(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119441
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/52 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
H02K3/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026343
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】片岡 慈裕
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB03
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC11
5H604QB04
5H604QB16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コスト低減に寄与できる回転電機を提供する。
【解決手段】軸方向に延びる回転シャフト、回転シャフトの周面に固定されたロータおよびロータの周囲に配置された環状のステータを有するモータユニットと、軸方向一方側が開口し、モータユニットを収容した筒状ケースと、筒状ケースの内壁に周方向に沿って設けられ、軸方向一方側に向く段部と、ステータから引き出されたコイル線73a、73cと、段部に配置された環状のガイド部材であり、径方向外側から径方向内側に向かって延びる切欠部81aを有するガイド部材と、コイル線の端部が通るスルーホールを有する制御基板と、を有する。切欠部における少なくとも周方向一方側に、周方向に移動可能な弾性変形部を有する。ステータから引き出されたコイル線は、端部側が軸方向に沿って切欠部を通りスルーホールまで延びている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を中心に回転するロータと、
前記ロータと径方向に対向するステータと、
前記ステータから延び出るコイル線が接続される回路基板と、を有し、
前記回路基板は、
板状の基板本体と、
前記基板本体の板面に沿って配置され前記基板本体に保持される板状の端子部材と、を有し、
前記端子部材は、前記コイル線が挿入されるスリットを有し、
前記スリットは、互いに対向して前記コイル線を挟む一対の内縁部を有し、
前記一対の内縁部の少なくとも一方には、他方の前記内縁部に向けて尖り前記スリットの延びる方向に沿って延びる鋭利部を有する、
回転電機。
【請求項2】
前記スリットは、
前記コイル線を挟んで保持する保持部と、
前記一対の内縁部の一方と他方との距離が、前記スリットの延びる方向において前記保持部に近づくに従い徐々に狭くなる導入部と、を有し、
前記鋭利部の少なくとも一部は、前記保持部に位置する、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記スリットは、前記端子部材の外縁に開口する開口部を有し、
前記導入部は、前記開口部に設けられる、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記端子部材には、前記スリットに繋がる円形の貫通孔が設けられ、
前記導入部は、前記スリットと前記貫通孔との境界部に設けられる、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項5】
前記端子部材の少なくとも一部は、前記基板本体に埋め込まれる、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項6】
前記基板本体は、前記ステータの軸方向一方側で前記中心軸線と直交する平面に沿って配置され、
前記端子部材は、前記基板本体の外縁から径方向外側に突出する。
請求項1に記載の回転電機。
【請求項7】
前記スリットは、径方向に沿って延びる、
請求項6に記載の回転電機。
【請求項8】
前記スリットは、径方向と交差する方向に沿って延びる、
請求項6に記載の回転電機。
【請求項9】
前記端子部材は、複数の前記スリットを有し、
1つの前記コイル線は、複数の前記スリットの前記一対の内縁部に挟まれる、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項10】
軸方向他方側から前記回路基板を支持する支持部材を備え、
前記支持部材には、前記スリットの軸方向他方側で軸方向に沿って延びる凹溝部が設けられ、
前記コイル線は、前記凹溝部に挿入される、
請求項6に記載の回転電機。
【請求項11】
前記一対の内縁部の一方から他方までの距離は、前記コイル線の線径よりも小さい、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項12】
中心軸線を中心に回転するロータと、
前記ロータと径方向に対向するステータと、
前記ステータから延び出るコイル線が接続される回路基板と、を有し、
前記回路基板は、
板状の基板本体と、
前記基板本体の板面に沿って配置され前記基板本体に保持される板状の端子部材と、を有し、
前記端子部材は、
前記コイル線が挟まれるスリットと、
前記スリットの幅方向外側に配置される把持部と、を有し、
前記スリットは、互いに対向して前記コイル線を挟む一対の内縁部を有し、
前記把持部は、前記一対の内縁部同士の距離を狭める方向にかしめられている、
回転電機。
【請求項13】
前記端子部材の外縁は、
前記スリットの幅方向両側に位置する一対の第1外縁部と、
前記スリットの長さ方向一方側に位置する第2外縁部と、
前記スリットの長さ方向他方側に位置し前記基板本体に埋め込まれる第3外縁部と、を有し、
前記スリットは、第2外縁部に開口する開口部を有し、
前記第1外縁部は、
前記基板本体側に位置する第1領域と、
前記第1領域よりも前記基板本体から離れ前記第1領域よりも前記スリット側へ近づく第2領域と、を有し、
前記把持部は、前記第2領域の少なくとも一部と前記内縁部との間に位置する、
請求項12に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータを制御する回路基板を備えた機電一体型のモータの開発が進んでいる。特許文献1には、ステータの巻き線から引き出されたコイル線が、ガイドプレートを介して基板に接続されているモータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来構造では、コイル線をガイドプレートに接続し、さらにガイドプレートを回路基板に接続する。このため、従来構造では、部品点数の増加に伴う管理の煩雑化や、製造工程が複雑化によって、製造コストが増大する虞がある。
