(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119426
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】透明部材の検査方法、検査装置、及び検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/896 20060101AFI20240827BHJP
G01N 21/892 20060101ALI20240827BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01N21/896
G01N21/892 A
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026313
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】岡田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】貝沢 野矢
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA41
2G051AA42
2G051AB02
2G051BB01
2G051CC11
(57)【要約】
【課題】目視によらずに光学欠陥を検査することできる新規な、透明部材の検査方法、検査装置、及び検査プログラムを提供する。
【解決手段】本開示の透明部材の検査方法は、透明部材に対して斜めから光を入射させて、透明部材を透過した透過光をスクリーンに投影すること、スクリーンに投影された透過光の明度の情報を得ること、並びに明度の情報から、透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)からなる群から選択される少なくとも一種を算出し、そして該算出した値に基づいて、透明部材における光学欠陥の検査を実施することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明部材に対して斜めから光を入射させて、前記透明部材を透過した透過光をスクリーンに投影すること、
前記スクリーンに投影された前記透過光の明度の情報を得ること、並びに
前記明度の情報から、前記透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)からなる群から選択される少なくとも一種を算出し、そして該算出した値に基づいて、前記透明部材における光学欠陥の検査を実施すること、
を含む、透明部材の検査方法。
【請求項2】
前記透明部材が、樹脂シート、及びガラスシートからなる群から選択される少なくとも一種のシート部材である、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記シート部材の厚さが、100μm以上である、請求項2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記光の入射角度が、前記透明部材の検査面に対して15°~45°である、請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項5】
前記光の入射角度が、検査において、前記透明部材の検査面に対して一定の角度に保持されている、請求項3に記載の検査方法。
【請求項6】
前記透明部材の製造工程のインライン及びオフラインの少なくとも一方において実施する、請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項7】
前記透明部材を用いて物品を製造する製造工程のインライン及びオフラインの少なくとも一方において実施する、請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項8】
前記物品が、乗り物、内装品、外装品、電気製品、建材、鏡、眼鏡、又はゴーグルである、請求項7に記載の検査方法。
【請求項9】
透明部材に対して斜めから光を入射させる光源と、
前記透明部材を透過した透過光が投影されるスクリーンと、
前記スクリーンに投影された前記透過光の明度の情報を得る明度取得部と、
前記明度の情報から、前記透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)からなる群から選択される少なくとも一種を算出し、該算出した値に基づいて前記透明部材における光学欠陥の検査を実施する光学欠陥検査部と
を含む、透明部材の検査装置。
【請求項10】
透明部材に対して斜めから光を入射させて前記透明部材を透過させた透過光によってスクリーンに投影された透過光の明度の情報を得る処理と、
前記明度の情報から、前記透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)からなる群から選択される少なくとも一種を算出し、該算出した値に基づいて前記透明部材における光学欠陥の検査を実施する処理と
をコンピュータに実行させる、透明部材の検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透明部材の検査方法、検査装置、及び検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学フィルム及びガラスなどを検査するための検査装置及び検査方法が種々開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、検査対象フィルムの目視検査用観察装置において、前記検査対象フィルムを曲面状態で支持する曲面支持手段と、曲面状態で支持された前記検査対象フィルムを照明する光源とを備える、フィルムの目視検査用観察装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ガラス板を撮像した撮像画像を取得する画像取得部と、ガラス板に発生した欠陥の位置及び範囲を推論するように、当該位置及び範囲を学習した学習済モデルに、前記撮像画像を入力して得られる推論結果における前記範囲のサイズを、撮像された前記ガラス板に発生した欠陥のサイズとして検出するサイズ検出部と、を備える検査装置が開示されている。また、特許文献2には、背景技術の項目において、従来、ガラス板の製造におけるガラス板の欠陥検査は、目視により行われていたことも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-250551号公報
【特許文献2】特開2022-187282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2にも記載されるように、従来、光学フィルム及びガラスなどに発生した光学欠陥は、目視で観察して検査することが一般的であった。しかしながら、従来の目視検査では、熟練度に伴う個人差が生じたり、欠陥の見逃しなどが生じたりする場合があった。
【0007】
したがって、本開示の目的は、目視によらずに光学欠陥を検査することできる新規な、透明部材の検査方法、検査装置、及び検査プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〈態様1〉
透明部材に対して斜めから光を入射させて、前記透明部材を透過した透過光をスクリーンに投影すること、
前記スクリーンに投影された前記透過光の明度の情報を得ること、並びに
前記明度の情報から、前記透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)からなる群から選択される少なくとも一種を算出し、そして該算出した値に基づいて、前記透明部材における光学欠陥の検査を実施すること、
