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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119459
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】遠心バレル研磨機
(51)【国際特許分類】
   B24B 31/02 20060101AFI20240827BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B24B31/02 B
B24B49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026369
(22)【出願日】2023-02-22
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】396019631
【氏名又は名称】株式会社チップトン
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】河原 達樹
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB93
3C034CA11
3C034CA22
3C034CB03
3C034DD18
3C158AA01
3C158AB01
3C158AB04
3C158AB06
3C158AB08
3C158AC02
3C158BA01
3C158BA07
3C158BA09
3C158BB02
3C158BC01
3C158BC02
3C158CB06
3C158DA09
(57)【要約】
【課題】遠心バレル研磨機の運転中に、バレルケースに対するバレル槽の固定が完全に解除されてしまう前に、運転を安全に停止することが可能な遠心バレル研磨機を提供する。
【解決手段】遠心バレル研磨機の運転中に、固定部材50における押圧ボルト51の緩み方向への回転により、先端部51Cによるホルダー60への第2方向D2での押圧力が解除された場合でも、ホルダーばね63により付与される第1方向D1での弾性押圧力により、押圧ボルト51の頭部51Aが固定位置よりも第1方向側に変位し易くなる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
公転軸を中心として回転駆動されるターレットと、
前記公転軸から偏心した自転軸を中心に自転駆動されるバレルケースと、
前記バレルケースに収容可能なバレル槽と、
押圧ボルトと、前記押圧ボルトが貫通して螺合する圧力付与部と、を有し、前記バレルケースの内で、前記押圧ボルトの締付方向への回転に応じて、前記バレルケースに収容された前記バレル槽に対して押圧力を付与して、前記バレル槽を前記バレルケースに固定する固定部材と、
前記押圧ボルトの先端部に当接することで、前記押圧ボルトからの押圧力を、前記バレルケースに収容された前記バレル槽に伝えるホルダーと、
検知部と、
制御部と、を備え、
前記バレルケースは、当該バレルケースに収容された前記バレル槽を支持する支持部と、前記支持部から離間方向に離間し、前記固定部材の前記圧力付与部からの前記押圧力を受ける受圧部と、を有し、
前記固定部材は、前記押圧ボルトの頭部を、前記離間方向のうち前記受圧部を向く第1方向に向け、かつ前記先端部を、前記離間方向のうち前記支持部を向く第2方向に向けた状態で、前記支持部に支持される前記バレル槽よりも前記第1方向側で、前記バレルケースの内に位置しており、
前記ホルダーは、前記押圧ボルトの前記先端部との当接状態において、前記第1方向の弾性押圧力を前記押圧ボルトに付与する第1弾性部材を有し、
前記制御部は、前記押圧ボルトの緩み方向への回転により、前記押圧ボルトの前記頭部が固定位置よりも前記第1方向側に変位していることを前記検知部により検知された場合に、前記ターレットの回転駆動を停止する、ことを特徴とする遠心バレル研磨機。
【請求項2】
前記固定部材は、
前記圧力付与部であって、前記押圧ボルトが貫通して螺合し、前記押圧ボルトの延びる方向に変位可能に保持された第1圧力付与部を有し、
前記押圧ボルトを、前記頭部が固定位置になるまで前記第2方向側に変位するように締付方向に回転させることで、前記第1圧力付与部が、前記バレルケースの前記受圧部に当接する位置となり、前記第1方向の押圧力を前記受圧部に付与し、かつ、
前記押圧ボルトの前記第1圧力付与部を貫通する前記先端部が、前記ホルダーに当接し、前記第2方向の押圧力を、前記ホルダーを介して前記バレル槽に付与する、請求項1に記載の遠心バレル研磨機。
【請求項3】
前記固定部材は、
前記圧力付与部であって、前記第1圧力付与部よりも前記押圧ボルトの前記先端部側に位置する第2圧力付与部と、
前記押圧ボルトの延びる方向において、前記第1圧力付与部と、前記第2圧力付与部との間に位置し、前記第1圧力付与部に対して前記第1方向の弾性押圧力を与える第2弾性部材と、を有し、
前記ホルダーは、
前記押圧ボルトの延びる方向において、前記第1圧力付与部と前記第2圧力付与部との間に設けられており、
前記押圧ボルトの前記頭部が前記固定位置にある場合に、前記押圧ボルトからの前記第2方向の押圧力を前記第2圧力付与部に付与し、
前記第2圧力付与部は、前記ホルダーを介して前記押圧ボルトから受けた前記第2方向の押圧力を、前記バレルケースに収容された前記バレル槽に付与して、前記バレル槽を前記バレルケースに固定する、ことを特徴とする請求項2に記載の遠心バレル研磨機。
【請求項4】
