(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119436
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】描画装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026333
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】荒井 純樹
(72)【発明者】
【氏名】伊勢谷 光輝
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA09
2H197CC11
2H197DA09
2H197DB18
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197HA10
(57)【要約】
【課題】ハウジングの内部空間におけるガスの流れの均一性を向上する。
【解決手段】描画装置1では、ハウジング6の内部空間60は、ガスの流通を妨げる仕切面54によって上下に仕切られている。仕切面54よりも上側の上部空間61には、ステージ21、描画ヘッド41およびステージ移動機構22が収容される。基台5は、仕切面54よりも下側の下部空間62に配置される。ハウジング6の内部空間60の(-Y)側の端部には、仕切面54が存在しない連通部55が設けられる。ハウジング6の(+Y)側の端部には、ハウジング6の外部から上部空間61に供給されるガスが通過するガス供給口64と、上部空間61から連通部55を介して下部空間62に流入したガスが排出される第1ガス排出口651および第2ガス排出口652と、が設けられる。これにより、ハウジング6の内部空間60におけるガスの流れの均一性を向上することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射してパターンの描画を行う描画装置であって、
基板を保持するステージと、
前記ステージの上方に配置されて前記基板の上面に変調された光を照射する描画ヘッドと、
前記基板の前記上面に平行な走査方向に、前記ステージを前記描画ヘッドに対して相対的に移動する走査機構と、
上面に取り付けられた前記走査機構を下側から支持する基台と、
前記ステージ、前記描画ヘッド、前記走査機構および前記基台を内部空間に収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングの前記内部空間は、ガスの流通を妨げる仕切面によって上下に仕切られており、
前記仕切面よりも上側の上部空間には、前記ステージ、前記描画ヘッドおよび前記走査機構が収容され、
前記基台は、前記仕切面よりも下側の下部空間に配置され、
前記走査方向および前記走査方向に垂直な幅方向のうち一の方向における前記ハウジングの前記内部空間の一方側の端部には、前記仕切面が存在しない連通部が設けられ、前記連通部を介して前記上部空間と前記下部空間とが部分的に連通し、
前記一の方向における前記ハウジングの他方側の端部には、
前記ハウジングの外部から前記上部空間に供給されるガスが通過するガス供給口と、
前記上部空間から前記連通部を介して前記下部空間に流入したガスが排出されるガス排出口と、
が設けられる描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の描画装置であって、
前記一の方向は前記走査方向であり、
前記一の方向における前記ハウジングの前記一方側の端部には、前記ハウジングの前記内部空間への基板の搬出入に使用される搬出入口が設けられる描画装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記連通部近傍に、前記上部空間のガスを前記下部空間へと導く送風機構が設けられる描画装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記連通部近傍に、前記上部空間におけるガスの流れ方向を変更して前記上部空間のガスを前記下部空間へと導く方向制御部が設けられる描画装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記上部空間の前記ガス供給口近傍に、前記ガス供給口から供給されたガスを前記上部空間におけるガスの流れ方向に垂直な方向に拡散するガス拡散部が設けられる描画装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記基台に、前記連通部から前記ガス排出口へと向かうガスが流れる貫通孔が設けられる描画装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記上部空間は、ガスの流通を妨げる他の仕切面によって上下に仕切られており、
前記他の仕切面よりも上側の空間には、前記描画ヘッドが収容され、
前記他の仕切面よりも下側の空間には、前記ステージおよび前記走査機構が収容され、
前記ガス供給口は、上下方向に関して前記仕切面と前記他の仕切面との間にて前記ハウジングの側面に配置される描画装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記ガス供給口から前記上部空間へと供給されるガスの温度を調節する温度調節部をさらに備える描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に光を照射してパターンの描画を行う描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板や半導体基板等(以下、「基板」という。)に対するパターンの描画において、基板上に形成された感光材料に変調された光を照射し、当該光の照射領域を走査することによりパターンを直接的に描画する描画装置が利用されている。
【0003】
このような描画装置では、基板周辺の雰囲気管理を行うために、基板を保持する基板保持部や基板に光を照射する描画ヘッド等の主要部分をハウジング内に収容することが行われている。また、ハウジング内の雰囲気管理のために、ハウジング上部に気体供給部を設け、ハウジング下部に排気部を設けて、ハウジング内に気体によるダウンフローを形成することも行われている。
【0004】
