(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119500
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】介助リフト及び介助方法
(51)【国際特許分類】
A61G 7/10 20060101AFI20240827BHJP
A61H 33/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A61G7/10
A61H33/00 310M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026439
(22)【出願日】2023-02-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第49回国際福祉機器展H.C.R.2022 期日:令和4年10月5日~令和4年10月7日 会場:東京国際展示場「東京ビッグサイト」東展示ホール
(71)【出願人】
【識別番号】394006129
【氏名又は名称】株式会社いうら
(72)【発明者】
【氏名】朝山 崇
【テーマコード(参考)】
4C040
4C094
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040AA13
4C040EE05
4C040GG16
4C040GG19
4C040HH01
4C040JJ03
4C040JJ08
4C094AA01
4C094CC03
4C094GG02
(57)【要約】
【課題】目的地まで搬送するための一連の介助作業が煩雑にならない介助リフトを提供すること。
【解決手段】床面を走行可能なベースに立設される支柱と、支柱に軸着され昇降可能なアームと、アーム先端に取着されるハンガーを具備する介助リフトであって、アームを第一アームと第二アームに分割するとともに第一アームの前方が上方に位置する時には第二アームが連動して上方回動し、第一アームの前方が下方に位置する時には第二アームが非連動して垂下され、さらに、ベースの開閉脚の開閉及びアームを昇降操作するためのリモコンに開閉脚とアームの上昇位置を制限するため設定ボタンを具備したことで、ハンガーに吊持された利用者を目的地に下ろす際に、位置合わせがし易く介助作業が煩雑にならない介助リフト。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面を走行可能なベースと、該ベースの上方に立設される支柱と、該支柱に回動自在に軸着され、且つ、アーム駆動手段によって上下に昇降可能なアームと、該アーム先端に取着されるハンガーを具備する介助リフトであって、一端を該支柱に回動自在に軸着される第一アームと、該第一アームの他端に回動可能に軸着される第二アームに分割しつつ、該アーム上昇時に該第一アームの第一規制片によって該第二アームの第二規制片が当接して付勢されることで該第二アーム先端が上方回動しながら起立し、該アーム下降時には該第一アームの該第一規制片と該第二アームの該第二規制片が離間することで該第二アーム先端が下方回動しながら垂下するように該アームを構成したことを特徴とする介助リフト。
【請求項2】
前記ベースの開閉脚を平面視において前方が左右対称に開閉可能な該ベース駆動手段、及び、前記アーム駆動手段を駆動可能にする電装部と、該電装部を作動可能なリモコンを具備する介助リフトであって、該リモコンは、前記アームを昇降させる上がるボタン及び下がるボタンと、該開閉脚を開閉させる開くボタン及び閉じるボタンと、該ベース駆動手段及び該アーム駆動手段の動作制限をさせる第一位置ボタン及び第二位置ボタン、メモリボタンを具備し、該開くボタンあるいは該閉じるボタンを押下して該開閉脚を任意の位置まで開閉した後、該第一位置ボタンあるいは該第二位置ボタンと該メモリボタンを同時に押下することで任意の位置で該開閉脚の開閉を停止可能に設定し、該第一位置ボタンと該第二位置ボタンを同時に押下することで設定解除可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の介助リフト。
【請求項3】
前記アームを設定する高さまで上昇させた後、前記第一位置ボタン及び前記閉じるボタン、前記メモリボタンを同時に押下することでその高さで該アームが上昇停止するよう設定し、前記第二位置ボタン及び前記開くボタン、該メモリボタンを同時に押下することで設定解除することを特徴とする請求項2に記載の介助リフト。
【請求項4】
前記電装部に第一操作ボタン及び第二操作ボタンを具備し、通常は該第一操作ボタンが前記アームの上昇及び該第二操作ボタンが該アームの下降可能なアーム昇降モードとしつつ、該第一操作ボタンと該第二操作ボタンを同時に押下することで、該第一操作ボタンが前記開閉脚の開脚及び該第二操作ボタンが該開閉脚の閉脚を可能にする開閉脚開脚モードに設定変更可能にし、該第一操作ボタンあるいは該第二操作ボタンが押下されずに一定時間経過すると自動的にアーム昇降モードに設定が戻ることを特徴とする請求項3に記載の介助リフト。
【請求項5】
請求項4に記載の介助リフトを用いて、前記支柱の後方に待機した第一の介助者が、前記電装部の前記第一操作ボタン及び前記第二操作ボタンを押下して前記開閉脚を開閉させるとともに、前記アームの左右いずれかの側方に待機した第二の介助者が、前記リモコンを操作して該アームの昇降操作を可能にすることで、目的地へ搬送あるいは移乗するまで該第二の介助者が前記ハンガーに吊持された利用者から離れずに介助作業可能にしたことを特徴とする介助方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の不自由な利用者を現在地から目的地まで搬送するための介助リフト及びその介助リフトを用いた介助方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、身体の不自由な利用者(以下、利用者と呼ぶ)をベッドから車椅子など現在地から目的地に搬送する際、腰痛予防など介助者の身体的負担軽減目的で介護機器が導入されている。介護機器も種々提案されており、利用者の身体状況や使用環境に応じて最適なものを選択できる。