を含む、透明部材の検査方法。
〈態様2〉
前記透明部材が、樹脂シート、及びガラスシートからなる群から選択される少なくとも一種のシート部材である、態様1に記載の検査方法。
〈態様3〉
前記シート部材の厚さが、100μm以上である、態様2に記載の検査方法。
〈態様4〉
前記光の入射角度が、前記透明部材の検査面に対して15°~45°である、態様1~3のいずれかに記載の検査方法。
〈態様5〉
前記光の入射角度が、検査において、前記透明部材の検査面に対して一定の角度に保持されている、態様3に記載の検査方法。
〈態様6〉
前記透明部材の製造工程のインライン及びオフラインの少なくとも一方において実施する、態様1~5のいずれかに記載の検査方法。
〈態様7〉
前記透明部材を用いて物品を製造する製造工程のインライン及びオフラインの少なくとも一方において実施する、態様1~5のいずれかに記載の検査方法。
〈態様8〉
前記物品が、乗り物、内装品、外装品、電気製品、建材、鏡、眼鏡、又はゴーグルである、態様7に記載の検査方法。
〈態様9〉
透明部材に対して斜めから光を入射させる光源と、
前記透明部材を透過した透過光が投影されるスクリーンと、
前記スクリーンに投影された前記透過光の明度の情報を得る明度取得部と、
前記明度の情報から、前記透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)からなる群から選択される少なくとも一種を算出し、該算出した値に基づいて前記透明部材における光学欠陥の検査を実施する光学欠陥検査部と
を含む、透明部材の検査装置。
〈態様10〉
透明部材に対して斜めから光を入射させて前記透明部材を透過させた透過光によってスクリーンに投影された透過光の明度の情報を得る処理と、
前記明度の情報から、前記透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)からなる群から選択される少なくとも一種を算出し、該算出した値に基づいて前記透明部材における光学欠陥の検査を実施する処理と
をコンピュータに実行させる、透明部材の検査プログラム。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、目視によらずに光学欠陥を検査することできる新規な、透明部材の検査方法、検査装置、及び検査プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施態様の検査方法の概略図である。
【
図2】
図2の(a)は、不良レベルの横縞状の光学欠陥を有する樹脂シートを本開示の検査方法で検査したときの投影画像であり、(b)は、合格レベルの横縞状の光学欠陥を有する樹脂シートを本開示の検査方法で検査したときの投影画像である。
【
図3】
図3は、投影画像から入手した明度の情報に関するグラフである。
【
図4】
図4は、透明部材である熱可塑性樹脂シートの総厚み及び最大明度差に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
本開示の透明部材の検査方法は、透明部材に対して斜めから光を入射させて、該透明部材を透過した透過光をスクリーンに投影することと、スクリーンに投影された透過光の明度の情報を得ることと、かかる明度の情報から、透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)からなる群から選択される少なくとも一種を算出し、そして該算出した値に基づいて、透明部材における光学欠陥の検査を実施することとを含む。
【0013】
原理によって限定されるものではないが、本開示の透明部材の検査方法が、目視によらずに光学欠陥を検査することできる作用原理は以下のとおりであると考える。
【0014】
本発明者は、透明部材に対して斜めから光を入射させて、透明部材を透過した透過光をスクリーンに投影すると、
図2に示すように、横縞等の光学欠陥を投影画像として取得し得ることを見出した。そして、かかる投影画像の明度の情報を
図3に示すようにコンピュータ等で数値化し、かかる明度情報の数値から算出される透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)からなる群から選択される少なくとも一種を用いることによって、透明部材における光学欠陥の検査を実施し得ることを、本発明者は見出した。このように、本開示の検査方法によれば、透明部材の光学欠陥を投影画像とすることができ、かつ、その画像から光学欠陥に関する明度の情報を数値化できるようになったことで、目視によらずに光学欠陥を検査できるようになったと考えている。
【0015】
この他、従来の目視検査では、熟練度に伴う個人差が生じたり、欠陥の見逃しなどが生じたりする場合があった。本開示の検査方法によれば、光学欠陥を最大明度差等によって数値化することができ、その結果、検査を機械的に実施することができ、熟練度を要することがないため、欠陥の見逃し等の作業ミスも防止することができると考えている。
【0016】
また、本開示の検査方法によれば、従来の目視検査では確認できないようなレベルの光学欠陥も数値化して検査することができる。そのため、本開示の検査方法は、透明部材における光学欠陥の検査に加え、光学欠陥のより少ない透明部材の開発に対しても大きく貢献し得ると考えている。
【0017】
本開示における用語の定義は以下のとおりである。
【0018】
本開示における「光学欠陥」とは、明度の情報を利用する本開示の検査方法において確認され得る欠陥を意図する。また、本開示における「横縞」とは、例えば、樹脂シートのMD方向(機械方向又は押出方向)に垂直なTD方向(横方向)における縞状の光学欠陥を意図する。なお、光学欠陥の合否レベルは、典型的には、透明部材を使用する用途等において変動し得る。
【0019】
本開示における「明度ばらつき(Va)」とは、以下の式Iにより算出される値である。ここで、Lは透明部材の基準長さを意味し、V(x)は透明部材の基準長さx位置での明度を意味し、VaveはV(x)の基準長さLにおける平均値を意味する。また、基準長さLとは、
図1によれば、明度を測定するときの透明部材の長辺方向の長さを意味する。なお、
図1に示す透明部材が、正方形又は長方形のような全ての角が直角の四角形状ではなく、台形のような形状又は異形状である場合には、基準長さLとは、
図1の紙面方向から見たときにおける透明部材の最大長さを意味する:
【数1】
【0020】
本開示における「最大明度差(Vz)」とは、以下の式IIにより算出される値である。ここで、VmaxはV(x)のうちの基準長さLにおける最大明度を意味し、VminはV(x)のうちの基準長さLにおける最小明度を意味する:
【数2】
【0021】
本開示における「シート」には、「フィルム」と称する概念の構成も包含する。また、本開示において「シート状」とは、立体形状を有さない略平坦面を有する板又はフィルムのような形状を意図する。ここで、「略平坦面」とは、平坦な表面以外に、粒子の配合、エンボス加工などによって形成されたような凹凸を有する表面も包含することを意図する。
【0022】
本開示において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0023】
《透明部材の検査方法》
以下図面を参照しながら説明するが、本開示の透明部材の検査方法はこれに限定されるものではない。該検査方法で用いられる、光源として使用する光照射装置、明度測定装置等の各種装置、スクリーンなどは、公知の装置などを適宜採用することができる。
【0024】
