(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119454
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイル
(51)【国際特許分類】
C07C 69/84 20060101AFI20240827BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20240827BHJP
C08K 5/134 20060101ALI20240827BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240827BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20240827BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
C07C69/84
C07C67/08 CSP
C08K5/134
C08L101/00
B01J31/02 103Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026360
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】清水 尚悟
(72)【発明者】
【氏名】本岡 良太
(72)【発明者】
【氏名】中山 翔太
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4J002
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA42A
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE22A
4G169BE22B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169CB25
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB46
4H006AB48
4H006AC48
4H006BA52
4H006BA66
4H006BJ50
4H006BN30
4H006KA06
4H006KC30
4H039CA66
4H039CD10
4H039CD30
4J002AA001
4J002CF002
4J002CG002
4J002CK022
4J002EJ066
4J002GP00
4J002GQ00
4J002GS00
(57)【要約】
【課題】本発明は、様々な樹脂の原料、改質剤、添加剤として有用な、新規なビスフェノール化合物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、式(1)
【化1】
で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイル。
【請求項2】
酸触媒の存在下、4-ヒドロキシ安息香酸と式(2)
【化2】
で表される2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールとを反応させる工程を含む、請求項1に記載の式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルの製造方法。
【請求項3】
酸触媒はp-トルエンスルホン酸である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式(1)
【化3】
で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルに由来する構成単位を含むポリマー。
【請求項5】
ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリウレタンからなる群から選択される、請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
式(1)
【化4】
で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルを含有する樹脂添加剤。
【請求項7】
樹脂は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリアセタール、ポリウレタンおよび熱可塑性エラストマーからなる群から選択される1種以上である、請求項6に記載の樹脂添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビスフェノール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ジオールが有する2つのヒドロキシ基に、4-ヒドロキシ安息香酸のカルボキシ基がエステル化反応したビスフェノール化合物は、コポリエステル-カーボネートの改質剤(特許文献1)、感熱記録材料の顕色剤(特許文献2)、熱硬化性樹脂の原料(特許文献3)、液晶ポリマーの添加剤(特許文献4)等として提案されており、幅広い用途への展開が期待されている。
【0003】
このようなビスフェノール化合物としては、脂肪族ジオールが1,6-ヘキサンジオールや1,4-シクロヘキサンジメタノールのものは知られているが、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールのものについては未だ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-168722号公報
【特許文献2】特開平8-085265号公報
【特許文献3】国際公開2009/008468号公報
【特許文献4】特開2019-183041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、様々な樹脂の原料、改質剤、添加剤として有用な、新規なビスフェノール化合物を提供することにある。また、本発明の他の目的は 新規なビスフェノール化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、酸触媒の存在下、4-ヒドロキシ安息香酸と2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールとを反応させることで、新規なビスフェノール化合物であるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下の好適な態様を包含する。
[1]式(1)
【化1】
で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイル。
[2]酸触媒の存在下、4-ヒドロキシ安息香酸と式(2)
【化2】
で表される2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールとを反応させる工程を含む、[1]に記載の式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルの製造方法。
[3]酸触媒はp-トルエンスルホン酸である、[2]に記載の方法。
[4]式(1)
【化3】
で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルに由来する構成単位を含むポリマー。
[5]ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリウレタンからなる群から選択される、[4]に記載のポリマー。
[6]式(1)
【化4】
で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルを含有する樹脂添加剤。
[7]樹脂は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリアセタール、ポリウレタンおよび熱可塑性エラストマーからなる群から選択される1種以上である、[6]に記載の樹脂添加剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の芳香族化合物は、様々な樹脂の原料、改質剤、添加剤として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1で得られた式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルの
1H-NMRスペクトルを示す図である。
