(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119392
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】空調機器の運転スケジュール決定方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/46 20180101AFI20240827BHJP
F24F 11/63 20180101ALI20240827BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20240827BHJP
F24F 110/22 20180101ALN20240827BHJP
F24F 140/00 20180101ALN20240827BHJP
F24F 130/10 20180101ALN20240827BHJP
F24F 140/60 20180101ALN20240827BHJP
F24F 140/50 20180101ALN20240827BHJP
【FI】
F24F11/46
F24F11/63
F24F110:12
F24F110:22
F24F140:00
F24F130:10
F24F140:60
F24F140:50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026262
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】下町 浩二
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB03
3L260BA44
3L260BA49
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA28
3L260CA32
3L260CA33
3L260CA39
3L260CB63
3L260CB64
3L260EA04
3L260EA12
3L260FA16
(57)【要約】
【課題】イニシャルコストの増大を抑制しながら空調機器の運転効率の向上を図ることが可能な空調機器の運転スケジュール決定方法を提供する。
【解決手段】複数の空調機器2を用いて建物1の空調を行う場合における、前記空調機器2の運転台数を決定する空調機器の運転スケジュール決定方法であって、空調条件が設定されるステップS101と、気象データが取得されるステップS102と、建物条件が設定されるステップS103と、前記空調条件、前記気象データ及び前記建物条件に基づいて、前記建物1の空調を行うために必要な負荷である空調負荷が算出されるステップS104と、全台負荷率が算出されるステップS105と、前記全台負荷率に基づいて、前記空調機器2を全台運転させた場合よりも前記空調機器2の運転効率が高くなるように前記空調機器2の運転台数が決定されるステップS106~ステップS112と、を具備した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空調機器を用いて建物の空調を行う場合における、前記空調機器の運転台数を決定する空調機器の運転スケジュール決定方法であって、
空調条件が設定される第一ステップと、
気象データが取得される第二ステップと、
前記建物に関する条件である建物条件が設定される第三ステップと、
前記空調条件、前記気象データ及び前記建物条件に基づいて、前記建物の空調を行うために必要な負荷である空調負荷が算出される第四ステップと、
前記空調機器を全台運転させたと仮定した場合における前記空調機器の負荷率である全台負荷率が算出される第五ステップと、
前記全台負荷率に基づいて、前記空調機器を全台運転させた場合よりも前記空調機器の機器効率が高くなるように前記空調機器の運転台数が決定される第六ステップと、
を具備する空調機器の運転スケジュール決定方法。
【請求項2】
前記第六ステップにおいて、
前記空調機器の運転効率が最も高くなる最大効率負荷率が設定され、前記最大効率負荷率に基づいて前記空調機器の運転台数が算出される、
請求項1に記載の空調機器の運転スケジュール決定方法。
【請求項3】
前記第六ステップにおいて、
所定の時間ごとの前記空調機器の運転台数が算出される、
請求項1に記載の空調機器の運転スケジュール決定方法。
【請求項4】
前記第六ステップにおいて、
前記全台負荷率が所定の閾値以下である場合、前記空調機器の運転台数が0に決定される、
請求項1に記載の空調機器の運転スケジュール決定方法。
【請求項5】
前記第六ステップにおいて、