本開示の透明部材の検査方法は、(a)透明部材に対して斜めから光を入射させて、透明部材を透過した透過光をスクリーンに投影すること;(b)スクリーンに投影された透過光の明度の情報を得ること;並びに(c)明度の情報から、透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)からなる群から選択される少なくとも一種を算出し、そして該算出した値に基づいて、透明部材における光学欠陥の検査を実施すること、を含む。
【0025】
〈工程(a)〉
図1に示す構成は、スクリーンに対して光源である光照射装置の光軸(中心軸)が垂直になるように配置されている。そして、この光軸が、透明部材の中心に位置し、かつ、透明部材が光軸に対して所定の角度(α)となるように配置される。ここで、
図1に示す透明部材の長辺方向が上述した基準長さLに該当する。
【0026】
なお、
図1では、透明部材を傾けて検査する方法を例示しているが、透明部材を地面に対して垂直又は水平に配置し、スクリーン及び光照射装置を傾けるように配置してもよい。また、
図1では、透明部材と光照射装置(光源)を固定して検査する方法を例示している。この方法は、例えば、枚葉品の透明部材を検査するとき、或いは、ロール体から透明部材である樹脂シートを断続的に繰り出して検査するときなどに有利である。
【0027】
一方、光照射装置(光源)からの光が相対的に走査して入射するように透明部材と光照射装置を配置してもよい。例えば、光照射装置を固定し、透明部材を連続的又は断続的に移動させながら検査を行ってもよい。この検査方法は、例えば、透明部材である樹脂シートが流れる製造ラインで検査するときに有利である。あるいは、透明部材を固定し、光照射装置を連続的又は断続的に移動させながら検査を行ってもよい。この検査方法は、例えば、長尺な枚葉品の透明部材を検査するときに有利である。なお、光照射装置からの光が相対的に走査して入射するように透明部材と光照射装置とを配置する場合、良好な投影画像を得る観点から、相対的に移動する透明部材の横方向の略中心に、光軸が位置するように光照射装置を配置することが好ましい。ここで、本開示において「略」とは、誤差などによって生じるバラつきを含むことを意味し、±20%、±15%、±10%、又は±5%程度の変動が許容されることを意図する。
【0028】
図1に示す、透明部材の中心からスクリーンまでの距離(x)及び透明部材の中心から光照射装置先端までの距離(y)は特に制限はなく、光学欠陥に基づく明度情報が好適に得られる距離を適宜設定することができる。距離(x)としては、例えば、30cm以上、40cm以上、又は50cm以上とすることができ、また、100cm以下、90cm以下、又は80cm以下とすることができる。距離(y)としては、例えば、50cm以上、70cm以上、又は100cm以上とすることができ、また、200cm以下、180cm以下、又は150cm以下とすることができる。
【0029】
透明部材の検査面に対する光の入射角度(α)(「光軸の角度」と称することもできる。)は、光学欠陥に基づく明度情報を好適に得る観点から、15°以上、20°以上、又は25°以上、45°以下、40°以下、又は35°以下であることが好ましく、30°であることが特に好ましい。入射角度(α)は、検査中に変動すると明度の数値も変動する可能性があるため、検査中は、設定した入射角度を変更することなく一定の角度に保持することが好ましい。なお、透明部材が、自動車のフロントガラスのような曲面形状を有する場合には、検査面とは、接平面、すなわち曲面上の一点においてその曲面に接触する平面を指す。また、透明部材が曲面形状である場合であって、光照射装置(光源)からの光が相対的に走査して入射するように透明部材と光照射装置を配置する場合には、透明部材及び/又は光照射装置が、所定の角度を維持するように曲面に応じて連動して動くような構成にすることができる。
【0030】
光源として使用する光照射装置としては特に制限はなく、例えば、S-Light(商標)SA-160(株式会社日本技術センター製)を使用することができる。かかる光照射装置は、透明部材の検査領域を略均一に照らすことができるため、透明部材を透過した透過光をスクリーンに好適に投影することができる。
【0031】
スクリーンとしては特に制限はなく、市販の白色のスクリーン(例えばホワイトボード)などを適宜採用することができる。
【0032】
〈工程(b)〉
スクリーンに投影された透過光の明度の情報は、
図2に示されるようなスクリーンに投影された透明部材の投影画像を、例えばカメラなどを用いて取得する。次いで、得られた投影画像を、必要に応じてグレースケール処理を施し、例えば、Image Jなどの画像処理ソフトウェアを用いて、透明部材における基準長さ(L)全体にわたる明度を数値化して、
図3に示されるように、スクリーンに投影された透過光の明度の情報を得ることができる。
【0033】
〈工程(c)〉
工程(c)では、工程(b)で得られた明度の情報から、透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)からなる群から選択される少なくとも一種を算出し、そして該算出した値に基づいて、透明部材における光学欠陥の検査を実施する。
【0034】
本開示の検査方法では、例えば、縞状欠陥(例えば横縞、縦縞)、気泡に基づく欠陥、表面粗さムラに基づく欠陥、厚みムラに基づく欠陥などの光学欠陥(「光学歪」と称する場合もある。)の他に、傷、異物、欠け等に基づく欠陥についても検査することができる。なかでも、本開示の検査方法は、透明部材の光学歪の検査に好適に使用することができ、透明部材の縞状欠陥の光学歪の検査により好適に使用することができ、樹脂シート(例えば熱可塑性樹脂シート)における横縞の光学歪の検査に特に好適に使用することができる。
【0035】
光学欠陥の合否レベルは、透明部材を使用する用途等において様々である。したがって、光学欠陥の合否レベルに関しては、透明部材の明度ばらつきVa(%)及び/又は最大明度差Vz(%)を用いたり、或いはこれらの少なくともいずれかと、例えば、透明部材の厚さなどの情報とを適宜組み合わせたりして、これらのパラメータに基づいて、光学欠陥の合否レベルの閾値を適宜設定することができる。
【0036】
例えば、いくつかの実施形態において、透明部材の光学欠陥の合否レベルを最大明度差(Vz)で規定することができる。合格レベルの最大明度差を、例えば、65%以下、63%以下、60%以下、57%以下、55%以下、53%以下、又は50%以下と規定することができる。最大明度差の下限値としては特に制限はなく、例えば、0%以上、0%超、1.0%以上、3.0%以上、又は5.0%以上とすることができる。なお、かかる最大明度差の数値範囲は単なる一例であり、透明部材の合否レベルの要求性能に応じて適宜変更することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、透明部材の光学欠陥の合否レベルを明度ばらつき(Va)で規定することができる。合格レベルの明度ばらつきを、例えば、8.0%以下、7.5%以下、7.0%以下、6.5%以下、又は6.0%以下と規定することができる。明度ばらつきの下限値としては特に制限はなく、例えば、0%以上、0%超、0.1%以上、0.3%以上、0.5%以上、0.7%以上、又は1.0%以上とすることができる。なお、かかる明度ばらつきの数値範囲は単なる一例であり、透明部材の合否レベルの要求性能に応じて適宜変更することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、透明部材の光学欠陥の合否レベルを、透明部材の最大明度差Vz(%)と透明部材の厚さ(μm)に基づく以下の式1により規定することができる。式1は、
図4の点線の下側の領域を意図する。つまり、
図4によれば、点線より下側を合格、上側を不合格と設定することができる。なお、