【
図2】実施例1で得られた式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルのFT-IRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態は、式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルである。
【化5】
【0011】
本発明の一実施形態において、酸触媒の存在下、4-ヒドロキシ安息香酸と式(2)で表される2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールとを反応させる工程を含む、式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルの製造方法に関する。
【化6】
【0012】
本発明の上記製造方法において、4-ヒドロキシ安息香酸1モルに対し、式(2)で表される2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールを好ましくは0.3~0.8モル当量、より好ましくは0.35~0.7モル当量、さらに好ましくは0.4~0.6モル当量を反応させる。
【0013】
4-ヒドロキシ安息香酸1モルに対し、これと反応させるべき2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールの量が0.3モル当量を下回る場合、副生物が生じる傾向があるとともに、4-ヒドロキシ安息香酸が過剰となり原料の無駄となり得る。2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールの量が0.8モル当量を上回る場合、過剰量の脂肪族アルコールが残存する傾向があり、目的物であるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルの純度が低下し得る。
【0014】
本発明の製造方法に使用する2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールは、D体、L体、メソ体またはそれらの混合物のいずれであってもよい。
【0015】
本発明の製造方法で用いられる酸触媒としては、例えば、芳香族スルホン酸類、硫酸、塩酸、リン酸および硝酸からなる群から選択される一種以上が挙げられる。これらの中で反応性に優れ、かつ副反応が抑制される点で芳香族スルホン酸類が好ましく使用される。
【0016】
芳香族スルホン酸類の具体例としては、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられるが、反応性および入手容易性に優れる点で、p-トルエンスルホン酸が好ましい。また、これらの芳香族スルホン酸類は、水和物を使用してもよい。
【0017】
これらの触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明の製造方法に使用する酸触媒の量は、特に限定されないが、通常、4-ヒドロキシ安息香酸100質量部に対して0.1~20質量部であるのが好ましく、5~10質量部であるのがより好ましい。
【0019】
4-ヒドロキシ安息香酸100質量部に対し、酸触媒の量が0.1質量部を下回る場合、反応が十分進行しないことがあり得る。酸触媒の量が20質量部を上回る場合、目的物であるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルに過反応によってさらに4-ヒドロキシ安息香酸が反応した化合物等の副生物が生成する傾向があるとともに、経済的にも不利となり得る。
【0020】
本発明において、4-ヒドロキシ安息香酸と2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールとの反応は、溶媒の存在下で行われることが好ましい。好適に用いられる溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、デカン、ニトロベンゼン、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジオキサン、アニソール、ジフェニルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンおよび軽油からなる群から選択される一種以上が挙げられる。
【0021】
これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
溶媒の使用量は、4-ヒドロキシ安息香酸に対して1~50倍質量であるのが好ましく、2~30倍質量であるのがより好ましく、3~10倍質量であるのがさらに好ましい。
【0023】
4-ヒドロキシ安息香酸に対し、溶媒の量が1倍質量を下回る場合、攪拌不良が生じることがあり得る。溶媒の量が50倍質量を上回る場合、経済的にも不利となり得る。
【0024】
4-ヒドロキシ安息香酸と2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールとの反応は、80~180℃の温度下で行うのが好ましく、100~160℃の温度下で行うのがより好ましく、120~150℃の温度下で行うのがさらに好ましい。反応温度が80℃を下回る場合、反応が十分に進行しない傾向があり、反応温度が180℃を上回る場合、副生物が生成する傾向がある。
【0025】
反応時間は、反応温度等の条件によって変動するため特に限定されないが、通常1~30時間、好ましくは3~20時間、より好ましくは5~15時間の間で適宜選択される。
【0026】
本発明において、4-ヒドロキシ安息香酸と2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールとの反応は、窒素気流下またはバブリング下、もしくは減圧条件下で行うのが好ましい。このような条件下で反応させると、反応から副生する水を容易に除去し、反応を円滑に進行させることが可能となるため好ましい。
【0027】
本発明の式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルは、各種のポリマーの原料あるいは改質剤として用いることができる。すなわち、本発明は、式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルに由来する構成単位を含有するポリマーにも関する。
【0028】
式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルに由来する構成単位を含有するポリマーは、ジオール等のポリオール成分に由来する構成単位を含有するものであれば特に限定されないが、そのようなポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタンなどが挙げられる。
【0029】
式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルに由来する構成単位を含有するポリエステルは、式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルと、多価カルボン酸やヒドロキシカルボン酸とを重合することによって得られる。
【0030】
多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカン二酸、1,6-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族又は脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタテトラカルボン酸無水物等の3官能以上の多価カルボン酸等が挙げられる。
【0031】
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-ヒドロキシ-4’-カルボキシジフェニルエーテル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。また、ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基とカルボキシル基が分子内脱水縮合した環状化合物であるラクトンや、2分子のヒドロキシカルボン酸の互いのヒドロキシ基とカルボキシ基が脱水縮合した環状化合物であるラクチドも用いることができる。
【0032】
