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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119435
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ポリウレア樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/32 20060101AFI20240827BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20240827BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08G18/32 028
C08G18/73
C08G18/65 058
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026328
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂下 昌平
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034CA14
4J034CB02
4J034CB07
4J034CC09
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF12
4J034DG03
4J034DG04
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034QB17
4J034RA07
(57)【要約】
【課題】無溶剤条件下における粘度が良好であり、壁面塗工性に優れ、硬化時間が短縮され、耐薬品性や耐擦り傷性が優れる塗膜を形成することができるポリウレア樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリイソシアネート化合物(A)と、アスパラギン酸エステル化合物(B)と、ポリオール化合物(C)とを含有するポリウレア樹脂組成物であって、ポリイソシアネート化合物(A)が、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を51質量%以上含有し、アスパラギン酸エステル化合物(B)が、下記一般式(1)で表される化合物であり、ポリオール化合物(C)が、脂肪族アルコールであることを特徴とするポリウレア樹脂組成物。
X(-NH-CH(CHCOOR)COOR (1)
(Xはn価の有機基であり、nは2以上の整数であり、RとRは同種または異種の有機基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物(A)と、アスパラギン酸エステル化合物(B)と、ポリオール化合物(C)とを含有するポリウレア樹脂組成物であって、
ポリイソシアネート化合物(A)が、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を51質量%以上含有し、
アスパラギン酸エステル化合物(B)が、下記一般式(1)で表される化合物であり、
ポリオール化合物(C)が、脂肪族アルコールであることを特徴とするポリウレア樹脂組成物。
X(-NH-CH(CHCOOR)COOR (1)
(Xはn価の有機基であり、nは2以上の整数であり、RとRは同種または異種の有機基である。)
【請求項2】
ポリウレア樹脂組成物における、アスパラギン酸エステル化合物(B)のアミノ基と、ポリオール化合物(C)のヒドロキシ基のモル比(アミノ基/ヒドロキシ基)が、99.5/0.5~45/55であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレア樹脂組成物。
【請求項3】
ポリウレア樹脂組成物における、ポリイソシアネート化合物(A)のイソシアネート基と、アスパラギン酸エステル化合物(B)のアミノ基と、ポリオール化合物(C)のヒドロキシ基とのモル比(イソシアネート基/(アミノ基+ヒドロキシ基))が0.5~1.7であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレア樹脂組成物。
【請求項4】
ポリイソシアネート化合物(A)のイソシアネート基含有量が5~50質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレア樹脂組成物。
【請求項5】
脂肪族ポリイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレア樹脂組成物。
【請求項6】
ポリオール化合物(C)の数平均分子量が200~5,000であり、水酸基価が10~800mgKOH/gであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレア樹脂組成物。
【請求項7】
ポリオール化合物(C)が、エステル結合を含まないことを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレア樹脂組成物。
【請求項8】
無溶剤条件下で調製直後の25℃における粘度が、100~50,000mPa・sであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレア樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレア樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネート化合物とポリアミン化合物とから構成されるポリウレア樹脂は、物性が優れ、また無溶剤で利用できる点から、老朽化した建築物や躯体に対する補強材料として、また、地震をはじめとした天災への耐久性を付与する材料として利用されている。
