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  • 特開-水処理用分離膜および水処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119490
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】水処理用分離膜および水処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/08 20060101AFI20240827BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20240827BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20240827BHJP
   B01D 71/70 20060101ALI20240827BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240827BHJP
【FI】
B01D65/08
B01D69/02
B01D69/12
B01D71/70
C02F1/44 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026418
(22)【出願日】2023-02-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発/産業用物質生産システム実証」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 菜々子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 亮哉
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA61
4D006KA16
4D006KE03R
4D006KE06R
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA10
4D006MA30
4D006MB02
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC07
4D006MC18
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC28
4D006MC39
4D006MC55
4D006MC62
4D006MC63
4D006MC65X
4D006PA01
4D006PB08
(57)【要約】
【課題】ファウリングに起因する能力低下が起こりにくい水処理用分離膜と水処理方法を提供すること。
【解決手段】表面に、シリコン系封孔剤を含む組成物よりなる硬化膜を有する水処理用分離膜と、この水処理用分離膜を用いる水処理方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、シリコン系封孔剤を含む組成物よりなる硬化膜を有することを特徴とする水処理用分離膜。
【請求項2】
膜ろ過量1.0m/m・dayにおける膜差圧が50kPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の水処理用分離膜。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理用分離膜を用いることを特徴とする水処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理等において用いる水処理用分離膜と、この水処理用分離膜を用いる水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水、工場等からの廃水、埋立処分場等からの汚染水等の排水から、汚濁物質を除去する方法の一つに、ろ過用の分離膜を用いた水処理方法がある。例えば、本願出願人は、特許文献1において、嫌気性菌により排水をメタン発酵させることによりメタンガスを回収可能な排水処理方法において、汚泥を含む処理水をろ過膜(分離膜)により膜分離してろ過水を放出する排水処理方法を提案している。
分離膜を用いる水処理では、水処理運転の継続に伴い、分離膜の表面に汚濁物質の付着が生じ、目詰まり、固形物による流路閉塞、バイオフィルムの付着等のいわゆる「ファウリング」が起こり、分離膜のろ過性能が低下してしまう。ファウリングが起きると、膜圧力の上昇やろ過流束の低下により処理効率が低下するため、ファウリングは、膜ろ過利用水処理システムにおける重要な障害である。
【0003】
ファウリングによる膜ろ過性能の低下は、分離膜を洗浄することによって回復することができる。分離膜の洗浄方法には、物理洗浄と薬品洗浄がある。
