(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119374
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】波長変換部材の検査方法、及び検査装置、並びに波長変換部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/896 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G01N21/896
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026234
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】岩越 智也
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA42
2G051AB06
2G051BA04
2G051BA10
2G051BA20
2G051BB01
2G051CA03
2G051CA06
2G051CB05
(57)【要約】
【課題】
板状の波長変換部材の内部欠陥を検出するに際し、内部欠陥として垂直クラックが含まれる場合でも感度のよい検出を可能にすること。
【解決手段】
蛍光体を含んだ板状の波長変換部材Gに向けて下面Ga側に配置した光源4から検査光Lを照射すると共に、上面Gb側に配置した撮像装置5により波長変換部材Gを撮像することで、波長変換部材Gの内部欠陥を検出する波長変換部材の検査方法について、光源4の光軸4aおよび撮像装置5の光軸5aを下面Gaおよび上面Gbに対してそれぞれ傾け、光源4の光軸4aに直交し且つ下面Gaに平行な視点から視たときに、下面Gaおよび上面Gbに対する光源4の光軸4aおよび撮像装置5の光軸5aの傾斜角度θ1,θ2がそれぞれ鋭角となると共に、光源4の光軸4aと撮像装置5の光軸5aとのなす角度θ3が180°未満となるように、光源4と撮像装置5とを配置するようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体を含んだ板状の波長変換部材に向けて一方面側に配置した光源から検査光を照射すると共に、他方面側に配置した撮像装置により前記波長変換部材を撮像することで、前記波長変換部材の内部欠陥を検出する波長変換部材の検査方法であって、
前記光源の光軸および前記撮像装置の光軸を前記一方面および前記他方面に対してそれぞれ傾け、
前記光源の光軸に直交し且つ前記一方面に平行な視点から視たときに、前記一方面および前記他方面に対する前記光源の光軸および前記撮像装置の光軸の傾斜角度がそれぞれ鋭角となると共に、前記光源の光軸と前記撮像装置の光軸とのなす角度が180°未満となるように、前記光源と前記撮像装置とを配置することを特徴とする波長変換部材の検査方法。
【請求項2】
前記光源の光軸と前記撮像装置の光軸とのなす角度を30°~150°の範囲内とすることを特徴とする請求項1に記載の波長変換部材の検査方法。
【請求項3】
前記一方面に対する前記光源の光軸の傾斜角度に比べて、前記他方面に対する前記撮像装置の光軸の傾斜角度を大きくすることを特徴とする請求項1又は2に記載の波長変換部材の検査方法。
【請求項4】
前記撮像装置としてラインスキャンカメラを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の波長変換部材の検査方法。
【請求項5】
前記検査光として前記蛍光体の励起波長とは異なる波長の光を照射することを特徴とする請求項1又は2に記載の波長変換部材の検査方法。
【請求項6】
蛍光体を含んだ板状の波長変換部材を複数面分含んだ母板材に対してスクライブ線を形成するスクライブ工程と、前記母板材を前記スクライブ線に沿って分断して複数の前記波長変換部材に切り分ける分断工程と、請求項1又は2に記載の波長変換部材の検査方法により前記複数の波長変換部材の内部欠陥を検出する欠陥検出工程と、を備えることを特徴とする波長変換部材の製造方法。
【請求項7】
前記欠陥検出工程では、前記光源および前記撮像装置に対する前記波長変換部材の向きを相互に異なる複数の向きに変更すると共に、各向きでそれぞれ前記内部欠陥を検出することを特徴とする請求項6に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項8】
蛍光体を含んだ板状の波長変換部材に向けて一方面側から検査光を照射する光源と、前記波長変換部材を他方面側から撮像する撮像装置とを備え、前記波長変換部材の内部欠陥を検出する波長変換部材の検査装置であって、
