(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119398
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/12 20060101AFI20240827BHJP
C08F 20/12 20060101ALI20240827BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240827BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240827BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08F290/12
C08F20/12
C08F290/06
B32B15/08 J
B32B15/08 Z
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026269
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】野田 信久
【テーマコード(参考)】
4F100
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AK25A
4F100AK54A
4F100BA02
4F100GB43
4F100JG05
4F100JK17
4F100JL11
4J100AB02Q
4J100AJ02Q
4J100AJ08Q
4J100AL03P
4J100AL08Q
4J100BA03Q
4J100BC43Q
4J100BC65Q
4J100BC73Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA01
4J100DA28
4J100FA19
4J100FA28
4J100GB05
4J100HA62
4J100HC39
4J100HE14
4J100HE41
4J100JA44
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB031
4J127BB042
4J127BB082
4J127BB111
4J127BB221
4J127BB222
4J127BC021
4J127BC032
4J127BC151
4J127BC152
4J127BD062
4J127BD231
4J127BE052
4J127BE05X
4J127BE111
4J127BE11X
4J127BE312
4J127BE31Y
4J127BE342
4J127BE34X
4J127BE512
4J127BE51Y
4J127BG051
4J127BG052
4J127BG05X
4J127BG05Y
4J127BG141
4J127BG14Y
4J127BG171
4J127BG172
4J127BG17X
4J127BG17Y
4J127BG312
4J127BG31X
4J127CB351
4J127CC291
4J127EA05
4J127FA37
4J127FA38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリフェニレンエーテル樹脂を含み、銅箔への密着性が改善され、プリント配線板の基板材料として使用できる組成物を提供する。
【解決手段】末端に-CR
0=CH
2基(R
0は、水素原子又はメチル基を表す)を有する変性ポリフェニレンエーテルと、
式(1)又は(2);
(R
11及びR
2
1は、酸素原子又は-NH-基を表す。R
1
2及びR
2
2は、末端に-CH=CH
2又は-C(CH
3)=CH
2を有する1価の有機基を表す。)
で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に-CR
0=CH
2基(R
0は、水素原子又はメチル基を表す)を有する変性ポリフェニレンエーテルと、
下記式(1)又は(2);
【化1】
(式(1)中、R
11は、酸素原子又は-NH-基を表す。R
12は、末端に-CH=CH
2又は-C(CH
3)=CH
2を有する1価の有機基を表す。)
【化2】
(式(2)中、R
21は、酸素原子又は-NH-基を表す。R
22は、末端に-CH=CH
2又は-C(CH
3)=CH
2を有する1価の有機基を表す。)
で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記重合体は、下記式(3);
【化3】
(式(3)中、R
31は、水素原子又はメチル基を表す。R
32は、炭素数1~26の炭化水素基を表す。)で表される構造単位Aと、下記式(4);
【化4】
(式(4)中、R
41は、水素原子又はメチル基を表す。R
42は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。n4は1~5の数を表す。Xは、下記(4-1)又は(4-2)のいずれかの構造を表す。)
【化5】
(式(4-1)、(4-2)中、のR
43、R
44は、末端に-CH=CH
2又は-C(CH
3)=CH
2を有する1価の有機基を表す。)で表される構造単位Bとを有する(メタ)アクリル系重合体であるか、又は、下記式(5);
【化6】
(式(5)中、R
51は、水素原子又はメチル基を表す。R
52は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。m5は3~8の数を表し、n5は0~9の数を表す。Xは、上記(4-1)又は(4-2)のいずれかの構造を表す。)で表される構造単位Cを有する(メタ)アクリル系重合体であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系重合体は、前記式(3)で表される構造単位A、式(4)で表される構造単位B、前記式(5)で表される構造単位C以外のその他の構造単位Dを有することを特徴とする請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記その他の構造単位Dは、スチレン又は下記式(6)~(8)で表されるいずれかの化合物由来の構造単位であることを特徴とする請求項3に記載の硬化性樹脂組成物。
【化7】
(式(6)中、R
61は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。R
62は炭素数1~6のアルキレン基を表す。R
63は水素原子またはメチル基を表す。X
61は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す。)
【化8】
(式(7)中、R
71は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。R
72は水素原子またはメチル基を表す。R
73は水素原子または水酸基を表す。R
74は水素原子または炭素数1~6のアルコキシ基を表す。R
75は炭素数1~12の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキレン基を表す。)
【化9】
(式(8)中、R
81は水素原子またはシアノ基を表し、R
82、R
83はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R
84は水素原子またはアルキル基を表し、Z
81は酸素原子またはイミノ基を表す。)
【請求項5】
銅箔と樹脂層とを積層してなる積層体であって、
該樹脂層は、請求項1~4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を用いて形成されてなることを特徴とする積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体を用いてなることを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。より詳しくは、プリント配線板等の材料としての利用可能な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の様々な分野で大量の情報通信が行われる現代においては通信システムの進歩が常に求められている。それに伴い、通信装置に使用されるプリント配線板への要求性能は一段と高まっており、高速通信に必要とされる誘電特性(低誘電率や低誘電正接)に優れる基板が求められている。
ポリフェニレンエーテル(PPE)は、上記誘電特性に優れ、MHz帯からGHz帯の高周波数帯(高周波領域)においても優れた誘電特性を発揮することが知られている。このためPPEを高周波用成形材料として、より具体的には高周波数帯を利用する電子機器に備えられるプリント配線板の基材を構成するための基板材料等として用いることが検討されている。
従来のポリフェニレンエーテル樹脂を用いたプリント配線基板用材料として、末端に重合性二重結合を有する変性ポリフェニレンエーテル化合物と所定の分子量、官能基当量のエチレン性不飽和2重結合を有する架橋剤と、所定の分子量の水添スチレン系熱可塑性エラストマーと、硬化促進剤と、無機充填材と、難燃剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物が開示されている(特許文献1参照)。また、プリント配線基板の材料として使用される熱硬化性樹脂の反応性改質として、芳香族基を有する単官能ラジカル重合性単量体(a)に由来する構成単位と、芳香族基を有さず飽和脂肪族基を有する単官能ラジカル重合性単量体(b)に由来する構成単位と、ラジカル重合性基を有する構成単位(e)とを必須構成単位としてそれぞれ所定の割合で有する共重合体(A)であって、単官能ラジカル重合性単量体(b)が所定の要件を満たし、かつ共重合体(A)が所定の分子量を有する熱硬化性樹脂用反応性改質剤が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-44090号公報
【特許文献2】特開2022-107107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波数帯を利用する電子機器用のプリント配線板の材料として用いることが検討されているポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂は、主に末端に重合性の炭素-炭素二重結合を有する変性PPE樹脂であるが、この末端変性PPEは低極性な樹脂のため、プリント配線板の材料である銅箔への密着性が十分でないという課題がある。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ポリフェニレンエーテル樹脂を含み、銅箔への密着性が改善され、プリント配線板の基板材料として使用できる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ポリフェニレンエーテル樹脂の銅箔への密着性を改善した材料について検討し、末端に重合性の炭素-炭素二重結合を有する変性ポリフェニレンエーテルに、所定の側鎖構造を有する重合体を含むことで、ポリフェニレンエーテル樹脂由来の優れた誘電特性を有しながら銅箔への密着性にも優れた組成物となることを見出し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
【0008】
[1]末端に-CR0=CH2基(R0は、水素原子又はメチル基を表す)を有する変性ポリフェニレンエーテルと、
下記式(1)又は(2);
【0009】
【0010】
(式(1)中、R11は、酸素原子又は-NH-基を表す。R12は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基を表す。)
【0011】
【0012】
(式(2)中、R21は、酸素原子又は-NH-基を表す。R22は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基を表す。)
で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【0013】
[2]前記重合体は、下記式(3);
【0014】
【0015】
(式(3)中、R31は、水素原子又はメチル基を表す。R32は、炭素数1~26の炭化水素基を表す。)で表される構造単位Aと、下記式(4);
【0016】
【0017】
(式(4)中、R41は、水素原子又はメチル基を表す。R42は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。n4は1~5の数を表す。Xは、下記(4-1)又は(4-2)のいずれかの構造を表す。)
【0018】
【0019】
(式(4-1)、(4-2)中、のR43、R44は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基を表す。)で表される構造単位Bとを有する(メタ)アクリル系重合体であるか、又は、下記式(5);
【0020】
【0021】