物理洗浄は、膜ろ過水を逆流させる逆圧水洗浄(逆洗)、散気管を通して空気などの気体を膜表面にエアレーションすることで発生する剪断力により洗浄する等の物理的な作用によって膜表面に付着した物質を取り除いている。しかし、逆洗は処理水量が多くなること、エアレーションによる洗浄はエネルギー消費が多いという問題がある。
薬品洗浄は、物理洗浄では除去しきれない物質を、薬品によって分解または溶解させて除去する洗浄方法であり、膜のろ過能力をほぼ初期状態まで回復することができる。しかし、薬品洗浄に関しても薬品コストがかかることや、薬品が排水処理に関与する微生物に悪影響を及ぼすといった観点から、できるだけ回数を少なくすることが望まれる。
【0004】
また、特許文献2には、表面に無機物粒子によるコーティング層を形成したろ過膜を用い、逆洗の際にコーティング層ごとファウリング物質を剥離することで、ファウリングを抑制する技術が提案されている。しかし、この方法は、逆洗時にコーティング材がろ過膜表面から剥離するため、逆洗後にはコーティング材を含む溶液を流して、ろ過膜表面に新たなコーティング層を形成する必要があり、高コストである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-84530号公報
【特許文献2】特開2004-130197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ファウリングに起因する能力低下が起こりにくい水処理用分離膜と水処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は、以下の通りである。
1.表面に、シリコン系封孔剤を含む組成物よりなる硬化膜を有することを特徴とする水処理用分離膜。
2.膜ろ過量1.0m/m・dayにおける膜差圧が50kPa以下であることを特徴とする1.に記載の水処理用分離膜。
3.1.または2.に記載の水処理用分離膜を用いることを特徴とする水処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水処理用分離膜は、ファウリングに起因する能力低下が起こりにくい。
本発明の水処理方法は、長期に亘って高い処理性能を維持することができる。本発明の水処理方法は、洗浄薬品による微生物への影響を小さくすることができるため、水処理の継続性に優れている。本発明の水処理方法は、水処理用分離膜を洗浄する回数を減らすことができ、ランニングコスト、メンテナンスコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実験1における吸光度(590nm)の測定結果を示すグラフ。
図2】実験3における膜ろ過試験の結果を示すグラフ。
図3】実験4における膜ろ過試験の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水処理用分離膜は、表面に、シリコン系封孔剤を含む組成物よりなる硬化膜を有する。
【0011】
・シリコン系封孔剤
封孔剤(含浸材とも呼ばれる)は、孔を塞ぐための薬品である。封孔剤(含浸剤)は、木材、石材、コンクリート、金属材料等の技術分野において、微細な孔を塞いで耐水性、耐薬品性、表面硬度等を向上させる目的で用いられている。
水処理用分離膜は、水分子を含む一定以下の大きさの粒子のみを通し、一定以上の大きさの粒子を通さないことにより水処理を行うものであるため、細孔を必要とする。細孔を必要とする水処理用分離膜に孔を塞ぐための封孔剤を適用する事例は、本発明者らが調査した範囲では見つかっていない。
【0012】
シリコン系封孔剤とは、加水分解性オルガノシラン化合物を主成分とし、加水分解性オルガノシラン化合物が加水分解縮合することにより無機系の三次元架橋構造を形成・硬化することにより、孔を塞ぐものである。シリコン系封孔剤としては、市販のものも使用することができ、例えば、株式会社ディ・アンド・ディのパーミエイト、奥野製薬工業株式会社のProtector等を用いることができる。
【0013】
加水分解性オルガノシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン;メチルトリ(メトキシメトキシ)シラン、エチルトリ(メトキシメトキシ)シラン、フェニルトリ(メトキシメトキシ)シラン、メチルトリ(エトキシメトキシ)シラン、エチルトリ(エトキシメトキシ)シラン、フェニルトリ(エトキシメトキシ)シラン、テトラ(メトキシメトキシ)シラン、テトラ(エトキシメトキシ)シラン等のアルコキシ置換アルコキシシラン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を併用することができ、また、これらの部分加水分解縮合物であってもよい。
【0014】