例えば、自力で起き上がれない利用者や、座位姿勢を維持できない利用者を搬送するために、本出願人は従前特許文献1で示す介護用リフト装置を提案している。
この介護用リフト装置では、シート(スリング)に包まれた利用者を介護用リフト装置で吊持して車椅子や車両、浴槽などに搬送(移乗)可能に構成されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1で示す介護用リフト装置を入浴介助に使用する場合、浴槽に転倒防止手段を取り付けて転倒のリスクが無い状態で使用する必要がある。つまり、入浴介助動作が増えることになり煩雑である。また、浴槽を傷付ける恐れもある。
そこで特許文献1の問題を解消するために、非特許文献1に記載される入浴用床走行リフトが提案されている。
この入浴用走行リフトは、脚部を開閉して浴槽のレイアウトに応じた入浴用走行リフトを配置することで、アーム先端のハンガーよりスリングに保持された利用者を吊持して入浴させることができる。つまり、浴槽に連結固定する必要がなく介助動作が非常に簡便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】アビリティーズ・ケアネット株式会社 入浴用床走行リフト マルチリフト (https://www.abilities.jp/fukushi_kaigo_kiki/fukusiyougu/idouyoulift/700050)
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載の入浴用床走行リフトは、浴槽縁より高い所から浴槽内に利用者を下ろす際、昇降に伴うアームの回転運動により前後方向にアームの位置ずれが発生して浴槽縁と利用者の臀部や下肢が干渉する危険があり、浴槽内に利用者を安全に下ろせられない可能性がある。つまり、介助者は、利用者の身体が入浴用床走行リフトと浴槽の間に挟まっていないか確認しながら浴槽内に下ろす必要があり、介助動作が煩雑になる。
また、アームの昇降高さを確保することで浴槽内に利用者を簡単に下ろせられるが、小規模施設や一般家庭などでユニットバスのように比較的小さい浴室で使用する場合、アーム上昇時に浴室の天井と干渉して天井の破損や、入浴用走行リフトの要点などが懸念される。
なお、特許文献1及び非特許文献1は浴槽への搬送を目的とする入浴介助に関する内容であるが入浴介助に限定するものではなく、ベッドからベッド、ベッドから車椅子など様々な使用環境であっても同様の問題が懸念される。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本願発明が解決しようとする課題は、目的地まで搬送するための一連の介助作業が煩雑にならない介助リフトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の介助リフトは、床面を走行可能なベースと、該ベースの上方に立設される支柱と、該支柱に回動自在に軸着され、且つ、アーム駆動手段によって上下に昇降可能なアームと、該アーム先端に取着されるハンガーを具備する介助リフトであって、一端を該支柱に回動自在に軸着される第一アームと、該第一アームの他端に回動可能に軸着される第二アームに分割しつつ、該アーム上昇時に該第一アームの第一規制片によって該第二アームの第二規制片が当接して付勢されることで該第二アーム先端が上方回動しながら起立し、該アーム下降時には該第一アームの該第一規制片と該第二アームの該第二規制片が離間することで該第二アーム先端が下方回動しながら垂下するように該アームを構成したことを特徴とした。
そして、前記ベースの開閉脚を平面視において前方が左右対称に開閉可能な該ベース駆動手段、及び、前記アーム駆動手段を駆動可能にする電装部と、該電装部を作動可能なリモコンを具備する介助リフトであって、該リモコンは、前記アームを昇降させる上がるボタン及び下がるボタンと、該開閉脚を開閉させる開くボタン及び閉じるボタンと、該ベース駆動手段及び該アーム駆動手段の動作制限をさせる第一位置ボタン及び第二位置ボタン、メモリボタンを具備し、該開くボタンあるいは該閉じるボタンを押下して該開閉脚を任意の位置まで開閉した後、該第一位置ボタンあるいは該第二位置ボタンと該メモリボタンを同時に押下することで任意の位置で該開閉脚の開閉を停止可能に設定し、該第一位置ボタンと該第二位置ボタンを同時に押下することで設定解除可能にしたことを特徴とした。
そして、前記アームを設定する高さまで上昇させた後、前記第一位置ボタン及び前記閉じるボタン、前記メモリボタンを同時に押下することでその高さで該アームが上昇停止するよう設定し、前記第二位置ボタン及び前記開くボタン、該メモリボタンを同時に押下することで設定解除することを特徴とした。
さらに、前記電装部に第一操作ボタン及び第二操作ボタンを具備し、通常は該第一操作ボタンが前記アームの上昇及び該第二操作ボタンが該アームの下降可能なアーム昇降モードとしつつ、該第一操作ボタンと該第二操作ボタンを同時に押下することで、該第一操作ボタンが前記開閉脚の開脚及び該第二操作ボタンが該開閉脚の閉脚を可能にする開閉脚開脚モードに設定変更可能にし、該第一操作ボタンあるいは該第二操作ボタンが押下されずに一定時間経過すると自動的にアーム昇降モードに設定が戻ることを特徴とした。