例えば、特許文献1の基板処理装置では、露光機の奥側においてハウジングの天蓋部に設けられたFFUからハウジング内に空気を供給し、露光機の手前側においてハウジングの底部および側面上部に設けられた排気口からハウジング外に排気が行われている。これにより、基板保持部の上方において、露光機の奥側から手前側へと向かう気流が形成され、空気の滞留が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の基板処理装置では、基板保持部の下方には空気が比較的流入しにくいため、基板保持部よりも下方の空間において空気の滞留が生じる可能性がある。その結果、ハウジング内における雰囲気の温度や清浄度にムラが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ハウジングの内部空間におけるガスの流れの均一性を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様1は、基板に光を照射してパターンの描画を行う描画装置であって、前記基板を保持するステージと、前記ステージの上方に配置されて前記基板の上面に変調された光を照射する描画ヘッドと、前記基板の前記上面に平行な走査方向に、前記ステージを前記描画ヘッドに対して相対的に移動する走査機構と、上面に取り付けられた前記走査機構を下側から支持する基台と、前記ステージ、前記描画ヘッド、前記走査機構および前記基台を内部空間に収容するハウジングと、を備える。前記ハウジングの前記内部空間は、ガスの流通を妨げる仕切面によって上下に仕切られている。前記仕切面よりも上側の上部空間には、前記ステージ、前記描画ヘッドおよび前記走査機構が収容される。前記基台は、前記仕切面よりも下側の下部空間に配置される。前記走査方向および前記走査方向に垂直な幅方向のうち一の方向における前記ハウジングの前記内部空間の一方側の端部には、前記仕切面が存在しない連通部が設けられ、前記連通部を介して前記上部空間と前記下部空間とが部分的に連通する。前記一の方向における前記ハウジングの他方側の端部には、前記ハウジングの外部から前記上部空間に供給されるガスが通過するガス供給口と、前記上部空間から前記連通部を介して前記下部空間に流入したガスが排出されるガス排出口と、が設けられる。
【0009】
本発明の態様2は、態様1の描画装置であって、前記一の方向は前記走査方向であり、前記一の方向における前記ハウジングの前記一方側の端部には、前記ハウジングの前記内部空間への基板の搬出入に使用される搬出入口が設けられる。
【0010】
本発明の態様3は、態様1または2の描画装置であって、前記連通部近傍に、前記上部空間のガスを前記下部空間へと導く送風機構が設けられる。
【0011】
本発明の態様4は、態様1または2(態様1ないし3のいずれか1つ、であってもよい。)の描画装置であって、前記連通部近傍に、前記上部空間におけるガスの流れ方向を変更して前記上部空間のガスを前記下部空間へと導く方向制御部が設けられる。
【0012】
本発明の態様5は、態様1または2(態様1ないし4のいずれか1つ、であってもよい。)の描画装置であって、前記上部空間の前記ガス供給口近傍に、前記ガス供給口から供給されたガスを前記上部空間におけるガスの流れ方向に垂直な方向に拡散するガス拡散部が設けられる。
【0013】
本発明の態様6は、態様1または2(態様1ないし5のいずれか1つ、であってもよい。)の描画装置であって、前記基台に、前記連通部から前記ガス排出口へと向かうガスが流れる貫通孔が設けられる。
【0014】
本発明の態様7は、態様1または2(態様1ないし6のいずれか1つ、であってもよい。)の描画装置であって、前記上部空間は、ガスの流通を妨げる他の仕切面によって上下に仕切られている。前記他の仕切面よりも上側の空間には、前記描画ヘッドが収容される。前記他の仕切面よりも下側の空間には、前記ステージおよび前記走査機構が収容される。前記ガス供給口は、上下方向に関して前記仕切面と前記他の仕切面との間にて前記ハウジングの側面に配置される。
【0015】
本発明の態様8は、態様1または2(態様1ないし7のいずれか1つ、であってもよい。)の描画装置であって、当該描画装置は、前記ガス供給口から前記上部空間へと供給されるガスの温度を調節する温度調節部をさらに備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、ハウジングの内部空間におけるガスの流れの均一性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一の実施の形態に係る描画装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る描画装置1を示す斜視図である。描画装置1は、空間変調された略ビーム状の光を基板9上の感光材料に照射し、当該光の照射領域を基板9上にて走査することによりパターンの描画を行う直接描画装置である。
図1では、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向として矢印にて示している。
図1に示す例では、X方向およびY方向は互いに垂直な水平方向であり、Z方向は鉛直方向(すなわち、上下方向)である。他の図においても同様である。
【0019】
基板9は、例えば、略矩形平板状のプリント基板である。基板9の(+Z)側の主面(以下、「上面91」とも呼ぶ。)では、感光材料により形成されたレジスト膜が銅層上に設けられる。描画装置1では、基板9の当該レジスト膜に回路パターンが描画(すなわち、形成)される。なお、基板9の種類および形状等は様々に変更されてよい。
【0020】
図2は、描画装置1を(+X)側から見た側面図である。
図1および
図2に示すように、描画装置1は、ステージ21と、ステージ移動機構22と、アライメント部3と、描画部4と、基台5と、ハウジング6とを備える。
図1では、図の理解を容易にするために、ハウジング6の外形を二点鎖線にて示し、ハウジング6の内部に収容される各構成を実線にて示す。また、
図2では、ハウジング6を断面にて示す。
【0021】
ハウジング6は、ステージ21、ステージ移動機構22、アライメント部3、描画部4および基台5等を内部空間60に収容する筐体である。ハウジング6の内部空間60は、ハウジング6の外部の空間から隔絶されている。
図1および
