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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119495
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】センサ部材
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G01L9/00 303Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026424
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 正典
(72)【発明者】
【氏名】海野 健
(72)【発明者】
【氏名】笹原 哲也
(72)【発明者】
【氏名】波多 徹雄
(72)【発明者】
【氏名】ルシ ウエドラオゴ
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB20
2F055CC02
2F055DD04
2F055EE15
2F055FF04
2F055GG11
(57)【要約】
【課題】破損するリスクの少ないセンサ部材を提供すること。
【解決手段】 センサ部材2は、メンブレン3と、前記メンブレン3の一部を被覆する保護膜4と、前記メンブレン3に接続する電極部5と、を有するセンサ部材2であって、前記電極部5は、前記保護膜4の少なくとも一部を覆っている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンブレンと
前記メンブレンの一部を被覆する保護膜と、
前記メンブレンに接続する電極部と、を有するセンサ部材であって、
前記電極部は、前記保護膜の少なくとも一部を覆っているセンサ部材。
【請求項2】
前記電極部は、金を有する実装層を有する請求項1に記載のセンサ部材。
【請求項3】
前記電極部は、白金族元素からなる拡散防止層を有する請求項1に記載のセンサ部材。
【請求項4】
前記電極部は、前記メンブレンと密着する密着層を有する請求項1に記載のセンサ部材。
【請求項5】
前記保護膜は、酸窒化物からなる請求項1に記載のセンサ部材。
【請求項6】
前記メンブレンは、金属基材と、前記金属基材に載置される絶縁膜と、前記絶縁膜に載置される歪抵抗膜と、を有する請求項1に記載のセンサ部材。
【請求項7】
前記電極部は、前記歪抵抗膜の上層で、前記歪抵抗膜よりも外側に広がって配置してある請求項6に記載のセンサ部材。
【請求項8】
前記電極部は、前記歪抵抗膜の上層で、前記歪抵抗膜よりも内側に配置してある請求項6に記載のセンサ部材。
【請求項9】
前記歪抵抗膜は、圧力を検知する抵抗部を有する請求項1~8のいずれかに記載のセンサ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば圧力センサなどに用いられるセンサ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のように、歪抵抗膜を有する膜状のセンサが知られている。このようなセンサでは、歪抵抗膜を保護するために、歪抵抗膜を覆うように保護膜が形成してある。
【0003】
しかしながら、保護膜には、密着性が悪い部分があり、剥離不良を生じるリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-249520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の実情を鑑みてなされ、その目的は、破損するリスクの少ないセンサ部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るセンサ部材は、
メンブレンと
前記メンブレンの一部を被覆する保護膜と、
前記メンブレンに接続する電極部と、を有するセンサ部材であって、
前記電極部は、前記保護膜の少なくとも一部を覆っている。
【0007】
このように構成することで、保護膜上に電極が形成されるため、保護膜の端から剥離するような剥離不良や衝撃による破損を防止できる。
【0008】
好ましくは、前記電極部は、金を有する実装層を有する。
