(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119473
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】飲食品製造用CO2の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/50 20170101AFI20240827BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240827BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C01B32/50 ZAB
B01D53/62
B01D53/96
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026395
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 剛
【テーマコード(参考)】
4D002
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA01
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB02
4D002HA04
4G146JA02
4G146JB09
4G146JB10
4G146JC09
4G146JC21
(57)【要約】
【課題】 回収したCO
2から飲食品製造用CO
2を製造する方法について、新規な技術を開示する。
【解決手段】回収したCO
2から飲食品製造用CO
2を製造する. 飲食品製造用CO
2は、炭酸含有飲料を製造するためのCO
2、アルコール飲料を製造するためのCO
2、食肉・小麦粉、プロテイン等のタンパク質合成食品の合成に用いられるCO
2、藻の育成を促進させオメガ3脂肪酸等を合成してなるサプリメントを製造するためのCO
2、炭酸カルシウムなどの飼料原料の合成をするためのCO
2として使用される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2を含む排気中からCO2回収装置にてCO2を回収し、
回収したCO2から飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項2】
回収したCO2を所定のCO2濃度とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項3】
CO2濃度は、99.5%以上、100%未満である、請求項2に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項4】
CO2濃度は、99.9%以上、100%未満である、請求項2に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項5】
CO2濃度は、99.95%以上、100%未満である、請求項2に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項6】
CO2回収装置にて回収したCO2は、
CO2回収装置から飲食品製造システムに供給されて、飲食品製造工程に利用される、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項7】
CO2回収装置にて回収したCO2は、
CO2回収装置で回収され保管され、保管されたCO2を飲食品製造システムで利用することで、回収したCO2が飲食品製造工程に利用される、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項8】
前記排気は、燃料を燃焼させた際に生じる排気である、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項9】
前記排気は、燃料を燃焼させて加温装置で加熱を行う際に生じる排気である、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項10】
前記燃料は、天然ガスを主成分とするガスである、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項11】
前記燃料は、都市ガスである、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項12】
前記都市ガスは、天然ガスを主成分とするガスである、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項13】
CO2を含む排気は、