図2に示す例では、ハウジング6は、X方向の長さよりもY方向の長さの方が長い略直方体状である。また、ハウジング6の上面(すなわち、(+Z)側の面)には段差が設けられており、当該上面の(+Y)側の部位は(-Y)側の部位よりも(+Z)側に位置する。
【0022】
ステージ21は、アライメント部3および描画部4よりも下側(すなわち、(-Z)側)に配置された略矩形平板状の部材である。ステージ21は、水平状態の基板9を下側から保持する基板保持部25を備える。基板保持部25は、例えば、基板9の下面を吸着して保持するバキュームチャックである。基板保持部25は、バキュームチャック以外の構造を有していてもよく、例えば、メカニカルチャックであってもよい。基板保持部25上に載置された基板9の上面91は、Z方向に対して略垂直であり、X方向およびY方向に略平行である。
【0023】
ステージ移動機構22は、ステージ21をアライメント部3および描画部4に対して水平方向(すなわち、基板9の上面91に略平行な方向)に相対的に移動する移動機構である。ステージ移動機構22は、第1移動機構23と、第2移動機構24とを備える。第2移動機構24は、ステージ21を下側から支持するとともに、ステージ21をガイドレールに沿ってX方向に直線移動する。第1移動機構23は、第2移動機構24を下側から支持するとともに、ステージ21を第2移動機構24と共にガイドレールに沿ってY方向に直線移動する。第1移動機構23および第2移動機構24の駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。第1移動機構23および第2移動機構24の構造は、様々に変更されてよい。
【0024】
描画装置1では、Z方向に延びる回転軸を中心としてステージ21を回転するステージ回転機構が設けられてもよい。また、ステージ21をZ方向に移動するステージ昇降機構が描画装置1に設けられてもよい。ステージ回転機構として、例えば、サーボモータが利用可能である。ステージ昇降機構として、例えば、リニアサーボモータが利用可能である。ステージ回転機構およびステージ昇降機構の構造は、様々に変更されてよい。
【0025】
ステージ移動機構22は、基台5の上面上に取り付けられ、基台5によって下側から支持される。基台5は、例えば、X方向の長さよりもY方向の長さの方が長い略直方体状である。
図1および
図2に例示する基台5は、上板部51と、台座部52と、複数の脚53とを備える。上板部51は、Z方向に略垂直に広がる略平板状の部材である。上板部51の平面視における形状(すなわち、(+Z)側から見た形状)は、例えば、X方向の長さよりもY方向の長さの方が長い略長方形状である。上板部51の上面(すなわち、基台5の上面)は、Z方向に略垂直な略平面である。
【0026】
台座部52は、上板部51の下面に接続され、上板部51を下側から支持する。台座部52は、例えば、X方向の長さよりもY方向の長さの方が長い略直方体状の部材である。台座部52のY方向の長さは、上板部51のY方向の長さよりも短い。上板部51は、台座部52の(-Y)側の端部よりも(-Y)側へと延在しており、また、台座部52の(+Y)側の端部よりも(+Y)側へと延在している。
【0027】
基台5の台座部52には、(-Y)側の端部から(+Y)側の端部まで貫通する貫通孔521が設けられる。以下の説明では、貫通孔521を「基台貫通孔521」とも呼ぶ。基台貫通孔521は、例えば、Y方向に略平行に延び、台座部52を略直線状に貫通する。基台貫通孔521のY方向に垂直な断面形状は、例えば略矩形である。当該断面形状は、様々に変更されてよい。また、
図1および
図2に示す例では、基台貫通孔521の数は1つであるが、2つ以上の基台貫通孔521が台座部52に設けられてもよい。
【0028】
図1および
図2に示す例では、台座部52のX方向の長さは、上板部51のX方向の長さよりも少し短い。上板部51は、台座部52の(-X)側の端部よりも(-X)側へと延在しており、また、台座部52の(+X)側の端部よりも(+X)側へと延在している。なお、台座部52のX方向の長さは、上板部51のX方向の長さと略同じであってもよい。
【0029】
複数の脚53はそれぞれ、互いに離間して配置されて台座部52の下面に接続される略柱状の部材である。複数の脚53は、台座部52の下面から下方へと延びてハウジング6の底面に接しており、基台5の台座部52および上板部51、並びに、基台5上に設けられる各構成を下側から支持する。
【0030】
上板部51の上面の外周縁は、略全周に亘ってハウジング6の内側面に接しており、ハウジング6の内部空間60は、上板部51の上面によって上下に分割される。換言すれば、上板部51の上面は、ハウジング6の内部空間60を上下に仕切る仕切面54である。仕切面54は、内部空間60のうち仕切面54よりも上側の空間である上部空間61と、内部空間60のうち仕切面54よりも下側の空間である下部空間62との間のガスの流通を妨げる。具体的には、上部空間61と下部空間62とは、後述する連通部55を介して部分的に連通するが、連通部55以外の部位では実質的に連通しておらず、上部空間61と下部空間62との間の実質的なガスの流通は、連通部55以外では略生じない。ハウジング6の内部空間60では、基台5は下部空間62に配置されており、ステージ21、ステージ移動機構22、アライメント部3および描画部4は上部空間61に収容される。
【0031】
アライメント部3は、X方向に配列される複数(
図1に示す例では、2つ)のアライメントカメラ31を備える。各アライメントカメラ31は、ステージ21およびステージ移動機構22を跨いで設けられる支持部40により、ステージ21およびステージ移動機構22の上方にて支持される。支持部40は、例えば、Y方向における1つの位置に設けられる単一の部材である。
図1および
図2に示す例では、支持部40は、ステージ21およびステージ移動機構22を跨ぐ門形の部材(いわゆる、ガントリー)であり、基台5の上面上に立設する。
【0032】
図1および
図2に示す例では、2つのアライメントカメラ31は、支持部40の(+Y)側の側面に取り付けられる。2つのアライメントカメラ31のうち、例えば、一方のアライメントカメラ31は支持部40に固定されており、他方のアライメントカメラ31は支持部40上においてX方向に移動可能である。これにより、2つのアライメントカメラ31間のX方向の距離を変更することができる。なお、アライメント部3のアライメントカメラ31の数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0033】