【0005】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、コスト低減に寄与できる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転電機の一つの態様は、中心軸線を中心に回転するロータと、前記ロータと径方向に対向するステータと、前記ステータから延び出るコイル線が接続される回路基板と、を有する。前記回路基板は、板状の基板本体と、前記基板本体の板面に沿って配置され前記基板本体に保持される板状の端子部材と、を有する。前記端子部材は、前記コイル線が挿入されるスリットを有する。前記スリットは、互いに対向して前記コイル線を挟む一対の内縁部を有する。前記一対の内縁部の少なくとも一方には、他方の前記内縁部に向けて尖り前記スリットの延びる方向に沿って延びる鋭利部を有する。
【0007】
本発明の回転電機の一つの態様は、中心軸線を中心に回転するロータと、前記ロータと径方向に対向するステータと、前記ステータから延び出るコイル線が接続される回路基板と、を有する。前記回路基板は、板状の基板本体と、前記基板本体の板面に沿って配置され前記基板本体に保持される板状の端子部材と、を有する。前記端子部材は、前記コイル線が挿入されるスリットと、前記スリットの幅方向外側に配置される把持部と、を有する。前記スリットは、互いに対向して前記コイル線を挟む一対の内縁部を有する。前記把持部は、前記一対の内縁部同士の距離を狭める方向にかしめられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、コスト低減に寄与する回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の回転電機の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の回路基板の拡大斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の端子部材の断面模式図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のコイル線ガイド部の斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の変形例1の端子部材の断面模式図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の変形例2の回路基板の拡大斜視図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の変形例3の回路基板の拡大斜視図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の回路基板の一部を示す模式図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の変形例の回路基板の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各図には、以下に説明する実施形態の回転電機における中心軸線Jを仮想的に示している。以下の説明においては、中心軸線Jの軸方向を単に「軸方向」と呼ぶ。中心軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。中心軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。各図に示すZ軸は、中心軸線Jが延びる方向を示している。以下の説明においては、軸方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)を「上側」と呼び、軸方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。
【0011】
本実施形態において、上側は「軸方向一方側」に相当し、下側は「軸方向他方側」に相当する。なお、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。また、
図1では、説明のために、中心軸線Jを挟んだ左右両側のそれぞれにおいて異なる周方向位置の断面を示している。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の回転電機1の分解斜視図である。
本実施形態の回転電機1は、インナーロータ式のモータである。回転電機1は、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備える。
【0013】
回転電機1は、ハウジング(支持部材)10と、ステータケース30と、ステータ70と、ロータ50と、第1ベアリング5Aと、第2ベアリング5Bと、回路基板80と、蓋体20と、を備える。
【0014】
ロータ50は、中心軸線Jを中心に回転する。ロータ50は、回転シャフト51と、ロータコア52と、複数のロータマグネット53と、一対のロータケース54と、を有する。回転シャフト51は、中心軸線Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。回転シャフト51の上端部は、第1ベアリング5Aによって中心軸線J回りに回転可能に支持される。同様に、回転シャフト51の下端部は、第2ベアリング5Bによって回転可能に支持される。回転シャフト51の外周面には、ロータコア52が固定される。
【0015】
ロータコア52は、中心軸線Jを囲む環状である。ロータマグネット53は、ロータコア52の外周面に固定されている。複数のロータマグネット53は、周方向に並んで配置される。一対のロータケース54は、ロータコア52および複数のロータマグネット53に対して上下方向の両側から装着され、複数のロータマグネット53を径方向外側から囲む。
【0016】
ステータ70は、ロータ50と径方向に対向する。本実施形態のステータ70は、ロータ50の周囲に配置される。ステータ70は、ロータ50を囲む環状である。ステータ70は、ステータコア71と、複数のコイル73と、を有する。
【0017】
ステータコア71は、ロータコア52を囲む円環状のコアバック71a、およびコアバック71aから径方向内側に延びる複数のティース71bを有する。複数のティース71bは、周方向に並ぶ。複数のティース71bの径方向内側の端部は、ロータ50の外周面と僅かな隙間を介して対向する。
【0018】
複数のコイル73は、それぞれ絶縁部材を介してティース71bに巻き付けられる。複数のコイル73は、周方向に並ぶ。本実施形態の回転電機1は三相モータである。複数のコイル73は、それぞれ120°位相がずれた交流電流が流されるU相、V相、およびW相のコイルに分類される。コイル73は、上側へ延び出て回路基板80の端子部材85に接続されるコイル線73aを有する。すなわち、ステータ70は、複数(本実施形態では、)のコイル線73aを有する。本実施形態のステータ70は、6本のコイル線73aを有する。6本のコイル線73aは、それぞれU相、V相、およびW相に対応するコイル線を2本ずつ含む。