排水を嫌気性処理することよって生じるバイオガスである、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項14】
CO2を含む排気は、
電気、又は、熱、又は、蒸気を生成するための設備にて発生するものである、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項15】
CO2を含む排気は、
微生物による有機物の発酵により発生するガスである、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項16】
前記燃料に含まれる硫黄分含有量は、2重量%以下である、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項17】
CO2を含む排気中の窒素酸化物は、950volppm以下である、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項18】
前記CO2回収装置は、CO2を吸収剤に吸収させた後、CO2を吸収させた吸収剤を加熱する工程を含む装置である、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項19】
前記CO2回収装置は、CO2を気体、液体、固体のいずれか一種又は二以上として回収できることができる工程を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【請求項20】
前記飲食品製造用CO2は、
炭酸含有飲料を製造するためのCO2、アルコール飲料を製造するためのCO2、食肉・小麦粉、プロテイン等のタンパク質合成食品の合成に用いられるCO2、藻の育成を促進させオメガ3脂肪酸等を合成してなるサプリメントを製造するためのCO2、炭酸カルシウムなどの飼料原料の合成をするためのCO2として使用される、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の飲食品製造用CO2を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収したCO2から飲食品製造用CO2を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1では、「大量の化石燃料を使用する火力発電所などの動力発生設備を対象に、ボイラーの燃焼排気をアミン系CO2吸収液と接触させ、燃焼排気中のCO2を除去、回収する方法及び回収されたCO2を大気へ放出することなく貯蔵する方法」が従来技術として記載されている。
【0003】
また、従来の排気中の二酸化炭素を有効に利用する方法として、炭酸含有飲料用の二酸化炭素やドライアイスの製造に用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるような二酸化炭素回収装置は、例えば、従来の石炭、燃料油を燃焼させる製油所や、発電所などの産業設備に設置されるものであり、これらの産業設備の排気中に含まれるCO2を回収するものである。
【0006】
硫黄分を含有する燃料を燃焼させる際に、排気中はSOx(硫黄酸化物)が含まれることになる。SOxとは,亜硫酸ガスや無水硫酸などの硫黄酸化物の総称であり,SOxの排出量は燃料中の硫黄分濃度に比例する傾向がある。
したがって、従来の燃料油等の硫黄分が2重量%を超える燃料を燃焼する排気中には、燃料を由来とするSOxが多く含まれるものであり、排気から回収したCO2を例えば炭酸含有飲料用の二酸化炭素として使用する場合には、これらSOx(硫黄酸化物)が不純物して混入することが極力無いようにする必要がある。このため、従来の二酸化炭素回収装置では、不純物を除去するため高負荷仕様の後処理を行う必要があった。
【0007】
一方で、産業設備において、硫黄分含有量が2重量%以下の低硫黄燃料の使用、例えば、硫黄分0.5重量%以下に適合した燃料油(低硫黄残渣油(LSC 重油)、低硫黄留出油(LSA重油)、超低硫黄原油(硫黄分0.1重量%以下)、さらに、硫黄分を含まないかわずかに含む天然ガス(natural gas)、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)を燃料として使用することが進められている。
【0008】
また、いわゆる都市ガスを燃料として使用する取り組みが行われ、ボイラーの燃料として使用されている。例えば、飲料製造システムに温水を供給するために工場に設置されるボイラーにおいて、燃料として都市ガスを用いるものである。都市ガスの一規格である13Aは、天然ガス(natural gas)及び/又は液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)を由来又は主成分とする燃料であり、多くは、使用箇所にパイプラインで供給されるものである。