前記光源の光軸および前記撮像装置の光軸が前記一方面および前記他方面に対してそれぞれ傾けられ、
前記光源の光軸に直交し且つ前記一方面に平行な視点から視たときに、前記一方面および前記他方面に対する前記光源の光軸および前記撮像装置の光軸の傾斜角度がそれぞれ鋭角となると共に、前記光源の光軸と前記撮像装置の光軸とのなす角度が180°未満となるように、前記光源と前記撮像装置とが配置されることを特徴とする波長変換部材の検査装置。
【請求項9】
前記波長変換部材を搬送する搬送装置を備え、
前記搬送装置による前記波長変換部材の搬送経路上に、前記内部欠陥を検出するための欠陥検出エリアが複数設けられると共に、各欠陥検出エリアに前記光源および前記撮像装置が配置され、
前記複数の欠陥検出エリアの相互間では、前記光源および前記撮像装置に対する前記波長変換部材の向きが異なるように、前記光源および前記撮像装置が配置されることを特徴とする請求項8に記載の波長変換部材の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蛍光体を含んだ板状の波長変換部材の検査方法、及び検査装置、並びに波長変換部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体を含有する蛍光体ガラスは、例えば、青色光を蛍光体で吸収して黄色光に変換するための波長変換部材として用いられる。蛍光体ガラスを利用して白色光を作る場合、一例として、青色光源が発した青色光の一部を蛍光体ガラスにより黄色光に変換すると共に、この黄色光と青色光源が発した残りの青色光とを合成することで白色光を作り出す。
【0003】
蛍光体ガラスをはじめとする波長変換部材には、泡、異物、クラック等の内部欠陥が含まれる場合がある。また、波長変換部材には、光の拡散性を向上させるために蛍光体とは別に拡散材を含有させる場合があるが、拡散材が適正に分散せずに凝集体を形成して内部欠陥となることもある。これらの内部欠陥が波長変換部材に存在すると、発光効率の低下や発光色のばらつき、強度の低下等を招く恐れがある。
【0004】
特許文献1には、波長変換部材の内部欠陥を検出するための検査方法が開示されている。同方法の実行に際しては、板状の波長変換部材に向けて一方面側から検査光を照射する光源と、波長変換部材を他方面側から撮像する撮像装置とを用いる。光源と撮像装置は、波長変換部材を厚み方向に挟んで対向するように配置されており、光源の光軸と撮像装置の光軸との両方が、波長変換部材の一方面および他方面に対して鉛直な同一直線上にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された検査方法では、波長変換部材に含まれる一部の内部欠陥を感度よく検出できないという問題があった。具体的には、板状の波長変換部材の内部欠陥として、当該波長変換部材の厚み方向に形成される垂直クラックが含まれる場合、内部欠陥の検出に供される画像上に垂直クラックが幅を持って写し出されず、当該クラックの検出が困難になることがあった。
【0007】
上述の事情に鑑みて解決すべき技術的課題は、板状の波長変換部材の内部欠陥を検出するに際し、内部欠陥として垂直クラックが含まれる場合でも感度のよい検出を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための第1の波長変換部材の検査方法は、蛍光体を含んだ板状の波長変換部材に向けて一方面側に配置した光源から検査光を照射すると共に、他方面側に配置した撮像装置により波長変換部材を撮像することで、波長変換部材の内部欠陥を検出する検査方法であって、光源の光軸および撮像装置の光軸を一方面および他方面に対してそれぞれ傾け、光源の光軸に直交し且つ一方面に平行な視点から視たときに、一方面および他方面に対する光源の光軸および撮像装置の光軸の傾斜角度がそれぞれ鋭角となると共に、光源の光軸と撮像装置の光軸とのなす角度が180°未満となるように、光源と撮像装置とを配置することを特徴とする。
【0009】
ここで、「蛍光体を含んだ板状の波長変換部材」とは、蛍光体を含んだ層のみからなる板状の単一部材であってもよいし、蛍光体を含んだ層と他の層とを積層してなる板状の複合部材であってもよい。なお、「蛍光体を含んだ層」という用語は、層の一部に蛍光体が含まれている場合(例えば、層の内部に蛍光体が分散している場合等)と、層の全体が蛍光体のみから構成されている場合(例えば、層全体が蛍光体の単結晶体又は多結晶体から構成されている場合等)とを含むものとする。また、「層」という用語は、膜と板との両方を含んだ概念とする。
