IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイフクの特許一覧

<>
  • 特開-制御システム 図1
  • 特開-制御システム 図2
  • 特開-制御システム 図3
  • 特開-制御システム 図4
  • 特開-制御システム 図5
  • 特開-制御システム 図6
  • 特開-制御システム 図7
  • 特開-制御システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119378
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20240827BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240827BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
G05D1/02 P
B65G1/137 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026238
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】西川 智晶
【テーマコード(参考)】
3F022
3F522
5H301
【Fターム(参考)】
3F022LL07
3F022MM35
3F022MM45
3F022NN57
3F522AA01
3F522BB01
3F522BB35
3F522CC05
3F522CC06
3F522CC10
3F522GG09
3F522GG25
3F522GG39
3F522JJ02
3F522LL09
3F522LL10
5H301AA01
5H301AA09
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD05
5H301DD15
5H301EE02
5H301FF05
5H301FF08
5H301FF11
5H301GG07
5H301KK04
5H301KK08
(57)【要約】
【課題】制御装置の処理負荷が高くなった場合であっても、システム全体として物品の搬送に大きな遅延が生じ難くできる技術を実現する。
【解決手段】制御システム100は、物品の搬送のための移動タスクTを複数の搬送車1のうちの1つに割り当てる割当処理を含む、複数の処理を実行する制御装置2を備える。制御装置2が実行する複数の処理のうちの、割当処理を除く少なくとも一部の処理を対象処理として、制御装置2の処理負荷が予め定められた基準負荷を超えた場合に、制御装置2による対象処理の実行を制限する制限モードとすることで、制御装置2の負荷を軽減する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する複数の搬送車を制御する制御システムであって、
前記物品の搬送のための移動タスクを複数の前記搬送車のうちの1つに割り当てる割当処理を含む、複数の処理を実行する制御装置を備え、
前記制御装置が実行する複数の処理のうちの、前記割当処理を除く少なくとも一部の処理を対象処理として、
前記制御装置の処理負荷が予め定められた基準負荷を超えた場合に、前記制御装置による前記対象処理の実行を制限する制限モードとすることで、前記制御装置の負荷を軽減する、制御システム。
【請求項2】
前記移動タスクは、搬送元から搬送先へ前記物品を搬送する第1タスクと、前記物品を搬送していない前記搬送車を前記物品の搬送元となることが予定或いは予測される場所に配置する第2タスクとのうちの、少なくとも前記第1タスクを含み、
前記処理負荷を、前記制御装置が保有している未完了の前記移動タスクの総数を、前記制御装置により制御されている前記搬送車の総数で除算した値に基づき導出する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御装置が実行する複数の処理に、前記搬送車に生じた異常に対応するための異常対応処理と、特定のエリアへの前記搬送車の進入を制限する進入制限処理と、の少なくとも一方が含まれ、
前記対象処理には、前記異常対応処理及び前記進入制限処理は含まれない、請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記対象処理に、前記割当処理により前記搬送車の1つである第1搬送車が既に割り当てられている前記移動タスクに、前記第1搬送車とは異なる前記搬送車である第2搬送車を割り当て直す、見直し処理が含まれ、
前記制限モードでは、前記見直し処理の実行が禁止される、請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項5】
前記対象処理に、前記割当処理において前記移動タスクの割り当ての対象となる前記搬送車を検索する検索処理が含まれ、
前記制限モードでは、前記検索処理で前記搬送車を検索する範囲を、前記制限モードではない場合に比べて狭く設定する、請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項6】
前記対象処理に、繰り返し実行される順次割当処理が含まれ、
前記順次割当処理は、終了条件が満たされるまでの間、前記搬送車が割り当てられていない1つ以上の前記移動タスクについて前記割当処理を順次実行する処理であり、
前記制限モードでは、前記順次割当処理での前記終了条件を、前記割当処理の実行可能回数が前記制限モードではない場合に比べて少なくなるように設定する、請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項7】
前記対象処理に、順次割当処理を繰り返し実行する繰り返し処理が含まれ、
前記順次割当処理は、前記搬送車が割り当てられていない1つ以上の前記移動タスクについて前記割当処理を順次実行する処理であり、
前記制限モードでは、前記繰り返し処理における前記順次割当処理の終了から次の前記順次割当処理の開始までの時間を、前記制限モードではない場合に比べて長くする、請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項8】
前記対象処理に、前記割当処理で前記搬送車を割り当てることができなかった前記移動タスクに対して前記割当処理を再度実行する、再割当処理が含まれ、
前記制限モードでは、前回の前記割当処理の実行から前記再割当処理の実行までの期間を、前記制限モードではない場合に比べて長くする、請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記搬送車が走行するエリアを複数の区画エリアに分割して管理し、
前記対象処理に、前記移動タスクが割り当てられていない状態の前記搬送車である空搬送車を移動させることで、複数の前記区画エリアのそれぞれにおける前記空搬送車の台数を、複数の前記区画エリアのそれぞれに設定された目標値に近づける、空搬送車移動処理が含まれ、
