(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119463
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】溶接機
(51)【国際特許分類】
H02J 1/14 20060101AFI20240827BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240827BHJP
B23K 9/073 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
H02J1/14
H02J7/34 A
B23K9/073 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026376
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】久富 和郎
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】西垣 安貴
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和馬
(72)【発明者】
【氏名】河内 祐也
【テーマコード(参考)】
4E082
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
4E082BA01
4E082CA03
4E082DA01
5G165AA08
5G165DA02
5G165EA02
5G165EA04
5G165LA01
5G165NA10
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503DA07
5G503DA18
5G503EA05
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】小型軽量化を図ることができる溶接機を提供する。
【解決手段】本開示に係る溶接機1は、直流電源2から電力が入力される入力部11と、該入力部11に入力された電力によって充電される蓄電部15と、入力された電力を溶接用電極13に出力する出力部12とを備え、前記蓄電部15の電圧が前記入力部11の電圧よりも低い場合、前記入力部11に入力された電力が前記出力部12に入力され、前記蓄電部15の電圧が前記入力部11の電圧よりも高い場合、前記蓄電部15が出力した電力が前記出力部12に入力されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から電力が入力される入力部と、
該入力部に入力された電力によって充電される蓄電部と、
入力された電力を溶接用電極に出力する出力部と
を備え、
前記蓄電部の電圧が前記入力部の電圧よりも低い場合、前記入力部に入力された電力が前記出力部に入力され、
前記蓄電部の電圧が前記入力部の電圧よりも高い場合、前記蓄電部が出力した電力が前記出力部に入力されることを特徴とする溶接機。
【請求項2】
前記蓄電部の電圧が前記入力部の電圧以上である場合、前記入力部に入力された電力と前記蓄電部が出力した電力とが互いに重畳されて前記出力部に入力されることを特徴とする請求項1に記載の溶接機。
【請求項3】
前記蓄電部の蓄電残量を検出する検出部と、
該検出部の検出結果が所定量を下回る場合、所定の処理を実行する実行部と
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接機。
【請求項4】
前記蓄電部の電圧が前記入力部の電圧よりも低い場合、前記蓄電部は前記入力部に入力された電力によって充電されることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接機。
【請求項5】
前記蓄電部の公称電圧は前記直流電源の公称電圧に等しいことを特徴とする請求項4に記載の溶接機。
【請求項6】
前記入力部は、前記直流電源に電気的に接続するためのコネクタを有し、
前記蓄電部は、前記コネクタと隣り合うようにして、前記直流電源に並列に、且つ着脱可能に前記入力部に接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電力によって充電される蓄電部(例えばバッテリー)を備える溶接機が一般に用いられている。特許文献1に記載の溶接機(文中「バッテリー溶接機」)は、商用交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換してバッテリーを充電する構成である。溶接機をバッテリー駆動で使用することにより、商用交流電源がない場所でも溶接を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、軽量なバッテリーセルでバッテリーを構成することによって溶接機を軽量化することが記載されているが、溶接機の小型化に関する記載はない。