【0010】
第1の波長変換部材の検査方法では、撮像装置の光軸を波長変換部材の他方面に対して傾けたことで、波長変換部材の内部欠陥として垂直クラックが含まれる場合でも、内部欠陥の検出に供される画像上に垂直クラックが幅を持って写し出される。なお、同検査方法では、光源が波長変換部材に向けて照射した検査光のうち、垂直クラックで散乱した散乱光が撮像装置で捕捉されるため、画像上では垂直クラックが明るく写し出される。加えて、同検査方法では、光源の光軸に直交し且つ一方面に平行な視点から視たときに、一方面および他方面に対する光源の光軸および撮像装置の光軸の傾斜角度がそれぞれ鋭角となると共に、光源の光軸と撮像装置の光軸とのなす角度が180°未満となるように、光源と撮像装置とを配置している。つまり、光源と撮像装置とが波長変換部材を間に挟んで対向する配置にはなっていない。これにより、波長変換部材に含まれた蛍光体や拡散材で散乱する散乱光の影響が大きくなって画像上で垂直クラックが際立たなくなるような恐れも排除される。以上のとおり、同検査方法では、画像上に垂直クラックが幅を持って写し出されることに加え、画像上で垂直クラックが際立つことから、波長変換部材の内部欠陥として垂直クラックが含まれる場合でも感度のよい検出が可能となる。
【0011】
第2の波長変換部材の検査方法は、上記の第1の波長変換部材の検査方法において、光源の光軸と撮像装置の光軸とのなす角度を30°~150°の範囲内とする形態としたものである。
【0012】
第2の波長変換部材の検査方法では、既述の画像上に垂直クラックが幅を持って写し出されるという効果や、画像上で垂直クラックが際立つという効果を好適に享受できる。そのため、垂直クラックを感度よく検出する上で更に有利となる。
【0013】
第3の波長変換部材の検査方法は、上記の第1又は第2の波長変換部材の検査方法において、一方面に対する光源の光軸の傾斜角度に比べて、他方面に対する撮像装置の光軸の傾斜角度を大きくする形態としたものである。
【0014】
第3の波長変換部材の検査方法では、撮像装置の光軸が波長変換部材の他方面に対して傾いた状態下においても、撮像装置のピントを波長変換部材に合わせやすくなる。従って、垂直クラックを含めて内部欠陥を感度よく検出する上で有利となる。
【0015】
第4の波長変換部材の検査方法は、上記の第1~第3のいずれかの波長変換部材の検査方法において、撮像装置としてラインスキャンカメラを用いる形態としたものである。
【0016】
第4の波長変換部材の検査方法では、波長変換部材を一定方向に移動させながら撮像することで長尺な領域を撮像することができる。このため、波長変換部材のサイズが大きな場合でも好適に対応することが可能となる。また、エリアカメラに比べて高精度な検査が可能になる。
【0017】
第5の波長変換部材の検査方法は、上記の第1~第4のいずれかの波長変換部材の検査方法において、検査光として蛍光体の励起波長とは異なる波長の光を照射する形態としたものである。
【0018】
第5の波長変換部材の検査方法では、蛍光体における励起が実質的に生じない状態となり、蛍光体に検査光が実質的に吸収されなくなる。これにより、蛍光体からの蛍光が撮像装置に検出されてしまうことがなくなるため、蛍光体が内部欠陥の検出の邪魔になることがなく、垂直クラックを含めて内部欠陥を感度よく検出する上で更に有利となる。
【0019】
ここで、上記の第1~第5のいずれかの波長変換部材の検査方法を、下記の第1の波長変換部材の製造方法における一工程として組み込むことも可能である。第1の波長変換部材の製造方法は、蛍光体を含んだ板状の波長変換部材を複数面分含んだ母板材に対してスクライブ線を形成するスクライブ工程と、母板材をスクライブ線に沿って分断して複数の波長変換部材に切り分ける分断工程と、上記の第1~第5のいずれかの波長変換部材の検査方法により複数の波長変換部材の内部欠陥を検出する欠陥検出工程と、を備えることを特徴とする。
【0020】
第1の波長変換部材の製造方法では、同製造方法が欠陥検出工程を備えていることにより、垂直クラックを含めて内部欠陥が存在しない波長変換部材を取得できる。また、欠陥検出工程では複数の波長変換部材を対象として内部欠陥の検出を行うことから、内部欠陥の有無について効率よく検査を行うことが可能となる。
【0021】
第2の波長変換部材の製造方法は、上記の第1の波長変換部材の製造方法において、欠陥検出工程では、光源および撮像装置に対する波長変換部材の向きを相互に異なる複数の向きに変更すると共に、各向きでそれぞれ内部欠陥を検出する形態としたものである。
【0022】