前記制限モードでは、前記空搬送車移動処理を禁止し、又は、前記空搬送車移動処理で許容する前記空搬送車の最大移動距離を、前記制限モードではない場合に比べて短くする、請求項1又は2に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する複数の搬送車を制御する制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような制御システムの一例が、特開2022-112098号公報(特許文献1)に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。特許文献1の制御システム(30)は、統括制御装置(31)と区域制御装置(32)とを備えている。統括制御装置(31)は、物品(2)の搬送要求を区域制御装置(32)に出す。区域制御装置(32)は、統括制御装置(31)から受けた物品(2)の搬送要求をいずれかの搬送車(1)に対して割り当て、当該搬送車(1)に対して物品(2)の搬送要求に応じた動作を行うように指令する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-112098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、物品の搬送のための移動タスク(特許文献1における搬送要求等)が多く発生すること等によって、制御システムが備える制御装置の処理負荷が高くなる場合がある。このように制御装置の処理負荷が高くなると、制御装置から搬送車への物品の搬送のための指示が遅れる状態が長く継続して、システム全体として物品の搬送に大きな遅延が生じる可能性がある。
【0005】
そこで、制御装置の処理負荷が高くなった場合であっても、システム全体として物品の搬送に大きな遅延が生じ難くできる技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る制御システムは、物品を搬送する複数の搬送車を制御する制御システムであって、前記物品の搬送のための移動タスクを複数の前記搬送車のうちの1つに割り当てる割当処理を含む、複数の処理を実行する制御装置を備え、前記制御装置が実行する複数の処理のうちの、前記割当処理を除く少なくとも一部の処理を対象処理として、前記制御装置の処理負荷が予め定められた基準負荷を超えた場合に、前記制御装置による前記対象処理の実行を制限する制限モードとすることで、前記制御装置の負荷を軽減する。
【0007】
本構成によれば、制御装置の処理負荷が基準負荷を超えて制限モードとなった場合には、制御装置による対象処理の実行を制限することで、制御装置の負荷を軽減することができる。一方、対象処理に割当処理は含まれないため、制限モードとなった場合であっても物品の搬送は継続して行うことができる。そして、物品の搬送のための搬送車への指示は、対象処理の実行の制限により負荷が軽減された制御装置から行うことができる。従って、制御装置の処理負荷が基準負荷を超える程度に高くなった場合であっても、制御装置から搬送車への物品の搬送のための指示が遅れる状態が長く継続することを回避して、システム全体として物品の搬送に大きな遅延が生じ難くできる。
【0008】
制御システムの更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】制御システムが適用される搬送設備のレイアウトの一例を示す図
図2】搬送車の一例を示す図
図3】実施形態に係る制御ブロック図
図4】見直し処理の説明図
図5】見直し処理の別の説明図
図6】搬送車の検索範囲の説明図
図7】空搬送車移動処理の説明図
図8】繰り返し処理の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
制御システムの実施形態について、図面に基づいて説明する。図3に示すように、制御システム100は、物品W(図4参照)を搬送する複数の搬送車1を制御するシステムである。物品Wの詳細な図示は省略するが、物品Wは、例えば、半導体ウェハを収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)とされる。
【0011】
搬送車1は、走行経路6(図1参照)に沿って走行して物品Wを搬送する。搬送車1は、無人搬送車である。走行経路6は、物理的に形成されても仮想的に形成されてもよい。本実施形態では、走行経路6は、後述するレール7(図2参照)によって物理的に形成される。図2では、図1に示す走行経路6が天井5に沿って形成される場合を想定しているが、走行経路6は、床面等に形成されてもよい。図1に搬送車1の走行方向を矢印で示すように、走行経路6の各部における搬送車1の走行方向は一方向に設定される。なお、図1や後に参照する図4図7では、搬送車1を、黒塗りの三角形で示す稼働搬送車1Aと、白抜きの三角形で示す空搬送車1Bとに区別している。稼働搬送車1A及び空搬送車1Bについては後述する。図1に示す例では、走行経路6は、平面視で環状に形成される環状経路60と、複数の環状経路60を接続する接続経路61と、を備えている。搬送車1は、環状経路60から接続経路61を通って別の環状経路60に走行することができる。
【0012】
図1に示すように、走行経路6に沿って複数のステーション4が設定されている。図示は省略するが、ステーション4には物品Wを支持する物品支持部が設けられており、ステーション4において搬送車1と物品支持部との間で物品Wが移載される。物品支持部は、例えば、物品W(或いは物品Wに収容された収容物)を処理対象とする処理装置のロードポート、物品Wを保管する保管装置の入出庫ポート、物品Wを一時的に保管する保管棚等とされる。物品支持部は、例えば、走行経路6の真下に配置される。
【0013】
搬送車1の動作には、走行経路6に沿って走行する走行動作が含まれる。本実施形態では、搬送車1とステーション4に設けられた物品支持部との間での物品Wの移載は、搬送車1が物品Wを移動させることにより行われる。そのため、搬送車1の動作には、ステーション4における物品Wの移載動作が含まれる。具体的には、ステーション4において物品支持部から物品Wを受け取る動作と、ステーション4において物品Wを物品支持部に降ろす動作とが、搬送車1の動作に含まれる。
【0014】
図2は、搬送車1の一例を示している。図2に示す搬送車1は、走行経路6(図1参照)に沿って走行する走行部10を備えている。この搬送車1は、更に、走行部10に連結された本体部11を備えており、物品Wは、本体部11に収容された状態で、搬送車1によって搬送される。走行経路6は、レール7(ここでは、経路幅方向に離間して配置された一対のレール7)を用いて形成されている。経路幅方向は、走行経路6の長手方向と上下方向(鉛直方向)との双方に直交する方向(図2における左右方向)である。図2に示す例では、レール7は、天井5から吊り下げ支持されており、走行経路6は、天井5に沿って形成されている。