そして、介助リフトを用いて、前記支柱の後方に待機した第一の介助者が、前記電装部の前記第一操作ボタン及び前記第二操作ボタンを押下して前記開閉脚を開閉させるとともに、前記アームの左右いずれかの側方に待機した第二の介助者が、前記リモコンを操作して該アームの昇降操作を可能にすることで、目的地へ搬送あるいは移乗するまで該第二の介助者が前記ハンガーに吊持された利用者から離れずに介助作業可能にしたことを特徴とする介助方法を特徴とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の介助リフトは、アームを第一アームと第二アームの分割構成にするとともに、第一アームが最低位では第二アーム先端が垂下された状態から、第一アームが上昇するにつれて第二アーム先端が徐々に上方回動することで、アーム昇降時の前後のずれを低減し、アーム先端のハンガーに吊持された利用者の着座位置を微調整する手間を軽減できる。また、第一アームと第二アームの回動支点である第一規制ボスに第一規制片を第二規制ボスに第二規制片を付設して爪付きボス構成にしたことで部品構成が少なく安価に提供しつつ、アーム下降時には第二アームが前後方向に回動可能であるとともに、アーム上昇時には第二アームが前方にのみ回動可能にしたことで利用者をハンガーで吊持する際に安全に微調整可能である。
そして、介助リフトの開閉脚を開閉するためのベース駆動手段とアームを昇降するためのアーム駆動手段を電装部と連結したリモコンで操作可能にしつつ、開閉脚を開閉するための開くボタンと閉じるボタン、アームを昇降するための上がるボタンと下がるボタンに加えて、ベース駆動手段の動作範囲を指定するための第一位置ボタン及び第二位置ボタン、メモリボタンを具備したことで、あらかじめ設定したい開閉位置を第一ボタンあるいは第二ボタンとメモリボタンを同時に押下すると、開閉脚の開閉位置を適宜設定できる。例えば、浴室の壁面に当接しない浮島型や、1辺が壁面に当接する3方向解放型、連続する2辺が壁面に当接する2方向解放型のレイアウトで配置された矩形状の浴槽に対してそれぞれの浴槽に合わせて介助者が開閉脚の開閉位置を微調整する必要がなく作業性向上が可能である。なお、対象となる場所も浴槽だけでなく車椅子やベッドなどの移乗にも使用可能であり汎用性が高い。また、アームの前後の位置ずれ低減と組み合わせることで、より目的地の狙った位置に合わせやすく、且つ、位置調整の手間が少なくできるため、介助者の身体的負担だけでなく精神的負担も大幅に低減できる。
そして、閉じるボタンと第一位置ボタンとメモリボタンを同時に押下するとアームの上限高さを設定できる。つまり、アームの昇降範囲より低い高さの天井を通過する場合に、あらかじめ上限高さ設定しておくことで、介助者が都度天井との干渉を気にする必要が無く作業性が向上するとともに、万が一介助者が失念してアームを天井と干渉させても使用する場所の天井を傷付けて破損させたり、介助リフトが横転したりする心配もなく利用者を含めて安全に使用できる。
そして、電装部にベース駆動手段とアーム駆動手段を作動させる第一操作ボタンと第二操作ボタンを設定しつつ、さらに第一操作ボタンと第二操作ボタンを同時に押下することで開閉脚の開閉とアームの昇降を切り替えできる。つまり、電装部で開閉脚の開閉とアームの昇降操作が可能となり、効率的に介助作業できる。
さらに、介助者が二人いる状態で本発明の介助リフトを用いる場合、支柱の後方に第一の介助者を、アームの側方に第二の介助者をそれぞれ待機させた状態で、第一の介助者は電装部の第一操作ボタンあるいは第二操作ボタンを操作することで開閉脚を開閉し、第二の介助者はリモコンを操作してアームの昇降に合わせてハンガーに吊持された利用者の傍から離れないようにしたことで、利用者をより安全に目的地に移乗させることが可能であるとともに、作業性を向上できる。なお、第一の介助者が第一操作ボタン及び第二操作ボタンで開閉脚の開閉とアームの昇降を交互に行うことで、より第二の介助者は利用者に注力して介助できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図6】介助リフトLで利用者Mを吊持した状態で浴槽Bに入る状態を示す側面図
【
図10】介助リフトLを(a)3方解放型浴槽Bに設置した状態を示す平面図(b)2方解放型浴槽Bに設置した状態を示す平面図
【
図11】ベース駆動手段1f及びアーム駆動手段4、電装部6、リモコン7の関係を示すブロック図
【
図12】開閉脚1b,1bの開閉位置設定に関するリモコン7の(a)操作説明図(b)操作フロー図
【
図13】アーム3の上限位置設定に関するリモコン7の(a)操作説明図(b)操作フロー図
【
図14】アーム昇降モードと開閉脚開閉モードの切り替えに関する第一操作ボタン61aと第二操作ボタン61bの(a)操作説明図(b)操作フロー図
【発明を実施するための形態】
【実施例0011】
本発明の介助リフトLについて図面を基に説明する。
本実施例における介助リフトLは、床面を走行自在なベース1と、該ベース1の上部に立設される支柱2と、該支柱の上部に軸着されるアーム3と、該アーム3を昇降するためのアーム駆動手段4と、該アーム3の先端に軸着されるハンガー5と、該支柱2に付設される電装部6及びリモコン7で主に構成される。
なお、各図面に矢印で方向を示しており、介助リフトLでスリングSで保持された利用者Mを吊持した状態を基準に方向(前後、上下、左右)を設定している。
【0012】
まず、ベース1について説明する。
図1などで示すように、該ベース1は複数のフレームを組み合わせて略矩形状に形成したベースブラケット1aと、該ベースブラケット1aの両端前方から延設するとともに基端を回動自在に軸着される開閉脚1b,1bと、該開閉脚1b,1bの先端に取着される前輪1c,1cと、該ベースブラケット1aの後方に取着される後輪1d,1d及び該後輪1d,1dをロックするためのブレーキペダル1eで主に構成している。