【0003】
ポリイソシアネート化合物とポリアミン化合物とを含有するポリウレア樹脂組成物は、ポリアミン化合物としてアスパラギン酸エステル化合物を含有すると、コテやローラーを用いた塗工、いわゆる手塗りが可能である。さらに、アスパラギン酸エステル化合物は、ポリウレタン樹脂の主成分の1つであるポリオール化合物と比較して、粘度が低いため、アスパラギン酸エステル化合物を含有するポリウレア樹脂組成物は、手塗りに適した粘度でありながら、ハイソリッド処方や無溶剤処方とすることが可能である。また、アスパラギン酸エステル化合物のアミノ基は、ポリオール化合物のヒドロキシ基と比較して、イソシアネート基との反応が速いため、アスパラギン酸エステル化合物を含有するポリウレア樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂組成物と比較して、室温下でも硬化速度が速く、得られるポリウレア樹脂は、機械強度に優れているという特長を有している。
【0004】
一方、アスパラギン酸エステル化合物の化学構造のために、得られるポリウレア樹脂は、硬くて脆い硬化物となりやすい傾向にある。
これを解決する技術として、例えば、特許文献1には、ポリイソシアネート化合物として、特定構造のポリオール化合物と脂肪族のジイソシアネートモノマーとから得られるポリイソシアネートを用いることが開示され、硬質であるが故の課題であった耐擦り傷性が改善され、さらに耐薬品性、耐候性に優れるポリウレア樹脂が得られている。
また、特許文献2には、イソシアヌレート3量体を特定量含むポリイソシアネート化合物を用いることが開示され、無溶剤条件においても、粘度およびポットライフが良好である樹脂組成物が得られ、耐擦り傷性に優れるポリウレア樹脂が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/163959号
【特許文献2】特開2022-66853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたポリウレア樹脂組成物は、塗料として使用するためには、希釈溶剤を加える必要があるため、無溶剤処方とすることに関して、さらなる改善の余地を有している。
特許文献2に開示されたポリウレア樹脂組成物は、無溶剤でありながら低粘度であり、得られる塗膜は、耐擦り傷性に優れるが、粘度が低くなることにより、壁面塗工性が劣ることがあった。
また、上記両特許文献に開示された樹脂組成物から得られる塗膜は、ともに、耐薬品性の評価に際して、23℃で7日間の養生を必要としており、用途によっては、硬化時間をより短縮することができる樹脂組成物が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、本発明の課題は、無溶剤条件下における粘度が良好であり、壁面塗工性に優れ、硬化時間が短縮され、耐薬品性や耐擦り傷性が優れる塗膜を形成することができるポリウレア樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、ポリイソシアネート化合物と、アスパラギン酸エステル化合物を含有するポリウレア樹脂組成物に、特定構造のポリオール化合物を配合することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
【0009】
〔1〕ポリイソシアネート化合物(A)と、アスパラギン酸エステル化合物(B)と、ポリオール化合物(C)とを含有するポリウレア樹脂組成物であって、
ポリイソシアネート化合物(A)が、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を51質量%以上含有し、
アスパラギン酸エステル化合物(B)が、下記一般式(1)で表される化合物であり、
ポリオール化合物(C)が、脂肪族アルコールであることを特徴とするポリウレア樹脂組成物。
X(-NH-CH(CHCOOR)COOR (1)
(Xはn価の有機基であり、nは2以上の整数であり、RとRは同種または異種の有機基である。)
〔2〕ポリウレア樹脂組成物における、アスパラギン酸エステル化合物(B)のアミノ基と、ポリオール化合物(C)のヒドロキシ基のモル比(アミノ基/ヒドロキシ基)が、99.5/0.5~45/55であることを特徴とする〔1〕に記載のポリウレア樹脂組成物。
〔3〕ポリウレア樹脂組成物における、ポリイソシアネート化合物(A)のイソシアネート基と、アスパラギン酸エステル化合物(B)のアミノ基と、ポリオール化合物(C)のヒドロキシ基とのモル比(イソシアネート基/(アミノ基+ヒドロキシ基))が0.5~1.7であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のポリウレア樹脂組成物。
〔4〕ポリイソシアネート化合物(A)のイソシアネート基含有量が5~50質量%であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のポリウレア樹脂組成物。
〔5〕脂肪族ポリイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のポリウレア樹脂組成物。
〔6〕ポリオール化合物(C)の数平均分子量が200~5,000であり、水酸基価が10~800mgKOH/gであることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のポリウレア樹脂組成物。
