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  • 特開-裁断装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119458
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】裁断装置
(51)【国際特許分類】
   D06H 7/02 20060101AFI20240827BHJP
   B26D 7/06 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
D06H7/02
B26D7/06 B
B26D7/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026368
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000148106
【氏名又は名称】株式会社川上製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 成司
【テーマコード(参考)】
3B154
3C021
【Fターム(参考)】
3B154AB18
3B154AB27
3B154BB47
3B154BB54
3B154BB56
3C021DA02
3C021DA07
3C021DA14
(57)【要約】
【課題】延反機能を備えた裁断装置において、積層する生地の延反作業に掛かる作業時間を短縮し、かつ正確な位置合わせで積層を可能にする。
【解決手段】作業台1の作業領域11を挟んで直線上に第1待避領域14及び第2待避領域15が設けられ、作業領域11及び第1待避領域14の範囲で進退自在で、ロール21から生地を繰り出しながら作業領域11及び第1待避領域14の範囲で進退することにより、作業領域11に生地を展開又は積層する延反部2と、作業領域11及び第2待避領域15の範囲で進退自在で、裁断カッタ31を左右に移動させながら作業領域11及び第2待避領域15の範囲で進退することにより、作業領域11に展開又は積層された生地を裁断する裁断部3とを備えた裁断装置である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業台の作業領域を挟んで直線上に第1待避領域及び第2待避領域が設けられ、
作業領域及び第1待避領域の範囲で進退自在で、ロールから生地を繰り出しながら作業領域及び第1待避領域の範囲で進退することにより、作業領域に生地を展開又は積層する延反部と、
作業領域及び第2待避領域の範囲で進退自在で、裁断カッタを左右に移動させながら作業領域及び第2待避領域の範囲で進退することにより、作業領域に展開又は積層された生地を裁断する裁断部と
を備えた裁断装置。
【請求項2】
作業領域は、第2待避領域に向けて生地を移動させるベルトコンベアを設けた請求項1記載の裁断装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地を展開又は積層する延反機能を備えた裁断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
服飾用の生地は、作業台に展開又は積層された状態で予め定められたパターンに裁断されると、身頃等のパーツが得られる。左右対称なパーツを得る場合、折り畳み状態で積層した生地を裁断する。作業台に生地を展開又は積層する延反作業は延反装置で、展開又は積層された生地を裁断する裁断作業は裁断装置でそれぞれ実行されていた。この場合、延反装置で展開又は積層された生地を裁断装置に運ばねばならず、手間及び労力が掛かっていたほか、延反装置及び裁断装置を設置するため、広い場所が必要であった。
【0003】
延反装置から裁断装置に展開又は積層された生地を運ぶ手間及び労力を解消し、装置の設置場所を節約するため、延反機能を備えた裁断装置が提案されている(特許文献1)。特許文献1が開示する裁断装置は、ロールから生地(シート材)を解反する解反部と、解反部から繰り出された生地を延反する裁断領域のベルトコンベアと、解反部で繰り出された生地を切断分離する分離カッタと、ベルトコンベアから離脱する生地を収容する収容部と、裁断領域上を移動して生地を裁断する裁断部(カッターヘッド)とを備えて構成される(特許文献1・[請求項1])。
【0004】
