(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011947
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 33/00 20060101AFI20240118BHJP
A63F 9/08 20060101ALI20240118BHJP
A63F 9/10 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A63H33/00 302E
A63H33/00 304B
A63F9/08 501A
A63F9/10 502A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114310
(22)【出願日】2022-07-15
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】桐谷 佳惠
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】張 益準
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150BA01
2C150BA22
2C150BA66
(57)【要約】
【課題】色々な文字を表現することができる玩具を提供すること。
【解決手段】六面体からなるパーツ10の基本図形12が形成された矩形面11同士を隣接配置することで文字を表現可能な玩具1において、基本図形12は、矩形面11の少なくとも二辺に接する図形であり、基本図形12が「点」であるパーツ10と、基本図形12が「線」であるパーツ10と、を少なくとも含み、これらパーツ10の矩形面11同士を隣接配置することで色々な文字を表現することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
六面体からなるパーツの基本図形が形成された矩形面同士を隣接配置することで文字を表現可能な玩具において、
前記基本図形は、前記矩形面の少なくとも二辺に接する図形であり、
前記基本図形が点である前記パーツと、前記基本図形が線である前記パーツと、を少なくとも含むことを特徴とする玩具。
【請求項2】
前記基本図形が傾斜線分である前記パーツと、前記基本図形がT字線分である前記パーツと、前記基本図形がL字線分である前記パーツと、前記基本図形がクロス形である前記パーツと、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の玩具。
【請求項3】
前記基本図形は、前記矩形面の隣接する二辺に接する図形であることを特徴とする請求項1または2に記載の玩具。
【請求項4】
各前記パーツにおける複数の前記矩形面には、異なる前記基本図形が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の玩具。
【請求項5】
各前記パーツにおける他の前記矩形面には、前記基本図形に対応した装飾図形が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の玩具。
【請求項6】
複数の前記パーツを収容可能な矩形枠を備えるとともに、前記パーツの前記矩形面の一つは無地であることを特徴とする請求項1または2に記載の玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、六面体からなるパーツの基本図形が形成された矩形面同士を隣接配置することで文字を表現可能な玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパズルとして、漢字を構成する要素のうち1つの「へん」が表裏面に書かれた「へん」の駒と、1つの「つくり」が表裏面に書かれた「つくり」の駒と、を複数用意しておき、「へん」の駒と「つくり」の駒とを左右に隣接させて漢字を表現するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-64344号(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のパズルにあっては、「へん」の駒と「つくり」の駒しか用意されていないので、「へん」と「つくり」から構成される決まった漢字しか表現することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、色々な文字を表現することができる玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の玩具は、