(式(5)中、R51は、水素原子又はメチル基を表す。R52は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。m5は3~8の数を表し、n5は0~9の数を表す。Xは、上記(4-1)又は(4-2)のいずれかの構造を表す。)で表される構造単位Cを有する(メタ)アクリル系重合体であることを特徴とする[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0022】
[3]前記(メタ)アクリル系重合体は、前記式(3)で表される構造単位A、式(4)で表される構造単位B、前記式(5)で表される構造単位C以外のその他の構造単位Dを有することを特徴とする[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0023】
[4]前記その他の構造単位Dは、スチレン又は下記式(6)~(8)で表されるいずれかの化合物由来の構造単位であることを特徴とする[3]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0024】
【0025】
(式(6)中、R61は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。R62は炭素数1~6のアルキレン基を表す。R63は水素原子またはメチル基を表す。X61は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す。)
【0026】
【0027】
(式(7)中、R71は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。R72は水素原子またはメチル基を表す。R73は水素原子または水酸基を表す。R74は水素原子または炭素数1~6のアルコキシ基を表す。R75は炭素数1~12の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキレン基を表す。)
【0028】
【0029】
(式(8)中、R81は水素原子またはシアノ基を表し、R82、R83はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R84は水素原子またはアルキル基を表し、Z81は酸素原子またはイミノ基を表す。)
【0030】
[5]銅箔と樹脂層とを積層してなる積層体であって、
該樹脂層は、[1]~[4]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を用いて形成されてなることを特徴とする積層体。
【0031】
[6][5]に記載の積層体を用いてなることを特徴とするプリント配線板。
【発明の効果】
【0032】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂由来の優れた誘電特性(低誘電正接)を有し、硬化物の銅箔への密着性、折り曲げ性にも優れた組成物であり、プリント配線板の基板材料として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0034】
1.硬化性樹脂組成物
本発明の硬化性樹脂組成物は、末端に重合性の炭素-炭素二重結合を有する変性ポリフェニレンエーテルと、上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体とを含むことを特徴とする。上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体は、側鎖に親水性部位を有することで銅箔への密着性に優れる重合体であり、これにより本発明の硬化性樹脂組成物は変性ポリフェニレンエーテルに由来する優れた電気特性(低誘電正接)を有し、更に硬化物は銅箔への密着性にも優れる。更に変性ポリフェニレンエーテルと上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体の両方が末端に重合性の炭素-炭素二重結合を有し、硬化時にこれらが反応して結合を形成することで、得られる硬化物が十分な強度を有し、折り曲げ性にも優れるものとなる。
【0035】
本発明の硬化性樹脂組成物における変性ポリフェニレンエーテルの含有割合は、硬化性樹脂組成物全体100質量%に対して、10~99.5質量%であることが好ましい。より好ましくは、30~90質量%である。
また本発明の硬化性樹脂組成物における上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体の含有割合は、硬化性樹脂組成物全体100質量%に対して、0.5~90質量%であることが好ましい。より好ましくは、1~50質量%である。
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物は、変性ポリフェニレンエーテル、上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体を必須成分とし、更にその他の成分を含んでいてもよい。
以下に、変性ポリフェニレンエーテル、上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体、その他の成分について順に説明する。
【0037】
(1)変性ポリフェニレンエーテル
本発明の硬化性樹脂組成物は、末端に-CR0=CH2基(R0は、水素原子又はメチル基を表す)を有する変性ポリフェニレンエーテルを含む。このような変性ポリフェニレンエーテルを含むことで、本発明の硬化性樹脂組成物は電気特性(低誘電正接)に加え、耐熱性にも優れるものとなる。
変性ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルの末端のベンゼン環に-CR0=CH2基が直接結合したものであってもよく、-CR0=CH2基を含む基が結合したものであってもよい。
-CR0=CH2基を含む基としては、-O-CO-CR0=CH2基、-NH-CO-CR0=CH2基等が挙げられる。
【0038】
変性ポリフェニレンエーテルとしては、下記式(9)で表される繰り返し単位を構造中に有するものが好ましい。
【0039】
【0040】
(式(9)中、R91~R94は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基のいずれかを表す。m9は、1~50の数である。)
上記式(9)中、R91~R94は水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
【0041】
上記式(9)におけるアルキル基としては、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、及びデシル基等が挙げられる。
【0042】
上記式(9)におけるアルケニル基としては、炭素数2~18のアルケニル基が好ましく、炭素数2~10のアルケニル基がより好ましい。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、及び3-ブテニル基等が挙げられる。
【0043】
上記式(9)におけるアルキニル基としては、炭素数2~18のアルキニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキニル基がより好ましい。
アルキニル基としては、例えば、エチニル基、及びプロパ-2-イン-1-イル基(プロパルギル基)等が挙げられる。
【0044】
上記式(9)におけるアルキルカルボニル基としては、アルキル基で置換されたカルボニル基であればよいが、炭素数2~18のアルキルカルボニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキルカルボニル基がより好ましい。
アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、及びシクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
【0045】
上記式(9)におけるアルケニルカルボニル基としては、アルケニル基で置換されたカルボニル基であればよいが、炭素数3~18のアルケニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルケニルカルボニル基がより好ましい。
アルケニルカルボニル基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びクロトノイル基等が挙げられる。
【0046】
上記式(9)におけるアルキニルカルボニル基としては、アルキニル基で置換されたカルボニル基であればよいが、炭素数3~18のアルキニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルキニルカルボニル基がより好ましい。
アルキニルカルボニル基としては、例えば、プロピオロイル基等が挙げられる。
【0047】
本発明における変性ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、下記式(10)で表されるポリフェニレンエーテルの末端に、-CR0=CH2基、又は、-CR0=CH2基を含む基を有するものが挙げられる。このような変性ポリフェニレンエーテルの具体例としては例えば、下記式(11)で表される構造のものが挙げられる。
【0048】
【0049】
(式(10)中、s10、t10は、同一又は異なって、0~20の数であり、s10+t10は、1~30の数である。Y10は直鎖状、分岐状、又は環状の炭化水素基を表す。)
【0050】
【0051】
(式(11)中、s11、t11は、同一又は異なって、0~20の数であり、s11+t11は、1~30の数である。Y11は直鎖状、分岐状、又は環状の炭化水素基を表す。R0は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。)
上記式(10)のY10、(11)のY11で表される直鎖状、分岐状、又は環状の炭化水素基としては、下記式(12)で表される基が挙げられる。
【0052】
【0053】
(式(12)中、R121及びR122は、同一又は異なって、水素原子またはアルキル基を表す。)
式(12)中、アルキル基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
また、式(12)で表される基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、及びジメチルメチレン基等が挙げられる。
【0054】
本発明における変性ポリフェニレンエーテルとしてはまた、下記式(13)で表されるポリフェニレンエーテルの末端に、-CR0=CH2基、又は、-CR0=CH2基を含む基を有するものが挙げられる。このような変性ポリフェニレンエーテルの具体例としては、下記式(14)で表される構造のものが挙げられる。
【0055】
【0056】
(式(13)中、s13、t13は、同一又は異なって、0~20の数であり、s13+t13は、1~30の数である。)
【0057】
【0058】
(式(14)中、s14、t14は、同一又は異なって、0~20の数であり、s14+t14は、1~30の数である。R0は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。)
【0059】
本発明における変性ポリフェニレンエーテルとしてはまた、下記式(15)で表されるポリフェニレンエーテルの末端に、-CR0=CH2基、又は、-CR0=CH2基を含む基を有するものが挙げられる。このような変性ポリフェニレンエーテルの具体例としては、下記式(16)で表される構造のものが挙げられる。
【0060】
【0061】
(式(15)中、s15、t15は、同一又は異なって、0~20の数であり、s15+t15は、1~30の数である。)
【0062】
【0063】
(式(16)中、s16、t16は、同一又は異なって、0~20の数であり、s16+t16は、1~30の数である。R0は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。)
【0064】
本発明における変性ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、500~10000であることが好ましい。より好ましくは、800~8000であり、更に好ましくは、1000~5000である。
また、変性ポリフェニレンエーテルが、上記式(9)で表される繰り返し単位を分子中に有している場合、m9は、変性ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量がこのような範囲内になるような数値であることが好ましい。具体的には、m9は、1~50であることが好ましい。
変性ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて後述する実施例に記載の条件で測定することができる。
【0065】