前記全台負荷率が、前記空調機器の運転効率が最も高くなる最大効率負荷率よりも大きい場合、前記空調機器の運転台数が全台数に決定される、
請求項1に記載の空調機器の運転スケジュール決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機器の運転スケジュール決定方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消費電力を削減可能な空調機器の制御方法が公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、空調空間に設けられたセンサにより温度等を検出し、空調空間の温度が所定の管理温度範囲にあるとき、空調設備を周期的に停止させる。またこの空調設備の停止時に、空調空間の温度が所定の管理温度範囲を外れたときには、空調設備を再起動させる。このように、特許文献1に記載の技術では、温度をフィードバック情報として用いて空調設備の制御を行うことで、空調設備の運転時間の短縮を図り、ひいては空調設備の運転効率の向上(消費エネルギの削減)を図っている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、空調設備の制御を行うための計測機器(センサ)や制御装置を必要とするため、イニシャルコストが増大する点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、イニシャルコストの増大を抑制しながら空調機器の運転効率の向上を図ることが可能な空調機器の運転スケジュール決定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、複数の空調機器を用いて建物の空調を行う場合における、前記空調機器の運転台数を決定する空調機器の運転スケジュール決定方法であって、空調条件が設定される第一ステップと、気象データが取得される第二ステップと、前記建物に関する条件である建物条件が設定される第三ステップと、前記空調条件、前記気象データ及び前記建物条件に基づいて、前記建物の空調を行うために必要な負荷である空調負荷が算出される第四ステップと、前記空調機器を全台運転させたと仮定した場合における前記空調機器の負荷率である全台負荷率が算出される第五ステップと、前記全台負荷率に基づいて、前記空調機器を全台運転させた場合よりも前記空調機器の機器効率が高くなるように前記空調機器の運転台数が決定される第六ステップと、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記第六ステップにおいて、前記空調機器の運転効率が最も高くなる最大効率負荷率が設定され、前記最大効率負荷率に基づいて前記空調機器の運転台数が算出されるものである。
【0010】
請求項3においては、前記第六ステップにおいて、所定の時間ごとの前記空調機器の運転台数が算出されるものである。
【0011】
請求項4においては、前記第六ステップにおいて、前記全台負荷率が所定の閾値以下である場合、前記空調機器の運転台数が0に決定されるものである。
【0012】
請求項5においては、前記第六ステップにおいて、前記全台負荷率が、前記空調機器の運転効率が最も高くなる最大効率負荷率よりも大きい場合、前記空調機器の運転台数が全台数に決定されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
本発明においては、イニシャルコストの増大を抑制しながら空調機器の運転効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】運転スケジュールが決定される空調機器が設けられた建物の一例を示した模式図。
【
図2】本実施形態に係る空調機器の運転スケジュール決定方法を示した図。
【
図3】空調機器の負荷率と比COPとの関係の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の一実施形態に係る空調機器の運転スケジュール決定方法について説明する。
【0017】
本実施形態に係る運転スケジュール決定方法は、室内の冷暖房を行う空調機器2の運転スケジュール(具体的には、稼働する日時)を決定するためのものである。本実施形態では、
図1に示すような建物1に設けられた空調機器2の運転スケジュールを決定する場合を想定している。
図1に示す建物1としては、例えば空調の系統が複数ある場合の例としてドラッグストア等の店舗を想定している。
【0018】
建物1には、室内空間の空調を行うための空調機器2(本実施形態では、「室内機」を「空調機器2」と称している)が複数設けられる。