図4は、透明部材として透明な熱可塑性樹脂シートを採用したときの横縞の光学欠陥の合否を検査するときに採用したグラフである:
Vz≦-1×t/50+80 …式1
【0039】
式1における切片の値は、77、75、73、70、67、65、63、又は60とすることができる。切片の値が小さくなるほど、最大明度差(Vz)も小さくなるため、光学欠陥のより少ない透明部材(熱可塑性樹脂シート)であることを意図することができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、透明部材の光学欠陥の合否レベルを、式1aによりさらに規定することができる。ただし、最大明度差(Vz)は0%以上である:
-1×t/50+15≦Vz …式1a
【0041】
式1aにおける切片の値は、17、20、23、25、27、又は30とすることができる。
【0042】
なお、上記の式1及び式1aは、透明部材として透明な熱可塑性樹脂シートを用い、横縞の光学欠陥の合否を判別するときに作成した式の一例である。同様に、透明な熱可塑性樹脂シート以外の透明部材、及び横縞以外の光学欠陥においても、透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)のうちの少なくともいずれかと、例えば、透明部材の厚さなどの情報とを適宜組み合わせて
図4に示すようにグラフ化し、そのグラフから、透明部材の用途に応じた最適な合否レベルを設定し得る関係式を適宜導いてもよい。このように、本開示の検査方法では、例えば、上述した式1及び式1aの傾き及び切片に関しては、透明部材の合否レベルの要求性能に応じて適宜変更することができる。
【0043】
〈検査の実施場所〉
本開示の透明部材の検査方法は、製造工程のインライン及びオフラインの少なくとも一方において実施してもよい。
【0044】
かかる製造工程としては特に制限はなく、例えば、樹脂シート若しくは樹脂フィルムの製造工程、又は板ガラス、強化ガラス、若しくは合わせガラスの製造工程を挙げることができる。
【0045】
この他、かかる検査方法は、透明部材を用いて物品を製造する製造工程のインライン及びオフラインの少なくとも一方において実施してもよい。
【0046】
かかる物品としては特に制限はなく、例えば、乗り物(例えば、自動車、バイク、鉄道、航空機、船)、内装品、外装品、電気製品(例えば、ディスプレイ、パソコン、携帯電話、スマートフォン、タブレット、テレビ)、建材(例えば、窓、間仕切り)、鏡、眼鏡、及びゴーグルなどを挙げることができる。
【0047】
《透明部材の検査装置》
本開示の透明部材の検査装置は、上述した透明部材の検査方法を実施し得る装置である。
【0048】
本開示の透明部材の検査装置は、透明部材に対して斜めから光を入射させる光源と;透明部材を透過した透過光が投影されるスクリーンと;スクリーンに投影された透過光の明度の情報を得る明度取得部と;明度の情報から、透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)からなる群から選択される少なくとも一種を算出し、該算出した値に基づいて透明部材における光学欠陥の検査を実施する光学欠陥検査部とを含んでいる。
【0049】
検査装置における、光源と、スクリーンと、明度取得部と、光学欠陥検査部は、上述した透明部材の検査方法を実施し得るユニットであり、上述した透明部材の検査方法と同様の構成(例えば、透明部材の検査面に対する光の入射角度(α)など)を採用することができる。
【0050】
《透明部材の検査プログラム》
本開示の透明部材の検査プログラムは、上述した透明部材の検査方法をコンピュータに実行させることができるプログラムである。
【0051】
本開示の透明部材の検査プログラムは、透明部材に対して斜めから光を入射させて、透明部材を透過させた透過光によってスクリーンに投影された透過光の明度の情報を得る処理と;明度の情報から、透明部材の明度ばらつきVa(%)及び最大明度差Vz(%)からなる群から選択される少なくとも一種を算出し、該算出した値に基づいて透明部材における光学欠陥の検査を実施する処理と、をコンピュータに実行させることができる。
【0052】
検査プログラムにおけるかかる処理は、上述した透明部材の検査方法を実施し得るように、コンピュータに実行させる処理であり、上述した透明部材の検査方法と同様の構成(例えば、透明部材の検査面に対する光の入射角度(α)など)を採用することができる。
【0053】
《透明部材》
本開示の検査方法では、様々な透明部材を検査することができる。透明部材の材料としては特に制限はなく、例えば、樹脂(例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)、ガラスなどを採用することができる。透明部材は、例えば、樹脂又はガラスの単独材料から構成されてもよく、或いはこれらの複合材料から構成されてもよい。また、透明部材は、全体が透明であってもよく、或いは、一部が半透明又は不透明であり、残りが透明であってもよい。後者の構成としては、例えば、自動車のフロントガラスのように、周囲に黒色の隠蔽部を有し、その他が透明であるような構成を挙げることができる。ここで、「透明」とは、可視光領域(380nm~750nm)における平均透過率が、60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であることを意味する。
【0054】
より正確な検査を実施する観点から、透明部材の形状としてはシート状であることが好ましい。したがって、透明部材は、樹脂シート、及びガラスシートからなる群から選択される少なくとも一種のシート部材であることが好ましい。
【0055】
かかるシート部材の厚さとしては特に制限はなく、例えば、100μm以上、200μm以上、300μm以上、400μm以上、又は500μm以上とすることができる。かかる厚さの上限値としては特に制限はなく、例えば、30cm以下、20cm以下、10cm以下、5cm以下、3cm以下、2cm以下、1cm以下、0.5cm(5,000μm)以下、4,000μm以下、3,000μm以下、2,700μm以下、2,500μm以下、2,300μm以下、又は2,000μm以下とすることができる。シート部材、なかでも樹脂シート(例えば熱可塑性樹脂シート)の厚さは、光学欠陥をより改善する観点から厚い方が好ましく、具体的には、1,000μm以上、1,000μm超、1,300μm以上、1,500μm以上、1,700μm以上、又は2,000μm以上であることが好ましい。ここで、本開示のシート部材の厚さは、デジマチックノギス(ABSデジマチックキャリパCD-AX、株式会社ミツトヨ製)又は高精度デジマチックマイクロメータ(MDH-25MB、株式会社ミツトヨ製)を使用し、かかるシートの任意の部分の厚さを少なくとも5回測定して算出した平均値として定義することができる。
【0056】
シート部材は、単層構造であってもよく、或いは積層構造であってもよい。例えば、樹脂シートの場合、表面硬度等の観点から、積層構造(例えば、二種二層、二種三層)であることが好ましく、表面硬度及び耐カール性等の観点から、二種三層の積層構造であることがより好ましい。また、自動車のフロントガラスのように、ガラス層と樹脂層との積層構造であってもよい。
【0057】
