(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119502
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】温度槽及び環境形成装置
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026441
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】西川 太平
(72)【発明者】
【氏名】菊池 郁織
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA01
2G050AA02
2G050BA10
2G050EA01
(57)【要約】
【課題】供試体に温度むらが生じにくい温度槽を提供することを課題とする
【解決手段】対向する第1壁18及び第2壁10と、第1壁18と第2壁10を繋ぐ複数の壁によって囲まれた温調空間20を有し、温調空間20に開口する給気口21及び排気口があり、温調空間20に供試体が設置される設置領域があり、複数の壁は、給気口21が形成された給気壁11と、当該給気壁11と接続された複数の側面壁12、16と、を含み、温調空間20内であって給気口21に対向する位置に、給気口21を正面視したときに給気口21の少なくとも一部と重なる主風向部材45があり、主風向部材45の側面壁12、16側に第2通風路がある。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1壁及び第2壁と、前記第1壁と前記第2壁を繋ぐ複数の壁によって囲まれた温調空間を有し、前記温調空間に開口する給気口及び排気口があり、前記温調空間に供試体が設置される設置領域がある温度槽であって、
前記複数の壁は、前記給気口が形成された給気壁と、当該給気壁と接続された複数の側面壁と、を含み、
前記温調空間内であって前記給気口に対向する位置に、前記給気口を正面視したときに前記給気口の少なくとも一部と重なる主風向部材があり、
前記主風向部材と前記第1壁との間及び前記主風向部材と前記第2壁との間の少なくとも一方に第1通風路があり、
前記主風向部材の前記側面壁側に第2通風路があり、
前記給気口から導入された送風の一部が第1通風路を通過して前記設置領域に流れ、前記給気口から導入された送風の残部の全部又は一部が前記主風向部材により前記第2通風路に導かれて前記設置領域に流れることを特徴とする温度槽。
【請求項2】
前記主風向部材は、前記給気口を正面視したときに、前記給気口の一部のみと重なることを特徴とする請求項1に記載の温度槽。
【請求項3】
前記主風向部材は送風を前記第2通風路に導く導風面があることを特徴とする請求項1に記載の温度槽。
【請求項4】
前記主風向部材の近傍に送風を前記側面壁側に導く補助風向部材があることを特徴とする請求項1に記載の温度槽。
【請求項5】
前記補助風向部材が前記主風向部材の両脇にあることを特徴とする請求項4に記載の温度槽。
【請求項6】
前記主風向部材と前記補助風向部材の間で前記第2通風路が構成されていることを特徴とする請求項4に記載の温度槽。
【請求項7】
前記補助風向部材の高さが、前記主風向部材の高さよりも高いことを特徴とする請求項4に記載の温度槽。
【請求項8】
観測窓があることを特徴とする請求項1に記載の温度槽。
【請求項9】
前記温調空間の少なくとも一つのコーナー部が曲面又は傾斜面であることを特徴とする請求項1に記載の温度槽。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の温度槽と、温度調節した気体を供給する気体供給部とを有し、前記気体供給部から前記温度槽に前記気体を供給して、前記温調空間内の環境を調節することが可能であることを特徴とする環境形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験物や被処理物等の供試体を特定の環境下に置くことができる温度槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータや携帯端末、カーナビ装置等の電子機器が広く普及している。これらの電子機器は、高温環境にさらされる場合がある。また逆に低温環境にさらされる場合もある。
そのためこれらの電子機器やその部品等の温度環境に対する影響等を試験する要望がある。
【0003】
これらの用途に使用する温度槽には、大きな容積を有していてその内部全体の温度を一定の温度に調節する全体温調型の装置と、比較的容積の小さい空間に供試体を置き、供試体に直接的にあるいは間接的に送風を当てるスポット型の装置がある。
特許文献1に開示された環境試験装置は、スポット型と言える装置である。
特許文献1に開示された環境試験装置は、電子デバイスの温度環境に対する性能評価を行う環境試験装置であり、回路基板を配置する箱体部を有し、熱交換器で所定の温度に調整されたエアーを箱体内に供給する。