六面体からなるパーツの基本図形が形成された矩形面同士を隣接配置することで文字を表現可能な玩具において、
前記基本図形は、前記矩形面の少なくとも二辺に接する図形であり、
前記基本図形が点である前記パーツと、前記基本図形が線である前記パーツと、を少なくとも含むことを特徴としている。
この特徴によれば、パーツを隣接配置することで、色々な文字を表現することができる。また、基本図形は少なくとも二辺に接しているため、隣接する矩形面の線や点を容易にかつ、滑らかに繋げることができる。
【0007】
前記基本図形が傾斜線分である前記パーツと、前記基本図形がT字線分である前記パーツと、前記基本図形がL字線分である前記パーツと、前記基本図形がクロス形である前記パーツと、をさらに含むことを特徴としている。
この特徴によれば、少ないパーツでいろいろな文字を表現することができる。
【0008】
前記基本図形は、前記矩形面の隣接する二辺に接する図形であることを特徴としている。
この特徴によれば、線の曲げ、分岐、交差などを容易に、かつ、滑らかに表現することができる。
【0009】
各前記パーツにおける複数の前記矩形面には、異なる前記基本図形が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、少ないパーツでいろいろな文字を表現することができる。
【0010】
各前記パーツにおける他の前記矩形面には、前記基本図形に対応した装飾図形が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、簡単に装飾文字を表現することができる。
【0011】
複数の前記パーツを収容可能な矩形枠を備えるとともに、前記パーツの前記矩形面の一つは無地であることを特徴としている。
この特徴によれば、矩形枠内で文字を表現することができ、矩形枠がパーツの移動規制として機能し、プロポーションのよい文字を簡単に表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は本発明に係る実施例における玩具を示す正面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図2】(a)はパーツを示す斜視図、(b)はパーツの展開図である。
【
図3】(a)は基本図形の種別を示す図、(b)は矩形面の構成の一例を示す図である。
【
図4】基本図形及び基本図形に対応する装飾図形を示す図である。
【
図5】(a)は基本図形を用いて「字」を表した状態を示す図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【
図6】
図5(a)の基本図形を装飾図形に変更した状態を示す図である。
【
図7】基本図形を用いて表された漢字の一例を示す図である。
【
図8】装飾図形を用いて表された漢字の一例を示す図である。
【
図9】(a)は基本図形を用いて「右」を表した状態を示す図、(b)は装飾図形を用いて「右」を表した状態を示す図である。
【
図10】(a)は基本図形を用いて「左」を表した状態を示す図、(b)は装飾図形を用いて「左」を表した状態を示す図である。
【
図11】(a)は基本図形を用いてアルファベットの「a」を表した状態を示す図、(b)は基本図形及び装飾図形を用いてアルファベットの「a」を表した状態を示す図である。
【
図12】(a)は基本図形を用いてひらがなの「あ」を表した状態を示す図、(b)は基本図形及び装飾図形を用いてひらがなの「あ」を表した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る玩具を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。尚、以下の説明において、
図1(a)の手前側を玩具の正面(前面)側として説明する。
【実施例0014】
図1(a)、(b)に示されるように、玩具1は、正面が開口する箱状に形成された矩形枠2と、矩形枠2内に収容可能に構成される複数のパーツ10と、から主に構成されている。これら矩形枠2及び複数のパーツ10は木材にて形成されているが、材質は任意であり、合成樹脂材等により形成されていてもよい。