第2の波長変換部材の製造方法では、光源および撮像装置に対する波長変換部材の向きを相互に異なる複数の向き(波長変換部材に対する検査光の当たり方が相互に異なったものとなる複数の向き)に変更し、各向きでそれぞれ波長変換部材の内部欠陥を検出するため、内部欠陥の検出精度を向上させることができる。
【0023】
上記の課題を解決するための第1の波長変換部材の検査装置は、蛍光体を含んだ板状の波長変換部材に向けて一方面側から検査光を照射する光源と、波長変換部材を他方面側から撮像する撮像装置とを備え、波長変換部材の内部欠陥を検出する検査装置であって、光源の光軸および撮像装置の光軸が一方面および他方面に対してそれぞれ傾けられ、光源の光軸に直交し且つ一方面に平行な視点から視たときに、一方面および他方面に対する光源の光軸および撮像装置の光軸の傾斜角度がそれぞれ鋭角となる共に、光源の光軸と撮像装置の光軸とのなす角度が180°未満となるように、光源と撮像装置とが配置されることを特徴とする。
【0024】
第1の波長変換部材の検査装置によれば、既述の第1の波長変換部材の検査方法による作用・効果を同様に得ることが可能となる。
【0025】
第2の波長変換部材の検査装置は、上記の第1の波長変換部材の検査装置において、波長変換部材を搬送する搬送装置を備え、搬送装置による波長変換部材の搬送経路上に、内部欠陥を検出するための欠陥検出エリアが複数設けられると共に、各欠陥検出エリアに光源および撮像装置が配置され、複数の欠陥検出エリアの相互間では、光源および撮像装置に対する波長変換部材の向きが異なるように、光源および撮像装置が配置される形態としたものである。
【0026】
第2の波長変換部材の検査装置では、波長変換部材の搬送経路上に設けられた複数の欠陥検出エリアの相互間において、光源および撮像装置に対する波長変換部材の向きが異なるように(波長変換部材に対する検査光の当たり方が相互に異なったものとなるように)、光源および撮像装置が配置されている。そのため、内部欠陥の検出精度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本開示に係る波長変換部材の検査方法および検査装置によれば、板状の波長変換部材の内部欠陥を検出するに際し、内部欠陥として垂直クラックが含まれる場合でも感度のよい検出が可能となる。また、本開示に係る波長変換部材の製造方法によれば、垂直クラックを含めて内部欠陥が存在しない波長変換部材を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】波長変換部材の検査方法、波長変換部材の検査装置、及び、波長変換部材の製造方法における欠陥検出工程を示した部分断面図である。
【
図2】複数の波長変換部材および支持部材を示した平面図である。
【
図3】(a)は、波長変換部材の製造方法におけるスクライブ工程を示した平面図であり、(b)は、波長変換部材の製造方法における分断工程を示した平面図である。
【
図4】波長変換部材の検査方法、波長変換部材の検査装置、及び、波長変換部材の製造方法における欠陥検出工程を示した平面図である。
【
図5】(a),(b)は、波長変換部材の検査方法、及び、波長変換部材の製造方法における欠陥検出工程により、垂直クラックが検出される態様を示した図である。
【
図6】(a),(b)は、撮像装置の光軸を波長変換部材の上面に対して鉛直にした場合に、垂直クラックが検出される態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施形態に係る波長変換部材の検査方法、波長変換部材の検査装置、及び、波長変換部材の製造方法について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の説明で参照する各図面に表したX方向、Y方向、及び、Z方向は互いに直交する方向である。
【0030】
図1に示すように、実施形態に係る波長変換部材の製造方法は、複数の波長変換部材Gの内部欠陥を検出する欠陥検出工程PDを備えている。欠陥検出工程PDでは、実施形態に係る波長変換部材の検査装置1(以下、単に検査装置1と表記)を用いて、実施形態に係る波長変換部材の検査方法を実施する。
【0031】
複数の波長変換部材Gの各々は板状に形成されている。本実施形態の波長変換部材Gは蛍光体を含んだ蛍光体ガラスである。蛍光体ガラスは、例えば、ガラス粉末と無機蛍光体粉末とを含んだ混合物を加圧あるいは成型し、焼成することにより得られる。蛍光体ガラス(波長変換部材G)においては、入射光の一部を吸収した蛍光体が励起状態となったのち、当該蛍光体が基底状態に戻る過程で入射光とは異なる波長の光を放射する。
