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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119401
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ノズル
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/04 20060101AFI20240827BHJP
   A01G 25/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B05B1/04
A01G25/00 601E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026272
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】596005964
【氏名又は名称】住化農業資材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】村上 太一
(72)【発明者】
【氏名】白川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 友隆
【テーマコード(参考)】
4F033
【Fターム(参考)】
4F033AA07
4F033BA04
4F033CA02
4F033DA01
4F033EA01
4F033FA00
4F033JA03
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】液体の散布距離を抑えたノズルを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、液体を外部に放出するスリット42、及び第一方向に延びてスリット42と連通し且つ該スリット42まで液体を案内する内部流路5、を有するノズル本体を備え、スリット42は、第一方向を幅方向とし且つ該第一方向と直交する面方向に沿って広がり、スリット42の幅は、内部流路5における該スリット42との連通位置での面方向の大きさより小さい、ことを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を外部に放出するスリット、及び所定方向である第一方向に延びて前記スリットと連通し且つ該スリットまで前記液体を案内する内部流路、を有するノズル本体を備え、
前記スリットは、前記第一方向を幅方向とし且つ該第一方向と直交する面方向に沿って広がり、
前記スリットの幅は、前記内部流路における該スリットとの連通位置での前記面方向の大きさより小さい、ノズル。
【請求項2】
前記内部流路は、前記連通位置から上流側に向けて前記第一方向に直線状に延びる直管部を有する、請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記ノズル本体は、前記第一方向に延びる柱状であり、
前記直管部は、前記第一方向と直交する第二方向から見て、前記ノズル本体における前記第一方向及び前記第二方向のそれぞれと直交する第三方向の中心位置より該第三方向の一方側に寄った位置に配置され、
前記スリットは、前記第一方向から見て、前記第二方向に延び且つ前記連通位置の前記内部流路を通る仮想線から前記第三方向の他方側に広がる、請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
前記ノズル本体は、樹脂製であり、外周面における少なくとも前記第一方向の前記直管部と対応する範囲で且つ前記第二方向から見て前記第三方向の前記直管部より他方側の範囲に、該ノズル本体の内側に向けて凹む少なくとも一つの凹部を有する、請求項3に記載のノズル。
【請求項5】
前記内部流路は、前記直管部の上流側端部から前記第一方向に延びる太管部を有し、
前記太管部の横断面は、前記直管部の横断面より大きい、請求項3又は4に記載のノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を散布するノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種野菜又は草花等の作物を露地栽培する畑、菜園、ビニルハウス、果樹園、芝生又は草花等が植えられた公園、庭園等において水等の液体を散布する液体散布装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この液体散布装置のノズル(散液頭部)500は、図11に示すように、立ち上がり管501の上端部に取り付けられる取付部510と、取付部510から上方に凸となる階段状に形成された段状部520と、備える。