特許文献1に開示された環境試験装置は、X-Yテーブルを有し、回路基板に装着されている半導体装置に対して直接的にエアーを吹き付ける。そして一つの半導体基板に対する試験が終了すると、X-Yテーブルを駆動して回路基板を移動し、他の半導体装置に直接的にエアーを吹き付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スポット型の温度槽は、外形形状が小さいという利点がある。その反面、スポット型の温度槽は、供試体の温度を均一にすることが難しい場合があり、供試体に温度むらができやすいという問題がある。特許文献1に開示された環境試験装置は、供試体に温度むらができることを前提とした発明であると言える。
【0006】
本発明は従来技術の上記した問題に注目し、供試体に温度むらが生じにくい温度槽及び環境形成装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための態様は、対向する第1壁及び第2壁と、前記第1壁と前記第2壁を繋ぐ複数の壁によって囲まれた温調空間を有し、前記温調空間に開口する給気口及び排気口があり、前記温調空間に供試体が設置される設置領域がある温度槽であって 前記複数の壁は、前記給気口が形成された給気壁と、当該給気壁と接続された複数の側面壁と、を含み、前記温調空間内であって前記給気口に対向する位置に、前記給気口を正面視したときに前記給気口の少なくとも一部と重なる主風向部材があり、前記主風向部材と前記第1壁との間及び前記主風向部材と前記第2壁との間の少なくとも一方に第1通風路があり、前記主風向部材の前記側面壁側に第2通風路があり、前記給気口から導入された送風の一部が第1通風路を通過して前記設置領域に流れ、前記給気口から導入された送風の残部の全部又は一部が前記主風向部材により前記第2通風路に導かれて前記設置領域に流れることを特徴とする温度槽である。
【0008】
本態様の温度槽は、温調空間内であって給気口に対向する位置に主風向部材がある。主風向部材は、給気口を正面視したときに給気口の少なくとも一部と重なる。そのため給気口から温調空間に供給された送風の少なくとも一部は主風向部材と衝突して拡散される。
ここで本態様の温度槽では、主風向部材と第1壁との間及び主風向部材と第2壁との間の少なくとも一方に第1通風路がある。そのため送風の一部は、第1通風路に流れ込む。即ち、送風の一部が第1通風路を通過して設置領域に流れる。
また本態様の温度槽は、主風向部材の側面壁側に第2通風路があり、送風の一部が複数の側面壁側に回り込む。
温度槽の温調空間は、第1壁と、第2壁と、給気口が形成された給気壁と、給気壁と接続された複数の側面壁を有している。本態様の温度槽では、給気口から供給された送風が、第1通風路を通って設置領域に流れ、前記送風の一部が第2通風路を経由して複数の側面壁側に流れる。
そのため本態様の温度槽によると、供試体の中央側と周囲側の少なくとも3領域が、通風環境となる。本態様の温度槽によると、供試体が比較的直接的に送風から熱影響を受けるので、供試体に温度むらが生じにくい。
【0009】
上記した態様において、前記主風向部材は、前記給気口を正面視したときに、前記給気口の一部のみと重なることが望ましい。
【0010】
本態様の温度槽では、主風向部材は、前記給気口を正面視したときに、給気口の一部のみと重なる。そのため給気口から供給された送風の一部は主風向部材を通過して直接的に設置領域に流れる。
【0011】
上記した態様において、前記主風向部材は送風を前記第2通風路に導く導風面があることが望ましい。
【0012】
本態様の温度槽では、主風向部材に送風を側面壁側に導く導風面がある。そのため、給気口から温調空間に供給された送風が円滑に側面壁側に流れる。
【0013】
上記した態様において、前記主風向部材の近傍に送風を前記側面壁側に導く補助風向部材があることが望ましい。
【0014】
本態様の温度槽によると、主風向部材と補助風向部材によって、給気口から温調空間に供給された送風を円滑に供試体の周囲に供給することができる。
【0015】
上記した態様において、前記補助風向部材が前記主風向部材の両脇にあることが望ましい。
【0016】
本態様によると、主風向部材とその両脇の補助風向部材によって、給気口から温調空間に供給された送風を円滑に供試体の周囲に供給することができる。
【0017】
上記した態様において、前記主風向部材と前記補助風向部材の間で前記第2通風路が構成されていることが望ましい。
【0018】
本態様によると主風向部材と補助風向部材の間によって構成される第2通風路を送風が通過し、給気口から温調空間に供給された送風が円滑に側面壁側に導かれる。
【0019】
上記した態様において、前記補助風向部材の高さが、前記主風向部材の高さよりも高いことが望ましい。
【0020】
本態様の温度槽では、補助風向部材の高さが、主風向部材の高さよりも高い。そのため主風向部材よりも高い補助風向部材の部分により、主風向部材によって拡散された送風をさらに円滑に供試体の周囲に供給することができる。
【0021】
上記した態様において、観測窓があることが望ましい。
【0022】
本態様の温度槽は、観測窓があるので、供試体の様子を目視で観察したり、供試体の変化を撮影して記録することができる。
【0023】
上記した態様において、前記温調空間の少なくとも一つのコーナー部が曲面又は傾斜面であることが望ましい。
