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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119474
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】内燃機関システム
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20240827BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240827BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F02D45/00 369
F02M21/02 301R
F02D19/02 D
F02D45/00 345
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026397
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】菰田 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】豊島 実
(72)【発明者】
【氏名】菱田 雄司
(72)【発明者】
【氏名】柴田 英亮
【テーマコード(参考)】
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G092AB06
3G092AB07
3G092AC06
3G092DC03
3G092EA02
3G092EA09
3G092EA10
3G092EA11
3G092EB01
3G092FA44
3G092FB06
3G092HB09Z
3G092HE01Z
3G092HG08Z
3G384AA14
3G384AA21
3G384BA05
3G384BA11
3G384BA47
3G384DA27
3G384DA42
3G384EB08
3G384EB18
3G384ED01
3G384ED07
3G384FA19Z
3G384FA56Z
3G384FA85Z
(57)【要約】
【課題】ガス欠に係る状態の判定精度を向上させることができる内燃機関システムを提供する。
【解決手段】内燃機関システム1は、LPGボンベ6内の燃料を減圧して気化させるレギュレータ9と、レギュレータ9の上流側の燃料圧力を検出する上流燃圧センサ14と、エンジン2の始動直後における上流燃圧センサ14の検出値に基づいて、LPGボンベ6内の飽和蒸気圧を推定してボンベ内蒸気圧推定値を取得する蒸気圧推定部21と、ボンベ内蒸気圧推定値に応じたガス欠注意用判定閾値を算出する判定閾値算出部22と、レギュレータ9の上流側の燃料圧力に応じた値とガス欠注意用判定閾値とを比較し、レギュレータ9の上流側の燃料圧力に応じた値がガス欠注意用判定閾値以下であるときに、LPGボンベ6内の燃料の充填量が予め決められた規定量よりも少ないガス欠注意状態であると判定するガス欠注意判定部23とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関に供給される空気が流れる吸気流路と、
前記吸気流路に配設され、前記内燃機関に供給される空気の流量を制御するスロットル弁と、
燃料を液体状態で充填する燃料ボンベと、
前記燃料ボンベ内の燃料を減圧して気化させるレギュレータと、
前記レギュレータにより気化された燃料を前記内燃機関内に供給するインジェクタと、
前記レギュレータの上流側の燃料圧力を検出する上流圧力検出部と、
前記内燃機関の始動直後における前記上流圧力検出部の検出値に基づいて、前記燃料ボンベ内の飽和蒸気圧を推定してボンベ内蒸気圧推定値を取得する蒸気圧推定部と、
前記蒸気圧推定部により取得された前記ボンベ内蒸気圧推定値に応じたガス欠注意用判定閾値を算出する判定閾値算出部と、
前記上流圧力検出部により検出された前記レギュレータの上流側の燃料圧力に応じた値と前記判定閾値算出部により算出された前記ガス欠注意用判定閾値とを比較し、前記レギュレータの上流側の燃料圧力に応じた値が前記ガス欠注意用判定閾値以下であるときに、前記燃料ボンベ内の燃料の充填量が予め決められた規定量よりも少ないガス欠注意状態であると判定するガス欠注意判定部とを備える内燃機関システム。
【請求項2】
前記判定閾値算出部は、前記ボンベ内蒸気圧推定値に応じた値が予め決められた前記ガス欠注意状態の判定下限値以上であるときに、前記ガス欠注意用判定閾値を算出する請求項1記載の内燃機関システム。
【請求項3】
前記判定閾値算出部は、前記ボンベ内蒸気圧推定値に応じた値及び前記判定下限値を用いて、前記ガス欠注意用判定閾値を算出する請求項2記載の内燃機関システム。
【請求項4】
前記ボンベ内蒸気圧推定値に応じた値は、前記ボンベ内蒸気圧推定値から大気圧を引いた差分値である請求項2記載の内燃機関システム。
【請求項5】
前記蒸気圧推定部は、前記内燃機関の始動直後の所定期間内における前記上流圧力検出部の検出値の平均値を算出し、前記上流圧力検出部の検出値の平均値を前記ボンベ内蒸気圧推定値として取得する請求項1記載の内燃機関システム。
【請求項6】
前記レギュレータの上流側の燃料圧力に応じた値は、前記上流圧力検出部の検出値から大気圧を引いた差分値である請求項1記載の内燃機関システム。
【請求項7】
前記ガス欠注意判定部により前記ガス欠注意状態であると判定されたときに、前記ガス欠注意状態である旨を通知する警報を行う警報部を更に備える請求項1記載の内燃機関システム。
【請求項8】
前記ガス欠注意判定部により前記ガス欠注意状態であると判定されたときに、前記スロットル弁の開度を制限するように制御するスロットル制御部を更に備える請求項1記載の内燃機関システム。
【請求項9】
前記レギュレータの下流側の燃料圧力を検出する下流圧力検出部と、
前記下流圧力検出部により検出された前記レギュレータの下流側の燃料圧力に応じた値と予め決められたガス欠用判定閾値とを比較し、前記レギュレータの下流側の燃料圧力に応じた値が前記ガス欠用判定閾値以下であるときに、前記燃料ボンベ内の燃料の充填量が前記ガス欠注意状態のときよりも少ないガス欠状態であると判定するガス欠判定部とを更に備える請求項1記載の内燃機関システム。