【0004】
段状部520は、取付部510に連設された下段部521と、下段部521の上部に連設された上段部522と、を有する。
【0005】
下段部521は、外観形状がほぼ直方体状に、且つ、その中心軸とノズル500の軸とが一致するようにして形成されており、上段部522は、外観形状がほぼ円柱状に、且つ、その軸とノズル500の軸とが一致するように形成されている。また、段状部520には、土壌等の撒水領域に撒水可能な複数の孔525…が形成されている。これら複数の孔525…は、ノズル500の軸から放射状に、かつ、互いに等間隔(45°間隔)となるように配設されている。
【0006】
この孔525は、図12にも示すように、下段部521における水平面521aと、この水平面521aから上に向かう垂直面522a、つまり、上段部522における垂直面522aとに跨がるようにして、上下方向にスリット状に形成されている。即ち、孔525は、水平面521aに形成されたスリット部(水平面521aに形成されたスリット部分)525a、及び、垂直面522aに形成されたスリット部(垂直面522aに形成されたスリット部分)525bを有し、スリット部525aとスリット部525bとは互いに連通している。
【0007】
孔525におけるスリット部525aからは、垂直方向上向きに水が放出される。一方、該孔525におけるスリット部525bからは、水平方向に水が放出される。従って、垂直方向上向きに放出される水と、水平方向に放出される水とが衝突するので、結果的に水は、孔525から斜め上方に向かって放出されることになる。
【0008】
このように、液体散布装置のノズル500は、液体を所定の角度を持って散布することによりノズル500から離れた位置まで散布できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10-180150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、栽培する植物の種類や栽培場所によっては、液体の散水領域(ノズル500からの距離)を限定的にすることが求められる場合がある。
【0011】
そこで、本発明は、液体の散布距離を抑えたノズルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のノズルは、
液体を外部に放出するスリット、及び所定方向である第一方向に延びて前記スリットと連通し且つ該スリットまで前記液体を案内する内部流路、を有するノズル本体を備え、
前記スリットは、前記第一方向を幅方向とし且つ該第一方向と直交する面方向に沿って広がり、
前記スリットの幅は、前記内部流路における該スリットとの連通位置での前記面方向の大きさより小さい。
【0013】
かかる構成によれば、第一方向が垂直方向となるようにノズルが配置されることで、ノズルに供給される液体が該ノズルのスリットから水平方向に放出される。しかも、スリットの幅が内部流路より小さいことで該スリットから外部に水平に放出される液体において上下方向の速度成分が抑えられ、これにより、液体の散布距離が好適に抑えられる。
【0014】
前記ノズルにおいて、
前記内部流路は、前記連通位置から上流側に向けて前記第一方向に直線状に延びる直管部を有してもよい。
【0015】
かかる構成によれば、第一方向から見たときのスリットから放出される液体の扇状の広がり(例えば、図5の角度α参照)を十分に確保することができ、これにより、十分な散布範囲を確保することができる。
【0016】
また、前記ノズルにおいて、
前記ノズル本体は、前記第一方向に延びる柱状であり、
前記直管部は、前記第一方向と直交する第二方向から見て、前記ノズル本体における前記第一方向及び前記第二方向のそれぞれと直交する第三方向の中心位置より該第三方向の一方側に寄った位置に配置され、
前記スリットは、前記第一方向から見て、前記第二方向に延び且つ前記連通位置の前記内部流路を通る仮想線から前記第三方向の他方側に広がってもよい。
【0017】