【0032】
ガラス粉末としては、例えば、(1)ZnO-B2O3-SiO2系のガラス粉末、(2)SiO2-B2O3-RO系のガラス粉末(Rは、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種)、(3)SiO2-TiO2-Nb2O5-R’2O系のガラス粉末(R’は、Li、Na及びKからなる群から選択される少なくとも一種)、及び、(4)SnO-P2O5系のガラス粉末、の(1)~(4)からなる群から選択される一種のガラス粉末が用いられる。
【0033】
無機蛍光体粉末としては、酸化物(YAG粉末等のガーネット系の粉末を含む)、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、ハロゲン化物(ハロリン酸塩化物粉末等)、及び、アルミン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の無機蛍光体粉末が用いられる。具体的には、青色の励起光を照射すると黄色の蛍光を発する無機蛍光体粉末としては、(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce、La3Si6N11:Ce、Ca-α-サイアロン:Eu、Li2SrSiO4:Eu等が挙げられる。無機蛍光体粉末は、紫外光波長~495nmに励起波長または励起ピークを有するものが一般的である。
【0034】
検査装置1は、複数の波長変換部材Gを支持部材2に平置き姿勢で支持させた状態で搬送する搬送装置3と、波長変換部材Gに向けて下面Ga側から検査光Lを照射する光源4と、波長変換部材Gを上面Gb側から撮像する撮像装置5と、撮像装置5で撮像された波長変換部材Gの画像を処理する画像処理装置6と、を備えている。
【0035】
図1及び
図2に示すように、支持部材2は、金属製の枠部材7と、枠部材7に貼り付けられた粘着性および伸縮性を有する透明フィルム8(検査光Lが透過可能なフィルムであり、例えば透明UVフィルム)と、枠部材7および透明フィルム8を下方から支持する透明板9(検査光Lが透過可能な板であり、例えばアクリル板)と、を備えている。
【0036】
検査対象である複数の波長変換部材Gは、それぞれ透明フィルム8に貼り付けられている。複数の波長変換部材Gの相互間には、所定の隙間Sが形成されている。隙間Sは、透明フィルム8が引き伸ばされるのに伴って、複数の波長変換部材Gの相互間の間隔が広げられて形成されている(詳細は後述)。透明フィルム8が引き伸ばされた状態は、透明フィルム8の周縁部が枠部材7に貼り付けられ、固定されることで維持される。透明板9は、波長変換部材Gを撓みなく支持できる程度の剛性を有する。
【0037】
ここで、複数の波長変換部材Gの相互間に隙間Sを形成することは必須ではない。また、検査対象を複数の波長変換部材Gではなく、単一の波長変換部材Gとしてもよい。さらに、支持部材2は必須ではないことから、支持部材2を省略して搬送装置3で直接に波長変換部材Gを搬送しても構わない。
【0038】
複数の波長変換部材Gは、欠陥検出工程PDに付される前に、
図3(a)に示した母板材MGを分断して得たものである。母板材MGは複数面分(本実施形態では九面分)の波長変換部材Gを含んでいる。母板材MGを分断するに際しては、
図3(a)に示したスクライブ工程PSと、
図3(b)に示した分断工程PBとを実行する。スクライブ工程PSおよび分断工程PBは、それぞれ実施形態に係る波長変換部材の製造方法の一工程である。
【0039】
スクライブ工程PSでは、隣り合う波長変換部材G,G同士の境界に沿って母板材MGにスクライブ線SLを形成する。本実施形態においては、X方向に沿って二本、Y方向に沿って二本の合計四本のスクライブ線SLを母板材MGに形成する。以上によりスクライブ工程PSが完了する。
【0040】
分断工程PBでは、スクライブ線SLを形成済みの母板材MGを透明フィルム8に貼り付けたのち、母板材MGをスクライブ線SLに沿って折割ることで分断する。なお、透明フィルム8への母板材MGの貼り付けはスクライブ工程PSの前に行ってもよい。母板材MGを分断すると、当該母板材MGが複数の波長変換部材Gに切り分けられる。
【0041】
母板材MGを複数の波長変換部材Gに切り分けた直後の時点では、複数の波長変換部材Gの相互間の間隔が略ゼロであり、隙間Sはまだ存在しない状態にある。同状態から矢印Fで示すように透明フィルム8を引き伸ばすことで、複数の波長変換部材Gの相互間に隙間Sが形成される。その後、引き伸ばされた状態の透明フィルム8の周縁部が枠部材7に貼り付けられて固定される。以上により分断工程PBが完了する。