【請求項10】
前記レギュレータの下流側の燃料圧力に応じた値は、前記下流圧力検出部の検出値から大気圧を引いた差分値である請求項9記載の内燃機関システム。
【請求項11】
前記ガス欠判定部により前記ガス欠状態であると判定されたときに、前記ガス欠状態である旨を通知する警報を行う警報部を更に備える請求項9記載の内燃機関システム。
【請求項12】
前記ガス欠判定部により前記ガス欠状態であると判定されたときに、前記スロットル弁の開度を制限するように制御するスロットル制御部を更に備える請求項9記載の内燃機関システム。
【請求項13】
前記スロットル制御部は、前記レギュレータの下流側の燃料圧力に応じた値と前記ガス欠用判定閾値よりも小さい開度制限用閾値とを比較し、前記レギュレータの下流側の燃料圧力に応じた値が前記開度制限用閾値以下であるときは、前記レギュレータの下流側の燃料圧力に応じた値が前記開度制限用閾値よりも大きいときに比べて、前記スロットル弁の開度を小さくするように制御する請求項12記載の内燃機関システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関システムとしては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載の内燃機関システムは、内燃機関の運転状態が減速状態かつ燃料カット状態になると、一時的に規定空燃比となるように微量の気体燃料をインジェクタから噴射させる微量噴射制御を実行し、その後の所定期間に検出された空燃比と規定空燃比とに基づいて、燃料タンク内の気体燃料の残量が所定量以下であるかどうかを判定することで、燃料タンク内が燃料切れであるかどうかを推定し、その推定結果に応じて警告を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-12402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばLPGボンベ内の圧力が閾値以下になると、LPGボンベ内のLPG残量を警告するシステムがある。しかし、LPGボンベ内の飽和蒸気圧は、LPGの成分比率及び温度により変化する。このため、判定用の閾値が一定値である場合には、燃料切れ(ガス欠)に係る状態の判定精度が低下する。
【0005】
本発明の目的は、ガス欠に係る状態の判定精度を向上させることができる内燃機関システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係る内燃機関システムは、内燃機関と、内燃機関に供給される空気が流れる吸気流路と、吸気流路に配設され、内燃機関に供給される空気の流量を制御するスロットル弁と、燃料を液体状態で充填する燃料ボンベと、燃料ボンベ内の燃料を減圧して気化させるレギュレータと、レギュレータにより気化された燃料を内燃機関内に供給するインジェクタと、レギュレータの上流側の燃料圧力を検出する上流圧力検出部と、内燃機関の始動直後における上流圧力検出部の検出値に基づいて、燃料ボンベ内の飽和蒸気圧を推定してボンベ内蒸気圧推定値を取得する蒸気圧推定部と、蒸気圧推定部により取得されたボンベ内蒸気圧推定値に応じたガス欠注意用判定閾値を算出する判定閾値算出部と、上流圧力検出部により検出されたレギュレータの上流側の燃料圧力に応じた値と判定閾値算出部により算出されたガス欠注意用判定閾値とを比較し、レギュレータの上流側の燃料圧力に応じた値がガス欠注意用判定閾値以下であるときに、燃料ボンベ内の燃料の充填量が予め決められた規定量よりも少ないガス欠注意状態であると判定するガス欠注意判定部とを備える。
【0007】
このような内燃機関においては、上流圧力検出部によりレギュレータの上流側の燃料圧力(燃料ボンベ内の圧力)が検出される。そして、内燃機関の始動直後における上流圧力検出部の検出値に基づいて、燃料ボンベ内の飽和蒸気圧が推定されてボンベ内蒸気圧推定値が取得される。そして、ボンベ内蒸気圧推定値に応じたガス欠注意用判定閾値が算出される。そして、レギュレータの上流側の燃料圧力に応じた値がガス欠注意用判定閾値以下であるときは、燃料ボンベ内の燃料の充填量が規定量よりも少ないガス欠注意状態であると判定される。このようにボンベ内蒸気圧推定値に応じたガス欠注意用判定閾値が算出されるため、ボンベ内蒸気圧推定値の変化に従ってガス欠注意用判定閾値が変化することになる。このため、燃料ボンベ内の飽和蒸気圧が燃料の成分比率または温度により変化しても、燃料の成分比率または温度に適したガス欠注意用判定閾値が得られる。これにより、ガス欠注意状態の判定精度が向上する。
【0008】
(2)上記の(1)において、判定閾値算出部は、ボンベ内蒸気圧推定値に応じた値が予め決められたガス欠注意状態の判定下限値以上であるときに、ガス欠注意用判定閾値を算出してもよい。このような構成では、ボンベ内蒸気圧推定値に応じた値がガス欠注意状態の判定下限値よりも小さいときは、ガス欠注意用判定閾値を算出しなくて済むため、演算処理の簡素化を図ることができる。
【0009】
(3)上記の(2)において、判定閾値算出部は、ボンベ内蒸気圧推定値に応じた値及び判定下限値を用いて、ガス欠注意用判定閾値を算出してもよい。このような構成では、ボンベ内蒸気圧推定値に応じた値及びガス欠注意状態の判定下限値を用いた単純な計算式によって、ガス欠注意用判定閾値を容易に算出することができる。
【0010】
(4)上記の(1)~(3)の何れかにおいて、ボンベ内蒸気圧推定値に応じた値は、ボンベ内蒸気圧推定値から大気圧を引いた差分値であってもよい。スロットル弁の開度が大きくなると、内燃機関の吸気圧が大気圧に近づく。このため、ガス欠注意用判定閾値を算出する際に、ボンベ内蒸気圧推定値から大気圧を引いた差分値を用いることで、大気圧を考慮したガス欠注意用判定閾値が得られる。
【0011】
(5)上記の(1)~(4)の何れかにおいて、蒸気圧推定部は、内燃機関の始動直後の所定期間内における上流圧力検出部の検出値の平均値を算出し、上流圧力検出部の検出値の平均値をボンベ内蒸気圧推定値として取得してもよい。このような構成では、内燃機関の始動直後にレギュレータの上流側の燃料圧力が変動して不安定になっても、適切なボンベ内蒸気圧推定値が得られる。