【0015】
矩形枠2は、正方形状に形成されたベース盤3と、ベース盤3の周縁に立設される四角枠状の周壁4と、を有する。ベース盤3の正面には、点線により上下左右方向に規則正しく真四角に区切ることにより複数のマス(例えば、8×8=64マス)が形成されている。1マスは、各パーツ10の一面と同形とされている。よって、全てのマスにパーツ10を配置することにより、矩形枠2の周壁4が各パーツ10の移動規制部として機能する。
【0016】
また、ベース盤3の正面から周壁4の前端までの長さ寸法L1(言い換えると周壁4の高さ)は、各パーツ10の一辺の長さ寸法L2よりも短寸とされている(L1<L2)。よって、パーツ10の上部は周壁4よりも上方に位置しており、周壁4に邪魔されずにパーツ10を移動・配置しやすくなっている。尚、本実施例では、ベース盤3の正面から周壁4の前端までの長さ寸法L1は、各パーツ10の一辺の長さ寸法L2の約1/2とされ(L1≒1/2×L2)、ベース盤3の板厚寸法L3は長さ寸法L1と同寸である(L1=L3)。よって、
図1(b)において実線で示される矩形枠2の上方に、該矩形枠2とは別個の矩形枠2(
図1(b)の2点鎖線参照)を被せることで、2つの矩形枠2により構成された箱体内に複数のパーツ10を収納することが可能となっている。尚、上記長さ寸法L1、L2、L3は任意に変更可能であり、長さ寸法L1、L2は同寸でもよいし、長さ寸法L1は長さ寸法L2よりも長寸でもよい。
【0017】
図2(a)に示されるように、パーツ10は、六面が全て正方形からなる正六面体(立方体)にて構成されている。尚、本実施例では、パーツ10は正六面体にて構成されているが、直方体であってもよい。また、矩形枠2は、ベース盤3、周壁4は正方形でなく長方形であってもよい。
【0018】
図2(b)に示されるように、パーツ10の表面を構成する6個の矩形面11は、正面11A、左側面11B、右側面11C、平面11D、底面11E及び背面11Fから構成されている。これら6面のうちの1面である正面11Aには、基本図形12が表示され、左側面11B、右側面11C、平面11D及び底面11Eには、正面11Aに表示されている基本図形12に対応する装飾図形22が表示され、背面11Fは、基本図形12及び装飾図形22のいずれも表示されていない無地の面とされている。
【0019】
図3(a)に示されるように、基本図形12は、漢字の字体を構成する要素の一部を表す図形とされている。詳しくは、基本図形12は、「線」を表すグループGP1に属する図形と、「点」を表すグループGP2に属する図形と、「線」の組合せを表すグループGP3に属する図形と、に大きく分けられる。「線」を表すグループGP1及び「点」を表すグループGP2に属する図形は、これらのうちの1つの図形で、または、これらのうちの1つの図形を複数隣接配置することで、漢字の字体を構成する要素の最小の単位である「筆画」に相当する1画で表される図形である。
【0020】
漢字は、このように「線」や「点」で表される「筆画」を組合せることにより作られ、多くの漢字は、左右上下内外の部分に分解できる共通の部分である「偏旁(へん、つくり、かんむり、あし、かまえ、たれ、にょう)」を少なくとも1つ含んでいる。よって、複数の基本図形12を組合せることで、「筆画」や「偏旁」をつくることができ、さらにこれら「筆画」や「偏旁」を組合せることで漢字を表すことができる。
【0021】
グループGP1に属する図形は、直線形状をなし、「縦線」または「横線」を表す基本図形a1、a2と、斜めの「はらい」または「そり」を表す基本図形b1、b2、b3、c1、c2と、を含む。グループGP2に属する図形は、「点」を表す基本図形d1、d2、d3を含む。グループGP3に属する図形は、アルファベットの「T」形状をなすT字線分からなり、線の「分岐」を表す基本図形eと、アルファベットの「L」形状をなすL字線分からなり、線の「折れ」を表す基本図形fと、記号の「+」や「×」形状をなすクロス形であり、線の「交差」を表す基本図形g1、g2と、を含む。
【0022】
これら各基本図形12は、基本図形d3を除き、正面11A、左側面11B、右側面11C、平面11D、底面11E及び背面11Fを各々構成する四辺のうち少なくとも二辺に接するように表されている。また、各基本図形12の線の幅寸法は、正面11Aの一辺の長さ寸法よりも短寸(例えば、約半分)の長さ寸法とされている。