【0015】
図2に示す走行部10は、レール7の走行面(ここでは、上面)を転動する走行輪13と、走行輪13を回転させる駆動モータ12と、を備えている。走行輪13が駆動モータ12により回転されることで、走行部10が走行経路6に沿って走行する。図2に示す走行部10は、更に、レール7の案内面(ここでは、経路幅方向を向く側面)を転動する案内輪14を備えており、走行部10は、案内輪14がレール7の案内面に接触案内された状態で、レール7に沿って走行する。
【0016】
本実施形態では、搬送車1は、走行経路6に沿って配置された給電線8から非接触で電力の供給を受ける受電装置15を備えている。図2に示す例では、給電線8は、走行経路6を形成するレール7に沿って配置されている。搬送車1の動作は、受電装置15が受電した電力を用いて行われる。すなわち、受電装置15が受電した電力は、搬送車1を動作させるためのアクチュエータ(例えば、上述した駆動モータ12)に供給される。受電装置15は、例えば、ピックアップコイルを備える。ピックアップコイルには、交流電流が供給された給電線8の周囲に生じる磁界により、交流の電力が誘起される。この交流の電力は、例えば直流に変換されて、搬送車1を動作させるためのアクチュエータに供給される。
【0017】
図3に示すように、制御システム100は、制御装置2を備えている。制御装置2は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を備えると共にメモリ等の周辺回路を備え、これらのハードウェアと、演算処理装置等のハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により、制御装置2の機能が実現される。制御装置2や後述する上位制御装置3等の「装置」は、1つの装置ではなく、互いに通信可能な複数の装置の集合であってもよい。例えば、制御装置2が、互いに異なる区画エリアA(後述する)を管理する複数の区画制御装置を備えていてもよい。
【0018】
以下に説明する制御装置2の種々の技術的特徴は、制御装置2の動作方法や、コンピュータを制御装置2として機能させるためのプログラムにも適用可能であり、そのような動作方法やプログラム、更には、そのようなプログラムが記録された記録媒体(光ディスクやフラッシュメモリ等の、コンピュータが読み取り可能な記録媒体)も、本明細書に開示されている。コンピュータを制御装置2として機能させるためのプログラムは、例えば、当該プログラムを記録した記録媒体により提供され、或いは、通信ネットワークを介して提供され、提供されたプログラムは、制御装置2が参照可能な記憶装置に記憶される。
【0019】
制御装置2は、複数の搬送車1のそれぞれの現在位置を把握している。本実施形態では、搬送車1が自身の現在位置を認識するように構成されており、制御装置2は、搬送車1の現在位置の情報を各搬送車1から取得することで、複数の搬送車1のそれぞれの現在位置を把握する。詳細は省略するが、例えば、位置情報を保持する被検出部(例えば、1次元コード、2次元コード、RF(Radio Frequency)タグ等)が、走行経路6に沿った複数の位置に設けられ、搬送車1が、被検出部が保持する位置情報を読み取ることで、自身の現在位置を認識する構成とすることができる。また、搬送車1が、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機等の測位装置の出力に基づき、自身の現在位置を認識する構成とすることもできる。
【0020】
図3に示すように、制御装置2は、処理実行部20、制御モード設定部22、及び処理負荷導出部23を備えている。処理実行部20は、対象処理実行部21を備えている。各機能部の詳細は後述するが、制御装置2は、このように複数の機能部を備えている。制御装置2が備える複数の機能部は、少なくとも論理的に区別されるものであり、物理的には必ずしも区別される必要はない。
【0021】
制御装置2(具体的には、処理実行部20)は、割当処理を含む複数の処理を実行する。割当処理は、物品Wの搬送のための移動タスクTを、複数の搬送車1のうちの1つに割り当てる処理である。ここで、移動タスクTが割り当てられている状態の搬送車1を「稼働搬送車1A」とし、移動タスクTが割り当てられていない状態の搬送車1を「空搬送車1B」とする(図1等参照)。制御装置2は、移動タスクTを割り当てた搬送車1に対して、当該移動タスクTを実行するように指示する。指示を受けた搬送車1は、移動タスクTを実行するように動作する。具体的には、搬送車1に設けられた不図示の制御部が、移動タスクTを実行するための動作を行うように搬送車1を制御する。
【0022】
移動タスクTは、制御装置2によって生成されても、制御装置2と通信可能な他の装置によって生成されてもよい。図3に示すように、本実施形態では、制御システム100が適用される設備全体の搬送を管理する上位制御装置3が、移動タスクTを生成して制御装置2に送信するように構成されている。上位制御装置3は、例えば、物品Wの搬送スケジュールに基づき、或いは、物品Wの搬送要求の発生に応じて、移動タスクTを生成する。
【0023】
移動タスクTは、第1タスクと第2タスクとのうちの少なくとも第1タスクを含む。本実施形態では、移動タスクTは、第1タスクと第2タスクとの双方を含む。
【0024】
第1タスクは、搬送元から搬送先へ物品Wを搬送するタスクである。本実施形態では、物品Wの搬送元や物品Wの搬送先はステーション4(具体的には、ステーション4に設けられた前述の物品支持部)である。以下では、物品Wの搬送元のステーション4を「搬送元ステーション40」とし、物品Wの搬送先のステーション4を「搬送先ステーション41」とする(図4図6参照)。第1タスクには、搬送元ステーション40の情報と搬送先ステーション41の情報とが含まれる。
【0025】
割当処理によって第1タスクを割り当てられた搬送車1は、当該第1タスクで指定された搬送元ステーション40から、当該第1タスクで指定された搬送先ステーション41に、物品Wを搬送する。この際、搬送車1は、搬送元ステーション40まで走行して搬送元ステーション40において物品Wを受け取った後、搬送先ステーション41まで走行し、搬送先ステーション41において物品Wは搬送車1から降ろされる。割当処理では、例えば、搬送元ステーション40の近くに存在する空搬送車1Bに対して優先的に、第1タスクが割り当てられる。例えば、搬送元ステーション40で空搬送車1Bが待機している場合には、当該空搬送車1Bに第1タスクが割り当てられる。稼働搬送車1Aに対して第1タスクを割り当てることもでき、この場合、当該稼働搬送車1Aは、基本的に、先に割り当てられた移動タスクTから順に実行する。
【0026】