本発明における変性ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量が上記のような範囲内であると、誘電特性(低誘電正接)に優れるだけでなく、硬化物の耐熱性により優れたものとなり、更に成形性にも優れたものとなる。
通常のポリフェニレンエーテルでは、重量平均分子量がこのような比較的低分子量の範囲内であると硬化物の耐熱性が低下する傾向があるのに対し、本発明における変性ポリフェニレンエーテルは、-CR0=CH2基を末端に有するので、耐熱性が充分に高い硬化物が得られると考えられる。
【0066】
本発明における変性ポリフェニレンエーテルにおいて、変性ポリフェニレンエーテル1分子当たりの、分子末端に有する-CR0=CH2基の平均個数(末端官能基数)は、特に限定されないが、1~5個であることが好ましく、1~3個であることがより好ましく、1.5~3個であることが更に好ましい。末端官能基数が少なすぎると、本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の耐熱性が充分なものとなりにくい傾向がある。また、末端官能基数が多すぎると、反応性が高くなりすぎ、例えば、硬化性樹脂組成物の保存性が低下するおそれがある。また硬化性樹脂組成物の流動性が低下してしまうおそれがあり、そのような変性ポリフェニレンエーテルを用いると、流動性不足等により、例えば、多層成形時にボイドが発生する等の成形不良が発生し、信頼性の高いプリント配線板が得られにくいという成形性の問題が生じるおそれがある。
変性ポリフェニレンエーテルの末端官能基数は、変性ポリフェニレンエーテル1モル中に存在する全ての変性ポリフェニレンエーテルの1分子あたりの-CR0=CH2基の平均値を表した数値であり、この末端官能基数は、得られた変性ポリフェニレンエーテルに残存する水酸基数を測定して、変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基数からの減少分を算出することによって測定することができる。この変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基数からの減少分が末端官能基数である。
変性ポリフェニレンエーテルに残存する水酸基数は、変性ポリフェニレンエーテルの溶液に、水酸基と会合する4級アンモニウム塩(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)を添加し、その混合溶液のUV吸光度を測定することによって求めることができる。
【0067】
上記変性ポリフェニレンエーテルとしては市販品を用いてもよく、NORYL SA9000-111(SABICジャパン合同会社製)等を用いることができる。
【0068】
(2)上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記式(1)又は(2);
【0069】
【0070】
(式(1)中、R11は、酸素原子又は-NH-基を表す。R12は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基を表す。)
【0071】
【0072】
(式(2)中、R21は、酸素原子又は-NH-基を表す。R22は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基を表す。)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体を含むことを特徴とする。
上記式(1)で表される構造はアミド結合を有し、式(2)で表される構造は水酸基を有する。このような親水性の官能基を側鎖に有する重合体は銅箔への密着性に優れるため、本発明の硬化性樹脂組成物は、銅箔への密着性に優れる。
【0073】
上記式(1)のR12、式(2)のR22は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基を表す。この有機基は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基であれば特に制限されないが、下記式(17);
【0074】
【0075】
(式(17)中、R171、R172は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキレン基を表す。R173は、水素原子又はメチル基を表す。m17は、0又は1の数を表す。)で表される基であるか、又は、下記式(18);
【0076】
【0077】
(式(18)中、R181、R183は同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。R182は炭素数1~4のアルキレン基を表す。m18、n18はそれぞれ1又は2の数を表し、m18+n18は3である。)で表される基であることが好ましい。
【0078】
上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体は、側鎖にアミノ基又は水酸基を有する重合体に対して、末端に-CH=CH2若しくは-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート基含有化合物、又は、-CH=CH2若しくは-C(CH3)=CH2を有するエポキシ基含有化合物を反応させて製造することができる。
上記式(1)で表される構造のNH基の水素原子、式(2)で表される構造の水酸基の水素原子は、いずれも反応可能な水素原子であるため、上記反応を行った場合、これらの箇所に対して-CH=CH2若しくは-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート基含有化合物、又は、-CH=CH2若しくは-C(CH3)=CH2を有するエポキシ基含有化合物が再度反応してできる構造も生成し得る。
上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体は、上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する限り、上記式(1)又は(2)で表される構造に対して再度-CH=CH2若しくは-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート基含有化合物、又は、-CH=CH2若しくは-C(CH3)=CH2を有するエポキシ基含有化合物が反応してできる構造を含んでいてもよい。
【0079】
上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体において、上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する構造単位の割合は、該重合体の全構造単位100質量%に対して、0.1質量%以上であることが好ましい。このような割合で含むことで、該重合体がより優れた銅箔への密着性を有するものとなる。上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する構造単位の割合は、より好ましくは、該重合体の全構造単位100質量%に対して、0.5質量%以上であり、更に好ましくは、3質量%以上である。
【0080】
上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体は、上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する構造単位を有する限り、それ以外のその他の構造単位を有していてもよい。その他の構造単位の割合は、該重合体の全構造単位100質量%に対して、99.9質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、該重合体の全構造単位100質量%に対して、99質量%以下であり、更に好ましくは、97質量%以下である。
【0081】
上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体は、上述した式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体であればよいが、下記式(3);
【0082】
【0083】
(式(3)中、R31は、水素原子又はメチル基を表す。R32は、炭素数1~26の炭化水素基を表す。)で表される構造単位Aと、下記式(4);
【0084】
【0085】
(式(4)中、R41は、水素原子又はメチル基を表す。R42は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。n4は1~5の数を表す。Xは、下記(4-1)又は(4-2)のいずれかの構造を表す。)
【0086】
【0087】
(式(4-1)、(4-2)中、のR43、R44は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基を表す。)で表される構造単位Bとを有する(メタ)アクリル系重合体(以下、重合体1とも記載する)であるか、又は、下記式(5);
【0088】
【0089】
(式(5)中、R51は、水素原子又はメチル基を表す。R52は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。m5は3~8の数を表し、n5は0~9の数を表す。Xは、上記(4-1)又は(4-2)のいずれかの構造を表す。)で表される構造単位Cを有する(メタ)アクリル系重合体(以下、重合体2とも記載する)であることが好ましい。
【0090】
上記式(3)において、R32は、炭素数1~26の炭化水素基であればよいが、炭素数1~22の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6~26の脂環式炭化水素基、炭素数6~26の芳香族炭化水素基のいずれかであることが好ましい。
【0091】
上記式(4)において、R42は、炭素数1~4のアルキレン基を表すが、炭素数1~3のアルキレン基が好ましい。より好ましくは、炭素数1~2のアルキレン基を表す。
上記式(4)のn4は1~5の数を表すが、好ましくは、1~3の数である。
上記(4-1)、(4-2)中のR43、R44は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基であれば特に制限されないが、上記式(17)又は(18)で表される基であることが好ましい。
【0092】
上記式(5)において、R52は、炭素数1~4のアルキレン基を表すが、炭素数1~3のアルキレン基が好ましい。より好ましくは、炭素数1~2のアルキレン基である。
上記式(5)のm5は3~8の数を表すが、好ましくは、4~6の数である。
上記式(5)のn5は0~9の数を表すが、好ましくは、0~7の数である。
上記式(5)においても、(4-1)、(4-2)中のR43、R44は、上記式(17)又は(18)で表される基であることが好ましい。
【0093】
上記重合体1の(メタ)アクリル系重合体における構造単位Aの含有割合は、重合体1の全構造単位100質量%に対して、35~99.9質量%であることが好ましい。より好ましくは、50~99.9質量%であり、更に好ましくは、80~99.5質量%であり、特に好ましくは、85~99.5質量%である。
また構造単位Bの含有割合は、重合体1の全構造単位100質量%に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5~15質量%である。
【0094】
上記重合体1の(メタ)アクリル系重合体は、上記構造単位A、構造単位B以外のその他の構造単位Dを有していてもよい。
その他の構造単位Dとしては、後述する、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有単量体;オレフィン系単量体;ハロゲン含有単量体;窒素含有単量体等の単量体由来の構造単位や、上記式(4)の構造単位の側鎖末端が有する反応性水素原子に対して、末端に-CH=CH2若しくは-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物、又は、末端に-CH=CH2若しくは-C(CH3)=CH2を有するエポキシ基含有化合物が再度反応してできる構造単位が挙げられる。
【0095】
上記構造単位Dの含有割合は、上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体を構成する全構造単位100質量%に対して、0~65質量%であることが好ましい。より好ましくは、5~50質量%である。
【0096】
上記重合体2の(メタ)アクリル系重合体における構造単位Cの含有割合は、重合体2の全構造単位100質量%に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5~15質量%である。
【0097】
上記重合体2の(メタ)アクリル系重合体は、上記構造単位Cの他、下記式(19)で表される水酸基含有構造単位E;
【0098】
【0099】
(式(19)中、R191、R192、m19、n19は、それぞれ上記式(5)のR51、R52、m5、n5と同様である。)を有していてもよい。