各アライメントカメラ31は、基板9の上面91に予め設けられているアライメントマーク(図示省略)を撮像する。描画装置1では、アライメントカメラ31により取得されたアライメントマークの画像に基づいて、基板9のアライメント(すなわち、後述する描画ヘッド41に対する基板9の相対位置の補正)が行われる。
【0034】
描画部4は、X方向に配列される複数(
図1に示す例では、6つ)の描画ヘッド41を備える。複数の描画ヘッド41は、略同じ構造を有する。各描画ヘッド41は、変調された(すなわち、空間変調された)光を下方に向けて照射する空間光変調器を備える。各描画ヘッド41は、上述の支持部40によってステージ21およびステージ移動機構22の上方にて支持される。
図1および
図2に示す例では、6つの描画ヘッド41は、支持部40の(-Y)側の側面に取り付けられる。換言すれば、6つの描画ヘッド41は、Y方向に関して、支持部40を挟んで上述の2つのアライメントカメラ31とは反対側に配置される。
【0035】
図1および
図2に示す例では、6つの描画ヘッド41は、X方向に略平行に略直線状に配列される。6つの描画ヘッド41のY方向およびZ方向における位置は略同じである。なお、複数の描画ヘッド41は、必ずしも一直線上に配列される必要はなく、例えば、千鳥状に配列されてもよい。また、描画部4では、描画ヘッド41の数は1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0036】
描画装置1では、基板9に対するパターン描画は、いわゆるマルチパス方式で行われる。具体的には、描画部4の複数の描画ヘッド41から変調された光を基板9の上面91上に照射しつつ、ステージ移動機構22の第1移動機構23により基板9をY方向に移動して描画ヘッド41の下方を通過させる。これにより、複数の描画ヘッド41からの光の照射領域が基板9上にてY方向に走査され、基板9に対する描画が行われる。続いて、第2移動機構24により、基板9をX方向に所定距離だけステップ移動させる。そして、第1移動機構23による基板9のY方向への移動、および、当該移動と並行した描画ヘッド41から基板9への光の照射が再度行われ、基板9に対する描画が行われる。描画装置1では、Y方向に移動する基板9への光の照射と、X方向への基板9のステップ移動とが交互に行われることにより、基板9に対するパターンの描画が行われる。
【0037】
以下の説明では、Y方向を「主走査方向」または「走査方向」とも呼び、X方向を「副走査方向」または「幅方向」とも呼ぶ。主走査方向および副走査方向は、基板9の上面91に略平行な方向である。ステージ移動機構22では、第1移動機構23は、ステージ21を描画ヘッド41に対して主走査方向に相対的に移動する主走査機構である。第2移動機構24は、ステージ21を描画ヘッド41に対して副走査方向に相対的に移動する副走査機構である。
【0038】
なお、描画装置1では、基板9を描画ヘッド41に対してY方向に1回のみ相対移動することにより基板9上へのパターンの描画が完了するシングルパス方式(ワンパス方式とも呼ばれる。)により、基板9に対する描画が行われてもよい。この場合、パターンの描画時には、第2移動機構24による基板9の副走査(すなわち、X方向へのステップ移動)は行われない。すなわち、ステージ移動機構22は、ステージ21を描画ヘッド41に対して少なくとも走査方向に移動する走査機構である。
【0039】
描画装置1では、ハウジング6の(-Y)側の端部(すなわち、走査方向の一方側の端部)に、基板9用の搬出入口63が設けられる。搬出入口63は、基板9をハウジング6の内部空間60に搬入する際、および、基板9を内部空間60から搬出する際等に用いられる。具体的には、ステージ21がアライメント部3および描画部4よりも(-Y)側に移動し、内部空間60の(-Y)側の端部近傍に位置している状態で搬出入口63が開放され、搬出入口63を介してステージ21に対する基板9の載置、および、ステージ21上の基板9の取り出し等が行われる。
図1および
図2に示す例では、搬出入口63は、ハウジング6の上面および(-X)側の側面に設けられる。搬出入口63の配置および形状は様々に変更されてよい。以下の説明では、特に言及がない場合は、搬出入口63は閉鎖された状態である。
【0040】
描画装置1の(-Y)側の端部には、基台5の上板部51を上下方向に貫通する貫通孔が設けられ、当該貫通孔の下端縁から下方に延びる略筒状のダクトが設けられている。以下の説明では、当該貫通孔およびダクトをまとめて「連通部55」とも呼ぶ。連通部55は、ハウジング6の内部空間60の(-Y)側の端部に配置される。連通部55には、上述の仕切面54が存在せず、連通部55を介してハウジング6の上部空間61と下部空間62との間でガスの流通が可能となっている。
図1および
図2に示す例では、連通部55は、ハウジング6の(-Y)側の側面から(+Y)方向に少し離れているが、ハウジング6の(-Y)側の側面に接して設けられてもよい。また、
図1および
図2に示す例では、連通部55の平面視における形状は略円形であるが、当該形状は様々に変更されてよい。
【0041】
連通部55の内部には、送風機構551が設けられる。
図1では、図を簡略化するために、送風機構551の設置位置のみを示し、送風機構551の形状の図示を省略する。送風機構551は、例えば、モータ等によって回転される軸流ファンであり、上部空間61のガスを下部空間62へと送出する。なお、送風機構551は、必ずしも軸流ファンである必要はなく、他の構造を有するもの(例えば、遠心ファン等)であってもよい。また、送風機構551は、必ずしも連通部55の内部に設けられる必要はなく、連通部55の外部において連通部55近傍に配置され、上部空間61のガスを下部空間62へと導いてもよい。例えば、送風機構551は、下部空間62において連通部55の略鉛直下方に配置され、下部空間62の(-Y)側の端部のガスを(+Y)方向へと送出してもよい。これにより、ハウジング6の(-Y)側の端部において、上部空間61のガスが連通部55を介して下部空間62へと導かれる。
【0042】
ハウジング6の(+Y)側の端部(すなわち、走査方向の他方側の端部)には、ガス供給口64と、ガス排出口651,652とが設けられる。