該ベースブラケット1aの両端近傍に該後輪1d,1d側を回動自在に軸着した該開閉脚1b,1bは、図示や詳細な機構の説明は省略するが該ベースブラケット1aの内部に配設されたベース駆動手段1fを後述するリモコン7を操作して駆動することで内部に配設されたリンク機構1gによって
図1などで実線で示す閉脚姿勢と、想像線で示す開脚姿勢に適宜姿勢変更可能である。
なお、本実施例において該ベース駆動手段1fは電動のアクチュエーターを採用しており、アクチュエーターの延伸及び短縮動作により該開閉脚1b,1bを姿勢変更可能にしているが、アクチュエーターに限定する必要は無く該開閉脚1b,1bを回動可能にできれば良い。また、該ブレーキペダル1eを介助者Aが踏み込んで該後輪1d,1dをロックし、該ブレーキペダル1eを跳ね上げてロック解除できる。そして、該前輪1c,1cは単独ブレーキを備えており、介助者Aが踏み込んでロック、跳ね上げてロック解除できるように構成している。
さらに、該開閉脚1b,1bの先端と該前輪1c,1cとの間にバンパー1h、1hを配設している。該バンパー1h,1hは、該前輪1c,1cの旋回範囲より大きい円周を持つ樹脂製の円盤型のプレートで構成され、後述する浴槽Bや壁面などに該前輪1c,1cが近接する際、該前輪1c,1cとの干渉を防ぐ目的で使用される。
このように本実施例において、該前輪1c,1cは単独ロック、該後輪1d,1dは該ブレーキペダル1eによる同時ロック構成であるが、該後輪1d,1dは単独ロックでも良く、該前輪1c,1cと該後輪1d,1dをロックできれば良い。
【0013】
次に、支柱2について説明する。
図1及び
図2で示すように、前記ベース1の前記ベースブラケット1aの前記後輪1d,1d側の近傍から上方に突設された取付パイプ1i,1iに挿通される支柱脚2a,2aと、該支柱脚2a,2aの上部に固着される支柱ブラケット2bと、該支柱ブラケット2bの両側部に取着されるハンドル2c,2cで主に構成される。
該支柱脚2a,2aは下方から上方に向けて徐々に先端が近接する三角形状に屈曲形成される。これは、搬送時に利用者Mの下肢と該支柱脚2a,2aの干渉回避及び介助の作業性向上のためである。そして、該支柱ブラケット2bは、背面視において矩形状のプレートで構成されており、該支柱ブラケット2の前方には支点プレート2dが固着されるとともに、後方には後述する電装部6が取着される。また、該支柱ブラケット2bの上部には、後述するアーム3の回動支点となるアーム支点ボス2eを固着している。
なお、支柱2は本実施例に記載の内容に限定する必要はない。例えば、該支柱脚2a,2aは二本脚ではなく一本脚で構成しても良いし、該ハンドル2c,2cは湾曲型ではなく直線型にしても良い。
【0014】
次に、アーム3について説明する。
図3などで示すように、本実施例において第一アーム31と第二アーム32で構成される。
まず、該第一アーム31について説明する。
図3で示すように該第一アーム31は、一端を前記支柱2の前記アーム支点ボス2eに回動自在に軸着するとともに、他端を該第二アーム32に回動可能に軸着している。
詳述すると、側面視において平仮名の略く字状に屈曲形成しつつ平面視において前記支柱2側から先端に向かうにつれて左右の間隔が徐々に狭くなるように配設された二本一対の第一アーム本体31a,31aの該支柱2側の一端に第一ボス31b,31bを固着するとともに、他端に第一規制ボス31c,31cを固着している。そして、該第一アーム本体31a,31aの間の略く字状の屈曲点近傍にツナギパイプ31dを架設して固着している。そして、該ツナギパイプ31dの下方に後述するアーム駆動手段4の一端を軸着するための支点ブラケット31eを固着している。
なお、前述したように本実施例において該第一アーム本体31a,31aは前記支柱2側から該第一アーム31先端に向かうにつれて左右の間隔が徐々に狭くなるように構成しているが、平行に配設しても良い。また、二本一対では無く一本の該第一アーム本体31aにしても良い。
【0015】
次に、第二アーム32について説明する。
図3で示すように該第二アーム32は、パイプからなる第二アーム本体32aの一端に第二規制ボス32bを固着し、他端には後述するハンガー5を軸着するためのU字状の支点プレート32cを固着している。
【0016】
次に、前記第一アーム31と前記第二アーム32の関係について説明する。
該第一アーム31の前記第一規制ボス31c,31cと該第二アーム32の前記第二規制ボス32b,32bは同軸心で軸着され、該第一規制ボス31c,31cと該第二規制ボス32b,32bのつなぎ目には後述する第一規制片311c,311c及び第二規制片321b,321bの外周にカラー32d,32dを外挿して、部品の隙間で身体の挟み込みが無いようにしている。
そして、前記アーム3が後述するアーム駆動手段4によって昇降される時、つまり、該第一アーム31及び該第二アーム32が上下に昇降する際は、該第一規制ボス31cの第一規制片311c,311cと該第二規制ボス32bの第二規制片321b,321bが当接及び離間することで該第一アーム31に対して該第二アーム32が姿勢変更しながら昇降する。
以下、
図4及び
図5を用いて説明する。
まず、
図4は該アーム3が最低位の状態を示している。この時、該第二アーム32は該第一アーム31の先端から鉛直方向に垂下される。この時、該第一規制ボス31cの該第一規制片311c,311cと該第二規制ボス32の該第二規制片321b,321bの端部は両端とも当接しない。