【0005】
本開示の目的は、小型軽量化を図ることができる溶接機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る溶接機は、直流電源から電力が入力される入力部と、該入力部に入力された電力によって充電される蓄電部と、入力された電力を溶接用電極に出力する出力部とを備え、前記蓄電部の電圧が前記入力部の電圧よりも低い場合、前記入力部に入力された電力が前記出力部に入力され、前記蓄電部の電圧が前記入力部の電圧よりも高い場合、前記蓄電部が出力した電力が前記出力部に入力されることを特徴とする。
【0007】
本開示にあっては、直流電源から入力部に電力が入力される。入力部に入力された電力によって蓄電部が充電される。
蓄電部の電圧が入力部の電圧よりも高い場合、入力部に入力された電力が出力部に入力される。出力部は、入力された電力を溶接用電極に出力する。故に、溶接機を直流電源に接続した状態で溶接を行なうことができる。
一方、蓄電部の電圧が入力部の電圧よりも低い場合、蓄電部が出力した電力が出力部に入力される。故に、例えば直流電源の電圧が不安定な状態でも溶接を行なうことができる。
蓄電部の電圧が入力部の電圧に等しい場合、入力部に入力された電力及び蓄電部が出力した電力の少なくとも一方が出力部に入力されればよい。
【0008】
以上のような溶接機は、交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換する交直変換部を備える必要がない。交直変換部が存在しない分、溶接機の小型軽量化を図ることができる。しかも、溶接機の製造コストを抑えることができ、更に、交直変換による電力の損失を防止することができる。
【0009】
本開示に係る溶接機は、前記蓄電部の電圧が前記入力部の電圧以上である場合、前記入力部に入力された電力と前記蓄電部が出力した電力とが互いに重畳されて前記出力部に入力されることを特徴とする。
【0010】
本開示にあっては、蓄電部の電圧が入力部の電圧以上である場合、入力部に入力された電力と蓄電部が出力した電力とが互いに重畳されて出力部に入力される。直流電源に接続された状態で溶接機が使用されるので、蓄電部が出力する電力は直流電源から入力される電力を補完することができる程度の大きさであればよい。故に、比較的に小容量の小型軽量な蓄電部を用いることができるので、溶接機を更に小型軽量化することができる。
【0011】
本開示に係る溶接機は、前記蓄電部の蓄電残量を検出する検出部と、該検出部の検出結果が所定量を下回る場合、所定の処理を実行する実行部とを更に備えることを特徴とする。
【0012】
本開示にあっては、検出部が蓄電部の蓄電残量を検出する。検出部の検出結果(即ち蓄電部の蓄電残量)が所定量を下回る場合、実行部が所定の処理を実行する。
例えば蓄電部の電圧が入力部の電圧よりも高い状態が長時間継続した場合、蓄電部の蓄電残量が所定量を下回るまで減少することがある。蓄電残量が少ない蓄電部は十分に給電することができない。不十分な電力で溶接が行なわれると、溶接の品質が悪化する虞がある。そこで、実行部が所定の処理を実行することにより、蓄電残量が少ない蓄電部による溶接機の駆動を防止することができる。
【0013】
本開示に係る溶接機は、前記蓄電部の電圧が前記入力部の電圧よりも低い場合、前記蓄電部は前記入力部に入力された電力によって充電されることを特徴とする。
【0014】
本開示にあっては、蓄電部の電圧が入力部の電圧よりも低い場合、蓄電部は入力部に入力された電力によって充電されるので、蓄電部を充電するための電力を受電する受電部を別途備える必要がない。
蓄電部の電圧に比べた入力部の電圧の高低に応じて蓄電部の充放電が行なわれるので、溶接機における電力需要の変動が直流電源の電圧に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0015】
本開示に係る溶接機は、前記蓄電部の公称電圧は前記直流電源の公称電圧に等しいことを特徴とする。
【0016】
本開示にあっては、蓄電部の公称電圧が直流電源の公称電圧に等しいので、入力部と蓄電部との間に変圧部を備える必要がない。故に、変圧部が存在しない分、溶接機の小型軽量化を図ることができる。ここで、蓄電部(直流電源)の公称電圧は、設計時に定められた蓄電部(直流電源)の出力電圧の代表値である。
【0017】