〔7〕ポリオール化合物(C)が、エステル結合を含まないことを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のポリウレア樹脂組成物。
〔8〕無溶剤条件下で調製直後の25℃における粘度が、100~50,000mPa・sであることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のポリウレア樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリウレア樹脂組成物によれば、無溶剤でありながら、粘度、ポットライフおよび硬化時間が良好で、壁面への塗工性に優れ、塗膜としたときの耐薬品性や耐擦り傷性にも優れるポリウレア樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物(A)と、アスパラギン酸エステル化合物(B)と、ポリオール化合物(C)を含有する。
【0012】
<ポリイソシアネート化合物(A)>
本発明の樹脂組成物を構成するポリイソシアネート化合物(A)は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であり、その形態は、モノマー、オリゴマー、ポリマーの何れであってもよい。また、ポリオール成分などの鎖延長剤によって変性されていてもよい。
【0013】
本発明におけるポリイソシアネート化合物(A)は、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体を51質量%以上含有することが必要であり、75質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましく、100質量%含有することが特に好ましい。ポリイソシアネート化合物(A)は、脂肪族ポリイソシアネート化合物またはその誘導体の含有量が51質量%以上であることで、アスパラギン酸エステル化合物(B)との反応性が抑制され、良好なポットライフを実現することができる。
【0014】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、2,5-または2,6-ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、芳香族系ポリイソシアネートを水素添加したものなどが挙げられる。
なかでも、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)は、可使時間および硬化時間の点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物として好ましいものである。
【0015】
脂肪族ポリイソシアネート化合物の誘導体としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリアミンまたはポリオールとを反応して得られるイソシアネート末端プレポリマーや、アロファネート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体、ビュレット変性体、ウレトジオン変性体、およびイソシアヌレート変性体、並びに、水分散型に変性されたものなどが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物(A)が、イソシアネート末端プレポリマーや変性体などの脂肪族ポリイソシアネート化合物の誘導体を含有すると、得られる塗膜は耐薬品性などの特性が向上する。
上記脂肪族ポリイソシアネート化合物の誘導体は、公知の方法で得ることができる。
【0016】
ポリイソシアネート化合物(A)は、脂肪族ポリイソシアネート化合物以外に、物性や可使時間などの目的とする性能に合わせて、他のイソシアネート成分を含有することができる。例えば、芳香族系ポリイソシアネートの、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネートなどが例示できる。
中でも、脂肪族ポリイソシアネート化合物としてHDIを使用する場合、HDI以外のイソシアネート成分は、HDIとの相溶性の観点から、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が好ましく、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートであることがより好ましい。また、これらは2種類以上を併用してもよい。
また、イソシアネート末端プレポリマーや、アロファネート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体、ビュレット変性体、ウレトジオン変性体、およびイソシアヌレート変性体、並びに、水分散型に変性されたものについても同様に利用できる。
【0017】
ポリイソシアネート化合物(A)におけるイソシアネート基含有量は、5~50質量%であることが好ましく、5~35質量%であることがより好ましく、10~33質量%であることがさらに好ましく15~30質量%であることが特に好ましい。イソシアネート基含有量が上記範囲より多いポリイソシアネート化合物(A)を含有するポリウレア樹脂組成物は、十分な物性を有する塗膜が得られないことがあり、また、ポリイソシアネート化合物(A)におけるイソシアネート基含有量が上記範囲より少ないと、樹脂組成物は、良好なポットライフが得られないことがある。
【0018】