【0023】
基本図形a1、a2は、正面11Aの上辺から該上辺に対向する下辺に向けて直線状に延設され、正面11Aの上辺と下辺の二辺に接している。基本図形a1は、右辺に接するように右側に寄せて配置され、基本図形a2は、左右辺に接しないように左右方向の略中央位置に配置されている。
【0024】
基本図形b1、b2、b3は、正面11Aの上辺から該上辺に対向する下辺に向けて対角線に沿うように斜めに直線状に延設され、正面11Aの上辺、下辺、左辺、右辺の四辺に接している。より詳しくは、基本図形b1、b2、b3の上下端は角部において隣り合う二辺に接している。尚、基本図形b1は、上下端が対角線方向に突き抜けるように表され、基本図形b2、b3は、下端が対角線方向に突き抜け、上端が上方に向けて折れ曲がるように表されている。
【0025】
基本図形c1、c2は、正面11Aの上辺から該上辺に対向する下辺に向けて左側または右側に曲がりながら先細る曲線状に延設され、正面11Aの上辺と下辺の二辺に接している。尚、基本図形c1は、右側から左側に向けて曲がるように表され、基本図形c2は、左側から右側に向けて曲がるように表されている。
【0026】
基本図形d1、d2、d3は、正面11Aの約4分の1の大きさの正方形状に形成され、基本図形d1は、角部において隣り合う正面11Aの上辺と右辺の二辺に接しており、基本図形d2は、角部において隣り合う正面11Aの上辺と左辺の二辺に接している。一方、基本図形d3は、いずれの辺にも接しないように各辺に対し同距離離れた中央位置に配置されている。
【0027】
基本図形eは、正面11Aの左辺から該左辺に対向する右辺に向けて直線状に延設される横線と、横線の長手方向の中央位置から分岐して下辺に向けて直線状に延設される縦線と、からアルファベットの「T」形状に形成され、正面11Aの上辺、下辺、左辺、右辺の四辺に接している。より詳しくは、基本図形eの上部左右端は角部を介して隣り合う二辺に接している。
【0028】
基本図形fは、正面11Aの上辺から該上辺に対向する下辺に向けて直線状に延設される縦線と、縦線の下端にて屈曲して左辺に向けて直線状に延設される横線と、からアルファベットの「L」形状に形成され、正面11Aの上辺、下辺、左辺、右辺の四辺に接している。より詳しくは、基本図形fの上下端及び中央は角部において隣り合う二辺に接している。
【0029】
基本図形g1は、正面11Aの上辺から該上辺に対向する下辺に向けて直線状に延設される縦線と、正面11Aの左辺から該左辺に対向する右辺に向けて直線状に延設される横線と、から「+(クロス)」形状に形成され、正面11Aの上辺、下辺、左辺、右辺の四辺に接している。一方、基本図形g2は、正面11Aの上辺から該上辺に対向する下辺に向けて対角線に沿うように斜めに直線状に延設される2つの斜線から「×(クロス)」形状に形成され、正面11Aの上辺、下辺、左辺、右辺の四辺に接している。一方、より詳しくは、基本図形g2の上下左右端はそれぞれ角部において隣り合う二辺に接している。
【0030】
尚、パーツ10は立方体であるため、例えば、基本図形a1、a2を横向きに並べることで、「横線」を表すことができ、また、基本図形a1を左右反転させることで、左側に寄せて配置することもできる。このように、向きを変えたり上下反転や左右反転させることで、向きや配置位置を異ならせることができるため、少ないパーツで様々な字体を表すことができる。
【0031】
また、これら基本図形12及び装飾図形22は、印刷により形成されているが、印刷により形成されるものに限らず、墨入れ等により形成されてもよいし、印刷されたシートを貼着することにより形成されていてもよい。
【0032】
図4に示されるように、複数種類の基本図形12(本実施例ではa1、a2、b1、b2、b3、c1、c2、d1、d2、d3、e、f、g1、g2の14種類の基本図形)に対応する装飾図形22は、一の基本図形12に対し態様が異なる複数の装飾図形22が用意されている。例えば、正面11Aにある種別の基本図形12(例えば、基本図形a1など)が表されたパーツ10の左側面11B、右側面11C、平面11D、底面11Eには、直線を表す基本図形12に対応する複数の装飾図形22のうち態様が異なる4つの装飾図形22が表されている(
図2(b)も参照)。
【0033】