かかる構成によれば、第一方向と直交する面方向のノズル本体の大きさを抑えつつ、スリットにおける内部流路(直管部)との連通位置から液体の外部への放出位置までの距離(例えば、図5の矢印β参照)を十分に確保して該スリットから水平に放出される液体の上下方向の速度成分を十分に抑えることができる。
【0018】
また、前記ノズルにおいて、
前記ノズル本体は、樹脂製であり、外周面における少なくとも前記第一方向の前記直管部と対応する範囲で且つ前記第二方向から見て前記第三方向の前記直管部より他方側の範囲に、該ノズル本体の内側に向けて凹む少なくとも一つの凹部を有してもよい。
【0019】
直管部の変形や直管部内周面に凹凸が生じていると第一方向から見たときのスリットから放出される液体の扇状の広がりが小さくなるが、上記構成のように、ノズル本体において直管部を第三方向にオフセットさせて肉厚になった部位に凹部を設けることで成型時の肉引け等による直管部の変形や直管部内周面での凹凸の発生が抑えられ、これにより、スリットから放出される液体の扇状の広がりが小さくなることを防ぐことができる。即ち、ノズルにおける直管部の変形や内周面の凹凸に起因する液体の散布範囲(前記扇状の広がりの角度)の減少を抑えることができる。
【0020】
また、前記ノズルでは、
前記内部流路は、前記直管部の上流側端部から前記第一方向に延びる太管部を有し、
前記太管部の横断面は、前記直管部の横断面より大きくてもよい。
【0021】
内部流路における流通方向(第一方向)の直管部より上流側の部位を太くしてノズル本体の対応する部位の厚みを抑えることで、ノズル本体の該部位における成型時の肉引けを抑え、これにより、直管部の変形等をより好適に抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上より、本発明によれば、液体の散布距離を抑えたノズルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本実施形態に係るノズルの斜視図である。
図2図2は、前記ノズルの側面図である。
図3図3は、前記ノズルの正面図である。
図4図4は、図3におけるIV-IV位置の断面図である。
図5図5は、図3におけるV-V位置の断面図である。
図6図6は、図3におけるVI-VI位置の断面図である。
図7図7は、前記ノズルの底面図である。
図8図8は、前記ノズルがホースに取り付けられた状態を示す図である。
図9図9は、前記ノズルの灌水強度の分布を示す図である。
図10図10は、複数のノズルが間隔をあけて直線状に配置された状態での灌水強度の分布を示す図である。
図11図11は、従来のノズルを説明するための図である。
図12図12は、前記ノズルの孔を説明するための拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図1図8を参照しつつ説明する。
【0025】
本実施形態に係るノズルは、例えば、畑等に配置されたホースHに取り付けられ(図8参照)、該ホースHを通じて供給された水を畑等に散布するのに用いられる。このノズル1は、図1図7に示すように、水を外部に放出するスリット42と、ホースHからスリット42まで水を案内する内部流路5と、を備える。
【0026】
具体的に、ノズル1は、円柱状の基部2と、基部2の外周面2aから該基部2の径方向に延びる延設部3と、基部2から該基部2の中心軸C方向に延びるノズル本体4と、を備える。このノズル1は、AES樹脂(アクリロニトリル・EPDM・スチレン)、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の樹脂製であり、金型成型によって形成されている。
【0027】
基部2は、中心軸Cに沿って延びる第一流路21を有する。この第一流路21は、ノズル1の内部流路5の一部を構成する。具体的に、第一流路21は、中心軸C方向から見て基部2の中心部を中心軸Cの延びる方向(以下、「中心軸方向」とも称する。)に貫通する孔である。本実施形態の第一流路21は、中心軸方向から見て円形の孔であり、中心軸方向の各位置における直径(内径)は、一定である。また、基部2の中心軸方向におけるノズル本体4と反対側の端部は、中心軸Cに対して傾斜するように切り欠かれた形状を有する(図3参照)。即ち、基部2のZ軸方向における一方側の端面22は、Z軸方向と直交する面方向に広がる第一面221と、Z軸方向に対して傾斜する第二面222と、を含む(図3及び図7参照)。
【0028】