【0100】
上記重合体2における上記式(19)で表される水酸基含有構造単位Eの割合は重合体2の全構造単位100質量%に対して1質量%以下であることが好ましい。このような割合であると、重合体2を含む樹脂組成物の硬化物が電気特性や銅箔への密着性により優れたものとなる。上記式(19)で表される水酸基含有構造単位Eの割合は、より好ましくは、共重合体1の全構造単位100質量%に対して0.5質量%以下であり、更に好ましくは、0.1質量%以下である。
【0101】
上記重合体2の(メタ)アクリル系重合体は、上記構造単位C及び水酸基含有構造単位E以外のその他の構造単位Fを有していてもよい。
その他の構造単位Fとしては、後述する、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有単量体;オレフィン系単量体;ハロゲン含有単量体;窒素含有単量体等の単量体由来の構造単位や、上記式(5)の構造単位の側鎖末端が有する反応性水素原子に対して、末端に-CH=CH2若しくは-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物、又は、末端に-CH=CH2若しくは-C(CH3)=CH2を有するエポキシ基含有化合物が再度反応してできる構造単位が挙げられる。
【0102】
上記構造単位Fの含有割合は、重合体2の全構造単位100質量%に対して、0~90質量%であることが好ましい。より好ましくは、5~80質量%である。
【0103】
本発明における上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体の重量平均分子量は、銅箔との接着性と折り曲げ性を向上させる観点から、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましい。また銅箔への接着性、塗装作業性、後述する架橋剤との相溶性の点から、20万以下が好ましく、10万以下がより好ましい。
本発明において、上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC、カラム:TSKgel Super Multipore HZ-Mの2本を直列に使用〕を用いて後述する実施例に記載の条件で測定することができる。
【0104】
(3)その他の成分
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述した変性ポリフェニレンエーテル、上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体に加えて、溶媒、重合開始剤、架橋剤、充填剤や、変性ポリフェニレンエーテル、(メタ)アクリル系重合体以外のその他の樹脂等を含んでいてもよい。
【0105】
上記溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;n-ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒などの有機溶媒が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0106】
本発明の硬化性樹脂組成物における溶媒の含有量は、硬化性樹脂組成物全体100質量%に対して、30~70質量%であることが好ましい。より好ましくは、40~60質量%である。
【0107】
上記重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、例えば、加熱時にフリーラジカルを発生させる熱重合開始剤であってもよい。ラジカル重合開始剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0108】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等が挙げられる。中でも、過酸化物系ラジカル重合開始剤が好ましい。
過酸化物系ラジカル重合開始剤としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物;tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,4-ビス(1-tert-ブチルパーオキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド化合物;ジラウロイルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のジアシルパーオキサイド化合物;tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシラウレート、(1,1-ジメチルプロピル)2-エチルパーヘキサノエート、tert-ブチル2-エチルパーヘキサノエート、tert-ブチル3,5,5-トリメチルパーヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシマレイン酸等のパーオキシエステル化合物;等が挙げられる。
【0109】
アゾ系ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2 ,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1 -シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチル-バレロニトリル等のアゾニトリル化合物;2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等のアゾアミド化合物;2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビ ス(2-メチルプロパン)等のアルキルアゾ化合物;等が挙げられる。ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、日油社製の「パーブチルC」、「パーブチルA」、「パーブチルP」、「パーブチルL」、「パーブチルO」、「パーブチルND」、「パーブチルZ」、「パーブチルI」、「パークミルP」、「パークミルD」、「パーヘキシルD」、「パーヘキシルA」、「パーヘキシルI」、「パーヘキシルZ」、「パーヘキシルND」、「パーヘキシルO」、「パーヘキシルPV」、「パーヘキシルO」等が挙げられる。
【0110】
本発明の硬化性樹脂組成物中の重合開始剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.3~5質量%である。
【0111】
上記架橋剤は、特に限定されるものではないが、例えば、アリル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロペンテニル基、p-ビニルフェニル基、m-ビニルフェニル基、o-ビニルフェニル基等の不飽和炭化水素基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)等のα,β-不飽和カルボニル基等のラジカル重合性基を有するラジカル重合性架橋剤;ベンゾシクロブテン環を有するベンゾシクロブテン型架橋剤が挙げられる。
上記以外のその他の架橋剤としては、例えば、(メタ)アクリル系架橋剤、スチレン系架橋剤、アリル系架橋剤、マレイミド系架橋剤、ベンゾシクロブテン型架橋剤等が挙げられる。
【0112】
(メタ)アクリル系架橋剤は、2個以上のアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する化合物である。
(メタ)アクリル系架橋剤としては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,3-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル化合物;ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のエーテル含有(メタ)アクリル酸エステル;トリス(3-ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等のイソシアヌレート含有(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリル系架橋剤の市販品としては、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」(ジオキサングリコールジアクリレート)、共栄社化学社製の「DCP-A」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「DCP」(トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート)、日本化薬株式会社の「KAYARAD R-684」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「KAYARAD R-604」(ジオキサングリコールジアクリレート)等が挙げられる。
【0113】
スチレン系架橋剤は、芳香族炭素原子に直接結合した2個以上のビニル基をする化合物である。
スチレン系架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、2,4-ジビニルトルエン、2,6-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、4,4’-ジビニルビフェニル、1,2-ビス(4-ビニルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ビニルフェニル)プロパン、ビス(4-ビニルフェニル)エーテル等が挙げられる。
【0114】
アリル系架橋剤は、2個以上のアリル基を有する化合物である。
アリル系架橋剤としては、例えば、ジフェン酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、フ タル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリル、2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル等の芳香族カルボン酸アリルエステル化合物;1,3,5-トリアリルイソシアヌレート、1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌル酸アリルエステル化合物;2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン等のエポキシ含有芳香族アリル化合物;ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H‐1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン等のベンゾオキサジン含有芳香族アリル化合物;1,3,5-トリアリルエーテルベンゼン等のエーテル含有芳香族アリル化合物;ジアリルジフェニルシラン等のアリルシラン化合物等が挙げられる。
アリル系架橋剤の市販品としては、日本化成社製の「TAIC」(1,3,5-トリアリルイソシアヌレート)、日触テクノファインケミカル社製の「DAD」(ジフェン酸ジアリル)、富士フイルム和光純薬社製の「TRIAM-705」(トリメリット酸トリアリル)、日本蒸留工業社製の商品名「DAND」(2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル)、四国化成工業社製「ALP -d」(ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン)、「L-DAIC」、「DD-1」、「TA-G」、日本化薬社製の「RE-810NM」(2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン)、四国化成工業社製の「DA-MGIC」(1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート)等が挙げられる。
【0115】
マレイミド系架橋剤は、2個以上のマレイミド基を有する化合物である。
マレイミド系架橋剤としては、例えば、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビフェニルアラルキル型ポリマレイミド等の芳香族マレイミド化合物;N,N’-エチレンジマレイミド、N,N’-テトラメチレンジマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンジマレイミド、1-マレイミド-3-マレイミドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPBM)、1,1’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビスメチレン)ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(CBM)、1,1’-(4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(MBCM)、ダイマー酸骨格含有ビスマレイミド等の脂肪族マレイミド化合物等が挙げられる。