前記バレルケースは、前記離間方向における前記第2方向の弾性押圧力を、前記受圧部に当接した前記第1圧力付与部に付与する第3弾性部材を有する、ことを特徴とする請求項3に記載の遠心バレル研磨機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心バレル研磨機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心バレル研磨機は、研磨剤やワークが充填されるバレル槽を、回転するターレットに自転可能に取り付けられたバレルケース内に対して固定して収容するものがある。遠心バレル研磨機の研磨中は、バレル槽に対して、例えば、10~40Gあまりの大きな遠心力が作用する。そのため、特許文献1には、遠心バレル研磨機の運転開始時に、固定手段がバレル槽をバレルケースに固定する形態となっているか否かを検知部により検知し、固定手段が固定形態でない場合は、ターレットの回転を許可しない遠心バレル研磨機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6666960号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された遠心バレル研磨機では、運転開始時にのみ、固定手段が固定形態となっているか否かを検知しているため、運転中に固定手段が固定形態でなくなったことを検知することはできない。遠心バレル研磨機の運転中に、バレルケースに対するバレル槽の固定が解除されてしまうと機械振動等の異常振動が生じるため、この異常振動を検知することで、遠心バレル研磨機の運転を停止することも考えられる。しかし、異常振動が検知された時点では、既に、バレルケースに対するバレル槽の固定が完全に解除されてしまっている場合があり、遠心バレル研磨機を安全に停止させることができないことも懸念される。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、遠心バレル研磨機の運転中に、バレルケースに対するバレル槽の固定が完全に解除されてしまう前に、運転を安全に停止することが可能な遠心バレル研磨機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本実施形態で開示された遠心バレル研磨機では、公転軸を中心として回転駆動されるターレットと、公転軸から偏心した自転軸を中心に自転駆動されるバレルケースと、バレルケースに収容可能なバレル槽と、押圧ボルトと、押圧ボルトが貫通して螺合する圧力付与部と、を有し、バレルケースの内で、押圧ボルトの締付方向への回転に応じて、バレルケースに収容されたバレル槽に対して押圧力を付与して、バレル槽をバレルケースに固定する固定部材と、押圧ボルトの先端部に当接することで、押圧ボルトからの押圧力を、バレルケースに収容されたバレル槽に伝えるホルダーと、検知部と、制御部と、を備えている。バレルケースは、当該バレルケースに収容されたバレル槽を支持する支持部と、支持部から離間方向に離間し、固定部材の圧力付与部からの押圧力を受ける受圧部と、を有している。固定部材は、押圧ボルトの頭部を、離間方向のうち受圧部を向く第1方向に向け、かつ先端部を、離間方向のうち支持部を向く第2方向に向けた状態で、支持部に支持されるバレル槽よりも第1方向側で、バレルケースの内に位置している。ホルダーは、押圧ボルトの先端部との当接状態において、第1方向の弾性押圧力を押圧ボルトに付与する第1弾性部材を有する。制御部は、押圧ボルトの緩み方向への回転により、押圧ボルトの頭部が固定位置よりも第1方向側に変位していることを検知部により検知された場合に、ターレットの回転駆動を停止する。
【0007】
上記構成では、バレルケースに収容されたバレル槽を固定する固定部材は、押圧ボルトの頭部を、離間方向において受圧部を向く第1方向に向け、かつ先端部を、支持部を向く第2方向に向けた状態で、支持部に支持されるバレル槽よりも第1方向側で、バレルケースの内に位置している。また、ホルダーは、バレルケースの内で、押圧ボルトの圧力付与部を貫通した先端部と当接し、第1弾性部材により、第1方向の弾性押圧力を押圧ボルトに付与する。これにより、遠心バレル研磨機の運転中に、押圧ボルトの緩み方向への回転により、押圧ボルトが圧力付与部に対して緩み、先端部によるホルダーへの第2方向での押圧力が解除された場合でも、第1弾性部材により付与される第1方向での弾性押圧力により、押圧ボルトの頭部が固定位置よりも第1方向側に変位し易くなる。そのため、検知部により押圧ボルトの緩みを確実に検知することができ、制御部は、押圧ボルトの緩みに応じてターレットの回転駆動を停止させることができる。その結果、バレルケースに対してバレル槽の固定が完全に解除されてしまう前に、遠心バレル研磨機の駆動を安全に停止させることができる。
【0008】
固定部材は、圧力付与部であって、押圧ボルトが貫通して螺合し、押圧ボルトの延びる方向に変位可能に保持された第1圧力付与部を有し、押圧ボルトを、頭部が固定位置になるまで第2方向側に変位するように締付方向に回転させることで、第1圧力付与部が、バレルケースの受圧部に当接する位置となり、第1方向の押圧力を受圧部に付与し、かつ、押圧ボルトの第1圧力付与部を貫通する先端部が、ホルダーに当接し、第2方向の押圧力を、ホルダーを介してバレル槽に付与する。上記構成では、押圧ボルトを締付方向へ回転させることで、第1圧力付与部が、離間方向において、バレルケースの受圧部に当接する位置まで変位し、この受圧部に第1方向の押圧力を付与する。このような構成の固定部材において、押圧ボルトが緩み方向に回転したときに、第1圧力付与部が第2方向側に変位することで、押圧ボルトの頭部が固定位置よりも第1方向側に変位しにくくなる場合がある。このような構成においても、ホルダーの第1弾性部材により押圧ボルトに第1方向の押圧力を付与しているため、押圧ボルトの頭部が固定位置から第1方向に変位し易くなる。これにより、制御部は、バレルケースに対するバレル槽の固定が完全に解除されてしまう前に、遠心バレル研磨機の駆動を安全に停止させることができる。
【0009】