以下では、延設部3が延びる方向をX軸方向(第二方向)とし、ノズル本体4が延びる方向をZ軸方向(第一方向)とし、X軸方向とZ軸方向とのそれぞれと直交する方向をY軸方向(第三方向)とする。
【0029】
延設部3は、基部2のZ軸方向(中心軸方向)における一方側(図3における下側)の端部からX軸方向に延びている。延設部3のZ軸方向における一方側の端面31は、Z軸方向と直交する面方向に広がり(図3及び図7参照)、延設部3の厚さ(Z軸方向の寸法)は、先端側(図3における右側)に向かうに伴って小さくなっている。また、延設部3の幅(Y軸方向の寸法)は、先端側に向かうに伴って小さくなっており、延設部3の先端部は、Z軸方向から見て円弧状になっている(図7参照)。
【0030】
ノズル本体4は、基部2からZ軸方向の他方側(図3における上側)に延びる柱状の部位である。本実施形態のノズル本体4は、Z軸方向に延びる本体41と、水(液体)を外部に放出するスリット42と、本体41内をZ軸方向に延びてスリット42と連通し且つ該スリット42まで水を案内する第二流路43と、を有する。また、ノズル本体4は、本体41の内側に向けて凹む少なくとも一つの凹部44を有し、本実施形態のノズル本体4は、複数の凹部44を有している。また、ノズル本体4は、本体41からY軸方向の一方側と他方側とに突出する一対の突出部45を有する。
【0031】
本体41は、Z軸方向に延びる円柱状の部位であり、本体41の直径(外径)は、基部2の直径(外径)より小さい。また、本体41の中心軸と基部2の中心軸Cとが一致するように本体41が基部2から延びている。本実施形態の本体41の直径は、φ7mmであり、基部2の直径は、φ11mmである。
【0032】
第二流路43は、本体41内をZ軸方向に延び、Z軸方向の一方側の端部が基部2の第一流路21と連通すると共に他方側の端部がスリット42と連通している。この第二流路43は、第一流路21と共にノズル1の内部流路5を構成する。即ち、第二流路43と第一流路21とが連なることによってノズル1の内部流路5を構成している(図4参照)。
【0033】
この内部流路5は、ノズル1のZ軸方向における一方側の端面(基部2の一方側の端面)22において外部と連通する開口22aを有し、該開口22aからZ軸方向の他方側に向けて延びている。この内部流路5は、スリット42との連通位置からZ軸方向の一方側(上流側)に向けてZ軸方向に延びる直管部51を有する。また、内部流路5は、直管部51のZ軸方向の一方側の端部(上流側端部)から直接又は間接にZ軸方向に延びる太管部53を有する。この太管部53の横断面(Z軸方向と直交する断面)は、直管部51の横断面(Z軸方向と直交する断面)より大きい。
【0034】
本実施形態の太管部53は、直管部51のZ軸方向の一方側の端部から接続部52を介してZ軸方向の一方側に向けて延びている。即ち、内部流路5は、Z軸方向の他方側から一方側に向けて順に直管部51と接続部52と太管部53とを有する。
【0035】
直管部51は、Z軸方向においてスリット42からZ軸方向の一方側に向けて直線状に延びており、X軸方向から見て、本体41におけるY軸方向の中心位置(中心軸Cの位置)より一方側(図4における左側)に寄った位置に配置されている。詳しくは、直管部51は、X軸方向から見て直管部51の中心軸C1が本体41におけるY軸方向の中心位置(中心軸Cの位置)より一方側に位置するように配置されている。また、直管部51は、Y軸方向から見て、本体41におけるX軸方向の中心位置に配置されている。即ち、直管部51は、Z軸方向から見て、本体41におけるY軸方向の中心位置より一方側に寄った位置で且つX軸方向の中心位置に配置されている(図5参照)。
【0036】
本実施形態の直管部51は、Z軸方向から見て円形の孔であり、Z軸方向の各位置における直径(内径)d1は、一定である。本実施形態の直管部51の直径d1は、φ1.3mmであり、Y軸方向における中心軸Cからのオフセット距離(詳しくは、中心軸Cから直管部51の中心軸C1までの距離)は、1mmである。また、直管部51の長さ(Z軸方向の寸法)は、6.35mmである。
【0037】
接続部52は、内部流路5において横断面の大きさが異なる直管部51と太管部53とを接続する部位であり、直管部51から太管部53に向かうに伴って横断面の面積が漸増する部位である。本実施形態の直管部51と太管部53とは、Z軸方向に真っすぐ延び、接続部52は、直管部51から太管部53に向けて広がるテーパ状である。
【0038】