【0009】
実装層が金を有するものであることにより、耐熱性の良好なAu配線に対する実装層の密着性が特に良好となる。したがって、このような実装層を有する電極部は、高温耐性が向上するとともに、配線に対する良好な密着力を奏する。
【0010】
好ましくは、前記電極部は、白金族元素からなる拡散防止層を有する。
【0011】
拡散防止層が化学的に安定な白金族元素を含むものであることにより、メンブレンと電極部との相互拡散を効果的に防止できる。
【0012】
好ましくは、前記電極部は、前記メンブレンと密着する密着層を有する。
【0013】
このような密着層を有する積層電極は、メンブレンと電極部との間の相互拡散を効果的に防止できる。また、密着層を有する電極部は、高温環境下におけるメンブレンの特性変化を防止するとともに、高温耐性が向上し、かつ、高温環境に暴露された後でも配線に対する非常に良好な密着力を奏する。
【0014】
このような密着層に含まれる元素は、Cr、Ti、Ni、Moなどが例示される。このような元素は、他の金属元素と合金を形成しやすいため、膜間および層間の密着強度を確保して膜の剥離不良を防ぐのに効果的である。
【0015】
好ましくは、前記保護膜は、酸窒化物からなる。
【0016】
このような保護膜は強度が高いため、特に端部における構造的強度を向上させることができ、センサ部材の信頼性を向上させることができる。
【0017】
好ましくは、前記メンブレンは、金属基材と、前記金属基材に載置される絶縁膜と、前記絶縁膜に載置される歪抵抗膜と、を有する。
【0018】
このようなメンブレンは、高温環境での圧力センサとして使用に好適である。また、金属を基材とすることで、機械的強度が高く、信頼性の高い圧力センサを実現できる。なお、センサ部材は、加速度センサ、トルクセンサ、傾斜センサなどの圧力センサ以外の物理量センサに用いてもよい。
【0019】
好ましくは、前記電極部は、前記歪抵抗膜の上層で、前記歪抵抗膜よりも外側に広がって配置してある。
【0020】
電極部と保護膜の密着面積が増加することで、効果的に歪抵抗膜を外部環境から保護できる。
【0021】
好ましくは、前記電極部は、前記歪抵抗膜の上層で、前記歪抵抗膜よりも内側に配置してある。
【0022】
電極部がこのように配置されることで、センサ部材の小型化を実現することができる。
【0023】
好ましくは、前記歪抵抗膜は、圧力を検知する抵抗部を有する。
【0024】
このようなセンサ部材は、圧力センサとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は一実施形態に係るセンサ部材を含む圧力センサを上方から見た平面図である。
図2図2図1に示すセンサ部材のII-II線での断面図である。
図3図3図2に示すセンサ部材の拡大図である。
図4図4図1に示す圧力センサの歪抵抗膜の平面図である。
図5図5図1に示す圧力センサの保護膜の平面図である。
図6図6図1に示す圧力センサの電極部の平面図である。
図7図7は他の実施形態に係るセンサ部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。また、以下、実施形態により具体的に説明するが、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0027】
第1実施形態
本実施形態に係るセンサ部材2の全体構成について説明する。センサ部材2は、たとえば、図1に示すような圧力センサ1に好適に用いることができる。図2は、図1に示すセンサ部材2のII-II線での断面図である。図2に示すように、センサ部材2は、メンブレ
ン3と、保護膜4と、電極部5と、を有する。
【0028】
メンブレン3は、金属基材30と、金属基材30に載置される絶縁膜31と、絶縁膜31に載置される歪抵抗膜32と、を有する。金属基材30は、絶縁膜31および歪抵抗膜32を保持できればよく、たとえば鋼材、アルミ合金、ステンレス、ニッケル合金などの金属で構成される。金属基材30は、圧力に応じた変形を生じるように構成してあってもよい。金属基材30としては、上述した金属を用いることができるが、特に、オーステナイト系のSUS304、316や、析出硬化系のSUS630、631などが、高温での耐久性等の観点から好ましい。