図1には一例として、天井に4つの空調機器2が設けられた例を示しているが、空調機器2の台数は特に限定するものではない。空調機器2(室内機)は、室外機(不図示)との間で冷媒を循環させながら、建物1の室内の冷房及び暖房を行うことができる。本実施形態では、各空調機器2は同じ製品であり、同じ性能(容量)を有しているものとする。各空調機器2は、一般的な空調機器と同様に自身の運転を制御するための制御部を有し、予め定められた運転スケジュールに従って運転を行うスケジュール機能を有している。
【0019】
また建物1には、室内の照明を行うための照明器具3、冷凍・冷蔵された商品を陳列するための冷凍冷蔵ショーケース4、会計を行うために用いられる電子機器であるレジスター5等が配置されている。
【0020】
次に、
図2を用いて、上述のような空調機器2の運転スケジュールを決定するための方法(運転スケジュール決定方法)について説明する。
【0021】
本実施形態では、予め運転効率の高い空調機器2の運転スケジュールを決定し、空調機器2自身のスケジュール機能を用いて運転スケジュール通りに空調機器2を稼働させる。これによって、空調機器2をリアルタイムで制御するための制御装置や、当該制御のための計測機器(温度計、電力計等)を設ける必要がなくなるため、イニシャルコストの増大を抑制しながら、空調機器2の運転効率の向上を図ることができる。本実施形態では一例として、1年間の運転スケジュールを決定する場合を想定している。
【0022】
なお、
図2に示す運転スケジュールの決定方法は、例えば建物1を使用している店舗のオーナーや、当該オーナーから依頼された空調機器の施工業者等により実行される。また当該決定方法のための各種演算等の作業は、その一部又は全部をコンピュータ等の演算装置を用いて行ってもよいし、人の手作業により行ってもよい。以下、具体的に説明する。
【0023】
ステップS101において、空調機器2による空調に関する条件(空調条件)として、冷暖房期間、及び、空調温湿度が設定される。例えば、ステップS101において、1年のうち室内の冷房及び暖房を行う期間、及び、その際の設定温度が決定される。当該冷暖房期間等は、建物1の用途等を考慮して任意に決定することができる。
【0024】
一例としては、冷暖房期間として、冷房を行う期間(冷房期間)を3/1~11/30、暖房を行う期間を12/1~2/28等に決定することができる。また空調温湿度として、冷房時の設定温度(冷房温度)を24℃、暖房時の設定温度(暖房温度)を22℃等に決定することができる。ステップS101の処理の後、ステップS102の処理が行われる。
【0025】
ステップS102において、建物1の建設地(又は、建設地に近い地域)における過去の気象データが取得される。本実施形態では、建物1の建設地における過去1年間の気象データ(温度、相対湿度、絶対湿度等)を、気象庁が一般公開しているデータから取得する。また本実施形態では、時刻別(例えば、1時間毎)の気象データを取得する。なお、気象データの取得方法は特に限定するものではなく、例えば気象庁ではなく、気象データを販売している企業等から購入することも可能である。ステップS102の処理の後、ステップS103の処理が行われる。
【0026】
ステップS103において、建物1に関する条件(建物条件)として、建物1の仕様や、建物1に設けられる機器に応じた発熱、建物1に設けられた空調機器2の性能等が設定される。
【0027】
例えば、建物1の断熱性能(Ua):0.8W/m2K、外皮面積:2000m2、換気量:6000m3/h等が設定される。また建物1における内部発熱として、照明器具3を含む種々の照明からの発熱:20W/m2、レジスター5を含む種々の電子機器(OA機器等)からの発熱:10W/m2、冷凍冷蔵ショーケース4からの発熱(冷熱):-15W/m2等が設定される。また建物1に設けられた空調機器の容量(全台の合計):120W/m2等が設定される。これらの値としては、建物1や各機器の仕様書等から取得される値を使用したり、推定値を使用したりすることができる。ステップS103の処理の後、ステップS104の処理が行われる。
【0028】
なお、ステップS101~ステップS103で設定又は取得された条件等は、ステップS104以降の計算に用いられる条件であり、ステップS104以降の計算方法に応じて必要な条件等が設定される。従って、ステップS104以降の計算方法に応じて、ステップS101~ステップS103で設定される条件等を任意に変更することも可能である。
【0029】
ステップS104において、過去1年間の時刻別の空調負荷(冷暖房負荷)L(t)が算出される。なお、tは時刻を意味している。空調負荷L(t)は、例えば下記の数1で算出することができる。
【0030】