本開示に係る溶接機は、前記入力部は、前記直流電源に電気的に接続するためのコネクタを有し、前記蓄電部は、前記コネクタと隣り合うようにして、前記直流電源に並列に、且つ着脱可能に前記入力部に接続されることを特徴とする。
【0018】
本開示にあっては、蓄電部が着脱可能に入力部に接続される。故に、劣化した蓄電部を新たな蓄電部と交換したり、蓄電残量が少ない蓄電部を蓄電残量が多い蓄電部と交換したりすることが容易である。劣化した蓄電部、又は蓄電残量が少ない蓄電部は十分に給電することができないが、新たな蓄電部、又は蓄電残量が多い蓄電部は十分に給電することができる。故に、不十分な電力で溶接が行なわれることによる溶接の品質の悪化を防止することができる。
【0019】
蓄電部は直流電源に並列に入力部に接続されるので、直流電源による給電時も蓄電部による給電時も入力部から出力部までの通電経路を共用することができる。
入力部は、直流電源に電気的に接続するためのコネクタを有する。コネクタと蓄電部の着脱位置とが互いに隣り合うので、例えば使用者がこれらを見つけやすい。また、コネクタ及び蓄電部をまとめて、例えば溶接作業により生じる熱、火花等からの悪影響を受けにくい位置に配することができる。
【0020】
[付記]
本開示に係る溶接機は、前記出力部に電力を入力するための通電経路を継断するスイッチを更に備え、前記所定の処理は前記スイッチをオフにすることであることを特徴とする。
【0021】
本開示にあっては、検出部の検出結果が所定量を下回る場合、実行部が所定の処理として、出力部に電力を入力するための通電経路を継断するスイッチをオフにすることを実行する。この結果、溶接の実行が確実に阻止される。故に、不十分な電力で溶接が行なわれることによる溶接の品質の悪化を確実に防止することができる。
【0022】
本開示に係る溶接機は、前記所定の処理は、使用者の注意を喚起する注意喚起部に注意喚起させることであることを特徴とする。
【0023】
本開示にあっては、検出部の検出結果が所定量を下回る場合、実行部が所定の処理として、使用者の注意を喚起する注意喚起部に注意喚起させることを実行する。この結果、使用者は溶接すべきではない状況であることを知る。故に、不十分な電力で溶接が行なわれることによる溶接の品質の悪化を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の溶接機によれば、溶接機の小型軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態1に係る溶接機の要部構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態2に係る溶接機の要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施の形態について説明する。
【0027】
実施の形態 1.
図1は実施の形態1に係る溶接機の要部構成を示すブロック図である。
図中1は溶接機であり、溶接機1は直流電源2に接続されて駆動される。直流電源2は溶接機1の外部に設けられている。例えば工場に敷設された直流母線が直流電源2として用いられる。
【0028】
溶接機1は入力部11及び出力部12を備える。
入力部11はコネクタ111を有し、コネクタ111と直流電源2とはケーブルを介して電気的に接続される。入力部11には直流電源2から直流電力が入力される。
出力部12は入力部11に直列に接続されている。出力部12にはケーブルを介して溶接用電極13が電気的に接続される。例えばアーク溶接の場合、溶接用電極13は、溶融式又は非溶融式の電極棒、及び、母材に取り付けられる導電性のクランプである。スポット溶接の場合、溶接用電極13は、母材を挟み持つ一対の電極である。
【0029】
溶接機1は、入力部11と出力部12との間に、平滑部141、インバータ部142、高周波トランス部143、整流部144、及び直流リアクトル部145を備える。
平滑部141は例えばコンデンサであり、直流電源2から入力部11に入力された直流電力は平滑部141に一旦充電されてからインバータ部142に入力される。インバータ部142に入力された直流電力は交流電力に変換されてから高周波トランス部143に入力される。高周波トランス部143に入力された交流電力は変圧されてから整流部144に入力される。整流部144は例えば全波整流回路であり、整流部144に入力された交流電力は直流電力に変換されてから直流リアクトル部145に入力される。直流リアクトル部145は例えばコイルであり、直流リアクトル部145に入力された直流電力は平滑されてから出力部12に入力される。
【0030】
出力部12に入力された直流電力は、出力部12から溶接用電極13に出力される。溶接用電極13に入力された直流電力により、母材が溶接される。