【0029】
金属基材30の形状は特に限定されない。たとえば、金属基材30は、下方に空間を持つ中空筒状に形成してあってもよい。金属基材30は、中空筒の一端に配置される端壁に絶縁膜31と歪抵抗膜32とを形成を有するように形成してもよい。このようなセンサ部材2は、金属基材30の中空空間に流れる流体の圧力を計測することができる。
【0030】
図2に示すように、絶縁膜31は、金属基材30の上面を覆う。また、絶縁膜31は、下方の金属基材30と、上方の歪抵抗膜32との間に位置し、金属基材30と歪抵抗膜32との間の電気的な絶縁性を確保する。
【0031】
図1には示されていないが、絶縁膜31は、金属基材30の上面のほぼ全体を覆うように形成してある。絶縁膜31は、たとえばシリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物などの絶縁性の膜で構成される。絶縁膜31の厚みは、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは1~5μmである。絶縁膜31は、たとえばCVDなどの蒸着法により金属基材30の上面に形成することができる。
【0032】
図2に示すように、歪抵抗膜32は、絶縁膜31の上に形成されており、図1に示す検出部34を構成する。図4に示すように、歪抵抗膜32には、パッド接続部36、第1抵抗部R1、第2抵抗部R2、第3抵抗部R3および第4抵抗部R4が、抵抗配線部35で接続された所定パターンで形成されている。第1~第4抵抗部R1、R2、R3、R4は、金属基材30の変形に応じた歪を生じ、金属基材30の変形に応じて抵抗値が変化する。これらの第1~第4抵抗部R1~R4は、同じく歪抵抗膜32に形成される抵抗配線部35により、検出部34としてのホイートストーンブリッジ回路を構成するように接続されている。
【0033】
また、検出部34が検出する金属基材30の変形量は、金属基材30に作用する流体などの圧力により変化するため、検出部34は、金属基材30に作用する圧力を検出することができる。すなわち、図1に示すセンサ部材2の第1~第4抵抗部R1~R4は、金属基材30が、圧力により変形して歪む位置に設けられており、その歪み量に応じて抵抗値が変化するように構成してある。なお、図1に示す圧力センサ1は、パッド部55から図示しない回路基板に接続して、センサ部材2における検出部34の出力を受け取ったり、センサ部材2に対して給電部からの電力を供給したりすることができる。
【0034】
第1~第4抵抗部R1~R4を有する歪抵抗膜32は、たとえば、所定の材料の導電性の薄膜を、パターニングすることにより作製することができる。歪抵抗膜32は、たとえばCrとAlとを含み、好ましくは、50~99at%のCrと、1~50at%のAlとを含み、さらに好ましくは70~90at%のCrと、5~30at%のAlとを含む。歪抵抗膜32がCrとAlとを含むことにより、高温環境下におけるTCR(Temperature coefficient of Resistance、抵抗値温度係数)やTCS(Temperature coefficient of sensitivity、抵抗温度係数)が安定し、精度の高い圧力検出が可能となる。また、CrとAlの含有量を所定の範囲とすることにより、高いゲージ率と良好な温度安定性を、より高いレベルで両立できる。
【0035】
歪抵抗膜32は、CrおよびAl以外の元素を含んでいてもよく、たとえば、歪抵抗膜32は、ОやNを含んでいてもよい。歪抵抗膜32に含まれるOやNは、歪抵抗膜32を成膜する際に反応室から除去しきれずに残留したものが、歪抵抗膜32に取り込まれたものであってもよい。また、歪抵抗膜32に含まれるOやNは、成膜時またはアニール時に雰囲気ガスとして使用されるなどして、意図的に歪抵抗膜32に導入されたものであってもよい。
【0036】
また、歪抵抗膜32は、CrおよびAl以外の金属元素を含んでいてもよい。歪抵抗膜32は、CrおよびAl以外の金属や非金属元素を微量に含み、アニールなどの熱処理が行われることにより、ゲージ率や温度特性が向上する場合がある。歪抵抗膜32に含まれるCrおよびAl以外の金属および非金属元素としては、たとえば、Ti、Nb、Ta、Ni、Zr、Hf、Si、Ge、C、P、Se、Te、Zn、Cu、Bi、Fe、Mo、W、As、Sn、Sb、Pb、B、Ge、In、Tl、Ru、Rh、Re、Os、Ir、Pt、Pd、Ag、Au、Co、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Mnおよび希土類元素が挙げられる。