第2タスクは、物品Wを搬送していない搬送車1を物品Wの搬送元となることが予定或いは予測される場所に配置するタスクである。第2タスクには、物品Wの搬送元となることが予定或いは予測される場所(本実施形態では、ステーション4)の情報が含まれる。割当処理では、例えば、物品Wの搬送元となることが予定或いは予測されるステーション4の近くに存在する空搬送車1Bに対して優先的に、第2タスクが割り当てられる。
【0027】
割当処理によって第2タスクが割り当てられた搬送車1は、当該第2タスクで指定された、物品Wの搬送元となることが予定或いは予測されるステーション4まで走行する。そして、搬送車1は、別の移動タスクT(例えば、当該ステーション4を搬送元とする第1タスク)が割り当てられるまで、当該ステーション4にて待機する。なお、搬送車1が第2タスクで指定されたステーション4に到着するまでに、当該搬送車1に対して別の移動タスクT(例えば、当該ステーション4を搬送元とする第1タスク)が割り当てられる場合もある。
【0028】
本実施形態では、第2タスクは、物品Wを搬送していない搬送車1を物品Wの搬送元となることが予定される場所に配置するタスク(以下、「第1配車タスク」という)と、物品Wを搬送していない搬送車1を物品Wの搬送元となることが予測される場所に配置するタスク(以下、「第2配車タスク」という)との、双方を含む。本実施形態では、移動タスクTは、基本的に上位制御装置3によって生成されるが、第2配車タスクは、制御装置2によって生成される。
【0029】
ステーション4に設けられた物品支持部が処理装置のロードポートであって、当該処理装置において物品W(或いは物品Wに収容された収容物)に対する処理が行われている場合、当該処理が終了すると、処理が終了した物品Wをロードポートから搬出する要求が発生する。そのため、このステーション4は、物品Wの搬送元となることが予定される場所であり、処理装置の状況(例えば、処理の進行状況)から、設定時間内にこのステーション4が物品Wの搬送元となることが予定されるか否かを判断することもできる。また、ステーション4に設けられた物品支持部が保管装置の入出庫ポートであって、当該保管装置に対して物品Wの出庫要求があった場合、出庫対象の物品Wが保管装置における保管部から入出庫ポートに搬送されると、当該物品Wを入出庫ポートから搬出する要求が発生する。そのため、このステーション4は、物品Wの搬送元となることが予定される場所であり、保管装置の状況から、設定時間内にこのステーション4が物品Wの搬送元となることが予定されるか否かを判断することもできる。上位制御装置3は、このように物品Wの搬送元となることが予定されているステーション4を把握し、例えば設定時間内に物品Wの搬送元となることが予定されているステーション4に物品Wを搬送していない搬送車1を配置する第1配車タスクを生成する。
【0030】
また、複数のステーション4の中に、物品Wの搬送元となる頻度が他のステーション4に比べて高いステーション4(以下、「高頻度ステーション」という)が存在する場合がある。制御装置2は、このような高頻度ステーションを、物品Wの搬送元となることが予測されるステーション4であるとして、物品Wを搬送していない搬送車1を当該ステーション4に配置する第2配車タスクを生成する。制御装置2は、例えば、高頻度ステーションに空搬送車1Bが待機していない場合に、当該高頻度ステーションに物品Wを搬送していない搬送車1を配置する第2配車タスクを生成する。高頻度ステーションは、例えば、作業者によって予め設定される。
【0031】
本実施形態では、制御装置2(具体的には、処理実行部20)が実行する複数の処理に、異常対応処理と進入制限処理との少なくとも一方(ここでは、双方)が含まれる。異常対応処理は、搬送車1に生じた異常に対応するための処理である。制御装置2は、搬送車1に異常が生じた場合に、異常対応処理を実行する。異常対応処理は、例えば、異常が生じた搬送車1を停止させる処理や、異常が生じた搬送車1を他の搬送車1の走行の妨げとなり難い場所(例えば、退避レーンやメンテナンスエリア等)に移動させる処理とされる。
【0032】
進入制限処理は、特定のエリア(以下、「進入制限エリア」という)への搬送車1の進入を制限する処理である。制御装置2は、例えば、異常停止している搬送車1が存在すること等によって他の搬送車1が走行できない経路が存在するエリアや、搬送車1の円滑な走行を確保するために設定される上限台数に搬送車1の数が達しているエリアを、進入制限エリアに設定する。制御装置2は、進入制限エリアを設定した場合には、当該進入制限エリアを対象として進入制限処理を実行する。搬送車1は、移動タスクTを実行するために設定される走行ルートに沿って走行するが、制御装置2は、進入制限エリアに進入する走行ルートの設定を禁止することで、当該進入制限エリアへの搬送車1の進入を制限する。本実施形態では、移動タスクTを実行するための搬送車1の走行ルートは、制御装置2により設定されて搬送車1に送信される。搬送車1は、走行経路6のレイアウトの情報であるマップ情報を保有しており、自身の現在位置とマップ情報とに基づき、設定された走行ルートに沿って走行する。
【0033】
上述したように、本実施形態では、搬送車1は、走行経路6に沿って配置された給電線8から非接触で電力の供給を受ける受電装置15を備えている。そして、本実施形態では、搬送車1が走行するエリアを複数の給電エリアに分割し、給電エリアのそれぞれにおいて搬送車1に電力が供給されるように構成されている。なお、給電エリアは、後述する区画エリアA(図1参照)と同じように分割されたエリアであってもよい。1つの給電エリアに多くの搬送車1が進入すると、給電能力の制限により各搬送車1に対する電力供給が不十分となり得るため、給電エリアのそれぞれに対して、給電能力の制限により定まる上限台数を設定する場合がある。この場合、制御装置2は、搬送車1の台数が上限台数に達している給電エリアを、進入制限エリアに設定する。
【0034】
ここで、制御装置2が実行する複数の処理のうちの、割当処理を除く少なくとも一部の処理を「対象処理」とする。対象処理は、処理実行部20が備える対象処理実行部21により実行される。本実施形態では、上記の異常対応処理及び進入制限処理も、割当処理と同様に、対象処理には含まれない。
【0035】
この制御システム100は、制御装置2の処理負荷が予め定められた基準負荷(以下、「第1基準負荷」という)を超えた場合に、制御装置2による対象処理の実行を制限する制限モードとすることで、制御装置2の負荷を軽減するように構成されている。本実施形態では、制御装置2が備える処理負荷導出部23が、制御装置2の処理負荷を導出し、制御装置2が備える制御モード設定部22が、制御装置2の制御モード(動作モード)を設定する(図3参照)。以下では、制限モードではない制御モードを「通常モード」という。
【0036】