シート部材が積層構造である場合、各層の厚さは、例えば、10μm以上、30μm以上、50μm以上、70μm以上、100μm以上、200μm以上、300μm以上、400μm以上、500μm以上、700μm以上、1,000μm以上、1,500μm以上、又は2,000μm以上、また、10cm以下、5cm以下、3cm以下、2cm以下、1cm以下、0.5cm(5,000μm)以下、3,000μm以下、2,700μm以下、2,500μm以下、2,300μm以下、2,000μm以下、1,500μm以下、1,000μm以下、又は700μm以下の範囲内において適宜設定することができる。シート部材が積層構造である場合、各層の厚さは、鋼尺、又は光学顕微鏡若しくは走査型電子顕微鏡を使用して積層構成の厚さ方向断面を測定し、積層構成のうちの目的とする層、例えば、三層構成のうちの中間層における任意の少なくとも5箇所の厚さの平均値として定義することができる。
【0058】
透明部材に使用し得る樹脂材料としては特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を挙げることができる。樹脂材料は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0059】
熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルペンテン-1)などのポリオレフィン樹脂、ノルボルネン類の開環メタセシス重合体、付加重合体、他のオレフィン類との付加共重合体等のシクロオレフィン、ポリ乳酸及びポリブチルサクシネートなどの生分解性ポリマー、ナイロン6,11,12,66等のポリアミド樹脂(半芳香族ポリアミドも含む)、ポリメチルメタクリレート等の熱可塑性(メタ)アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグリコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(IAPET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン-2,6-ナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、及びアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合コポリマーを挙げることができる。熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0060】
熱可塑性樹脂の中でも、本開示の検査方法において検査をより正確に実施し得る観点から、ポリカーボネート樹脂及び熱可塑性(メタ)アクリル樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂シートが多層構造である場合、熱可塑性樹脂シートは、光学欠陥の改善効果、表面硬度、耐カール性等の観点から、ポリカーボネート樹脂を含む層の片面又は両面に熱可塑性(メタ)アクリル樹脂を含む層を含むことが好ましく、ポリカーボネート樹脂を含む層の両面に熱可塑性(メタ)アクリル樹脂を含む層を含むことがより好ましい。
【0061】
熱硬化性樹脂としては特に制限はなく、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂を挙げることができる。熱硬化性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0062】
樹脂材料から構成される透明部材は、典型的には、樹脂組成物を用いて得ることができる。樹脂組成物に配合し得る任意成分としては、本発明に悪影響を及ぼさない限り特に制限はない。任意成分の例としては、充填剤、補強材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒、顔料、染料、増粘剤、重合開始剤、架橋剤、硬化剤、硬化促進剤、溶剤(例えば水系溶剤、有機系溶剤)などを挙げることができる。任意成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。なお、良好な検査を実施するために、樹脂組成物に顔料などを配合する場合には、不透明にならない範囲で配合することが好ましい。
【0063】
透明部材に使用し得るガラスとしては特に制限はなく、例えば、未強化ガラス、半強化ガラス、及び強化ガラスを挙げることができる。透明部材としてのガラスシートは、板ガラスであってもよく、或いは曲面状に加工された加工ガラスであってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、本開示の透明部材は、厚みばらつき(Da)を、10μm以下、9.0μm以下、8.0μm以下、7.0μm以下、6.0μm以下、又は5.0μm以下とすることができる。厚みばらつきの下限値としては特に制限はなく、例えば、0.5μm以上、0.7μm以上、又は1.0μm以上とすることができる。ここで、厚みばらつき(Da)は、後述する実施例に記載される方法により得られる値である。
【0065】
いくつかの実施形態において、本開示の透明部材は、最大厚み差(Dz)を、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は15μm以下とすることができる。最大厚み差の下限値としては特に制限はなく、例えば、1.0μm以上、2.0μm以上、又は3.0μm以上とすることができる。ここで、最大厚み差(Dz)は、後述する実施例に記載される方法により得られる値である。
【0066】
いくつかの実施形態において、本開示の透明部材は、表面粗さ(Sa:算術平均高さ)を、200nm以下、150nm以下、100nm以下、80nm以下、50nm以下、又は40nm以下とすることができる。表面粗さ(Sa)の下限値としては特に制限はなく、例えば、5nm以上、7nm以上、10nm以上、11nm以上、又は12nm以上とすることができる。ここで、表面粗さ(Sa)は、後述する実施例に記載される方法により得られる値である。
【0067】
いくつかの実施形態において、本開示の透明部材は、表面粗さ(Sz:最大高さ)を、20μm以下、17μm以下、15μm以下、13μm以下、11μm以下、又は10μm以下とすることができる。表面粗さ(Sz)の下限値としては特に制限はなく、例えば、0.5μm以上、0.7μm以上、1.0μm以上、1.2μm以上、又は1.5μm以上とすることができる。ここで、表面粗さ(Sz)は、後述する実施例に記載される方法により得られる値である。
【0068】
《透明部材の製造方法》
本開示の透明部材(例えば樹脂部材及びガラス部材)は公知の製造方法により得ることができる。該製造方法で用いられる装置は、公知の装置を適宜採用することができる。一例として、樹脂部材である熱可塑性樹脂シートの製造方法について以下に説明するが、透明部材の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0069】
以下に示す製造方法によれば、光学欠陥の少ない熱可塑性樹脂シートを得ることができる。
【0070】
熱可塑性樹脂シートは、例えば、Tダイから溶融押出しした熱可塑性樹脂組成物を連続的に引き取る方法によって製造することができる。熱可塑性樹脂シートをTダイから溶融押出しして製造するとき、Tダイから溶融押出しされて熱せられた溶融樹脂は、一般的には、第1~第3の金属鏡面ロールで冷やされながらシート化される。そして、この製造工程における、Tダイからの脈動、振動、或いは溶融樹脂のロールへの貼りつき及びロールからの剥がれなどによって、シートに横縞等の光学欠陥が発生し、その状態で冷却固化される結果、得られる熱可塑性樹脂シートに横縞等の光学欠陥が固定化されると考えられる。
【0071】