溶接の実行時には、溶接用電極13に瞬間的に大きな電流が流れ、入力部11及び出力部12の電圧が急激に低下する。入力部11の急激な電圧低下の影響を受けて、直流電源2の電圧も急激に低下する。
直流電源2に、溶接機1とは異なる他の電気機器(例えば他の溶接機)が接続されている場合、他の電気機器に起因する直流電源2の電圧低下により、入力部11の電圧が低下する虞がある。この場合、入力部11から出力部12を介して溶接用電極13に十分に給電することができない。
なお、直流電源2の電圧低下の原因は他の電気機器に限定されない。
【0031】
溶接用電極13への給電不足を防止するために、溶接機1は蓄電部15を備える。
蓄電部15は、1又は複数のバッテリーセルで構成された蓄電池(バッテリー)である。蓄電部15の公称電圧は直流電源2の公称電圧に等しい。
蓄電部15は、直流電源2に対して並列となるようにして、入力部11に接続されている。蓄電部15の電圧が入力部11のコネクタ111の電圧よりも低い場合、蓄電部15は直流電源2から入力部11に入力された直流電力によって充電される。また、直流電源2から入力部11に入力された直流電力が平滑部141に入力される。
【0032】
一方、蓄電部15の電圧が入力部11のコネクタ111の電圧以上である場合、直流電源2から入力部11に入力された直流電力と蓄電部15から出力された電力とが互いに重畳されて平滑部141に入力される。
平滑部141は、直流電源2(又は直流電源2と蓄電部15と)から出力部12を介して溶接用電極13に安定して給電するための緩衝部として機能する。蓄電部15も溶接用電極13に安定して給電するための緩衝部として機能するので、平滑部141として比較的に小容量のコンデンサを用いることができる。
【0033】
以上のような溶接機1を用いる場合、使用者は、溶接機1を直流電源2に接続した状態で母材の溶接を行なう。
蓄電部15の電圧が入力部11のコネクタ111の電圧よりも高い場合、直流電源2から入力部11に入力された電力が出力部12に入力される。蓄電部15の電圧が入力部11のコネクタ111の電圧以上である場合、直流電源2から入力部11に入力された電力と蓄電部15が出力した電力とが互いに重畳されて出力部12に入力される。故に、例えば直流電源2の電圧が不安定な状態でも溶接を行なうことができる。
【0034】
溶接機1によれば、溶接機1の小型軽量化を図ることができ、溶接機1の製造コストを抑えることができる。その理由は次の4つである。
第1の理由は、溶接機1が、溶接機1の外部に設けられている交流電源(例えば商用直流電源)から入力された交流電力を直流電力に変換する交直変換部を備える必要がないことである。なお、交直変換部が存在しないので、交直変換による電力の損失を防止することができるという利点もある。また、溶接機1の寿命が、交直変換部を構成する部品(例えば電解コンデンサ)の寿命による制限を受けないという利点もある。
【0035】
第2の理由は、蓄電部15として小容量の小型軽量な蓄電池を用いることができることである。何故ならば、溶接機1は直流電源2に接続された状態で使用されるので、蓄電部15が出力する電力は、直流電源2から入力される電力を補完することができる程度の大きさであればよいからである。例えば蓄電部15は、直流電源2から独立してバッテリー駆動で使用する場合に備えるべき蓄電池、又は、直流電源2からの電力が完全に途絶えた場合のバックアップ電源としての蓄電池よりも小容量であればよい。
【0036】
第3の理由は、蓄電部15を充電するための電力を受電する受電部を別途備える必要がないことである。何故ならば、蓄電部15の電圧が入力部11のコネクタ111の電圧よりも低い場合、蓄電部15は入力部11に入力された電力によって充電されるからである。
第4の理由は、蓄電部15の公称電圧が直流電源2の公称電圧に等しいので、入力部11と蓄電部15との間に変圧部(例えばDC/DCコンバータ)を備える必要がないことである。
【0037】
蓄電部15の充放電は、蓄電部15の電圧に比べた入力部11のコネクタ111の電圧の高低に応じて、蓄電部15の電圧と入力部11のコネクタ111の電圧とが一致するように、自律的に行なわれる。故に、溶接機1における電力需要の変動が直流電源2の電圧に悪影響を与えることを抑制することができる。
【0038】
図2は溶接機1の外観を示す模式図である。
溶接機1の筐体10は、例えば工場の床面に設置される。
入力部11のコネクタ111は、例えば筐体10の背面に配されている。この場合、溶接機1の筐体10の正面(不図示)に出力部12が配されている。出力部12は溶接作業が行なわれる作業領域に向けられ、ケーブルを介して溶接用電極13が接続される。