【0009】
従来技術のように、硫黄分含有量が2重量%を超える燃料を燃焼させることにより排気される排気のCO2の回収や利用法は存在するものの、硫黄分含有量が2重量%以下の燃料、都市ガス、天然ガスあるいは液化天然ガス由来及び/又は主成分とする燃料を燃焼させることにより排気される排気のCO2の回収や利用法については検討がされていないものであった。
【0010】
そこで、本願発明では、硫黄分含有量が2重量%以下の燃料、天然ガスあるいは液化天然ガス由来及び/又は主成分とする燃料、都市ガスの燃焼による排気の組成に着目するとともに、当該排気から回収したCO2の有効な利用方法について、新規な技術を開示するものである。そして、温室効果ガスの代表格であるCO2を回収し、炭酸含有飲料の製造に有効利用することで、CO2の排出量を減らし、環境保護に対する貢献を図ることを課題とするものである。
【0011】
また、本願発明の別の課題として、排水を嫌気性処理することにより生成されるバイオガスや、微生物による有機物の発酵により発生するバイオガスの有効な利用方法について、新規な技術を開示するものである。
【0012】
また、さらに、本発明の別の課題として、炭酸含有飲料を製造する際の、カーボネーション(炭酸ガス圧入)工程において、課題が生じる。液体(調合液)に炭酸ガスを圧入させて、炭酸含有飲料とする。この操作を一般に、カーボネーションという。カーボネーションは、一般に、カーボネータという装置にて、液体に炭酸ガスを接触させ圧入する。
一定の温度では、カーボネータ内における炭酸ガス圧力が高いほど吸収はよい。一般に、カーボネーションは約0.09~0.4MPa程度の圧力となるが、製品のガスボリュームを一定に保持するため、カーボネータ内炭酸ガス圧力は一定に維持する必要がある。そして、炭酸ガスの純度が、99.9%(体積換算)以上、好ましくは、99.95%(体積換算)以上の良質の炭酸ガスが使用されず、炭酸ガス中に酸素、窒素がこれらの純度以上に存在すると、これらの酸素等は、運転を継続すると、カーボネータ内では、酸素等が液体に吸収されないまま残留し、その量が増えれば、真の炭酸ガスの圧力は指示値との誤差となる。残留酸素、その他の不純物は、このほか充填機(例:フィラー)におけるフォーミング、消費者開封時のフォーミングを引き起こし、また容器詰め製品内のヘッドスペースの特に酸素は飲料中の酸化の原因等を起こすため、少ないほうが、好ましい。
こうした問題を避けるためには、カーボネータに導入する炭酸ガスの純度が、99.9%(体積換算)以上、好ましくは、99.95%(体積換算)以上であることが好ましい。特に、充填機及び/又は消費者開封時のフォーミング(吹き出し)を予防するためには、炭酸ガスの純度は、99.95%(体積換算)以上が好ましい。
【0013】
また、本願発明の別の課題として、回収したCO2から飲食品製造用CO2を製造する方法について、新規な技術を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0015】
本発明の一態様によれば、CO2を含む排気中からCO2回収装置にてCO2を回収し、回収したCO2から飲食品製造用CO2を製造する方法とする。
【0016】
本発明の一態様によれば、回収したCO2を所定のCO2濃度とする。
【0017】
本発明の一態様によれば、CO2濃度は、99.5%以上、100%未満である。
【0018】
本発明の一態様によれば、CO2濃度は、99.9%以上、100%未満である。
【0019】
本発明の一態様によれば、CO2濃度は、99.95%以上、100%未満である。
【0020】
本発明の一態様によれば、CO2回収装置にて回収したCO2は、CO2回収装置から飲食品製造システムに供給されて、飲食品製造工程に利用される。
【0021】
本発明の一態様によれば、CO2回収装置にて回収したCO2は、CO2回収装置で回収され保管され、保管されたCO2を飲食品製造システムで利用することで、回収したCO2が飲食品製造工程に利用される。
【0022】
本発明の一態様によれば、前記排気は、燃料を燃焼させた際に生じる排気である。
【0023】
本発明の一態様によれば、前記排気は、燃料を燃焼させて加温装置で加熱を行う際に生じる排気である。
【0024】
本発明の一態様によれば、前記燃料は、天然ガスを主成分とするガスである。
【0025】
本発明の一態様によれば、前記燃料は、都市ガスである。
【0026】
本発明の一態様によれば、前記都市ガスは、天然ガスを主成分とするガスである。
【0027】
本発明の一態様によれば、CO2を含む排気は、排水を嫌気性処理することよって生じるバイオガスである。
【0028】