【0019】
ステータケース30は、中心軸線Jを中心とする筒状部31と、筒状部の下端から径方向内側に延びる底部32と、を有する。筒状部31は、ステータコア71の外周面に圧入されている。底部32は、ステータコア71を下側から覆う。底部32は、中心軸線J周りの周方向に等間隔に配置される複数の固定ボルト30Fによって、ハウジング10に固定される。底部32の中央には、中心軸線Jを中心とする貫通孔32aが設けられる。貫通孔32aには、回転シャフト51が挿通される。貫通孔32aの内周面には、オイルシールが配置される。オイルシールは、回転シャフト51の外周面と貫通孔32aの内周面との間を封止し、オイルの漏れ出しを抑制する。
【0020】
回路基板80は、ロータ50およびステータ70の上側に配置される。また、回路基板80の上側には、蓋体20が配置される。回路基板80には、ステータ70から延び出るコイル線73aが接続される。また、回路基板80には、ハウジング10のコネクタ部19から延びる端子(図示略)が接続される。コネクタ部19に図示略の外部電源が接続されることで、当該外部電源の電力が回路基板80に供給される。回路基板80は、外部電源から供給された電力を三相交流電流に変換してコイル線73aを介してコイル73に供給する。
【0021】
回路基板80は、板状の基板本体81と、基板本体81の外縁81eに配置される複数(3個)の端子部材85と、を有する。基板本体81は、ステータ70の上側で中心軸線Jと直交する平面に沿って配置される。基板本体81は、中心軸線Jを中心とする略円形である。基板本体81の外縁81eには、径方向内側に凹む切欠部81aが設けられる。端子部材85は、切欠部81aに配置される。
【0022】
本実施形態の基板本体81は、上下方向を積層方向とする多層基板である。基板本体81の各層には、配線パターンが設けられる。また、基板本体81の上面には、配線パターンに接続される複数の電子部品が実装される。また、基板本体81の上面は、隙間介して蓋体20によって覆われる。複数の電子部品には、発熱量が大きい複数の発熱素子89が含まれる。基板本体81上面と蓋体20との間には、発熱素子89を覆う放熱材83が挟まれる。放熱材83は、発熱素子89、および蓋体20と接触する。放熱材83は、発熱素子9から生じる熱を蓋体20に移動させる。
【0023】
基板本体81には、中央孔81h、複数のスルーホール81k、および複数の固定孔81fが設けられる。中央孔81h、複数のスルーホール81k、および複数の固定孔81fは、基板本体81を貫通する。中央孔81hは、中心軸線Jを中心とする円形である。中央孔81hには、回転シャフト51の上端部が挿通される。複数のスルーホール81kは、基板本体81の外縁81eの近傍に直線状に並ぶ。スルーホール81kには、コネクタ部19の端子が挿入される。複数の固定孔81fは、基板本体81の外縁81eに沿って周方向に並ぶ。複数の固定孔81fには、ハウジング10の固定用突起14cが挿入される。これにより、回路基板80は、ハウジング10に位置決めされる。
【0024】
図2は、端子部材85近傍の回路基板80の拡大斜視図である。
端子部材85は、板状である。端子部材85は、基板本体81の板面に沿って配置される。端子部材85は、電気抵抗の低い銅合金などの金属材料から構成される。端子部材85は、プレス加工によって成形される。本実施形態の端子部材85は、基板本体81に埋め込まれることで、基板本体81に保持される。
【0025】
ここで、回路基板80の製造方法の一例について説明する。上述したように、基板本体81は、多層基板である。本実施形態の基板本体81は、少なくとも、最下層81bと中間層81cと最上層81dとが、軸方向に積層されている。本実施形態の回路基板80の製造方法では、基板本体81の製造工程において、基板本体81の最下層81bを形成した後に、当該最下層81bの上面に端子部材85を搭載する。次いで、最下層81bの上面に中間層81cを形成する。このとき、中間層81cの厚さは、端子部材85の厚さと略一致する。さらに、中間層81cの上面、および端子部材85の上面に、最上層81dを形成する。以上の工程を経ることで、基板本体81と、基板本体81の内部に一部が埋め込まれる端子部材85と、を有する回路基板80を製造できる。端子部材85は、基板本体81の中間層81cの配線パターンに接続されている。
【0026】
本実施形態の端子部材85の少なくとも一部は、基板本体81に埋め込まれる。また、端子部材85は、基板本体81の中間層81cの配線パターンに接続される。本実施形態によれば、端子部材と基板本体とを半田付けで接続する場合と比較して、製造工程を簡素化できる。また、端子部材と基板本体とを半田を介して接続する場合と比較して、接続部分の電気抵抗を低減できる。さらに、端子部材85の一部が基板本体81の内部に埋め込まれるため、基板本体81による端子部材85の保持の信頼性を高めることができる。
【0027】
端子部材85には、一対のコイル線73aが接続される。1つの端子部材85に接続される一対のコイル線73aは、同相のコイル73から延び出る同相のコイル線73aである。本実施形態の回路基板80には、U相、V相、およびW相のコイル線73aがそれぞれ接続される3個の端子部材85が設けられる。
【0028】
本実施形態の端子部材85は、軸方向から見て略矩形状である。端子部材85は、基板本体81に埋め込まれる埋込部85aと、上面および下面が基板本体81から露出する露出部85bと、を有する。露出部85bの一部は、軸方向から見て切欠部81aの内部に配置される。また、露出部85bの他の一部は、軸方向から見て基板本体81の外縁81eよりも径方向外側に突出する。すなわち、端子部材85は、基板本体81の外縁81eから径方向外側に突出する。
【0029】
端子部材85は、一対の第1スリット86と、一対の第2スリット87と、一対の貫通孔88と、を有する。第1スリット86、第2スリット87、および貫通孔88は、露出部85bに設けられる。第1スリット86、第2スリット87、および貫通孔88は、それぞれ端子部材85を軸方向に貫通する。
【0030】
一対の第1スリット86は、径方向に沿って平行に延びる。一対の第1スリット86は、周方向に沿って並んで配置される。それぞれの第1スリット86の径方向内側の端部には、円形の貫通孔88が配置される。すなわち、貫通孔88は、第1スリット86に繋がる。
【0031】
一対の第2スリット87は、径方向に沿って平行に延びる。一対の第2スリット87は、周方向に沿って並んで配置される。第2スリット87は、端子部材85の外縁85eに開口する開口部87cを有する。
【0032】
一対の第1スリット86のうちの一方と、一対の第2スリット87のうちの一方とは、同一直線上に配置される。同様に、一対の第1スリット86のうちの他方と、一対の第2スリット87のうちの他方とは、同一直線上に配置される。第1スリット86、および第2スリット87には、コイル線73aが挿入される。本実施形態では、同一直線上に配置される第1スリット86と第2スリット87には、同じコイル線73aが挿入される。コイル線73aは、回路基板80の第1スリット86に下側から挿入され、回路基板80の上側でヘアピン状に折り返され、第2スリット87に上側か挿入される。