図1および
図2に示す例では、2つのガス供給口64と、1つのガス排出口651とが、ハウジング6の(+Y)側の側面に設けられ、1つのガス排出口652が、ハウジング6の底部に設けられる。以下の説明では、ガス排出口651を「第1ガス排出口651」とも呼び、ガス排出口652を「第2ガス排出口652」とも呼ぶ。
【0043】
2つのガス供給口64は、ハウジング6の(+Y)側の側面において、仕切面54(すなわち、基台5の上面)よりも上側に配置される。2つのガス供給口64の大きさおよびZ方向の位置は略同じである。なお、ガス供給口64の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。第1ガス排出口651は、ハウジング6の(+Y)側の側面において、仕切面54よりも下側に配置される。第1ガス排出口651の数は、2つ以上であってもよい。第2ガス排出口652の数も、2つ以上であってよい。あるいは、第1ガス排出口651および第2ガス排出口652のうち、いずれか一方のみが設けられてもよい。
【0044】
各ガス供給口64は、例えば、図示省略のガス供給源に接続される。ガス供給源からガス供給口64へと供給されるガスは、例えば、圧縮エアである。当該ガスとして、圧縮エア以外の様々なガスが利用されてもよい。ガス供給口64とガス供給源との間には、温度調節部67が配置される。温度調節部67は、ガス供給源からガス供給口64へと供給されるガスの温度を調節する。温度調節部67としては、例えば、ペルチェ式やヒートポンプ式の公知の温度調節装置が利用可能である。温度調節部67により所定の温度に調節されたガスは、ガス供給口64を通過してハウジング6の外部からハウジング6の上部空間61へと供給される。ガス供給口64から上部空間61の(+Y)側の端部へと供給されたガスは、(-Y)方向へと流れる。
【0045】
上部空間61の(+Y)側の端部(すなわち、ガス供給口64近傍)には、ガス拡散部66が設けられる。ガス拡散部66は、ガス供給口64から(-Y)側に少し離れた位置に配置される。ガス拡散部66は、ガス供給口64から上部空間61に供給されたガスを、上部空間61におけるガスの流れ方向(すなわち、(-Y)方向)に略垂直な方向に拡散する。ガス拡散部66は、例えば、Y方向に略垂直に広がる略平板状の整流板であり、Y方向に貫通する多数の小さい貫通孔が略全面に亘って設けられている。ガス拡散部66としては、例えば、パンチングメタルが利用可能である。本実施の形態では、間隙を設けてY方向に配列された2枚のパンチングメタルが、ガス拡散部66として使用される。当該2枚のパンチングメタルでは、Y方向に沿って見た場合の多数の貫通孔の位置が互いに異なることが好ましい。
【0046】
上部空間61において、ガス供給口64からガス拡散部66の(+Y)側の空間へと供給されたガスは、ガス拡散部66に衝突してY方向に略垂直な方向へと広がり、上述の多数の貫通孔を通過してガス拡散部66の(-Y)側の空間へと移動する。
【0047】
図3は、ガス拡散部66近傍を(-Y)側から見た図である。ガス拡散部66は、(-Y)側から見た上部空間61の略全体に亘って広がっており、ガス拡散部66の外周縁は略全周に亘ってハウジング6および基台5の上板部51と接している。また、ガス拡散部66のX方向における中央部は、ガス拡散部66の(+Y)側に位置する2つのガス供給口64とY方向に対向している。2つのガス供給口64は、X方向において上部空間61の略中央部に配置される。
【0048】
以下の説明では、ガス拡散部66のX方向における中央部を「第1領域662」とも呼び、第1領域662の(+X)側および(-X)側の領域をそれぞれ「第2領域663」とも呼ぶ。
図3では、第1領域662と各第2領域663との境界を二点鎖線にて示す。第1領域662は、ガス拡散部66のZ方向の略全長に亘る略矩形状の領域であり、2つのガス供給口64とY方向に対向する。各第2領域663は、ガス拡散部66のZ方向の略全長に亘るとともに、X方向において第1領域662との境界からハウジング6の内側面に至る略矩形状の領域である。
【0049】
ガス拡散部66の第1領域662では、多数の貫通孔661が略均等に略全面に亘って分布している。各第2領域663においても、多数の貫通孔661が略均等に略全面に亘って分布している。
図3に示す例では、各貫通孔661の形状は略円形である。なお、貫通孔661の形状は様々に変更されてよい。
【0050】
第1領域662に分布する貫通孔661の密度(すなわち、単位面積当たりの貫通孔661の数)は、各第2領域663に分布する貫通孔661の密度よりも低い。これにより、ガス供給口64から供給されたガスの大部分がガス拡散部66のX方向における中央部にて貫通孔661を通過して当該中央部以外の領域にガスがあまり拡散されないことを抑制することができる。その結果、ガス拡散部66を通過して(-Y)方向へと流れるガスにおいて、上部空間61のY方向に垂直な断面の各位置における流量の均一性が向上する。
【0051】
ガス拡散部66を通過したガスは、
図2中において矢印81にて示すように、ガス拡散部66から(-Y)方向へと向かって流れ、ステージ21に保持された基板9の上方を通過して、上部空間61の(-Y)側の端部へと到達する。上述のように、基板9の上面91には感光材料が塗布されており、当該感光材料から発生した溶媒等の蒸気(すなわち、アウトガス)も、上部空間61にて(-Y)方向に流れる上記ガスと共に、基板9の上方から(-Y)方向へと移動する。
【0052】
上部空間61の(-Y)側の端部へと到達したガスは、矢印82にて示すように、連通部55を介して下部空間62へと移動する。描画装置1では、送風機構551により、連通部55を(-Z)方向へと通過するガスの流れが促進され、上部空間61から下部空間62へと流入するガスの流量が増大される。なお、本実施の形態では、連通部55以外の部位においても、上板部51に設けられた配線用の小孔等を介して、上部空間61と下部空間62との間のガスの流通は僅かに存在するが、配線用の孔等を通過するガスは、連通部55を通過するガスに比べて流量が非常に小さいため、ハウジング6の内部空間60におけるガスの流れに対する実質的な影響は生じない。
【0053】