本発明の一態様によれば、CO2を含む排気は、電気、又は、熱、又は、蒸気を生成するための設備にて発生するものである。
【0029】
本発明の一態様によれば、CO2を含む排気は、微生物による有機物の発酵により発生するガスである。
【0030】
本発明の一態様によれば、前記燃料に含まれる硫黄分含有量は、2重量%以下である。
【0031】
本発明の一態様によれば、CO2を含む排気中の窒素酸化物は、950volppm以下である。
【0032】
本発明の一態様によれば、前記CO2回収装置は、CO2を吸収剤に吸収させた後、CO2を吸収させた吸収剤を加熱する工程を含む装置である。
【0033】
本発明の一態様によれば、前記CO2回収装置は、CO2を気体、液体、固体のいずれか一種又は二以上として回収できることができる工程を含む。
【0034】
本発明の一態様によれば、前記飲食品製造用CO2は、炭酸含有飲料を製造するためのCO2、アルコール飲料を製造するためのCO2、食肉・小麦粉、プロテイン等のタンパク質合成食品の合成に用いられるCO2、藻の育成を促進させオメガ3脂肪酸等を合成してなるサプリメントを製造するためのCO2、炭酸カルシウムなどの飼料原料の合成をするためのCO2として使用される。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、CO2を回収し、有効利用することで、CO2の排出量を減らし、環境保護に対する貢献を図ることが可能となる。また、回収したCO2を飲食品製造用CO2をして用いることで、様々な食品に使用することができる。また、回収したCO2は、インラインで用いることやボンベ等に一時貯留することで、幅広く利用することができる。また、排気からCO2を回収することで、CO2の排出量を低減することができる。また、硫黄分含有量がゼロ、または、少ない燃料、即ち、天然ガスを主成分とするガス(都市ガス)、排水を嫌気性処理することよって生じるバイオガス、微生物による有機物の発酵により発生するガス、を利用することで、回収したCO2に不純物が含まれる可能性が極めて低いため、CO2回収装置において不純物を除去するための後処理を省略したとしても、不純物がゼロ、あるいは、極めて少ない高純度のCO2の精製が可能となる。また、排気中の窒素酸化物が所定の濃度以下とされることにより、CO2回収装置において不純物を除去するための後処理を省略したとしても、不純物がゼロ、あるいは、極めて少ない高純度のCO2の精製が可能となる。また、仮に、後処理が必要であったとしても、軽負荷仕様の後処理装置で精製が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】飲料の製造システムの一例の概要を示す図である。
【
図3】嫌気性処理により生じた排水バイオガスを利用する例について示す図である。
【
図4】微生物による有機物の発酵により発生するバイオガスを利用する例について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、産業設備1は、飲食品を製造するための飲食品製造システムを備える製造工場であり、例えば、炭酸含有飲料の製造工場である。製造工場の炭酸含有飲料の製造システムには、燃料を燃焼させて温水を生成するためのボイラー10が設置されている。
【0038】
ボイラー10には、燃料Aとして、具体的には、都市ガスが供給される。また、大気など都市ガスとともに燃焼に必要とされるガスBが供給される。燃料Aに含まれる硫黄分含有量は、2重量%以下、好ましくは、1.5重量%以下、1重量%以下、0.7重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、さらに、0.1重量%以下が好ましい。特に、超低硫黄原油(硫黄分0.1重量%以下)が好ましい。また、都市ガスは、好ましくは天然ガスあるいは液化天然ガス由来及び/又は主成分とする都市ガスであることが好ましい。
【0039】
ボイラー10での燃焼により生じた排気Fは、CO2回収装置20(二酸化炭素回収装置)に供給され、CO2回収装置20にて排気F中のCO2が分離・精製される。
【0040】
分離されたCO2は、例えば、CO2タンクに充填され、搬出装置30から搬出される。搬出されたCO2タンクは、例えば、産業設備1において使用される他、離れた場所にある他の産業設備において使用される。なお、精製されたCO2は、CO2タンクに液体貯蔵されるほか、パイプラインにてそのまま産業設備1内にて消費されることや、冷却により固体・液体にすることや、ボンベに収容されることとしてもよい。
【0041】
図2は、飲料の製造システム(炭酸含有飲料製造システム)の一例について示す図であり、炭酸含有飲料製造工程について説明するものである。原材料タンク2の原材料に、調合タンク3にて水、添加物などと混合され、カーボネータ4にてCO