マレイミド系架橋剤の市販品としては、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-689」(ダイマー酸骨格含有ビスマレイミド)、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」(ビフェニルアラルキル型ポリマレミド)等が挙げられる。
【0116】
ベンゾシクロブテン型架橋剤は、2個以上のベンゾシクロブテン環を有する化合物である。ベンゾシクロブテン型架橋剤は、さらに、エチレン性不飽和基を有することが好ましい。ベンゾシクロブテン型架橋剤は、さらに、オルガノシロキサン骨格を有することが好ましい。
ベンゾシクロブテン型架橋剤の市販品としては、例えば、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製の「CYCLOTENE3022」(ジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテン)等が挙げられる。
【0117】
本発明の硬化性樹脂組成物中の架橋剤の含有量は、特に限定されるものではないが、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは、0.5~60質量%であり、より好ましくは、5~40質量%であり、特に好ましくは10~30質量%である。
【0118】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述した変性ポリフェニレンエーテル、上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。
その他の樹脂としては、例えば、ポリアミドイミド系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、低誘電エステル系樹脂、マレイミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂、シアネート系樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂等が挙げられる。
【0119】
本発明の硬化性樹脂組成物における上記その他の樹脂の含有割合は、樹脂組成物100質量%に対して、1~50質量%であることが好ましい。より好ましくは、3~40質量%であり、更に好ましくは、5~30質量%である。
【0120】
本発明の硬化性樹脂組成物は、充填剤を含んでいてもよい。
上記充填剤は繊維状であっても粉末状であってもよく、シリカ、カーボンブラック、アルミナ、タルク、雲母、ガラスビーズ、ガラス中空球等を挙げることができる。
また本発明の硬化性樹脂組成物は、難燃性化合物、その他の添加剤などの併用も可能である。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、難燃性の化合物では、4,4-ジブロモビフェニルなどの臭素化合物、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素化合物、オキサジン環含有化合物、シリコン系化合物等が挙げられる。
添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤等、所望に応じて適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0121】
本発明の硬化性樹脂組成物における充填剤、難燃性化合物、その他の添加剤の含有量は、これらの合計含有量が樹脂組成物100質量%に対して、1~40質量%であることが好ましい。より好ましくは、5~30質量%である。
【0122】
2.硬化性樹脂組成物の製造方法
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体を製造した後、変性ポリフェニレンエーテル、及び、その他の成分と混合することで製造することができる。
上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体の製造方法について以下に説明する。
【0123】
本発明における上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体の製造方法は特に制限されないが、以下のいずれかの製造方法を用いることができる。
(製造方法A):カルボキシル基含有重合性単量体を含む単量体成分を重合する第一工程、第一工程で得られたカルボキシル基含有重合体1Aに対して炭素数1~4のアルキレンイミンを反応させて側鎖末端にアミノ基を有する重合体2Aを得る第二工程、第二工程で得られた重合体2Aに対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物を反応させる第三工程を行う製造方法。
(製造方法B):カルボキシル基含有重合性単量体を含む単量体成分を重合する第一工程、第一工程で得られたカルボキシル基含有重合体1Bに対して炭素数1~4のアルキレンイミンを反応させて側鎖末端にアミノ基を有する重合体2Bを得る第二工程、第二工程で得られた重合体2Bに対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するエポキシ基含有化合物を反応させる第三工程を行う製造方法。
(製造方法C):水酸基含有重合性単量体を含む単量体成分を重合する第一工程、第一工程で得られた水酸基含有重合体1Cに対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物を反応させる第二工程を行う製造方法。
(製造方法D):水酸基含有重合性単量体を含む単量体成分を重合する第一工程、第一工程で得られた水酸基含有重合体1Dに対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するエポキシ化合物を反応させる第二工程を行う製造方法。
【0124】
以下に製造方法A~Dについて順に説明する。
(1)製造方法A
上記製造方法Aは、上記式(3)で表される構造単位Aと上記式(4)で表される構造単位Bとを有する重合体1のうち、式(4)のXが(4-1)の構造である(メタ)アクリル系重合体の製造に使用することができる。
【0125】
<第一工程>
上記製造方法Aの第一工程は、カルボキシル基含有重合性単量体を含む単量体成分を重合する工程である。
第一工程に用いる単量体成分に含まれるカルボキシル基含有重合性単量体の含有割合は、単量体成分全体100質量%に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5~15質量%である。
【0126】
上記製造方法Aの第一工程に用いる単量体成分は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含んでいてもよい。
上記製造方法Aの第一工程に用いる単量体成分に含まれる(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有割合は、単量体成分全体100質量%に対して、35~99.9質量%であることが好ましい。より好ましくは、50~99.9質量%であり、更に好ましくは、80~99.5質量%であり、特に好ましくは、85~99.5質量%である。
【0127】
上記製造方法Aの第一工程に用いる単量体成分は、カルボキシル基含有重合性単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体以外のその他の単量体を含んでいてもよい。
製造方法Aの第一工程に用いる単量体成分に含まれるその他の単量体の含有割合は、単量体成分全体100質量%に対して、0~65質量%であることが好ましい。より好ましくは、5~50質量%である。
【0128】
上記製造方法Aにおいて用いるカルボキシル基含有重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等の重合性二重結合とカルボキシル基とを有する単量体が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0129】
上記製造方法Aにおいて用いる(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アルキル基の炭素数が1~22の飽和脂肪族基含有アルキル(メタ)アクリレート、脂環式骨格の炭素数が6~26の脂環式骨格含有(メタ)アクリレート、芳香族基の炭素数が6~26の芳香族基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
アルキル基の炭素数が1~22の飽和脂肪族基含有アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート)、ベヘニル(メタ)アクリレートである。
脂環式骨格の炭素数が6~26の脂環式骨格含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等である。
芳香族基の炭素数が6~26の芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1- ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、8-(2-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート等である。
これらのうち、誘電率と誘電正接の観点から、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートの使用が好ましい。
【0130】
上記製造方法Aの第一工程に用いる単量体成分がカルボキシル基含有重合性単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体以外のその他の単量体を含む場合、その他の単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有単量体;オレフィン系単量体;ハロゲン含有単量体;窒素含有単量体等が挙げられる。
これらの中でも、銅箔との密着性や電気特性(誘電正接)等の点から、芳香環含有単量体、窒素含有単量体が好ましい。すなわち、上記製造方法Aで得られる重合体1が芳香環含有単量体由来の構造単位や、窒素含有単量体由来の構造単位を有することは、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0131】
上記窒素含有単量体としては、例えば、不飽和ニトリル単量体、マレイミド基含有単量体、アミド基含有単量体、N-置換(メタ)アクリルアミド単量体、下記式(6)で表される単量体、下記式(7)で表される単量体、下記式(8)で表される単量体が挙げられ、これらの中でも下記式(6)で表される単量体、下記式(7)で表される単量体、下記式(8)で表される単量体が好ましい。
【0132】
【0133】
(式中、R61は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表し、R62は炭素数1~6のアルキレン基を表し、R63は水素原子またはメチル基を表し、X61は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す。)
上記式(6)において、R61で表される炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、 メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの鎖式アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの脂環式アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチ ル基などの芳香族アルキル基;などが挙げられる。
上記式(6)において、R62で表される炭素数1~6のアルキレン基としては、例えば 、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などの直鎖状アルキレン基;イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、t-ブチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基などの分枝鎖状アルキレン基;などが挙げられる。
【0134】