【0033】
第1スリット86は、互いに対向する一対の内縁部86tを有する。第1スリット86は、一対の内縁部86tにおいてコイル線73aを挟む。第1スリット86の一対の内縁部86tの一方から他方までの距離は、コイル線73aの線径よりも小さい。コイル線73aは、一対の内縁部86tに挟まれて接触することで、端子部材85に接続される。
【0034】
同様に、第2スリット87は、互いに対向する一対の内縁部87tを有する。第2スリット87は、一対の内縁部87tにおいてコイル線73aを挟む。第2スリット87の一対の内縁部87tの一方から他方までの距離は、コイル線73aの線径よりも小さい。コイル線73aは、一対の内縁部87tに挟まれて接触することで、端子部材85に接続される。
【0035】
図3は、本実施形態の端子部材85の断面模式図である。
図3では、第2スリット87が延びる方向、および端子部材85の板面の両方と直交する断面を図示する。
図3に示すように、第2スリット87の一対の内縁部87tには、それぞれ対向する他方の内縁部87tに向けて尖る鋭利部87aを有する。ここで、鋭利部87aとは、一方の内縁部87tに位置し、他方の内縁部87t側に向かうに従って端子部材85の厚さ方向における寸法を徐々に小さくすることでその先端が他方の内縁部87tに向かって突出した形状となった部分を意味する。本実施形態の鋭利部87aは、端子部材85の厚さ方向において内縁部87tの略中央に配置される。鋭利部87aの先端部がなす角度は、例えば、150°以下であることが好ましい。鋭利部87aは、第2スリット87の延びる方向に沿って延びる。互いに対向する鋭利部87aの先端同士の間の寸法は、コイル線73aの線径よりも小さい。コイル線73aは、互いに向かい合う鋭利部87a同士の間に圧入される。
【0036】
本実施形態のコイル線73aは、銅合金からなる芯材と、芯材の周りを被覆するエナメル等の絶縁被覆73cと、を有する。このようなコイル線73aを用いる場合の他部材との接続方法としては、予め絶縁被覆73cを除去した後にコイル線を他部材に接続する方法、および、エナメル線を溶融させつつ他部材に接合する方法(例えばヒュージング溶接等)が一般的である。
【0037】
これに対して、本実施形態では、第2スリット87の内縁部87tに鋭利部87aが設けられる。このため、組立工程を行う作業者、又は組立装置(以下、単に作業者という)が、コイル線73aを一対の内縁部87tの間に圧入し挟み込ませることで、コイル線73aの絶縁被覆73cを鋭利部87aによって裂くことができる。これにより、絶縁被覆73cを部分的に除去しコイル線73aの芯材と内縁部87tとを直接的に接触させることができる。すなわち、本実施形態によれば、コイル線73aの絶縁被覆73cを除去する工程が不要となり、コイル線73aを端子部材85に接続する作業の簡易化を図ることができる。また、コイル線73aを一対の内縁部87tの内側に通す簡易な作業のみによって、コイル線73aと端子部材85とを電気的に接続できる。本実施形態によれば、ヒュージング溶接等の接合溶接を行う作業を行う場合と比較して、コイル線73aを端子部材85に接続する接続工程の簡易化を図ることができ、回転電機1の製造コストを低減することができる。さらに、本実施形態の接続工程によれば、半田付けやヒュージングを採用した接続工程と比較して、接続工程に加熱を伴うことがないため、熱の影響による周辺部材の変質を抑制することができる。
【0038】
本実施形態では、第2スリット87の一対の内縁部87tの両方に鋭利部87aが設けられる場合について説明した。しかしながら、鋭利部87aは、一対の内縁部87tのうち何れ一方にのみ設けられていてもよい。すなわち、一対の内縁部87tの少なくとも一方が、他方の内縁部87tに向けて尖り第2スリット87の延びる方向に沿って延びる鋭利部87aを有していればよい。この場合であっても、一対の内縁部87tの間の隙間の寸法が、コイル線73aの線径よりも小さい場合、鋭利部87aが絶縁被覆73cを裂くことができる。
【0039】
図3では、第2スリット87の内縁部87tのみが図示されるが、
図2に示すように、第1スリット86の一対の内縁部86tにも、第2スリット87の内縁部87tと同様の鋭利部86aが設けられる。コイル線73aは、第1スリット86の一対の内縁部86tに挟まれる部分でも、鋭利部86aにより絶縁被覆73cが裂かれており、コイル線73aの芯材が内縁部86tに直接的に接触する。
【0040】
本実施形態の鋭利部86a、87aは、端子部材85を厚さ方向から塑性変形させる型鍛造によって成形することができる。鋭利部86a、87aには、端子部材85を構成する母材よりも硬度が高く導電性の表面処理を施すことが好ましい。一例として、端子部材85の母材が銅合金である場合、鋭利部86a、87aには、ニッケル鍍金が施される。このような表面処理を鋭利部86a、87aに施すことで鋭利部86a、87aの硬度を高め、鋭利部86a、87aの変形を抑制し、鋭利部86a、87aによって絶縁被覆73cを円滑に裂くことができる。なお、
図3に示す本実施形態の鋭利部87aの断面形状は、あくまで一例であり、他の断面形状の鋭利部を採用してもよい。
【0041】
図2に示すように、第1スリット86においてコイル線73aを挟んで保持する部分を第1保持部86hと呼ぶ。第1保持部86hにおける一対の内縁部86t同士の距離は、第1スリット86の長さ方向において一定である。本実施形態において、第1保持部86hには鋭利部86aが位置する。このため、第1保持部86hにおける一対の内縁部86t同士の距離とは、一対の鋭利部86a同士の間の距離である。
【0042】
第1スリット86の一方の端部には、円形の貫通孔88が配置される。貫通孔88の直径は、コイル線73aの線径よりも十分に大きい。したがって、貫通孔88の直径は、第1保持部86hにおける一対の内縁部86t同士の距離よりも大きい。貫通孔88と第1スリット86との境界部には、第1スリット86の延びる方向において第1保持部86h側に近づくに従い一対の内縁部86tの一方と他方の距離が徐々に狭くなる第1導入部86gが設けられる。
【0043】
本実施形態によれば、第1スリット86は、第1保持部86hと第1導入部86gとを有する。また、第1導入部86gは、第1スリット86と貫通孔88との境界部に設けられる。組立工程を行う作業者は、貫通孔88にコイル線73aを通した後に、第1導入部86gを介してコイル線73aを貫通孔88から第1保持部86h側に押し込むことで、コイル線73aを第1保持部86hに保持させる。本実施形態によれば、第1保持部86hにコイル線73aを保持させる工程を簡素化することができる。