一方、以下に示すいくつかの実施形態における熱可塑性樹脂シートの製造方法は、第3の鏡面金属ロールの温度を比較的高めに設定している。これにより、熱可塑性樹脂シートの光学欠陥は、第3の鏡面金属ロール以降においてレベリング又は緩和できるような状態にあると考えられる。そして、この状態で、熱可塑性樹脂シートの厚みを決定する第2の鏡面金属ロールの搬送速度と引取りロールの引取り速度とを調整し、熱可塑性樹脂シートが第3の鏡面金属ロールを出た後、シートにあまりテンションがかからない自由な状態にすることで、光学欠陥がしだいにレベリング又は緩和されながら冷やされる結果、従来に比べて横縞等の光学欠陥のより少ないシートが得られると考えている。
【0072】
Tダイから溶融押出されて熱せられた溶融樹脂は、一般的には、第1の鏡面金属ロールと第2の鏡面金属ロールとの間で狭圧成形される。次いで、シート状に成形された熱可塑性樹脂シートは、第3の鏡面金属ロールに搬送され、該ロールから剥がされ、引取りロールによって引き取られながら、巻取りロールに熱可塑性樹脂シートのロール体として巻き取られる。いくつかの実施態様では、引取りロールによって引き取られた熱可塑性樹脂シートは、ロール体の形態ではく、シート状に切断した枚葉品の形態で提供されてもよい。本開示の製造方法によって得られる熱可塑性樹脂シートは、上述した、明度ばらつき、最大明度差、式1の関係式、及び式1aの関係式のうちの少なくとも一種を満足することができる。これらのいずれか(なかでも式1の関係式)を満たす熱可塑性樹脂シートは、光学欠陥(例えば、横縞、気泡に基づく欠陥、表面粗さムラに基づく欠陥、厚みムラに基づく欠陥)を好適に改善することができ、なかでも、横縞をより好適に改善することができる。かかる製造方法では、上述した透明部材の構成(ただし、ガラス及び熱硬化性樹脂に関する構成は除く。)を同様に採用することができる。
【0073】
かかる製造方法は、光学欠陥を改善する観点から、一軸延伸又は二軸延伸等の延伸工程を含まないことが好ましい。かかる延伸工程を含まない製造方法によって得られる熱可塑性樹脂シートは、無延伸熱可塑性樹脂シートと称することができる。ここで、本開示において「無延伸」とは、延伸工程に別途付されていない状態を意図する。したがって、例えば、巻取りロール等によるテンションによってわずかに配向したシートは無延伸シートとみなすことができる。
【0074】
〈押出機〉
Tダイから溶融押出しされる熱可塑性樹脂組成物は、典型的には、原料である熱可塑性樹脂組成物を押出機に投入し、必要に応じて、フィルター等を介して製造され得る。かかる押出機としては特に制限はなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機、及び多軸押出機を挙げることができる。かかる押出機は、ベント機構を有していてもよい。
【0075】
押出機の加熱シリンダーの温度としては特に制限はなく、投入する樹脂のガラス転移温度などを考慮して適宜設定することができる。加熱シリンダーの設定温度としては、例えば、150℃以上、180℃以上、又は200℃以上とすることができ、また、310℃以下、300℃以下、290℃以下、又は280℃以下とすることができる。
【0076】
〈Tダイ〉
Tダイの種類としては特に制限はなく、例えば、フィードブロック方式のTダイ、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、及びコートハンガーダイを挙げることができる。
【0077】
Tダイから吐出する熱可塑性樹脂組成物の吐出量としては特に制限はなく、押出機のサイズ等によって適宜設定することができる。かかる吐出量としては、例えば、50kg/時間以上、90kg/時間以上、100kg/時間以上、又は110kg/時間以上とすることができ、また、600kg/時間以下、500kg/時間以下、400kg/時間以下、300kg/時間以下、又は250kg/時間以下とすることができる。
【0078】
〈ロール〉
熱可塑性樹脂シートの製造方法で使用する製造装置は、例えば、第1の鏡面金属ロール、第2の鏡面金属ロール、第3の鏡面金属ロール、及び引取りロールを備え得る。かかる製造装置には、他のロール(例えば巻取りロール)が追加的に備わっていてもよい。
【0079】
(ロールの線圧)
各ロールの線圧としては特に制限はなく、熱可塑性樹脂シートの平滑性等を考慮して適宜設定することができる。かかる線圧としては、例えば、1N/mm以上、5N/mm以上、10N/mm以上、又は15N/mm以上とすることができ、また、50N/mm以下、40N/mm以下、又は30N/mm以下とすることができる。
【0080】
(熱可塑性樹脂のガラス転移温度とロール温度)
いくつかの実施形態において、本開示の熱可塑性樹脂シートの製造方法では、光学欠陥を改善する観点から、熱可塑性樹脂シートにおける第3の鏡面金属ロールと接する面の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg(℃)、及び第3の鏡面金属ロールの温度をT3(℃)としたときに、以下の式2を満たしている。なお、各ロールの温度は、製造装置におけるロールの設定温度を意図する:
-15℃≦Tg-T3≦20℃ …式2
【0081】
Tg-T3は、-13℃以上、-10℃以上、-7℃以上、-5℃以上、-3℃以上、又は0℃以上とすることができ、また、18℃以下、15℃以下、13℃以下、10℃以下、7℃以下、又は5℃以下とすることができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、本開示の熱可塑性樹脂シートの製造方法では、光学欠陥を改善する観点から、熱可塑性樹脂シートにおける第1の鏡面金属ロールと接する面の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg(℃)、及び第1の鏡面金属ロールの温度をT1(℃)としたときに、以下の式2aを満たしている:
5℃≦Tg-T1≦50℃ …式2a
【0083】
Tg-T1は、7℃以上、10℃以上、13℃以上、又は15℃以上とすることができ、また、45℃以下、40℃以下、35℃以下、又は30℃以下とすることができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、本開示の熱可塑性樹脂シートの製造方法では、光学欠陥を改善する観点から、熱可塑性樹脂シートにおける第2の鏡面金属ロールと接する面の熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg(℃)、及び第2の鏡面金属ロールの温度をT2(℃)としたときに、以下の式2bを満たしている:
-5℃≦Tg-T2≦50℃ …式2b
【0085】
Tg-T2は、0℃以上、3℃以上、5℃以上、7℃以上、10℃以上、13℃以上、又は15℃以上とすることができ、また、45℃以下、40℃以下、35℃以下、30℃以下、25℃以下、又は20℃以下とすることができる。
【0086】
(搬送速度と引取り速度)
いくつかの実施形態において、本開示の熱可塑性樹脂シートの製造方法では、光学欠陥を改善する観点から、第2の鏡面金属ロールの搬送速度をV2(m/分)、及び引取りロールの引取り速度をVC(m/分)としたときに、以下の式3を満たしている。なお、本開示の熱可塑性樹脂シートの製造方法において、熱可塑性樹脂シートの厚みは、典型的には、第2の鏡面金属ロールの搬送速度が影響する。したがって、式3では、第2の鏡面金属ロールの搬送速度と引取りロールの引取り速度を用いて、第3の鏡面金属ロールから剥離した熱可塑性樹脂シートのテンション状態を規定している:
-2.0%≦(VC-V2)/V2≦0% …式3
【0087】
(VC-V2)/V2は、-1.8%以上、-1.5%以上、-1.3%以上、又は-1.0%以上とすることができ、また、-0.1%以下、-0.2%以下、-0.3%以下、-0.4%以下、又は-0.5%以下とすることができる。
【0088】