制御モード設定部22は、制御装置2の制御モードが通常モードに設定されている状態で、制御装置2の処理負荷が第1基準負荷を超えた場合に、制御装置2の制御モードを通常モードから制限モードに変更する。また、制御モード設定部22は、制御装置2の制御モードが制限モードに設定されている状態で、制御装置2の処理負荷が第2基準負荷以下となった場合に、制御装置2の制御モードを制限モードから通常モードに変更する。第2基準負荷は、第1基準負荷以下の値に設定され、本実施形態では、第1基準負荷よりも小さい値に設定される。
【0037】
本実施形態では、処理負荷導出部23は、制御装置2が保有している未完了の移動タスクTの総数を、制御装置2により制御されている搬送車1の総数で除算した値に基づき、制御装置2の処理負荷を導出する。処理負荷導出部23は、例えば、上記の値をそのまま制御装置2の処理負荷として導出する。制御装置2により制御されている搬送車1は、例えば、制御装置2の制御下にあり、走行経路6上に存在し、起動状態にあり、且つ、制御装置2と通信可能な状態にある搬送車1とされる。異常や故障の発生等で走行経路6から取り除かれた搬送車1は、制御装置2により制御されている搬送車1には含まれない。
【0038】
本実施形態では、制御装置2は、上位制御装置3が生成して当該制御装置2に送信された移動タスクT(具体的には、第1タスク及び第1配車タスク)と、当該制御装置2が生成した移動タスクT(具体的には、第2配車タスク)と、を保有する。第1タスクは、当該第1タスクが搬送車1に割り当てられた後の時点(例えば、第1タスクで指定された搬送先ステーション41において物品Wが当該搬送車1から降ろされた時点)で、完了したと判定される。また、第2タスク(第1配車タスク又は第2配車タスク)は、当該第2タスクが搬送車1に割り当てられた後の時点(例えば、当該搬送車1が第2タスクで指定されたステーション4に到着した時点)で、完了したと判定される。
【0039】
制御装置2(具体的には、処理実行部20)が実行する処理として、以下に述べる、見直し処理、検索処理、順次割当処理、繰り返し処理、再割当処理、空搬送車移動処理、配車タスク受入処理、配車タスク生成処理、マップ配信処理、ルート再設定処理、通常追い出し処理、割当限定処理、及び退避先限定処理を例示することができる。以下では、これらの各処理の内容、並びに当該処理が対象処理に含まれる場合の制限モードでの制限内容について説明する。
【0040】
<見直し処理>
見直し処理は、割当処理により搬送車1の1つである第1搬送車が既に割り当てられている移動タスクTに、第1搬送車とは異なる搬送車1である第2搬送車を割り当て直す処理である。図4及び図5は、第1タスクについて行われる見直し処理の2つの例を示している。これらの例では、稼働搬送車1Aが「第1搬送車」に相当し、空搬送車1Bが「第2搬送車」に相当する。図4に示す例では、移動タスクT(ここでは、第1タスク)が割り当てられた稼働搬送車1Aが搬送元ステーション40に向かって走行している間に、搬送元ステーション40の近くで搬送車1が稼働搬送車1Aから空搬送車1Bになり、搬送元ステーション40により早く到達できる当該空搬送車1Bに、当該移動タスクTが割り当て直される状況を示している。図5に示す例では、2つの移動タスクT(ここでは、第1タスク)が割り当てられた稼働搬送車1Aが1つ目の移動タスクTで指定された搬送先ステーション41に向かって走行している間に、2つ目の移動タスクTで指定された搬送元ステーション40の近くで搬送車1が稼働搬送車1Aから空搬送車1Bになり、搬送元ステーション40により早く到達できる当該空搬送車1Bに、2つ目の移動タスクTが割り当て直される状況を示している。
【0041】
見直し処理が対象処理に含まれる場合、制限モードでは、制御装置2による見直し処理の実行が禁止される。なお、移動タスクTが多く発生して制限モードとなっている状況では、空搬送車1Bが少ない状態となるため、見直し処理を実行してもより適切な搬送車1を見つけることができずに、制御装置2の負荷が無駄に高くなる可能性がある。制限モードでは見直し処理の実行を禁止することで、上記のように制御装置2の負荷が無駄に高くなることを回避できる。
【0042】
<検索処理>
検索処理は、割当処理において移動タスクTの割り当ての対象となる搬送車1を検索する処理である。第1タスクについては、当該第1タスクで指定された搬送元ステーション40を基準地点とし、第2タスクについては、当該第2タスクで指定されたステーション4(物品Wの搬送元となることが予定或いは予測されるステーション4)を基準地点として、検索処理で搬送車1を検索する範囲(以下、「検索範囲」という)は、基準地点を含むように設定される。図6では、第1タスクについて設定される検索範囲(すなわち、搬送元ステーション40が基準地点とされる検索範囲)の例を示している。図6に示す例では、検索範囲の広さを、当該検索範囲に含まれる環状経路60の数で定義する場合を想定しており、環状経路60を5つ含む第1検索範囲S1は、環状経路60を3つ含む第2検索範囲S2よりも広くなっている。なお、検索範囲の広さを、上記の基準地点までの距離(走行経路6に沿った距離、又は直線距離)で定義してもよい。
【0043】
検索処理が対象処理に含まれる場合、制限モードでは、検索処理で搬送車1を検索する範囲が、制限モードではない場合(ここでは、通常モードである場合)に比べて狭く設定される。制限モードでの検索範囲は、例えば、図6に示す第2検索範囲S2のように、上記の基準地点が配置された環状経路60とその両側の環状経路60を含むように設定される。また、通常モードでの検索範囲は、例えば、搬送車1が走行するエリアの全体(走行経路6のレイアウトの全体)に設定される。
【0044】
<順次割当処理>
順次割当処理は、搬送車1が割り当てられていない1つ以上の移動タスクTについて割当処理を順次実行する処理である。終了条件が満たされるまでの間、順次割当処理は実行され、終了条件が満たされると、順次割当処理は終了される。制御装置2は、順次割当処理を繰り返し実行する。
【0045】
繰り返し実行される順次割当処理が対象処理に含まれる場合、制限モードでは、順次割当処理での終了条件が、割当処理の実行可能回数が制限モードではない場合(ここでは、通常モードである場合)に比べて少なくなるように設定される。ここで、搬送車1が割り当てられていない移動タスクTを「未割当タスク」とし、制御装置2が保有している全ての未割当タスクに搬送車1が割り当てられたことを「第1条件」とし、割当処理の実行回数が上記の実行可能回数に達したことを「第2条件」とする。制御装置2は、第1条件と第2条件とのいずれかの条件が満たされた場合に、順次割当処理を終了する。なお、ここでの割当処理の実行回数や実行可能回数は、割り当てる搬送車1が見つからなかった割当処理の回数としてもよい。また、通常モードでの実行可能回数は、無限大(すなわち、上限はなし)に設定してもよい。
【0046】
<繰り返し処理>