【0037】
歪抵抗膜32は、スパッタリングや蒸着などの薄膜法により形成することができる。第1~第4抵抗部R1~R4は、たとえば薄膜をミアンダ形状にパターニングすることで形成することができる。歪抵抗膜32の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは0.1~1μmである。なお、抵抗配線部35は、図2に示すように、歪抵抗膜32をパターニングすることにより形成される。
【0038】
図2に示すように、保護膜4は、メンブレン3の上(絶縁膜31および歪抵抗膜32の上)に形成されている。保護膜4は、歪抵抗膜32を上から覆う保護部40と、絶縁膜31を上から覆う外縁部41と、を有する。保護膜4は、メンブレン3の少なくとも一部を上から覆っている。
【0039】
保護膜4には、開口42が、図5に示すような所定パターンで形成されている。図1に示すように、保護膜4は、歪抵抗膜32のうち第1~第4抵抗部R1~R4および抵抗配線部35の中央部35aを被覆しているが、パッド接続部36および抵抗配線部35の側部35bを被覆していない。保護膜4のパターンはこれに限定されず、パッド接続部36の側部を被覆するようなパターンであってもよい。図2に示すように、開口42は、保護膜4の保護部40の内側で、歪抵抗膜32の抵抗配線部35の中央部35aの上面に繋がるように形成されている。
【0040】
保護膜4は、たとえば絶縁膜31と同様に絶縁性の膜で構成される。保護膜4を構成する絶縁性の膜としては、たとえば、酸化物、窒化物、酸窒化物などが挙げられ、これらの膜は、保護膜4の強度を向上させる観点から好ましい。より具体的には、保護膜4を構成する材料としては、たとえば、SiО2、SiON、Si34、AlO3、ZrO2などが挙げられる。
【0041】
保護膜4は、たとえばCVDや、スパッタリングなどにより、歪抵抗膜32および絶縁膜31の上に形成することができるが、保護膜4の形成方法は特に限定されない。保護膜4の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10nm~1000nm、さらに好ましくは100nm~300nmである。
【0042】
図1および図2に示すように、電極部5は、保護膜4の開口42の中と、保護膜4の上(保護部40の上)に形成されている。電極部5は、歪抵抗膜32と電気的に接続する通電部51と、保護膜4を上から覆う裾部52と、を有する。電極部5は、保護膜4の少なくとも一部を上から覆っている。
【0043】
電極部5は、図6に示すような配線部54とパッド部55とを有する所定パターンで形成されている。図1に示すように、電極部5は、保護膜4の開口42に対応して、4か所に形成されている。ただし、センサ部材2が有する電極部5の数および配置については、図1に示す例のみには限定されない。また、電極部5の厚みは、特に限定されないが、たとえば50~500nmであり、好ましくは100~300nmである。
【0044】
図2に示すように、通電部51は、電極部5のうち、上方からセンサ部材2を見た際に、保護膜4の開口周縁43より内側に配置される部分である。通電部51の下側部分は、開口周縁43の内側であって保護部40の上端より低い領域である開口42の内部に配置されており、通電部51の下端は、歪抵抗膜32に接触する。また、通電部51の上側部分は、保護部40の上端より高い領域に配置されており、裾部52に接続する。
【0045】
裾部52は、電極部5のうち、上方からセンサ部材2を見た際に、開口42の外縁より外側に配置される部分である。図2に示すように、裾部52は、保護部40の上に設けられており、開口42に配置される通電部51に内側で接続している。図1に示すように、電極部5の配線部54は、保護膜4の開口42よりも広がっている。
【0046】
図2に示すように、裾部52の端縁53は、保護部40の上方に配置されている。また、裾部52の端縁53は、歪抵抗膜32の端縁33よりも内側に配置されている。