【0044】
第2スリット87においてコイル線73aを挟んで保持する部分を第2保持部87hと呼ぶ。第2保持部87hにおける一対の内縁部87t同士の距離は、第2スリット87の長さ方向において一定である。
【0045】
第2スリット87の一方の端部には、開口部87cが設けられる。開口部87cにおける第2スリット87の内縁部87t同士の距離は、コイル線73aの線径よりも大きい。開口部87cには、第2導入部87gが設けられる。第2導入部87gは、第2スリット87の延びる方向において第2保持部87h側に近づくに従い一対の内縁部87tの一方と他方の距離が徐々に狭くなる。
【0046】
本実施形態によれば、第2スリット87は、第2保持部87hと第2導入部87gとを有する。また、第2導入部87gは、開口部87cに設けられる。組立工程を行う作業者は、開口部87cにコイル線73aを配置した後に、第2導入部87gを介してコイル線73aを第2保持部87h側に押し込むことで、コイル線73aを第2保持部87hに保持させる。本実施形態によれば、第2保持部87hにコイル線73aを保持させる工程を簡素化することができる。
【0047】
なお、本実施形態の第2スリット87では、一対の内縁部87t同士の距離が一定の部分に第2保持部87hが設けられる。しかしながら、第2保持部87hが設けられる部分は、一対の内縁部87t同士の距離が一定の部分でなくてもよい。例えば、第2スリット87は、第2導入部87gの端部に設けられていてもよい。
【0048】
本実施形態において、端子部材85は、複数のスリット(第1スリット86、および第2スリット87)を有し、1つのコイル線73aは、複数のスリットの一対の内縁部(第1スリット86の一対の内縁部86t、および第2スリット87の一対の内縁部87t)に挟まれる。これにより、1つのコイル線73aと端子部材85との電気的な接点の数を複数設けることができ、コイル線73aと回路基板80との接続の信頼性を高めることができる。
【0049】
本実施形態の第1スリット86、および第2スリット87は、径方向に沿って延びる。本実施形態によれば、組立工程を行う作業者は、第1スリット86、および第2スリット87に挿入したコイル線73aを、ともに径方向に押し込むことで、コイル線73aと端子部材85とを接続できる。より具体的には、本実施形態の第1スリット86と第2スリット87とは、同一直線上に並んで配置される。また、本実施形態では、第1スリット86の第1保持部86hは、第1導入部86gに対し径方向外側に配置される。また、第2スリット87の第2保持部87hは、第2導入部87gに対し径方向内側に配置される。組立工程を行う作業者は、まず、コイル線73aを、貫通孔88に下側から挿入し、回路基板80の上側で折り返し、さらに、開口部87cに配置する。次いで、作業者は、治具などを用いて、コイル線73aの貫通孔88内に配置される部分と、開口部87c内に配置される部分とを、を互いに近づける方向に、コイル線73aに力を付与する。これにより、コイル線73aを第1スリット86の一対の内縁部86t、および第2スリット87の内縁部87tに挟み込ませることができる。また、本実施形態によれば、1本のコイル線73aが挿入される第1スリット86、および第2スリット87が同方向に延びる。このため、コイル線73aを第1スリット86、および第2スリット87に挟み込まれる工程を簡素化することができる。
【0050】
本実施形態において、基板本体81は、ステータ70の上側で中心軸線Jと直交する平面に沿って配置される。このため、基板本体81をステータ70の上部に沿って配置することができ、回転電機1を軸方向に小型化することができる。さらに、回路基板80の全体をステータ70に近づけて配置することができ、ステータ70から延び出て回路基板80に接続されるコイル線73aを短くしてコイル線73aの電気抵抗を低減できる。また、本実施形態の端子部材85は、基板本体81の外縁81eから径方向外側に突出する。このため、端子部材85とコイル線73aとの接続作業を、基板本体81の径方向外側のスペースを利用して行うことができ、接続工程を容易に行うことができる。
【0051】
図2に示すように、本実施形態の端子部材85は、基板本体81に保持される。本実施形態によれば、端子部材85と基板本体81とを組み合わせた回路基板80として部品を管理することが可能となり、部品管理に要する回転電機1の製造コストを低減できる。また、本実施形態の端子部材85は、直接的に基板本体81に支持される。このため、本実施形態の回転電機1は、端子部材85を支持する支持部材、又は支持構造を必要とせず、回転電機1の製造コストを低減できる。加えて、基板本体81と端子部材85とを予め組み合わせて回路基板80を形成する製造工程を採用できる。このため、コイル線と端子部材とを接続した後に、端子部材を支持させ、さらに端子部材と基板とを接続する、といった煩雑な製造工程を経る必要がなく、製造工程を簡素化して製造コストを低減できる。
【0052】
図1に示すように、ハウジング10は、ステータケース30、ステータ70、ロータ50、第1ベアリング5A、第2ベアリング5B、および回路基板80を収容する。ハウジング10は、上側が開口する筒状である。ハウジング10の開口は、蓋体20によって覆われる。蓋体20は、複数の固定ネジ20Fによってハウジング10に固定される。蓋体20は、円板状である。本実施形態においてハウジング10は樹脂製であり、蓋体20は金属製である。
【0053】
ハウジング10は、底壁部13と、外周壁12と、内周壁14と、複数のコイル線ガイド部11と、コネクタ部19と、を有する。底壁部13は、軸方向と直交して配置され中心軸線Jを中心とする円板状である。底壁部13は、ステータ70、およびロータ50の下側に位置する。
【0054】
外周壁12は、中心軸線Jを中心とする円筒状である。外周壁12は、底壁部13の外縁から上側に延びる。外周壁12の上端部には、蓋体20が搭載される。外周壁12の外周面には、固定部12bが設けられる。固定部12bは、外周壁12の径方向外側に突出する。固定部12bは、周方向に間隔をあけて複数配置される。固定部には、蓋体20がネジ止めされる。また、外周壁12の外周面には、コネクタ部19が設けられる。
【0055】
内周壁14は、中心軸線Jを中心とする円筒状である。内周壁14は、底壁部13から上側に突出している。より詳細には、内周壁14は、底壁部13の径方向外周縁部から上側に突出している。内周壁14の直径は、外周壁12の直径よりも小さい。したがって、内周壁14は、外周壁12に径方向外側から囲まれる。また、内周壁14の上端部は、外周壁12の上端部よりも下側に位置する。内周壁14の上端部には、固定用突起14cが設けられる。固定用突起14cは、周方向に間隔をあけて複数配置されている。固定用突起14cには、回路基板80が固定される。すなわち、ハウジング10は、下側から回路基板80を支持する。
【0056】