繰り返し処理は、順次割当処理を繰り返し実行する処理である。本実施形態では、図8に示すように、制御装置2は、インターバル期間Pを空けて、順次割当処理を繰り返し実行する。図8に示すように、順次割当処理の実行時間(図8に示す例では、時刻t1から時刻t2までの時間、時刻t3から時刻t4までの時間、時刻t5から時刻t6までの時間)はその都度変化し得るが、インターバル期間Pの長さは固定であっても可変であってもよい。このインターバル期間Pに、例えば、移動タスクTを実行するための走行ルートを設定又は再設定する処理、移動タスクTを割り当てた搬送車1に対する指示(当該移動タスクTの実行指示等)を行う処理、上位制御装置3から移動タスクTを受信する処理、異常対応処理、進入制限処理が実行される。繰り返し処理が対象処理に含まれる場合、制限モードでは、繰り返し処理における順次割当処理の終了から次の順次割当処理の開始までの時間(すなわち、インターバル期間Pの長さ)が、制限モードではない場合(ここでは、通常モードである場合)に比べて長くされる。
【0047】
<再割当処理>
再割当処理は、割当処理で搬送車1を割り当てることができなかった移動タスクTに対して割当処理を再度実行する処理である。再割当処理が対象処理に含まれる場合、制限モードでは、前回の割当処理の実行から再割当処理の実行までの期間が、制限モードではない場合(ここでは、通常モードである場合)に比べて長くされる。例えば、通常モードでは、割当処理で搬送車1を割り当てることができなかった移動タスクTについての再割当処理を、当該割当処理が行われた順次割当処理に対して1つ後の順次割当処理で実行し、制限モードでは、割当処理で搬送車1を割り当てることができなかった移動タスクTについての再割当処理を、当該割当処理が行われた順次割当処理に対して2つ以上後の順次割当処理で実行する構成とすることができる。
【0048】
<空搬送車移動処理>
搬送車1が走行するエリアを複数の区画エリアAに分割して管理するように、制御装置2が構成される場合がある。図1に区画エリアAの一例を示すが、図1には、第1区画エリアA1、第2区画エリアA2、第3区画エリアA3、第4区画エリアA4、及び第5区画エリアA5の、5つの区画エリアAが示されている。そして、空搬送車移動処理は、空搬送車1Bを移動させることで、複数の区画エリアAのそれぞれにおける空搬送車1Bの台数を、複数の区画エリアAのそれぞれに設定された目標値に近づける処理である。図7は、空搬送車移動処理の一例を示している。図7では、区画エリアAのそれぞれに設定された目標値が2台である場合を想定しており、この場合、第3区画エリアA3から第2区画エリアA2に1台の空搬送車1Bを図に矢印で示すように移動させることで、5つの区画エリアAのそれぞれにおける空搬送車1Bの台数が2台となる。
【0049】
空搬送車移動処理が対象処理に含まれる場合、制限モードでは、制御装置2による空搬送車移動処理の実行が禁止され、又は、空搬送車移動処理で許容する空搬送車1Bの最大移動距離が、制限モードではない場合(ここでは、通常モードである場合)に比べて短くされる。通常モードでの上記の最大移動距離は、無限大(すなわち、上限はなし)に設定してもよい。なお、移動タスクTが多く発生して制限モードとなっている状況では、空搬送車1Bが少ない状態となるため、空搬送車移動処理による移動中の空搬送車1Bに対して移動タスクTが割り当てられて、この移動が無駄になる可能性が高くなる。制限モードでは空搬送車移動処理の実行を上記のように制限することで、このような搬送車1の無駄な移動が行われ難くすることができる。
【0050】
<配車タスク受入処理>
配車タスク受入処理は、上位制御装置3から受信した第1配車タスクを、割当処理の対象となる移動タスクTとして受け入れる処理である。配車タスク受入処理を実行することで、第1配車タスクを上述したように搬送車1に実行させることができる。配車タスク受入処理が対象処理に含まれる場合、制限モードでは、制御装置2による配車タスク受入処理の実行が禁止される。そのため、制限モードでは、第1配車タスクは実行されない。この場合、制御装置2は、例えば、上位制御装置3から受信した第1配車タスクを破棄する。なお、移動タスクTが多く発生して制限モードとなっている状況では、物品Wを搬送していない搬送車1を第1配車タスクではなく第1タスクに割り当てた方が、制御装置2の負荷を下げやすい。制御装置2が実行する処理の数を減らすことができることに加えてこの点からも、制限モードでは配車タスク受入処理の実行を禁止することが好ましい。同様の理由で、制限モードでは以下に述べるように配車タスク生成処理の実行を禁止することが好ましい。
【0051】
<配車タスク生成処理>
配車タスク生成処理は、第2配車タスクを生成する処理である。配車タスク生成処理を実行することで、第2配車タスクを上述したように搬送車1に実行させることができる。配車タスク生成処理が対象処理に含まれる場合、制限モードでは、制御装置2による配車タスク生成処理の実行が禁止される。そのため、制限モードでは、第2配車タスクは実行されない。
【0052】
<マップ配信処理>
マップ配信処理は、走行経路6のレイアウトの情報であるマップ情報が更新された場合に、更新後のマップ情報を搬送車1に対して配信する処理である。搬送車1に配信されたマップ情報は、搬送車1が走行ルートに沿って走行する際に用いられる。マップ配信処理が対象処理に含まれる場合、制限モードでは、制御装置2によるマップ配信処理の実行が禁止される。マップ情報が更新された場合のマップ配信処理は、物品Wの搬送に直接関わらない処理である。この点に鑑みて、制限モードではマップ配信処理の実行を禁止して、制御装置2の負荷の軽減を優先することが好ましい。なお、制限モードにおいても、特定のエリアに存在する搬送車1に対しては、例外的にマップ配信処理を実行する構成とすることもできる。この特定のエリアは、例えば、複数の制御装置2が設けられて制御装置2のそれぞれが互いに異なるエリアを管轄する場合に、1つの制御装置2が管轄するエリアと別の1つの制御装置2が管轄するエリアとの境界付近のエリアとされる。
【0053】
<ルート再設定処理>
上述したように、本実施形態では、移動タスクTを実行するための搬送車1の走行ルートは、制御装置2により設定される、すなわち、制御装置2(具体的には、処理実行部20)は、移動タスクTに対して当該移動タスクTを実行するための搬送車1の走行ルートを設定するルート設定処理を実行する。そして、ルート再設定処理は、ルート設定処理により走行ルートが設定されている移動タスクTに対してルート設定処理を再度実行する処理である。ルート再設定処理を実行することで、その時点での搬送設備における物品Wの搬送状況に応じたより適切な走行ルートを移動タスクTに設定し直して、当該移動タスクTの処理向上を図ることができる。
【0054】