特許文献1が開示する裁断装置は、解反部から繰り出された生地をベルトコンベアで引っ張り、裁断領域に延反する(特許文献1・[0012])。また、特許文献1が開示する裁断装置は、予め裁断領域に延反した生地を一旦収容部に収容し、解反部から繰り出された新たな生地を収容部に収容された生地に作業者が重ね、一体にベルトコンベアで引っ張ることで、生地を積層する(特許文献1・[0041]~[0045])。左右対称なパーツは、解反部のロールの向きを取り変えて生地を繰り出すことで、表裏が逆に積層した生地を裁断して得る(特許文献1・[0047]~[0051])。積層枚数は、生地の延反動作と切断動作とを繰り返して増やす(特許文献1・[0055])。
【0005】
特許文献1が開示する裁断装置は、延反作業から裁断作業に至る作業時間を短縮できる効果がある。また、特許文献1が開示する裁断装置は、延反装置から裁断装置へ生地を運ぶための補助装置が不要であるため、全体としての装置構成が簡素化され、製造コストを低減できる効果がある。更に、特許文献1が開示する裁断装置は、延反装置を別に必要とせず、延反機能を備えた裁断装置を設置するだけの狭い場所で、延反作業及び裁断作業が実行できる効果がある(特許文献1・[0023]~[0026]、[0052]~[0054])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-256493公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1が開示する裁断装置は、裁断部を避けて生地を延反するため、裁断領域の端に位置固定させた解反部から繰り出した生地をベルトコンベアで引き伸ばすように延反する。これにより、生地を積層する場合、既に展開又は積層させた生地をベルトコンベアで進退させながら、解反部から繰り出した新たな生地をロールから切断分離しながら積層する必要がある。このような生地の積層には、コンベアベルトを正転又は逆転させて生地を端から端まで前後させたり、積層する新たな生地を切断分離する手間及び労力がかかり、作業時間が長くなったりする問題がある。
【0008】
特に、新たに積層する生地の位置決めを作業者に頼っており、生地を積層させた延反作業における作業時間がますます掛かることになっていた。また、作業者による生地の位置合わせは不正確になる可能性があり、得られるパターンの品質を低下させる虞がある。そこで、延反機能を備えた裁断装置において、積層する生地の延反作業に掛かる作業時間を短縮し、かつ正確な位置合わせで積層を可能にするため、装置構成について検討した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
検討の結果開発したものが、作業台の作業領域を挟んで直線上に第1待避領域及び第2待避領域が設けられ、作業領域及び第1待避領域の範囲で進退自在で、ロールから生地を繰り出しながら作業領域及び第1待避領域の範囲で進退することにより、作業領域に生地を展開又は積層する延反部と、作業領域及び第2待避領域の範囲で進退自在で、裁断カッタを左右に移動させながら作業領域及び第2待避領域の範囲で進退することにより、作業領域に展開又は積層された生地を裁断する裁断部とを備えた裁断装置である。延反作業を実行する延反領域は作業領域全域であるが、裁断作業を実行する裁断領域は作業領域のうち第2待避領域に接する一部分としてもよい。
【0010】
本発明の裁断装置は、延反部及び裁断部が互いの作業領域を共通とし、延反部が作業領域を進退する際は裁断部が第2待避領域に退避し、裁断部が作業領域を進退する際は延反部が第1待避領域に待避する。延反部は、作業領域を進退して、ロールから繰り出す生地を延反する。生地は、延反部から繰り出して一定長で切断分離し、作業領域の同じ位置から表裏同じ姿勢で延反すれば、表裏を揃えて積層できる。また、生地は、延反部が作業領域を進退して折り畳み状態で延反すれば、表裏を反転して積層できる。延反部及び裁断部は、作業領域に設けられた原点を基準に生地の延反及び裁断をすれば、延反作業及び裁断作業で生地のずれが生じない。
【0011】
本発明の裁断装置は、延反作業にベルトコンベアを必要としないが、作業領域から裁断を終えた生地の端材やパーツを取り出すため、ベルトコンベアの利用が好ましい。これから、作業領域は、第2待避領域に向けて生地を移動させるベルトコンベアを設けるとよい。ベルトコンベアは、裁断領域が作業領域より狭い場合、裁断領域の範囲で設けるとよい。作業領域にベルトコンベアを設ける場合、第2待避領域に続いて回収領域を設け、ベルトコンベアにより第2待避領域を超えて運ばれる生地の端材やパーツを回収領域で回収するとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の裁断装置は、積層する生地の延反作業に掛かる作業時間が短縮され、かつ正確な位置合わせで積層できる。これは、作業領域を進退する延反部がロールから生地を繰り出しながら延反することにより、一度展開した生地を動かすことなく、切断分離した新たな生地又は折り畳んだ連続した生地を正確に積層できることによる効果である。また、生地を正確に延反又は積層できることから、作業領域に設けられた原点を基準に生地の延反及び裁断ができ、延反作業及び裁断作業で生地のずれが生じず、裁断により綺麗なパーツを得ることのできる効果もある。
