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特開2024-119372混合型材料セット及び混合型材料セットの使用方法
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  • 特開-混合型材料セット及び混合型材料セットの使用方法 図1
  • 特開-混合型材料セット及び混合型材料セットの使用方法 図2
  • 特開-混合型材料セット及び混合型材料セットの使用方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119372
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】混合型材料セット及び混合型材料セットの使用方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/32 20060101AFI20240827BHJP
   B65D 30/22 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B65D81/32 D
B65D30/22 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026232
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000159032
【氏名又は名称】菊水化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀 淳一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】吉成 拓也
【テーマコード(参考)】
3E013
3E064
【Fターム(参考)】
3E013AA02
3E013AA05
3E013AB01
3E013AB03
3E013AB10
3E013AC01
3E013AC11
3E013AD33
3E013AE12
3E013AF02
3E013AF17
3E013AF23
3E064AA01
3E064BA21
3E064BA30
3E064BC18
3E064FA04
3E064FA06
3E064HN05
3E064HT06
(57)【要約】
【課題】分離して格納された複数の材料を一つの包装用容器の内部において混合するものであって、混合するまでの保存中や搬送中の場合でも各材料が混ざり合うことが無く、必要なときに容易に素早く均一に混合することができる混合型材料セット及び混合型材料セットの使用方法を提供する。
【解決手段】袋内部に1又は2以上の隔壁が設けられ複数個の空間部を有する袋で、この隔壁が一定幅の貼代を持った接着部で袋内部に接着され、この接着部がある空間Aに液体の材料が格納され、空間Aに隣り合う接着部の無い空間Bに格納された材料に対して、袋外部から隔壁方向に圧力を掛け、隔壁の接着部を剥がしながら、空間A側に移動させ、互いの材料を混合させることにより、混合するまでの保存中や搬送中の場合でも各材料が混ざり合うことが無く、混合容器を必要とせず、各材料を常に適切な混合割合で、容易に、素早く均一に混ぜ合わせ、混合することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋内部に1又は2以上の隔壁が設けられ複数個の空間部を有する袋で、その袋内壁と隔壁とにより形成された空間部の個数に応じた材料が格納され、その材料のうち少なくとも1種類が液体であり、その隔壁により各々の材料が混ざり合うこと無く同一袋の中に格納された混合型材料セットであって、
この隔壁が一定幅の貼代を持った接着部で袋内部に接着され、この接着部がある空間Aに液体の材料が格納され、空間Aに隣り合う接着部の無い空間Bに格納された材料に対して、袋外部から隔壁方向に圧力を掛け、隔壁の接着部を剥がしながら、空間A側に移動させ、互いの材料を混合させることができる混合型材料セット。
【請求項2】
前記材料を格納させた空間Aと空間Bとの厚みが同じ又は空間Bの方が厚いものである請求項1に記載の混合材料セット。
【請求項3】
前記空間Bには、粉体材料が格納されている請求項1又は請求項2に記載の混合型材料セット。