【0024】
本態様の温度槽は、コーナー部が曲面又は傾斜面であるから、送風が円滑に流れ、滞留しにくい。
【0025】
環境形成装置に関する態様は、上記したいずれかの温度槽と、温度調節した気体を供給する気体供給部とを有し、前記気体供給部から前記温度槽に前記気体を供給して、前記温調空間内の環境を調節することが可能であることを特徴とする環境形成装置である。
【0026】
本態様の環境形成装置によると、供試体が比較的直接的に送風から熱影響を受けるので、供試体に温度むらが生じにくい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の温度槽又は環境試験装置を使用すると、供試体に温度むらが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態の環境形成装置の斜視図である。
【
図2】
図1の環境形成装置の温度槽の断面図である。
【
図5】
図2のA-A断面図であり、設置領域側から給気口を正面視したものである。
【
図6】
図2の温度槽の本体部の断面斜視図であって供試体を設置した状態を示す。
【
図7】(a)、(b)は、主風向部材を異なる方向から観察した斜視図である。
【
図8】(a)、(b)は、補助風向部材を異なる方向から観察した斜視図である。
【
図9】(a)乃至(d)は、主風向部材の変形例を示す斜視図である。
【
図10】主風向部材の変形例を示す斜視図であり、(a)は、側面同士の角度をすぼめた状態を示し、(b)は、側面同士の角度を広げた状態を示す。
【
図11】主風向部材の変形例を示す斜視図であり、(a)は、側面を縮めて小さくした状態を示し、(b)は、側面を広げて大きくした状態を示す。
【
図12】本発明の他の実施形態の温度槽の本体部の平面図である。
【
図13】本発明のさらに他の実施形態の温度槽の本体部の平面図である。
【
図14】本発明のさらに他の実施形態の温度槽の本体部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の環境形成装置1は、環境試験装置として使用されるものである。
環境形成装置1は、
図1の様に、空調部(気体供給部)100と、乾燥気体供給手段200と、温度槽2によって構成されている。
空調部(気体供給部)100は、内部に図示しない空調機器が内蔵されており、所望の温度に調整された空気を温度槽2に供給するものである。なお、空調部(気体供給装置)100は温度に加えて湿度を調整するものであってもよい。
本実施形態で採用する空調部100は、空調機器として冷却器と加熱ヒータを備えており、任意の温度に調節された空気を排出することができる。即ち氷点下数十度の低温から摂氏数百度の高温に至るまでの広い温度範囲に調節された空気を温度槽2に供給することができる。
【0030】
乾燥気体供給手段200は、窒素ボンベ201と図示しない減圧弁等によって構成され、露点が低い気体を供給するものである。乾燥気体供給手段200は、空気を原料とし、当該空気の水蒸気含有量を減らす処理をするものであってもよい。
【0031】
次に温度槽2について説明する。
温度槽2の外観は、
図1の様に平面形状が略正方形であり、高さが低い直方体である。温度槽2は、本体部5と蓋体6によって構成されている。
蓋体6は、大きな観測窓8を有する部材である。即ち蓋体6は、平面形状が略正方形であり扁平形状の直方体であって、その主面(最も面積が広い面)に観測窓8が設けられている。観測窓8には、
図2、
図5の様にガラス板25a、25bがはめ込まれている。ガラス板25a、25bは、透明であって耐熱性を有する板である。
ガラス板25a、25bの間には隙間7がある。蓋体6の側面には、前記した隙間7と外部を連通する孔13a、13bが設けられている。
蓋体6は、本体部5の開口を覆うものであり、本実施形態では蓋体6が第1壁18として機能する。
【0032】
本体部5は、断熱材で覆われていて上面が開口する箱状の部材である。
即ち本体部5は、底を覆う第2壁10と、周部を覆う4個の壁11、12、15、16を有している。
本体部5の開口を蓋体6で閉じると、内部に第1壁18たる蓋体6と、第1壁18に対向する第2壁(底壁)10と、前記した第1壁18と第2壁10を繋ぐ4枚の壁11、12、15、16によって囲まれた空間ができる。以下、対向する第1壁18及び第2壁10と、両者を繋ぐ4枚の壁11、12、15、16によって囲まれた空間を、温調空間20と称する。
【0033】
本実施形態では、壁の一つに給気口21が設けられている。以下、給気口21が設けられた壁11を、給気壁11と称する。また給気壁11と対向する壁15に排気口22が設けられている。以下、排気口22が設けられた壁15を排気壁15と称する。
【0034】
壁の名称を書き替えて温度槽2の構成を書き直すと、本実施形態の温度槽2は、対向する第1壁18及び第2壁10と、前記した第1壁18と前記第2壁10を繋ぐ4個の壁11、12、15、16によって囲まれた温調空間20を有している。4個の壁11、12、15、16の一つは、給気口21が形成された給気壁11であり、他の一つの壁15は、排気口22が設けられた排気壁15である。給気口21は、給気壁11から温調空間20側にやや突出している。