ルート再設定処理が対象処理に含まれる場合、制限モードでは、前回のルート設定処理の実行からルート再設定処理の実行までの期間が、制限モードではない場合(ここでは、通常モードである場合)に比べて長くされる。移動タスクTが多く発生して制限モードとなっている状況では、前回のルート設定処理の実行からの経過時間が短い状態でルート再設定処理を実行しても、搬送設備における物品Wの搬送状況の変化が少なく、走行ルートが変更されずに制御装置2の負荷が無駄に高くなる可能性がある。制限モードではルート再設定処理の実行を上記のように制限することで、制限モードにおけるルート再設定処理の実行頻度を低くして、制御装置2の負荷を軽減することができる。
【0055】
<通常追い出し処理>
通常追い出し処理は、第1タスクで指定された搬送先が他の搬送車1に設定されている走行ルート上に存在する場合、及び、第1タスクで指定された搬送先が搬送車1の待機が禁止される場所である場合、の少なくとも一方の場合に、当該第1タスクを完了した搬送車1を、当該搬送先から退避させて、他の搬送車1に設定されている走行ルート上から外れた場所であって、搬送車1の待機が禁止されない場所まで退避移動(追い出し移動)させる処理である。例えば、搬送車1の待機が禁止される場所は、物品Wの移載が頻繁に行われるステーション4とされ、搬送車1の待機が禁止されない場所は、それ以外のステーション4とされる。
【0056】
通常追い出し処理が対象処理に含まれる場合、制限モードでは、制御装置2による通常追い出し処理の実行が禁止される。そして、制御装置2は、制限モードでは、通常追い出し処理に代えて、簡略追い出し処理を実行する。簡略追い出し処理は、第1タスクを完了した搬送車1を、無条件に、或いは第1タスクで指定された搬送先が搬送車1の待機が禁止される場所である場合に、当該搬送先から退避させて、搬送車1の待機が禁止されない場所まで退避移動させる処理である。簡略追い出し処理では、通常追い出し処理とは異なり、第1タスクで指定された搬送先や退避移動による移動先が他の搬送車1に設定されている走行ルート上であるか否かの判定が行われない。そのため、制限モードでは通常追い出し処理に代えて簡略追い出し処理を実行することで、追い出し処理に係る負荷を軽減して、制御装置2の負荷を軽減することができる。
【0057】
<割当限定処理>
割当限定処理は、搬送元及び搬送先が特定のエリア(以下、「対象エリア」という)内の場所とされる第1タスクを、割当処理において、1台以上の一部の搬送車1であるローカル搬送車のみに割り当て、或いは、ローカル搬送車に優先的に割り当てる処理である。対象エリアは、例えば、特定の環状経路60のみを含むエリアとすることができ、上述した区画エリアAのいずれかと共通のエリアとしてもよい。割当限定処理が対象処理に含まれる場合、制限モードでは、制御装置2による割当限定処理の実行が禁止される。割当限定処理や以下に述べる退避先限定処理は付加的な処理であるため、制限モードではこれらの処理の実行を禁止することで、制限モードにおいて制御装置2が実行する処理の数を減らして、制御装置2の負荷を軽減することができる。
【0058】
<退避先限定処理>
退避先限定処理は、上述した通常追い出し処理や簡略追い出し処理において退避移動を行う搬送車1がローカル搬送車である場合には、当該退避移動による移動先となる場所を、対象エリア内の場所(本実施形態では、ステーション4)に限定する処理である。退避先限定処理が対象処理に含まれる場合、制限モードでは、制御装置2による退避先限定処理の実行が禁止される。
【0059】
本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0060】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した制御システムの概要について説明する。
【0061】
物品を搬送する複数の搬送車を制御する制御システムは、前記物品の搬送のための移動タスクを複数の前記搬送車のうちの1つに割り当てる割当処理を含む、複数の処理を実行する制御装置を備え、前記制御装置が実行する複数の処理のうちの、前記割当処理を除く少なくとも一部の処理を対象処理として、前記制御装置の処理負荷が予め定められた基準負荷を超えた場合に、前記制御装置による前記対象処理の実行を制限する制限モードとすることで、前記制御装置の負荷を軽減する。
【0062】
本構成によれば、制御装置の処理負荷が基準負荷を超えて制限モードとなった場合には、制御装置による対象処理の実行を制限することで、制御装置の負荷を軽減することができる。一方、対象処理に割当処理は含まれないため、制限モードとなった場合であっても物品の搬送は継続して行うことができる。そして、物品の搬送のための搬送車への指示は、対象処理の実行の制限により負荷が軽減された制御装置から行うことができる。従って、制御装置の処理負荷が基準負荷を超える程度に高くなった場合であっても、制御装置から搬送車への物品の搬送のための指示が遅れる状態が長く継続することを回避して、システム全体として物品の搬送に大きな遅延が生じ難くできる。
【0063】
ここで、前記移動タスクは、搬送元から搬送先へ前記物品を搬送する第1タスクと、前記物品を搬送していない前記搬送車を前記物品の搬送元となることが予定或いは予測される場所に配置する第2タスクとのうちの、少なくとも前記第1タスクを含み、前記処理負荷を、前記制御装置が保有している未完了の前記移動タスクの総数を、前記制御装置により制御されている前記搬送車の総数で除算した値に基づき導出すると好適である。
【0064】
本構成によれば、制御装置の処理負荷を比較的容易に数値化することができるため、制御装置の処理負荷が基準負荷を超えたか否かの判断を行いやすい。
【0065】
また、前記制御装置が実行する複数の処理に、前記搬送車に生じた異常に対応するための異常対応処理と、特定のエリアへの前記搬送車の進入を制限する進入制限処理と、の少なくとも一方が含まれ、前記対象処理には、前記異常対応処理及び前記進入制限処理は含まれないと好適である。
【0066】
搬送車に異常が生じた場合に当該異常に対応するための処理を行わなければ、当該搬送車を避けて物品の搬送経路を設定する必要がある等、物品の搬送に遅延が生じる可能性がある。また、搬送車の進入を制限すべきエリアが存在する場合に当該エリアに搬送車が進入すると、当該エリアにおける搬送車の円滑な走行が困難になる等、物品の搬送に遅延が生じる可能性がある。この点に関して、本構成によれば、対象処理に異常対応処理及び進入制限処理は含まれないため、制限モードとなっている状態においても異常対応処理や進入制限処理を必要に応じて実行して、物品の搬送に遅延が生じ難くできる。
【0067】
また、前記対象処理に、前記割当処理により前記搬送車の1つである第1搬送車が既に割り当てられている前記移動タスクに、前記第1搬送車とは異なる前記搬送車である第2搬送車を割り当て直す、見直し処理が含まれ、前記制限モードでは、前記見直し処理の実行が禁止されると好適である。
【0068】
