(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119430
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】摩擦試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 19/02 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G01N19/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026320
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】布野 宏樹
(57)【要約】
【課題】ゴム試験片における試験路面との接触面の温度を正確に検出することができる摩擦試験装置を提供する。
【解決手段】本発明の摩擦試験装置10は、試験路面1と、ゴム試験片2を保持して試験路面1上に押し当てるホルダー3と、ゴム試験片2の温度を検出する温度検出部20と、試験路面1上でゴム試験片2を滑らせてゴム試験片2の摩擦特性を測定する測定部と、を備える。ホルダー3は、ゴム試験片2との接触面3aと、接触面3aに開口する収納穴3bとを備え、収納穴3bの内部に温度検出部20が収納されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験路面と、
ゴム試験片を保持して前記試験路面上に押し当てるホルダーと、
前記ゴム試験片の温度を検出する温度検出部と、
前記試験路面上で前記ゴム試験片を滑らせて前記ゴム試験片の摩擦特性を測定する測定部と、を備えた摩擦試験装置において、
前記ホルダーは、前記ゴム試験片との接触面と、前記接触面に開口する収納穴とを備え、前記収納穴の内部に前記温度検出部が収納されている、摩擦試験装置。
【請求項2】
前記温度検出部は前記ゴム試験片に接触して設けられ、
前記温度検出部における前記ゴム試験片との接触部分は、前記ホルダーよりも熱伝導率の高い材料からなる、請求項1に記載の摩擦試験装置。
【請求項3】
前記収納穴に収納され、前記ゴム試験片と前記温度検出部とで挟まれた伝熱部材を備え、
前記伝熱部材は前記ホルダーよりも熱伝導率の高い材料からなる、請求項1に記載の摩擦試験装置。
【請求項4】
前記温度検出部を前記伝熱部材に押し付ける押圧部を備える、請求項3に記載の摩擦試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤなどのゴム製品に採用するゴム材料の摩擦特性を評価するため、摩擦試験装置を用いて、骨材と樹脂等から形成した試験路面の上でゴム試験片を押し付けながら滑らせるゴムの摩擦試験が行われている。
【0003】
このようなゴムの摩擦試験において温度依存性の高いゴム材料の摩耗特性を評価する場合、摩擦試験中のゴム試験片の温度を非接触型の温度センサによって検出している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非接触型の温度センサでは、外側に向いたゴム試験片の表面温度しか検出できず、ゴム試験片における試験路面との接触面の温度(ゴム試験片の内部温度)を精度良く検出することが困難である。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、ゴム試験片における試験路面との接触面の温度を正確に検出することができる摩擦試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の摩擦試験装置は、試験路面と、ゴム試験片を保持して前記試験路面上に押し当てるホルダーと、前記ゴム試験片の温度を検出する温度検出部と、前記試験路面上で前記ゴム試験片を滑らせて前記ゴム試験片の摩擦特性を測定する測定部と、を備えた摩擦試験装置において、前記ホルダーは、前記ゴム試験片との接触面と、前記接触面に開口する収納穴とを備え、前記収納穴の内部に前記温度検出部が収納されている装置である。
【発明の効果】
【0008】
上記の摩擦試験装置では、摩擦特性の評価に影響を及ぼすようなゴム試験片の変形を生じさせることなく、温度検出部をゴム試験片と熱交換可能な状態に設け、ゴム試験片における試験路面との接触面の温度を非接触型の温度センサよりも正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る摩擦試験装置を概略的に示す図
【
図4】本発明の変更例1に係る摩擦試験装置の要部拡大図
【
図5】本発明の変更例2に係る摩擦試験装置の要部拡大図
【
図6】本発明の変更例3に係る摩擦試験装置の要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0011】
図1に示す本実施形態の摩擦試験装置10は、試験路面1と、ゴム試験片2を保持するホルダー3と、ホルダー3を試験路面1に対して近接及び離隔するように移動させる荷重装置4と、試験路面1に対してゴム試験片2を相対移動させるための駆動装置5と、ゴム試験片2に作用する荷重を計測する荷重センサ6と、試験に必要な動作の制御を行う制御装置7と、ゴム試験片2の温度を測定する温度検出部20と、を備える。