固定部材は、圧力付与部であって、第1圧力付与部よりも押圧ボルトの先端部側に位置する第2圧力付与部と、押圧ボルトの延びる方向において、第1圧力付与部と、第2圧力付与部との間に位置し、第1圧力付与部に対して第1方向の弾性押圧力を与える第2弾性部材と、を有する。ホルダーは、押圧ボルトの延びる方向において、第1圧力付与部と第2圧力付与部との間に設けられており、押圧ボルトの頭部が固定位置にある場合に、押圧ボルトからの第2方向の押圧力を第2圧力付与部に付与し、第2圧力付与部は、ホルダーを介して押圧ボルトから受けた第2方向の押圧力を、バレルケースに収容されたバレル槽に付与して、バレル槽をバレルケースに固定する。上記構成では、バレル槽と別体となった固定部材をバレルケースの内に装着する構成において、第2弾性部材により付与された弾性押圧力により、第1圧力付与部を受圧部に仮固定することができる。これにより、固定部材をバレルケースの内へ装着する際の作業性を向上させることができる。
【0010】
バレルケースは、離間方向における第2方向の弾性押圧力を、受圧部に当接した第1圧力付与部に付与する第3弾性部材を有する。上記構成では、バレルケースにバレル槽が収容された状態で、固定部材の第1圧力付与部に対して、受圧部を介して第3弾性部材による第2方向の弾性押圧力が付与され続ける。そのため、例えば、第1圧力付与部と受圧部との間に研磨液等が付着することで、第1圧力付与部が受圧部から離れにくくなることを抑制することができる。その結果、バレルケースから、固定部材を取り外す際の作業性が低下することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運転中にバレルケースに対するバレル槽の固定が完全に解除されてしまう前に、運転を安全に停止することが可能な遠心バレル研磨機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】遠心バレル研磨機の構成図である。
図2図1をA矢視で見た図の一部を示す図である。
図3】バレル槽を説明する図である。
図4】バレル槽を説明する図である。
図5】バレルケースを説明する図である。
図6】バレルケースを説明する図である。
図7】固定部材を説明する図である。
図8】固定部材を説明する図である。
図9】バレルケースにバレル槽を収容して固定する場合の手順を説明する図である。
図10】制御部が運転時に実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
図11】固定部材の緩み検知を説明する図である。
図12】比較例としての固定部材の緩み検知を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態に係る遠心バレル研磨機を、図面を参照しつつ説明する。遠心バレル研磨機は、研磨対象物であるワークに対して遠心バレル研磨を行うことが可能な装置である。図1図2に示す遠心バレル研磨機100は、バレル機構部20と、バレル機構部20の駆動を制御する制御部10と、緩み検知部15と、を主に備えている。なお、説明は省略するが、遠心バレル研磨機100は、電源に接続されており、この電源からの電力が、不図示の電源回路を介して制御部10とバレル機構部20とに供給される。
【0014】
本実施形態では、遠心バレル研磨機が工場等の屋内における設置面に設置された状態において、遠心バレル研磨機の高さを上下方向とし、設置面に対して水平な方向を水平方向と定める。なお、水平方向は、上下方向と直交する方向でもある。
【0015】
まずは、バレル機構部20の構成を説明する。バレル機構部20は、公転軸21、ターレット22、公転用モータ24、自転用モータ25、自転軸28、バレルケース30、バレル槽40、固定部材50を、主に備えている。
【0016】
公転軸21は、軸が延びる方向を上下方向に向けて遠心バレル研磨機100の内部に取り付けられている。ターレット22は、公転軸21を回転中心として、回転可能に保持されている。ターレット22の回転中心から所定距離だけ偏心した位置(以下、偏心位置とも記載する)には、自転軸28が取り付けられている。具体的には、自転軸28は、ターレット22において、公転軸21が位置する公転中心から所定距離(即ち、公転軌道半径)だけ偏心した偏心位置に取り付けられている。自転軸28は、軸の延びる方向を上下方向に向けた状態で、ターレット22の偏心位置に取り付けられている。
【0017】
ターレット22には、バレルケース30が、自転軸28を回転中心として、自転可能に取り付けられている。バレルケース30は、内部にバレル槽40を収容可能な空間(後述する槽収容空間35)を有している。本実施形態では、ターレット22には、4つのバレルケース30が、4つの自転軸28を中心に自転可能に取り付けられている。ターレット22に取り付けられるバレルケース30の数は、4つに限らず、4つ未満の数や、4つよりも多い数であってもよい。バレルケース30の形状の詳細は後述する。
【0018】
バレル槽40は、ワーク、及び研磨剤が収容される空間(後述するワーク収容空間44)を有する部材である。バレル槽40の大きさは、バレルケース30の槽収容空間35の大きさよりも小さい。固定部材50は、バレルケース30に収容されたバレル槽40を、バレルケース30に固定する部材である。本実施形態では、固定部材50は、バレル槽40と別部材であり、バレル槽40とともに、バレルケース30に収容される。バレル槽40、及び固定部材50の詳細な形状は後術する。
【0019】
公転用モータ24は、ターレット22を、公転軸21を中心に回転させるための駆動源である。公転用モータ24の出力軸は、公転用駆動プーリ26が取り付けられている。ターレット22の外周には、Vベルトを介して、公転用駆動プーリ26と連結される不図示の公転用従動プーリが設けられている。公転用モータ24の出力軸が回転することで、Vベルトが駆動し、ターレット22を回転させる(即ち、バレルケースを公転させる)ことができる。
【0020】