2(炭酸ガス)が溶解され、炭酸含有飲料が製造される。
【0042】
カーボネータ4には、ボイラー10から排出され、CO2回収装置20にて回収されたCO2がインラインで供給され、炭酸含有飲料の製造に用いられる。
【0043】
充填装置5では、飲料容器11に炭酸含有飲料が充填され、シーマー6(封緘装置)にて蓋が取り付けられる。温水殺菌装置7では、飲料容器11に対し温水をかけて殺菌処理(加熱滅菌処理)が行われる場合がある。検査装置8では、飲料容器11内の異物等の検査が行われ、その後、飲料容器11は箱詰めされて出荷される。
【0044】
飲料容器11は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、瓶等が挙げられる。
【0045】
温水殺菌装置7には、ボイラー10で生成された温水が供給される。ボイラー10には、燃料Aとして、例えば、都市ガスが供給される。なお、ボイラー10は加温装置の一例であり、燃料を燃焼させることで物質を加熱する装置から発生する排気からCO2を回収するものについて、本発明は広く適用できる。
【0046】
炭酸含有飲料としては、例えば、サイダー飲料等の非着色飲料、ラムネ飲料、果汁入り炭酸含有飲料、着色炭酸含有飲料(たとえば、コーラ飲料やメロンソーダ等)、ノンアルコールビール飲料等の各種炭酸ガスを含む飲料、または、ビール、発泡酒、チューハイ、カクテル等のアルコールを含有する炭酸含有飲料である。
【0047】
本発明における、炭酸含有飲料のガスボリューム(「ガス容」ともいう。)は公知の方法で測定できる。例えば、市販の測定器(京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-700)を用いて測定できる。具体的には、測定対象とする炭酸含有飲料を20℃とした後、上記測定装置(ガスボリューム測定装置)に取り付け、装置は、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)動作を行い、装置はその後、直ちに活栓を閉じて激しく振とうする。そして、装置は、圧力が一定になった時の値からガスボリュームを算出し、これによりガスボリュームを得ることができる。
【0048】
本発明における、炭酸含有飲料のガスボリューム(ガス容)は0.7以上、さらに好ましくは、0.8以上、1.5以上、1.8以上、2以上、2.1以上、2.5以上、3以上である。ガスボリューム(ガス容)は、好ましくは、11以下、さらに好ましくは、10以下、9以下、6以下、5.5以下、5以下である。
【0049】
特に、充填時あるいは、開栓時のフォーミングは、ガスボリューム(ガス容)2以上、2.5以上、3以上、3.5以上、4以上で、より起きやすいため、これらの炭酸含有飲料に使用する場合には、CO2濃度は、好ましくは、99.95%(体積換算)以上であることが好ましい。
【0050】
表1は、使用され得る都市ガスの例の成分表である。メタンなどの炭化水素を主成分とし、窒素をわずかに含むものである。都市ガスとしては、例えば、規格が13Aのものを使用することができる。なお、都市ガスとは、多くは、ガス燃料事業者や天然ガス採掘拠点等から地中などに埋設されるパイプラインを通じて供給されるガスをいうものである。都市ガスは、メタンを主な成分に持つ天然ガスや、海外から輸入する液化天然ガス(LNG)を原料として製造されるものが好ましい。
【0051】
【0052】
なお、天然ガス(natural gas)は、一般に、軽質炭化水素のメタンを主成分とする可燃性ガスをいい、常温常圧では空気より軽い気体であるが、約マイナス162℃まで冷却すると液化し、体積が約600分の1となる。液状の天然ガスを液化天然ガス(Liquefied Natural Gas。以下「LNG」という。)という。
天然ガスは、メタン以外にも、軽質炭化水素のエタン、プロパン、ブタン等を含むほか、不純物(二酸化炭素、窒素、硫化水素等)を含む場合もある。このような天然ガスの組成は産地に応じて異なり、メタン含有率も約70%から約100%まで幅がある。また、天然ガスの精製過程においては、液化石油ガスやコンデンセートが分離して生産されることがある。
天然ガスあるいは液化天然ガスは、燃焼した場合、他の化石燃料に比較して、地球温暖化の原因となる二酸化炭素や、酸性雨や大気汚染の原因となる窒素酸化物や硫黄酸化物の排出量が少ないため、同一熱量を得る場合の窒素酸化物の排出量は、石炭の約4割、石油の約6割であり、硫黄酸化物はほとんど排出しない。
【0053】