【0042】
図1に示すように、搬送装置3は、X方向を送り方向とするベルトコンベア10を備えている。ベルトコンベア10は、Y方向に間隔を空けて一対の搬送面を有する。一対の搬送面により、支持部材2(透明板9)におけるY方向の両端部が支持される。複数の波長変換部材Gは、Y方向において一対の搬送面の相互間に配置される。
【0043】
光源4および撮像装置5は、いずれも定点に固定された状態で設置されている。従って、支持部材2上の複数の波長変換部材Gは、搬送装置3によるX方向への搬送に伴って、搬送方向の先頭側の波長変換部材Gから後方側の波長変換部材Gへと順番に内部欠陥の有無を検査されていく。
【0044】
光源4の光軸4aおよび撮像装置5の光軸5aは、波長変換部材Gの下面Gaおよび上面Gbに対してそれぞれ傾いている。両光軸4a,5aの位置関係を限定するものではないが、本実施形態では、Z方向から観察すると両光軸4a,5aが重なっている。つまり、両光軸4a,5aは同一のXZ平面上に位置している。
【0045】
光源4の光軸4aに直交し且つ波長変換部材Gの下面Gaに平行な視点(つまり
図1の視点)から視たとき、下面Gaに対する光源4の光軸4aの傾斜角度θ1と、上面Gbに対する撮像装置5の光軸5aの傾斜角度θ2は、それぞれ鋭角(90°未満)となっている。また、光源4の光軸4aと撮像装置5の光軸5aとのなす角度θ3(点Cを中心とする角度であり、以下では交差角度θ3と表記)は180°未満となっている。これにより、波長変換部材Gにおける検査光Lが照射される照射領域(点Cの周辺領域)を基準として、X方向において同じ側に光源4と撮像装置5とが配置されている。つまり、波長変換部材Gを間に挟んで光源4と撮像装置5とが対向しない配置となっている。
【0046】
波長変換部材Gの厚み方向(Z方向)に形成される垂直クラックを含め、波長変換部材Gに内部欠陥が含まれている場合、光源4が発した検査光Lのうち、内部欠陥で散乱した散乱光Laが撮像装置5に捕捉される。ここで、垂直クラックで散乱した散乱光Laを撮像装置5で捕捉しやすくする観点から、交差角度θ3は30°~150°の範囲内の角度としている。より好ましい交差角度θ3としては80°~110°の範囲内の角度である。なお、本実施形態における交差角度θ3は約90°である。
【0047】
傾斜角度θ2が大きいほど撮像装置5のピントを波長変換部材Gに合わせやすくなる。ピントを合わせやすくする観点から、傾斜角度θ1に比べて傾斜角度θ2を大きくしている。一方、傾斜角度θ2が小さいほど垂直クラックで散乱した散乱光Laを撮像装置5で捕捉しやすくなる。そのため、ピントの合わせやすさと、散乱光Laの捕捉のしやすさとを両立させる観点から、傾斜角度θ2を20°~85°の範囲内の角度としている。また、より好ましい傾斜角度θ2としては40°~80°の範囲内の角度であり、さらに好ましい傾斜角度θ2としては50°~75°の範囲内の角度である。
【0048】
光源4としては、例えば、ハロゲンランプや半導体レーザー(LD)等を使用できるが、本実施形態では、発光ダイオード(LED)をY方向に配列したライン光源を使用している。これにより、光源4は、Y方向に並んだ全ての波長変換部材G(本実施形態では三枚の波長変換部材G)に対して同時に検査光Lを照射することが可能である。すなわち、
図2に示した幅Wの全幅に対して同時に検査光Lを照射できる。
【0049】
光源4から発せられる検査光Lは、波長変換部材G(蛍光体ガラス)に含まれる蛍光体の励起が実質的に生じないようにするため、蛍光体の励起波長とは異なる波長の光としている。具体的には、検査光Lの波長は495nm超であり、520nm以上、550nm以上、600nm以上であることが好ましく、900nm以下、850nm以下、800nm以下、750nm以下、700nm以下であることが好ましい。なお、検査光Lは赤外光であってもよいが、光源4の光量や撮像装置5の感度を高めて検査時間を短くする観点から、可視光であることが好ましい。
【0050】
本実施形態では、撮像装置5としてラインスキャンカメラを用いている。ラインスキャンカメラは、
図2に示した幅Wの全幅を視野に収めて撮像することが可能である。Z方向から観察したとき、波長変換部材Gにおける検査光Lが照射される照射領域と、ラインスキャンカメラにより撮像される撮像領域は、少なくとも一部又は全体が重複している。本撮像装置5を用いることで、搬送装置3により複数の波長変換部材GをX方向に移動させるだけで、複数の波長変換部材Gの全てについて、内部欠陥の有無の検査を行うことができる。もっとも、ラインスキャンカメラが幅Wの全幅を視野に収められない場合は、例えば、別途設けたモーターなどの電動機によって、複数の波長変換部材GをY方向に移動させる手段を設けてもよい。その場合、Y方向の移動に加えてX方向に移動させることで、複数の波長変換部材Gの全てについて、内部欠陥の有無の検査を行うことができる。