【0012】
(6)上記の(1)~(5)の何れかにおいて、レギュレータの上流側の燃料圧力に応じた値は、上流圧力検出部の検出値から大気圧を引いた差分値であってもよい。スロットル弁の開度が大きくなると、内燃機関の吸気圧が大気圧に近づく。このため、上流圧力検出部の検出値から大気圧を引いた差分値を用いることで、大気圧を考慮したガス欠注意状態の判定を行うことができる。
【0013】
(7)上記の(1)~(6)の何れかにおいて、内燃機関システムは、ガス欠注意判定部によりガス欠注意状態であると判定されたときに、ガス欠注意状態である旨を通知する警報を行う警報部を更に備えてもよい。このような構成では、ユーザは、警報によってガス欠注意状態であることが直ちに分かる。従って、ユーザに対してガス欠注意状態であることの注意喚起を促すことができる。
【0014】
(8)上記の(1)~(7)の何れかにおいて、内燃機関システムは、ガス欠注意判定部によりガス欠注意状態であると判定されたときに、スロットル弁の開度を制限するように制御するスロットル制御部を更に備えてもよい。このような構成では、例えばガス欠に至るまでの車両の走行可能距離を確保し、車両を燃料充填場所まで走行させることができる。また、燃料の燃焼状態の悪化を抑制することができる。
【0015】
(9)上記の(1)~(8)の何れかにおいて、内燃機関システムは、レギュレータの下流側の燃料圧力を検出する下流圧力検出部と、下流圧力検出部により検出されたレギュレータの下流側の燃料圧力に応じた値と予め決められたガス欠用判定閾値とを比較し、レギュレータの下流側の燃料圧力に応じた値がガス欠用判定閾値以下であるときに、燃料ボンベ内の燃料の充填量がガス欠注意状態のときよりも少ないガス欠状態であると判定するガス欠判定部とを更に備えてもよい。このような構成では、下流圧力検出部により検出されたレギュレータの下流側の燃料圧力に応じた値がガス欠用判定閾値以下であるときは、燃料ボンベ内の燃料の充填量がガス欠注意状態のときよりも少ないガス欠状態であると判定される。従って、ガス欠状態の判定精度が向上する。
【0016】
(10)上記の(9)において、レギュレータの下流側の燃料圧力に応じた値は、下流圧力検出部の検出値から大気圧を引いた差分値であってもよい。スロットル弁の開度が大きくなると、内燃機関の吸気圧が大気圧に近づく。このため、下流圧力検出部の検出値から大気圧を引いた差分値を用いることで、大気圧を考慮したガス欠状態の判定を行うことができる。
【0017】
(11)上記の(9)または(10)において、内燃機関システムは、ガス欠判定部によりガス欠状態であると判定されたときに、ガス欠状態である旨を通知する警報を行う警報部を更に備えてもよい。このような構成では、ユーザは、警報によってガス欠状態であることが直ちに分かる。従って、ユーザに対してガス欠状態であることの注意喚起を促すことができる。
【0018】
(12)上記の(9)~(11)の何れかにおいて、内燃機関システムは、ガス欠判定部によりガス欠状態であると判定されたときに、スロットル弁の開度を制限するように制御するスロットル制御部を更に備えてもよい。このような構成では、完全にガス欠になる状況を遅らせることができる。また、燃料の燃焼状態の悪化を抑制することができる。
【0019】
(13)上記の(12)において、スロットル制御部は、レギュレータの下流側の燃料圧力に応じた値とガス欠用判定閾値よりも小さい開度制限用閾値とを比較し、レギュレータの下流側の燃料圧力に応じた値が開度制限用閾値以下であるときは、レギュレータの下流側の燃料圧力に応じた値が開度制限用閾値よりも大きいときに比べて、スロットル弁の開度を小さくするように制御してもよい。このような構成では、完全にガス欠になる状況を更に遅らせることができる。また、燃料の燃焼状態の悪化を更に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガス欠に係る状態の判定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関システムを示す概略構成図である。
図2図1に示されたECUの機能ブロック図である。
図3図2に示されたECUにより実行される蒸気圧推定処理の手順を示すフローチャートである。
図4図2に示されたECUにより実行される判定閾値算出・制御処理の手順を示すフローチャートである。
図5】レギュレータの上流側の燃料圧力及びガス欠注意状態の判定結果の一例を示すタイミング図である。
図6図2に示されたECUにより実行されるガス欠注意判定・制御処理の手順を示すフローチャートである。
図7】ガス欠注意状態と判定されたときに制限されるスロットル弁の開度の一例を示す表である。
図8図2に示されたECUにより実行されるガス欠判定・制御処理の手順を示すフローチャートである。
図9】レギュレータの下流側の燃料圧力及びガス欠状態の判定結果の一例を示すタイミング図である。
図10】ガス欠状態と判定されたときに制限されるスロットル弁の開度の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関システムを示す概略構成図である。図1において、本実施形態の内燃機関システム1は、車両に搭載されている。車両は、自動車でもよいし、フォークリフト等の産業車両でもよい。
【0024】
本実施形態の内燃機関システム1では、燃料としてLPG(Liquefied Petroleum Gas)が使用される。LPGは、プロパン及びブタンを主成分とした液化石油ガスである。LPGの蒸気圧は、プロパンとブタンとの比率及びLPGの温度により変化する。
【0025】
内燃機関システム1は、エンジン2(内燃機関)と、吸気流路3と、エアクリーナ4と、スロットル弁5と、LPGボンベ6と、燃料流路7と、電磁弁8と、レギュレータ9と、燃料流路10と、複数のインジェクタ11とを備えている。
【0026】
エンジン2は、例えば4気筒エンジンである。エンジン2は、燃料と空気との混合気に点火して燃料を着火させる点火プラグ12を有している。
【0027】