(数1)
L(t)=Qf(t)+Qv(t)+Qi(t)
【0031】
上記数1において、Qf(t)は貫流熱負荷、Qv(t)は換気熱負荷、Qi(t)は内部発熱である。貫流熱負荷Qf(t)とは、壁、天井、床等を介して建物1に出入りする熱による負荷を意味している。また換気熱負荷Qv(t)とは、換気により建物1に出入りする熱による負荷を意味している。また内部発熱Qi(t)とは、建物1の内部で発生する熱による負荷を意味している。貫流熱負荷Qf(t)、換気熱負荷Qv(t)、及び内部発熱Qi(t)は、それぞれ下記の数2~数4で算出することができる。
【0032】
(数2)
Qf(t)=Ua×A×(To(t)-Ti)
【0033】
(数3)
Qv(t)=ρ×c×V×(To(t)-Ti(t))×Δt
【0034】
(数4)
Qi(t)=Ql(t)+Qm(t)+Qh(t)+Qs(t)
【0035】
上記数2~数4において、Uaは外皮平均熱貫流率(W/m2K)、Aは外皮面積(m2)、To(t)は外気温度(℃)、Ti(t)は室内温度(℃)、ρは空気密度(kg/m3)、cは空気比熱(J/kgK)、Vは換気量(m3/h)、Ql(t)は照明からの発熱(W/m2)、Qm(t)は電子機器(OA機器等)からの発熱(W/m2)、Qh(t)は人体からの発熱(W/m2)、Qs(t)は冷凍冷蔵ショーケース4からの発熱(W/m2)である。
【0036】
外皮平均熱貫流率Ua、外皮面積A、換気量V、照明からの発熱Ql(t)、電子機器からの発熱Qm(t)、及び、冷凍冷蔵ショーケース4からの発熱Qs(t)としては、ステップS103で設定された値が用いられる。
【0037】
外気温度To(t)としては、ステップS102で取得された気象データから得られた値が用いられる。
【0038】
室内温度Ti(t)としては、ステップS101で設定された値(冷房温度及び暖房温度)が用いられる。
【0039】
人体からの発熱Qh(t)としては、想定される建物1の来客数や従業員数等に応じて推定される値(推定値)が適宜用いられる。
【0040】
なお、ステップS104における空調負荷L(t)を算出するための方法(上記数1~数4)は一例であり、空調負荷L(t)を算出するための数式はこれに限るものではなく、上記数1~数4に示した以外の負荷要因を考慮することも可能である。例えば、日射に起因する熱による負荷である日射熱負荷等を考慮することも可能である。ステップS104の処理の後、ステップS105の処理が行われる。
【0041】
ステップS105において、空調機器2を全台運転したと仮定した場合の、時刻別の負荷率P(t)(全台負荷率)が算出される。負荷率P(t)は、例えば下記の数5で算出することができる。
【0042】
(数5)
P(t)=L(t)/Ac
【0043】
上記数5において、Acは空調機器容量(W)である。空調機器容量Acとしては、ステップS103で設定された値が用いられる。ステップS105の処理の後、ステップS106の処理が行われる。
【0044】
ステップS106(具体的には、ステップS107~ステップS112)において、時刻別に、運転させる空調機器2の台数(運転台数N(t))が算出される。当該ステップでは、空調機器2を効率良く運転させることができるような運転台数N(t)が算出される。
【0045】
ここで、空調機器2の負荷率と、空調機器2の運転効率を示す比COP(Coefficient Of Performance)と、の間には、
図3に示すような相関関係がある。なお、
図3に示したものは一例であり、具体的な数値等は限定するものではない。具体的には、空調機器2の負荷率がある値(
図3の例では、約40%)の時に、比COPが最大となることが分かっている(以下、空調機器2の比COPが最大となる負荷率をPmaxと称する)。従って、建物1に設けられた複数の空調機器2のうち、空調機器2の負荷率がPmaxに近い値となるような運転台数N(t)だけを運転させることで、空調機器2の運転効率の向上を図ることができる。ステップS106~ステップS112では、このように運転効率の向上を図ることができる運転台数N(t)を算出している。
【0046】
具体的には、ステップS107において、「負荷率P(t)が0.05以下」であるか否かが判定される。「負荷率P(t)が0.05以下」である場合(ステップS107でYES)、運転台数N(t)は0に決定される(ステップS108)。
【0047】
なお、負荷率P(t)が0.05以下である場合(ステップS107でYES)、負荷率P(t)が低く、空調機器2を運転させてもサーモオフする(設定温度近くになり運転が停止する)と考えられる。そこで本実施形態では、負荷率P(t)が0.05以下である場合、運転台数N(t)を0とする。すなわちこの場合、空調機器2を1台も運転させない。