ポリイソシアネート化合物(A)は、25℃における粘度が1,000~30,000mPa・sであることが好ましく、1,500~25,000mPa・sであることがより好ましく、2,000~20,000mPa・sであることがさらに好ましい。25℃における粘度が30,000mPa・sを超えるポリイソシアネート化合物(A)を含有する樹脂組成物からなる塗料は、他の材料と均一に混合するために時間を要したり、均一な塗工が困難になる場合があり、一方、ポリイソシアネート化合物(A)の粘度が1,000mPa・sを下回ると、塗料は、壁面に塗工した際などに、タレが生じ、均一な塗膜が得られない場合がある。
【0019】
<アスパラギン酸エステル化合物(B)>
本発明の樹脂組成物を構成するアスパラギン酸エステル化合物(B)は、下記一般式(1)で表される化合物である。
X(-NH-CH(CHCOOR)COOR (1)
(Xはn価の有機基であり、nは2以上の整数であり、RとRは同種または異種の有機基である。)
【0020】
アスパラギン酸エステル化合物(B)の市販品としては、例えば、Evonik社製の「AmicureIC-221」「AmicureIC-321」「AmicureIC-322」、Feiyang社製の「FeisparticF220」「FeisparticF420」「FeisparticF520」等が挙げられる。
【0021】
<他のアミン化合物>
本発明のポリウレア樹脂組成物には、塗膜物性や可使時間を調節する目的で、アスパラギン酸エステル化合物(B)以外の他のアミン化合物を含有してもよい。
他のアミン化合物としては、4,4′-ジアミノ-3,3′-ジクロロジフェニルメタンやジエチルトルエンジアミンなどの芳香族アミン化合物、O,O′-ビス(2-アミノプロピル)プロピレングリコールやポリアルキレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエートなどのポリエーテルアミン化合物、ヘキサメチレンジアミンやノナンジアミン、エポキシ化合物と1級アミンの反応体などの脂肪族アミン化合物などが挙げられる。その他のアミン化合物は、1級アミン、2級アミンいずれも使用することができる。
【0022】
上記の他のアミン化合物の含有量は、アスパラギン酸エステル化合物(B)との合計100質量部に対して0~20質量部であることが好ましい。他のアミン化合物の含有量が20質量部を超えると、ポリウレア樹脂組成物は、十分な可使時間を得られない場合がある。
【0023】
<ポリオール化合物(C)>
本発明のポリウレア樹脂組成物は、ポリオール化合物(C)として脂肪族アルコールを含む。これにより、ポリウレア樹脂組成物は、良好な可使時間、粘度、壁面塗工性を実現することができる。
なお、本発明におけるポリオール化合物(C)とは、その化学構造中に2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物のことをいい、脂肪族アルコールとは、その化学構造中に芳香環を含まないものをいう。
【0024】
ポリオール化合物(C)の例として、低分子化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオールなど2価のアルキルアルコール、グリセリンなど3価のアルキルアルコール、ジグリセリン、エリスリトール、ソルビトールなど4価以上のアルキルアルコールなどが挙げられ、高分子化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリウレタンポリオール、アミンのアルキレンオキサイド付加物などのオリゴマーまたはポリマー(末端のモノマー成分が脂肪族アルコールであるもの)などが挙げられる。
中でも、得られる塗膜の耐薬品性の観点から、2価以上のアルキルアルコール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリウレタンポリオールなどのエステル結合を含まないポリオール、アミンのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、2価~4価のアルキルアルコール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオールがさらに好ましく、ポリエーテルポリオール、アミンのアルキレンオキサイド付加物がさらに好ましい。
【0025】
ポリオール化合物(C)の数平均分子量は特に限定されないが、200~5,000であることが好ましく、400~4,000であることがより好ましく、500~3,000であることがさらに好ましい。ポリオール化合物(C)の数平均分子量が200を下回ると、樹脂組成物は、可使時間が劣る場合があり、数平均分子量が5,000を超えると、硬化速度向上効果が得られにくくなる場合や、得られる塗膜の耐擦り傷性が劣る場合がある。
【0026】
ポリオール化合物(C)の水酸基価は特に限定されないが、10~800mgKOH/gであることが好ましく、30~600mgKOH/gであることがより好ましく、50~400mgKOH/gであることがさらに好ましい。水酸基価が10mgKOH/gを下回るポリオール化合物(C)は、含有効果が得られにくい場合があり、ポリオール化合物(C)の水酸基価が800mgKOH/gを上回ると、得られる塗膜は、塗膜の外観が悪化する場合がある。
【0027】
<ポリウレア樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物における、アスパラギン酸エステル化合物(B)のアミノ基と、ポリオール化合物(C)のヒドロキシ基のモル比(アミノ基/ヒドロキシ基)は、99.5/0.5~45/55であることが好ましく、99.5/0.5~50/50であることがより好ましく、99/1~60/40であることがさらに好ましい。
