(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119447
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】窯業系化粧板
(51)【国際特許分類】
B32B 13/12 20060101AFI20240827BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20240827BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240827BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20240827BHJP
E04F 13/14 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B32B13/12
B32B33/00
B05D7/00 C
B05D5/00 Z
E04F13/14 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026352
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000126609
【氏名又は名称】株式会社エーアンドエーマテリアル
(71)【出願人】
【識別番号】598044442
【氏名又は名称】萬代特殊合板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米倉 俊博
(72)【発明者】
【氏名】河崎 英治
(72)【発明者】
【氏名】川口 恭弘
【テーマコード(参考)】
2E110
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】良好な抗ウイルス性を有し、クリア塗膜が厚くならずに不燃性を確保し、かつ外観の良好な窯業系化粧板を提供すること。
【解決手段】窯業系化粧板の少なくとも片側の面に着色層及びクリア層を有し、クリア層は最表層とその下層の2層の紫外線硬化クリア塗膜で形成されている化粧板であって、
最表層にのみ抗菌剤又は抗ウイルス剤を含有し、最表層の塗布量が固形分として4.4~10.9g/m2であり、クリア層全体の塗布量が固形分として10.9~27.2g/m2であり、 最表層の塗布量(a)とクリア層全体の塗布量(b)の比(a/b)が0.28~0.64である窯業系化粧板。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窯業系化粧板の少なくとも片側の面に着色層及びクリア層を有し、クリア層は最表層とその下層の2層の紫外線硬化クリア塗膜で形成されている化粧板であって、
最表層にのみ抗菌剤又は抗ウイルス剤を含有し、
最表層の塗布量が固形分として4.4~10.9g/m2であり、
クリア層全体の塗布量が固形分として10.9~27.2g/m2であり、
最表層の塗布量(a)とクリア層全体の塗布量(b)の比(a/b)が0.28~0.64である窯業系化粧板。
【請求項2】
前記最表層中の抗菌剤又は抗ウイルス剤の含有量が、0.5質量%以上10質量%以下である請求項1記載の窯業系化粧板。
【請求項3】
クリア層が、アクリル系樹脂紫外線硬化クリア塗膜である請求項1記載の窯業系化粧板。
【請求項4】
クリア層がロール塗装により塗装されており、60度光沢値が、クリア層のロール塗装方向に対して、平行方向が4%以上15%以下であり、直交方向が3%以上14%以下である請求項1記載の窯業系化粧板。
【請求項5】
最表層の下層のクリア層をロール塗装後に紫外線を照射して当該下層のクリア層を半硬化させた後、最表層のクリア層をロール塗装してから紫外線を照射してクリア層全体を硬化させる工程を有する、請求項1~4のいずれか1項記載の窯業系化粧板の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス性が付与された窯業系化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルや病院、文教施設といった施設の内装用建材には、好適な外観とともに、万一の火災に備えての不燃性能が求められる。このため、本用途には不燃性のケイ酸カルシウム板に各種の塗装を行い、一定の不燃性能を確保した化粧板が広く用いられている。化粧板には従来から意匠性や平滑性などとともに、汚れ防止や耐薬品性などの機能付与が求められてきた。しかし、これらの要望が高度化するにつれて、塗装工程が増加し、併せて塗膜全体も厚くなる傾向となっている。
さらに近年では、新型コロナウイルスの拡大によって、化粧板に抗ウイルス性能の追加も求められており、化粧板表面層に抗ウイルス剤を導入した化粧板の開発が行われている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-88586号公報
【特許文献2】特許第7092475号公報
【特許文献3】特開2020-131568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、抗ウイルス剤と塗料を混合した塗料を用いて上塗り塗装を行った加飾化粧板では、塗膜表面付近の抗ウイルス剤は抗ウイルス性能に寄与するが、塗膜の内部に埋没している抗ウイルス剤は、化粧板の抗ウイルス性能に寄与できない。
抗ウイルス剤を最表層塗膜から露出させて抗ウイルス作用を発現させる状態とするためには、塗料中に抗ウイルス剤を適切な量添加する必要がある。クリア塗装仕上げの化粧板では、抗ウイルス剤の添加量が増えるにつれて、クリア塗膜に変色や濁りが生じやすくなる。さらにクリア塗膜が厚く塗られている場合は、変色や濁りが視認しやすい状態となって意匠性が低下する。