【0051】
撮像装置5で撮像された波長変換部材Gの画像データは画像処理装置6に入力され、画像処理装置6により二値化処理等の適宜の処理が施される。画像処理装置6で処理された波長変換部材Gの処理画像は、ディスプレイ(図示省略)等に表示される。表示された処理画像から泡、異物、クラック、拡散材の凝集体等に代表される内部欠陥の有無、大きさ、種類が判別される。
【0052】
なお、処理画像から各種欠陥の情報(大きさ等)を抽出する演算処理機能と、各種欠陥の大きさ等の許容基準値を記憶する記憶機能と、演算により抽出した各種欠陥の情報(大きさ等)と許容基準値とを比較して欠陥に関する良否を判定する良否判定機能と、を画像処理装置6に設けてもよい。これらの機能により、波長変換部材Gの欠陥に関する良否判定を画像処理装置6が自動で行うようにしてもよい。
【0053】
搬送装置3は、ベルトコンベア10の他、ベルトコンベア10と同様の構成を有するベルトコンベアを複数備えている。
図4に示すように、欠陥検出工程PDでは、ベルトコンベア10を含んだ複数のベルトコンベアを用いて、矢印で示した搬送経路Rに沿って複数の波長変換部材Gを搬送する。
【0054】
搬送経路R上には、複数の波長変換部材Gの内部欠陥を検出するための欠陥検出エリアAが複数設けられている。本実施形態では、搬送経路Rの上流側から順番に第一欠陥検出エリアA1から第四欠陥検出エリアA4までの四箇所が設けられている。なお、既に参照済みの
図1は、第一欠陥検出エリアA1において複数の波長変換部材Gの内部欠陥を検出する態様を示した図である。
【0055】
搬送経路R上において、第二欠陥検出エリアA2と第三欠陥検出エリアA3との間には、回転ステージ(図示省略)が設けられている。回転ステージは、Z方向に延びる軸線周りで回転することが可能である。回転ステージは、矢印Tで示すように、当該回転ステージ上に搬入された複数の波長変換部材Gの向きを支持部材2ごと90°転向させるようになっている。第一欠陥検出エリアA1および第二欠陥検出エリアA2では、90°転向前の複数の波長変換部材Gについて内部欠陥の有無を検査する。一方、第三欠陥検出エリアA3および第四欠陥検出エリアA4では、90°転向後の複数の波長変換部材Gについて内部欠陥の有無を検査する。
【0056】
光源4および撮像装置5は、四箇所の欠陥検出エリアAの各々に配置されている(
図4では光源4は図示省略)。四箇所の欠陥検出エリアAの相互間では、光源4および撮像装置5に対する複数の波長変換部材Gの向きが異なるように、光源4および撮像装置5が配置されている。以下、各欠陥検出エリアAにおける光源4および撮像装置5の配置の詳細について説明する。
【0057】
第一欠陥検出エリアA1では、光源4および撮像装置5が
図1に示した配置とされている。第三欠陥検出エリアA3についても同様に、光源4および撮像装置5が
図1に示した配置とされている。両欠陥検出エリアA1,A3では、Z方向から観察したときに、光源4が搬送方向の上流側から下流側に向かって検査光Lを発する配置とされ、且つ、撮像装置5が搬送方向の上流側から下流側を視野に収めて撮像する配置とされている。両欠陥検出エリアA1,A3の相違点は、検査対象である複数の波長変換部材Gの向きが90°転向前か転向後かの違いのみである。
【0058】
第二欠陥検出エリアA2では、光源4および撮像装置5が
図1に示した配置とは線LLを基準として線対称な配置とされている。線LLはZ方向に延びる線である。第四欠陥検出エリアA4についても第二欠陥検出エリアA2と同一の光源4および撮像装置5の配置とされている。両欠陥検出エリアA2,A4では、Z方向から観察したときに、光源4が搬送方向の下流側から上流側に向かって検査光Lを発する配置とされ、且つ、撮像装置5が搬送方向の下流側から上流側を視野に収めて撮像する配置とされている。両欠陥検出エリアA2,A4の相違点は、検査対象である複数の波長変換部材Gの向きが90°転向前か転向後かの違いのみである。
【0059】
以上の構成から、本実施形態の欠陥検出工程PDでは、複数の波長変換部材Gに対して合計四回の内部欠陥の検出を実施する。四回の内部欠陥の検出は、各回で複数の波長変換部材Gに対して検査光Lを照射する方向が異なるように実施する。そして、四回の各々にて波長変換部材Gの処理画像が得られ、四回の各々にて内部欠陥の有無、大きさ、種類が判別される。複数の波長変換部材Gのうち、四回の全てにおいて内部欠陥が検出されなかった波長変換部材Gは、良品として波長変換部材Gの製品とする。