コイル線ガイド部11は、内周壁14の上端部に設けられる。本実施形態のハウジング10には、コイル線73aのU相、V相、およびW相にそれぞれ対応して3個のコイル線ガイド部11が設けられる。3個のコイル線ガイド部11は、周方向に沿って配置される。
【0057】
図4は、本実施形態のコイル線ガイド部11の斜視図である。
図4に示すように、それぞれのコイル線ガイド部11には、一対の凹溝部11aが設けられる。すなわち、ハウジング10には、凹溝部11aが設けられる。一対の凹溝部11aは、周方向に並んで配置される。凹溝部11aは、径方向内側から径方向外側に延びる第1溝領域11pと、上下方向に延びる第2溝領域11qと、を有する。第1溝領域11pと第2溝領域11qとは、互いに繋がる。第1溝領域11pは、径方向内側に開口する第1端部11cを有する。第1端部11cは、コイル73と径方向に対向する。第2溝領域11qは、上側に開口する第2端部11dを有する。第2溝領域11qは、回路基板80の端子部材85に設けられる第1スリット86と上下方向に対向する。すなわち、凹溝部11aは、第1スリット86の下側で軸方向に沿って延びる。
【0058】
コイル線73aは、凹溝部11aに挿入される。コイル線73aは、凹溝部11aの内部で第1端部11cから第2端部11dまでL字状に延びる。コイル線73aは、第1端部11cにおいて凹溝部11aに径方向内側から挿入される。また、コイル線73aは、第2端部11dにおいて凹溝部11aから上側に延び出る。第2端部11dは、第1スリット86の直下に配置されるため、第2端部11dから上側に延び出るコイル線73aは、円滑に第1スリット86に挿入される。
【0059】
本実施形態によれば、コイル線73aを第1スリット86の下側でハウジング10に保持させることができる。これにより、第1スリット86内でコイル線73aが移動することを抑制でき、第1スリット86の内縁部86tとコイル線73aとの電気的な接続を安定させることができる。さらに、組立工程で、コイル線73aを凹溝部11aに挿入することで、コイル線73aを第1スリット86に挿入する手順において、コイル線73aの位置を安定させることができる。このため、コイル線73aと回路基板80との接続工程を容易に行うことが可能となる。
【0060】
<端子部材の変形例1>
図5は、第1実施形態に採用可能な変形例1の端子部材185を有する回路基板180の断面模式図である。本変形例の端子部材185は、上述の実施形態と比較して、主に内縁部187tに設けられる鋭利部187aの形状が異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
本変形例の鋭利部187aは、互いに向かい合う一対の内縁部187tの下端にそれぞれ位置する。一対の鋭利部187aは、それぞれ他方の鋭利部187aに向けて尖っている。また、一対の鋭利部187aは、スリット187の延びる方向に沿って延びる。互いに対向する鋭利部187aの先端同士の間の寸法は、コイル線73aの線径よりも小さい。
【0062】
コイル線73aは、互いに向かい合う鋭利部187a同士の間に圧入される。これにより、コイル線73aの絶縁被覆73cは、鋭利部187aに裂かれてコイル線73aと端子部材185とが電気的に接続される。本変形例の鋭利部187aは、上述の実施形態の鋭利部187aと同様に型鍛造によって成形できる。
【0063】
なお、ここでは、変形例として、内縁部187tの下端に配置される鋭利部187aを例示したが、内縁部187tの上端に配置される鋭利部であっても、本変形例と同様の効果を得ることができる。
【0064】
<端子部材の変形例2>
図6は、第1実施形態に採用可能な変形例2の端子部材285を有する回路基板280の斜視図である。本変形例の端子部材285は、上述の実施形態と比較して、主に第2スリット287の形状が異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
第1実施形態と同様に、本変形例の端子部材285は、一対の第1スリット86と、一対の第2スリット287と、第1スリット86の端部に位置する円形の一対の貫通孔88と、を有する。第1スリット86の一対の内縁部、および第2スリット287の一対の内縁部は、それぞれ互いに対向しコイル線73aを挟み込む。また、第1スリット86の一対の内縁部、および第2スリット287の一対の内縁部には、上述の実施形態と同様に鋭利部(図示略)が設けられる。
【0066】
一対の第1スリット86は、上述の実施形態と同様に、径方向に沿って平行に延びる。一方で、本変形例の一対の第2スリット287は、径方向と交差する方向に延びる。すなわち、一対の第2スリット287は、周方向に沿って延びる。一対の第2スリット287は、同一直線上に配置される。一対の第2スリット287の一方は、端子部材285の周方向一方側を向く外縁に開口する。また、一対の第2スリット287の他方は、端子部材285の周方向他方側を向く外縁に開口する。すなわち、一対の第2スリット287は、それぞれ周方向の反対側に開口する。第2スリット287は、第1スリット86の径方向外側に位置する。
【0067】
組立工程を行う作業者は、まず、コイル線73aを、下側から貫通孔88に挿入する。さらに、作業者は、コイル線73aを第1スリット86側に押し込むことで、コイル線73aを第1スリット86の一対の内縁部に挟み込ませる。次いで、作業者は、コイル線73aを下側に折り返し、コイル線73aを第2スリット287の開口部287c内に配置させる、さらに、作業者は、コイル線73aを第2スリット287内に押し込みコイル線73aを第2スリット287の一対の内縁部に挟み込ませる。これにより、コイル線73aは、回路基板280に接続される。
【0068】
本変形例によれば、1本のコイル線73aが挿入される第1スリット86と第2スリット287とが互いに交差する方向に延びる。このため、第1スリットと第2スリットが同方向に延びる場合と比較して、端子部材285が一方向に大型化することを抑制することができる。
【0069】
<端子部材の変形例3>
図7は、第1実施形態に採用可能な変形例3の端子部材385を有する回路基板380の斜視図である。本変形例の端子部材385は、上述の実施形態と比較して、主に、基板本体381に対する固定方法が異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
本変形例の端子部材385は、板状であり、基板本体381の板面に沿って配置される。端子本体部385aは、基板本体381に保持される。端子部材385は、基板本体381に埋め込まれていない。端子部材385は、基板本体381の下側に位置する。
【0071】
本変形例の端子部材385は、端子本体部385aと、4本の脚部385bと、を有する。端子本体部385aは、上述の実施形態の端子部材85と略同様の構成を有する。すなわち、端子本体部385aには、第1スリット86、および第2スリット87が設けられ、それぞれの一対の内縁部でコイル線73aを挟み込む。