アスパラギン酸エステル化合物(B)のアミノ基と、ポリオール化合物(C)のヒドロキシ基の合計に対し、アスパラギン酸エステル化合物(B)のアミノ基の割合が99.5モル%よりも高いと、樹脂組成物は、ポリオール化合物(C)の含有効果が得られにくい場合があり、アスパラギン酸エステル化合物(B)のアミノ基の割合が50モル%よりも低いと、得られる塗膜は、耐薬品性や耐擦り傷性が劣る場合がある。
【0028】
本発明の樹脂組成物における、ポリイソシアネート化合物(A)のイソシアネート基と、アスパラギン酸エステル化合物(B)のアミノ基と、ポリオール化合物(C)のヒドロキシ基のモル比(イソシアネート基/(アミノ基+ヒドロキシ基))は、0.5~1.7であることが好ましく、0.6~1.5であることがより好ましく、0.7~1.4であることがさらに好ましく、0.8~1.3であることが特に好ましい。上記モル比が0.5未満であると、得られる塗膜は、硬化物が得られない場合があり、一方、上記モル比が1.7を超えると、樹脂組成物は、発泡などの副反応が起こりやすくなる場合があり、得られる塗膜は、耐薬品性が低下する場合がある。
【0029】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、無溶剤条件下で調製直後の25℃における粘度が100~50,000mPa・sであることが好ましく、1,000~30,000mPa・sであることがより好ましく、1,500~15,000mPa・sであることが特に好ましい。樹脂組成物は、粘度が100mPa・sを下回ると、十分な厚みを有する塗膜が得られにくくなる場合があり、50,000mPa・sを超えると、施工時の作業性が低下する場合がある。
【0030】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、得られる塗膜物性を向上させたり、可使時間や硬化温度を調節したりするために、触媒を含有してもよい。
触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、2-ジメチルアミノエチルエーテル、ジアザビシクロウンデセン、N-メチルモルホリンなどの3級アミン、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ラウレート、3-ジアセトキシテトラブチルスタノキサン、オクテン酸錫、塩化錫、三塩化錫ブチル、三塩化ビスマス、オクテン酸ビスマス、テトラキス(2一エチルヘキシル)チタネート、テトラブトキシチタン、アセト酢酸の金属塩などの金属系触媒、4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0031】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、例えば、シリカ、塩基性無機塩、pH調整剤、金属酸化物微粒子、粘着付与剤、ワックス類、紫外線吸収剤、レベリング剤、ヌレ剤、消泡剤、ワキ防止剤、タレ防止剤、塗料のび改善剤、チキソトロピー付与剤、顔料、染料、分散剤、希釈剤、充填剤などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、上記添加剤は、ポリイソシアネート化合物(A)やアスパラギン酸エステル化合物(B)にあらかじめ添加しておくこともできる。
添加剤の添加量は、目的に応じて適宜決めることができる。
【0032】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、必要に応じて、その他の樹脂を含むことができる。その他の樹脂の例としては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0033】
また、本発明のポリウレア樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物(A)との反応性を有さないものであれば、一般的な有機溶媒を、希釈剤として使用することができる。
希釈剤として使用できる有機溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの炭化水素化合物や、アセトン、2-ブタノン、イソホロンなどのカルボニル化合物、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル化合物などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を混合してもよい。
樹脂組成物における有機溶媒の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。樹脂組成物における有機溶媒の含有量が10質量%を超えると、得られる塗膜の物性が低下するおそれがあるだけでなく、無溶剤で製造できるポリウレア樹脂の本来の利点が失われることがある。
【0034】
<用途>
本発明のポリウレア樹脂組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ベル塗装、浸漬、ローラー塗装、刷毛塗装、グラビア印刷等によって、鉄板、鋼板などの金属、プラスチック、フィルム、シート、セラミック、ガラス、コンクリート、繊維、紙などの材料に対して、プライマー、中塗りまたは上塗りなどの塗料として塗膜の形成や、サイジング剤、補強材などの用途に使用することができる。
本発明のポリウレア樹脂組成物は、前述の材料に、美観性、耐候性、耐水性、耐薬品性、防錆性、耐摩耗性、密着性等を付与するために好適に用いることができる。