【0048】
一方、ステップS107において、「負荷率P(t)が0.05以下」ではない、すなわち、負荷率P(t)が0.05より大きいと判定された場合(ステップS107でNO)、ステップS109の処理が行われる。
【0049】
ステップS109において、「負荷率P(t)が0.05より大きく、かつ、Pmax以下」であるか否かが判定される。「負荷率P(t)が0.05より大きく、かつ、Pmax以下」である場合(ステップS109でYES)、運転台数N(t)は、下記の数6で算出される(ステップS110)。
【0050】
(数6)
N(t)=室内機設置数×P(t)÷Pmax (小数点以下切り上げ)
【0051】
上記数6のように運転台数N(t)を決定することで、空調機器2が運転する際の負荷率がPmaxに近い値となる。これによって、空調機器2の運転効率の向上を図ることができる。
【0052】
一方、ステップS109において、「負荷率P(t)が0.05より大きく、かつ、Pmax以下」ではないと判定された場合(ステップS109でNO)、ステップS111の処理が行われる。
【0053】
ステップS111において、「負荷率P(t)がPmaxより大きい」か否かが判定される。「負荷率P(t)がPmaxより大きい」場合(ステップS111でYES)、運転台数N(t)は建物1に設置された空調機器2(室内機)の台数(すなわち、全台数)に決定される(ステップS112)。
【0054】
なお、負荷率P(t)がPmaxより大きい場合(ステップS111でYES)、
図3に示すように、負荷率P(t)の値が大きくなるにつれて比COPが低下する。この場合、仮に空調機器2の運転台数を減らすと負荷率P(t)が増加し、比COPが低下することになる。従って、この場合は空調機器2を最大の台数で運転させることで、空調機器2の運転効率が最も高くなる。
【0055】
以上のようにして、本実施形態に係る運転スケジュール決定方法では、所定の期間(上記例では、1年)における時刻別の空調機器2の運転台数を決定することができる。このようにして決定された時刻別の運転台数に基づいて、各空調機器2のスケジュール機能を用いて運転スケジュール(時刻別の運転の可否)を設定することで、各空調機器2を当該運転スケジュールに従って自動的に運転させることができる。これによって、空調機器2の運転効率の向上を図ることができる。
【0056】
ここで、一般的な(市販の)空調機器2の制御部には、運転スケジュールのプログラム設定数(容量)に上限があるため、上述のように算出された運転スケジュールを、日別(365日)、かつ、時刻別(24時間)に詳細に設定することは困難であることも考えられる。そこで、例えば
図4に示すように、月別に運転スケジュールを設定することも可能である。
【0057】
具体的には、月毎に、時刻別の負荷率の最大値を抽出し、この負荷率を用いて
図2のステップS106~ステップS112の処理によって、時刻別の運転台数を算出する。
図4には、このようにして算出された運転台数を、最大運転台数に対する比率で表示している。このように、月毎に時刻別の運転スケジュール(運転台数)を統一することで、運転スケジュールの設定数を作成することができる。
【0058】
以上の如く、本実施形態に係る空調機器の運転スケジュール決定方法は、
複数の空調機器2を用いて建物1の空調を行う場合における、前記空調機器2の運転台数を決定する空調機器の運転スケジュール決定方法であって、
前記空調機器2による空調に関する条件である空調条件が設定される第一ステップ(ステップS101)と、
気象データが取得される第二ステップ(ステップS102)と、
前記建物1に関する条件である建物条件が設定される第三ステップ(ステップS103)と、
前記空調条件、前記気象データ及び前記建物条件に基づいて、前記建物1の空調を行うために必要な負荷である空調負荷が算出される第四ステップ(ステップS104)と、
前記空調機器2を全台運転させたと仮定した場合における前記空調機器2の負荷率である全台負荷率が算出される第五ステップ(ステップS105)と、
前記全台負荷率に基づいて、前記空調機器2を全台運転させた場合よりも前記空調機器2の運転効率が高くなるように前記空調機器2の運転台数が決定される第六ステップ(ステップS106~ステップS112)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、イニシャルコストの増大を抑制しながら空調機器2の運転効率の向上を図ることができる。すなわち、上記方法に基づいて決定された運転スケジュールに基づいて空調機器2の運転スケジュールを設定することにより、リアルタイムで温度等を計測したり、当該温度等に基づいて空調機器2をリアルタイムで制御する処理が不要になるため、イニシャルコストの増大を抑制しながらも、空調機器2の運転効率の向上を図ることができる。またこれに伴って、空調機器2の運転に伴う二酸化炭素排出量の低減も図ることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る空調機器の運転スケジュール決定方法は、