また化粧板の塗膜層が厚い場合には、可燃物である塗膜量が増えるために化粧板としての不燃性が得られない。特にクリア塗膜層は樹脂成分が多いことから、クリア塗膜層の不燃性に悪影響がある。逆に上塗り塗膜が不足している場合は、下塗り面の隠蔽性が不足して、塗装外観に凹凸が生じたり、光沢ムラなど外観が劣る状態となる。
従って、本発明の課題は、良好な抗ウイルス性を有し、クリア塗膜が厚くならずに不燃性を確保し、かつ外観の良好な窯業系化粧板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は、前記課題を解決すべく種々検討したところ、クリア層のうちの最表層にのみ抗菌剤又は抗ウイルス剤を含有させ、かつ当該最表層の塗布量及びクリア層全体の塗布量を一定量及び一定比率とすることにより、抗菌剤又は抗ウイルス剤の使用量を低減しながら、十分な抗菌抗ウイルス性能が得られるとともに、高い不燃性能を維持し、外観の良好な窯業系化粧板が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は次の発明[1]~[5]を提供するものである。
[1]窯業系化粧板の少なくとも片側の面に着色層及びクリア層を有し、クリア層は最表層とその下層の2層の紫外線硬化クリア塗膜で形成されている化粧板であって、
最表層にのみ抗菌剤又は抗ウイルス剤を含有し、
最表層の塗布量が固形分として4.4~10.9g/m2であり、
クリア層全体の塗布量が固形分として10.9~27.2g/m2であり、
最表層の塗布量(a)とクリア層全体の塗布量(b)の比(a/b)が0.28~0.64である窯業系化粧板。
[2]前記最表層中の抗菌剤又は抗ウイルス剤の含有量が、0.5質量%以上10質量%以下である[1]記載の窯業系化粧板。
[3]クリア層が、アクリル系樹脂紫外線硬化クリア塗膜である[1]又は[2]記載の窯業系化粧板。
[4]クリア層がロール塗装により塗装されており、60度光沢値が、クリア層のロール塗装方向に対して、平行方向が4%以上15%以下であり、直交方向が3%以上14%以下である[1]~[3]のいずれかに記載の窯業系化粧板。
[5]最表層の下層のクリア層をロール塗装後に紫外線を照射して当該下層のクリア層を半硬化させた後、最表層のクリア層をロール塗装してから紫外線を照射してクリア層全体を硬化させる工程を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の窯業系化粧板の製造法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の窯業系化粧板は、抗菌剤又は抗ウイルス剤がクリア層の最表層部にのみ存在するため、抗菌剤又は抗ウイルス剤の含有量が少なくても優れた抗菌抗ウイルス性能を発揮し、クリア層全体の塗布量も抑制できたことから、高い不燃性能を有し、かつ外観も良好である。従って、本発明の化粧板は、オフィスビル、病院、文教施設、高齢者施設などの内装用化粧板として特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の化粧板の一態様は、窯業系化粧板の少なくとも片側の面に着色層及びクリア層を有し、クリア層は最表層とその下層の2層の紫外線硬化クリア塗膜で形成されている化粧板であって、最表層にのみ抗菌剤又は抗ウイルス剤を含有する窯業系化粧板である。
さらに、本発明の化粧板の好ましい一態様は、窯業系化粧板の少なくとも片側の面に着色層及びクリア層を有し、クリア層は最表層とその下層の2層の紫外線硬化クリア塗膜で形成されている化粧板であって、最表層にのみ抗菌剤又は抗ウイルス剤を含有する窯業系化粧板であり、(1)前記最表層の塗布量が固形分として4.4~10.9g/m2であり、(2)クリア層全体の塗布量が固形分として10.9~27.2g/m2であり、(3)最表層の塗布量(a)とクリア層全体の塗布量(b)の比(a/b)が0.28~0.64である窯業系化粧板である。
【0009】
本発明の化粧板は、窯業系化粧板であり、用いられるのは窯業系化粧板の基板(窯業系基板、以下単に基板ともいう)である。窯業系基板としては、住宅等の壁面を形成する繊維強化セメント板(けい酸カルシウム板を含む)、木質系セメント板、木毛セメント積層板、火山性ガラス質複層板、押し出し成形セメント板、スラグせっこう板、軽量気泡コンクリート板、ガラス板、セラミックス板、フライアッシュなどの活性フィラーとけい酸アルカリ溶液により硬化反応させるジオポリマー硬化板等が挙げられる。これらの基板のうち、前記の施設の内装用として用いられる繊維強化セメント板がより好ましい。
【0010】
これらの基板は、例えばマトリックスを形成するための主原料としてポルトランドセメント等の水硬性セメントを使用し、繊維原料として石綿以外の繊維を使用するとともに、必要に応じてワラストナイトや炭酸カルシウム粉末等の混和材を原料として使用する基板であり、具体的にはJIS A 5430に規定された繊維強化セメント板等の基板である。特に、マトリックスを形成するための原料として、石灰質原料とけい酸質原料とを用い、養生工程においてオートクレーブ養生を行ってなる繊維強化セメント板の一種である0.8けい酸カルシウム板や1.0けい酸カルシウム板は、柔軟性に優れた基板であり、強度が高く吸水による長さ変化率が小さいので、本発明の窯業系化粧板の基板として好適である。
【0011】