【請求項4】
袋内部に1又は2以上の隔壁が設けられ複数個の空間部を有する袋で、その袋内壁と隔壁とにより形成された空間部の個数に応じた材料が格納され、その材料のうち少なくとも1種類が液体であり、その隔壁により各々の材料が混ざり合うこと無く同一袋の中に格納された混合型材料セットであって、
この隔壁が一定幅の貼代を持った接着部で袋内部に接着され、この接着部がある空間Aに液体の材料が格納され、空間Aの隣り合う接着部の無い空間Bに格納された材料に対して、袋外部から隔壁方向に圧力を掛け、隔壁の接着部を剥がしながら、空間A側に移動させ、互いの材料を袋外部から圧力を掛けながら混合させた後に、
混合した材料を袋から取り出し、使用する混合型材料セットの使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2種類以上の材料を格納された袋内で混合することができる混合材料セット及びその混合材料セットの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、2種類以上の材料の混合が必要な場合では、それぞれの材料の必要量を計り、混合用の容器に入れ、混合することが行われている。又、それぞれの材料の必要量が容器に格納され、使用前に混合用の容器に入れ、混合することや、どちらかの容器に格納された材料にもう一つの材料を入れ、混合することが行われている。
これらの混合には、ミキサーなどの混合機を用いられ行われる。
【0003】
しかし、このような混合を行う場合には、その材料の計量が必要な場合では、その計量のための計量器の用意や計量ミスなどがある場合がある。
また、混合機の用意が必要であり、その混合機を動かすための電気や圧縮空気が必要なことがある。又、混合用の容器が必要な場合や、混合に用いられた材料の容器の処分などが必要になる。
【0004】
これらのことは、その材料の必要量が多い場合では、それほど手間にはならないことがあるが、例えば補修材料などその必要量が少ない場合では、手間となることが多い。
そのため、様々な提案がされている。
【0005】
先行文献1では、内部が第一の空間と第二の空間とに分かれている袋であって、前記第一の空間にはセメントモルタルが、前記第二の空間には水がそれぞれ収容されており、前記第一の空間と前記第二の空間との境界は剥離可能であるように形成されており、前記境界を剥離することにより、前記セメントモルタルと前記水とが前記袋の内部において混合するようになっている袋が開示されている。
【0006】
これにより、混合容器を必要とせず、各素材を常に適切な混合割合で混合することができ、かつ、目的物の必要量が少量であっても、所望の量の目的物を提供することができるものである。
【0007】
先行文献2では、水硬性組成物材料を構成する水硬性組成物粉体と水とを別個に収納する収納部と、該パウチ容器を表及び裏側から挟み込んで該収納部同士を区画する仕切り具とを備える水硬性組成物材料用パウチ容器を、混合時には水硬性組成物粉体が収容されている収納部を上部に、かつ、水が収納されている収納部を下部の位置となるようにし、前記収納部の上端部と前記収納部の下端部とを引っ張ることにより、該収納部同士を区画する前記仕切り具がはずれて、収納部の水硬性組成物粉体が収納部の水中に落下し、その衝撃で該水硬性組成物粉体と該水とが予備混合し、さらに該パウチ容器を外部より変形させて混合することにより水硬性組成物材料を調製する水硬性組成物材料用パウチ容器の使用方法が開示されている。
【0008】
これにより、少量の水硬性組成物を簡単に施工することができ、必要なときに簡便にモルタルを迅速に調製することができ、モルタルの撹拌混合作業と充填作業を同一の容器で行い、撹拌混合作業中の粉塵の発生をほぼゼロに抑え、上向き施工、孔内充填施工を含む、コテやヘラでは不得意としていた施工を簡便に行うことのできる、水硬性組成物材料用容器、特にパウチ容器の使用方法が開示されている。
【0009】
先行文献3では、分離手段によって内部が二つの空間(A)(B)に分割された包装用容器において、空間(A)には水および吸水性樹脂からなるゾル状組成物が収容され、空間(B)には無機結合材料を含んでなるモルタル系材料が収容されている左官材料製造キットであって、空間(A)と空間(B)のそれぞれの全体容積の合計量に対する、空間(A)におけるゾル状組成物が占める容積と空間(B)におけるモルタル系材料が占める容積の合計容積の割合が80%以下である左官材料製造キットが開示されている。