本願発明において、使用する燃料は、硫黄分含有量2重量%以下の燃料の使用、例えば、硫黄分0.5重量%以下に適合した燃料油(低硫黄残渣油(LSC重油) 、低硫黄留出油(LSA重油)、超低硫黄原油(硫黄分0.1重量%以下)、さらに、天然ガス(natural gas)、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)が使用できる。
さらに、天然ガス由来及び/又は主成分とする燃料、液化天然ガス由来及び/又は主成分とする燃料、都市ガス、特に、天然ガスを主成分として構成される都市ガスが好ましい。例えば、13Aの規格の都市ガスがある。また、天然ガス又は液化天然ガスを原料として製造される都市ガスが好ましい。
天然ガスは、メタン含有率に応じて熱量が異なる。メタン含有率が高い場合、単位体積当たりの重量が軽くなり、熱量が小さくなる。このため、メタン含有率が高い天然ガスを軽質ガスという。他方、メタン含有率が低い場合、単位体積当たりの重量が重くなり、熱量が大きくなる。このため、メタン含有率が低い天然ガスを重質ガスという。
なお、天然ガスの熱量の単位として、MJ/m3(メガジュール毎立方メートル)又はBTU/ft3(英国熱量単位〔British Thermal Unit〕毎立方フィート)が用いられている。重質ガスは、おおむね1、050BTU/ft3以上の熱量の天然ガス9をいい、軽質ガスは、おおむね1、050BTU/ft3以下の熱量の天然ガス10をいい、超軽質ガスは、おおむね1、000BTU/ft3以下の熱量の天然ガス11をいう。
天然ガスを主成分として、都市ガスを構成する場合、都市ガスの規格によっては、熱量が足りない場合には、熱量調整を行うことが好ましい。
熱量調整とは、天然ガスの熱量を変更することをいう。熱量を高くする増熱については、天然ガスに熱量の高い燃料を混合する方法がある。
【0054】
表2は、
図1の燃料Aとして都市ガス(規格13A)を燃焼することによって発生した排気Fの成分表である。二酸化炭素、酸素、窒素でほぼ100%を占めるものであった。
【0055】
【0056】
表2から明らかなように、排気Fには、二酸化炭素、酸素、窒素のみが成分として含まれ、他の成分はほとんど含まれないものであり、CO2回収装置20において分離・精製されるCO2の純度の高いものとなる。
【0057】
なお、表3に示されるように、例えば、製油所において使用される石炭をボイラー燃料として用いた場合には、ボイラーの排気には、SO2(二酸化硫黄)、NOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)などのいわゆる不純物が含まれる。したがって、CO2回収装置20においては、これらの不純物を除去するための高負荷仕様の後処理が必要になる。特に、飲料や食品等、特に、添加する用途を想定してCO2を精製する場合には、不純物の混入等により、品質の管理が困難となる。
【0058】
【0059】
この点、都市ガスをボイラー燃料として用いた場合の排気Fには、表2に示すように、上記のような不純物が含まれる可能性が極めて低いため、CO2回収装置20において不純物を除去するための後処理を省略したとしても、不純物がゼロ、あるいは、極めて少ない高純度のCO2の精製が可能となる。
【0060】
なお、排気中にSOx(硫黄酸化物)が含まれないようにする、あるいは、極めて微量とするために、例えば、燃料Aに含まれる硫黄分含有率は、2重量%以下であることとする。より好ましくは、1.2重量%以下、1重量%以下、0.7%重量以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、とする。
【0061】
また、排気中のNOx(窒素酸化物)については、950volppm以下とし、好ましくは、好ましくは、700volppm以下、500volppm以下、250volppm以下、100volppm以下、70volppm以下、60volppm以下、50volppm以下、40volppm以下、35volppm以下、30volppm以下、とする。
【0062】
例えば、表1の都市ガス(規格13A)を燃料としてボイラーを燃焼した場合の排気について計量をした結果、窒素酸化物(NOx)は22volppm、硫黄酸化物(SOx)は、5volppm未満であった。
【0063】
また、
図2において、CO
2回収装置20にて回収されて精製されたCO
2を気体の成分は、CO
2の濃度は、99.9%(体積換算)以上)であり、好ましくは99.95%(体積換算)以上、より好ましくは、99.98%(体積換算)以上程度とするものであり、硫黄酸化物(SOx)は5volppm未満となるように設計されることが好ましい。ドライアイスのような固体の場合や、液体の状態の場合は、気体にして純度等を測定する。
【0064】
図3は、排水から生じるバイオガスをボイラー41の燃料や、コージェネレーションシステム42の燃料として用いる例について示す図である。