【0060】
ここで、本実施形態で得られる波長変換部材Gの処理画像(内部欠陥の検出に供される画像)の一例を
図5(a)に示す。さらに、
図5(a)に表示した矢印に対応する領域での明度の波形を
図5(b)に示す。
図5(a)に示した画像上には、複数の垂直クラックが写し出されているが、各垂直クラックが幅を持って写し出されていることに加え、画像上で際立っていることが分かる。また、
図5(b)に示すとおり、垂直クラックに対応する箇所(楕円で囲った箇所)では、明度の変化が大きくなっていることが分かる。
【0061】
本実施形態との比較のために、撮像装置5の光軸5aを波長変換部材Gの上面Gbに対して鉛直にした場合(傾斜角度θ2を90°とした場合)に得られる波長変換部材Gの処理画像の一例を
図6(a)に示す。さらに、
図6(a)に表示した矢印に対応する領域での明度の波形を
図6(b)に示す。
図6(a)に示した画像上には、複数の垂直クラックが写し出されているが、各垂直クラックが幅を持って写し出されておらず、画像上で際立っていないことが分かる。また、
図6(b)に示すとおり、垂直クラックに対応する箇所(楕円で囲った箇所)において、明度の変化が小さいことが分かる。
【0062】
ここで、上記の実施形態に対しては、下記のような変形例を適用することも可能である。上記の実施形態では、波長変換部材Gの下面Ga側に光源4が配置され、上面Gb側に撮像装置5が配置されているが、両者4,5の配置は逆にしてもよい。ただし、両者4,5の配置を逆にした場合には、撮像装置5が透明フィルム8および透明板9越しに波長変換部材Gを撮像する形態となるため、上記の実施形態における配置とする方が好ましい。
【0063】
また、上記の実施形態では、複数の波長変換部材Gの搬送経路R上に四箇所の欠陥検出エリアAを設け、四箇所の欠陥検出エリアAの相互間では、光源4および撮像装置5に対する複数の波長変換部材Gの向きが異なるように、光源4および撮像装置5が配置されている。しかしながらこの限りではなく、搬送経路Rに設ける欠陥検出エリアAの数は、要求される検査精度等に合わせて適宜増減させて構わない。ただし、欠陥検出エリアAの数を増加させる場合においても、複数の欠陥検出エリアAの相互間では、光源4および撮像装置5に対する複数の波長変換部材Gの向きが異なるように、光源4および撮像装置5を配置する。
【0064】
また、一組の光源4および撮像装置5(一機ずつの光源4および撮像装置5)のみを用いて、定点に波長変換部材Gを固定した状態の下、波長変換部材Gの周りを光源4および撮像装置5に旋回させながら撮像することで、欠陥検出工程PDを実行してもよい。一例として、光源4および撮像装置5が波長変換部材Gの周りを90°旋回する毎に撮像する形態としてもよい。このようにすれば、光源4および撮像装置5に対する波長変換部材Gの向きを異ならせながら、四回の内部欠陥の検出を行うことが可能となる。
【0065】
また、一組の光源4および撮像装置5(一機ずつの光源4および撮像装置5)のみを用いて、波長変換部材Gを、例えば回転ステージ上で、向きを回転させながら光源4および撮像装置5にて撮像することで、欠陥検出工程PDを実行してもよい。一例として、波長変換部材Gを、90°回転させる毎に撮像する形態としてもよい。このようにすれば、光源4および撮像装置5に対する波長変換部材Gの向きを異ならせながら、四回の内部欠陥の検出を行うことが可能となる。
【0066】
また、上記の実施形態では、波長変換部材Gとしての蛍光体ガラスを検査対象としているが、蛍光体ガラス以外の透光性を有する波長変換部材Gを検査対象としてもよい。蛍光体ガラス以外の波長変換部材Gとしては、例えば、多結晶YAGセラミックス、蛍光体含有セラミックス、蛍光体含有樹脂、ガラス板と蛍光体含有層(例えば、蛍光体含有樹脂層)との複合部材等が挙げられる。また、複合部材として、例えば、蛍光体ガラスの層に機能膜の層がある複合部材が挙げられる。機能膜としては、反射防止膜、保護膜、バンドパスフィルタ、誘電体膜などが挙げられる。
【符号の説明】
【0067】
1 波長変換部材の検査装置
3 搬送装置
4 光源
4a 光軸
5 撮像装置
5a 光軸
A 欠陥検出エリア
G 波長変換部材
Ga 下面
Gb 上面
L 検査光
MG 母板材
PB 分断工程
PD 欠陥検出工程
PS スクライブ工程
R 搬送経路
SL スクライブ線
θ1 傾斜角度
θ2 傾斜角度
θ3 交差角度