自転用モータ25は、バレルケース30を、自転軸28を中心に自転させるための駆動源である。自転用モータ25の出力軸は、自転用駆動プーリ27が取り付けられている。自転用モータ25の回転は、周知の遊星歯車機構を介して、バレルケース30に伝達され、バレルケース30をターレット22の回転方向と、水平方向において逆方向に自転させる。例えば、遊星歯車機構として、公転軸21に固定された太陽プーリと、公転軸21に固定され、太陽プーリとともに回転する太陽ギヤと、自転軸28の出力軸に固定された遊星ギヤと、太陽ギヤの回転速度を減速させて遊星ギヤに伝達する減速ギヤとを備えている。また、自転用駆動プーリ27と太陽プーリとの間には、伝達部材であるVベルトが掛け渡されている。これにより、自転用モータ25の出力軸の回転に応じて、太陽プーリが回転し、公転軸21及び太陽ギヤを回転させる。太陽ギヤの回転速度は、減速ギヤにより減速され、遊星ギヤに伝達される。その結果、遊星ギヤに固定された自転軸28を中心としてバレルケース30が自転する。
【0021】
次に、制御部10の構成を説明する。図1に示されるように、制御部10は、操作盤11と、シーケンサ12と、公転用駆動回路13と、自転用駆動回路14と、を有している。
【0022】
シーケンサ12は、所定のプログラムをメモリに記憶したプログラマブルコントローラである。シーケンサ12は、操作盤11から遠心バレル研磨機100の稼働条件に応じた各信号が入力される。操作盤11に対する操作により設定可能な稼働条件は、例えば、ターレット22の回転によるバレルケース30の公転回転速度、バレルケース30の自転回転速度、ワークを遠心バレル研磨する時間を示す研磨時間等である。
【0023】
シーケンサ12からの出力は、公転用駆動回路13及び自転用駆動回路14に入力される。公転用駆動回路13は、シーケンサ12から入力された稼働条件に応じた信号に応じて、公転用モータ24の回転速度(公転回転速度)、及び研磨時間を制御するための駆動信号を出力する。本実施形態では、公転用駆動回路13は、不図示のセンサにより検出されたターレット22の回転速度を、目標速度に近づけるべく、公転用モータ24の公転回転速度をフィードバック制御する。自転用駆動回路14は、シーケンサ12から入力された稼働条件に応じた信号に応じて、自転用モータ25の回転速度(自転回転速度)、及び研磨時間を制御するための駆動信号を出力する。自転用駆動回路14は、不図示のセンサにより検出されたバレルケース30の回転速度を、目標速度に近づけるべく、自転用モータ25をフィードバック制御する。これ以外にも、公転用駆動回路13及び自転用駆動回路14は、公転用モータ24及び自転用モータ25それぞれの回転速度をオープン制御するものであってもよい。
【0024】
緩み検知部15は、バレルケース30に装着されたバレル槽40を固定する固定部材50の緩みを監視するセンサである。本実施形態では、緩み検知部15は、投光部15Aと受光部15Bとを備えるファイバセンサにより構成されている。投光部15Aは、受光部15Bに対して、光を照射する。受光部15Bは、受光した光量に応じた検知信号を出力する。
【0025】
図2は、遠心バレル研磨機100を、図1のA矢視で見た図の一部を示す図であり、バレル槽40を簡略化して図示している。本実施形態では、遠心バレル研磨機100の不図示の筐体内に、投光部15Aと受光部15Bとを、バレルケース30に装着された固定部材50の上端よりも所定距離(例えば、1~2mm)だけ上方となる位置に固定している。バレルケース30に装着された固定部材50の上端は、後述する押圧ボルト51の頭部51Aの上端である。遠心バレル研磨機100の筐体内において、投光部15Aから受光部15Bに向かう光が通過する領域を、検知領域とも記載する。本実施形態では、緩み検知部15が、検知部の一例である。
【0026】
次に、バレル槽40の詳細な構成を説明する。図3図4で示されるように、バレル槽40は、バレル本体41と、バレル蓋42と、クランプ機構43と、槽側受部45と、を主に備えている。なお、図3は、バレル槽40を、バレル蓋42側から見た図である。図4は、バレル槽40を、バレル蓋42を上方にした状態で、真横から見た図である。バレル本体41は、一方側が略円状に開口する筒状の部材であり、ワークや研磨剤を収容可能な空間であるワーク収容空間44を有している。バレル本体41の外周における開口側には、一組の槽側受部45が取り付けられている。槽側受部45は、バレル本体41の外周において、開口の径方向で向かい合うように取り付けられている。
【0027】
クランプ機構43は、1組の支持壁46と、クランプハンドル47と、偏心カム48とを有している。1組の支持壁46は、バレル本体41の外周におけるワーク収容空間44の開口が形成される側で、開口の径方向で向かい合うように取り付けられている。また、1組の支持壁46は、開口側から突出するようにバレル本体41に取り付けられている。1組の支持壁46の先端側には、偏心カム48が1組の支持壁46に対して回転可能に取り付けられている。偏心カム48は、回転中心に対して他の部位よりも偏心した位置にある偏心部を有している。クランプハンドル47は、偏心カム48に固定されている。クランプハンドル47における支持壁46から突出する先端側を偏心カム48の回転方向に沿って操作することで、偏心カム48の偏心部の位置を変化させることができる。
【0028】
バレル槽40では、作業者が、クランプハンドル47を操作して、その位置を、偏心カム48の偏心部がバレル蓋42に押圧力を付与しない解除位置(図4では、図中右側)にすることで、バレル本体41に対するバレル蓋42の固定が解除される。作業者は、バレル本体41からバレル蓋42を取り外し、ワーク収容空間44の開口からワーク及び研磨剤を収容することができる。一方、作業者がクランプハンドル47を操作して、その位置を、偏心カム48の偏心部がバレル蓋42に押圧力を付与する位置(図4では、図中左側)にすることで、バレル本体41に対してバレル蓋42が固定される。
【0029】
次に、バレルケース30の詳細な構成を説明する。図5図6に示されるように、バレルケース30は、底側受容部31と、1組の側壁32と、1組の支持部33と、1組の受圧部34とを有している。なお、図5は、バレルケース30を、真横から見た図である。図6は、バレルケース30を、上方から見た図である。底側受容部31は、一方側で開口する筒状の部材であり、上方から見た場合に、バレル槽40におけるバレル本体41が収容可能な略円状の端部収容空間31Bが形成されている。底側受容部31の底部31Aには、ターレット22の偏心位置に設けられた自転軸28が取り付けられている。