前記繊維材料としては、例えばパルプ、合成パルプ、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維、鋼繊維(スチール線繊維)、アモルファス金属繊維等の金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維(カーボンファイバー)、ロックウール繊維、ウィスカー等の無機繊維などが挙げられるが、本発明では、前記のオートクレーブ養生を採用した場合であっても、化粧板の補強性及び靭性を向上できるという観点から、パルプを使用する場合が好ましい。なお、ここでいうパルプとは、木材などの植物原料を機械的または化学的に処理してセルロースを取り出した状態のものであり、いわゆるセルロースパルプを指す。
繊維強化セメント板中の繊維、特にパルプ等の有機繊維の含有比率は、マトリックスによっても異なるが、強度及び不燃性の確保の点から、5~9質量%であることが好ましく、6~8質量%であるのがさらに好ましい。パルプ等の有機繊維の含有比率が少ないと化粧板の機械的強度が低下し、熱負荷、乾燥、炭酸化や衝撃による割れを発生しやすくなる。逆にパルプ等の有機繊維の含有率が多いと、不燃性を維持することが困難となる。
【0012】
水硬性セメントとしては、当業界で一般的に用いられているものであればよく、例えばポルトランドセメントが挙げられる。
必要に応じて用いられる各種添加材としては、当業界で一般的に用いられているものが挙げられ、とくに制限されないが、例えばワラストナイト、マイカ、炭酸カルシウム等の粉末、繊維強化セメント板やせっこうボードの廃材粉末等が挙げられる。なお、オートクレーブ養生を行う場合は、セメント中の石灰との水熱反応硬化によりさらに強度を上げる点から、けい酸質原料、例えば粉末硅石等の結晶質シリカ、フライアッシュ等の非晶質シリカ等を添加するとともに、必要に応じて石灰質原料、例えば生石灰、消石灰等も追加して、マトリックス成分のCaO/SiO2のモル比が0.7~1.2となるように調整して用いるのが好ましい。
【0013】
本発明において、基板の厚さは、耐衝撃性、軽量性、施工性の点から、3~12mmが好ましく、4~8mmであるのがさらに好ましい。
【0014】
また本発明において、基板のかさ密度は、軽量性、機械的強度、施工性の点から、0.6~1.8g/cm3が好ましく、0.6~1.2g/cm3であるのがさらに好ましい。
【0015】
また本発明において、基板の総発熱量は、不燃性の点から、5MJ/m2以下であるのが好ましく、4.7MJ/m2以下であるのがさらに好ましい。
【0016】
なお、本発明において、基板又は化粧板の厚さは、JIS A 5430:2013、9.2.2項b)に従い測定した値である。かさ密度は、JIS A 5430:2013、9.5項に従い測定した値である。
基板の総発熱量は、JIS A 5430:2013、附属書JAに従い測定した値である。
【0017】
本発明の窯業系基板の少なくとも片側の面には、少なくとも着色層及びクリア層が形成されている。当該着色層及びクリア層は、窯業系基板の片側の面だけに形成されていてもよく、両面に形成されていてもよい。着色層が基板側であり、クリア層がその外側である。
また、着色層の内側には、シーラー層及び下塗り層が、この順で形成されていてもよい。
【0018】
着色層は、樹脂及び顔料を含む層である。着色層の膜厚は5~40μmが好ましく、10~40μmがより好ましく、15~35μmがさらに好ましい。
本発明の窯業系化粧板の着色層は、無機系の着色顔料を含み、着色層形成後の光沢度が30~60の範囲であるのが、化粧板の外観及び上質なマット感を得る観点で好ましい。より好ましい光沢度は30~50である。ここで、光沢度はJIS Z 8741:1997に準拠した光沢度計により測定した60度鏡面光沢の値である。
【0019】
着色層に含まれる着色顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、黄土、酸化クロム緑、紺青、カーボンブラック、鉄黒などが挙げられ、これらのうちから選ばれる1種又は2種以上の無機系着色顔料を組み合わせて用いるのがより好ましい。また、必要に応じ有機顔料を併用することもできる。
着色層を形成する塗料としては、前記の着色顔料を有する、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂等の樹脂を含有する塗料を用いるのが好ましく、中でもアクリルウレタン樹脂塗料が好適であり、2液硬化型アクリルウレタン樹脂塗料を用いるのがより好ましい。また、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、塩化ビニル樹脂塗料、塩化ビニリデン樹脂塗料、アクリルシリコーン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料等の塗料を用いてもよい。
より好ましい着色層としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルウレタン樹脂から選ばれる樹脂と無機系の着色顔料を含み、光沢度が30以上60以下である着色層が挙げられる。
【0020】