この状態から該アーム3を上昇させると該第一規制ボス31cの該第一規制片311c,311cと該第二規制ボス32bの該第二規制片321b,321bの端部が当接する。すると、該第一アーム31によって該第二アーム32が付勢される状態となるため、該第一アーム31と該第二アーム32が一体となって上昇可能な状態となる。
なお、図示は省略するが、該アーム3上昇時に前記支柱2の前記支点プレート2dに該アーム駆動手段4を軸着する軸心と、該第一規制ボス31cと該第二規制ボス32bを軸着する軸心を結ぶ線が床面に対して略平行になるタイミングで本実施例において該第一規制片311c,311cと該第二規制片321b,321bの端部が当接するように構成される。
この状態からさらに該アーム3を上昇させると、最低位の時に鉛直方向を向いていた該第二アーム32の先端が
図5で示すように介助リフトLの前方に起立(上方回動)しながら最高位まで上昇する。
よって、詳細は後述するが
図6で示すように介助リフトLで利用者Mを浴槽Bに入浴させる場合、該アーム3が低い位置から浴槽Bを乗り越え可能な高い位置に昇降しても前後方向のずれが少なく介助リフトLに吊持された利用者Mを浴槽Bに下ろす際に位置合わせが容易である。
ここで、
図7で示すのは一般的な介助リフトL’である。該介助リフトL’の1’~6’までの記号は、本実施例における介助リフトLの構成部品1~6と同じ役割を果たす部品に’(プライム)を付している。
詳細は省略するが、該介助リフトL’は該アーム3’昇降時に該アーム3’が回動中心に対して円弧運動をするため前後方向の位置ずれが大きいものになる。
それに対して、本発明の該アーム3は、該第一アーム31が回動中心に対して円弧運動をしつつ、該第一アーム31に枢着された該第二アーム32の他端が該第一アーム31の昇降に合わせて上下に回動するため、前後方向の位置ずれを小さくできる。
なお、該アーム3が低い位置では
図4で示すように、該第二アーム32は該第二規制ボス32bの第二規制片321b,321bが該第一アーム31の該第一規制ボス31cの第一規制片311c,311cに当接するまで前後に回動可能である。
このように構成することで、利用者Mを浴槽Bや車椅子(図示省略)から吊持する際に介助者Aが該第二アーム32や後述するハンガー5を把持して意図的に前後に動かすことができるため微調整がしやすい。つまり、スリングSのストラップS1を該ハンガー5に掛けやすくなるなど、作業性向上を図ることができる。
一方、該アーム3が一定以上上昇すると
図5で示すように、該第二アーム32は該第二規制ボス32bの該第二規制片321b,321bが該第一アーム31の該第一規制ボス31cの第一規制片311c,311cに当接した状態であるため、該ハンガー5が
図5の矢印の方向(前方)にしか動かすことができない。つまり、昇降時の該第二アーム32の後方への揺れを抑えられ、浴槽B内により利用者Mを下ろしやすい利点もある。
なお、前述したように該第一規制片311c,311c及び該第二規制片321b,321bの端部が当接するタイミングは前記支柱2の前記支点プレート2dに該アーム駆動手段4を軸着する軸心と、該第一規制ボス31c,31cと該第二規制ボス32bを軸着する軸心を結ぶ線が床面に対して略平行になるタイミングに限定する必要は無く、該アーム3の回動範囲内であればどこで設定しても良い。
また、該第一規制ボス31c,31は前記第一アーム本体31a,31aが二本一対構成であるため該第一規制片311c,311cが向かいあうように2つの部材から構成され、2つの部材に挟まれるように該第二規制ボス32bの両端に形成された該第二規制片321b,321bと当接するように構成されるが本実施例に限定する必要は無い。例えば、該第一規制ボス31cと該第二規制ボス32bを並列に配置して、該第一規制片311cと該第二規制片311bをそれぞれ一つに構成しても良い。
【0017】
次に、アーム駆動手段4について説明する。
図4などで示すように、本実施例における該アーム駆動手段4はアクチュエーターを採用しており、一端を前記支柱2の前記支点プレート2dに回動自在に軸着するとともに、他端を前記アーム3の前記第一アーム31の前記支点ブラケット31eに回動自在に軸着している。
そして、後述する前記リモコン7を操作して該アーム駆動手段4を駆動して延伸及び短縮させることにより、該アーム3が付勢及び短縮されて該支点プレート2dを回動中心として回動しながら昇降する。
【0018】
次に、ハンガー5について説明する。
図3で示すように、本実施例における該ハンガー5は、中空のハンガーボス5aの両端に左右対称にアーチ状のサイドプレート5b,5bの一端を固着し、該サイドプレート5b,5bの他端は略U字状のフック5c,5c,・・・の開口部が上方を向くようにそれぞれ固着する。
そして、該サイドプレート5b,5bの両先端近傍及び該フック5c,5c,・・・の開口側に抜け止め機構5d,5dを取着している。該抜け止め機構5d,5dの詳細な説明は省略するが、後述するスリングSのストラップS1を該フック5c,5c,・・・に掛着した際に該ストラップS1が、該フック5c,5c,・・・から脱落しないようにするために該フック5c,5c,・・・の開口部を開閉するためのカラビナ式の部品構成である。
また、該サイドプレート5b,5bの前後にクッション型のマット5e,5eを貼設している。該マット5e,5eは利用者Mの頭部が万が一ハンガー5と干渉した際に怪我をしないように保護するために使用される。なお、本実施例においては浴室での使用を想定しているため水切れし易いポリエチレン製の該マット5e,5eを採用しているが、限定する必要は無い。例えば、該サイドプレート5b,5bの外周を回着するカバー型のマットにしても良く、利用者の頭部付近を保護できるものであれば良い。(なお、該マット5e,5eの使用は任意である。)