左側面11B、右側面11C、平面11D、底面11Eに表す装飾図形22の種別は任意であり、種々に変更可能である。また、複数の装飾図形22は、装飾態様などデザインが共通な複数のグループに分類されていてもよい。また、1の基本図形12が表されたパーツ10がそれぞれ複数個ずつ用意されているため、同じ態様の基本図形12が表されたパーツ10を複数個使用することができる。
【0034】
尚、基本図形12に対応する装飾図形22とは、基本図形と構成要素は同一であるが、表示態様(例えば、外形形状、色相、模様等)が異なる図形であり、基本図形12に比べて装飾要素が多い図形であればよい。
【0035】
次に、パーツ10を用いて漢字を表現する方法について、
図5に基づいて説明する。
【0036】
図5(a)に示されるように、例えば、「字」という漢字を表現する場合、グループGP1~GP3のいずれに属するパーツ10をどのように組合せるかを考える。そして、選択した複数のパーツ10を、基本図形12が表された正面11Aの各辺同士を隣接配置していくことで、「線」や「点」で表される「筆画」や「偏旁」を作り、さらにこれら「筆画」や「偏旁」を組合せることで、「字」という漢字を表現することができる。
【0037】
パーツ10の正面11A同士を隣接配置する際には、隣り合う辺同士が長手方向にずれることなく合致するように隣接配置することが好ましいが、隣り合う辺同士が長手方向に相対的にずれた状態で配置してもよい。
【0038】
ここで、例えば、本発明とは異なり、基本図形12が正面11Aの全域に形成されている(言い換えると、正面11Aがべた塗り状に形成されている)パーツを用いて漢字を表現しようとする場合、矩形面11と同じ大きさの「点」を並べて「線」を構成することになるため、「線」が太くなるとともに、字が大きくなってしまう。また、「T」、「L」、「+」、「×」といった「線」の分岐、曲げ、交差を作るのに多数のパーツが必要になるとともに、斜めの線を作る場合には「点」を斜めにずらして配置することになるため、ギザギザの線になってしまう。
【0039】
これに対し本実施例における全ての基本図形12は、矩形面11の全領域ではなく一部の領域に形成されている。つまり、矩形面11は、基本図形12が表されていない無地の非図形領域E2(
図3(b)の白塗りの領域)と、基本図形12が表される図形領域E1(
図3(b)の黒塗りの領域)と、から構成されている。よって、例えば、2本の「線」を、間隔をあけて略平行に配置する場合、「線」が表された2つの正面11A、11Aの間に無地の背面11Fを配置しなくても、無地の非図形領域E2により矩形面11の一辺よりも幅狭な間隔を設けることができるため、漢字をコンパクトに作ることができる。
【0040】
また、「点」を表すグループGP2の基本図形12だけでなく、「線」を表すグループGP1の基本図形12が予め用意されていることで、グループGP2のパーツ10を多数用いなくても、「線」を容易に表現することができるとともに、斜めの線を滑らかに表現することができる。また、「線」の組合せを表すグループGP3が基本図形として予め用意されていることで、「線」の分岐、曲げ、交差を1つの(または少ない)パーツ10でコンパクトに作ることができるとともに、「へん」や「つくり」などを滑らかに表すことが可能となる。
【0041】
また、矩形面11は、無地の非図形領域E2と、基本図形12が表される図形領域E1と、から構成される一方で、基本図形12は、矩形面11の少なくとも二辺に接するように設けられていることで、矩形面11を隣接配置したときに、基本図形12同士を容易に、かつ、滑らかに繋げることができる。
【0042】
また、基本図形12により「字」を構成したあと、各パーツ10を、位置を変えずにその場で回転させて、左側面11B、右側面11C、平面11D、底面11Eのうちのいずれかの装飾図形22を正面に配置することで、
図6に示されるように、装飾図形22からなる装飾文字を容易に構成することができる。
【0043】
このように、基本図形12が形成された正面11A同士を隣接配置することで、
図7に示されるような様々な漢字を表すことができる一方で、基本図形12によりこれら漢字を構成した後、各パーツ10をその位置にて回転させていずれかの装飾図形22を正面に配置することで、一度作った漢字の全体構成(字体)を崩すことなく、
図8に示されるような様々な装飾漢字を簡単に表すことができる。
【0044】