着色層の形成方法は、特に限定されるものではなく、スプレー法、ロールコーター法、フローコーター法、静電塗装法、粉体塗装法、バーコーター塗装法、グラビアコーター塗装法、グラビアオフセット塗装法、ナイフコーター塗装法、ディップコート塗装法、回転霧化塗装法、エアレス霧化塗装法、真空塗装機法、インクジェット塗装法、低温溶射法、フィルム転写塗装法、刷毛塗り塗装法、こて塗り塗装法、ヘラ塗り塗装法、スクリーン印刷塗装法、スタンプ印刷塗装法等、通常の塗装において使用される公知の方法から選定でき、中でもロールコーターまたはフローコーターによる塗布が適しており、2回以上に分けて重ね塗りする場合にはこれらを適宜組み合わせて用いてもよい。また着色層が完全に硬化する前に、着色層と固着し難い特性や材質のフィルムやシートを着色層の上に重ねてフィルムの上からローラープレスや平板プレス等により着色層を押さえて着色層を平滑とした後、静置してフィルムやシートを剥がせる程度まで着色層の硬化や反応が進んでからフィルムやシートを着色層から除き、着色層を平滑面としてもよい。さらにこのとき賦形フィルムや賦形シート、あるいはローラープレスのロール表面に微細な凹凸形状のものを用いたり、平板プレスのプレス面に微細凹凸を形成したものを用いたり、着色層が塗装されたワークをフィルムやシートを介しながら複数枚重ねて積載することによって、基材裏面の凹凸形状を、フィルムやシートによって着色層の表面にわずかになだらかな形状としながら転写させ微細な凹凸を形成して、光沢度を30~60となるように調整することもできる。これらのフィルムやシートは次工程のクリア塗装前には着色層から取り除く。
また硬化した後の着色層にブラシ研磨やバフ研磨などを行うこともできる。着色層の研磨を行うと着色層の塗装工程で付着した異物を取り除くことができる。またブラシ研磨やバフ研磨によって異物が取り除かれた後に着色層に残る微細な凹部や、研磨痕跡の微細な凹凸は、クリア塗膜層との密着性を向上させる。この研磨痕跡の調整によって光沢度を30~60となるように調整してもよい。
【0021】
本発明においては、着色層の成分中の有機固形分量は、基板の単位面積(m2)当たり5~35gとなるように設定するのが好ましく、さらに10~30gとするのがより好ましい。
【0022】
本発明の化粧板のクリア層は、最表層とその下層の2層の紫外線硬化クリア塗膜で形成され、最表層にのみ抗菌剤又は抗ウイルス剤を含有する。
ここで、クリア層を形成するための塗料は、例えば、アクリルシリコーン系、ウレタン系、アクリル系、アクリルウレタン系等の樹脂等からなる無色透明樹脂と、他の添加剤として例えば湿潤分散剤、沈降防止剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤等、溶剤として例えば酢酸ブチル、酢酸エチル等を含むもの等、粘度調整の添加剤として塗料樹脂のモノマーやオリゴマーが挙げられる。中でも耐候性や耐汚染性に優れるアクリル系樹脂を使用したクリア塗料とするのが好ましく、アクリル系樹脂紫外線硬化型塗料が特に好ましい。この塗料を用いることにより、アクリル系樹脂紫外線硬化クリア塗膜が形成できる。
【0023】
抗菌/抗ウイルス剤の種類としては、無機系の抗菌/抗ウイルス剤を使用しても、有機系の抗菌/抗ウイルス剤を使用してもよい。
有機系の抗菌/抗ウイルス剤としては、塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウムなどの第4級アンモニウム塩、カチオンポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやビニルアルキルエーテルなどのエーテル系、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテルなどのジフェニルエーテル系抗ウイルス剤、クロルキシレノールやトリクロサンなどのフェノール系、トリクロカルバンなどのアニリド系、ジンクピリチオンなどのピリジン系、塩化ベンゼトニウムや塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなどの陽イオン界面活性剤系、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン系界面活性剤系、塩酸アルキルジ(アミノエチル)グリシンやアルキルアミンオキシドなどの両性界面活性剤系、脂肪酸モノグリセリドやアルキルグリコシドなどの非イオン系界面活性剤系、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアナイド系、ブロノポールやブチレングリコールなどのアルコール系、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのエーテル系、トリクロロカルバニリドなどのアニリド系、3-ヨード-2-プロピニルN-ブチルカルバメートなどのヨウ素系、チオシアノ酢酸イミダゾールなどのイミダゾール系、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンなどのイソチアゾロン系、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリスエチル-s-トリアジンなどのトリアジン系、テトラクロロイソフタロニトリルなどのニトリル系、ジクロフルアニドやトリフルアニドなどのスルファミド系、ジンクオマジンやゾジウムオマジンなどの有機金属系、ヒノキチオールなどのトロポロン系、ラウリシジンなどのエステル系の抗菌/抗ウイルス剤などが挙げられる。
無機系の抗菌/抗ウイルス剤は、不燃性を確保しやすいため各種施設の壁面や家具、手すり等への適用や、各種施設や駅、地下街等の床材へ適用する際にも好適に使用できる。
無機系の抗菌/抗ウイルス剤としては、金属イオン担持体や金属酸化物等を好ましく使用できる。なかでも金属イオン担持体は、好適な透明性を得やすいため好ましい。金属イオン担持体の金属イオンとしては、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン等を使用できる。これら金属イオンを担持させる担持体としては、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸チタニウム、ガラス、金属等のイオン交換体を例示できる。また、金属酸化物としては、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化ジルコニウム等を例示できる。