【0013】
作業領域に設けたベルトコンベアは、延反作業、裁断作業に続く、端材やパーツの回収作業も連続的に実行できるようにし、総じて作業時間を短縮させる効果をもたらす。作業領域にベルトコンベアを設ける場合、第2待避領域に続いて設けた回収領域で生地の端材やパーツを回収できるようにすると、端材及びパーツの分別やパーツの種類ごとの回収が容易かつ確実となり、端材やパーツの回収作業に掛かる作業時間もより短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用した裁断装置の一例を表す斜視図である。
図2】本例の裁断装置の右側面図である。
図3】本例の裁断装置の平面図である。
図4】本例の裁断装置における延反作業中の右側面図である。
図5】本例の裁断装置における裁断作業中の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の裁断装置は、図1図3に見られるように、作業台1に設けられた作業領域11及び第1待避領域14の範囲で進退する延反部2と、作業台1に設けられた作業領域11及び第2待避領域15の範囲で進退する裁断部3とを備えて構成される。作業台1は、左右の側面に取り付けたカバー17内に、長手方向に延びる進退用ラック171及び進退用ガイドレール172を設けている。延反部2及び裁断部3は、進退用ラック171及び進退用ガイドレール172を共用し、作業領域11に対して排他的に進退する。
【0016】
作業領域11は、平面視長方形の作業台1の上面のうち長手方向中間部分である。第1待避領域14は作業領域11を挟む直線上奥側(図1右上側、図2及び図3右側)、を第2待避領域15は作業領域11を挟む直線上手前側(図1左下側、図2及び図3左側)である。本例の作業台1は、作業領域11の奥側半分と第1待避領域14にわたって延反面121が設けられ、作業領域11の手前側半分にベルトコンベアとしてブラシコンベア131が配置され、第2待避領域15に続いて回収領域16が設けられている。
【0017】
延反面121は、ブラシコンベア131を除く作業領域11に生地を展開又は積層ささせるための平面で、展開又は積層された生地をブラシコンベア131で移動させる際、多数設けられた吹き出し口(図中の多数の点)から空気を噴き出し、生地の移動を補助する。ブラシコンベア131は、生地を移動機能のほか、隙間から吸引することにより、ビニールシートの吸引機能も併せ持つ。こうして、延反面121及びブラシコンベア131に跨って積層された生地は、被せられたビニールシートがブラシコンベア131を通して吸引されることにより、ビニールシートにより押さえ込まれる。
【0018】
延反部2は、第2待避領域14を除く延反面121とブラシコンベア131とを合わせた作業領域11全域を延反領域12とし、延反領域12及び第1待避領域14の範囲で進退する。本例の延反部2は、同期して進退する左右の延反用進退部23を備えた本体に、生地のロール21及びビニールシートのロール22を掛け渡して支持させ、ロール21,22から繰り出した生地又はビニールシートを横断し、切断分離する切断分離カッタ24を設けている。
【0019】
延反用進退部23は、作業台1の左右側面に設けられた進退用ガイドレール172に沿って、進退用ラック171に掛合させた進退用ピニオン231を正転又は逆転させることにより、作業領域11及び第1待避領域14の間を進退する。また、延反用進退部23は、第1待避領域14の範囲で作業台1の側面に設けられた第1待避位置マーカー141を検出することにより停止する。こうして、延反部2は、切断分離カッタ24が作業領域11に掛からないように、延反用進退部23を備えた本体を第1待避領域14に後退させる。
【0020】
裁断部3は、ブラシコンベア131の範囲のみを裁断領域13とし、裁断領域13及び第2待避領域15の範囲で進退する。本例の裁断部3は、同期して進退する左右の裁断用進退部32を備えた本体に、横断用ガイドレール33を掛け渡して支持させ、横断用ガイドレール33に沿って左右に移動する裁断カッタ31を設けている。裁断カッタ31は、回転刃のほか、レーザーを切断手段としてもよい。