そして、該ハンガーボス5aの下方からピン5fを挿通するとともに、該ハンガーボス5aの上部に該ハンガーボス5aの中空部と同軸心の中空部を持つ取付ボス5gを挿通し、前記アーム3の前記第二アーム32の前記支点プレート32cに軸着している。
このように構成した該ハンガー5は該第二アーム32に対して前後揺動可能であるとともに、水平方向に回動自在に軸着される。
【0019】
次に、電装部6について説明する。
図8などで示すように、該電装部6は前記支柱2の前記支柱ブラケット2bに取着されるコントロールボックス61と、該コントロールボックス61に着脱可能に取着されるバッテリー62及び説明は省略するが前記ベース駆動手段1fや前記アーム駆動手段4及び後述するリモコン7などと連結するプラグやケーブルで構成される。
該コントローボックス61は側面視において略L字状に形成され、前記支柱ブラケット2bと略同等の左右幅を有している。そして、該コントロールボックス61は該ベース駆動手段1fや該アーム駆動手段4を制御するための制御器や後述する各種設定が完了した際に音を発信するためのスピーカーなどが内蔵されている。
そして、背面視において中央よりやや下方に左右に第一操作ボタン61a及び第二操作ボタン61bが付設される。該第一操作ボタン61a及び該第二操作ボタン61bの役割は後述する。
また、該バッテリー62の上部には非常停止ボタン63が付設されており、介助者Aが該非常停止ボタン63を押下することで、前記開閉脚1b,1bの開閉及び前記アーム3の昇降を不可能にする。なお、該非常停止ボタン63が作動した場合は、該コントロールボックス61から該バッテリー62を取り外すことで解除できる。(取り外した後、再度該コントロールボックス61に取り付けて使用する。)
【0020】
次にリモコン7について説明する。
該リモコン7は、前記電装部6の前記コントロールボックス61に接続され、
図9で示すようにリモコン本体7aに備えられた8つのボタンを用途に合わせて操作することで前記ベース1の前記開閉脚1b,1bの開閉及び前記アーム3の昇降を可能にしている。
なお、本実施例に示す該リモコン7は前述したように該電装部6とケーブルで有線接続されるが、無線接続でワイヤレス接続しても良い。
そして、
図11にブロック図で該電装部6及び該ベース駆動手段1f、該アーム駆動手段4と該リモコン7の関係を示している。
以下、それぞれの役割を説明する。
まず、該リモコン本体7aは
図4などで示すように上部にフック部71aを形成しており前記支柱2の前記支柱ブラケット2bに付設された丸棒を屈曲形成したリモコンフック2fや、前記ハンドル2c,2cに該フック部71aを掛止して介助リフトLに収納する。
そして、該リモコン本体7aの下方に配設される開くボタン7bと閉じるボタン7cは前記ベース駆動手段1fを駆動するためのボタンである。
本実施例においては、該開くボタン7bを押下することで該ベース駆動手段1fが延伸しつつ前記リンク機構1gが枢動し、前記開閉脚1b,1bが
図1の実線で示す閉脚姿勢から、想像線で示す開脚姿勢に姿勢変更する。
そして、該閉じるボタン7cを押下することで該ベース駆動手段1fが短縮しつつ該リンク機構1gが駆動することで、該開閉脚1b,1bが
図1の想像線で示す開脚姿勢から、実線で示す閉脚姿勢に姿勢変更する。
【0021】
次に、前記リモコン本体7aの上方に配設される上がるボタン7dと下がるボタン7eは前記アーム駆動手段4を駆動するためのボタンである。
本実施例においては、該上がるボタン7dを押下することで前記アーム駆動手段4が延伸して、前記アーム3先端が上昇しつつ該アーム3先端に取着された前記ハンガー5も上昇する。
そして、該下がるボタン7eを押下することで該アーム駆動手段4が短縮して、該アーム3が下降しつつ該アーム3先端に取着された該ハンガー5も下降する。
【0022】
ここで、本実施例における介助リフトLを用いた入浴介助を
図10を用いて説明する。
まず、
図10(a)は浴室の壁面に一辺が当接した状態で設置された3方解放型の平面視において矩形状の浴槽Bに対して介助リフトLを設置した状態である。
この場合は、まず、介助者Aが前記上がるボタン7dを押下して
図6で示すように浴槽Bの上面を利用者Mの下肢が乗り越え可能な高さまで前記アーム3を上昇させる。そして、前記開くボタン7bを押下して前記開閉脚1b,1bを開脚した状態で、浴槽Bの解放側の一辺を平面視において挟み込むように侵入させ、前記アーム3先端つまり、前記ハンガー5に吊持された利用者Mが浴槽Bの中心に可能な限り近くに位置するように配置する。そこから、前記下がるボタン7eを押下して該アーム3を下降させて利用者Mを入浴させる。
そして、
図10(b)は浴室の壁面に二辺が当接した状態で設置された2方解放型の平面視において矩形状の浴槽Bに対して介助リフトLを設置した状態である。
この場合は、まず介助者Aが該上がるボタン7dを押下して
図6で示すように浴槽Bの上面を利用者Mの下肢が乗り越え可能な高さまで該アーム3を上昇させる。そして、該開くボタン7bを押下して前記開閉脚1b,1bを開脚した状態で、浴槽Bの解放側の隅に平面視において斜め方向に侵入させ、前記アーム3先端つまり、該ハンガー5に吊持された利用者Mが浴槽Bの中心に可能な限り近くに位置するように配置する。そこから、該下がるボタン7eを押下して該アーム3を下降させて利用者Mを入浴させる。
このように構成することで、種々のレイアウトで設置された浴槽Bに合わせて介助リフトLを固定することなく設置し、利用者Mを入浴介助できる。
なお、
図10(a)は3方解放型の浴槽Bを図示しているが4方が壁面に当接しない浮島型の浴槽Bに対しても同様の入浴介助ができる。
また、図示は省略するが、四隅に高さ調整可能なアジャスターが付設されている浮島型のバスタブや、開閉脚1b,1bが侵入可能なスペースが形成されているバスタブに使用する場合は、開閉脚1b,1bを開脚せずにそのまま差し込んで使用しても良い。