これらの抗菌/抗ウイルス剤としては、各種塗料会社が販売している抗菌/抗ウイルス剤のマスターバッチ、例えばWILMISH(DIC株式会社)や、MP-VP22(富士ケミカル株式会社)、ノバロン(東亜合成株式会社)、ZEOMIC(株式会社シナネンゼオミック)、ユービマイルド抗ウイルスペースト(ナトコ株式会社)等を使用することができる。
【0024】
クリア層中の最表層の塗布量は、抗菌/抗ウイルス性能、不燃性、及び外観の観点から、固形分として4.4~10.9g/m2が好ましく、4.5~10.8g/m2がより好ましく、5.0~10.5g/m2がさらに好ましい。
クリア層全体の塗布量の固形分は、不燃性、及び外観の観点から、10.9~27.2g/m2が好ましく、10.9~27.0g/m2がより好ましく、11.0~17.4g/m2がさらに好ましい。
最表層の塗布量(a)とクリア層全体の塗布量(b)の比(a/b)は、抗菌/抗ウイルス性能、不燃性、及び外観の観点から、0.28~0.64であるのが好ましく、0.31~0.58であるのがより好ましく、0.38~0.55であるのがさらに好ましい。
最表層の塗布量と、クリア層全体の塗布量と、それらの比(a/b)とを、上記の範囲に調整することにより、抗菌/抗ウイルス剤含有化粧板の抗菌抗/ウイルス性能、不燃性、及び外観を良好なものとすることができる。
【0025】
最表層中の抗菌剤又は抗ウイルス剤の含有量は、抗菌/抗ウイルス性能、不燃性、及び外観の観点から、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、0.7質量%以上7.0質量%以下がより好ましく、0.8質量%以上5.0質量%以下が好ましい。
【0026】
また、クリア層全体の膜厚は、不燃性及び外観の観点から、8.5~30μmが好ましく、9~20μmがより好ましく、9~12μmがよりさらに好ましい。
【0027】
クリア層を、抗菌剤又は抗ウイルス剤を含有する最表層と、抗菌剤又は抗ウイルス剤を含有しない下層との2層に形成するには、着色層に、まず紫外線硬化型塗料を塗布して完全硬化又は不完全硬化した後に、抗菌剤又は抗ウイルス剤を含有する紫外線硬化型塗料を塗布して硬化させることにより行うことができる。
【0028】
クリア層には、前記紫外線硬化型塗料、抗菌剤、抗ウイルス剤及び前記添加剤以外に、無機質粒子、例えば非晶質シリカ微粒子を含有させてもよい。用いられる無機質粒子の体積平均粒径は、1~10μmが好ましく、5~10μmがより好ましい。これらの無機質粒子のクリア層中の含有量は、1~10質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましい。無機質粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折法により測定することができる。
【0029】
クリア層を形成するための塗布方法は、フローコーター塗装法、ロールコーター塗装法、スプレーコーター塗装法、静電塗装法、粉体塗装法、バーコーター塗装法、グラビアコーター塗装法、グラビアオフセット塗装法、ナイフコーター塗装法、ディップコート塗装法、回転霧化塗装法、エアレス霧化塗装法、真空塗装機法、インクジェット塗装法、低温溶射法、フィルム転写塗装法、刷毛塗り塗装法、こて塗り塗装法、ヘラ塗り塗装法、スクリーン印刷塗装法、スタンプ印刷塗装法、等の既存の方法が適用できる。このうち、本発明の化粧板においては、ロール塗装を採用することが好ましい。
本発明の化粧板においては、クリア層をロール塗装で構成する前記2層構成とすること、及び下層のクリア層を形成後、半硬化させてから最表層のクリア層を塗装し、その後に全体を硬化させることにより、下層側の塗膜の筋状痕跡の山部と谷部に対して、最表層の(筋状痕跡間隔の異なる)微細な筋状痕跡を積層することができ、塗装面の光沢均一化と、低光沢化を行うことができる。また併せてクリア層を2回に分けてロール塗装を行うことで、1回のロール塗装で形成したクリア層の場合に生じるロール塗装の塗斑(ムラ)で生じる光沢の部分的なばらつきを解決することができる。
このようなロール塗装を採用することにより、60度光沢値が、クリア層のロール塗装方向に対して、平行方向が4%以上15%以下であり、直交方向が3%以上14%以下であるクリア層を形成することができる。ここで、60度光沢値は、JIS Z8741-1997「鏡面光沢度測定方法」の60度鏡面光沢測定方法に準じる光沢度測定装置を用いて測定することができる。具体的には株式会社堀場製作所製ハンディ光沢計IG-331の測定角60度を用いて測定することができる。
前記ロール塗装を採用することにより、本発明の化粧板は、縦方向と横方向の光沢値を安定してわずかに異なる状態とすることができる。この特性により壁面や天井面の施工時に、1種類の化粧板を用い、方向を変えて施工することにより、斜光で光沢差が模様として浮かび、正面からは視認できないが、斜光では視認できる意匠性を付与できる。
【0030】
また、本発明の窯業系化粧板においては、着色層とクリア層の間に印刷層を設けることもできる。印刷層を設けることにより、化粧板に木目調あるいは石目調といった模様を付与することができる。印刷を施す方法としては、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、凸版式印刷、パット印刷等既存の方法を適用することができる。