加水分解性オルガノシラン化合物として、メルカプト基、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、(メタ)アクリロキシ基、グリドキシ基、イソシアネート基、ビニル基等の官能基を有するものを含むことが、被処理物である水処理用分離膜との密着性に優れた硬化膜を形成することができるため好ましい。これらの官能基を有する加水分解性オルガノシラン化合物としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン;γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン;N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン;γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を併用することができ、また、これらの部分加水分解縮合物であってもよい。
【0015】
シリコン系封孔剤は、触媒を含むことが好ましい。触媒を含むことにより、加水分解縮合反応をより効率的に進行させることができる。触媒としては、加水分解性オルガノシラン化合物の加水分解縮合反応を進行させるものを特に制限することなく使用することができ、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン等の有機チタン化合物、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物、ニッケルエトキシド、ニッケルアセチルアセトナート等の有機ニッケル化合物、コバルトイソプロポキシド、ビスアセチルアセトナートコバルト等の有機コバルト化合物、銅イソプロポキシド、銅tert-ブトキシド等の有機銅化合物、銀イソプロポキシド、銀アセチルアセテート化合物等の有機銀化合物;チタン、スズ、ニッケル、コバルト、銅、銀の金属ナノ粒子;塩酸、クロム酸等の無機酸、酢酸、蟻酸、グリコール酸等の有機カルボン酸等から選ばれる1種の化合物又は2種以上の化合物の混合物が挙げられる。これらの中で、室温程度でも加水分解縮合反応を進行させることができるため、有機金属化合物または金属ナノ粒子が好ましい。
【0016】
・水処理用分離膜
硬化膜を形成する水処理用分離膜としては、浄水処理、排水処理等に用いられている精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透ろ過膜等の公知の分離膜を特に制限することなく使用することができる。これらの中で、孔径が大きく多くの水を処理することができる精密ろ過膜、限外ろ過膜が好ましく、精密ろ過膜がより好ましい。
水処理用分離膜の形状は特に制限されず、平膜状、スパイラル状、チューブラー状、中空糸状等の公知のものを使用することができる。
水処理用分離膜の材質は特に制限されず、フッ素系樹脂、ナイロン系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂等の有機材料;ステンレス等の金属材料、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等のセラミック材料等の公知のものを使用することができる。これらの中で、金属材料はメタン発酵等の処理方法によっては腐食の恐れがあり適用が難しい場合がある。セラミック材料は他の材料と比較してコストが高い。そのため、有機材料からなる水処理用分離膜が好ましい。
【0017】
本発明の水処理用分離膜は、未処理の水処理用分離膜に、シリコン系封孔剤を含む組成物を含浸・塗工させた後、乾燥し、表面にシリコン系封孔剤よりなる硬化膜を形成することにより製造することができる。
シリコン系封孔剤は、膜表面に硬化膜を形成するが、同時に細孔内でも硬化して細孔が小さくなり、最終的には細孔を塞いでしまう。そのため、シリコン系封孔剤を、メタノール等の溶媒で希釈してから含浸・塗工する、含浸する時間を短くする、塗工する量を少なくする等して、分離膜の細孔が塞がらない条件で硬化膜を形成する。
【0018】
本発明の水処理用分離膜は、膜ろ過量1.0m/m・dayにおける膜差圧が50kPa以下であることが好ましい。この膜差圧が50kPaを超えると、水を透過させるのに必要な圧力が高くなるため、処理効率が低下する、強力なポンプが必要となり高コストとなる等の問題が生じる場合がある。この膜差圧は、40kPa以下がより好ましく、30kPa以下がさらに好ましく、25kPa以下がよりさらに好ましく、20kPa以下がよりさらに好ましく、15kPa以下がよりさらに好ましく、10kPa以下がよりさらに好ましい。
【0019】
本発明の水処理用分離膜は、未処理のものと比較した膜ろ過量1.0m/m・dayにおける膜差圧の増加量(処理後-処理前)が、15kPa以下であることが好ましい。この増加量が15kPaを超えると、分離膜の孔が小さくなりすぎて処理効率が低下する場合がある。この増加量は、12kPa以下がより好ましく、9kPa以下がさらに好ましく、6kPa以下がよりさらに好ましく、3kPa以下がよりさらに好ましい。