太管部53は、該太管部53の中心軸が基部2の中心軸Cと一致するようにZ軸方向に延びる円柱状の孔である。この太管部53は、ノズル1において、基部2のZ軸方向における一方側の端面22から本体41のZ軸方向における一方側の端部(詳しくは、スリット42の位置)まで延びている。即ち、太管部53は、第一流路21と、第二流路43のZ軸方向における一方側の端部と、によって構成されている。本実施形態の太管部53は、Z軸方向から見て円形の孔であり、Z軸方向の各位置の直径(内径)d2は、一定である。
【0039】
スリット42は、Z軸方向を幅方向とし且つ該Z軸方向と直交する面方向に沿って広がる。このスリット42は、本体41のZ軸方向における他方側の端部に配置されている。本実施形態のスリット42では、Z軸方向と直交する面方向の各位置での幅(Z軸方向の間隔)は、一定である。このスリット42の幅d3は、内部流路5における該スリット42との連通位置での面方向の大きさ(本実施形態の例では、直管部51の直径d1)より小さい(図4参照)。スリット42は、Z軸方向から見て、X軸方向に延び且つ内部流路5との連通位置における内部流路5を通る仮想線VLからY軸方向の他方側に広がっている(図5参照)。本実施形態の仮想線VLは、Z軸方向から見て直管部51の中心(中心軸C1)を通っている。また、本実施形態のスリット42の幅d3は、0.45mmである。
【0040】
複数の凹部44は、本体41の外周面41aにおけるZ軸方向の直管部51と対応する範囲で且つX軸方向から見てY軸方向の直管部51より他方側の範囲に配置されている第一凹部44aを含む。本実施形態の第一凹部44aは、本体41の外周面41aにおけるX軸方向の一方側と他方側とのそれぞれに配置されている(図6参照)。即ち、複数の凹部44は、二つの第一凹部44aを含む。
【0041】
また、複数の凹部44は、本体41の外周面41aにおけるZ軸方向の第一凹部44aと同じ位置で且つX軸方向から見てY軸方向における直管部51の位置から一方側の範囲に配置されている第二凹部44bも含む。本実施形態の第二凹部44bも、第一凹部44aと同様に、本体41の外周面41aにおけるX軸方向の一方側と他方側とのそれぞれに配置されている。即ち、複数の凹部44は、二つの第二凹部44bを含む。
【0042】
さらに、複数の凹部44は、本体41の外周面41aにおけるZ軸方向の接続部52と対応する範囲に配置されている複数の第三凹部44cも含む。これら複数の第三凹部44cは、本体41の周方向に間隔をあけて配置されている。本実施形態の複数の第三凹部44cは、前記周方向における第一凹部44a及び第二凹部44bと対応する位置に配置されている。
【0043】
一対の突出部45のそれぞれは、第一凹部44aと第二凹部44bとの間から本体41の径方向(本実施形態の例では、Y軸方向)に突出する。
【0044】
以上のように構成されるノズル1は、ホースHに形成された孔から基部2及び延設部3がホースH内に挿入された状態で、ノズル本体4がキャップKの孔K1を挿通するように該キャップKがノズル1に取り付けられる(図8参照)。そして、該キャップKがノズル本体4まわりに回転することでノズル1の延設部3とキャップKとの間にホースHの孔周縁部が挟み込まれ、これにより、ノズル1がホースHに固定される。
【0045】
このホースHには、長尺方向に所定の間隔をあけて複数の孔が設けられ、各孔にノズル1がそれぞれ配置される。この状態でホースHに水が供給されると該ホースHに沿って各ノズル1から水が散布される(例えば、図10参照)。
【0046】
以上のように構成されるノズル1は、水(液体)を外部に放出するスリット42、及びZ軸方向(第一方向)に延びてスリット42と連通し且つ該スリット42まで水を案内する内部流路5、を有するノズル本体4を備える。そして、スリット42は、Z軸方向を幅方向とし且つ該Z軸方向と直交する面方向に沿って広がり、スリット42の幅d3は、内部流路5における該スリット42との連通位置での前記面方向の大きさ(本実施形態の例では直管部51の直径d1)より小さい。
【0047】
かかる構成によれば、Z軸方向が垂直方向となるようにノズル1が配置されることで、ノズル1に供給される水が該ノズル1のスリット42から水平方向に放出される。しかも、スリット42の幅d3が内部流路5より小さいことで該スリット42から外部に水平に放出される水において上下方向の速度成分が抑えられ、これにより、水の散布距離が好適に抑えられる。
【0048】