【0031】
基板と下塗り層の間には、シーラー層を設けるのが好ましい。シーラー層を設けることにより、基板の表層が強化されるとともに、表面へのアルカリの溶出が防止でき、その上層となる下塗り層との密着性も向上する。
シーラー層は、公知のシーラーを用いて形成させることができ、例えば湿気硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の硬化性樹脂を用い、基板の表面に塗布し硬化させること等により行われる。シーラーは基板への含浸性が良く、高不揮発分であり、かつ、基板中の水分や雰囲気の湿気と反応して三次元架橋し、耐水性能等が良いポリイソシアネート又はポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物である遊離イソシアネート基を有するプレポリマー及び酢酸ブチルのような溶剤を主成分とする湿気硬化型ウレタン系のものが好適である。また、化粧板としての黄変が問題となる場合には、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)等の脂肪族イソシアネート、IPDI(イソホロンジイソシアネート)等の脂環族イソシアネートを使用することが好ましい。なお、昨今のVOC対策の観点から溶剤を含んでいない無溶剤シーラーまたは水系シーラーを使用することや、ケイ酸リチウムあるいはケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩系シーラー等の無機シーラーや、テトラエトキシシランやテトラメトキシシランなどを主成分とするシラン化合物系シーラーも使用できる。またこれらを複数組み合わせてシーラー層を形成してもよい。
【0032】
本発明の窯業系化粧板は、シーラー層表面上に下塗り層を有するのが好ましい。下塗り層を形成することにより、基板の表面に存在する大小の凹凸部や、空隙部が塗料により充填され、凹凸感、塗料の吸い込み斑による光沢・色のばらつき感が抑制される。また、化粧板にピンホールのような不良が生じる可能性も減らすことができる。
下塗り層を形成するための塗料は、表面平滑性、耐薬品性、塗膜密着性、研磨加工性、塗膜硬度、塗装容易性、クラック防止性の点から、不飽和ポリエステル系塗料が好ましく、具体的にはエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、フタル酸ジアリルエステルなどのアリル系不飽和ポリエステル、無水マレイン酸やフマル酸などの不飽和二塩基酸とグリコール類との重縮合によるマレイン酸系不飽和ポリエステル、官能基としてカルボキシル基や水酸基を持つポリエステルモノアクリレート、アクリル酸と2塩基酸と2アルコールから得られるポリエステルジアクリレート、3価以上の多価アルコールと2塩基酸とアクリル酸から得られるポリエステルポリアクリレート等のポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートオリゴマー、エポキシオリゴマー等のオリゴマー類、アクリルポリエーテル、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。また、下塗り層を形成するための塗料は紫外線硬化型塗料とすることが、塗布容易性や、塗膜の硬化速度が早い点、塗膜の被研削性や耐久性、基板や上塗り塗料との密着性に優れることから好ましい。
【0033】
本発明の化粧板は、コーンカロリーメーター発熱性試験による総発熱量が8MJ/m2以下であるのが好ましい。この要件を満たすことにより、JIS A 5430:2013、附属書JAで規定する発熱性1級(加熱時間20分)を満たし、高い不燃性を示す。さらに好ましい総発熱量は、7.2MJ/m2以下である。
【実施例0034】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されない。
【0035】
実施例1~12及び比較例1~6
(1)繊維強化セメント板(基板)
基板として、ハイラック((株)エーアンドエーマテリアル製)を使用した。ハイラックは、JIS A 5430の表1において「けい酸カルシウム板 タイプ2 0.8けい酸カルシウム板」に該当する繊維強化セメント板である。なお、実施例及び比較例において使用したハイラックは、プラテン研磨機を用いて番手100番の研磨紙で研磨することにより、あらかじめ化粧層を形成する面(以下表面)を平滑にしたものを使用した。
【0036】
(2)各層の形成
各塗膜層は、次の塗料と方法により形成した。なお、クリア層に用いた塗料に含まれる抗菌/抗ウイルス剤の含有率は1質量%として、以下に示す方法により化粧板を作成し、試験体とした。また、着色層の形成までは同じ方法とし、クリア層形成前の表面状態としたものを参考例の試験体とした。
(a)シーラー層
(株)コニシ KU-663(ポリウレタン樹脂系無溶剤型)
基板の表面に有機固形分が約60g/m2となるようロールコーターを用いて塗布した。
(b)下塗り層
下塗り1回目:大日本塗料(株)ルーセン1(変性エポキシ樹脂系紫外線硬化型)
シーラー層の上層に有機固形分が約30g/m2となるようロールコーターを用いて塗布した。
下塗り2回目:大日本塗料(株)ルーセン2(変性エポキシ樹脂系紫外線硬化型) 1回目の下塗り塗料を紫外線照射である程度硬化させた後、有機固形分量が約35g/m2となるようロールコーターを用いて塗布し、紫外線を照射して下塗り層全体を硬化させてから、ワイドベルトサンダーを用いて研磨材番手400番の研磨ペーパーで研磨して平滑な下塗り層とした。