【0012】
試験路面1は、アスファルト路面や氷路面等の路面を模擬してなる。試験路面1は、実際の道路から路面を切り出し、それを測定用に加工することにより形成される。試験路面1を形成する方法は、これ以外でもよく、特に限定されない。
【0013】
ゴム試験片2は、加硫ゴムにより作製され、試験路面1に押し当てられる平坦面を有する。
図1の例では、ゴム試験片2が直方体形状をなしており、その上面がホルダー3に接着されている。したがって、試験路面1と対面するゴム試験片2の下面が、試験路面1に押し当てられる平坦面となる。
【0014】
図2及び
図3に示すように、ホルダー3は合成樹脂やセラミックスを直方体状に成形した部材からなり、荷重装置4にボルトなどによって固定されている。ホルダー3はその下面にゴム試験片2が接着剤や両面テープなどによって面接触状態で固定される。ホルダー3は、下面にゴム試験片2が固定された状態で荷重装置4によって試験路面1に向かって下方へ移動することで、ゴム試験片2を試験路面1に押し当てる。
【0015】
ホルダー3は、ゴム試験片2との接触面3aに下方へ開口する収納穴3bが設けられ、収納穴3b内に温度検出部20が収納されている。本実施形態において収納穴3bは、接触面3aから上方へ陥没する凹部であってホルダー3を上下方向(
図1のZ方向)に貫通していない。
図3に示すように、収納穴3bはホルダー3の一側面に開口する導入口3cと繋がっている。
【0016】
ホルダー3に設けられた収納穴3bには、温度検出部20がホルダー3の下面に固定されたゴム試験片2の上面と熱交換可能な状態で収納されている。本実施形態では、
図2に示すように、温度検出部20をゴム試験片2の上面に接触させて取り付けられている。温度検出部20のリード線(補償導線)21は、収納穴3bから導入口3cを通ってホルダー3の外部へ引き出され、制御装置7に接続されている。
【0017】
なお、収納穴3bに温度検出部20とともに樹脂やエラストマー等からなる押圧部22を設けてもよい。押圧部22は、収納穴3bに収納された温度検出部20と収納穴3bの底面とで挟み込むように配置され、収納穴3bや温度検出部20の上下方向の寸法誤差を吸収しつつ、ゴム試験片2の上面に温度検出部20を密着させる。
【0018】
温度検出部20は、熱電対やサーミスター等を備え、ゴム試験片2の温度を検出する。温度検出部20は、ゴム試験片2の上面との接触部分20aがアルミニウムやアルミニウム合金やステンレス等の金属材で形成され、ホルダー3を構成する材料より熱伝導率の高い材料で形成されていることが好ましい。なお、本明細書において合成樹脂やセラミックスの熱伝導率についてはJISA 1412-2:1999に記載のHFM法が用いられる。また、アルミニウムやステンレスなどの金属の熱伝導率についてはレーザフラッシュ法によって測定される。熱伝導率の具体的数値の一例を挙げると、ホルダー3の熱伝導率が10W/(m・K)以下であることが好ましい。温度検出部20におけるゴム試験片2との接触部分20aの熱伝導率が30W/(m・K)以上であることが好ましい。
【0019】
荷重装置4は、試験路面1の法線方向(Z方向)に沿ってホルダー3を往復動可能に構成されている。荷重装置4は、ホルダー3のZ方向の位置(ホルダー3と試験路面1との間隔)を適宜に設定することで、ゴム試験片2に入力されるZ方向の荷重が調整され、所定の圧力条件下でゴム試験片2を試験路面1に押し当てることができる。荷重装置4は、サーボモータにより構成されているが、他のアクチュエータ機構を利用してもよい。
【0020】
駆動装置5は、荷重装置4を支持するテーブル8をX方向(
図1の左右方向)に沿って往復動させるように構成されている。このテーブル8の移動によってホルダー3が移動し、試験路面1上でゴム試験片2を滑らせながら移動させることができる。
【0021】
また、テーブル8はアクチュエータ9に接続されている。アクチュエータ9は、X方向とZ方向の両方に垂直なY方向(
図1の紙面に垂直な方向)に沿ってテーブル8を往復動可能させるように構成されている。アクチュエータ9は、Y方向におけるゴム試験片2と試験路面1との位置合わせに利用される。本実施形態では、駆動装置5とアクチュエータ9が、それぞれサーボモータにより構成されているが、これに限定されない。
【0022】
荷重センサ6は、垂直成分及び水平二成分の計三成分の荷重を計測可能なセンサを有している。荷重センサ6は、ホルダー3と荷重装置4との間に設けられ、ゴム試験片2に作用するZ方向の荷重(垂直力)、X方向の荷重(前後力)及びY方向の荷重(横力)を計測することができる。荷重センサ6は、例えばロードセルによって構成される。本実施形態では、ホルダー3の上側(ゴム試験片2とは反対側)に荷重センサ6が取り付けられている。
【0023】