上部空間61から連通部55を介して下部空間62へと流入したガスは、矢印83にて示すように、下部空間62の(-Y)側の端部から(+Y)方向へと流れ、台座部52の基台貫通孔521、台座部52の下方の空間、並びに、台座部52の(+X)側および(-X)側における台座部52とハウジング6との間の間隙を通過して、下部空間62の(+Y)側の端部へと到達する。当該ガスは、第1ガス排出口651および第2ガス排出口652を介して、ハウジング6の外部へと排出される。
【0054】
第1ガス排出口651は、基台貫通孔521の(+Y)側の開口とY方向に対向しており、連通部55から基台貫通孔521内を(+Y)方向へと通過したガスは、主に第1ガス排出口651に向かって流れ、主に第1ガス排出口651を介してハウジング6の外部へと排出される。また、連通部55から台座部52の周囲の空間(すなわち、台座部52の下方の空間、並びに、台座部52の(+X)側および(-X)側における台座部52とハウジング6との間の間隙)を(+Y)方向へと流れるガスは、主に第2ガス排出口652を介してハウジング6の外部へと排出される。なお、基台貫通孔521を通過したガスは、第2ガス排出口652から排出されてもよく、台座部52の周囲の空間を通過したガスは、第1ガス排出口651から排出されてもよい。
【0055】
描画装置1では、第1ガス排出口651または第1ガス排出口651近傍に、下部空間62のガスをハウジング6の外部へと送出する送風機構(例えば、軸流ファン等)が設けられてもよい。これにより、第1ガス排出口651からのガスの排出が促進される。また、第2ガス排出口652または第2ガス排出口652近傍に、下部空間62のガスをハウジング6の外部へと送出する送風機構(例えば、軸流ファン等)が設けられてもよい。これにより、第2ガス排出口652からのガスの排出が促進される。
【0056】
描画装置1では、ガス供給口64、連通部55、第1ガス排出口651および第2ガス排出口652の配置は、上記例には限定されず、様々に変更されてよい。例えば、ガス供給口64は、ハウジング6の(-Y)側の端部において(-Y)側の側面に設けられてもよい。この場合、第1ガス排出口651も、ハウジング6の(-Y)側の端部において(-Y)側の側面に設けられる。第2ガス排出口652は、ハウジング6の(-Y)側の端部の底部に設けられる。連通部55は、ハウジング6の(+Y)側の端部に設けられる。すなわち、描画装置1では、連通部55はY方向の一方側の端部に設けられ、ガス供給口64、第1ガス排出口651および第2ガス排出口652は、Y方向の他方側の端部に設けられていればよい。
【0057】
あるいは、連通部55はX方向の一方側の端部に設けられ、ガス供給口64、第1ガス排出口651および第2ガス排出口652は、X方向の他方側の端部に設けられてもよい。すなわち、描画装置1では、連通部55はY方向およびX方向のうち一の方向における一方側の端部に設けられ、ガス供給口64、第1ガス排出口651および第2ガス排出口652は、当該一の方向における他方側の端部に設けられていればよい。
【0058】
また、ガス供給口64は、上記一の方向における他方側の端部において、ハウジング6の当該他方側の側面に設けられてもよく、ハウジング6の上面に設けられてもよい。ガス供給口64がハウジング6の上面に設けられる場合、ガス供給口64にFFU(ファンフィルタユニット)が設けられてもよい。この場合、当該FFUから、上部空間61のうちガス拡散部66とハウジング6の内面との間の比較的小さい空間に対して下向きにガスが供給される。あるいは、ガス拡散部66は省略されてもよい。FFUから供給されたガスは、
図2中の矢印81のように、略水平方向に上部空間61内を流れる。
【0059】
以上に説明したように、基板9に光を照射してパターンの描画を行う描画装置1は、ステージ21と、描画ヘッド41と、走査機構(すなわち、ステージ移動機構22)と、基台5と、ハウジング6とを備える。ステージ21は、基板9を保持する。描画ヘッド41は、ステージ21の上方に配置されて基板9の上面91に変調された光を照射する。ステージ移動機構22は、基板9の上面91に平行な走査方向(上記例では、Y方向)に、ステージ21を描画ヘッド41に対して相対的に移動する。基台5は、上面に取り付けられたステージ移動機構22を下側から支持する。ハウジング6は、ステージ21、描画ヘッド41、ステージ移動機構22および基台5を内部空間60に収容する。
【0060】
ハウジング6の内部空間60は、ガスの流通を妨げる仕切面54によって上下に仕切られている。仕切面54よりも上側の上部空間61には、ステージ21、描画ヘッド41およびステージ移動機構22が収容される。基台5は、仕切面54よりも下側の下部空間62に配置される。走査方向(上記例では、Y方向)および当該走査方向に垂直な幅方向(上記例では、X方向)のうち一の方向におけるハウジング6の内部空間60の一方側の端部(上記例では、(-Y)側の端部)には、仕切面54が存在しない連通部55が設けられ、連通部55を介して上部空間61と下部空間62とが部分的に連通する。上記一の方向におけるハウジング6の他方側の端部(上記例では、(+Y)側の端部)には、ハウジング6の外部から上部空間61に供給されるガスが通過するガス供給口64と、上部空間61から連通部55を介して下部空間62に流入したガスが排出されるガス排出口(すなわち、第1ガス排出口651および/または第2ガス排出口652)と、が設けられる。
【0061】
当該構造を有する描画装置1では、ガス供給口64から供給されたガスが、上部空間61において、上述の一の方向の他方側の端部から一方側の端部に向かって当該一の方向に沿って流れる。また、当該ガスは、下部空間62において、当該一の方向の一方側の端部から他方側の端部に向かって当該一の方向に沿って流れ、ガス排出口からハウジング6の外部へと排出される。これにより、上下に仕切られていないハウジングの内部空間にハウジングの上面からガスを供給する描画装置(以下、「比較例の描画装置」とも呼ぶ。)に比べて、ハウジング6の内部空間60に供給するガスの流量を低減しつつ、当該内部空間60におけるガスの流れの均一性を向上することができる。
【0062】