【0047】
裾部52において通電部51と接続している内側から端縁53までの長さL1は、特に限定されないが、たとえば、通電部51において歪抵抗膜32の抵抗配線部35の中央部35aと接触している長さL0の0.001倍~5倍であってもよい。裾部52の長さL1は、歪抵抗膜32において保護部40に被覆されている抵抗配線部35の側部35bの長さL2よりも短い。
【0048】
図3は、図2に示すセンサ部材2の拡大図である。図3に示すように、電極部5は、歪抵抗膜32の上に重なる密着層50cと、密着層50cの上に重なる拡散防止層50bと、拡散防止層50bの上に重なる実装層50aとを有してもよい。電極部5は、異なる材料で形成される3層以上の多層膜構造を有してもよい。ただし、電極部5としては、図3に示すような3層構造のもののみには限定されず、電極部5は、1層、2層または4層以上の積層構造を有していてもよい。
【0049】
図3に示すように、電極部5のうち最も下層にある密着層50cは、歪抵抗膜32および保護膜4に直接接触する。密着層50cは、歪抵抗膜32とのオーミック接続を確保して、電極付き歪抵抗膜32の電気的特性を向上させる。また、密着層50cは、電極部5と、歪抵抗膜32および保護膜4との密着強度を確保して、膜および層の剥離不良を防止する。
【0050】
密着層50cは、蒸着法や、スパッタリングなどにより形成することができる。密着層50cの厚みは、特に限定されないが、たとえば1~50nmであり、好ましくは5~20nmである。密着層50cは、Cr、Ti、Ni、Moのうち少なくともいずれか1つを含むことが好ましい。これらの元素は、他金属と合金を作り易いため、このような元素を含む密着層50cは、歪抵抗膜32および拡散防止層50bとの密着強度を確保して、膜および層間の剥離不良を防止できる。
【0051】
また、密着層50cは、Tiを含むことが、特に好ましい。Tiは、Auなどを含む実装層50aに拡散しづらく、実装層50aの上表面への析出を生じにくい傾向がある。そのため、Tiを含む密着層50cを有する電極部5は、電極部5が高温環境に曝された後も、歪抵抗膜32に対して好適な密着性を奏する。また、密着層50cは、Tiを含むことが、特に好ましい。
【0052】
さらに、TiはCr中へも拡散しづらいため、密着層50cを構成するTiは、高温環境下においても、CrおよびAlを含む歪抵抗膜32中へ拡散しづらい特性を有する。したがって、Tiを含む密着層50cを有する電極付き歪抵抗膜32は、高温環境下における使用においても、電極部5中の元素の歪抵抗膜32中への拡散を防止することができ、組成変化による歪抵抗膜32の性能低下を防止することができる。
【0053】
また、密着層50cは、Cr、Ti、Ni、Moのうち複数の元素を含むことも好ましい。また、密着層50cは、Cr、Ti、Ni、Moのうち少なくともいずれか1つからなることも好ましい。さらに、密着層50cは、Tiからなることも、特に好ましい。また、密着層50cは、Cr、Ti、Ni、Moのうち複数の元素からなることも好ましい。
【0054】
なお、密着層50c、拡散防止層50bおよび実装層50aが、1または複数の指定する元素からなるという場合、指定する元素以外の他元素が、不可避的または意図的にこれらの層に含まれることを排除しない。その場合、他元素の含有率は、たとえば10at%未満、好ましくは3at%未満、さらに好ましくは1at%未満である。
【0055】
図3に示すように、拡散防止層50bは、電極部5において、密着層50cと実装層50aの間に配置してあり、上下方向を実装層50aと密着層50cによって挟まれている。拡散防止層50bは、歪抵抗膜32や密着層50cなど、拡散防止層50bより下に配置されている膜および層に含まれる元素が、拡散防止層50bより上に配置されている実装層50aへ拡散することを防止し、また、実装層50aの上表面へ析出することを防止する。なお、拡散防止層50bは、歪抵抗膜32や電極部5が4層以上の多層構造である場合にも、実装層50aの直下に配置されることが好ましい。
【0056】