上記式(6)において、X6で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。Xで表される炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの鎖式アルキル基:シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基 、シクロオクチル基などの脂環式アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などの芳香族アルキル基;などが挙げられる。Xで表される炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0135】
上記式(6)で表される紫外線吸収性単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル-3’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。銅箔との密着性、電気特性(誘電率、誘電正接)、折り曲げ性を向上させる観点から2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールが特に好ましい。
【0136】
【0137】
(式(7)中、R71は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。R72は水素原子またはメチル基を表す。R73は水素原子または水酸基を表す。R74は水素原子または炭素数1~6のアルコキシ基を表す。R75は炭素数1~12の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキレン基を表す。)
【0138】
上記式(7)で表される紫外線吸収性単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、2-ヒドロキシ-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシ-4’-(2-ヒドロキシトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0139】
【0140】
(式(8)中、R81は水素原子またはシアノ基を表し、R82、R83はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R84は水素原子またはアルキル基を表し、Z81は酸素原子またはイミノ基を表す。)
【0141】
上記式(8)で表される単量体の具体例としては、特に限定されるものではないが、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(例えば、ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)LA87」)、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン(例えば、ADEKA社製「アデカスタブLA-82」)、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどを挙げることができ、これらの単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも銅箔との密着性、電気特性(誘電正接)を向上させる観点から、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンや4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジンが特に好ましい。
【0142】
上記マレイミド基含有単量体としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-sec-ブチルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド、N-アミルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-ヘプチルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ノニルマレイミド、N-デシルマレイミド、N-デシルマレイミド、N-ウンデシルマレイミド、N-ドデシルマレイミド(N-ラウリルマレイミド)、N-トリデシルマレイミド、N-テトラデシルマレイミド、N-ペンタデシルマレイミド、N-ヘキサデシルマレイミド、N-ヘプタデシルマレイミド、N-オクタデシルマレイミド(N-ステアリルマレイミド)、N-ノナデシルマレイミド、N-アリルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ジメチルフェニルマレイミド、N-エチルフェニルマレイミド、N-ジエチルフェニルマレイミド、N-フェニルメチルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド、N-ジクロロフェニルマレイミド、N-トリクロロフェニルマレイミド、N-トリブロモフェニルマレイミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0143】
上記不飽和ニトリル単量体、アミド基含有単量体等のその他の窒素含有単量体としては、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピリジン、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン、N-ビニルオキサゾリドン、N-ビニルサクシンイミド、N-ビニルメチルカルバメート、N,N-メチルビニルアセトアミド、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0144】
上記製造方法Aの第一工程において、単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤の量を適宜調整することにより、得られる重合体1Aの分子量を容易に調整することができる。一般に、重合開始剤の量を少なくすると重合反応時間が長くなる傾向にあるが、得られる重合体1Aの分子量を高くすることができ、重合開始剤の量を多くすると重合反応時間が短くなる傾向にあるが、得られる重合体1Aの分子量が低くなる。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパ-オキサイド、パラクロロベンゾイルパ-オキサイド、ラウロイルパ-オキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0145】
上記製造方法Aの第一工程における重合開始剤の使用量は、重合速度を高め、未反応の単量体成分の残存量を低減させるとともに、得られる重合体1Aの分子量を制御し、かつ、得られる重合体1Aの分子量を高める観点から、好ましくは単量体成分100質量%あたり、0.1~15質量%である。
【0146】
上記重合開始剤を単量体成分に含有させる方法は、特に限定されない。その含有方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。
【0147】
また上記製造方法Aの第一工程においては、重合体1Aの分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、tert-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0148】
上記製造方法Aの第一工程において、単量体成分を重合させる方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、上記第一工程における重合方法は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合法のなかでは、重合体1Aを容易に調製することができることから、溶液重合法が好ましい。
【0149】
上記製造方法Aの第一工程において、単量体成分を溶液重合法によって重合させる場合に使用される溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;n-ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒などの有機溶媒が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0150】
上記製造方法Aの第一工程において、単量体成分を重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0151】
上記製造方法Aの第一工程において、単量体成分を重合させる際の重合反応温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50~200℃、より好ましくは60~150℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
上記重合工程において、単量体成分の重合させる重合反応時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2~20時間程度である。
【0152】
上記製造方法Aの第一工程において得られる重合体1Aの重量平均分子量は、5,000以上であることが好ましく、10,000以上がより好ましい。5,000より小さいと、製造方法Aで製造される重合体の銅箔との密着性が不足する場合がある。重合体1Aの重量平均分子量は、300,000以下であることが好ましく、200,000以下がより好ましい。重合体1Aの重量平均分子量300,000より大きいと、第二工程でアルキレンイミンを付加反応する場合においてゲル化する恐れがある。
重合体1Aの重量平均分子量は、上述した本発明における上記式(1)又は(2)で表される構造の少なくとも1つを側鎖に有する重合体の重量平均分子量と同様の方法で測定することができる。
【0153】
<第二工程>
上記製造方法Aの第二工程は、第一工程で得られたカルボキシル基含有重合体1Aに対して炭素数1~4のアルキレンイミンを反応させて側鎖末端にアミノ基を有する重合体2Aを得る工程である。
第二工程において用いる炭素数1~4のアルキレンイミンとしては、例えばエチレンイミン、プロピレンアミンのような開環重合可能な環状アルキレンイミン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0154】
上記製造方法Aの第二工程における炭素数1~4のアルキレンイミンの使用量は、カルボキシル基含有重合体1Aが有するカルボキシル基のモル数に対して、0.2~3.5モル倍の範囲であればよく、好ましくは0.5~2.5モル倍である。
【0155】
上記製造方法Aの第二工程の、第一工程で得られた酸基含有重合体1Aに対して炭素数1~4のアルキレンイミンを反応させる際の反応温度は、40~80℃であることが好ましい。より好ましくは、50~80℃である。反応温度は一定であってもよく、反応の途中で変化させてもよい。
反応時間は特に制限されず、反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、4~8時間である。
【0156】
また上記製造方法Aにおいては、第一工程、第二工程を行う代わりに市販のアミノアルキル化(メタ)アクリル系(共)重合体を用いてもよい。
市販のアミノアルキル化(メタ)アクリル系(共)重合体の具体例としては、ポリメントNK-100PM、NK-200PM、NK-350、NK-380(以上、(株)日本触媒製)等が挙げられる。これらは1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0157】
<第三工程>
上記製造方法Aの第三工程は、第二工程で得られた側鎖末端にアミノ基を有する重合体2Aに対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物を反応させる工程である。
第三工程における、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物の使用量は特に限定されないが、重合体2A中のアミノ基とイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル比(アミノ基/イソシアネート基)が、0.8~6となる量であることが好ましい。アミノ基/イソシアネート基のモル比が0.8未満となる量のイソシアネート化合物と反応させる場合、重合体が高分子量化し、ゲル化しやすくなる。より好ましくは、アミノ基/イソシアネート基のモル比が1.0~3となる量でイソシアネート化合物と反応させることである。
【0158】
上記第三工程において用いる、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物としては、例えば、2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工株式会社製「カレンズMOI)」)、2-イソシアナトエチルアクリレート(昭和電工株式会社製「カレンズAOI」)、2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート(昭和電工株式会社製「カレンズMOI-EG)」)などのラジカル反応性基を有するイソシアネート化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0159】