【0030】
底側受容部31における外周には、1組の側壁32が、底部31Aから上方に突出するように取り付けられている。本実施形態では、1組の側壁32は、薄板形状であり、内面32Aを互いに向けた状態で、底側受容部31の外周に取り付けられている。
【0031】
1組の側壁32における、互いに向かい合う内面32Aには、1組の支持部33と、1組の受圧部34とが所定距離だけ離間して取り付けられている。以下では、支持部33と、受圧部34とが離間する方向を、離間方向D3とも記載する。本実施形態では、離間方向D3は、上下方向と同じ方向でもある。離間方向D3において、受圧部34側を向く方向を第1方向D1とし、支持部33側を向く方向を第2方向D2とも記載する。バレルケース30の内部において、バレル槽40が収容される空間である槽収容空間35は、離間方向D3において、受圧部34から底側受容部31の底部31Aで区画され、かつ、水平方向では、1組の側壁32の内面32Aにより区画される空間である。
【0032】
支持部33は、バレルケース30に収容されたバレル槽40における槽側受部45を支持する部材である。1組の支持部33は、側壁32の内面32Aにおいて、離間方向D3で底側受容部31側に取り付けられている。本実施形態では、1組の支持部33は、直方体形状であり、側壁32の内面32Aから内側に出ている。1組の支持部33の第1方向D1を向く面は、上方に窪んだ凹形状であり、バレル槽40の槽側受部45と係合することができる。
【0033】
1組の受圧部34は、後述するように、槽収容空間35に収容された固定部材50から第1方向D1での押圧力を受ける部位である。1組の受圧部34は、側壁32の内面32Aにおいて、側壁32の先端に取り付けられている。言い換えると、1組の受圧部34は、側壁32の内面32Aにおいて、離間方向D3で、支持部33よりも第1方向D1側に取り付けられている。1組の受圧部34は、直方体形状であり、側壁32の内面32Aから内側に出るように取り付けられている。
【0034】
1組の受圧部34は、受圧部本体34Aと、受圧部本体34Aを離間方向D3で貫通する圧力付与ピン34Bと、受圧部本体34Aに収容されており圧力付与ピン34Bに第2方向D2での弾性押圧力を与える付勢ばね34Cとを有している。なお、バレルケース30にバレル槽40が収容されていない状態では、圧力付与ピン34Bの第2方向D2側の先端は、付勢ばね34Cにより、受圧部本体34Aの下面よりも第2方向D2側(図では、下方)に出た状態で、受圧部本体34Aに保持されている。
【0035】
付勢ばね34Cは、コイルばねにより構成されている。本実施形態では、付勢ばね34Cが第3弾性部材の一例である。付勢ばね34Cは、圧力付与ピン34Bに弾性押圧力を付与するものであればよく、コイルばね以外にも弾性力を有する樹脂であってもよい。また、圧力付与ピン34Bと付勢ばね34Cとが一体となって第3弾性部材を形成していてもよい。
【0036】
次に、固定部材50の詳細な構成について説明する。図7図8に示されるように、固定部材50は、押圧ボルト51と、押圧ボルト51が貫通して螺合する第1圧力付与部52と、一組のガイド部53と、第2圧力付与部54と、ホルダー60とを有している。なお、図7は、固定部材50を、押圧ボルト51の頭部51Aを上方にした状態で、真横から見た図である。図8は、固定部材50を、押圧ボルト51の頭部51A側から見た図である。以下では、固定部材50において、押圧ボルト51のねじ部51Bが延びる方向を、「押圧ボルト51の延びる方向」とも記載する。
【0037】
第1圧力付与部52は、押圧ボルト51のねじ部51Bが貫通して螺合し、押圧ボルト51が延びる方向にスライド可能(変位可能)に保持されている。具体的には、第1圧力付与部52は、角柱状の部材であり、長手方向と交差(直交)する向きで、押圧ボルト51のねじ部51Bが貫通して螺合する雌ねじ部を有している。第1圧力付与部52の長手方向において、押圧ボルト51が貫通する雌ねじ部を中心としてその両側には、第1圧力付与部52のスライドをガイドする1組のガイド部53が位置している。ガイド部53は、円柱状の部材であり、長手方向を、押圧ボルト51の延びる方向に沿った状態で、押圧ボルト51の頭部51A側の端部で第1圧力付与部52を貫通している。1組のガイド部53は、押圧ボルト51の頭部51A側の端部が、抜け止め部材56にねじ止めさている。これにより、第1圧力付与部52は、1組のガイド部53によりガイドされた状態で、押圧ボルト51の延びる方向にスライドすることができる。
【0038】
第1圧力付与部52よりも押圧ボルト51の先端部51C側には、第2圧力付与部54が位置している。第2圧力付与部54は、押圧ボルト51の締付方向への回転に応じて、押圧ボルト51からの押圧力を、バレルケース30に収容されたバレル槽40に付与するための部材である。具体的には、第2圧力付与部54は、ガイド部53における、押圧ボルト51の先端部51C側の端に固定されている。第2圧力付与部54は、角柱状の座部54Aと、座部54Aから押圧ボルト51の延びる方向に突出する一組の脚部54Bとを有している。
【0039】
ホルダー60は、第1圧力付与部52を貫通する押圧ボルト51の先端部51Cに当接することで、押圧ボルト51からの押圧力を、第2圧力付与部54を介してバレルケース30に収容されたバレル槽40に付与する部材である。本実施形態では、ホルダー60は、押圧ボルト51の延びる方向において、第1圧力付与部52と、第2圧力付与部54との間に設けられている。
【0040】
ホルダー60は、ホルダー本体61と、ストッパー62と、ホルダーばね63とを有している。ホルダー本体61は、押圧ボルト51の延びる方向に貫通する貫通穴を有し、この貫通穴に、ストッパー62と、ホルダーばね63と収容している。なお、本実施形態では、ホルダー本体61の貫通穴は、座部54Aの貫通穴と連通している。ホルダーばね63は、ホルダー本体61及び座部54Aの貫通穴の内部で、ストッパー62に対して弾性押圧力を付与する。