(c)着色層
ナトコ(株)ユービマイルド 1AホワイトFC色(アクリルウレタン樹脂系塗料)
下塗り層の上層に有機固形分が約20g/m2となるようフローコーターを用いて塗布したのち、常温でセッティング後、雰囲気温度110℃にて0.5hr乾燥して着色層を形成した。
【0037】
(d)クリア層
ナトコ(株)社のアクリル系紫外線硬化型塗料ISTを使用して着色層の上層にナチュラルロールコーターを用いて塗布した後、塗布した塗料が半硬化状態となるように紫外線を照射して1層目のクリア層を形成した。次に抗ウイルス剤含有率が1質量%となるように添加して抗ウイルス性能を付与したISTクリア塗料(シリカ(平均粒径9μm)約4質量%含有)を用いて、半硬化した1層目のクリア層の上層に、ナチュラルロールコーターを用いて最表層である2層目を塗装した。このとき1層目と2層目は同じ塗装方向とした。2層目の塗装後に、45℃で1分のセッティングを行い、次に紫外線を照射してクリア層の塗料を完全に硬化させて化粧板のクリア層を形成した。
【0038】
実施例1
かさ密度0.8g/cm3のけい酸カルシウム板の表面にシーラー層、下塗り層、着色層の順に塗膜を形成した後、着色層の上からクリア層の1層目の塗布量が5.5g/m2で、2層目の塗布量が5.5g/m2となるようにクリア層を形成して化粧板を作製した。
【0039】
実施例2
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が8.7g/m2で2層目の塗布量が5.4g/m2の化粧板を作製した。
【0040】
実施例3
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が10.9g/m2で2層目の塗布量が5.4g/m2の化粧板を作製した。
【0041】
実施例4
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が12.0g/m2で2層目の塗布量が5.4g/m2の化粧板を作製した。
【0042】
実施例5
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が14.2g/m2で2層目の塗布量が5.4g/m2の化粧板を作製した。
【0043】
実施例6
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が5.4g/m2で2層目の塗布量が6.5g/m2の化粧板を作製した。
【0044】
実施例7
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が5.4g/m2で2層目の塗布量が7.6g/m2の化粧板を作製した。
【0045】
実施例8
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が8.7g/m2で2層目の塗布量が8.7g/m2の化粧板を作製した。
【0046】
実施例9
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が5.4g/m2で2層目の塗布量が9.8g/m2の化粧板を作製した。
【0047】
実施例10
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が10.9g/m2で2層目の塗布量が10.9g/m2の化粧板を作製した。
【0048】
実施例11
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が16.3g/m2で2層目の塗布量が10.9g/m2の化粧板を作製した。
【0049】
実施例12
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が6.5g/m2で2層目の塗布量が4.4g/m2の化粧板を作製した。
【0050】
比較例1
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が6.5g/m2で2層目の塗布量が3.3g/m2の化粧板を作製した。
【0051】
比較例2
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が14.2g/m2で2層目の塗布量が14.2g/m2の化粧板を作製した。
【0052】
比較例3
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が15.2g/m2で2層目の塗布量が4.4g/m2の化粧板を作製した。
【0053】
比較例4
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が3.3g/m2で2層目の塗布量が10.9g/m2の化粧板を作製した。
【0054】
比較例5
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗装を行わず、実施例でクリア層の2層目に用いた塗料を使用して2層目の塗装工程のみ行い塗布量が16.3g/m2とした化粧板を作製した。
【0055】
比較例6
実施例1と同様の方法で、クリア層の1層目の塗布量が10.9g/m2でクリア層の2層目は塗装しない化粧板を作製した。
【0056】
参考例1
参考例として、実施例1と同様のシーラー層、下塗り層、着色層を塗装した後、クリア層を形成しない化粧板を作製した。
【0057】
[抗ウイルス性試験]
各水準の化粧板について塗膜表面を試験体として、インフルエンザウイルスに対するウイルス感染価を評価した。