また、本発明のポリウレア樹脂組成物は、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤等としても有用である。
【0035】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、上記のように、塗料として塗膜形成に使用することができ、また、金枠に流し込んで、成形体を製造することもできる。
【0036】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、常温での反応性を有するため、加熱は通常必要ないが、塗工などの後の硬化を早めるために、また、冬季等における低温作業環境を改善するために、加熱してもよい。硬化温度は、施工方法や硬化時間から適宜決めることができ、安全性の観点から、30~80℃であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物を加熱するための装置として、得られるポリウレア樹脂の粘度や被着物の形状などに鑑みて、公知のものを使用することができる。加熱装置の具体例としては、加熱ローラー、ローラーヒーター、ポリイミドヒーター、赤外線放射ヒーター、空気高温加熱器、ヒートガン、ドライヤー、乾燥炉、焼付炉、恒温乾燥機、恒温炉などが挙げられる。
【実施例0037】
実施例および比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
実施例および比較例において、下記原料を精製や蒸留を行わずそのまま使用した。
【0038】
<ポリイソシアネート化合物(A)>
A1:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成工業社製、イソシアネート基含有量49.9質量%、粘度3mPa・s)
A2:ビウレット変性ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成工業社製「デュラネート 24A-100」、イソシアネート基含有量23.5質量%、粘度1,800mPa・s)
A3:ヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー社製「コロネートHXR」、イソシアネート基含有量21.9質量%、粘度1,700mPa・s)
A4:水分散型ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成工業社製「デュラネート WL72-100」、イソシアネート基含有量21.3質量%、粘度1,000mPa・s)
A5:イソホロンジイソシアネート(異性体混合品)(東京化成工業社製、イソシアネート基含有量37.8質量%、粘度10mPa・s)
A6:ポリメリックMDI(東ソー社製「ミリオネートMR-200」、イソシアネート基含有量30.9質量%、粘度150mPa・s)
【0039】
A7:下記の方法で合成したイソシアネート末端HDIプレポリマー(イソシアネート基含有量20.5質量%、粘度2,000mPa・s)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)100質量部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量750)21.5質量部を仕込み、撹拌下、反応器内温度を95℃で90分間保持し、ウレタン化反応を行なった。
冷却した反応液を濾過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応HDIを除去した。イソシアネート基含有量が20.5質量%、25℃における粘度が3,000mPa.s、数平均分子量が1520のイソシアネート末端HDIプレポリマーを得た。
【0040】
A8:下記の方法で合成したイソシアネート末端HDIプレポリマー(イソシアネート基含有量34.8質量%、粘度850mPa・s)
ポリプロピレングリコールの添加量を10.8質量部に変更した以外は、A7と同様の操作を行い、イソシアネート末端HDIプレポリマーを得た。
【0041】
A9:A2を51質量%、A6を49質量%の割合で混合したHDI-MDI混合物
A10:A2を80質量%、A6を20質量%の割合で混合したHDI-MDI混合物
A11:A2を40質量%、A6を60質量%の割合で混合したMDI-HDI混合物
【0042】
A12:下記の方法で合成したイソシアネート末端HDIプレポリマー(イソシアネート基含有量21.9質量%、粘度4,200mPa・s)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI100質量部、エチレンジアミン・プロピレンオキサイド付加物(ADEKA社製「EDP-1100」、数平均分子量1100)16.1質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を95℃で90分間保持し、ウレタン化反応を行なった。
冷却した反応液を濾過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応HDIを除去した。イソシアネート基含有量が21.9質量%、25℃における粘度が4,200mPa.s、数平均分子量が1820のイソシアネート末端HDIプレポリマーを得た。
【0043】