【0010】
これにより、分離されて納められている二つの材料を一つの包装用容器の内部において混合する際に、より速く均一に混合ができる左官材料製造キットを提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002-144323号公報
【特許文献2】特開2011-025424号公報
【特許文献3】特開2015-000825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1にある袋では、その第一の空間と第二の空間との境界は剥離可能であるように形成されているため、輸送中などの外部からの圧力により、その境界が剥離することがある。又、その境界の強度を高めると必要な時に、剥離しづらくなることもある。
【0013】
特許文献2にある水硬性組成物材料用パウチ容器の使用方法では、その予備混合では、粉体材料の落下により行われることと、仕切り具の外し方により、バラつくことがある。又、その仕切り具の種類や取り付け方により、搬送中などに外れることや必要な時に外れにくくなっている場合もある。
【0014】
特許文献3にある左官材料製造キットでは、この二つの材料の分離手段が十分でない場合では、空間に掛かる圧力が不均一に掛かり、その分離手段が外れることがある。これは、このキットを縦積みで保管や搬送している場合などがあるためである。
【0015】
本開示は、分離して格納された複数の材料を一つの包装用容器の内部において混合するものであって、混合するまでの保存中や搬送中の場合でも各材料が混ざり合うことが無く、混合容器を必要とせず、各材料を常に適切な混合割合で、必要なときに容易に、素早く均一に混合することができる混合型材料セット及び混合型材料セットの使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
袋内部に1又は2以上の隔壁が設けられ複数個の空間部を有する袋で、その袋内壁と隔壁とにより形成された空間部の個数に応じた材料が格納され、その材料のうち少なくとも1種類が液体であり、その隔壁により各々の材料が混ざり合うこと無く同一袋の中に格納された混合型の材料であって、この隔壁が一定幅の貼代を持った接着部で袋内部に接着され、この接着部がある空間Aに液体の材料が格納され、空間Aの隣り合う接着部の無い空間Bに格納された材料に対して、袋外部から隔壁方向に圧力を掛け、隔壁の接着部を剥がしながら、空間A側に移動させ、互いの材料を混合させることができるものである。
【0017】
これにより、分離して格納された複数の材料を一つの包装用容器の内部において混合するものであって、混合するまでの保存中や搬送中の場合でも各材料が混ざり合うことが無く、混合容器を必要とせず、各材料を常に適切な混合割合で、必要なときに容易に、素早く均一に混ぜ合わせ、混合することができるものである。
【0018】
前記材料を格納させた空間Aと空間Bとの厚みが同じ又は空間Bの方が厚いものであることにより、混合型材料セットを積み重ねて、保管や搬送している場合など空間に掛かる圧力が均一に掛かり、その分離手段が外れることがより少ないものとなる。
前記空間Bには、粉体材料が格納されていることにより、その混合の際に粉塵を発生させることがなく、継粉になり難いものとなる。
【0019】
袋内部に1又は2以上の隔壁が設けられ複数個の空間部を有する袋で、その袋内壁と隔壁とにより形成された空間部の個数に応じた材料が格納され、その材料のうち少なくとも1種類が液体であり、その隔壁により各々の材料が混ざり合うこと無く同一袋の中に格納された混合型材料セットであって、この隔壁が一定幅の貼代を持った接着部で袋内部に接着され、この接着部がある空間Aに液体の材料が格納され、空間Aの隣り合う接着部の無い空間Bに格納された材料に対して、袋外部から隔壁方向に圧力を掛け、隔壁の接着部を剥がしながら、空間A側に移動させ、互いの材料を袋外部から圧力を掛けながら混合させた後に、混合した材料を袋から取り出し、使用することである。
【0020】