【0023】
本実施例では前述したように前記開閉脚1b,1bを開閉するための前記開くボタン7b及び前記閉じるボタン7c、前記アーム3を昇降するための前記上がるボタン7d及び前記下がるボタン7eだけでなく以下に示すボタンを使用することで、より作業性を向上できる。
まず、前記上がるボタン7dと前記下がるボタン7eの中間よりやや右側に加速ボタン7fを配置している。なお、該加速ボタン7fの位置は図示した位置に限定する必要は無く、例えば左側でも良い。
該加速ボタン7fは該上がるボタン7dと該下がるボタン7eと併用して押されるボタンであり、該上がるボタン7dあるいは該下がるボタン7eと該加速ボタン7fを介助者Aが同時に押下することで前記アーム駆動手段4の延伸あるいは伸縮スピードを速くできる。
そして、前記コントロールボックス61には前記アーム駆動手段4が一定の負荷を受けた場合に検知する設定がされている。つまり、利用者Mが吊持されて該アーム3を上昇させる時は利用者Mは安全に上昇できる。
なお、利用者Mが吊持されない時は、該上がるボタン7dあるいは該下がるボタン7eと該加速ボタン7fを同時に押下することで該アーム3の昇降スピードが速くなるため、入浴介助にかかる時間の短縮を図ることができる。
【0024】
また、前記上がるボタン7dと前記下がるボタン7eを介して前記加速ボタン7fの反対側にメモリボタン7gを、前記開くボタン7bと前記閉じるボタン7cの下方には第一位置ボタン7h及び第二位置ボタン7iを配置している。
該メモリボタン7g及び該第一位置ボタン7h、該第二位置ボタン7iは該メモリボタン7gと該第一位置ボタン7hあるいは該第二位置ボタン7iを同時に押下することで前記開閉脚1b,1bの開脚位置を設定できる。
以下手順を示すと、
図12で示すように使用する浴槽Bに対して最適な位置に前記リモコン7の該開くボタン7bあるいは該閉じるボタン7cを介助者Aが押下して該開閉脚1b,1bを開閉する。
この状態で、該メモリボタン7gと該第一位置ボタン7hあるいは該第二位置ボタン7iを同時に押下し続けると3秒後に該コントロールボックス61から「ピッ」と発信音が鳴ると同時に設定した開脚位置で停止するようにメモリ設定される。
よって、先ほど設定した開脚位置を該第一位置ボタン7hでメモリ設定した場合、該開閉脚1b,1bは閉脚位置からメモリ設定した開脚位置まで該第一位置ボタン7hを押下し続けることで自動で動いた後、停止できる。なお、メモリ設定した後でも、該第一位置ボタン7hでは無く、該開くボタン7bあるいは該閉じるボタン7cを押下して無段階で該開閉脚1b,1bを開閉することもできる。
また、メモリ設定を解除する場合は、該メモリボタン7gと該開くボタン7bと該閉じるボタン7cの3つのボタンを同時に押下し続けると5秒後に該コントロールボックス61から「ピッ」と発信音が鳴ると同時にメモリ設定が解除される。
このように、あらかじめ該開閉脚1b,1bの開閉位置を決めておくことで、例えば入浴介助するにあたり介助者Aが浴槽Bに対して該開閉脚1b,1bをどの程度開けば良いか都度微調整する必要が無くなり煩雑な作業を改善できる。
【0025】
また、本発明の介助リフトLは
図13で示すように前記アーム3上昇時の上限位置設定機能を具備している。
一般的に該アーム3の昇降高さが高いほど浴槽Bをしっかりと乗り越えられるメリットがあるが、次に挙げるデメリットを考慮する必要がある。
浴室の天井が低い小規模施設や一般家庭などで該アーム3の昇降高さが高い介助リフトLを使用する場合、介助者Aが前記上がるボタン7dを押下し続けると最高位まで上昇するため天井と該アーム3が干渉する可能性があり、天井や介助リフトLの破損、あるいは介助リフトLがバランスを崩して横転する可能性がある。この問題を解消するために、次で説明する該アーム3の上限位置設定機能を具備している。
まず、介助リフトLの使用場所で一番天井が低い所を確認し、制限高さを決める。(本実施例では
図13で示すように浴室を想定しているが、居室や脱衣所などでも良い。)
そして、無負荷状態で前記アーム3を上昇させて停止する。
この状態で、該リモコン7の前記閉じるボタン7cと前記メモリボタン7gと前記第二位置ボタン7iを同時に押下し続けると7秒後に該コントロールボックス61から「ピッピッピッ」と発信音が鳴ると同時に設定した高さまでしか該アーム3が上昇しないようにメモリ設定される。
設定後、前記上がるボタン7dを押下することで制限高さまで無段階で該アーム3を上昇できる。
そして、制限高さを解除する場合は、該リモコン7の前記開くボタン7bと該メモリボタン7gと前記第一位置ボタン7hを同時に押下し続けると7秒後に該コントロールボックス61から「ピーピーピー」と発信音が鳴ると同時にメモリ設定が解除される。
【0026】
このように、本発明における前記リモコン7は複数のボタンを組み合わせて前記ベース1の前記開閉脚1b,1bの開閉位置や前記アーム3の上限位置をあらかじめ設定できる。この設定を可能にするのは該ベース駆動手段1f及び該アーム駆動手段4により位置情報を感知しつつ、該電装部6が該ベース駆動手段1f及びアーム駆動手段4の位置情報を元に次の動作を判断し、該ベース駆動手段1f及びアーム駆動手段4が動作するためである。
これらの機能を用いることで、使用環境に応じて適宜介助者Aが都度目視確認しながら行っていた介助方法から、安全、且つ、効率的に利用者Mを吊持して介助できる介助方法を採用できるため至便である。
また、アーム3の前後のずれ軽減構成と組み合わせることで確実に移乗させることができるため、介助者Aの身体的負担軽減を可能にするだけでなく、利用者Mと浴槽Bとの干渉や、介助リフトLの操作を誤ったことによる横転など種々の配慮をする必要が無くなり精神的負担を軽減できる。