いくつかの実施形態において、本開示の熱可塑性樹脂シートの製造方法では、光学欠陥を改善する観点から、第3の鏡面金属ロールの搬送速度をV3(m/分)としたときに、V2とV3とVCに関し、以下の式3aを満たしている:
-1.5%≦(V3-VC)/V2≦0% …式3a
【0089】
(V3-VC)/V2は、-1.4%以上、-1.3%以上、-1.2%以上、-1.1%以上、又は-1.0%以上とすることができ、また、-0.1%以下、-0.2%以下、-0.3%以下、-0.4%以下、又は-0.5%以下とすることができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、本開示の熱可塑性樹脂シートの製造方法では、光学欠陥を改善する観点から、V2とV3に関し、以下の式3bを満たしている:
-1.5%≦(V3-V2)/V2≦0% …式3b
【0091】
(V3-V2)/V2は、-1.4%以上、-1.3%以上、-1.2%以上、-1.1%以上、又は-1.0%以上とすることができ、また、-0.1%以下、-0.2%以下、-0.3%以下、-0.4%以下、又は-0.5%以下とすることができる。
【0092】
第1~第3の鏡面金属ロールの搬送速度としては特に制限はなく、例えば、各ロール間において上述した所望の関係式を満足し得るように適宜設定することができる。搬送速度として、例えば、0.5m/分以上、1.0m/分以上、3.0m/分以上、5.0m/分以上、10m/分以上、15m/分以上、又は20m/分以上とすることができ、また、100m/分以下、80m/分以下、50m/分以下、10m/分以下、5.0m/分以下、又は3.0m/分以下とすることができる。
【0093】
引取りロールの引取り速度としては特に制限はなく、例えば、0.5m/分以上、1.0m/分以上、3.0m/分以上、5.0m/分以上、10m/分以上、15m/分以上、又は20m/分以上とすることができ、また、100m/分以下、80m/分以下、50m/分以下、10m/分以下、5.0m/分以下、又は3.0m/分以下とすることができる。
【0094】
なお、上述した各ロールの搬送速度及び引取り速度は、シートの製造装置においてロール毎に設定した搬送速度及び引取り速度を意図する。
【0095】
〈熱可塑性樹脂シートの用途〉
上述した製造方法によって得られる熱可塑性樹脂シートは、従来品に比べて横縞等の光学欠陥がより少ないため、各種の用途に使用することができる。なかでも、光学用途に好適に使用できる。かかる用途の具体例としては、液晶用導光板、拡散板、バックシート、反射シート、偏光フィルム透明樹脂シート、位相差フィルム、光拡散フィルム、プリズムシート、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルム、透明導電フィルム等の液晶ディスプレイ用フィルム;有機EL用フィルム;CD、DVD、MD等の光ディスク;携帯電話、スマートフォン、タブレット等の端末画面の前面板などを挙げることができる。
【実施例0096】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例、比較例で行った物性測定は以下の方法で行い、その結果を表1~2及び
図4にまとめる。また、実施例に記載される各種物性の測定方法は、実施例に記載される熱可塑性樹脂シートに限らず、上述した透明部材に対しても同様に実施することができる。
【0097】
なお、表中の、Q1、Q2及びQ3はそれぞれ、第1の鏡面金属ロール、第2の鏡面金属ロール及び第3の鏡面金属ロールを意味し、T3は第3の鏡面金属ロール(Q3)の温度を意味し、V2、V3及びVCはそれぞれ、第2の鏡面金属ロールの搬送速度、第3の鏡面金属ロールの搬送速度及び引取りロールの引取り速度を意味する。また、
図4は、表中の熱可塑性樹脂シートの総厚みと最大明度差(Vz)の結果を用いて作成したグラフであり、点線から下側の領域が、Vz≦-1×t/50+80の領域に該当する。
【0098】
《実施例1~11及び比較例1~3》
〈各種物性の測定方法〉
(ガラス転移温度(Tg))
TA Instruments製 2920型DSCを使用し、昇温速度20℃/分で測定し、立ち下り点から、使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度を求めた。
【0099】
(厚みばらつき(Da))
実施例及び比較例で得られたシートから長さ300mm、幅40mmの試験片を各々切り出し、アンリツ株式会社製の電子マイクロ膜厚計で押出方向に試験片の厚みを連続的に測定し、その標準偏差を厚みばらつき(Da)とした。なお、この測定を5回行い、その平均値をもって厚みばらつき(単位:μm)とした。
【0100】
(最大厚み差(Dz))
実施例及び比較例で得られたシートから長さ300mm、幅40mmの試験片を各々切り出し、アンリツ株式会社製の電子マイクロ膜厚計で押出方向に試験片の厚みを連続的に測定し、その最大値と最小値の差を最大厚み差(Dz)とした。なお、この測定を5回行い、その平均値をもって最大厚み差(単位:μm)とした。
【0101】
(表面粗さ(Sa:算術平均高さ))
キーエンス製VK-9710レーザー顕微鏡にて、表面粗さ(Sa:算術平均高さ)を測定した。この測定を5回行い、その平均値をもって表面粗さ(Sa)(単位:nm)とした。
【0102】
(表面粗さ(Sz:最大高さ))
キーエンス製VK-9710レーザー顕微鏡にて、表面粗さ(Sz:最大高さ)を測定した。この測定を5回行い、その平均値をもって表面粗さ(Sz)(単位:μm)とした。
【0103】
(明度ばらつき(Va))
幅360mmの熱可塑性樹脂シートを押出方向に300mmの長さで切り出した。暗室下において、
図1に示すように、熱可塑性樹脂シートを、光照射装置(S-Light(商標)SA-160、株式会社日本技術センター製)の光軸に対してシートの押出方向(
図1の透明部材の長手方向)が30°の角度(α)となるように配置した。ここで、熱可塑性樹脂シートの中心からスクリーン(ホワイトボード)までの距離(x)を70cmとし、熱可塑性樹脂シートの中心から光照射装置先端までの距離(y)を130cmとした。次いで、光照射装置から光を熱可塑性樹脂シートに照射し、シートを透過した透過光をスクリーンに投影して投影画像を得た。投影画像をデジタルカメラで取得してコンピュータでグレースケール処理を施し、画像処理ソフトウェアImage Jにて、熱可塑性樹脂シートの300mmの長さにわたる明度の情報を数値化して取得した。得られた明度の情報を用い、以下の式Iに従い、熱可塑性樹脂シートの押出方向の明度ばらつき(Va)を算出した:
【数3】
式I中、
Lは、熱可塑性樹脂シートの基準長さ(300mm)であり、
V(x)は、熱可塑性樹脂シートの押出方向における長さx位置での明度であり、
Vaveは、V(x)の基準長さLにおける平均値である。
なお、V(x)における、熱可塑性樹脂シートの押出方向における長さx位置での明度とは、例えば、
図2の(a)の場合であれば、長辺方向における端から端までの長さが、熱可塑性樹脂シートの押出方向における長さに該当し、その長さの各位置における明度を意図する。
【0104】
(最大明度差(Vz))
上述した明度ばらつき(Va)と同様にして、熱可塑性樹脂シートの300mmの長さにわたる明度の情報を数値化して取得し、以下の式IIに従い、熱可塑性樹脂シートの押出方向の最大明度差(Vz)を算出した:
【数4】
式II中、
Vmaxは、V(x)のうちの基準長さLにおける最大明度であり、
Vminは、V(x)のうちの基準長さLにおける最小明度である。
【0105】
(光学欠陥:透過歪み)