【0041】
ホルダーばね63は、コイルばねにより構成されている。本実施形態では、ホルダーばねが第1弾性部材の一例である。ホルダーばね63は、ストッパー62に弾性押圧力を付与するものであればよく、コイルばね以外にも弾性力を有する樹脂であってもよい。また、ストッパー62とホルダーばね62とが一体となって第1弾性部材を形成していてもよい。
【0042】
戻りばね55は、押圧ボルト51の延びる方向において、第1圧力付与部52と、第2圧力付与部54との間に位置することで、第1圧力付与部52に弾性押圧力を与える。具体的には、戻りばね55は、コイルばねであり、1組のガイド部53により貫通された状態で、第1圧力付与部52と、第2圧力付与部54との間に位置している。これにより、第1圧力付与部52を、初期位置から、ガイド部53に沿って押圧ボルト51の先端部51C側にスライドさせた後、先端部51C側への力を解除することで、第1圧力付与部52は、戻りばね55による弾性力により、押圧ボルト51の頭部51A側にスライドし、初期位置に戻ることができる。
【0043】
本実施形態では、戻りばね55が、第2弾性部材の一例である。戻りばね55は、第1圧力付与部52の位置をガイド部53に沿って初期値に戻すことができる弾性押圧力を付与できるものでればよく、コイルばねに限定されない。本実施形態では、戻りばね55の弾性力は、ホルダーばね63の弾性力よりも弱く、言い換えると、ホルダーばね63の弾性力は、戻りばね55による弾性力よりも強い。
【0044】
次に、バレルケース30内に収容されたバレル槽40を、固定部材50を用いて固定する手順を、図9を用いて説明する。なお、図9では、バレル槽40を簡略化して図示している。まず、作業者は、バレル槽40におけるバレル本体41のワーク収容空間44にワークと研磨石、必要に応じて水とコンパウンドを装入する。作業者は、バレル蓋42により、バレル本体41の開口を遮蔽し、クランプハンドル47を操作することで、バレル蓋42をバレル本体41に固定する。
【0045】
次に、図9(a)に示すように、作業者は、バレルケース30の槽収容空間35に、バレル槽40をバレル蓋42が第1方向D1側に位置するように収容する。この時、バレルケース30の一組の支持部33が、バレル槽40の一組の槽側受部45を下方側(第2方向D2側)から支持することで、バレル槽40は槽収容空間35内で位置決めされる。
【0046】
次に、図9(b)に示すように、バレルケース30の槽収容空間35に、固定部材50を、バレル槽40よりも第1方向D1側に装着する。具体的には、作業者は、固定部材50の第1圧力付与部52を第2圧力付与部54に向けて押し下げるように操作することで、戻りばね55を収縮させて、第1圧力付与部52と第2圧力付与部54とを近づける。この状態で、作業者は、第2圧力付与部54の脚部54Bの先端が、バレル槽40の槽側受部45の上方に位置するように、固定部材50を、槽収容空間35の内部に装着する。作業者による第1圧力付与部52に対する押し下げが解除されることで、槽収容空間35内において、第1圧力付与部52が、戻りばね55からの弾性押圧力により、第1方向D1側へスライドし、受圧部34に当接可能な位置となる。これにより、戻りばね55により付与された弾性押圧力により、第1圧力付与部52を受圧部34に仮固定することができる。このとき、第1圧力付与部52には、戻りばね55による第1方向D1での弾性押圧力と、付勢ばね34C(図9では不図示)による第2方向D2での弾性押圧力とが作用している。このため、第1圧力付与部52を、離間方向D3において、第1方向D1及び第2方向D2での各弾性押圧力と、第1圧力付与部52の自重とが釣り合う位置にする。
【0047】
図9(c)に示すように、作業者は、槽収容空間35内に装着された固定部材50に対して、押圧ボルト51の頭部51Aが、固定位置になるまで、締結方向に回転させていく。押圧ボルト51の頭部51Aが「固定位置」になるとは、図2で示したように、バレルケース30に装着された固定部材50における押圧ボルト51が、締付方向に十分に回転されることで、頭部51Aが、上下方向(離間方向D3)で、投光部15Aが光を照射する位置よりも、下方側(第2方向D2側)に位置していることを意味する。固定位置は、押圧ボルト51の頭部51Aにより、投光部15Aからの光を遮蔽しない上限位置でもある。
【0048】
押圧ボルト51の締付方向への回転により、先端部51Cが、ホルダー60のストッパー62(図9では不図示)に当接すると、ホルダーばね63(図9では不図示)による第1方向D1での弾性押圧力がホルダー60を介して押圧ボルト51に付与される。更に、押圧ボルト51を、ホルダーばね63からの弾性押圧力に逆らって締付方向へ回転させることで、第1圧力付与部52が第1方向D1側に変位し、第2圧力付与部54が第2方向D2側に変位する。
【0049】
押圧ボルト51を、頭部51Aが固定位置になるまで締付方向に回転させることで、第1圧力付与部52の第1方向D1側の縁部が、バレルケース30の受圧部34に当接する位置となり、受圧部34に対して第1方向D1の押圧力を付与する。また、押圧ボルト51の第1圧力付与部52を貫通する先端部51Cが、ホルダー60のストッパー62に当接しているため、第2方向D2での押圧力を、ストッパー62を介して第2圧力付与部54に付与する。これにより、第1圧力付与部52による第1方向D1での受圧部34に対する押圧力と、第2圧力付与部54による、第2方向D2でのバレル槽40に対する押圧力とにより、バレル槽40は槽収容空間35内に固定される。
【0050】
上述した、固定部材50を用いたバレル槽40の固定を、他のバレルケース30に収容されたバレル槽40に対しても行う。そして、作業者は、操作盤11を操作して、回転数や、研磨時間といった稼働条件を入力し、起動ボタンを操作することで、遠心バレル研磨機100の運転を開始させる。
【0051】