吸気流路3は、エンジン2と接続されている。吸気流路3は、エンジン2に供給される空気(吸入空気)が流れる流路である。エアクリーナ4は、吸気流路3に配設されている。エアクリーナ4は、吸入空気に含まれる塵や埃等の異物を取り除く。スロットル弁5は、吸気流路3におけるエアクリーナ4とエンジン2との間に配設されている。スロットル弁5は、吸入空気の流量を制御する電磁式の流量制御弁である。
【0028】
LPGボンベ6は、燃料であるLPGを液体状態で充填する燃料ボンベである。燃料流路7は、LPGボンベ6とレギュレータ9とを接続する。燃料流路7は、LPGボンベ6からレギュレータ9に液体燃料が流れる流路である。なお、LPGボンベ6と燃料流路7との接続部には、フィルタ(図示せず)が配置されている。電磁弁8は、燃料流路7を開閉する開閉弁である。
【0029】
レギュレータ9は、LPGボンベ6内の燃料を減圧して気化させる減圧弁である。燃料流路10は、レギュレータ9と複数(例えば4つ)のインジェクタ11とを接続する。燃料流路10は、レギュレータ9により気化された燃料(燃料ガス)が各インジェクタ11に向かって流れる流路である。
【0030】
インジェクタ11は、燃料ガスをエンジン2内に供給する電磁式の燃料噴射弁である。インジェクタ11は、吸気流路3におけるスロットル弁5とエンジン2との間に燃料ガスを噴射する。なお、インジェクタ11は、エンジン2内に燃料ガスを直接噴射してもよい。
【0031】
また、内燃機関システム1は、上流燃圧センサ14と、燃温センサ15と、下流燃圧センサ16と、吸気圧センサ17と、回転数センサ18と、警報器19と、ECU(Electronic Control Unit)20とを備えている。
【0032】
上流燃圧センサ14は、燃料流路7を流れる液体燃料の圧力、もしくはLPGボンベ6の出口圧力を検出する圧力センサである。上流燃圧センサ14は、レギュレータ9の上流側の燃料圧力を検出する上流圧力検出部を構成する。レギュレータ9の上流側の燃料圧力は、LPGボンベ6内の圧力に相当する。
【0033】
燃温センサ15は、燃料流路10を流れる燃料ガスの温度を検出する温度センサである。下流燃圧センサ16は、燃料流路10を流れる燃料ガスの圧力を検出する圧力センサである。下流燃圧センサ16は、レギュレータ9の下流側の燃料圧力を検出する下流圧力検出部を構成する。
【0034】
吸気圧センサ17は、吸気流路3を流れる吸入空気の圧力を検出する圧力センサである。回転数センサ18は、エンジン2の回転数を検出するセンサである。
【0035】
警報器19は、車両の運転席に配置されている。警報器19は、警報表示によってガス欠(燃料切れ)に係る警報を行う。なお、警報器19は、警報表示に代えて又は警報表示と共に警報音によってガス欠に係る警報を行ってもよい。
【0036】
ECU20は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。ECU20は、上流燃圧センサ14、燃温センサ15、下流燃圧センサ16、吸気圧センサ17及び回転数センサ18の検出値に基づいて、所定の処理を実行し、スロットル弁5、電磁弁8、インジェクタ11及び警報器19を制御する。
【0037】
ECU20は、図2に示されるように、蒸気圧推定部21と、判定閾値算出部22と、ガス欠注意判定部23と、ガス欠判定部24と、警報制御部25と、スロットル制御部26とを有している。
【0038】
蒸気圧推定部21は、エンジン2の始動直後における上流燃圧センサ14の検出値に基づいて、LPGボンベ6内の飽和蒸気圧を推定してボンベ内蒸気圧推定値を取得する。蒸気圧推定部21は、エンジン2の始動直後の所定期間内における上流燃圧センサ14の検出値の平均値を算出し、上流燃圧センサ14の検出値の平均値をボンベ内蒸気圧推定値として取得する。
【0039】
判定閾値算出部22は、蒸気圧推定部21により取得されたボンベ内蒸気圧推定値に応じたガス欠注意用判定閾値を算出する。ガス欠注意用判定閾値は、LPGボンベ6内がガス欠注意状態(後述)であるか否かの判定に使用される判定閾値である。判定閾値算出部22は、ボンベ内蒸気圧推定値に応じた値が予め決められたガス欠注意状態の判定下限値以上であるときに、ボンベ内蒸気圧推定値に応じた値及び判定下限値を用いて、ガス欠注意用判定閾値を算出する。
【0040】
ガス欠注意判定部23は、上流燃圧センサ14により検出されたレギュレータ9の上流側の燃料圧力に応じた値と判定閾値算出部22により算出されたガス欠注意用判定閾値とを比較し、レギュレータ9の上流側の燃料圧力に応じた値がガス欠注意用判定閾値以下であるときに、LPGボンベ6内の燃料の充填量が予め決められた規定量よりも少ないガス欠注意状態であると判定する。
【0041】
ガス欠判定部24は、下流燃圧センサ16により検出されたレギュレータ9の下流側の燃料圧力に応じた値と予め決められたガス欠用判定閾値とを比較し、レギュレータ9の下流側の燃料圧力に応じた値がガス欠用判定閾値以下であるときに、LPGボンベ6内の燃料の充填量がガス欠注意状態のときよりも少ないガス欠状態であると判定する。ガス欠用判定閾値は、LPGボンベ6内がガス欠状態であるか否かの判定に使用される判定閾値である。
【0042】
警報制御部25は、ガス欠注意判定部23によりガス欠注意状態であると判定されたときに、ガス欠注意状態である旨を通知する警報を行うように警報器19を制御する。また、警報制御部25は、ガス欠判定部24によりガス欠状態であると判定されたときに、ガス欠状態である旨を通知する警報を行うように警報器19を制御する。警報制御部25は、警報器19と協働して、ガス欠注意状態及びガス欠状態である旨を通知する警報を行う警報部を構成する。
【0043】
スロットル制御部26は、ガス欠注意判定部23によりガス欠注意状態であると判定されたときに、回転数センサ18により検出されたエンジン2の回転数に応じて、スロットル弁5の開度を制限するように制御する。
【0044】
また、スロットル制御部26は、ガス欠判定部24によりガス欠状態であると判定されたときに、エンジン2の回転数に応じて、スロットル弁5の開度を制限するように制御する。スロットル制御部26は、レギュレータ9の下流側の燃料圧力に応じた値とガス欠用判定閾値よりも小さい開度制限用閾値とを比較し、レギュレータ9の下流側の燃料圧力に応じた値が開度制限用閾値以下であるときは、レギュレータ9の下流側の燃料圧力に応じた値が開度制限用閾値よりも大きいときに比べて、スロットル弁5の開度を小さくするように制御する。