これにより、分離して格納された複数の材料を一つの包装用容器の内部において混合するものであって、混合するまでの保存中や搬送中の場合でも各材料が混ざり合うことが無く、混合容器を必要とせず、各材料を常に適切な混合割合で、必要なときに容易に、素早く均一に混ぜ合わせ、混合することができ、適切に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の混合型材料セットに用いられる袋の一例の断面を示す。
図2図1に示した袋を用いた混合材料セットで、その空間Bの外部から隔壁12方向に圧力を掛け、接着部13を徐々に剥がしながら、空間Bの材料が空間Aにある液体の材料の中に移動する様子を示す。
図3】本開示の混合型材料セットに用いられる袋の空間部が3の場合の一例の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、袋内部に1又は2以上の隔壁が設けられ複数個の空間部を有する袋で、その袋内壁と隔壁とにより形成された空間部の個数に応じた材料が格納され、その材料のうち少なくとも1種類が液体であり、その隔壁により各々の材料が混ざり合うこと無く同一袋の中に格納された混合型の材料であって、この隔壁が一定幅の貼代を持って袋内部に接着され、この貼代がある空間Aに液体の材料が格納され、空間Aの隣り合う貼代の無い空間Bに格納された材料に対して、袋外部から隔壁方向に圧力を掛け、隔壁の接着部を剥がしながら、空間A側に移動させ、互いの材料を混合させることができるものである。
【0023】
本開示の混合型材料セットに用いられる袋の一例の断面を図1示す。この図1の袋11は、その内部に隔壁12が設けられ、空間Aと空間Bの空間部が形成されているものである。
この袋11の内部は、2以上の複数の空間があり、それぞれの空間に材料が格納され、その材料の少なくとも1種類が液体であることから、この袋11は、液体を外部に漏れの無いように格納することが可能で、外部からの水や水溶液,湿気などを遮断することができる素材であればよい。
【0024】
また、袋11内部に格納された液体を含めた各材料を移動及び混合が可能なものである必要があるため、その素材は、十分な柔軟性のあるものである。更に、格納された複数の材料が輸送中や保存中に、その袋11の破損により、外部に放出されることが無いような強度のある素材であることが必要である。
このような条件を満たすものであれば、その素材に特に制限されるものではないが、ビニールなどの樹脂製のフィルムを加工し、袋状にしたものが用いられることが多い。又、これらにアルミなどを蒸着させたものや織布や不織布,紙などに樹脂をコーティングしたものも用いられることがある。
【0025】
このような形態を用いることで、液体を格納でき、外部の水や湿気を遮断することができ、その袋11が柔軟性のあるもので、材料の格納に必要な強度のあるものである。
これら樹脂製フィルムには、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂の単層フィルムやこれらのフィルムにポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンなどのポリオレフィンフィルム、アルミ等の金属箔や蒸着層、シリカやアルミナ等の金属酸化物蒸着層などを積層した積層フィルムなどがある。
【0026】
これらの素材を用いて袋状に加工する場合、袋11の端である端部14で素材同士をシールすることになる。又、袋11の内部に隔壁12を一定幅の貼代を持った接着部13でシールすることになる。
このシールには、フィルムの特性を生かし、接着部13や端部14で熱融着させるヒートシールや接着剤などによるコールドシールなどがある。
【0027】
多くの場合では、熱融着のヒートシールで行われることが多く、接着剤を用いることなく素材同士をシールすることができ、シールも短時間で、容易なものであり、そのシール性も十分なものである。
また、接着部13のヒートシールでは、引き剥がしにより比較的容易に剥がせるようにした剥離容易性ヒートシールであることが好ましい。又、シール幅により調整することも可能である。
【0028】
このシール部分である接着部13や端部14のシール幅は、1~10mmの範囲が好ましく、この範囲内であれば、接着部13の場合では、そのシールが十分で、空間Bに格納された材料に対して、袋11の外部から隔壁12方向に圧力を掛け、隔壁12の接着部13を剥がしながら、空間A側に移動させ易いものとなる。