【0020】
・水処理方法
本発明の水処理方法は、この硬化膜を有する水処理用分離膜を用いる。
本発明の水処理方法は、使用する水処理用分離膜の表面にバイオフィルム等の固形物が付着しにくいため、ファウリングを防ぐことができる。本発明の水処理方法は、特殊な設備や薬品等は不要であるため、既設の水処理施設等で容易に実施することができる。本発明の水処理方法は、ファウリングに起因する処理性能の低下が起こりにくいため、所定の性能を長期に亘って維持することができる。本発明の水処理方法は、洗浄する頻度を減らすことができ、洗浄薬品による微生物への悪影響を小さくすることができるため、水処理の継続性に優れている。本発明の水処理方法は、洗浄薬品の使用量を減らすことができ、また、洗浄中で水処理ができない期間を短くすることができるため、処理施設全体のランニングコスト、メンテナンスコストを削減することができる。
【実施例0021】
「実験1」
6ウェルの培養プレートのウェルの底面及び側面にシリコン系封孔剤(株式会社ディ・アンド・ディ、パーミエイトHS-200)の原液を塗布し、クリーンベンチ内で風乾させた。対照区として、シリコン系封孔剤を塗布しない培養プレートを用意した。各プレートのウェル内にバイオフィルム形成菌であるPseudomonas putidaを添加したLB培地を植菌した。Pseudomonas putidaの添加濃度はOD600=0.01となるように調整した。その後、蓋をして30℃、15時間静置培養を行った。シリコン系封孔剤を塗布した条件を実験区、塗布しなかった条件を対照区とした。
培養後、ウェル内のLB培地を廃棄し、超純水で3回ウェル内の洗浄を行った(浮遊菌の除去)。洗浄後、クリスタルバイオレットによる細胞染色を行い、ウェル表面に付着しているPseudomonas putidaの染色を実施した。
染色後、余計なクリスタルバイオレットを取り除くために超純水で3回ウェル内を洗浄した。その後、風乾しエタノールで染色した細胞を溶出させて、吸光度(590nm)を測定した。結果を図1に示す。
【0022】
シリコン系封孔剤を塗布した実験区は、対照区と比較して吸光度(590nm)が26%程度に抑えられており、シリコン系封孔剤を塗布することにより、表面でのバイオフィルムの形成が抑えられることが確かめられた。
【0023】
「実験2」
メンブレンフィルター(PTFE製、直径90mm、孔径0.1μm)を、シリコン系封孔剤(株式会社ディ・アンド・ディ、パーミエイトHS-200)のメタノール溶液に1~2分浸漬した後、風乾して表面に硬化膜を形成した。シリコン系封孔剤の濃度は、1%、5%、10%、20%、30%、50%とした。
硬化膜形成後のメンブレンフィルターと、未処理のメンブレンフィルターについて、500mlの水道水を全てろ過するのに要する時間を測定し(n=2)、膜ろ過性能を評価した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
シリコン系封孔剤濃度が高くなるに連れて、ろ過時間が長くなることが確かめられた。このことから、シリコン系封孔剤により、メンブレンフィルターの表面に硬化膜が形成され、孔が埋められつつあることが確かめられた。
【0026】
「実験3」
実験2のNo.1~5のメンブレンフィルターについて、各メンブレンフィルターを減圧ろ過用ホルダーにセットし、1分間水道水をろ過させた時の膜ろ過量と膜差圧(ろ過試験開始前の膜圧とろ過試験終了時の膜圧の差)を測定し、膜ろ過試験を実施した。結果を図2に示す。
【0027】
シリコン系封孔剤の濃度が5%程度(No.3)までは、処理前(No.1)と比較して膜差圧はほとんど増加しないことが確かめられた。実験2、3より、封孔剤濃度が高くなるに連れて孔が埋められつつあるが、処理条件を調整することにより膜差圧の増大を抑えられることが確かめられた。
【0028】
「実験4」
PTFE製の中空糸膜からなる水処理用分離膜(孔径0.1μm)を、シリコン系封孔剤(株式会社ディ・アンド・ディ、パーミエイトHS-200)を1%含有したメタノール溶液に10分浸漬した後、風乾して表面に硬化膜を形成した。
排水処理用の処理槽に、硬化膜を形成した分離膜と形成していない分離膜をそれぞれ設置して、排水処理試験を半年間実施した。
試験終了後、分離膜を取り出して、実験2と同様にして膜ろ過試験を実施した。また、未使用で硬化膜を形成していない分離膜に対しても同様にして膜ろ過試験を実施した。結果を図3に示す。
【0029】
半年間使用後も、本発明である硬化膜を有する水処理用分離膜は、硬化膜を有さない水処理用分離膜と比較して、膜差圧の値が30%程度であり、ファウリングが抑えられることが確かめられた。
図1
図2
図3