また、筐体10の背面に、コネクタ111に隣り合うようにして、支持具16が固定されている。
【0039】
支持具16はDINレールであり、支持具16には蓄電部15が着脱可能に装着される。入力部11は、コネクタ111に並列に接続されたバッテリー用コネクタ112を備える。支持具16に装着された蓄電部15は、ケーブル151を介してバッテリー用コネクタ112に電気的に接続される。なお、支持具16はDINレールに限定されず、例えば蓄電部15がネジ留めされる構成の部材でもよい。バッテリー用コネクタ112は入力部11に設けられる構成に限定されない。
【0040】
蓄電部15が着脱可能なので、劣化した蓄電部15を新たな蓄電部15と交換したり、蓄電残量が少ない蓄電部15を蓄電残量が多い蓄電部15と交換したりすることが容易である。劣化した蓄電部15、又は蓄電残量が少ない蓄電部15は十分に給電することができないが、新たな蓄電部15、又は蓄電残量が多い蓄電部15は十分に給電することができる。故に、不十分な電力で溶接が行なわれることによる溶接の品質の悪化を防止することができる。
【0041】
蓄電部15は直流電源2に並列に入力部11に接続されるので、直流電源2による給電時も蓄電部15及び直流電源2による給電時も入力部11から出力部12までの通電経路を共用することができる。
コネクタ111と支持具16(即ち蓄電部15の着脱位置)とが筐体10の背面にて互いに隣り合うので、これらを使用者又は保守作業者等が見つけやすい。また、蓄電部15及びコネクタ111をまとめて、例えば溶接作業により生じる熱、火花等からの悪影響を受けにくい位置に配することができる。
コネクタ111及び支持具16を配する面は、サービス面(修理、メンテナンス等の保守作業を行なう際に保守作業者が使用する面)でもよい。
【0042】
ところで、例えば蓄電部15の電圧が入力部11のコネクタ111の電圧よりも高い状態が長時間継続した場合、蓄電部15の蓄電残量が所定量を下回るまで減少することがある。又は、使用者が、蓄電残量が所定量を下回る蓄電部15を支持具16に装着するかもしれない。蓄電残量が少ない蓄電部15は十分に給電することができない。不十分な電力で溶接が行なわれると、溶接の品質が悪化する虞がある。
そこで、溶接機1はスイッチ17及び制御装置18を備える。
【0043】
スイッチ17は、出力部12に電力を入力するための通電経路を継断する。本実施の形態では、スイッチ17は入力部11の下流且つ平滑部141の上流に配されている。スイッチ17がオンの場合、直流電源2(又は直流電源2と蓄電部15と)から溶接用電極13への給電も直流電源2から蓄電部15への給電も可能である。スイッチ17がオフの場合、直流電源2(又は直流電源2と蓄電部15と)から溶接用電極13への給電は不可能であるが、直流電源2から蓄電部15への給電は可能である。
【0044】
制御装置18は、例えばバッテリマネジメントユニット(BMU)である。制御装置18は制御部181及び検出部182を備える。制御部181は、揮発性の主記憶部を作業領域として用い、不揮発性の補助記憶部が記憶しているコンピュータプログラムに従って、各種の演算処理及び制御処理等を実行する1又は複数のプロセッサを有する。例えば、制御部181は、蓄電部15の蓄電残量に基づいて、蓄電部15に充電するための充電器(不図示)のオンとオフとを切り替える。検出部182は、例えば電圧センサを有し、蓄電部15の電圧に基づいて、蓄電部15の蓄電残量を検出する。
【0045】
制御部181は、検出部182の検出結果(即ち蓄電部15の蓄電残量)に基づいて、スイッチ17のオンとオフとを切り替える。蓄電部15の蓄電残量が所定量以上である場合、制御部181はスイッチ17をオンにしておく。蓄電部15の蓄電残量が所定量を下回った場合、制御部181はスイッチ17をオフにする。スイッチ17をオフにした後で、蓄電部15の蓄電残量が所定量以上に達した場合、制御部181は、例えば蓄電部15の蓄電残量が所定量以上である状態が所定時間継続したときにスイッチ17をオンにする。スイッチ17は、例えば常開接点を有するリレーである。この場合、制御部181はスイッチ17をオンにするときにスイッチ17にオン信号を出力し、スイッチ17をオフにするときにスイッチ17へのオン信号の出力を停止する。
【0046】
以上のような制御部181は、検出部182の検出結果が所定量を下回る場合に所定の処理を実行する実行部として機能する。この所定の処理として、制御部181がスイッチ17をオフにするので、溶接の開始は阻止され、実行中の溶接は強制的に中止される。故に、不十分な電力で溶接が行なわれることによる溶接の品質の悪化を確実に防止することができる。