【0072】
4本の脚部385bは、それぞれ端子本体部385aの外縁から延び出て上側に向けて折り曲げられている。脚部385bは、それぞれ基板本体381に設けられた接続孔381hに挿入され、半田付けされる。これにより、端子部材385は、基板本体381に保持されるとともに電気的に接続される。回路基板380の製造工程は、基板本体381、および端子部材385をそれぞれ製造する工程と、これらを組み付けて回路基板380を形成する工程と、を有する。本変形例によれば、端子部材385は、接続孔381hに脚部385bを挿入し接続することで、容易に基板本体381に対し位置決めすることができる。また、本変形例よれば、基板本体381と端子部材385とを予め組み合わせて回路基板380としてこれらを管理することができるため、部品管理に要するコストを低減することができる。また、本変形例によれば、半田付けを行うことなくコイル線73aと端子部材385とを接続することができる。このため、半田付けで接続する場合と比較して、半田の材料に要するコスト、および半田付け工程に要するコストを低減できる。さらに、半田付けを行う場合と比較して、接続工程に要する作業時間を短縮できる。
【0073】
また、本変形例によれば、1本のコイル線73aが挿入される第1スリット86、および第2スリット87が同方向に延びる。このため、コイル線73aを第1スリット86、および第2スリット87に挟み込まれる工程を簡素化することができる。
【0074】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態の回路基板480の一部を示す模式図である。本実施形態の端子部材485は、上述の実施形態と比較して、端子部材485とコイル線73aとの接続部の構成が主に異なる。なお、本実施形態の各構成のうち、回路基板480(特に端子部材485)に係る構成以外の構成は、第1実施形態と同一の構成を有しており、その説明を省略する。
【0075】
上述の実施形態と同様に、本実施形態の回路基板480は、基板本体481と端子部材485とを有する。基板本体481は、ステータ70の上側で中心軸線Jと直交する平面に沿って配置される。基板本体481は、中心軸線Jを中心とする略円形である。端子部材485は、基板本体481に埋め込まれて、基板本体481に保持される。端子部材485の一部は、基板本体481の外縁から突出し、基板本体481から露出する。端子部材485には、コイル線73aが接続される。
【0076】
本実施形態の端子部材485は、コイル線73aが挿入されるスリット487と、スリット487の幅方向外側に配置される一対の把持部489と、を有する。スリット487は、径方向に延びる。スリット487は、端子部材485の外縁に開口する開口部474cを有する。また、スリット487は、互いに対向してコイル線73aを挟む一対の内縁部487tを有する。把持部489は、スリット487に沿って延びる。すなわち、把持部489は、径方向に沿って延びる。
【0077】
本実施形態において、把持部489は、一対の内縁部487t同士の距離を狭める方向にかしめられている。これにより、一対の把持部489の先端部同士は、互いに近接する。また、スリット487の内縁部487tは、コイル線73aの外周面に押し付けられる。かしめ工程を経ることで、内縁部487tからコイル線73aの外周面に応力が付与されコイル線73aの絶縁被覆73cが裂かれて芯材が露出する。さらに内縁部487tとコイル線73aの芯材とが接触してコイル線73aと端子部材485との電気的な接続が確保される。なお、一対の把持部489の先端部同士は、離間していても、互いに接触していてもよい。
【0078】
本実施形態において、スリット487の一対の内縁部487tには、第1実施形態と同様に鋭利部87a(
図3参照)を設けることが好ましい。しかしながら、本実施形態の端子部材485は、かしめ工程を経ることでスリット487の内縁部487tがコイル線73aに押し付けられて絶縁被覆73cを裂くことができる場合には、必ずしも鋭利部87aを必要としない。また、かしめ工程において、内縁部487tが絶縁被覆73cを裂く作用が不十分である場合などには、予め絶縁被覆73cを除去した後にかしめ工程を行ってもよい。
【0079】
かしめ工程前の、スリット487の一対の内縁部487t同士の距離(すなわち、スリット487の幅寸法)は、コイル線73aの線径よりも若干小さいことが好ましい。この場合、スリット487内にコイル線73aを通すことで、コイル線73aの絶縁被覆73cを裂くことができる。なお、かしめ工程前の、スリット487の一対の内縁部487t同士の距離は、コイル線73aの線径と同じか若干大きくてもよい。この場合、スリット487内に、円滑にコイル線73aを挿入することができる。また、この場合においても、かしめ工程を行いスリット487の内縁部487tをコイル線73aに押し当てることで、コイル線73aの絶縁被覆73cを裂くことができる。
【0080】
端子部材485は、基板本体481の板面に沿って配置される板状である。端子部材485の外縁は、一対の第1外縁部485cと、第2外縁部485dと、第3外縁部485eと、を有する。一対の第1外縁部485cは、スリット487の幅方向両側に位置する。第2外縁部485dと第3外縁部485eとは、スリット487の長さ方向両側に位置する。
【0081】
第2外縁部485dは、スリット487の長さ方向一方側に位置し基板本体481から露出する。一方で、第3外縁部485eは、スリット487の長さ方向他方側に位置し基板本体481に埋め込まれる。スリット487の開口部474cは、第2外縁部485dに位置する。すなわち、スリット487は、第2外縁部485dに開口する開口部474cを有する。
【0082】
一対の第1外縁部485cは、スリット487の幅方向両側に位置する。第1外縁部485cは、第1領域485aと、第2領域485bと、段差領域485kと、を有する。第1領域485a、および第2領域485bは、それぞれ径方向に沿って延びる。段差領域485kは、周方向に沿って延びて、第1領域485aと第2領域485bとを繋ぐ。第1領域485aは、第2領域485bよりも径方向内側に位置する。すなわち、第1領域485aは、基板本体481側の領域である。第1領域485aの一部は、基板本体481に埋め込まれる。第2領域485bの全体は、基板本体481から露出する。第2領域485bは、第1領域485aよりも基板本体481から離れている。第2領域485bは、第1領域485aよりもスリット側へ近づいている。したがって、一対の第1外縁部485cのそれぞれの第1領域485a同士の距離は、それぞれの第2領域485b同士の距離よりも小さい。
【0083】