具体的には、比較例の描画装置では、ハウジングの上面から内部空間に供給されたガスは、平面視におけるハウジングの全体に広がりつつ下方へと移動する。このように、比較例の描画装置では、ガスが流れる空間の流れ方向に垂直な断面の面積(すなわち、流路断面積)が大きいため、ある程度以上の流速の気流を形成しようとすると、ハウジングの内部空間に対するガスの供給量が大きくなる。また、ハウジングの上面から下方へと流れるガスは、描画ヘッドやステージ等に衝突して側方や下方へと回り込むため、ハウジングの内部空間に複雑な流れ方向の不均一な気流が形成される。このため、ハウジングの内部空間において、気流が到達しない箇所やガスが滞留する箇所等が発生し、ハウジング内における雰囲気の温度や清浄度にムラが生じるおそれがある。比較例の描画装置において、ガス供給口をハウジングの側面に設けた場合であっても同様に、ハウジングの内部空間に対するガスの供給量が大きくなり、また、ハウジング内における雰囲気の温度や清浄度にムラが生じるおそれがある。
【0063】
これに対し、描画装置1では、上述のように、仕切面54によってハウジング6の内部空間60を上下に仕切ることにより、ガス供給口64から供給されたガスの流路断面積を小さくすることができる。その結果、ハウジング6の内部空間60において所望の流速の気流を形成しつつ、内部空間60に供給するガスの流量を低減することができる。また、走査方向および幅方向のうち一の方向におけるハウジング6の一方側の端部に連通部55を設け、他方側の端部の上部空間61側および下部空間62側にガス供給口64およびガス排出口をそれぞれ設けることにより、上部空間61および下部空間62のそれぞれにおけるガスの流れ方向を、当該一の方向に沿う方向とすることができる。その結果、内部空間60におけるガスの流れの均一性を向上することができる。したがって、ハウジング6の内部空間60において、雰囲気の温度や清浄度にムラが生じることを抑制することができる。また、ステージ21の上方からアウトガスを好適に除去することもできる。
【0064】
上述の一の方向は、走査方向(上記例では、Y方向)であることが好ましい。また、当該一の方向におけるハウジング6の上記一方側の端部(上記例では、(-Y)側の端部)には、ハウジング6の内部空間60への基板9の搬出入に使用される搬出入口63が設けられることが好ましい。このように、当該一の方向において、搬出入口63とは反対側の端部にガス供給口64およびガス排出口を配置することにより、ガス供給口64およびガス排出口に関連してハウジング6から突出する構造等によって基板9の搬出入作業が阻害されることを防止することができる。
【0065】
上述のように、連通部55近傍には、上部空間61のガスを下部空間62へと導く送風機構551が設けられることが好ましい。これにより、連通部55を介した上部空間61から下部空間62へのガスの流れを、好適に形成することができる。その結果、上部空間61から下部空間62へのガスの移動を促進することができる。
【0066】
上述のように、上部空間61のガス供給口64近傍には、ガス拡散部66が設けられることが好ましい。ガス拡散部66は、ガス供給口64から供給されたガスを、上部空間61におけるガスの流れ方向(上記例では、(-Y)方向)に垂直な方向に拡散する。これにより、上部空間61におけるガスの流れの均一性を向上することができる。
【0067】
上述のように、基台5には、連通部55からガス排出口(上記例では、第1ガス排出口651)へと向かうガスが流れる貫通孔(すなわち、基台貫通孔521)が設けられることが好ましい。これにより、ガスが基台5の周囲の空間のみを流れる場合に比べて、基台5の温度の均一性を向上することができる。その結果、基台5の各部位の温度差に起因する基台5の変形等を抑制することができるため、基板9に対する描画精度をさらに向上することができる。
【0068】
上述のように、描画装置1は、ガス供給口64から上部空間61へと供給されるガスの温度を調節する温度調節部67をさらに備えることが好ましい。これにより、ハウジング6の内部空間60の温度を好適に調節することができる。
【0069】
描画装置1では、
図4に示すように、上述の仕切面54に加えて、上部空間61を上下に仕切る他の仕切面54aが設けられてもよい。仕切面54aは、Z方向に関して仕切面54とハウジング6の上面との間に配置される比較的薄い略平板状の部材(すなわち、仕切板)である。仕切面54aは、仕切面54から上方に離間し、ハウジング6の上面から下方に離間する。仕切面54aは、仕切面54と略同様に、仕切面54aよりも上側の空間612と、仕切面54aよりも下側の空間611との間のガスの流通を妨げる。以下の説明では、仕切面54aよりも下側の空間611を「第1上部空間611」とも呼び、仕切面54aよりも上側の空間612を「第2上部空間612」とも呼ぶ。なお、仕切面54aには、第1上部空間611と第2上部空間612とを連通させる連通部は設けられない。
【0070】
図4に示す例では、仕切面54aは、支持部40の(-Y)側において、描画ヘッド41の下端部よりも下方に位置する。また、仕切面54aは、支持部40の(+Y)側においてアライメントカメラ31の下端部よりも下方に位置する。換言すれば、描画ヘッド41およびアライメントカメラ31は、上部空間61のうち仕切面54aよりも上側の第2上部空間612に収容される。上部空間61のうち仕切面54aよりも下側の第1上部空間611には、ステージ21およびステージ移動機構22が収容される。また、ガス供給口64は、Z方向に関して、仕切面54よりも上側かつ他の仕切面54aよりも下側にて、ハウジング6の(+Y)側の側面に配置される。
【0071】
仕切面54aのうち、描画ヘッド41の下端部とZ方向に対向する領域には、描画ヘッド41から出射された光が通過する開口または透光部が設けられる。仕切面54aのうち、アライメントカメラ31の下端部とZ方向に対向する領域には、アライメントカメラ31に入射する光が通過する開口または透光部が設けられる。
【0072】
仕切面54aは、支持部40に沿って上向きに凸となるように屈曲しており、支持部40と描画ヘッド41およびアライメントカメラ31との間に位置する。具体的には、仕切面54aは、支持部40の(-Y)側の側面に沿ってY方向に略垂直に広がり、支持部40の上面に沿ってZ方向に略垂直に(すなわち、略水平に)広がり、支持部40の(+Y)側の側面に沿ってY方向に略垂直に広がる。
【0073】
このように、