また、端部14の場合では、そのシールが十分で、格納された材料の外部への流出が少ないものとなる。
【0029】
このシール幅は、接着部13の場合では1~7mmの範囲が好ましく、端部14の場合では、5~10mmの範囲が好ましい。
この範囲内であれば、接着部13では、十分なシール性が保たれ、剥離が比較的容易なものとなる。端部14では、十分なシール性を得ることができる。
【0030】
上記のように混合材料セットに用いられる袋11は、構成される。この袋11の空間Aや空間Bのような空間部には、その空間部の個数に応じた材料が格納されている。
この材料には、使用直前に混合し使用するものであり、主剤と硬化剤とに分かれた2材型の接着材や塗料などがあり、液体状のバインダー成分と骨材成分とにより構成される塗材などがある。
【0031】
それ以外にも、調理直前で混合が必要な食材など、使用する直前に混合が必要なものであれば適用することができる。
この混合材料セットが好適に用いられる一例として、セメントなどの水硬性材料と水成分の入った液体により構成されるモルタルがある。
【0032】
この混合材料セットでは、その複数の材料のうち少なくとも1種類が液体であり、その液体の流動性を利用して混合するものである。
この複数の材料が全て液体の場合では、それぞれの液体に流動性があり、混合が行い易いものであるが、この複数の材料のうち1つでも粉体材料がある場合では、混合性が全て液体の場合より劣ることがある。
【0033】
しかし、この混合材料セットに用いられる袋11を用いた場合では、この貼代である接着部13を剥がしながら、ゆっくりとした速度で移動させ、粉体材料を液体の材料に接触させながら混ぜ合わせ、混合させることができる。
そのため、粉体材料が継粉になり難く、必要なときに容易に、素早く均一に混合することができるものである。
【0034】
したがって、空間Bに粉体材料が格納され、空間Aに液体が格納されている混合材料セットの形態が好ましく使われる。
混合材料セットは、このような袋11を用いたもので、その袋11の内部は、隔壁12により空間A及び空間Bがある。
【0035】
その空間Aに液体材料が格納され、袋11の空間Bの外部から隔壁12方向に圧力を掛け、接着部13を徐々に剥がしながら、空間Bに格納されている材料を空間Aにある液体の材料の中に移動させ、材料を混ぜ合わせ、混合させる。
この移動の様子を図2に示す。この図2―Xに示した袋11の空間Bの外部から圧力pを掛ける。この圧力pは、袋11の外部の複数の方向から掛けられ、空間Bに格納された材料を介して、大きな圧力Pとなる。
【0036】
この圧力Pが図2-Yのように隔壁12に集まり、隔壁12が空間Aに押し込まれ、徐々に接着部13を剥がすようになる。このまま圧力Pをかけ続けることで、図2-Zのように接着部13の一部又は複数部剥がれ、空間Bの材料は、空間Aに徐々に移動し、空間Aの液体の材料と混ざる。
そのまま、圧力Pを掛け続けることで、空間Bの材料は、空間Aの液体材料に混ざり合い、その混ざり合ったものを袋11の外部から揉むなど圧力を袋11内部に掛け、混合させることができる。
【0037】
この場合、隔壁12は、袋11の内部に残るが、外れた状態となり、そのままの状態で使用することができる。混合された材料は、袋11の一部を切断し、その切断した部分から、押し出すことで、取り出し、使用することができる。
このように使用される混合材料セットは、空間Aの液体材料と空間Bの材料があり、その空間Bの材料を空間Aに移動させ、液体材料と混ぜ、その後に混合させるため、袋11全体の容積が、空間Aの液体材料の容積と空間Bの材料とを合わせた容積より大きい容積が必要になる。
【0038】
この空間A,Bの容積は、使用される材料の種類やその混合割合で、決められるものであり、その容積は、隔壁12の接着位置により容易に調整が可能である。
袋11全体の容積が、空間Aの液体材料の容積と空間Bの材料の容積とを合わせた容積より大きい容積であることで、余分になる容積を利用して、混合の工程を行い易くすることができる。
【0039】
この余分な容積にあたる空間は、空間Aの液体材料や空間Bの材料の容積に対して、5~30容積%の範囲であることが好ましい。