さらに、1個のパーツ10には、1つの基本図形12に対応する複数の装飾図形22が形成されている本実施例では、1個のパーツ10に4つの装飾図形22が形成されているため、少ないパーツ10で様々な態様の装飾漢字を表すことができる。尚、各パーツ10においていずれの面の装飾図形22を正面に配置するかは自由であり、使用者が好みの装飾漢字を表すことができる。
【0045】
また、
図5(a)及び
図6に示されるように、所定の漢字を作るときに、矩形枠2のベース盤3の正面に表示されたマスを構成する点線を利用することで、各パーツ10を直線状にきれいに並べることができる。
【0046】
また、
図5(a)及び
図6においては、複数のうち一部のパーツ10がマスからずれた位置に配置される例を用いて説明したが、例えば、
図9(a)に示されるように「右」という漢字を表現する場合や、
図10(a)に示されるように「左」という漢字を表現する場合のように、字体を構成する全てのパーツ10を各マスに合わせてきれいに並べることができる態様としてもよい。また、
図9(a)や
図10(a)に示されるように、基本図形12により漢字を構成した後、各パーツ10をその位置にて回転させていずれかの装飾図形22を正面に配置することで、一度作った漢字の全体構成(字体)を崩すことなく、
図9(b)や
図10(b)に示されるような装飾漢字を簡単に表すことができる。
【0047】
また、
図9及び
図10に示されるように、「右」や「左」などの漢字が完成したあとに、空いているマスに背面11Fを正面側に向けたパーツ10を配置し、周壁4に囲まれた領域内に複数のパーツ10を隙間なく敷き詰めることで、漢字を構成するパーツ10が移動規制されるため、字体が崩れないように保持しておくことができる。
【0048】
また、基本図形12が形成された正面11Aの裏面である背面11Fが無地であるため、パーツ10の基本図形12が形成された正面11Aを判別しやすい。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施例としての玩具1は、六面体からなるパーツ10の基本図形12が形成された矩形面11同士を隣接配置することで文字を表現可能な玩具1において、基本図形12は、矩形面11の少なくとも二辺に接する図形であり、基本図形12が「点」であるグループGP2のパーツ10と、基本図形12が「線」であるグループGP1のパーツ10と、を少なくとも含む。
【0050】
これによれば、パーツ10を隣接配置することで色々な漢字を表現することができる。また、基本図形12は、漢字を構成する最小の要素である「筆画」を構成する「線」や「点」を表す図形であることで「偏旁」に比べて1つの基本図形の構成要素が小さくなるが、この基本図形12は少なくとも矩形面11の二辺に接していることで、隣接する矩形面11の「線」や「点」を容易に繋げることができるため、「筆画」や「偏旁」を滑らかに表現することができる。また、「線」や「点」の組合せにより様々な種類の「偏旁」を表すことができるため、様々な漢字を表すことが可能となる。
【0051】
また、基本図形12が傾斜線分であるグループGP1のパーツ10と、基本図形12がT字線分であるグループGP3のパーツ10と、基本図形12がL字線分であるグループGP3のパーツ10と、基本図形12がクロス形であるグループGP3のパーツ10と、をさらに含むことを特徴としていることで、少ないパーツ10でいろいろな漢字を表現することができる。
【0052】
また、基本図形12は、矩形面11の隣接する二辺、つまり、角部を構成する二辺に接する図形であることで、「曲げ」や「折れ」、「分岐」、「交差」などを容易に、かつ、滑らかに表現することができる。詳しくは、例えば、
図5(b)に示されるように、基本図形d1は、隣接する左辺及び下辺に接していることで、左辺に隣接配置される矩形面11の基本図形a1と、下辺に隣接配置される矩形面11の基本図形b2とを「点」で繋げることができるため、「曲げ」や「折れ」を容易に、かつ、滑らかに表現することができる。
【0053】
各パーツ10における他の矩形面11(例えば、左側面11B、右側面11C、平面11D、底面11E)には、基本図形12に対応した装飾図形22が形成されていることで、簡単に装飾文字を表現することができる。
【0054】