次に、遠心バレル研磨機100の運転時において、制御部10が実行する処理の手順を、図10を用いて説明する。作業者による起動ボタンの操作により、シーケンサ12は、ステップ10で、バレルケース30の公転と自転とを開始させることで、運転を開始する。具体的には、シーケンサ12は、公転用駆動回路13により公転用モータ24を稼働条件(公転回転速度)で回転させ、自転用駆動回路14により、自転用モータ25を稼働条件(自転回転速度)で回転させる。以下、ステップを、「S」とも記載する。
【0052】
S11では、シーケンサ12は、検知領域内に侵入したバレルケース30に対して、押圧ボルト51の頭部51Aが固定位置にあるか否かを判断する。遠心バレル研磨機100の運転中は、バレルケース30に収容されるバレル槽40や固定部材50に対して、例えば、10~40Gあまりの大きな遠心力が作用する。そのため、遠心バレル研磨機100の運転中に、緩み検知部15は、バレルケース30内で、押圧ボルト51の緩みを監視している。具体的には、検知領域内に位置する、押圧ボルト51の頭部51Aが、緩み検知部15の投光部15Aによる光を遮光する位置にない場合、受光部15Bからの検知信号が変化しないため、シーケンサ12は、頭部51Aが、固定位置にあると判断し、S12に進む。
【0053】
S12では、シーケンサ12は、作業者により入力された研磨時間を経過したか否かを判断する。研磨時間が経過していなければ、S11に戻り、押圧ボルト51の頭部51Aが固定位置であるか否かを判断する。即ち、遠心バレル研磨機100の運転中は、押圧ボルト51に対して、緩みが常に監視されている。
【0054】
その後、S12で研磨時間を経過した場合、シーケンサ12は、S13に進み、公転用駆動回路13によりバレルケース30の公転を停止させ、自転用駆動回路14によりバレルケース30の自転を停止させる。即ち、遠心バレル研磨機100の運転を停止させる。
【0055】
一方、運転中に、シーケンサ12は、固定部材50の押圧ボルト51の頭部51Aが、固定位置にないことを判断すると(S11:NO)、S13に進み、上述したように、遠心バレル研磨機100の運転を停止させる。以下、図11を用いて、押圧ボルト51が緩み方向に回転する場合の、固定部材50の動作を説明する。
【0056】
図11(a)に示されるように、運転中に押圧ボルト51に振動等の外力が作用することで、頭部51Aが緩み方向に回転し、押圧ボルト51からストッパー62への第2方向D2での押圧力が軽減する。
【0057】
図11(b)に示すように、押圧ボルト51の緩み方向への回転が継続することで、先端部51Cによるホルダー60への第2方向D2への押圧力が解除される。ホルダー60に対する押圧ボルト51による第2方向D2への押圧力が解除されることで、ストッパー62は、ホルダーばね63による第1方向D1への弾性押圧力により第1方向D1側へ変位し、押圧ボルト51の先端部51Cとの当接を継続する。これにより、押圧ボルト51の先端部51Cには、ストッパー62を介してホルダーばね63からの弾性押圧力が付与され続け、押圧ボルト51、及びこの押圧ボルト51に貫通されて螺合された第1圧力付与部52を第1方向D1側に変位させ易くする。
【0058】
この例では、図11(b)において、ホルダーばね63からの弾性押圧力により、第1圧力付与部52の第1方向D1側の縁部が、受圧部34と当接する位置に留まる。これにより、押圧ボルト51の頭部51Aが固定位置よりも第1方向D1側に出ることで、シーケンサ12は、押圧ボルト51の頭部51Aが固定位置でないことを判断し(S11:NO)、S13に進み、バレルケース30の公転及び自転を停止させる。
【0059】
なお、この例では、押圧ボルト51の緩み方向への回転が更に継続することで、図11(c)に示すように、先端部51Cがストッパー62から離れている。この状態では、第1圧力付与部52は、ホルダーばね63からの第1方向D1での弾性押圧力を付与されないため、離間方向D3において、戻りばね55による弾性押圧力と、付勢ばね34Cによる弾性押圧力と、自重とが釣り合う位置になる。例えば、図11(c)では、釣り合いにより、第1圧力付与部52の第1方向D1側の縁部は、受圧部34の圧力付与ピン34Bの先端よりも第2方向D2側に位置している。
【0060】
図12は、比較例として、ホルダー60がホルダーばね63を備えておらず、押圧ボルト51の先端部51Cを、ホルダー60の第1方向D1側の端面で受ける構成の固定部材50の動作を説明する図である。比較例においても、図12(a)に示すように、運転中に押圧ボルト51に振動等の外力が作用することで、頭部51Aが緩み方向に回転し、押圧ボルト51からホルダー60の端面への第2方向D2での押圧力が軽減する。
【0061】
図12(b)に示すように、押圧ボルト51の緩み方向への回転が継続することで、先端部51Cからホルダー60への第2方向D2への押圧力が解除される。比較例では、図11(b)で示した例と比べて、押圧ボルト51の先端部51Cには、ホルダーばね63による第1方向D1での弾性押圧力が付与されず、第1圧力付与部52は、離間方向D3において、釣り合いにより生じた位置になる。例えば、釣り合いにより、第1圧力付与部52が、離間方向D3において、押圧ボルト51の先端部51Cとホルダー60との隙間分だけ変位する場合、押圧ボルト51の頭部51Aは固定位置のままである場合がある。
【0062】
比較例では、図12(b)において、押圧ボルト51の緩みが許容できないものになっているが、押圧ボルト51の頭部51Aが投光部15Aからの光を遮光していないため、シーケンサ12は、押圧ボルト51の頭部51Aが固定位置であると判断し(S11:YES)、バレルケース30の公転及び自転を継続させる。
【0063】
なお、比較例では、押圧ボルト51の頭部51Aの緩み方向への回転が更に継続することで、図12(c)に示すように、第1圧力付与部52から第1方向D1に出る押圧ボルト51の量が多くなり、頭部51Aが、固定位置よりも第1方向D1側に変位する。そのため、シーケンサ12は、押圧ボルト51の頭部51Aが固定位置よりも第1方向D1側に出ていることを判断し(S11:YES)、バレルケース30の公転及び自転を停止させる。言い換えると、比較例では、押圧ボルト51の緩み方向への回転量が、本実施形態において図11(b)で示す量よりも多くならないと、遠心バレル研磨機100の運転を停止することができない。