スイッチ17が蓄電部15の下流にあるので、溶接機1を使用しない場合には蓄電残量が少ない蓄電部15を溶接機1に装着して充電することができる。蓄電部15が着脱可能なので、溶接機1を使用する場合には蓄電残量が少ない蓄電部15を溶接機1から取り外して溶接機1の外部で充電することができる。
【0047】
なお、直流電源2は前述の直流母線に限定されず、例えば商用直流電源でもよい。
蓄電部15は着脱不可能でもよく、蓄電池に限定されず、例えばコンデンサでもよい。
溶接機1は、入力部11と出力部12との間に平滑部141~直流リアクトル部145を備える構成に限定されない。例えば直流リアクトル部145に替えて、並列に接続された平滑コンデンサが備えられてもよい。変圧が不要であればインバータ部142~直流リアクトル部145は不要である。
【0048】
溶接機1は、入力部11のコネクタ111と蓄電部15との間に変圧部(例えばDC/DCコンバータ)を備えてもよい。この場合、蓄電部15が、公称電圧が直流電源2の公称電圧に等しい物に限定されないので、蓄電部15の選択の自由度が向上する。
溶接機1は、スイッチ17のオン/オフを使用者に報知する報知部として、例えばスイッチ17のオン/オフに連動して点灯/非点灯が切り替えられるランプを備えてもよい。
【0049】
実施の形態 2.
図3は実施の形態2に係る溶接機1の要部構成を示すブロック図である。
本実施の形態の溶接機1の構成は、実行部に関するものを除き、実施の形態1の溶接機1の構成と略同様である。以下では、実施の形態1との差異について説明し、その他、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0050】
本実施の形態の溶接機1は実施の形態1のスイッチ17を備えておらず、且つ、注意喚起部19を備える。注意喚起部19は、例えば液晶ディスプレイである。
制御部181には、注意喚起部19に表示すべきメッセージが予め与えられている。注意喚起部19に与えられているメッセージは、蓄電部15の蓄電残量が所定量を下回っていることが原因で溶接機1が溶接不可能な状態であることを示すもの(例えば「充電不足により溶接することができません」)である。
【0051】
制御部181は、検出部182の検出結果(即ち蓄電部15の蓄電残量)に基づいて、注意喚起部19に所定のメッセージを表示するか否かを判定する。蓄電部15の蓄電残量が所定量を下回っている場合、制御部181は、注意喚起部19に所定のメッセージを表示する。所定のメッセージの表示後、蓄電部15の蓄電残量が所定量以上に達した場合、制御部181は、例えば蓄電部15の蓄電残量が所定量以上である状態が所定時間継続したときに、注意喚起部19に所定のメッセージを消去させる。
【0052】
以上のような制御部181は、検出部182の検出結果が所定量を下回る場合に所定の処理を実行する実行部として機能する。この所定の処理の結果として制御部181が注意喚起部19に表示させたメッセージを使用者が視認することにより、使用者は溶接機1を用いて溶接すべきではないことを知る。故に、不十分な電力で溶接が行なわれることによる溶接の品質の悪化を防止することができる。
注意喚起部19による注意喚起後も溶接用電極13への給電は継続されるので、使用者は溶接を継続することが可能である。なお、実施の形態1の溶接機1に注意喚起部19を追加することにより、スイッチ17のオフと注意喚起部19による注意喚起とが同時的に行なわれてもよい。
【0053】
注意喚起部19による注意喚起は、液晶ディスプレイにメッセージを表示することによるものに限定されない。注意喚起部19による注意喚起は、例えばランプの点消灯よるものでもよく、ブザーの鳴動によるものでもよく、スピーカからの音声出力によるものでもよい。又は、注意喚起部19による注意喚起は、溶接機1が備える通信装置から使用者が携帯している通信機器へ所定の通信が行なわれ、所定の通信を受けた通信機器がメッセージの表示又は音声の出力等を行なうことによるものでもよい。
【0054】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
各実施の形態に開示されている構成要件(技術的特徴)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせによって新しい技術的特徴を形成することができる。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。更に、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 溶接機; 11 入力部; 111 コネクタ; 12 出力部; 13 溶接用電極; 15 蓄電部; 181 制御部(実行部); 182 検出部; 2 直流電源