A13:下記の方法で合成したイソシアネート末端HDIプレポリマー(イソシアネート基含有量9.0質量%、粘度4,980mPa・s)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI100質量部、ポリカプロラクトントリオール(数平均分子量850)33.7質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を95℃で90分間保持し、ウレタン化反応を行なった。
冷却した反応液を濾過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応HDIを除去した。イソシアネート基含有量が9.0質量%、25℃における粘度が4980mPa.s、数平均分子量が1520のイソシアネート末端HDIプレポリマーを得た。
【0044】
A14:下記の方法で合成したイソシアネート末端HDIプレポリマー(イソシアネート基23.2質量%、粘度470mPa・s)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI100質量部、およびイソブタノール0.12質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃で2時間保持した。そこに、イソシアヌレート化反応触媒トリメチル-2-メチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシドをイソブタノールで5質量%に希釈した溶液0.08質量部を添加し、イソシアヌレート化反応を行ない、転化率が20質量%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。その後、反応液を160℃で1時間保持した。
冷却した反応液を濾過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応HDIを除去した。イソシアネート基含有量が23.2質量%、25℃における粘度が470mPa・sのイソシアネート末端HDIプレポリマーを得た。
【0045】
<アスパラギン酸エステル化合物(B)、アミン化合物>
B1:アスパラギン酸エステル化合物(Feiyang社製「Feispartic F520」、アミン価190mgKOH/g、粘度1,400mPa・s)
B2:アスパラギン酸エステル化合物(Feiyang社製「Feispartic F420」、アミン価203mgKOH/g、粘度1,450mPa・s)
B3:アスパラギン酸エステル化合物(Feiyang社製「Feispartic F220」、アミン価241mgKOH/g、粘度80mPa・s)
B4:ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート(クミアイ化学工業社製「エラスマー250P」、アミン価221mgKOH/g、粘度154mPa・s(85℃))
【0046】
<ポリオール化合物(C)>
C1:エチレンジアミン・プロピレンオキサイド付加物(ADEKA社製「EDP-1100」、水酸基価217mgKOH/g、粘度750mPa・s)
C2:グリセリン・プロピレンオキサイド付加物(ADEKA社製「G-700」、水酸基価224mgKOH/g、粘度230mPa・s)
C3:ポリエチレングリコール200(東京化成工業社製PEG-200、水酸基価565mgKOH/g、粘度60mPa・s)
C4:グリセリン・プロピレンオキサイド付加物(ADEKA社製「G-4000」、水酸基価43mgKOH/g、粘度230mPa・s)
C5:ポリカプロラクトンポリオール(DIC社製「ポリライトOD-X-2722」、水酸基価58mgKOH/g、粘度8500mPa・s)
C6:ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物(ADEKA社製「BPX-55」、水酸基価141mgKOH/g、粘度1600mPa・s)
【0047】
各種物性の測定は以下の評価方法で行った。
(1)イソシアネート基含有量
JIS K 7301のジノルマルブチルアミンの塩酸逆滴定法に準じて求めた。
【0048】
(2)アミン価
JIS K 7237の指示薬滴定法に準じて求めた。
【0049】
(3)水酸基価
JIS K 1557-1:2007の指示薬滴定法に準じて求めた。
【0050】
(4)モル比(アミノ基/ヒドロキシ基)、モル比(イソシアネート基/(アミノ基+ヒドロキシ基))
樹脂組成物における各成分の量と、上記(1)~(3)で求めた各成分のイソシアネート基含有率、アミン価、水酸基価より算出した。
【0051】
(5)粘度
B型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABORATORIES,INC.社製、BROOKFIELD DIAL VISCOMETER Model LVT)を用い、温度25℃における回転粘度(mPa・s)を測定した。
【0052】
(6)可使時間
本発明の樹脂組成物を、ガラス製容器(100mL容)に全て入れ、25℃において、均一に見えるまで、金属製の撹拌棒を使用して素早く混合した。その後、上述の粘度の測定方法と同様の操作を行い、混合直後の粘度値から2倍になるまでの時間を求め、これを可使時間とした。可使時間は、以下の基準で判定した。
5:可使時間が40分以上、かつ120分以下
4:可使時間が30分以上40分未満、または120分を超え、180分以下
3:可使時間が20分以上30分未満、または180分を超え、300分以下
2:可使時間が10分以上20分未満、または300分を超え、360分以下
1:可使時間が10分未満、または360分を超える
0:硬化が早すぎて可使時間が測定できない、もしくは材料を混合してから4時間を超えても粘度の増加が確認できなかった
実用上、可使時間は「2」以上の評価が必要であり、「3」以上であることがより好ましい。