【0045】
図3は、ECU20により実行される蒸気圧推定処理の手順を示すフローチャートである。本処理は、蒸気圧推定部21により実行される。本処理は、イグニッションスイッチ29(図1参照)がON操作されると、実行される。
【0046】
図3において、ECU20は、まず上流燃圧センサ14の検出値Pinを取得する(手順S101)。続いて、ECU20は、イグニッションスイッチ29がON操作されてから規定時間(例えば5秒)が経過したかどうかを判断する(手順S102)。ECU20は、規定時間が経過していないと判断したときは、手順S101を再度実行する。
【0047】
ECU20は、規定時間が経過したと判断したときは、規定時間内に取得された全ての上流燃圧センサ14の検出値Pinの平均値を算出する(手順S103)。そして、ECU20は、各上流燃圧センサ14の検出値Pinの平均値をボンベ内蒸気圧推定値Pbomに決定する(手順S104)。
【0048】
図4は、ECU20により実行される判定閾値算出・制御処理の手順を示すフローチャートである。本処理は、判定閾値算出部22、警報制御部25及びスロットル制御部26により実行される。本処理も、イグニッションスイッチ29がON操作されると、実行される。
【0049】
図4において、ECU20は、まずボンベ内蒸気圧推定値Pbomと大気圧Paとの差分値D(図5(a)参照)を算出する(手順S111)。差分値Dは、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomから大気圧Paを引いた値である。差分値Dは、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomに応じた値に相当する。
【0050】
そして、ECU20は、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomと大気圧Paとの差分値Dがガス欠注意状態の判定下限値Pw(図5(a)参照)以上であるかどうかを判断する(手順S112)。このとき、ECU20は、差分値Dが判定下限値Pw以上である状態が所定時間続いたときに、差分値Dが判定下限値Pw以上であると判断してもよい。判定下限値Pwは、予め決められている。
【0051】
ECU20は、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomと大気圧Paとの差分値Dが判定下限値Pw以上であると判断したときは、ガス欠注意用判定閾値Rを算出する(手順S113)。ガス欠注意用判定閾値Rは、差分値Dと判定下限値Pwとの間で変化する値である(図5(a)中の矢印Z参照)。
【0052】
ガス欠注意用判定閾値Rは、下記式により算出される。具体的には、ガス欠注意用判定閾値Rは、判定下限値Pwと、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomから大気圧Paと判定下限値Pwとを引いた値に係数Aを掛けた数値との和である。なお、係数Aは、0.0~1.0の何れかの定数(例えば0.5)である。
R=Pw+{(Pbom-Pa)-Pw}×A
【0053】
ECU20は、手順S112でボンベ内蒸気圧推定値Pbomと大気圧Paとの差分値Dが判定下限値Pwよりも小さいと判断したときは、想定外状態である(想定外判定がON)と判定する(手順S114)。ここでの想定外状態には、後述するガス欠注意状態が含まれる。つまり、想定外状態は、エンジン2が既にガス欠直前の状況で始動された状態、或いは燃料が低蒸気圧かつ低温の状況でエンジン2が始動された状態である。
【0054】
続いて、ECU20は、想定外状態である旨を通知する警報を行うように警報器19を制御する(手順S115)。続いて、スロットル弁5の開度を制限するようにスロットル弁5を制御する(手順S116)。このとき、スロットル弁5の開度は、例えば予め決められた規定開度に制限される。
【0055】
ここで、判定閾値算出部22は、手順S111~S114を実行する。警報制御部25は、手順S115を実行する。スロットル制御部26は、手順S116を実行する。
【0056】
図6は、ECU20により実行されるガス欠注意判定・制御処理の手順を示すフローチャートである。本処理は、ガス欠注意判定部23、警報制御部25及びスロットル制御部26により実行される。本処理も、イグニッションスイッチ29がON操作されると、実行される。
【0057】
図6において、ECU20は、まず上流燃圧センサ14の検出値Pinを取得する(手順S121)。そして、ECU20は、上流燃圧センサ14の検出値Pinと大気圧Paとの差分値Qin(図5(a)参照)を算出する(手順S122)。差分値Qinは、上流燃圧センサ14の検出値Pinから大気圧Paを引いた値である。差分値Qinは、レギュレータ9の上流側の燃料圧力に応じた値である。
【0058】
そして、ECU20は、上流燃圧センサ14の検出値Pinと大気圧Paとの差分値Qinがガス欠注意用判定閾値R以下であるかどうかを判断する(手順S123)。このとき、ECU20は、差分値Qinがガス欠注意用判定閾値R以下である状態が所定時間続いたときに、差分値Qinがガス欠注意用判定閾値R以下であると判断してもよい。
【0059】
ECU20は、上流燃圧センサ14の検出値Pinと大気圧Paとの差分値Qinがガス欠注意用判定閾値R以下であると判断したときは、図5(b)に示されるように、ガス欠注意状態である(ガス欠注意判定がON)と判定する(手順S124)。ガス欠注意状態は、ガス欠が近づいているために注意が必要な状態である。続いて、ECU20は、ガス欠注意状態である旨を通知する警報を行うように警報器19を制御する(手順S125)。
【0060】
続いて、ECU20は、回転数センサ18の検出値を取得する(手順S126)。そして、ECU20は、回転数センサ18の検出値に応じて、スロットル弁5の開度を制限するようにスロットル弁5を制御する(手順S127)。具体的には、ECU20は、図7に示されるように、エンジン2の回転数が高くなるほどスロットル弁5の開度が小さくなるように、スロットル弁5を制御する。なお、スロットル弁5が全開の状態では、スロットル弁5の開度が100%である。