【0064】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
遠心バレル研磨機100の動作中に、押圧ボルト51の緩み方向への回転により、押圧ボルト51が第1圧力付与部52に対して緩んだ場合でも、ホルダーばね63により付与される第1方向D1の弾性押圧力により、押圧ボルト51の頭部51Aが固定位置よりも第1方向D1側に変位し易くなる。そのため、緩み検知部15により押圧ボルト51の緩みを確実に検知することができ、制御部10は、押圧ボルト51の緩みに応じてターレット22の回転駆動を停止させることができる。その結果、バレルケース30に対するバレル槽40の固定が完全に解除されてしまう前に、遠心バレル研磨機100の駆動を安全に停止させることができる。
【0065】
固定部材50は、押圧ボルト51が緩み、押圧ボルト51からホルダー60への第2方向D2での押圧力が解除された場合でも、ホルダーばね63により押圧ボルト51に第1方向D1での押圧力を付与することができる。これにより、押圧ボルト51の頭部51Aが固定位置から第1方向D1に変位し易くなることで、シーケンサ12は、バレルケース30に対するバレル槽40の固定が完全に解除されてしまう前に、遠心バレル研磨機100の駆動を安全に停止させることができる。
【0066】
固定部材50は、戻りばね55により付与された弾性押圧力により、第1圧力付与部52を受圧部34に仮固定することができる。これにより、固定部材50をバレルケースの内へ装着する際の作業性を向上させることができる。
【0067】
遠心バレル研磨機100では、バレルケース30にバレル槽40が収容された状態で、固定部材50の第1圧力付与部52に対して、付勢ばね34Cによる第2方向D2での弾性押圧力が付与され続ける。そのため、例えば、第1圧力付与部52と受圧部34との間に研磨液等が付着することで、第1圧力付与部が受圧部から離れにくくなることを抑制することができる。その結果、バレルケースから、固定部材50を取り外す際の作業性が低下することを抑制することができる。
【0068】
(第1実施形態の変形例)
上述の実施形態では、バレル槽40と、固定部材50とは別部材として構成されていた。これに代えて、バレル蓋42に固定部材50が固定されることで、バレル槽40と固定部材50とは一体となっていてもよい。この場合において、バレル蓋42に固定された固定部材50は、押圧ボルト51と、第1圧力付与部52と、ホルダー60とを有している。本実施形態では、固定部材50は、1組のガイド部53、戻りばね55、第2圧力付与部54を有していない。ホルダー60は、押圧ボルト51の延びる方向において、第1圧力付与部52と、バレル蓋42との間に位置している。
【0069】
上記構成の固定部材50では、バレル槽40をバレルケース30に収容した状態で、押圧ボルト51を、頭部51Aが固定位置になるまで締付方向に回転させることで、第1圧力付与部52の第1方向D1側の縁部が、バレルケース30の受圧部34に当接する位置となり、第1方向D1の押圧力を受圧部34に付与する。また、押圧ボルト51の先端部51Cが、バレル蓋42に固定されたホルダー60に当接した状態で、第2方向D2での押圧力を、ストッパー62を介してバレル槽40に付与する。これにより、バレル槽40は、第1圧力付与部52による第1方向D1での受圧部34に対する押圧力と、押圧ボルト51による、第2方向D2での押圧力とにより、バレルケース30の槽収容空間35の内に固定される。上記構成においても、押圧ボルト51が緩んだ場合でも、ホルダーばね63により付与される第1方向D1の弾性押圧力により、押圧ボルト51の頭部51Aが固定位置よりも第1方向D1側に変位し易くなる。そのため、制御部10は、押圧ボルト51の緩みに応じてターレット22の回転駆動を、安全に停止させることができる。
【0070】
(その他の実施形態) 本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
シーケンサ12は、図10のS10において、ワークに対する研磨開始に先立ち、バレルケース30に収容されたバレル槽40に対して固定状態の検知を行うものであってもよい。なお、固定状態の検知は、S11で、押圧ボルト51の頭部51Aが固定位置にあるか否かの判断と同様である。
【0071】
上述の実施形態では、固定部材50は、第2弾性部材として、戻りばね55を有していた。これに代えて、固定部材50は、戻りばね55を有していなくともよい。
【0072】
上述の実施形態では、バレルケース30の受圧部34は、付勢ばね34Cと、圧力付与ピン34Bとを有していた。これに代えて、受圧部34は、付勢ばね34Cと圧力付与ピン34Bとを有しておらず、受圧部本体34Aの下面で第1圧力付与部52による押圧力を受ける構成であってもよい。
【0073】
上述した実施形態では、公転軸21と、自転軸28とは、共に上下方向に延びていた。これに代えて、公転軸21と、自転軸28とは、水平方向に延びていてもよい。この場合、ターレット22は、水平方向に延びる公転軸21を回転中心として、回転可能に保持されている。また、バレルケース30内において、支持部33と受圧部34とは、水平方向に離間しているため、離間方向D3は、水平方向に平行な方向となる。
【符号の説明】
【0074】
10…制御部、15…緩み検知部、21…公転軸、22…ターレット、30…バレルケース、33…支持部、34…受圧部、40…バレル槽、50…固定部材、51…押圧ボルト、52…第1圧力付与部、54…第2圧力付与部、60…ホルダー、63…ホルダーばね(第1弾性部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12