【0065】
産業設備1から排出される排水は、排水処理設備40にて嫌気性処理される。嫌気性処理により生じたメタンガスC(排水バイオガス)は、ボイラー41や、コージェネレーションシステム42に供給され、燃料として使用される。なお、嫌気性処理によって生成されたガスを実際にバイオガス燃料として精製し、当該燃料の成分を測定したところ、以下のようになった。
【0066】
【0067】
ボイラー41や、コージェネレーションシステム42にて生じた排気Fは、CO2回収装置20に供給され、CO2回収装置20にてCO2が精製される。上記表4の組成のバイオガス燃料を使用した際の排気Fの成分を測定したところ、以下のようになった。
【0068】
【0069】
また、
図3において、CO
2回収装置20にて回収されて精製されたCO
2の濃度は、99.9%(体積換算)以上であり、好ましくは99.95%(体積換算)、より好ましくは、99.98%(体積換算)以上程度とするものであり、硫黄酸化物(SOx)は5volppm未満、より好ましくは、1(volppm)となるように設計されことが好ましい。
【0070】
図4は、微生物による有機物の発酵により発生するガスGに含まれるCO
2を、CO
2回収装置20にて回収する例について示す図である。この例では、ビール製造における発酵タンクにて生じるCO
2(炭酸ガス)を回収する例である。なお、ビール製造における発酵の過程で生じるCO
2の他、ワイン製造における発酵の過程で生じるCO
2を回収することも考えられる。
【0071】
発酵タンクから回収されたCO2は、バイオガス燃料として精製され、当該燃料の成分は、例えば、以下となることが想定される。
【0072】
【0073】
また、
図4において、CO
2回収装置20にて回収されて精製されたCO
2を気体の成分は、CO
2の濃度は、99.9%(体積換算)以上であり、好ましくは99.5%(体積換算)以上、より好ましくは、99.98%(体積換算)程度とするものであり、硫黄酸化物(SOx)は5volppm未満、となるように設計されことが好ましい。
【0074】
以上に基づき、産業設備1が飲料の製造工場である場合において、以下の炭酸含有飲料の製造方法とすることができる。
【0075】
これにより、CO2を回収し、有効利用することで、CO2の排出量を減らし、環境保護に対する貢献を図ることが可能となる。また、回収したCO2を所定の濃度で炭酸含有飲料に用いることで、フォーミングの発生を抑制することができる。また、回収したCO2は、インラインで用いることやボンベ等に一時貯留することで、幅広く利用することができる。また、排気からCO2を回収することで、CO2の排出量を低減することができる。また、硫黄分含有量がゼロ、または、少ない燃料、即ち、天然ガスを主成分とするガス(都市ガス)、排水を嫌気性処理することよって生じるバイオガス、微生物による有機物の発酵により発生するガス、を利用することで、回収したCO2に不純物が含まれる可能性が極めて低いため、CO2回収装置において不純物を除去するための後処理を省略したとしても、不純物がゼロ、あるいは、極めて少ない高純度のCO2の精製が可能となる。また、排気中の窒素酸化物が所定の濃度以下とされることにより、CO2回収装置において不純物を除去するための後処理を省略したとしても、不純物がゼロ、あるいは、極めて少ない高純度のCO2の精製が可能となる。
【0076】
具体的には、以下の方法とする。
CO2を含む排気中からCO2回収装置にてCO2を回収する工程と、
回収したCO2を炭酸含有飲料製造システムに供給する工程と、
前記炭酸含有飲料製造システムにて、CO2をCO2溶解装置に供給する工程と、
液体をCO2溶解装置に供給する工程と、
前記CO2溶解装置にてCO2を前記液体に溶解させる工程と、
前記CO2が溶解した前記液体を容器に充填する工程と、
前記容器を密封する工程と、を含むことを特徴とする、炭酸含有飲料の製造方法とする。
【0077】
回収したCO2を所定のCO2濃度で炭酸含有飲料の製造に利用する。
【0078】
CO2濃度は、99.5%以上、100%未満である。
【0079】
CO2濃度は、99.9%以上、100%未満である。
【0080】
CO2濃度は、99.95%以上、100%未満である。
【0081】
CO2回収装置にて回収したCO2は、
CO2回収装置から炭酸含有飲料製造システムに供給されて、炭酸含有飲料製造工程に利用される。
【0082】
CO2回収装置にて回収したCO2は、
CO2回収装置で回収され保管され、保管されたCO2を炭酸含有飲料製造システムで利用することで、回収したCO2が炭酸含有飲料製造工程に利用される。
【0083】
前記排気は、燃料を燃焼させた際に生じる排気である。
【0084】
前記排気は、燃料を燃焼させて加温装置で加熱を行う際に生じる排気である。