上記製造方法Aの第三工程で行われる、第二工程で得られた重合体2Aとイソシアネート化合物との反応は、第一工程の重合体の合成で使用する溶剤の存在下で行われることでよい。
【0160】
上記第三工程の反応の際に、分子中の二重結合間の重合反応を防ぐために、重合禁止剤を反応前に少量加えておくことが好ましい。重合禁止剤の具体例としては、パラメトキシフェノール 、メチルハイドロキノン等が挙げられる。
重合禁止剤の使用量は、第一工程で使用される単量体成分100質量%に対し、0.001~0.5質量%であることが好ましい。
【0161】
(2)製造方法B
上記製造方法Bは、上記式(3)で表される構造単位Aと上記式(4)で表される構造単位Bとを有する重合体1のうち、Xが(4-2)である構造の(メタ)アクリル系重合体の製造に使用することができる。
【0162】
<第一工程、第二工程>
上記製造方法Bの第一工程、第二工程は、上記製造方法Aの第一工程、第二工程と同じ工程であるため、上記製造方法Aの第一工程、第二工程と同様に行うことができる。
【0163】
<第三工程>
上記製造方法Bの第三工程は、第二工程で得られた側鎖末端にアミノ基を有する重合体2Bに対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するエポキシ基含有化合物を反応させる工程である。
第三工程において、第二工程で得られた側鎖末端にアミノ基を有する重合体2Bに対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するエポキシ基含有化合物を反応させる際のエポキシ基含有化合物の使用量は特に限定されないが、重合体2B中のアミノ基とエポキシ基含有化合物のエポキシ基とのモル比(アミノ基/エポキシ基)が、0.8~6となる量であることが好ましい。アミノ基/エポキシ基のモル比が0.8未満となる量のエポキシ基含有化合物と反応させる場合、重合体が高分子量化し、ゲル化しやすくなる。より好ましくは、アミノ基/エポキシ基のモル比が1.0~3となる量でエポキシ基含有化合物と反応させることである。
【0164】
上記製造方法Bの第三工程において用いる末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するエポキシ基含有化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0165】
上記製造方法Bの第三工程で行われる、第二工程で得られた重合体2Bとエポキシ基含有化合物との反応は、第一工程の重合体の合成で使用する溶剤の存在下で行われることでよい。
【0166】
上記製造方法Bの第三工程の反応の際に、分子中の二重結合間の重合反応を防ぐために、重合禁止剤を反応前に少量加えておくことが好ましい。重合禁止剤の具体例、使用量は、上記製造方法Aの第三工程と同様である。
【0167】
(3)製造方法C
上記製造方法Cは、上記式(5)で表される構造単位Cを有する重合体2のうち、Xが(4-1)である構造の(メタ)アクリル系重合体の製造に使用することができる。
【0168】
<第一工程>
上記製造方法Cの第一工程は、水酸基含有重合性単量体を含む単量体成分を重合する工程である。
水酸基含有重合性単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチルメタクリレートのε-カプロラクトン1モル付加物、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのε-カプロラクトン2モル付加物、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのε-カプロラクトン3モル付加物、あるいは2-ヒドロキシエチルアクリレートのε-カプロラクトン1モル付加物等の、水酸基含有(メタ)アクリレートの有機ラクトン類の付加物(例えば、ダイセル化学工業社製の「プラクセル(登録商標)FM1D」、「プラクセルFM2D」、「プラクセルFM3」、「プラクセルFA1DDM」、「プラクセルFA2D」など);が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0169】
上記製造方法Cの第一工程に用いる単量体成分は、水酸基含有重合性単量体の他、水酸基を有さない(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含んでいてもよい。
水酸基を有さない(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、上述した製造方法Aにおいて用いる(メタ)アクリル酸エステル系単量体の具体例と同様のものが挙げられる。
【0170】
上記製造方法Cの第一工程に用いる単量体成分は、水酸基含有重合性単量体、水酸基を有さない(メタ)アクリル酸エステル系単量体以外のその他の単量体を含んでいてもよい。その他の単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有単量体;オレフィン系単量体;ハロゲン含有単量体;窒素含有単量体等が挙げられる。
これらの中でも、銅箔との密着性や電気特性(誘電正接)等の点から芳香環含有単量体、窒素含有単量体が好ましい。すなわち、上記製造方法Cで得られる重合体2が芳香環含有単量体由来の構造単位や、窒素含有単量体由来の構造単位を有することは、本発明の好適な実施形態の1つである。
これらその他の単量体としては、上述した製造方法Aにおいて記載したものと同様のものを用いることができる。
【0171】
上記製造方法Cの第一工程に用いる単量体成分における水酸基含有重合性単量体の含有割合は、単量体成分全体100質量%に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5~15質量%である。
単量体成分における水酸基を有さない(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有割合は、単量体成分全体100質量%に対して、0~50質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5~30質量%である。
単量体成分における水酸基含有重合性単量体、水酸基を有さない(メタ)アクリル酸エステル系単量体以外のその他の単量体の含有割合は、単量体成分全体100質量%に対して、0~90質量%であることが好ましい。より好ましくは、5~80質量%である。
【0172】
上記製造方法Cの第一工程においては、重合開始剤を用いることが好ましい。使用する重合開始剤の具体例、使用量、重合開始剤を単量体成分に含有させる方法は、上記製造方法Aの第一工程と同様である。
また上記製造方法Cの第一工程においては、重合体1Cの分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤の具体例は、上記製造方法Aの第一工程おいて記載したものと同様である。
【0173】
上記製造方法Cの第一工程において、単量体成分を重合させる方法としては、上記製造方法Aの第一工程と同様の方法を用いることができ、重合反応温度、重合反応時間も同様である。
【0174】
<第二工程>
上記製造方法Cの第二工程は、第一工程で得られた水酸基含有重合体1Cに対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物を反応させる工程である。
第二工程において、第一工程で得られた水酸基含有重合体1Cに対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物を反応させる際のイソシアネート化合物の使用量は特に限定されないが、重合体1C中の水酸基とイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル比(水酸基/イソシアネート基)が、0.8~6となる量であることが好ましい。水酸基/イソシアネート基のモル比が0.8未満となる量のイソシアネート化合物と反応させる場合、重合体が高分子量化し、ゲル化しやすくなる。より好ましくは、水酸基/イソシアネート基のモル比が1~3となる量でイソシアネート化合物と反応させることである。
【0175】
上記製造方法Cの第二工程において用いる、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物としては、上記製造方法Aの第三工程において用いるものと同様のものを用いることができる。
【0176】
上記製造方法Cの第二工程で行われる、第一工程で得られた水酸基含有重合体1Cとイソシアネート化合物との反応は、第一工程の重合体の合成で使用する溶剤の存在下で行われることでよい。
また第二工程の反応の際に、分子中の二重結合間の重合反応を防ぐために、重合禁止剤を反応前に少量加えておくことが好ましい。重合禁止剤の具体例、使用量は上記製造方法Aの第三工程と同様である。
【0177】
(4)製造方法D
上記製造方法Dは、上記式(5)で表される構造単位Cを有する重合体2のうち、Xが(4-2)である構造の(メタ)アクリル系重合体の製造に使用することができる。
【0178】
<第一工程>
上記製造方法Dの第一工程は、上記製造方法Cの第一工程と同じ工程であるため、上記製造方法Cの第一工程と同様に行うことができる。
【0179】
<第二工程>
上記製造方法Dの第二工程は、第一工程で得られた水酸基含有重合体1Dに対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するエポキシ基含有化合物を反応させる工程である。
第二工程において、第一工程で得られた水酸基含有重合体1Dに対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するエポキシ基含有化合物を反応させる際のエポキシ基含有化合物の使用量は特に限定されないが、重合体1D中の水酸基とエポキシ基含有化合物のエポキシ基とのモル比(水酸基/エポキシ基)が、0.8~6となる量であることが好ましい。水酸基/エポキシ基のモル比が0.8未満となる量のエポキシ基含有化合物と反応させる場合、重合体が高分子量化し、ゲル化しやすくなる。より好ましくは、水酸基/エポキシ基のモル比が1~3となる量でエポキシ基含有化合物と反応させることである。
【0180】
上記製造方法Dの第二工程において用いる末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するエポキシ基含有化合物としては、上記製造方法Bの第三工程において用いるものと同様のものを用いることができる。
【0181】
上記製造方法Dの第二工程で行われる、第一工程で得られた水酸基含有重合体1Dとエポキシ基含有化合物との反応は、第一工程の重合体の合成で使用する溶剤の存在下で行われることでよい。
【0182】
上記製造方法Dの第二工程の反応の際に、分子中の二重結合間の重合反応を防ぐために、重合禁止剤を反応前に少量加えておくことが好ましい。重合禁止剤の具体例、使用量は、上記製造方法Aの第三工程と同様である。
【0183】
3.積層体、プリント配線板
本発明の硬化性樹脂組成物は、さまざまな基材上に塗布あるいは含浸して使用することができる。例えばPETフィルム上に塗布することにより多層プリント基板の層間絶縁層として、ポリイミドフィルム上に塗布することによりカバーレイとして、また銅箔上に塗布乾燥することにより樹脂付き銅箔として使用することができる。またガラスクロスやガラスペーパー、カーボンファイバー、各種不織布などに含浸させることにより、プリント配線板やCFRPのプリプレグとして使用することができる。更には溶剤を含む本発明の樹脂組成物をPET等のフィルムに塗布し、加熱によって溶剤を除去した後にPET等のフィルムを剥離することによりフィルム状接着剤とすることも出来る。
中でも、本発明の硬化性樹脂組成物は、低誘電正接であり、かつ、銅箔への密着性や折り曲げ性にも優れることから、プリント配線板に使用される銅張積層体の材料として好適に使用される。このような本発明の硬化性樹脂組成物を用いて得られる積層体、及び、該積層体を用いてなるプリント配線板もまた、本発明の1つである。
【0184】
本発明の硬化性樹脂組成物を含む層間絶縁層やカバーレイ、樹脂付き銅箔、プリプレグなどはホットプレス機などで加温加圧成形することにより、硬化物とすることができる。硬化時間は好ましくは30分間~3時間程度、硬化温度は好ましくは120~250℃程度である。
【実施例0185】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0186】
実施例における各種物性の測定方法は以下のとおりである。
<不揮発分量>