拡散防止層50bは、蒸着法や、スパッタリングなどにより形成することができる。拡散防止層50bの厚みは、特に限定されないが、たとえば1~500nmであり、好ましくは5~50nmである。拡散防止層50bの厚みが薄すぎると連続膜を形成することが難しくなり、拡散防止機能が弱められる場合があり、厚みが厚すぎると、膜剥がれの問題が生じたり、成膜時間の増加による生産性(スループット)低下の問題が生じたりする場合がある。
【0057】
拡散防止層50bは、第5または6周期に属する遷移元素を含むことが、歪抵抗膜32や密着層50cなどに含まれる元素の上層への拡散を防止する観点から好ましい。具体的には、拡散防止層50bは、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Auから選ばれる1または複数の元素を含むことが好ましい。
【0058】
また、拡散防止層50bは、白金族元素を含むことがさらに好ましい。具体的には、拡散防止層50bは、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptから選ばれる1または複数の元素を含むことが好ましい。白金族元素は、反応性が小さく化学的に安定であるため、白金族元素を含む拡散防止層50bは、高温環境においても、特に好適な拡散防止効果を奏する。なお、白金族元素の中でも特にPtは、他の電極分野でも使用されている実績があり、他の白金族元素より技術的蓄積がある。
【0059】
拡散防止層50bは、第5または6周期に属する遷移元素からなることも好ましい。また、拡散防止層50bは、白金族元素からなることも好ましい。
【0060】
図3に示すように、電極部5のうち最も上層にある実装層50aは、電極付き歪抵抗膜32の上表面に露出する。図1に示すパッド部55での実装層50aには、AuやAlなどの細線で構成される図示しない外部配線が、ワイヤボンディングなどにより接合される。なお、AuやAlの細線による図示しない外部配線を用いる圧力センサ1は、ハンダの融点以上となる高温環境でも使用可能であり、耐熱性が良好である。また、Auの細線による中間配線72を用いる圧力センサ1は、Alの細線による外部配線を用いる圧力センサより耐熱性を向上させることができる。
【0061】
実装層50aは、蒸着法や、スパッタリングなどにより形成することができる。実装層50aの厚みは、特に限定されないが、たとえば10~400nmであり、好ましくは100~300nmである。実装層50aの厚みが薄すぎると連続膜を形成することが難しくなり、外部配線との密着性が低下するおそれがある。実装層50aの厚みが厚すぎると、膜剥がれの問題が生じたり、成膜時間の増加による生産性(スループット)低下の問題が生じたりする場合がある。
【0062】
実装層50aは、Au、Al、Niのすくなくともいずれかを含むことが、耐熱性および外部配線との接合性の観点から好ましい。また、耐熱性を高めてさらに高温環境への対応性を高める観点から、実装層50aは、高温環境においても低抵抗かつ融点の高いAuを含むことがさらに好ましい。また、外部配線の材料としてAuの細線を用いる場合、実装層50aがAuを含むことにより、中間配線72と実装層50aの材料が、いずれもAuとなる。これにより、外部配線と実装層50aとの接合部分の密着性が向上する。
【0063】
また、実装層50aは、Au、Al、Niのすくなくともいずれかからなることも好ましく、Auからなることも、特に好ましい。
【0064】
図2に示すように、本実施形態では、センサ部材2は、電極部5が保護膜4の少なくとも一部を覆っている。歪抵抗膜に積層された保護膜では、その端が他の部分よりも剥離しやすいが、このように構成することで、保護膜4上に電極が形成されるため、保護膜4の端(たとえば開口周縁43など)から剥離するような剥離不良や衝撃による破損を防止できる。
【0065】
また、図3に示すように、電極部5は、金を有する実装層50aを有してもよい。実装層50aが金を有するものであることにより、耐熱性の良好なAu配線に対する実装層50aの密着性が特に良好となる。したがって、このような実装層50aを有する電極部5は、高温耐性が向上するとともに、配線に対する良好な密着力を奏する。
【0066】
また、電極部5は、白金族元素からなる拡散防止層50bを有してもよい。拡散防止層50bが化学的に安定な白金族元素を含むものであることにより、メンブレン3と電極部5との相互拡散を効果的に防止できる。
【0067】