MEM培地中に約108PFU/mL以上となるように作製したウイルス液(Influenza A virus(H3N2):ATCC VR-1679)を、滅菌済蒸留水で10倍希釈したものを試験ウイルス液とした。5cm角の各検体に試験ウイルス液を0.4mL接種し、その上に4cm角のPEフィルムを被せて密着させ、25℃、24時間放置した。その後、洗い出し液を10mL加え、ピペッティングにて検体からウイルスを洗い出した。洗い出し液中のウイルス感染価を測定し、1検体あたりの感染価の常用対数値を算出した。比較対照は抗ウイルス剤及び抗菌剤を添加していないことを除き実施例1と同様に作成した化粧板(未加工)とし、24時間後と接種直後の測定を行なった。洗い出し液は、SCDLP培地を用いた。ウイルス感染価の測定方法はPlaque assayとした。(参考規格:ISO18184、JIS L 1922、JIS Z 2801)
抗ウイルス活性値MVが2.0以上となるクリア塗料を実施例1~12の最表層となる2層目のクリア塗料に用いた。また比較例1~5の最表層となる2層目の塗料にも同様の塗料を用いた。
【0058】
[コーンカロリーメーター発熱性試験]
実施例1~12及び比較例1~6についてコーンカロリーメーターによる発熱性試験を実施した。発熱量が7.2MJ/m2以下のものを〇、8.0MJ/m2以上のものを×とした。実施例及び比較例のいずれの水準も発熱量は7.2MJ/m2以下で良好な不燃性能を示し、また発熱性1級を満たした。
【0059】
[光沢値]
実施例1~12及び比較例1~6と参考例について、それぞれ塗装面の光沢値測定を行った。測定方法は、測定角度60度とした堀場製作所製のIG-331ハンディ光沢計を用いて、化粧板の縦方向と横方向についてそれぞれ3カ所の測定を行い、平均値を求めた。本発明の縦方向の光沢値は、化粧板の最表層クリア層の塗装方向と平行方向に光沢測定装置を配置して測定した値であり、横方向の光沢値とは、クリア層の塗装方向と直角となる向きで測定した値である。
またクリア層のない参考例については、着色層の塗装方向に対して同様の測定とした。
【0060】
[クリア層の塗膜厚さ測定]
実施例1~12及び比較例1~6について、クリア層の塗膜厚さを測定した。測定方法は、板を切断して塗膜断面を作り、マイクロスコープを用いて異なる3か所から塗膜厚さを測定し、平均値を求めた。
【0061】
[外観の目視評価]
実施例1~12及び比較例1~6について、目視による外観評価を行った。化粧板の全面に明らかな凹凸痕跡や光沢の著しいムラが残り外観に問題があるものを×、塗装面の凹凸痕跡や光沢のムラが目視で容易に判別できる程度に残り、実用上の問題があるものを△、わずかな塗装の凹凸痕跡が残るが光沢のムラは軽微で実用上問題ないものを〇、外観が平滑で光沢の斑が無く良好であるものを◎とした。
表1~表2に測定結果を示す。
【0062】
【0063】
【0064】
表1の抗菌/抗ウイルス剤をクリア層の最表層のみに含有させ、またクリア層の1層目と2層目の塗布量と塗布量比を適正な範囲として作成した実施例1~12はいずれも良好な抗ウイルス性能を示す。塗装面の外観については、塗布量比がより好ましい範囲である実施例1~4及び実施例6と実施例8が、化粧板の表面が平滑で外観にも特に優れており、不燃性も確保されている。実施例の光沢値は縦方向が横方向に比べていずれもわずかに高い値を示し、いずれも約2~3ポイント差であった。また同じ実施例の化粧板を複数用いて隣同士の板の縦方向と横方向を変えて交互に並べて目視観察すると、観察者が正対して化粧板を視認した時にはそれぞれの化粧板の光沢の違いが判別できず、斜光で観察した場合や、化粧板を斜め方向から透かし見た場合には、化粧板の光沢差が目視判別できた。発熱性については、実施例1~12はいずれも総発熱量が7.2MJ/m2以下であり優れた不燃性能の化粧板であることを確認した。
表2から、抗菌/抗ウイルス剤を含まない比較例6及び参考例1は抗ウイルス性を示さない。比較例1は2層目の塗布量が少ないこととクリア層全体の塗布量が少ないことにより塗装ムラが目立つため、化粧板の外観が悪い。比較例2は塗装面の全面に1層目のクリアと2層目のクリア塗膜に生じた塗装痕跡の筋が目視で目立ち平滑性に劣る。比較例3は1層目の塗装面で生じた筋状痕跡が正対して観察したとき容易に視認できる状態で残り、2層目のクリア塗装後に1層目で生じたクリア塗料の凹凸痕跡が十分に2層目のクリア塗装で隠蔽されていないため、外観が悪い。比較例4は、1層目の塗装面にクリア層のムラが発生し、2層目のクリア層形成後もムラの発生個所が視認できるため外観が悪い。比較例5については、塗装後のクリア塗膜に塗装痕跡による凹凸が生じて外観に劣り、またクリア塗膜の光沢値もクリア層を2回に分けて同程度の量を塗装した実施例3に比べて高くなるため、好適な光沢の外観が得られ難く問題がある。比較例6については、塗布量が比較例5よりも少なくクリア塗料の凹凸は軽減されているが、クリア塗膜を1層で塗装しているため、他の2回に分けて塗装した水準に比べ2層目を塗装していないことから、表面の平滑性が悪い。
クリア層全体の塗布量が同量である実施例3と比較例5を対比すると、実施例3はクリア層全体を1層目と2層目に分けて塗装を行い、比較例5は2層目のみでクリア層全体を形成している。良好な外観が得られた実施例3に比べて、比較例5の外観は塗装面のクリア塗料による凹凸が大きく外観に劣り、また光沢値について、実施例3よりも比較例5は縦方向及び横方向のいずれともに高い値となり、オフィスビルや病院、文教施設といった施設の内装用建材として好ましい低光沢の外観が得られ難い傾向である。また実施例12と比較例6の対比でも同様に比較例6の外観が劣る。