5容積%より小さい場合では、空間Bの材料の移動が行い難い場合があり、30容積%より大きい場合では、材料の混合が行い難い場合がある。
【0040】
また、材料を格納させた空間Aと空間Bとの厚みが同じ又は空間Bの方が厚いものであることが好ましい。これは、空間A,Bの中にそれぞれ材料が格納された状態の場合に、その混合材料セットを寝かせた状態で、その厚みが同じ厚さか、空間Bの方が厚い場合のことである。
これにより、混合型材料セットを積み重ねて、保管や搬送している場合などに、空間部に掛かる圧力が均一に掛かり、その隔壁12が外れることがより少ないものとなる。
【0041】
同じ厚みの場合では、袋11全体に一定の圧力が掛かることになり、隔壁12に掛かる圧力が均等になり、接着部13が剥がれ、それぞれの材料が混ざることが無いものとなる。
また、空間Aと空間Bの厚みが異なる場合は、粉体材料を格納した空間Bを、空間Aより厚くした方が、液体材料に比べ、粉体材料の方がその粒子毎に動くことができることで、その圧力が分散し易く、隔壁12に圧力が掛かり難い状態になるため、好ましいものとなる。
【0042】
袋11内部には、2つ以上の隔壁12が設けられ、空間Aや空間Bのような空間部は、3つ以上あることも可能である。隔壁12が2で、空間部が3の場合の一例の断面を図3に示す。
この空間部は、袋11の内部と隔壁12の接着部13により、混ぜ合わせの対象となる材料との位置関係により、空間Aとなる場合や空間Bとなる場合がある。
【0043】
図3-Xでは、左にある空間部(左空間部)が接着部13の位置から空間Bになり、右にある空間部(右空間部)が空間Aとなる。真ん中の空間部(中空間部)は、その対象を左空間部とした場合では、接着部13の位置から空間Aとなり、右空間部とした場合では、空間Bとなる。
この場合、その混ぜ合わせの順番としては、左空間部に格納した材料を中空間部に移動させ、中空間部にある液体材料と混ぜ合わせ、その混ぜ合わせた材料を右空間部に移動させ、右空間部にある液体材料と混ぜ合わせ、袋11全体を混合させることになる。
【0044】
図3-Yでは、接着部13の位置から左空間部と右空間部が空間Bになり、中空間部が空間Aとなる。
この混ぜ合わせの順番としては、左空間部又は右空間部に格納した材料を中空間部に移動させ、中空間部にある液体材料と混ぜ合わせ、その混ぜ合わせた材料にまだ混ぜ合わせていない左空間部又は右空間部の材料を中空間部方向に移動させ、混ぜ合わせ、袋11全体を混合させることになる。
【0045】
このように、袋11内部と隔壁12とを接着している接着部13の方向性により、空間に格納されている液体材料やもう一つの材料の格納場所が決まり、その混ぜ合わせの順序も決まってくる。
本開示の混合材料セットでは、液体材料に水又は合成樹脂エマルションで、もう一つの材料にセメント系の粉体材料を用いた混合材料セットが好適に用いられる。
【0046】
水又は合成樹脂エマルションとセメント系粉体材料を用いたモルタル用の混合材料セットでは、この2種類の材料を混合させると水和硬化反応が始まり、硬化するため、その使用直前までは、混ざり合わない状態で保管する必要があり、その使用直前で、素早く継粉にならないように混合する必要がある。
このモルタル用混合材料セットにこの袋11を用いることで、保存中や搬送中の場合でも各材料が混ざり合うことが無く、混合容器を必要とせず、各材料を常に適切な混合割合で、必要なときに容易に、素早く均一に混合することができるものである。
【0047】
また、その混合の際に粉塵を発生させることがなく、継粉になり難いものとなる。
まず、水又は合成樹脂エマルションは、セメント系粉体材料を水和反応させ、硬化物を得るためのものである。
【0048】
この水は、通常入手可能な水道水などの清水を用いるもので、合成樹脂エマルションは、モルタル硬化体の強度や付着力を上げることや作業性を良好にするために用いられる。この合成樹脂エマルションは、合成樹脂を水に分散させたもので、乳化重合のような通常の重合技術で製造できるものである。
この合成樹脂には、アクリル樹脂,シリコーン樹脂,アクリルシリコン樹脂,フッ素樹脂,ポリウレタン樹脂,スチレン樹脂,エポキシ樹脂,メラミン樹脂,アルキッド樹脂,塩化ビニル樹脂,酢酸ビニル樹脂,ポリエステル樹脂,ポリエーテル樹脂,フェノール樹脂,ケトン樹脂などの樹脂がある。