【0061】
ECU20は、手順S123で上流燃圧センサ14の検出値Pinと大気圧Paとの差分値Qinがガス欠注意用判定閾値Rよりも大きいと判断したときは、図5(b)に示されるように、ガス欠注意状態でない(ガス欠注意判定がOFF)と判定する(手順S128)。
【0062】
ECU20は、手順S127または手順S128を実行した後、上記の手順S121を再度実行する。
【0063】
ここで、ガス欠注意判定部23は、手順S121~S124,S128を実行する。警報制御部25は、手順S125を実行する。スロットル制御部26は、手順S126,S127を実行する。
【0064】
図8は、ECU20により実行されるガス欠判定・制御処理の手順を示すフローチャートである。本処理は、ガス欠判定部24、警報制御部25及びスロットル制御部26により実行される。本処理も、イグニッションスイッチ29がON操作されると、実行される。
【0065】
図8において、ECU20は、まず下流燃圧センサ16の検出値Poutを取得する(手順S131)。そして、下流燃圧センサ16の検出値Poutと大気圧Paとの差分値Qout(図9(a)参照)を算出する(手順S132)。差分値Qoutは、下流燃圧センサ16の検出値Poutから大気圧Paを引いた値である。差分値Qoutは、レギュレータ9の下流側の燃料圧力に応じた値である。
【0066】
続いて、ECU20は、下流燃圧センサ16の検出値Poutと大気圧Paとの差分値Qoutがガス欠用判定閾値S1以下であるかどうかを判断する(手順S133)。ガス欠用判定閾値S1は、ガス欠間近の状態を判定するための閾値であり、予め決められている。このとき、ECU20は、差分値Qoutがガス欠用判定閾値S1以下である状態が所定時間続いたときに、差分値Qoutがガス欠用判定閾値S1以下であると判断してもよい。
【0067】
ECU20は、下流燃圧センサ16の検出値Poutと大気圧Paとの差分値Qoutがガス欠用判定閾値S1以下であると判断したときは、図9(b)に示されるように、ガス欠状態である(ガス欠判定がON)と判定する(手順S134)。ガス欠状態は、車両が走行不能になる完全なガス欠に近い状態である。
【0068】
続いて、ECU20は、下流燃圧センサ16の検出値Poutと大気圧Paとの差分値Qoutが開度制限用閾値S2よりも大きいかどうかを判断する(手順S135)。開度制限用閾値S2は、ガス欠用判定閾値S1よりも小さい値であり、予め決められている。このとき、ECU20は、差分値Qoutが開度制限用閾値S2よりも大きい状態が所定時間続いたときに、差分値Qoutが開度制限用閾値S2よりも大きいと判断してもよい。
【0069】
ECU20は、下流燃圧センサ16の検出値Poutと大気圧Paとの差分値Qoutが開度制限用閾値S2よりも大きいと判断したときは、ガス欠状態である旨を通知する警報を行うように警報器19を制御する(手順S136)。
【0070】
続いて、ECU20は、回転数センサ18の検出値を取得する(手順S137)。そして、ECU20は、回転数センサ18の検出値に応じて、スロットル弁5の開度を制限するようにスロットル弁5を制御する(手順S138)。具体的には、ECU20は、図10(a)に示されるように、エンジン2の回転数が高くなるほどスロットル弁5の開度が小さくなるように、スロットル弁5を制御する。このとき、スロットル弁5の開度は、ガス欠注意状態のときよりも小さくなるように制限される。
【0071】
ECU20は、手順S135で下流燃圧センサ16の検出値Poutと大気圧Paとの差分値Qoutが開度制限用閾値S2以下であると判断したときは、更なるガス欠状態である旨を通知する警報を行うように警報器19を制御する(手順S139)。
【0072】
続いて、ECU20は、回転数センサ18の検出値を取得する(手順S140)。そして、ECU20は、回転数センサ18の検出値に応じて、スロットル弁5の開度を更に制限するようにスロットル弁5を制御する(手順S141)。具体的には、ECU20は、図10(b)に示されるように、エンジン2の回転数が高くなるほどスロットル弁5の開度が小さくなるように、スロットル弁5を制御する。このとき、スロットル弁5の開度は、手順S138の実行時よりも小さくなるように制限される。
【0073】
ECU20は、手順S133で下流燃圧センサ16の検出値Poutと大気圧Paとの差分値Qoutがガス欠用判定閾値S1よりも大きいと判断したときは、図9(b)に示されるように、ガス欠状態でない(ガス欠判定がOFF)と判定する(手順S142)。
【0074】
ECU20は、手順S138,S141,S142の何れかを実行した後、上記の手順S131を再度実行する。
【0075】
ここで、ガス欠判定部24は、手順S131~S135,S142を実行する。警報制御部25は、手順S136,S139を実行する。スロットル制御部26は、手順S137,S138,S140,S141を実行する。
【0076】
以上のような内燃機関システム1において、エンジン2が始動されると、エンジン2の始動直後の所定期間内における上流燃圧センサ14の検出値Pinの平均値が算出され、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomが取得される。
【0077】
次いで、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomと大気圧Paとの差分値Dがガス欠注意状態の判定下限値Pwと比較される。そして、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomと大気圧Paとの差分値Dが判定下限値Pw以上であるときは、ボンベ内蒸気圧推定値Pbom、大気圧Pa及び判定下限値Pwを用いた計算式によって、ガス欠注意用判定閾値Rが算出される。
【0078】
次いで、上流燃圧センサ14の検出値Pinと大気圧Paとの差分値Qinがガス欠注意用判定閾値Rと比較される。そして、上流燃圧センサ14の検出値Pinと大気圧Paとの差分値Qinがガス欠注意用判定閾値Rよりも大きいときは、ガス欠注意状態でない正常状態と判定される。