【0053】
(7)レベリング評価
JIS K 5400に基づいて、レベリングを評価した。
塗料組成物をガラス製容器(100mL容)に入れ、25℃において、均一に見えるまで、金属製の撹拌棒を使用して素早く混合した。これを200×100×2mmのガラス板に広げ、試験板にレベリングテスター(すきま寸法4mm)を押し付けながら均等な速さで移動させた。25℃24時間で硬化させたのちに、レベリングテスターによって作られた塗膜の凹凸が見本品と同等かそれより小さい場合は「○」、そうでない場合は「×」と評価した。また、可使時間が短すぎ、試験前に硬化したため評価できない場合は「-」とした。なお、見本品は実施例1で作製した硬化物とした。
【0054】
(8)塗膜の壁面塗工性(たるみ性)
JIS K 5551に基づいて、たるみ性により壁面塗工性を評価した。
準じて評価した。
サグテスター(塗膜厚み100、200、300、400、500μm)を用いて塗料組成物を200mm×150mmの金属板に塗布し、ただちに塗膜の厚い方を下に、サグテスターの軌跡線が水平になるように金属板を鉛直に立て、硬化させた。液の流れ(たるみ)が観測されない厚みを以下の基準で評価した。
0:軌跡線は塗膜厚み100μmでもたるみが生じた
1:軌跡線は塗膜厚み100μmまではたるみが生じず、200μmではたるみが生じた
2:軌跡線は塗膜厚み200μmまではたるみが生じず、300μmではたるみが生じた
3:軌跡線は塗膜厚み300μmまではたるみが生じず、400μmではたるみが生じた
4:軌跡線は塗膜厚み400μmまではたるみが生じず、500μmではたるみが生じた
5:軌跡線は塗膜厚み500μmでもたるみが生じなかった
実用上、「2」以上の評価が必要であり、「3」以上の評価であることがより好ましい。
【0055】
(9)耐薬品性
ポリウレア樹脂組成物をベーカー式アプリケーターにて金属板に厚みが1mmになるよう塗工し、25℃24時間で硬化させた。その後、硬化物を金属板から剥離し、20mm×20mm×1mmに切り出して試験片とし、10質量%の硫酸水溶液、5質量%の酢酸水溶液、飽和水酸化カルシウム水溶液に、それぞれ25℃で60日浸漬した。その後、以下の基準で評価した。
1:試験片にふくれ、割れ、溶出が1つ以上観測された
2:試験片にふくれ、割れ、溶出が観測されず、浸漬前後での重量変化が20%以上
3:試験片にふくれ、割れ、溶出が観測されず、浸漬前後での重量変化が15%以上、20%未満
4:試験片にふくれ、割れ、溶出が観測されず、浸漬前後での重量変化が10%以上、15%未満
5:試験片にふくれ、割れ、溶出が観測されず、浸漬前後での重量変化が10%未満
【0056】
(10)耐擦り傷性
アルミニウム板に予め市販の溶剤系2液アクリルウレタン白エナメル塗料をスプレー塗装してセッティング後に80℃で2時間焼付けを行ない、室温で2週間以上養生させた後、60度光沢値が10%以下になるまで表面を#1000のサンドペーパーで研磨した白板を基材として準備した。
その基材上にポリウレア樹脂組成物をアプリケーターで膜厚80μm以上100μm以下になるように塗装した。その後、25℃24時間硬化させることで塗膜を得た。得られた塗膜に対して、スクラブ摩耗テスター(TQC社製)を用いてISO11998に準じて20°光沢を測定した。具体的には以下に示す方法により、20°光沢を測定し、評価した。
すなわち、予め塗面の20°光沢を測定した。次いで、試験板の塗膜にブラシを往復200回こすりつけた。塗面を流水で洗浄して、自然乾燥後、その塗面の20°光沢を測定した。次式によって20°光沢保持率を計算し、下記の基準で耐擦り傷性を評価した。
20°光沢保持率={(試験後の20°光沢)/(試験前の20°光沢)}×100
5:光沢保持率が35%以上
4:光沢保持率が30%以上、35%未満
3:光沢保持率が25%以上、30%未満
2:光沢保持率が20%以上、25%未満
1:光沢保持率が20%未満
【0057】
実施例1
ポリイソシアネート化合物(A1)22.7g(イソシアネート基0.270モル)と、アスパラギン酸エステル化合物(B1)63.6g(アミノ基0.216モル)と、ポリオール化合物(C1)13.7g(ヒドロキシ基0.053モル)とを、均一な外観となるまで、25℃で金属製の撹拌棒を使用して混合して、ポリウレア樹脂組成物(モル比(アミノ基/ヒドロキシ基)=80/20、モル比(イソシアネート基/(アミノ基+ヒドロキシ基))=1.0)を得た。
【0058】
実施例2~27、比較例1~8
表1、2に記載の種類の(A)、(B)、(C)を、表1、2に記載のモル比で用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリウレア樹脂組成物を得た。
【0059】
実施例、比較例におけるポリウレア樹脂組成物の構成と、得られたポリウレア樹脂組成物の特性を表1、2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表1、2に示すように、実施例のポリウレア樹脂組成物は、無溶剤条件下における粘度が良好であり、壁面塗工性に優れ、硬化時間が短縮され、耐薬品性や耐擦り傷性が優れる塗膜を形成することができた。
ポリイソシアネート化合物が、芳香族ポリイソシアネート化合物である比較例1では、可使時間が短く、塗膜を得ることができなかった。
脂肪族ポリイソシアネート化合物の含有量が少ないポリイソシアネート化合物を使用した比較例2と、アスパラギン酸エステル化合物に代えて、芳香族アミン化合物を使用した比較例3と、脂肪族のポリオール化合物を含有しない比較例4~8の樹脂組成物は、壁面塗工性に劣るものであった。