【0085】
前記燃料は、天然ガスを主成分とするガスである。
【0086】
前記燃料は、都市ガスである。
【0087】
前記都市ガスは、天然ガスを主成分とするガスである。
【0088】
CO2を含む排気は、
排水を嫌気性処理することよって生じるバイオガスである。
【0089】
CO2を含む排気は、
電気、又は、熱、又は、蒸気を生成するための設備にて発生するものである。
【0090】
CO2を含む排気は、
微生物による有機物の発酵により発生するガスである。
【0091】
前記燃料に含まれる硫黄分含有量は、2重量%以下である。
【0092】
CO2を含む排気中の窒素酸化物は、950volppm以下である。
【0093】
前記CO2溶解装置がカーボネータである。
【0094】
前記CO2回収装置は、CO2を吸収剤に吸収させた後、CO2を吸収させた吸収剤を加熱する工程を含む装置である。
【0095】
前記CO2回収装置は、CO2を気体、液体、固体のいずれか一種又は二以上として回収できることができる工程を含む。
【0096】
前記炭酸含有飲料のガスボリュームは、
0.7以上~11以下である。
【0097】
上記の炭酸含有飲料の製造方法を用いて、充填機におけるフォーミング及び/又は消費者開封時のフォーミングを防止する方法。
【0098】
また、以上に基づき、産業設備1において、回収したCO2から飲食品製造用CO2を製造する方法とすることができる。
【0099】
これにより、CO2を回収し、有効利用することで、CO2の排出量を減らし、環境保護に対する貢献を図ることが可能となる。また、回収したCO2を飲食品製造用CO2をして用いることで、様々な食品に使用することができる。また、回収したCO2は、インラインで用いることやボンベ等に一時貯留することで、幅広く利用することができる。また、排気からCO2を回収することで、CO2の排出量を低減することができる。また、硫黄分含有量がゼロ、または、少ない燃料、即ち、天然ガスを主成分とするガス(都市ガス)、排水を嫌気性処理することよって生じるバイオガス、微生物による有機物の発酵により発生するガス、を利用することで、回収したCO2に不純物が含まれる可能性が極めて低いため、CO2回収装置において不純物を除去するための後処理を省略したとしても、不純物がゼロ、あるいは、極めて少ない高純度のCO2の精製が可能となる。また、排気中の窒素酸化物が所定の濃度以下とされることにより、CO2回収装置において不純物を除去するための後処理を省略したとしても、不純物がゼロ、あるいは、極めて少ない高純度のCO2の精製が可能となる。
【0100】
飲食品製造用CO2の用途は、炭酸含有飲料を製造するためのCO2、アルコール飲料を製造するためのCO2、食肉・小麦粉(パスタ、ビスケット)、プロテイン等のタンパク質合成食品の合成に用いられるCO2、藻の育成を促進させオメガ3脂肪酸等を合成してなるサプリメントを製造するためのCO2、等がある。なお、飲食品製造用の用語は、動物や家畜の餌も含む概念であり、例えば、炭酸カルシウムなどの飼料原料の合成をするためのCO2としても利用することができる。
【0101】
なお、回収したCO2は飲食品の製造に用いられるほか、ダイヤモンドの合成(鉱物合成)、白色度の向上や劣化抑制を図った中性紙の合成、藻の促成によるバイオ燃料の合成、プラスチック原料の合成、着色剤の希釈や増量剤として利用する化粧品の合成、メタン合成、を目的として利用されてもよい。
【0102】
具体的には、以下の方法とする。
CO2を含む排気中からCO2回収装置にてCO2を回収し、回収したCO2から飲食品製造用CO2を製造する方法とするものである。
【0103】
CO2回収装置にて回収したCO2は、
CO2回収装置から飲食品製造システムに供給されて、飲食品製造工程に利用される。
【0104】
CO2回収装置にて回収したCO2は、
CO2回収装置で回収され保管され、保管されたCO2を飲食品製造システムで利用することで、回収したCO2が飲食品製造工程に利用される。
【0105】
飲食品製造用CO2は、
炭酸含有飲料を製造するためのCO2、アルコール飲料を製造するためのCO2、食肉・小麦粉、プロテイン等のタンパク質合成食品の合成に用いられるCO2、藻の育成を促進させオメガ3脂肪酸等を合成してなるサプリメントを製造するためのCO2、炭酸カルシウムなどの飼料原料の合成をするためのCO2として使用される、ものである。
【符号の説明】
【0106】
1 産業設備
2 原材料タンク
3 調合タンク
4 カーボネータ
5 充填装置
6 シーマー
7 温水殺菌装置
8 検査装置
9 天然ガス
10 ボイラー
11 飲料容器
20 回収装置
30 搬出装置
40 排水処理設備
41 ボイラー
42 コージェネレーションシステム