【0079】
一方、上流燃圧センサ14の検出値Pinと大気圧Paとの差分値Qinがガス欠注意用判定閾値R以下になると、ガス欠注意状態であると判定される。そして、警報器19によってガス欠注意状態である旨の警報が行われる。また、エンジン2の回転数に応じてスロットル弁5の開度が制限される。
【0080】
その後、下流燃圧センサ16の検出値Poutと大気圧Paとの差分値Qoutがガス欠用判定閾値S1と比較される。そして、下流燃圧センサ16の検出値Poutと大気圧Paとの差分値Qoutがガス欠用判定閾値S1以下になると、ガス欠状態であると判定される。そして、警報器19によってガス欠状態である旨の警報が行われる。また、エンジン2の回転数に応じてスロットル弁5の開度が更に制限される。
【0081】
また、下流燃圧センサ16の検出値Poutと大気圧Paとの差分値Qoutが開度制限用閾値S2と比較される。下流燃圧センサ16の検出値Poutと大気圧Paとの差分値Qoutが開度制限用閾値S2以下になると、更なるガス欠状態であると判定される。そして、警報器19により更にガス欠状態である旨の警報が行われると共に、スロットル弁5の開度が更に制限される。
【0082】
以上のように本実施形態にあっては、上流燃圧センサ14によりレギュレータ9の上流側の燃料圧力(LPGボンベ6内の圧力)が検出される。そして、エンジン2の始動直後における上流燃圧センサ14の検出値に基づいて、LPGボンベ6内の飽和蒸気圧が推定されてボンベ内蒸気圧推定値Pbomが取得される。そして、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomに応じたガス欠注意用判定閾値Rが算出される。そして、レギュレータ9の上流側の燃料圧力に応じた値がガス欠注意用判定閾値R以下であるときは、LPGボンベ6内の燃料の充填量が規定量よりも少ないガス欠注意状態であると判定される。このようにボンベ内蒸気圧推定値Pbomに応じたガス欠注意用判定閾値Rが算出されるため、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomの変化に従ってガス欠注意用判定閾値Rが変化することになる。このため、LPGボンベ6内の飽和蒸気圧が燃料の成分比率または温度により変化しても、燃料の成分比率または温度に適したガス欠注意用判定閾値Rが得られる。これにより、ガス欠注意状態の判定精度が向上する。その結果、エンジン2がいきなり停止して、車両が走行不能になることが防止される。また、車両が産業車両である場合、作業中にいきなり作業が中断することが防止されるため、作業効率の低下を抑えることができる。
【0083】
また、本実施形態では、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomに応じた値がガス欠注意状態の判定下限値Pw以上であるときに、ガス欠注意用判定閾値Rが算出される。従って、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomに応じた値が判定下限値Pwよりも小さいときは、ガス欠注意用判定閾値Rを算出しなくて済むため、演算処理の簡素化を図ることができる。
【0084】
また、本実施形態では、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomに応じた値及びガス欠注意状態の判定下限値Pwを用いた単純な計算式によって、ガス欠注意用判定閾値Rを容易に算出することができる。
【0085】
また、本実施形態では、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomに応じた値は、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomから大気圧Paを引いた差分値Dである。スロットル弁5の開度が大きくなると、エンジン2の吸気圧が大気圧に近づく。このため、ガス欠注意用判定閾値Rを算出する際に、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomから大気圧Paを引いた差分値Dを用いることで、大気圧Paを考慮したガス欠注意用判定閾値Rが得られる。
【0086】
また、本実施形態では、エンジン2の始動直後の所定期間内における上流燃圧センサ14の検出値Pinの平均値が算出され、上流燃圧センサ14の検出値Pinの平均値がボンベ内蒸気圧推定値Pbomとして取得される。このため、エンジン2の始動直後にレギュレータ9の上流側の燃料圧力が変動して不安定になっても、適切なボンベ内蒸気圧推定値Pbomが得られる。
【0087】
また、本実施形態では、レギュレータ9の上流側の燃料圧力に応じた値は、上流燃圧センサ14の検出値Pinから大気圧Paを引いた差分値Qinである。上述したように、スロットル弁5の開度が大きくなると、エンジン2の吸気圧が大気圧Paに近づく。このため、上流燃圧センサ14の検出値Pinから大気圧Paを引いた差分値Qinを用いることで、大気圧Paを考慮したガス欠注意状態の判定を行うことができる。
【0088】
また、本実施形態では、ガス欠注意状態であると判定されたときに、ガス欠注意状態である旨を通知する警報が行われる。このため、ユーザである車両の運転者は、警報によってガス欠注意状態であることが直ちに分かる。従って、運転者に対してガス欠注意状態であることの注意喚起を促すことができる。
【0089】
また、本実施形態では、ガス欠注意状態であると判定されたときに、スロットル弁5の開度が制限されるように制御される。このため、ガス欠に至るまでの車両の走行可能距離を確保し、車両を燃料充填場所まで走行させることができる。また、燃料の燃焼状態の悪化を抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態では、下流燃圧センサ16により検出されたレギュレータ9の下流側の燃料圧力に応じた値がガス欠用判定閾値S1以下であるときは、LPGボンベ6内の燃料の充填量がガス欠注意状態のときよりも少ないガス欠状態であると判定される。従って、ガス欠状態の判定精度が向上する。その結果、車両が走行不能になることが更に防止される。また、車両が産業車両である場合、作業効率の低下を更に抑えることができる。