また、複数のノズル1がホースHの長尺方向に間隔をあけて並ぶように該ホースHに配置される場合、ホースHの端(水の供給位置)から離れるに伴ってホースH内の水圧が低下するが、各ノズル1においてスリット幅を抑えてスリット42から放出される水の量を抑えることで、前記供給位置からの距離に応じた水圧の低下量が抑えられるため、前記供給位置からより遠くに配置されたノズル1に対しても所望の水圧での水の供給が可能になる。
【0049】
本実施形態のノズル1のように、スリット幅を直管部51の直径d1より小さくすることで、供給圧力が0.04Mpの場合に、供給位置から約90m離れた位置までホースH内において所望の水圧を保つことができる(即ち、均一な水圧の分布が得られる)。
【0050】
また、本実施形態のノズル1において、内部流路5は、スリット42との連通位置から上流側に向けてZ軸方向(第一方向)に直線状に延びる直管部51を有している。この直管部51を有することで、Z軸方向から見たときのスリット42から放出される水の扇状の広がり(図5における角度α)を十分に確保することができ、これにより、散布範囲(散布面積)を確保することができる。本実施形態のノズル1では、前記水の扇状の広がり(角度α)は、約120°である。
【0051】
また、本実施形態のノズル1において、ノズル本体4(詳しくは、本体41)は、Z軸方向(第一方向)に延びる柱状であり、直管部51は、X軸方向(第二方向)から見て、ノズル本体4におけるY軸方向(第三方向)の中心位置より該Y軸方向の一方側に寄った位置に配置されている。そして、スリット42は、Z軸方向から見て、X軸方向に延び且つスリット42との連通位置の内部流路5を通る仮想線VLからY軸方向の他方側に広がっている(図5参照)。この構成によれば、Z軸方向と直交する面方向のノズル本体4の大きさ(本実施形態の例では、本体41の外径)を抑えつつ、スリット42における内部流路5(直管部51)との連通位置から水の外部への放出位置までの距離(図5における符号β参照)を十分に確保して該スリット42から水平に放出される水の上下方向の速度成分を十分に抑えることができる。
【0052】
また、本実施形態のノズル1において、ノズル本体4は、樹脂製であり、外周面41aにおける少なくともZ軸方向(第一方向)の直管部51と対応する範囲で且つX軸方向(第二方向)から見てY軸方向(第三方向)の直管部51より他方側の範囲に、該ノズル本体4の内側に向けて凹む少なくとも一つの第一凹部44aを有している。
【0053】
直管部51の変形や直管部51の内周面に凹凸が生じているとZ軸方向から見たときのスリット42から放出される水の扇状の広がりが小さくなる(図5における角度αが小さくなる)。しかし、本実施形態のノズル1のように、ノズル本体4において直管部51をY軸方向にオフセットさせて肉厚になった部位に凹部44を設けることで成型時の肉引け等による直管部51の変形や直管部51の内周面での凹凸の発生が効果的に抑えられ、これにより、スリット42から放出される水の扇状の広がりが小さくなることを防ぐことができる。即ち、ノズル1における直管部51の変形や内周面の凹凸に起因する水の散布範囲(扇状の広がりの角度α:図5参照)の減少を抑えることができる。
【0054】
また、本実施形態のノズル1では、内部流路5は、直管部51の上流側端部からZ軸方向(第一方向)に延びる太管部53を有し、太管部53の横断面は、直管部51の横断面より大きい。このように、内部流路5における流通方向(Z軸方向)の直管部51より上流側の部位を太くしてノズル本体4の対応する部位の厚み(径方向の厚さ)や基部2の厚み(径方向の厚さ)を抑えることで、ノズル本体4の該部位における成型時の肉引けを抑え、これにより、直管部51の変形等がより好適に抑えられる。
【実施例0055】
ここで、上記実施形態のノズル1の効果を確認するために、該ノズル1による水の散布を行い、各位置での灌水強度を計測した。その結果を図9及び図10に示す。
【0056】