【0027】
さらに、本発明の介助リフトLは前記アーム3下降時の挟み込み感知機能を具備している。
挟み込み感知機能について説明する。本実施例における該アーム3は
図4で示す最低位から
図5で示す最高位、つまり、該アーム3先端が前記ベース1に近接する高さから、浴室の天井に近接する高さまで昇降可能である。つまり、図示を省略するが直接床面に仰臥位姿勢で待機する利用者Mを吊持可能であるとともに、浴槽Bの側縁を十分跨ぐことが可能な高さまで該アーム3を昇降可能である。
このとき、
図6及び
図10で示すように介助リフトLに吊られた利用者Mが浴槽Bの側縁を跨ぎつつ浴槽B内に降りる際、浴槽Bの側縁と利用者Mの下肢や該アーム3が干渉する可能性が有る。つまり、前述した上限位置設定機能で懸念されたデメリット同様に下降時にも浴槽Bや介助リフトLの破損、あるいは介助リフトLがバランスを崩して横転する可能性がある。
そこで、浴槽Bの側縁との干渉が発生した場合に該アーム3の昇降動作が自動停止するように挟み込み感知機能を前記コントロールボックス61に設定している。
【0028】
また、本発明において前述した前記コントロールボックス61の前記第一操作ボタン61a及び前記第二操作ボタン61bも前記開閉脚1b,1bの開閉と、前記アーム3の昇降操作が可能である。
詳述すると、該コントロールボックス61は
図14で示すようにアーム昇降モード状態として、該第一操作ボタン61a及び該第二操作ボタン61bを該アーム3の昇降操作ができ、該第一操作ボタン61aを押下すると前記上がるボタン7dと同様に該アーム3を上昇させ、該第二操作ボタン61bを押下すると前記下がるボタン7eと同様に該アーム3を下降できる。
この状態から、該第一操作ボタン61a及び該第二操作ボタン61bを同時に押下すると該コントロールボックス61から「ピピッ」と発信音が鳴ると同時に、該アーム3を昇降操作する状態から該開閉脚1b,1bを開閉操作する開脚脚開閉モードに変更される。
この状態になると、該第一操作ボタン61aを押下すると前記開くボタン7bと同様に該開閉脚1b,1bを開脚し、該第二操作ボタン61bを押下すると前記閉じるボタン7cと同様に該開閉脚1b,1bを閉脚できるようになる。
なお、開閉操作可能な開閉脚開閉モードに変更されたのち、該第一操作ボタン61aあるいは該第二操作ボタン61bを押下せずに一定時間経過すると、自動的にモードが該アーム3の昇降操作可能なアーム昇降モードに戻るように設定している。
【0029】
このように前記コントローボックス61に前記第一操作ボタン61a及び前記第二操作ボタン61bを具備して、前記リモコン7の各種ボタンと同等の役割を可能に設定したことで次に説明する入浴介助の際に作業性を向上できる。
例えば、本発明で採用した介助リフトLなどの床走行式リフトは、一人介助だけでなく二人介助も可能である。
二人介助をする場合は
図10で示すように介助リフトLのいずれかの側部に第一介助者Aが待機し、介助リフトLの後方に第二介助者Aが待機する状態となる。
そして、該第一介助者Aは利用者Mの様子を見ながら浴槽Bに近づき搬送姿勢の利用者Mを入浴姿勢に方向転換する役割と、前記リモコン7(各ボタンを押下)を操作して前記アーム3を昇降させる役割を担う。
一方、該第二介助者Aは介助リフトLの後方から前記ハンドル2c,2cを把持して介助リフトLを支える役割と、前記コントロールボックス61(該第一操作ボタン61a及び該第二操作ボタン61bを押下)を操作して前記開閉脚1b,1bを開閉させる役割を担う。
このように二人介助をすることで、次のメリットがある。
前記支柱2の後方に第一の介助者Aを、前記アーム3の側方に第二の介助者Aをそれぞれ待機させた状態で、第一の介助者Aは前記電装部6の前記第一操作ボタン61aあるいは前記第二操作ボタン61bを操作することで前記開閉脚1b,1bを開閉し、第二の介助者Aは前記リモコン7を操作して前記アーム3の昇降に合わせて前記ハンガー5に吊持された利用者Mの傍から離れないようにしたことで、利用者Mをより安全に目的地に移乗させることが可能であるとともに、作業性を向上できる。なお、第一の介助者Aが前記第一操作ボタン61a及び前記第二操作ボタン61bで前記開閉脚1b,1bの開閉と前記アーム3の昇降を交互に行うことで、より第二の介助者Aは利用者に注力して介助できる。
このように本実施例で示す二人介助を採用することで、一人介助に比べて介助者一人当たりの作業負担軽減や作業性を向上するだけでなく、安全面でも効果が期待できる。
【0030】
なお、本実施例は浴室を想定して説明したが、入浴用に限定する必要は無い。例えば、居室での使用を想定しても良く、ベッドへの移乗にも使用できる。
また、目的地の形状に合わせて開閉脚1b,1bを適宜開閉して使用しても良い。例えば、本実施例では浮島型あるいは3方解放型、2方解放型の矩形状の浴槽Bへの設置を想定して説明したが、矩形状の浴槽だけでなく平面視において丸型でも多角型でも介助リフトLが使用可能な浴槽であれば良い。
また、使用環境も浴槽だけなく四隅に脚が配設されるベッドやバスタブなどでも良く、その場合は開閉脚1b,1bが閉脚した状態でベッドの下に開閉脚1b,1bを差し込んで使用しても良い。
また、リモコン7の各ボタン操作時にモードを切り替えるための必要時間も本実施例に限定する必要は無く、各ボタンを押下したタイミングで切り替えても良いし、本実施例で説明した時間以上を要するように設定しても良い。
さらに、モード切り替え時の発信音も本実施例に限定する必要は無く、無音に設定しても良い。また、発信音の替わりにライトが点滅して介助者にモードが切り替わったことを目視で知らせるように設定しても良い。
このように、使用場所や環境に合わせて介助リフトLの各種設定を行い、使用したので良い。