図4に例示する描画装置1では、上部空間61は、ガスの流通を妨げる他の仕切面54aによって上下に仕切られている。他の仕切面54aよりも上側の空間(すなわち、第2上部空間612)には、描画ヘッド41が収容される。他の仕切面54aよりも下側の空間(すなわち、第1上部空間611)には、ステージ21およびステージ移動機構22が収容される。ガス供給口64は、上下方向(すなわち、Z方向)に関して仕切面54と他の仕切面54aとの間にてハウジング6の側面に配置される。これにより、上部空間61において、ガス供給口64から供給されるガスの流路断面積を小さくすることができる。このため、ハウジング6の内部空間60に供給するガスの流量をさらに低減しつつ、当該内部空間60におけるガスの流れの均一性を向上することができる。
【0074】
描画装置1では、
図5に示すように、方向制御部552が上部空間61の連通部55近傍に設けられてもよい。方向制御部552は、上部空間61におけるガスの流れ方向を変更して、上部空間61のガスを下部空間62へと導く部位である。
図5に示す例では、方向制御部552は、傾斜部553を備える。傾斜部553は、例えば、ハウジング6の一部であり、上部空間61の(-Y)側の端部において連通部55の上方に配置される。傾斜部553のうち連通部55と上下方向に対向する対向面554は、(+Y)側から(-Y)側に向かうに従って(-Z)側へと向かう(すなわち、上下方向に関して連通部55に近付く)傾斜面である。
【0075】
図5に示す描画装置1では、ガス供給口64から上部空間61に供給されて上部空間61の(-Y)側の端部に到達したガスは、傾斜部553の対向面554に(+Y)側から衝突して向きを変え、対向面554に沿って下方へと流れる。すなわち、傾斜部553は、上部空間61の(-Y)側の端部において(-Y)方向へと流れるガスを、連通部55へと案内し、連通部55を介して下部空間62へと導く案内部である。
【0076】
このように、
図5に例示する描画装置1では、連通部55近傍に、上部空間61におけるガスの流れ方向を変更して上部空間61のガスを下部空間62へと導く方向制御部552が設けられる。これにより、連通部55を介した上部空間61から下部空間62へのガスの流れを、好適に形成することができる。その結果、上部空間61から下部空間62へのガスの移動を促進することができる。
【0077】
上部空間61から下部空間62へのガスの流れを好適に形成するという観点からは、上述の傾斜部553に代えて、または、傾斜部553に加えて、連通部55の上部開口のエッジにR面取り加工等が行われてもよい。この場合、連通部55の上部開口のエッジ近傍の部位(すなわち、基台5の一部)も方向制御部552となる。なお、方向制御部552の構造、形状および配置は、上述の例には限定されず、様々に変更されてよい。
【0078】
図5に例示する描画装置1では、送風機構551および方向制御部552のうち、いずれか一方のみが設けられてもよい。また、
図5に例示する描画装置1では、
図4に示す他の仕切面54aがさらに設けられてもよい。
【0079】
上述の描画装置1では、様々な変更が可能である。
【0080】
例えば、描画装置1では、ハウジング6の形状は、上記例には限定されず、様々に変更されてよい。
【0081】
基台5の構造や形状は、上述の例には限定されず、様々に変更されてよい。例えば、上板部51のうち連通部55が設けられる部位は、ステージ移動機構22が取り付けられる部位とは別部材とされてもよい。また、台座部52の基台貫通孔521は設けられなくてもよい。
【0082】
ステージ21は、第1移動機構23により描画ヘッド41に対して主走査方向に相対的に移動すればよい。したがって、例えば、ステージ21が固定されており、ステージ21の上方において、描画ヘッド41が第1移動機構23により主走査方向に移動されてもよい。同様に、描画ヘッド41が第2移動機構24により副走査方向に移動されてもよい。
【0083】
描画装置1では、ガス供給口64からハウジング6内に供給されるガスの温度を調節する必要がない場合、温度調節部67は省略されてもよい。
【0084】
ガス拡散部66は、上述の多数の貫通孔661が設けられた整流板には限定されず、他の様々な構造を有していてもよい。ガス拡散部66は、例えば、Z方向またはX方向に延びる細長いスリット状の複数の孔が設けられた整流板であってもよく、整流板以外であってもよい。なお、ガス拡散部66は省略されてもよい。
【0085】
ガス供給口64、第1ガス排出口651および第2ガス排出口652は、搬出入口63が設けられるハウジング6の(-Y)側の端部に設けられてもよい。この場合、連通部55は、上述のように、ハウジング6の内部空間60において(+Y)側の端部に設けられる。
【0086】
仕切面54は、上述のように基台5の上板部51の上面のみにより実質的に構成されていてもよく、上板部51および他の部材により構成されてもよい。例えば、上板部51のX方向の側縁がハウジング6の内側面から離間している場合、上板部51の当該側縁とハウジング6の内側面との間隙が、Z方向に略垂直な平板状の蓋部材によって閉塞されることにより、上部空間61と下部空間62との間の空気の流通が妨げられてもよい。この場合、上板部51の上面および当該蓋部材の上面によって仕切面54が構成される。当該蓋部材は、上板部51の上面よりも少し下側に配置されてもよい。この場合であっても、基台5は実質的に下部空間62に配置されており、上板部51の上面および当該蓋部材の上面によって仕切面54が構成される。
【0087】
上述の基板9は、必ずしもプリント基板には限定されない。描画装置1では、例えば、半導体基板、半導体パッケージ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置等のフラットパネル表示装置用のガラス基板、フォトマスク用のガラス基板、太陽電池パネル用の基板等に対するパターンの描画が行われてもよい。
【0088】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0089】
1 描画装置
5 基台
6 ハウジング
9 基板
21 ステージ
22 ステージ移動機構
41 描画ヘッド
54,54a 仕切面
55 連通部
60 内部空間
61 上部空間
62 下部空間
63 搬出入口
64 ガス供給口
66 ガス拡散部
67 温度調節部
91 (基板の)上面
521 基台貫通孔
551 送風機構
552 方向制御部
611 第1上部空間
612 第2上部空間
651,652 ガス排出口