制御装置7は、摩擦係数等の摩擦特性の測定に必要な計算を行う演算部7aと、荷重装置4や駆動装置5などの作動を制御する作動制御部7bと、試験作業者からの入力や、温度検出部20が検出したゴム試験片2の温度を受け付ける入力部7cと、摩擦試験装置10の操作や設定などに関する各種情報を画面上に表示する表示部7dとを備える。荷重センサ6による計測値は制御装置7に送られ、それに基づいて演算部7aが摩擦係数等の摩擦特性を計算する。つまり、本実施形態では、荷重センサ6及び制御装置7によって、試験路面1とゴム試験片2との間の摩擦特性を測定する測定部を実現している。
【0024】
以上のような摩擦試験装置10では、ホルダー3を試験路面1の上方に配置した後、試験路面1にゴム試験片2の平坦面を押し当て、試験路面1上でゴム試験片2をすべらせながら直進移動させたときの荷重を計測するとともに、温度検出部20によってゴム試験片2の温度を検出し、試験路面1とゴム試験片2との間の静止摩擦係数や動摩擦係数摩擦等の摩擦特性を測定する。
【0025】
なお、摩擦試験装置10において、試験路面1に押し当てられるゴム試験片2の圧力条件、並びに、速度や経路などの直進移動に関する条件は、制御装置7によって制御され、移動速度は、ゴム試験片2が所定の区間を一様な速度で滑るように設定される。
【0026】
本実施形態では、ゴム試験片2と熱交換可能な温度検出部20がホルダー3の接触面3aに開口する収納穴3bに収納されているため、ゴム試験片2の形状を変更することなく、ホルダー3とゴム試験片2との間に温度検出部20をゴム試験片2と熱交換可能な状態で配置することができ、摩擦特性の評価に影響を及ぼすことなくゴム試験片2の温度を正確に検出することができる。
【0027】
また、本実施形態のように温度検出部20におけるゴム試験片2との接触部分20aをホルダー3より熱伝導率の高い材料で形成した場合であると、ゴム試験片2の熱がホルダー3より温度検出部20へ伝わりやすく、短時間で温度検出部20とゴム試験片2とが熱平衡状態となり、ゴム試験片2の温度を精度良く検出することができる。
【0028】
以上の実施形態に対して、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な変更を行うことができる。以下に変更例について説明する。
【0029】
(変更例1)
ゴム試験片2とホルダー3の収納穴3bに収納した温度検出部20との間に伝熱部材30を設けてもよい。
【0030】
すなわち、本変更例では、
図4に示すように、温度検出部20とゴム試験片2とで伝熱部材30が挟まれるように、温度検出部20と伝熱部材30とが収納穴3bに収納されている。伝熱部材30は、アルミニウムや銅等の金属を直方体状に成形した部材からなり、ホルダー3を構成する材料より熱伝導率の高い材料で形成されている。熱伝導率の具体的数値の一例を挙げると、ホルダー3の熱伝導率が10W/(m・K)以下、伝熱部材30の熱伝導率が30W/(m・K)以上である。
【0031】
伝熱部材30は、その下面30aがホルダー3の接触面3aと面一になるように、収納穴3bの下方を向いた開口部に圧入あるいは接着によって固定されている。ホルダー3に固定された伝熱部材30の下面30aは、接着剤や両面テープなどによってホルダー3の接触面3aとともにゴム試験片2の上面に面接触状態で熱交換可能に固定されている。
【0032】
本変更例では、ゴム試験片2の熱が伝熱部材30を介して温度検出部20に伝わり温度検出部20がゴム試験片2の温度を検出する。その際、伝熱部材30がホルダー3より熱伝導率が高い材料で形成されているため、ゴム試験片2の熱がホルダー3より伝熱部材30を介して温度検出部20へ伝わりやすく、短時間で温度検出部20とゴム試験片2とが熱平衡状態となり、ゴム試験片2の温度を精度良く検出することができる。
【0033】
また、本変更例では、ホルダー3の接触面3aに開口する収納穴3bの開口部を伝熱部材30が閉塞し、ホルダー3の接触面3aだけでなく伝熱部材30の下面にもゴム試験片2を固定することができる。そのため、荷重装置4に対するゴム試験片2の固定面積を大きく確保することができ、試験中のゴム試験片2の位置ずれを抑えることができる。
【0034】
(変更例2)
ホルダー3の収納穴3bは、
図5に示すように、ホルダー3を上下に貫通する貫通穴であってもよい。収納穴3bが上下に貫通する貫通穴の場合、収納穴3bに収納した温度検出部20のリード線21を収納穴3bの上側開口部からホルダー3の外部へ引き出してもよい。
【0035】
(変更例3)
図6に示すように、ゴム試験片2とホルダー3の収納穴3bに収納した温度検出部20との間に伝熱部材30を設け、更に、押圧部40を収納穴3bに設けてもよい。押圧部40は、例えば、コイルバネ、板バネ、あるいは、樹脂やエラストマー等のゴム状弾性体を備え、伝熱部材30に温度検出部20を押し付ける。
【0036】
本変更例では、収納穴3bや温度検出部20に上下方向の寸法誤差があっても押圧部40が温度検出部20を伝熱部材30に押し付けて密着させることができ、ゴム試験片2の温度を精度良く検出することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…試験路面、2…ゴム試験片、3…ホルダー、3a…接触面、3b…収納穴、3c…導入口、4…荷重装置、5…駆動装置、6…荷重センサ、7…制御装置、7a…演算部、7b…作動制御部、7d…表示部、10…摩擦試験装置、20…温度検出部、20a…リード線