尚、本実施例では、各パーツ10における他の矩形面11(例えば、左側面11B、右側面11C、平面11D、底面11E)には、基本図形12に対応した装飾図形22が形成されている形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各パーツ10における複数の矩形面11には、異なる基本図形12が形成されていてもよい。具体的には、特に図示はしないが、6個の矩形面11に、形態や配置が異なる複数種類の基本図形12(例えば、6種類の基本図形a1、a2、b1、b2、d1、d2や、基本図形a1、b1、c1、d1、e、fなど)が形成されていてもよい。
【0055】
複数のパーツ10を収容可能な矩形枠2を備えるとともに、パーツ10の矩形面11の一つ(例えば、背面11F)は無地であることで、矩形枠2内で文字を表現でき、矩形枠2がパーツ10の移動規制として機能し、プロポーションのよい漢字を簡単に表現することができる。
【0056】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0057】
例えば、前記実施例では、基本図形12は、矩形面11の少なくとも二辺に接する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、矩形面11内に非図形領域E2と図形領域E1とが形成されていれば、基本図形12が四辺の全てに接していてもよい。
【0058】
また、前記実施例では、基本図形として、グループGP1~GP3のいずれかに属する14種類の基本図形12を適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記グループGP1~GP3に属する基本図形12とは形態や配置が異なる基本図形や、上記グループGP1~GP3に属さない他の基本図形(例えば、「はね」などを表した基本図形など)を適用することも可能である。つまり、基本図形12の種類は任意であって上記14種類に限定されるものではなく、14種類未満しかなくてもよいし、15種類以上あってもよい。
【0059】
例えば、
図3に示されるように、基本図形d1が表された正面11Aを左に90度回転させると、基本図形d2と同じように基本図形d1が正面11Aの左上に配置されるため、基本図形d1と基本図形d2とをどちらか一方とし、全体で13種類の基本図形としてもよい。前記実施例では、基本図形d1と基本図形d2を用意し、それぞれ対応する装飾図形22(前記実施例では、
図4を参照し、基本図形d1と基本図形d2に対する装飾図形の態様は同じであるが向きが異なる。)とすることで、装飾文字のバリエーションが豊富になり、文字作成への興味を与えることができる。
【0060】
また、前記実施例では、文字の一例として漢字を適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図11に示されるように、アルファベットでもよいし、
図12に示されるように、ひらがなでもよい。また、特に図示しないがカタカナや記号文字でもよい。つまり、線と点を用いて表される文字であればよく、漢字に限定されるものではない。
【0061】
また、前記実施例では、基本図形12または装飾図形22のうちいずれかのみを用いて1の漢字を構成する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図11(b)や
図12(b)に示されるように、基本図形12及び装飾図形22双方を用いて1の漢字が構成されてもよい。
【0062】
具体的には、例えば、
図11(b)に示されるアルファベットの「a」は、
図11(a)に示されるように、基本図形12により構成されたアルファベットの「a」における一部の基本図形12(例えば、屈曲を示す基本図形f)を、湾曲を示す装飾図形22に変更することで、
図11(a)に示されるように角張った印象のアルファベットを、
図11(b)に示されるように丸みを帯びた印象のアルファベットに変えることができる。
【0063】
また、
図12(b)に示されるひらがなの「あ」は、
図12(a)に示されるように、基本図形12により構成されたひらがなの「あ」における一部の基本図形(例えば、屈曲を示す基本図形f)を、湾曲を示す装飾図形22に変更することで、
図12(a)に示されるように角張った印象のひらがなを、
図12(b)に示されるように丸みを帯びた印象のひらがなに変えることができる。
【0064】
また、前記実施例では、複数のパーツを用いて漢字を表現することが可能な玩具1を適用した形態を例示したが、漢字を含む文字を表現可能なパズル、学習具あるいは作字具として利用可能であってもよい。