本実施形態の把持部489は、第2領域485bとスリット487の内縁部487tとの間に位置する。本実施形態の端子部材485によれば、把持部489の幅寸法が、把持部489の基端側の領域よりも小さくなっている。かしめ工程において、把持部489に力を付与することで、把持部489のみを塑性変形させてコイル線73aを挟ませることができる。さらに、把持部489のみを塑性変形させることで、端子部材485において把持部489よりも基板本体481側に位置する領域の変形を抑制することができる。これにより、端子部材485が基板本体481から離脱することや、端子部材485と基板本体481の接続する箇所が壊れることを抑制できる。把持部489のみを塑性変形させ、把持部489よりも基板本体481側における、端子部材485および基板本体481を壊すことを抑制できるため、端子部材485と、基板本体481の中間層81cおよび配線パターンと、の接続に悪影響を与えず、外部電源から供給された電力をコイル線73aを介してコイル73に供給することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、端子部材485が一対の把持部489を有する場合について説明したが、端子部材485は1つの把持部のみを有していてもよい。この場合、把持部はスリットに対し幅方向の一方側のみに設けられ、幅方向他方側に位置する部分に近づく方向にかしめられる。
【0085】
また、本実施形態では、第1外縁部485cの第2領域485bが、スリット487の延びる方向に沿って直線状に延びる場合について説明した。しかしながら、
図9に変形例の端子部材585として示すように、第2領域585bは、凹状部であってもよい。この場合においても、把持部589は、第2領域585bとスリット587の間に位置する。また、把持部589は、一対の内縁部同士の距離を狭める方向にかしめられることで局所的に塑性変形する。これにより、端子部材585は、スリット587の内縁部587tでコイル線73aを挟み込む。第2領域585bを凹状部とし、把持部589を局所的に塑性変形することで、より、把持部589よりも基板本体581側における、端子部材585および基板本体581を壊すことを抑制できるため、端子部材585と、基板本体581の中間層81cおよび配線パターンと、の接続に悪影響を与えず、外部電源から供給された電力をコイル線73aを介してコイル73に供給することができる。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0087】
本発明が適用される回転電機の用途は、特に限定されない。回転電機は、どのような機器に搭載されてもよい。回転電機は、減速機構を備えるアクチュエータに搭載されてもよい。
【0088】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 中心軸線を中心に回転するロータと、前記ロータと径方向に対向するステータと、前記ステータから延び出るコイル線が接続される回路基板と、を有し、前記回路基板は、板状の基板本体と、前記基板本体の板面に沿って配置され前記基板本体に保持される板状の端子部材と、を有し、前記端子部材は、前記コイル線が挿入されるスリットを有し、前記スリットは、互いに対向して前記コイル線を挟む一対の内縁部を有し、前記一対の内縁部の少なくとも一方には、他方の前記内縁部に向けて尖り前記スリットの延びる方向に沿って延びる鋭利部を有する、回転電機。
(2) 前記スリットは、前記コイル線を挟んで保持する保持部と、前記一対の内縁部の一方と他方との距離が、前記スリットの延びる方向において前記保持部に近づくに従い徐々に狭くなる導入部と、を有し、前記鋭利部の少なくとも一部は、前記保持部に位置する、(1)に記載の回転電機。
(3) 前記スリットは、前記端子部材の外縁に開口する開口部を有し、前記導入部は、前記開口部に設けられる、(2)に記載の回転電機。
(4) 前記端子部材には、前記スリットに繋がる円形の貫通孔が設けられ、前記導入部は、前記スリットと前記貫通孔との境界部に設けられる、(2)に記載の回転電機。
(5) 前記端子部材の少なくとも一部は、前記基板本体に埋め込まれる、(1)~(4)の何れか一項に記載の回転電機。
(6) 前記基板本体は、前記ステータの軸方向一方側で前記中心軸線と直交する平面に沿って配置され、前記端子部材は、前記基板本体の外縁から径方向外側に突出する。(1)~(5)の何れか一項に記載の回転電機。
(7) 前記スリットは、径方向に沿って延びる、(6)に記載の回転電機。
(8) 前記スリットは、径方向と交差する方向に沿って延びる、(6)に記載の回転電機。
(9) 前記端子部材は、複数の前記スリットを有し、1つの前記コイル線は、複数の前記スリットの前記一対の内縁部に挟まれる、(1)~(8)の何れか一項に記載の回転電機。
(10) 軸方向他方側から前記回路基板を支持する支持部材を備え、前記支持部材には、前記スリットの軸方向他方側で軸方向に沿って延びる凹溝部が設けられ、前記コイル線は、前記凹溝部に挿入される、(6)に記載の回転電機。
(11) 前記一対の内縁部の一方から他方までの距離は、前記コイル線の線径よりも小さい、(1)~(10)の何れか一項に記載の回転電機。
(12) 中心軸線を中心に回転するロータと、前記ロータと径方向に対向するステータと、前記ステータから延び出るコイル線が接続される回路基板と、を有し、前記回路基板は、板状の基板本体と、前記基板本体の板面に沿って配置され前記基板本体に保持される板状の端子部材と、を有し、前記端子部材は、前記コイル線が挟まれるスリットと、前記スリットの幅方向外側に配置される把持部と、を有し、前記スリットは、互いに対向して前記コイル線を挟む一対の内縁部を有し、前記把持部は、前記一対の内縁部同士の距離を狭める方向にかしめられている、回転電機。
(13) 前記端子部材の外縁は、前記スリットの幅方向両側に位置する一対の第1外縁部と、前記スリットの長さ方向一方側に位置する第2外縁部と、前記スリットの長さ方向他方側に位置し前記基板本体に埋め込まれる第3外縁部と、を有し、前記スリットは、第2外縁部に開口する開口部を有し、前記第1外縁部は、前記基板本体側に位置する第1領域と、前記第1領域よりも前記基板本体から離れ前記第1領域よりも前記スリット側へ近づく第2領域と、を有し、前記把持部は、前記第2領域の少なくとも一部と前記内縁部との間に位置する、(12)に記載の回転電機。
【符号の説明】
【0089】
1…回転電機、10…ハウジング(支持部材)、11a…凹溝部、32a,88…貫通孔、50…ロータ、70…ステータ、73…コイル、73a…コイル線、80,180,280,380,480…回路基板、81,381,481…基板本体、81e,85e…外縁、85,185,285,385,485,585…端子部材、86…第1スリット(スリット)、86a,87a,187a…鋭利部、86t,87t,187t,487t,587t…内縁部、87…第2スリット(スリット)、87c,287c,474c…開口部、187,487,587…スリット、485a…第1領域、485b,585b…第2領域、485c…第1外縁部、485d…第2外縁部、489,589…把持部、J…中心軸線