【0091】
また、本実施形態では、レギュレータ9の下流側の燃料圧力に応じた値は、下流燃圧センサ16の検出値Poutから大気圧Paを引いた差分値Qoutである。上述したように、スロットル弁5の開度が大きくなると、エンジン2の吸気圧が大気圧に近づく。このため、下流燃圧センサ16の検出値Poutから大気圧Paを引いた差分値Qoutを用いることで、大気圧Paを考慮したガス欠状態の判定を行うことができる。
【0092】
また、本実施形態では、ガス欠状態であると判定されたときに、ガス欠状態である旨を通知する警報が行われる。このため、運転者は、警報によってガス欠状態であることが直ちに分かる。従って、運転者に対してガス欠状態であることの注意喚起を促すことができる。
【0093】
また、本実施形態では、ガス欠状態であると判定されたときに、スロットル弁5の開度が制限されるように制御される。このため、完全にガス欠になる状況を遅らせることができる。また、燃料の燃焼状態の悪化を更に抑制することができる。
【0094】
また、本実施形態では、レギュレータ9の下流側の燃料圧力に応じた値が開度制限用閾値S2以下であるときは、レギュレータ9の下流側の燃料圧力に応じた値が開度制限用閾値S2よりも大きいときに比べて、スロットル弁5の開度が小さくなるように制御される。このため、完全にガス欠になる状況を更に遅らせることができる。また、燃料の燃焼状態の悪化を一層抑制することができる。
【0095】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、エンジン2の始動直後における所定期間内の上流燃圧センサ14の検出値Pinの平均値が算出され、その算出値がボンベ内蒸気圧推定値Pbomとされているが、特にそのような形態には限られない。例えば、エンジン2の始動直後における所定期間内の上流燃圧センサ14の検出値Pinの中間値をボンベ内蒸気圧推定値Pbomとしてもよい。また、エンジン2の始動直後にレギュレータ9の上流側の燃料圧力の変動が少ない場合には、エンジン2の始動直後に得られた最初の上流燃圧センサ14の検出値Pinをボンベ内蒸気圧推定値Pbomとしてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomから大気圧Paを引いた差分値Dとガス欠注意状態の判定下限値Pwとが比較されているが、特にその形態には限られず、例えばボンベ内蒸気圧推定値Pbom自体と予め決められた判定下限値とを比較してもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、上流燃圧センサ14の検出値Pinから大気圧Paを引いた差分値Qinとガス欠注意用判定閾値Rとが比較されているが、特にその形態には限られず、例えば上流燃圧センサ14の検出値Pin自体と予め決められたガス欠注意用判定閾値とを比較してもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、下流燃圧センサ16の検出値Poutから大気圧Paを引いた差分値Qoutとガス欠用判定閾値S1及び開度制限用閾値S2とが比較されているが、特にその形態には限られず、例えば下流燃圧センサ16の検出値Pout自体と予め決められたガス欠用判定閾値及び開度制限用閾値とを比較してもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、図8に示されるガス欠判定・制御処理において、ガス欠用判定閾値S1及び開度制限用閾値S2を用いた2段階判定が行われているが、特にそのような形態には限られない。例えば、ガス欠用判定閾値S1を用いた判定のみを行ってもよいし、或いはガス欠用判定閾値及び複数の開度制限用閾値を用いた3段階以上の判定を行ってもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、ガス欠注意状態であると判定されたときに、ガス欠注意状態である旨の警報が行われると共に、スロットル弁5の開度が制限されているが、特にその形態には限られず、ガス欠注意状態である旨の警報及びスロットル弁5の開度制限の何れか一方のみを行ってもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、ガス欠状態であると判定されたときに、ガス欠状態である旨の警報が行われると共に、スロットル弁5の開度が制限されているが、特にその形態には限られず、ガス欠状態である旨の警報及びスロットル弁5の開度制限の何れか一方のみを行ってもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、下流燃圧センサ16により検出されたレギュレータ9の下流側の燃料圧力を用いて、ガス欠状態が判定されているが、特にその形態には限られず、上流燃圧センサ14により検出されたレギュレータ9の上流側の燃料圧力を用いて、ガス欠状態を判定してもよい。この場合には、ボンベ内蒸気圧推定値Pbomに応じたガス欠用判定閾値が算出される。
【0103】
また、上記実施形態では、燃料としてLPGが使用されているが、特にその形態には限られず、本発明は、例えば燃料としてDME(ジメチルエーテル)等を使用する内燃機関にも適用可能である。
【符号の説明】
【0104】
1…内燃機関システム、2…エンジン(内燃機関)、3…吸気流路、5…スロットル弁、6…LPGボンベ(燃料ボンベ)、9…レギュレータ、11…インジェクタ、14…上流燃圧センサ(上流圧力検出部)、16…下流燃圧センサ(下流圧力検出部)、19…警報器(警報部)、21…蒸気圧推定部、22…判定閾値算出部、23…ガス欠注意判定部、24…ガス欠判定部、25…警報制御部(警報部)、26…スロットル制御部、Pin…検出値、Pout…検出値、Pbom…ボンベ内蒸気圧推定値、Pa…大気圧、D…差分値、Pw…判定下限値、R…ガス欠注意用判定閾値、Qin…差分値、Qout…差分値、S1…ガス欠用判定閾値、S2…開度制限用閾値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10