【0049】
これらを単独又は2種類以上を混合して用いても良い。これらを構成するモノマーを単独又は共重合した一般的なものが使われる。
この合成樹脂のガラス転移点(以下、Tg)が0℃以下のものが好ましく、この場合では、高沸点溶剤などの造膜助剤を必要とせずに、常温で造膜が可能なものとなる。
【0050】
これら合成樹脂を用いた合成樹脂エマルションの中でも、セメントなどの水硬性材料と良好に混合できるものであればよく、特に制限されるものではない。
また、粉末状の再乳化形合成樹脂を用いることもできる。再乳化形合成樹脂を用いた場合では、液体の材料に水を用い、セメント系粉体材料に混ぜた混合体となることが多い。
【0051】
この再乳化形合成樹脂は、乳化重合によって得られた合成樹脂を粒子状態で乾燥し得られたものや後乳化して得られた合成樹脂エマルションを粒子状態で乾燥して得られたものである。
セメント系粉体材料は、セメントなどの水硬性の材料であり、水と反応して水和反応を起こし、硬化を始め、表面エネルギーによる引き合う力により強度が上がり、更に水素結合力による引き合う力も加わり、一層強い強度が得られるものである。
【0052】
多くの場合には、セメントが用いられ、このセメントには、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、白色ポルトランドセメント、アルミナセメントなどがある。
また、セメントの他にも石膏や消石灰などの粉体材料も用いることができる。 石膏としては、二水石膏、半水石膏、無水石膏のいずれであっても、好ましく使用することができる。
【0053】
消石灰としては、左官用消石灰に適合するもの又はこれと同等以上の性能を有するものであれば、特に限定されず、好ましく使用することができる。
このモルタル用混合材料セットには、その硬化物の強度を向上させるために細骨材を含まれせることが多く、この細骨材には、川砂,海砂などの天然砂や珪砂などの砕砂がある。
【0054】
また、この細骨材の他に炭酸カルシウム,珪藻土,ガラスビーズ,プラスチックビーズ,水酸化アルミニウム,沈降性バリウムなどの粉体物を含ませるせ、硬化前の混合物の作業性や硬化物の強度の調整のために用いることもある。
さらに、硬化物を軽量にするために無機質系のパーライトや有機系のエチレン酢酸ビニル重合体の粉粒体、木粉、ウレタンフォーム、発泡ポリスチレンフォームの粉砕物などの軽量骨材を含ませることも可能である。
【0055】
これらの骨材成分の他にも保水材,繊維や界面活性剤などを好ましく含ませることがある。
保水材としては、一般に公知の保水剤であれば好ましく使用することができ、ゼオライト、モンモリロナイト、カオリナイトなどの無機系保水剤や吸水性ポリマーなどの有機系保水材がある。この保水材を含ませることで、硬化物の湿潤状態を長くとることができ、硬化物の強度の向上が期待できる。
【0056】
繊維は、硬化物の曲げ強度を向上させる目的のために含ませるもので、繊維長が1~30mmのものであれば、天然繊維、合成繊維と特に制限があるものではないが、保水性、親水性及び靱性などよりナイロン繊維などが好ましく用いられる。
界面活性剤は、湿潤剤や分散剤として用いられるものであり、水や合成樹脂エマルションとセメント系粉体材料との混合を素早く、良好に行うことができるため、より好ましく用いられる。
【0057】
硬化物の着色を目的とした場合には、着色成分を加えることもあり、べんがら,トルイジンレッド,黄鉛,鉄黄,ファストイエロー,アントラキノンイエロー,ベンジジンイエロー,酸化クロム,フタロシアニングリーン,紺青,群青,フタロンシアニンブルー,カーボンブラック,鉄墨,黒鉛等の無機や有機顔料が挙げられる。
その他添加剤として、増粘剤などの粘性調整剤や吸水防止剤,撥水剤,減水剤,流動化剤,硬化遅延剤,硬化促進剤などの添加剤を添加することも行われている。
【0058】
さらに、必要に応じ、紫外線吸収剤などのゲルの安定化剤、防腐剤、防かび剤、抗菌剤などを添加することもある。
次に、上記実施形態を具体的な混合材料セットを例示し、より詳細に説明する。この例示には、合成樹脂エマルションと、もう一つの材料にセメント系の粉体材料を用いた混合材料セットにより行う。
【0059】