【0021】
裁断用進退部32は、作業台1の左右側面に設けられた進退用ガイドレール172に沿って、進退用ラック171に掛合させた進退用ピニオン321を正転又は逆転させることにより、作業領域11及び第2待避領域15の間を進退する。また、裁断用進退部32は、第2待避領域15の範囲で作業台1の側面に設けられた第2待避位置マーカー151を検出することにより停止する。こうして、裁断部3は、裁断用進退部32を備えた本体を第1待避領域15に後退させる。
【0022】
作業領域11は、手前側かつ右端寄りに作業原点111が設定されている。延反部2及び裁断部3は、作業原点111をそれぞれ延反原点、裁断原点として共通利用することにより、延反作業から裁断作業への移行に際する延反原点、裁断原点の位置合わせを不要とする。延反部2及び裁断部3は、作業領域11の前端に合わせて作業台1の側面に設けられた原点位置マーカー112をそれぞれの延反用進退部23又は裁断用進退部32が検出することにより停止し、延反原点及び裁断原点を裁断原点111に一致させる。
【0023】
このほか、本例の作業台1は、作業領域11に展開する生地の下に敷く下紙のロール23を、第1待避領域14端となる奥側側面に設けている。また、本例の作業台1は、延反部2及び裁断部3の進退やそれぞれの切断分離カッタ24や裁断カッタ31の移動を制御又は手動操作するための操作部18を、延反部2及び裁断部3を一方から見渡し、かつ邪魔にならない回収領域16の端に設けている。操作部18は、裁断作業における裁断データを、メモリカード等の記録媒体やネットワークを通じてサーバから取り込み、裁断カッタ31を制御する。
【0024】
本例の裁断装置における延反作業及び裁断作業の一例を説明する。まず、本例の裁断装置の初期状態として、延反部2は第1待避領域14に、裁断部3は第2待避領域15にそれぞれ退避させておく。延反作業にあたり、まず下紙のロール19から作業者が下紙を引き出し、作業領域11に下紙を敷くことから始まる。下紙は、延反部2の切断分離カッタ24によりロール19から切断分離される。作業領域11に下紙を敷く必要がない場合、次の手順から延反作業を始める。
【0025】
延反作業は、生地のロール21を搭載させた延反部2を前進させ、図4に見られるように、繰り出した生地の角部を作業原点111に揃えた状態から、延反部2を後退させながら生地を繰り出し続けることにより、開始される。生地は、延反部2が作業領域11端まで後端した位置で切断分離され、再び延反部2を前進させてから新たな生地を展開すれば、表裏同じ向きに積層される。また、生地は、延反部2が作業領域11を往復しながら連続して繰り出されることにより、表裏を変えながら折り畳み状態で積層される。
【0026】
延反作業により必要な生地の展開又は積層を終える(図4中下層線参照)と、延反部2は、第1退避領域14に退避させる。生地が作業領域11に積層されている場合、延反部2が搭載したビニールシートのロール22からビニールシートを作業者が引き出し、積層された生地の上に敷く。積層された生地をビニールシートで覆うと、ブラシコンベア131によりビニールシートを吸着し、積層された生地をブラシコンベア131に押さえつけることにより、裁断作業の準備が整う。
【0027】
裁断作業は、取り込んだ裁断データに基づいて、図5に見られるように、操作部18が裁断部3を裁断領域13の範囲で進退させ、同時に裁断カッタ31を左右に移動させることにより、実行される。本例の裁断装置における裁断領域13は、作業領域11の1/2である。このため、裁断領域13を超えて生地が展開又は積層されている場合、裁断領域13の裁断作業が終わると、ブラシコンベア131が生地を第2待避領域15に向けて裁断部3を超えて移動させ、裁断を終えた端材やパーツを回収領域16に移動させて回収すると共に、積層された生地の残り半分の裁断作業を続ける。
【符号の説明】
【0028】
1 作業台
11 作業領域
111 作業原点
12 延反領域
121 延反面
13 裁断領域
131 ブラシコンベア
14 第1待避領域
15 第2待避領域
16 回収領域
17 カバー
171 進退用ラック
172 進退用ガイドレール
18 操作部
2 延反部
21 生地のロール
22 ビニールシートのロール
23 延反用進退部
231 進退用ピニオン
24 切断分離カッタ
3 裁断部
31 カッタ部
32 裁断用進退部
321 進退用ピニオン
33 横断用ガイドレール

図1
図2
図3
図4
図5