前記第六ステップ(ステップS106~ステップS112)において、
前記空調機器2の運転効率が最も高くなる最大効率負荷率(Pmax)が設定され、前記最大効率負荷率(Pmax)に基づいて前記空調機器2の運転台数が算出される(ステップS110)ものである。
このように構成することにより、最大効率負荷率(Pmax)を参照して、適切な空調機器2の運転台数を算出することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る空調機器の運転スケジュール決定方法は、
前記第六ステップ(ステップS106~ステップS112)において、
所定の時間(本実施形態では、1時間)ごとの前記空調機器2の運転台数が算出されるものである。
このように構成することにより、所定の時間ごとに空調機器2の運転台数を変更することで、空調機器2の運転効率をより好適に向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る空調機器の運転スケジュール決定方法は、
前記第六ステップ(ステップS106~ステップS112)において、
前記全台負荷率が所定の閾値以下である場合、前記空調機器2の運転台数が0に決定されるものである(ステップS107でYES、ステップS108)。
このように構成することにより、全台負荷率が低いため空調機器2が停止する可能性がある場合に、予め空調機器2の運転を停止することで、無駄なエネルギー消費を抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る空調機器の運転スケジュール決定方法は、
前記第六ステップ(ステップS106~ステップS112)において、
前記全台負荷率が、前記空調機器2の運転効率が最も高くなる最大効率負荷率(Pmax)よりも大きい場合、前記空調機器2の運転台数が全台数に決定されるものである(ステップS111でYES、ステップS112)。
このように構成することにより、空調機器2の運転効率の向上を図ることができる。
【0063】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0064】
例えば上記実施形態で例示した建物1はドラッグストア等の店舗を想定したものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、その他種々の建物(例えば、オフィス、学校等)に適用することが可能である。
【0065】
また、上記実施形態で示した具体的な処理内容は一例であり、各処理内容は任意に変更することが可能である。例えば、運転スケジュールを算出する時間間隔は、時刻別(1時間毎)に限るものではなく、任意の時間間隔とすることが可能である。また、具体的に示した各種の数値は一例であり、任意の値に変更することが可能である。また、各処理で用いた数式は一例であり、必要に応じて用いる数式や、その内容を任意に変更することが可能である。
【0066】
また、上記実施形態では、建物1に設けられた各種機器(照明器具3、冷凍冷蔵ショーケース4及びレジスター5等)からの発熱等を考慮して運転スケジュールを決定する方法を例示したが、本発明はこれに限らず、運転スケジュールの決定に影響を及ぼすその他種々の機器等を考慮することが可能である。
【0067】
また、上記実施形態では空調機器の運転スケジュール決定方法を説明したが、当該方法を実行可能な装置(システム)を構成することも可能である。例えば記憶部、通信部、演算処理部等を備えた制御装置(パーソナルコンピュータ等)を用いて、上記空調機器の運転スケジュール決定方法を実行可能なシステムを構成することも可能である。
【0068】
また、上記実施形態では、空調機器2自身が有するスケジュール機能を用いて運転スケジュール通りに空調機器2を運転させることを想定したが、例えば各空調機器2の運転を制御可能な制御装置を別途設けて、当該制御装置によって空調機器2の運転を制御することも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 建物
2 空調機器
3 照明器具
4 冷凍冷蔵ショーケース
5 レジスター