上記のような見直し処理を実行することで、既に搬送車が割り当てられている移動タスクを、より適切な搬送車に割り当て直して、当該移動タスクの処理効率の向上を図ることができるが、見直し処理は、物品の搬送のための必須の処理ではない。この点に関して、本構成によれば、制限モードでは見直し処理の実行が禁止されるため、制限モードにおいて制御装置が実行する処理の数を減らして、制御装置の負荷を軽減することができる。
【0069】
また、前記対象処理に、前記割当処理において前記移動タスクの割り当ての対象となる前記搬送車を検索する検索処理が含まれ、前記制限モードでは、前記検索処理で前記搬送車を検索する範囲を、前記制限モードではない場合に比べて狭く設定すると好適である。
【0070】
例えば、1回の検索処理において、移動タスクを割り当てることができる搬送車(以下、「対象搬送車」という)が見つかるまで、搬送車を検索する検索範囲を広げていき、設定された上限の範囲に検索範囲が到達しても対象搬送車が見つからなかった場合には、検索処理を終了する構成とすることが考えられる。この場合、検索範囲の上限として設定される範囲が広くなるに従って、1回の検索処理の処理負荷が高くなりやすい。特に、移動タスクが多く発生している状況では、移動タスクの割り当てられていない搬送車が少ない状態となり、検索範囲の上限として設定された範囲内に移動タスクの割り当てられていない搬送車が存在しないこともあり得るため、検索範囲の上限として設定される範囲が広くなるに従って、1回の検索処理に係る負荷が高くなりやすい。この点に関して、本構成によれば、制限モードでは搬送車を検索する範囲が狭く設定されるため、1回の検索処理に係る負荷を軽減して、制御装置の負荷を軽減することができる。
【0071】
また、前記対象処理に、繰り返し実行される順次割当処理が含まれ、前記順次割当処理は、終了条件が満たされるまでの間、前記搬送車が割り当てられていない1つ以上の前記移動タスクについて前記割当処理を順次実行する処理であり、前記制限モードでは、前記順次割当処理での前記終了条件を、前記割当処理の実行可能回数が前記制限モードではない場合に比べて少なくなるように設定すると好適である。
【0072】
1回の順次割当処理に係る負荷は、割当処理の実行可能回数を上限に、その時点で搬送車が割り当てられていない移動タスク(以下、「未割当タスク」という)の数が多くなるに従って高くなる。特に、移動タスクが多く発生している状況では、その時点での未割当タスクの数が多くなり、また、移動タスクの割り当てられていない搬送車が少ない状態となるため、未割当タスクの全てに搬送車を割り当てることができない可能性もある。この点に関して、本構成によれば、制限モードでは、順次割当処理の終了条件が、割当処理の実行可能回数が少なくなるように設定されるため、1回の順次割当処理に係る負荷を軽減して、制御装置の負荷を軽減することができる。
【0073】
また、前記対象処理に、順次割当処理を繰り返し実行する繰り返し処理が含まれ、前記順次割当処理は、前記搬送車が割り当てられていない1つ以上の前記移動タスクについて前記割当処理を順次実行する処理であり、前記制限モードでは、前記繰り返し処理における前記順次割当処理の終了から次の前記順次割当処理の開始までの時間を、前記制限モードではない場合に比べて長くすると好適である。
【0074】
制御装置が順次割当処理を繰り返し実行する場合、割当処理以外の処理(例えば、移動タスクを上位の制御装置から受ける処理、移動タスクを割り当てた搬送車に対して指示を行う処理、上述した異常対応処理や進入制限処理等)は、順次割当処理の終了から次の順次割当処理の開始までのインターバル期間に実行される。仮に、インターバル期間が、割当処理以外の処理の数に対して短かった場合、未完了の処理が累積して制御装置の負荷が高くなる可能性がある。この点に関して、本構成によれば、制限モードではこのインターバル期間を長くすることができるため、未完了の処理が累積することを回避して、制御装置の負荷を軽減することができる。
【0075】
また、前記対象処理に、前記割当処理で前記搬送車を割り当てることができなかった前記移動タスクに対して前記割当処理を再度実行する、再割当処理が含まれ、前記制限モードでは、前回の前記割当処理の実行から前記再割当処理の実行までの期間を、前記制限モードではない場合に比べて長くすると好適である。
【0076】
割当処理で移動タスクに搬送車を割り当てることができない状況は、例えば、物品の搬送のための移動タスクが多く発生しているために、移動タスクの割り当てられていない搬送車が少ない状態で起こり得る。このような場合に、当該割当処理の実行からの経過時間が短い状態で再割当処理を実行しても、移動タスクを割り当てることができる搬送車が再度見つからず、制御装置の負荷が無駄に高くなる可能性がある。この点に関して、本構成によれば、制限モードでは前回の割当処理の実行から再割当処理の実行までの期間が長くされるため、制限モードにおける再割当処理の実行頻度を低くして、制御装置の負荷を軽減することができる。
【0077】
また、前記制御装置は、前記搬送車が走行するエリアを複数の区画エリアに分割して管理し、前記対象処理に、前記移動タスクが割り当てられていない状態の前記搬送車である空搬送車を移動させることで、複数の前記区画エリアのそれぞれにおける前記空搬送車の台数を、複数の前記区画エリアのそれぞれに設定された目標値に近づける、空搬送車移動処理が含まれ、前記制限モードでは、前記空搬送車移動処理を禁止し、又は、前記空搬送車移動処理で許容する前記空搬送車の最大移動距離を、前記制限モードではない場合に比べて短くすると好適である。
【0078】
上記のような空搬送車移動処理を実行することで、空搬送車を複数の区画エリアに分散させて配置することができる。そのため、新たに発生した移動タスクで指定される物品の搬送元がいずれの区画エリアに存在する場合であっても、当該搬送元に対して比較的近くに存在する空搬送車を当該移動タスクに割り当てることができるが、空搬送車移動処理は、物品の搬送のための必須の処理ではない。また、空搬送車移動処理において空搬送車を移動させる距離が長くなるに従って、空搬送車を移動させる経路の探索処理に係る負荷が高くなる。この点に関して、本構成によれば、制限モードでは、空搬送車移動処理が禁止され、又は、空搬送車移動処理で許容する空搬送車の最大移動距離が短くされるため、制限モードにおいて制御装置が実行する処理の数を減らし、又は、空搬送車移動制御に係る負荷を軽減して、制御装置の負荷を軽減することができる。
【0079】
本開示に係る制御システムは、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0080】
1:搬送車
1B:空搬送車
2:制御装置
100:制御システム
A:区画エリア
T:移動タスク
W:物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8