液晶ディスプレイ(S2421、DELL社製)の画面の最前面に熱可塑性樹脂シートを適用し、シートを透過した画像に歪みが生じているかを目視で観察し、下記の指標で評価した。なお、この透過歪みの評価は、最大明度差等を利用した本開示の透明部材の検査方法の明度に関する結果が、従来の目視検査による検査結果とも整合しているかを確認するための評価であり、本開示の検査方法で検査する光学欠陥が、目視検査で確認される光学欠陥に限定されることを意図するものではない:
A:透過した画像に歪みが見られなかった。
B:透過した画像にわずかに弱い歪みが見られた。
C:透過した画像に弱い歪みが見られた。
D:透過した画像に強い歪みが見られた。
【0106】
〈実施例1〉
ポリカーボネート樹脂ペレット(帝人株式会社製、商品名:パンライト(登録商標)L-1250(ビスフェノールAを原料とするポリカーボネート樹脂、ガラス転移温度(Tg)145℃、粘度平均分子量2.2×104))をスクリュー径85mmの二軸押出機を用いて、シリンダー温度270℃、スクリュー回転数60rpmの条件で、フィードブロック方式にて1,650mm幅のTダイから押出した。押し出した溶融樹脂を第1の鏡面金属ロールと第2の鏡面金属ロールで狭圧成形し、成形されたシートを、第2の鏡面金属ロールに密着させて搬送し、第2の鏡面金属ロールと第3の鏡面金属ロールとの間に通し、第3の鏡面金属ロールからシートを剥離した。次いで、剥離したシートを引取りロールで引き取り、エッジトリミングしてシートを巻き取り、幅約1,200mm、厚さ約500μmの単層構成のシートを作製した。
【0107】
〈実施例2、9~11及び比較例1〉
シートの製造条件を表1又は表2に記載される条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2、9~11及び比較例1の単層構成のシートを作製した。
【0108】
〈実施例3〉
ポリカーボネート(PC)樹脂ペレット(帝人株式会社製、商品名:パンライト(登録商標)L-1250(ビスフェノールAを原料とするポリカーボネート樹脂、ガラス転移温度(Tg)145℃、粘度平均分子量2.2×104))とポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂ペレット(三菱レイヨン株式会社製、商品名:アクリペット(商標)VH001(メタクリル酸メチル95モル%とアクリル酸メチル5モル%を共重合したアクリル樹脂、ガラス転移温度(Tg)110℃))を、それぞれスクリュー径85mmの二軸押し出し機(PC樹脂ペレット)およびスクリュー径45mmの単軸押出機(PMMA樹脂ペレット)を用いて、シリンダー温度270℃(PC樹脂ペレット)、255℃(PMMA樹脂ペレット)、スクリュー回転数45rpm(PC樹脂ペレット)、スクリュー回転数17rpm(PMMA樹脂ペレット)の条件で、フィードブロック方式にて1,650mm幅のTダイから押出し。押し出した溶融樹脂を第1の鏡面金属ロールと第2の鏡面金属ロールで狭圧成形し、成形されたシートを、第2の鏡面金属ロールに密着させて搬送し、第2の鏡面金属ロールと第3の鏡面金属ロールとの間に通し、第3の鏡面金属ロールからシートを剥離した。次いで、剥離したシートを引取りロールで引き取り、エッジトリミングしてシートを巻き取り、PC樹脂層(約1,940μm厚)/PMMA樹脂層(約60μm厚)を有する幅約1,200mm、厚さ約2,000μmの積層構成のシートを作製した。
【0109】
〈実施例4〉
シートの厚さの構成及び製造条件を表1に記載される構成及び条件に変更したこと以外は、実施例3と同様にして実施例4の積層構成のシートを作製した。
【0110】
〈比較例2〉
シートの製造条件を表2に記載される条件に変更したこと以外は、実施例3と同様にして比較例2の積層構成のシートを作製した。
【0111】
〈実施例5〉
ポリカーボネート(PC)樹脂ペレット(帝人株式会社製、商品名:パンライトL(登録商標)-1250(ビスフェノールAを原料とするポリカーボネート樹脂、ガラス転移温度(Tg)145℃、粘度平均分子量2.2×104))とポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂ペレット(三菱レイヨン株式会社製、商品名:アクリペット(商標)VH001(メタクリル酸メチル95モル%とアクリル酸メチル5モル%を共重合したアクリル樹脂、ガラス転移温度(Tg)110℃))を、それぞれスクリュー径85mmの二軸押し出し機(PC樹脂ペレット)およびスクリュー径45mmの単軸押出機(PMMA樹脂ペレット)を用いて、シリンダー温度270℃(PC樹脂ペレット)、255℃(PMMA樹脂ペレット)、スクリュー回転数45rpm(PC樹脂ペレット)、スクリュー回転数34rpm(PMMA樹脂ペレット)の条件で、フィードブロック方式にて1,650mm幅のTダイから押出した。押出した溶融樹脂を第1の鏡面金属ロールと第2の鏡面金属ロールで狭圧成形し、成形されたシートを、第2の鏡面金属ロールに密着させて搬送し、第2の鏡面金属ロールと第3の鏡面金属ロールとの間に通し、第3の鏡面金属ロールからシートを剥離した。次いで、剥離したシートを引取りロールで引き取り、エッジトリミングしてシートを巻き取り、PMMA樹脂層(約60μm厚)/PC樹脂層(約1,880μm厚)/PMMA樹脂層(約60μm厚)を有する幅約1,200mm、厚さ約2,000μmの積層構成のシートを作製した。
【0112】
〈実施例6及び比較例3〉
シートの厚さの構成及び製造条件を表1又は表2に記載される構成及び条件に変更したこと以外は、実施例5と同様にして実施例6及び比較例3の積層構成のシートを作製した。
【0113】
〈実施例7及び8〉
シートの製造条件を表1に記載される条件に変更したこと以外は、実施例5と同様にして実施例7及び8の積層構成のシートを作製した。
【0114】
【0115】
【0116】
〈結果〉
図4は、表中の熱可塑性樹脂シートの総厚みと最大明度差(Vz)の結果を用いて作成したグラフであり、白三角が比較例、黒丸が実施例に該当する。そして、点線は、Vz=-1×t/50+80の式に該当し、この点線の下側領域と上側領域で、光学欠陥を区別し得ることが分かった。すなわち、上述した最大明度差等の明度情報を得るときに実施した、
図1に示される検査方法によれば、得られた最大明度差等の結果を用いることによって、透明部材の光学欠陥の合否を評価し得ること、すなわち、かかる方法を透明部材の検査方法として使用し得ることが確認できた。
【0117】
なお、表1及び表2の結果から分かるように、-15℃≦Tg-T3≦20℃、及び-2.0%≦(VC-V2)/V2≦0%の関係式を満たさない条件で作製した比較例1~3の熱可塑性樹脂シートは、
図2(a)に示されるような横縞状の光学欠陥が強く観測された。一方、かかる関係式を満たすようにして作製した実施例1~11の熱可塑性樹脂シートは、横縞状の光学欠陥が改善されていることが確認できた。
本開示の透明部材の検査方法は、従来の目視検査では確認できなかったようなレベルの光学欠陥も検査できるため、より精密な光学検査に使用することができ、また、光学欠陥のより少ない透明部材の開発にも利用することができる。
なお、上述した本開示の熱可塑性樹脂シートの製造方法によれば、従来の目視検査では確認できなかったようなレベルの光学欠陥も改善し得る熱可塑性樹脂シートを得ることができる。かかる熱可塑性樹脂シートは従来品に比べて横縞等の光学欠陥がより少ないため、液晶用導光板、拡散板、バックシート、反射シート、偏光フィルム透明樹脂シート、位相差フィルム、光拡散フィルム、プリズムシート、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルム、透明導電フィルム等の液晶ディスプレイ用フィルム;有機EL用フィルム;CD、DVD、MD等の光ディスク;携帯電話、スマートフォン、タブレット等の端末画面の前面板などの光学用途に好適に使用できる。