣り合う位置に、第1コア部22bとは別個に分割して設けられた第2コア部22cの第2ティース221cを配置するステップS4を備えている。これにより、第1ティース222bにロータコイル23を巻回する際、第2ティース221cを第1コア部22bから分割して取り外した状態で第1ティース222bにロータコイル23を巻回することができるので、第2ティース221cを取り外した分だけ隣接する第1ティース222bとの間に大きな空間Mを形成することができる。この結果、第1ティース222bにロータコイル23を巻回するための装置(たとえば、ノズル装置またはフライヤ装置)が、第1ティース222bにロータコイル23を巻回する際に通る移動経路を、上記空間Mにより容易に確保することができる。これにより、第2ティース221cを設ける部分を上記移動経路と共通にすることができるので、共通にした分だけ第1ティース222bと隣接する第1ティース222bとの間のスペースを小さくすることができる。この結果、ロータ2の大型化を抑制することができる。
【0055】
[変形例]
今回開示された上記実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0056】
たとえば、上記実施形態では、第2コア部22cは、第1コア部22bとは別個に分割して設けられた第2ティース221cにより構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図8に示す第1変形例のように、第2コア部322cは、シャフト挿入孔3221cが設けられているとともに、Z方向において第1コア部22bとは別個に分割して設けられていてもよい。第1ティース222bには、ロータコイル23が集中巻きにより巻回されているとともに、第2ティース3222cには、ロータコイル23が集中巻きにより巻回されている。
図9に示す第2変形例のように、第2コア部422cは、シャフト挿入孔4221cが設けられているとともに、Z方向において第1コア部22bとは別個に分割して設けられていてもよい。第1ティース222bには、ロータコイル23が集中巻きにより巻回されているとともに、第2ティース4222cには、ロータコイル23が集中巻きにより巻回されていない。
【0057】
また、上記実施形態では、係合部222cは、Z1方向側から見て、多角形形状(略五角形形状)を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図10に示す第3変形例のように、第2コア部522cの係合部5222cは、Z1方向側から見て、矩形形状を有していてもよいし、
図11に示す第4変形例のように、第2コア部622cの係合部6222cは、Z1方向側から見て、テーパ形状を有していてもよい。これらの場合、第2コア部の係合部が、第1コア部の係合部に径方向の外側から挿入(圧入)されてもよい。また、
図12に示す第5変形例のように、第2コア部722cの係合部7222cは、Z1方向側から見て、凸形状を有していてもよいし、
図13に示す第6変形例のように、第2コア部822cの係合部8222cは、Z1方向側から見て、キー溝を有していてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、巻線界磁型回転電機100は、駆動用モータとして車両に搭載されることが想定されていると説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、巻線界磁型回転電機は、発電機のジェネレータとして用いられることも想定している。
【符号の説明】
【0059】
1 ステータ
2 ロータ
21 ロータシャフト
22 ロータコア
22a、3221c、4221c シャフト挿入孔
22b 第1コア部
22c、322c、422c 第2コア部
23 ロータコイル
100 巻線界磁型回転電機
221b 内径部分
221c、3222c、4222c、9221c 第2ティース
222b 第1ティース
222c、5222c、6222c、7222c、8222c 係合部
C 回転中心軸線