この混合材料セットは、この2種類の材料を混合させると水和硬化反応が始まり、硬化するため、その使用直前までは、混ざり合わない状態で保管する必要があり、その使用直前で、素早く継粉にならないように混合するものである。
まず、この混合材料セットに用いた袋は、図1に示したものを用いた。この袋は、ポリプロピレンのフィルムをヒートシールにより加工を行い、袋11及び隔壁12を形成したものを用いた。
【0060】
この袋11では、合成樹脂エマルションや粉体材料を外部に漏れの無いように格納することが可能で、外部からの水や水溶液,湿気などを遮断することができるものであった。
隔壁12は、1カ所設けることで、空間Aと空間Bの空間部を2つ形成したものである。ヒートシールは、袋11内部と隔壁12との接着部13の幅を5mmとし、端部14の幅を10mmとした。
【0061】
この空間Aの面積が21cm×11cmであり、空間Bの面積が21cm×16cmで、合成樹脂エマルションや粉体材料を格納可能な容積のものであった。
端部14に比べ接着部13の接着力が弱くなるようにし、隔壁12が剥がれ易くなるような設定を行い、袋11の外部から隔壁12方向に圧力を掛け、隔壁12の接着部13を剥がしながら、空間A側に移動させ易いものとした。
【0062】
端部14は、そのシールが十分で、格納された材料の外部への流出が少ないものであった。
空間部Aには、合成樹脂を水に分散させた合成樹脂エマルションを格納し、この合成樹脂は、アクリル樹脂で、そのTgが0℃のものを用いた。
【0063】
この合成樹脂エマルションの固形分を40重量%に調整し、高沸点溶剤などの造膜助剤を必要とせずに、常温で造膜が可能なものであった。
空間Bに格納された材料は、セメントを主成分とした粉体材料であった。この粉体材料は、普通ポルトランドセメントに、珪砂,炭酸カルシウム,天然繊維,粘性調整剤を配合したものであった。
【0064】
その配合割合は、
普通ポルトランドセメント 45.0重量%
珪砂 40.0重量%
炭酸カルシウム 12.5重量%
天然繊維 1.5重量%
粘性調整剤 0.1重量%
その他成分 0.9重量%
合計 100.0重量%
【0065】
液体材料である合成樹脂エマルションを空間Aに250g格納し、空間Bには、粉体材料を500g格納し、合計750gの混合材料セットとした。格納後の空間の余分な容積は、共に10容積%程度であった。
また、前記材料を格納させた空間Aと空間Bとの厚みが、混合材料セットを寝かせた状態で、同じで、1.5cmであった。
【0066】
この混合材料セットは、このように構成されたものであった。この混合材料セットを段ボール箱に12セット寝かせた状態で、梱包した。この梱包した12セットの段ボール箱を3段積みで、倉庫に3か月間保管し、その後トラックにより輸送した。
保管後の混合材料セットを確認したが、どの混合材料セットの袋11の破損や端部14の剥がれなどは無く、格納された材料が外部に放出されることは無かった。積み重ねた最下部のものでも隔壁12の破損や端部14の剥がれは無く、粉体材料が合成樹脂エマルションの空間に侵入することなく、保存が可能であった。
【0067】
また、輸送中でも外部からの圧力による混合材料セットの袋11の破損や端部14の剥がれも無かった。積み重ねた最下部の混合材料セットの隔壁12の破損や端部14の剥がれは無く、粉体材料が合成樹脂エマルションの空間に侵入することなく、輸送が可能であった。
この混合材料セットの1つを混合し、使用した。この混合では、合成樹脂エマルションの流動性を利用して混合を行った。
【0068】
この混合材料セットの粉体材料が格納されている空間Bの周りから手で握るなどで、隔壁12方向に粉体材料を集中させ、そのまま圧力を掛け続け、隔壁12に圧力が集中するようにした。
その圧力により隔壁12が空間Aに押し込まれ、接着部13を徐々に剥がしながら、空間Bに格納されている粉体材料が空間Aにある合成樹脂エマルションの中に移動し、混ざり合った。
【0069】
さらに、混ざり合った粉体材料と合成樹脂エマルションを袋11の外部から3分程度揉むなどをして、素早く均一に混合を行った。
この混合された混合材料セットの袋11の角部分をハサミで切り、混合された材料を押し出すことで、取り出した。
【0070】
この取り出した材料を観察したが、継粉が無く、均一に混合された状態のものであった。

図1
図2
図3