また、従来使用されているポリエステルにおいて、ジオール等のポリオール成分の一部を式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルに変更する等によって、柔軟性、耐熱性、熱伝導性、有機溶媒溶解性等が付与された改質ポリエステルとしてもよい。
【0033】
式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルに由来する構成単位を含有するポリカーボネートは、式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルと、炭酸エステルとを重合することによって得られる。
【0034】
炭酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート等が挙げられる。アルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、1,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート等が挙げられる。ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-ブチルカーボネート等が挙げられる。ジアルキレンカーボネートとしては、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0035】
また、従来使用されているポリカーボネートにおいて、ジオール等のポリオール成分の一部を式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルに変更する等によって、柔軟性、耐熱性、熱伝導性、有機溶媒溶解性等が付与された改質ポリカーボネートとしてもよい。
【0036】
式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルを構成単位として含有するポリウレタンは、式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルと、ポリイソシアネートとを重合することによって得られる。
【0037】
ポリイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカメチレントリイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
また、従来使用されているポリウレタンにおいて、ジオール等のポリオール成分の一部を式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルに変更する等によって、柔軟性、耐熱性、熱伝導性、有機溶媒溶解性等が付与された改質ポリウレタンとしてもよい。
【0039】
本発明の式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルは、可塑剤、安定化剤等の樹脂添加剤としても使用できる。すなわち、本発明は、式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルを含有する樹脂添加剤にも関する。
【0040】
本発明の式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルを含有する樹脂添加剤が添加され得る樹脂としては、ポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂(例えばポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリアセタール、ポリウレタンおよび熱可塑性エラストマーからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0041】
添加剤の使用量は特に限定されないが、例えば、配合される樹脂100質量部に対して0.5~50質量部である。
【0042】
樹脂に本発明の式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルを含有する樹脂添加剤を配合する方法としては、押出機、射出成形機、各種ミキサー等の公知方法で混練、混合する方法、又は、樹脂と添加剤を有機溶剤等に溶解混合した後に脱溶媒する方法が挙げられる。
【0043】
本発明の式(1)で表されるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルを含有する樹脂添加剤は、成型加工する原料樹脂に混合して成形に供してもよいし、溶融樹脂に添加剤を配合して溶融混合した後に成形に供してもよい。
【0044】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例0045】
目的物であるビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルは、以下の方法によって分析した。
【0046】
<超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)>
装置:Waters UPLC H-Classシステム
カラム型番:ACQUITY UPLC HSS C18 1.8μm 2.1×50mm
液量:0.5mL/分
溶媒比:H2O(pH2.3)/MeOH=20/80(2.5分)→0.2分→55/45(1.5分)→0.3分→70/30(5.5分)→0.2分→90/10(4.8分)
波長:254nm
カラム温度:40℃
【0047】
<純度の算出>
下記式により目的物の純度(面積%)を算出した。
純度(面積%)=[目的物のピーク面積]/[保持時間0.8分から11分までの全ピーク面積の和]×100
【0048】
<FT-IRスペクトル>
Spectrum One(PerkinElmer社製)を用いてFT-IRスペクトルを測定した。
【0049】
<マススペクトル(MS)>
Waters 2690/2996 Alliance-TQ Detectorを用いてマススペクトルを測定した。
【0050】
実施例1
攪拌機、温度センサーおよびディーン・スターク装置を備えた1Lの4ツ口フラスコに、4-ヒドロキシ安息香酸(POB)138g(1.0モル)、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール(東京化成工業株式会社)80g(0.5モル)、p-トルエンスルホン酸一水和物14g(10質量部/POB100質量部)およびアニソール414g(3倍質量/POB)を仕込み、窒素気流下135~140℃で6時間反応した。反応液を90℃まで冷却し、1L底抜きフラスコに移した。反応液に10%炭酸水素ナトリウム水溶液415gを加え、90℃にて30分攪拌した。攪拌終了後、30分静置し、分液した。得られた有機層に10%硫酸ナトリウム水溶液420gを加え、90℃にて30分攪拌した後、分液した。得られた有機層をエバポレーターにて減圧留去し、粗ビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイル123gを得た。
【0051】
回収した粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル:100g、溶出液:酢酸エチル/ヘキサン(体積比)=30/70)で精製し、オイル状のビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイル115gを得た(純度96.3%)。
【0052】
得られたビス(4-ヒドロキシ安息香酸)2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルについて
1H-NMRスペクトル、FT-IRスペクトルおよびマススペクトルを測定した。
1H-NMRスペクトルを
図1に、FT-IRスペクトルを
図2に示す。また、
1H-NMRスペクトル、FT-IRスペクトルおよびマススペクトルの帰属を下記に示す。
【0053】
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ7.86-7.93(m,4H),6.76-6.85(m,4H),4.18-4.27(m,4H),1.82-1.88(m,2H),1.54-1.61(m,1H),1.43-1.50(m,1H),0.92-0.98(m,6H)
【0054】
FT-IR:3340cm-1(γ‐OH)、1678cm-1(γ‐C=O)
【0055】
MS:m/z=399[M+H]+