ここで、図9は、一つのノズルに対して縦軸がノズルのX軸方向と一致し且つ横軸がノズルのY軸方向と一致するように縦軸及び横軸を設定し、該ノズルが取り付けられたホースHに水を、0.04MPa、0.27L/分で供給したときの計測結果(灌水強度の分布)を示している。ノズルの位置は縦軸のNで示す位置であり、灌水強度の単位は、mm/時である。また、図10は、各ノズルがX軸方向をホースHの長手方向と一致するように40cm間隔で一列(ホースH)に配置された複数のノズルに対し、縦軸が各ノズルのX軸方向と一致し且つ横軸が各ノズルのY軸方向と一致するように縦軸及び横軸を設定し、これら複数のノズルが取り付けられたホースHに水を、0.04MPa、0.27L/分で供給したときの計測結果(灌水強度の分布)を示している。各ノズルの位置は縦軸のNで示す位置であり、灌水強度の単位は、mm/時である。尚、図10は、ホースHの長手方向における五つのノズルの配置範囲(図10において上下方向におけるNが記載されている範囲)より狭い範囲での灌水強度の分布を測定した結果である。このため、ノズルの配置位置を示すNをグラフの縦軸の範囲外の位置(具体的には、図10のグラフの縦軸より下側の位置)にも記載している。
【0057】
これらの計測結果から、上記実施形態のノズル1によれば、液体のY軸方向の散布距離を抑えつつ、X軸方向に広く散布できる(即ち、平面視における扇状の広がり(角度α)の大きな散布が行える)ことが確認できた。
【0058】
尚、本発明のノズルは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0059】
ノズル1をホースHに固定する(取り付ける)ための具体的な構成は限定されない。例えば、上記実施形態のノズル1は、キャップKを用いてホースHに取り外し可能に固定されるが、この構成に限定されない。ノズル1は、キャップKを用いずにホースHに固定される構成等でもよい。また、ノズル1は、取り外しできない状態でホースHに固定される構成でもよい。また、キャップKの具体的な構成も限定されない。
【0060】
また、上記実施形態のノズル1では、直管部51が、X軸方向から見て、本体41におけるY軸方向の中心位置より該Y軸方向の一方側に寄った位置(オフセットした位置)に配置されているが、この構成に限定されない。スリット42と直管部51との連通位置からスリット42における水の外部への放出位置(スリット出口)までの距離β(図5参照)が確保できれば、直管部51の配置位置(詳しくは、Z軸と直交する面方向の配置位置)は限定されない。
【0061】
また、上記実施形態のノズル1では、内部流路5において太管部53が接続部52を介して直管部51と連通(接続)しているが、この構成に限定されない。太管部53が直管部51と直接連通(接続)していてもよい。また、内部流路5が直管部51のみによって構成されていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態のノズル1では、内部流路5の横断面形状は、円形であるが、この構成に限定されない。内部流路5の横断面形状は、多角形、楕円形等であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態のノズル1では、スリット42は、液体をY軸方向の他方側に放出(散布)するように構成されているが、この構成に限定されない。スリット42は、液体をZ軸方向と直交する面に沿った方向であれば、何れの方向に放出するように構成されていてもよい。また、スリット42は、液体をY軸方向の両側に放出するように構成されていてもよい。即ち、スリット42の幅が内部流路5における該スリット42との連通位置での大きさ(上記実施形態の例では、直径(内径)d1)より小さくなるようにスリット42が構成されていればよく、液体の放出する方向は限定されない。
【0064】
また、上記実施形態のノズル1は、水を散布するが、他の液体を散布してもよい。また、ノズル本体4は、Z軸方向に延びる柱状でなくてもよい。即ち、ノズル本体4の外観形状は、限定されない。
【符号の説明】
【0065】
1…ノズル、2…基部、2a…外周面、21…第一流路、22…端面、221…第一面、222…第二面、22a…開口、3…延設部、31…端面、4…ノズル本体、41…本体、41a…外周面、42…スリット、43…第二流路、44…凹部、44a…第一凹部(凹部)、44b…第二凹部、44c…第三凹部、45…突出部、5…内部流路、51…直管部、52…接続部、53…太管部、500…ノズル、501…立ち上がり管、510…取付部、520…段状部、521…下段部、521a…水平面、522…上段部、522a…垂直面、525…孔、525a、525b…スリット部、C、C1…中心軸、d1…直管部の直径(内径)、d2…太管部の直径(内径)、d3…スリットの幅、H…ホース、K…キャップ、K1…孔、VL…仮想線、α…角度、β…距離
図1
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図12