また、電極部5は、メンブレン3と密着する密着層50cを有してもよい。このような密着層50cを有する電極部5は、メンブレン3と電極部5との間の相互拡散を効果的に防止できる。また、密着層50cを有する電極部5は、高温環境下におけるメンブレン3の特性変化を防止するとともに、高温耐性が向上し、かつ、高温環境に暴露された後でも配線に対する非常に良好な密着力を奏する。
【0068】
このような密着層50cに含まれる元素は、Cr、Ti、Ni、Moなどが例示される。このような元素は、他の金属元素と合金を形成しやすいため、膜間および層間の密着強度を確保して膜の剥離不良を防ぐのに効果的である。
【0069】
保護膜4は、酸窒化物からなっていてもよい。このような保護膜4は強度が高いため、特に端部における構造的強度を向上させることができ、センサ部材2の信頼性を向上させることができる。
【0070】
また、図1に示すように、本実施形態では、歪抵抗膜32は、圧力を検知する抵抗部R1~R4を有する。このようなセンサ部材2は、圧力センサ1として好適に用いられる。
【0071】
図2に示すように、本実施形態では、メンブレン3は、金属基材30と、金属基材30に載置される絶縁膜31と、絶縁膜31に載置される歪抵抗膜32と、を有する。このようなメンブレン3は、高温環境での圧力センサとして使用に好適である。また、金属を基材とすることで、機械的強度が高く、信頼性の高い圧力センサを実現できる。
【0072】
また、電極部5は、歪抵抗膜32の上層で、歪抵抗膜32よりも内側に配置してある。電極部5がこのように配置されることで、センサ部材2の小型化を実現することができる。
【0073】
第2実施形態
図7に示す本実施形態に係るセンサ部材2aは、電極部5が第1実施形態と異なるのみであり、共通する部分の説明は省略し、以下、異なる部分について主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1実施形態の説明と同様である。
【0074】
図7に示すように、裾部52は、保護膜4の上に配置されている。裾部52の端縁53は、外縁部41の上方に配置されている。裾部52の端縁53は、歪抵抗膜32の端縁33よりも外側に配置されている。
【0075】
図7に示すように、裾部53は、保護部40を覆うと共に、外縁部41の少なくとも一部を覆っている。裾部52において通電部51と接続している内側から端縁53までの長さL1は、歪抵抗膜32において保護部40に被覆されている被保護部分の長さL2よりも長い。
【0076】
電極部5は、歪抵抗膜32の上層で、歪抵抗膜32よりも外側に広がって配置してある。このように配置されることで、電極部5と保護膜4の密着面積が増加し、効果的に歪抵抗膜32を外部環境から保護できる。
【0077】
なお、上述した実施形態は、特許請求の範囲の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態、あるいは各実施形態の構成を入れ替えた形態も技術的範囲に含むものである。
【0078】
たとえば、金属基材30は、下方に空間を持つ中空筒状に形成してあってもよい。金属基材30は、中空筒の一端に配置される端壁に絶縁膜31と歪抵抗膜32とを形成を有するように形成してもよい。このようなセンサ部材を用いることで、金属基材30の中空空間に流れる流体の圧力を計測することができる。
【0079】
なお、センサ部材は、圧力センサ以外のセンサに用いてもよく、センサ部材2が用いられるセンサの例としては、たとえば、加速度センサ、トルクセンサ、傾斜センサなどの物理量センサが挙げられる。
【符号の説明】
【0080】
1…圧力センサ
2,2a…センサ部材
3…メンブレン
30…金属基材
31…絶縁膜
32…歪抵抗膜
33…端縁
34…検出部
R1…第1抵抗部
R2…第2抵抗部
R3…第3抵抗部
R4…第4抵抗部
35…抵抗配線部
35a…中央部
35b…側部
36…パッド接続部
4…保護膜
40…保護部
41…外縁部
42…開口
43…開口周縁
5…電極部
50a…実装層
50b…拡散防止層
50c…密着層
51…通電部
52…裾部
53…端縁
54…配線部
55…パッド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7