合成例にて合成したアミノ基含有共重合体(X)溶液1gを秤量し、熱風乾燥機で200℃の温度で15分間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔共重合体(X)溶液の不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔共重合体(X)溶液1g〕)×100
に基づいて求めた。
側鎖末端に炭素-炭素二重結合(C=C)を有する共重合体(A)溶液の不揮発分も同様に測定した。
【0187】
<重量平均分子量>
アミノ基含有共重合体(X)溶液や側鎖に重合性二重結合を含有した共重合体(A)溶液の重量平均分子量は、以下の測定条件で測定した。
装置:東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC
検出器:RI
カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ-M{東ソー(株)製}
2本を直列に使用
カラム温度:40℃
流速:0.18ml/分
検量線:標準ポリスチレン
溶離液:テトラヒドロフラン
【0188】
<アミン価>
合成例にて合成したアミノ基含有共重合体(X)溶液を三角フラスコに試料1gを精秤し、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM-PM)15mLを加えて攪拌溶解し、冷却管を取り付け、1時間還流加熱する。冷却後、塩化水素剤15mLを加え、還流反応を40分間行う。冷却後、0.1mol/L-KOHアルコール性標準溶液でクレゾールレッドを指示薬として滴定し、終点を見る。同時に空試験を行う。
測定したアミン水素当量(g・solid/eq)から、以下の式によりアミン価(g・mol/solid)を算出する。
アミン価(g・mol/solid)=1/アミン水素当量
[アミン価測定に使用する試薬]
(1)フェニルグリシジルエーテル溶液(溶媒:PGM-PM)
フェニルグリシジルエーテル5gをプロピレングリコールモノメチルエーテル95gに溶解する。
(2)塩化水素剤
試薬特級塩酸35ml、ピリジン250ml、プロピレングリコールモノメチルエーテル750mlを混合する。
(3)クレゾールレット指示薬
クレゾールレット0.1gをエタノール20mlに溶かし、水を加えて100mlとする。
(4)0.1mol/L-KOH標準溶液 アルコール性(市販品)
この標準液の力価標定は、標準試薬スルファミン酸約0.2g精秤し、これに50mLの
炭酸ガスを除いた純水を加えて溶解し、指示薬としてフェノールフタレイン溶液(1W/V%)
数滴加えた後、0.1mol/L-KOH標準溶液アルコール性で淡紅色を呈するまで滴定し、滴定量から力価(F)を次のように計算する。
【0189】
【数1】
S:標準試薬スルファミン酸の採取量(g)
P:標準試薬スルファミン酸の純度(wt%)
A:0.1mol/L-KOH標準溶液アルコール性の滴定量(mL)
【0190】
【数2】
Sa:試料採取量(g)
NV:不揮発分(%)
F:0.1mol/L-KOHアルコール性標準溶液の力価
A:試料に要した0.1mol/L-KOHアルコール性標準溶液の滴定量(mL)
B:空試験に要した0.1mol/L-KOHアルコール性標準溶液の滴定量(mL)
【0191】
側鎖末端に炭素-炭素二重結合(-CR0=CH2基)を有する重合体(A1)の合成
合成例1
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置および温度計を備えた500mL容の反応器内にメチルイソブチルケトン95質量部、トルエン90質量部を仕込んだ後、窒素を導入しつつ100℃に調整した。メタクリル酸7.6質量部、メチルメタクリレート92.4質量部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)9.6質量部からなる単量体混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に100℃で6時間熟成を行い冷却した。
次いで、この共重合体に25℃でエチレンイミン5質量部を添加し、1時間攪拌後75℃に昇温し、5時間反応させた。反応終了後、フラスコに蒸留装置を装着し、減圧下に加熱しながら留出分をトルエンで補充しつつ、メチルイソブチルケトンとトルエンを未反応のエチレンイミンと共に系外へ留出させた。残存のエチレンイミンを完全に除去した後、不揮発分をトルエンにて35%に調製し、重量平均分子量が100000、アミン価が1.0mmol/g,solidのアミノ基含有アクリル共重合体を得た。
次にグリシジルメタクリレート5.0質量部(アミノ基含有アクリル共重合体のアミノ基/グリシジルメタクリレートのエポキシ基=1モル比)、メトキノン0.003質量部を仕込み、80℃で5時間反応を行ってから冷却し、不揮発分が35%となるようにトルエンを加えた。生成した側鎖末端に炭素-炭素二重結合を有する共重合体(A1)の重量平均分子量は120000であった。
【0192】
合成例2~8
表1に示すモノマー組成で合成例1と同様な操作でアミノ基含有アクリル共重合体を得た後、グリシジルメタクリレート、又は、2-メタクロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、商品名:カレンズMOI)を表1に記載の割合で仕込み、80℃で5時間反応を行ってから冷却し、不揮発分が35%となるようにトルエンを加えた。生成した側鎖末端に炭素-炭素二重結合を有する共重合体(A2)~(A8)を得た。
【0193】
【0194】
合成例9
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン30質量部、スチレン96.5質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート3.5質量部を含有するプレミックス単量体混合物の20%と重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.4質量部とトルエン10質量部を含有する重合開始剤溶液の20%を仕込み、窒素気流中で反応器の内容物の温度を還流温度(約118℃)に調整した。
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの80%は反応器内に90分かけて滴下、また前記の重合開始剤溶液の残りの80%は反応器内に3時間かけて滴下させた。重合開始剤溶液の滴下が終了した時点から1時間後、2時間後、3時間後に追加開始剤としてtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.1質量部を加え、5時間後に冷却して重合反応を終了させ、トルエン27質量部を加えた。生成した水酸基含有共重合体(前駆体共重合体)の重量平均分子量は60000であり、水酸基含有共重合体(前駆体共重合体)溶液の不揮発分は59.7質量%であり、残存モノマー量は0.3%であった。
次に2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズMOI、昭和電工社製)を5質量部(前記カレンズMOIのNCO基/水酸基含有共重合体のOH基=1.2モル比)とメトキノン0.003質量部を上記重合反応を行った反応容器に仕込み、95℃に昇温し5時間ウレタン反応を行い冷却し、不揮発分が60%となるようにトルエンを加えた。生成した側鎖末端に炭素-炭素二重結合を有する共重合体(A9)の重量平均分子量は64000であった。
【0195】
合成例10~17
表2に示すモノマー組成で、スチレンと2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートの仕込み量以外は合成例1と同じように溶液重合を行ない、その後2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートで付加反応を行い、冷却し、不揮発分が60%となるようにトルエンを加えた。これにより、側鎖末端に炭素-炭素二重結合を有する共重合体(A10)~(A17)を得た。
【0196】
【0197】
実施例1~11、比較例1
側鎖末端に炭素-炭素二重結合を有する変性ポリフェニレンエーテルであるNORYL SA9000-111(商品名:SABICジャパン合同会社製)60質量部、トリアリルイソシアヌレート35質量部、合成例1で得られた側鎖末端に炭素-炭素二重結合を有する重合体(A1)溶液14.3質量部に不揮発分が20%となるようにトルエンを加えて均一に溶解した混合液にパーブチルP(商品名:日本油脂社製)を3質量部加えて混合することにより硬化性樹脂組成物を調製した。次に、得られた硬化性樹脂組成物を硬化させ、銅箔との接着性、誘電正接、折り曲げ性を以下の方法に基づいて調べた。
合成例2以降に得られた共重合体(A2)~(A8)についても同様に、表3に示す配合で硬化性樹脂組成物を調製し、各種特性を調べた。また比較のため、共重合体(A1)~(A8)のいずれも含まない組成物についても同様に特性を調べた。その結果を表3に示す。
【0198】
<銅箔との接着性>
アプリケーターを用いて硬化性樹脂組成物を厚さ12μmの高周波用低粗度銅箔(CF-T4X-SV:福田金属箔粉株式会社製)のマット面上に乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、90℃で10分間加熱して溶剤を乾燥させて接着剤を有する銅箔をそれぞれ得た。前記で得られたそれぞれの銅箔の接着剤面上に、前記と同じ銅箔のマット面を重ねあわせて真空プレス中で3MPaの圧力で200℃2時間加熱硬化させた後、当該積層体を縦50mm、横25mmの長方形に切断し、得られた試験片を25℃の雰囲気中にて片方の銅箔側から引張速度50mm/minにて90°剥離を行ない、銅箔間の引きはがし強さを調べ、以下の評価基準に基づいて接着性を評価した。
(評価基準)
100点:剥離強度が1.0N/mm以上
80点:剥離強度が0.5N/mm以上1.0N/mm未満
60点:剥離強度が0.2N/mm以上0.5N/mm未満
0点:剥離強度が0.2N/mm未満
【0199】
<硬化物の誘電正接>
アプリケーターを用いて、硬化性樹脂組成物をコロナ放電処理を行ったポリイミドフィルム上に乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、90℃で10分間加熱して溶剤を乾燥させてポリイミドフィルム上に接着剤を作製した後、更に真空オーブンを用いて200℃で2時間加熱することにより、本発明の共重合体(A)を含む硬化性樹脂組成物の硬化物を得た。10GHzにおける誘電正接を、ネットワークアナライザー8719ET(アジレントテクノロジー製)を用いて空洞共振法によって測定し、以下の評価基準に基づいて硬化物の誘電正接を評価した。
(誘電正接の評価基準)
100点:誘電正接が0.0024未満
80点:誘電正接が0.0024以上0.003未満
60点:誘電正接が0.003以上0.004未満
0点:誘電正接が0.004以上
【0200】
<折り曲げ性>
アプリケーターを用いて、硬化性樹脂組成物をコロナ放電処理を行ったポリイミドフィルム上に乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、90℃で10分間加熱して溶剤を乾燥させてポリイミドフィルム上に作製した後、更に真空オーブンを用いて200℃で2時間加熱することにより、本発明の共重合体(A)を含む樹脂組成物の硬化物をそれぞれ得た。得られたフィルムを長さ60mm、幅25mmの長方形に切断することにより、試験片を作製した。
前記で得られた試験片を用い、JIS K5600-5-1に規定の円筒形マンドレル法に準じ、試験片の長さ方向に当該試験片の硬化物層がマンドレル(心棒)とは反対面に位置するようにし、直径が10mm、12mm、16mm、20mmであるマンドレルを用いて試験片をマンドレルに沿って折り曲げ、硬化物層が亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径を調べ、以下の評価基準に基づいて折り曲げ性を評価した。
なお、マンドレルの直径が小さいほど、塗膜に亀裂および剥がれが生じがたく、折り曲げ性に優れている。
(評価基準)
100点:硬化物層が亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径が10mm以下である。
80点:硬化物層が亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径が12mmである。
60点:硬化物層が亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径が16mmである。
0点:硬化物層が亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径が20mmである。
【0201】
<総合評価>
各試験項目において、評価得点を合計することにより、総合得点を求めた。なお、評価項目に0点が1つでも存在する樹脂組成物は不合格であるため、表3の総合評価の欄に×を付した。
【0202】