【0035】
残る二つの壁12、16は、給気壁11と接続された側面壁12、16である。側面壁12、16の内面側には
図5の様に段部17がある。また側面壁12、16には貫通孔23が設けられている。貫通孔23は、信号線等を通すために設けられている。
本実施形態では、温調空間20のコーナー部が曲面で構成されている。即ち、給気壁11と側面壁12の接続面たる第1コーナー部30と、側面壁12と排気壁15の接続面たる第2コーナー部31と、排気壁15と側面壁16の接続面たる第3コーナー部32と、側面壁16と給気壁11の接続面たる第4コーナー部33は、いずれも円弧面である。
【0036】
本実施形態の温度槽2には、温調空間20内に供試体300を設置する設置領域40がある。本実施形態の温度槽2では、給気壁11と設置領域40の間が風向部材配置領域41となっており、主風向部材45と、補助風向部材46、47が設置されている。
【0037】
本実施形態で採用する主風向部材45及び補助風向部材46、47は、いずれも三角柱形状である。即ち主風向部材45は平面形状が二等辺三角形である。より詳細には主風向部材45の平面形状は、直角二等辺三角形であり、底辺50と、二つの斜辺51を有し、二つの斜辺51は90度の頂角部52で接している。二つの斜辺51を含む三角柱の側面81、82(
図7参照)は、送風を温度槽2の側面壁12,16側に導く導風面となる。
【0038】
以下主風向部材45の形状について説明する。
図7は、主風向部材45単独の斜視図である。主風向部材45は、
図7の様な三角柱であり、頂面48と、底面と、頂面48と底面を繋ぐ3側面80、81、82で囲まれたブロック状の部材である。
主風向部材45の頂面48は、底辺50と、二つの斜辺51を有し、頂面48における二つの斜辺51は90度の頂角部52で接している。
主風向部材45の側面80は、頂面48の底辺50から垂下された面である。主風向部材45の側面81(導風面)は、頂面48の斜辺51から垂下された面である。主風向部材45の側面82(導風面)は、頂面48の他の斜辺51から垂下された面である。
二つの側面(導風面)81、82は、直線85で接続されている。直線85は、頂面48の頂角部52から垂下された直線である。
主風向部材45の頂面48は、平坦面である。
主風向部材45の高さhaは、
図2の様に温調空間20の高さHに比べて相当に低い。
【0039】
補助風向部材46、47の平面形状も二等辺三角形である。
以下、補助風向部材46、47の形状について説明する。
図8は、補助風向部材46、47単独の斜視図である。補助風向部材46、47は、
図8の様な三角柱であり、頂面87と、底面と、頂面87と底面を繋ぐ3側面90、91、92で囲まれたブロック状の部材である。
補助風向部材46、47の頂面87は、底辺53と、二つの斜辺55を有し、頂面87における二つの斜辺55は90度の頂角部56で接している。
補助風向部材46、47の側面90は、頂面87の底辺53から垂下された面である。補助風向部材46、47の側面91は、頂面87の斜辺55から垂下された面である。補助風向部材46、47の側面92は、頂面87の他の斜辺55から垂下された面である。
補助風向部材46、47の頂面87は、平坦面である。
【0040】
主風向部材45と補助風向部材46、47の大きさを比較すると、主風向部材45は、補助風向部材46、47よりも小さい。即ち、主風向部材45の平面面積は、補助風向部材46、47の平面面積に比べて小さい。また主風向部材45の高さhaは、補助風向部材46、47の高さhbよりも低い。
主風向部材45の頂面48と第1壁18の間には、
図2、
図5の様に第1通風路36となる隙間がある。
【0041】
次に、主風向部材45と補助風向部材46、47の配置レイアウトについて説明する。
主風向部材45は、
図3、
図4の様に、給気壁11の給気口21に対向する位置に設置されている。主風向部材45の姿勢は、平面視したときに直角の頂角部52が給気口21側に向き、底辺50が、給気壁11に対して略平行となる姿勢である。即ち、主風向部材45は、側面80が排気壁15と平行に対向し、側面(導風面)81、82が側面壁12、16側に向いている。
主風向部材45の側面壁12、16側は、第2通風路として機能する。後記する様に、主風向部材45の両脇に補助風向部材46、47が配置されているので、本実施形態では実質的に主風向部材45と補助風向部材46、47の間の隙間(第2の隙間)が、第2通風路58a、58bとなる。
【0042】
設置領域40側から給気口21を正面視すると、
図5の様に主風向部材45が給気口21の下半分程度と重なる。左右方向については、給気口21の中心を通過する垂線Y-Yと、主風向部材45の中心線が略一致する。言い換えると、設置領域40側から給気口21を正面視すると、主風向部材45の頂角部52を含む縦の直線85は、給気口21の中心を通過する垂線Y-Yと重なる。
高さ方向に注目すると、主風向部材45の頂面48は、給気口21の最高高さがある位置よりも低いところに位置する。具体的には、主風向部材45の頂面48は、給気口21の中心位置と略等しいところに位置する。
【0043】
二つの補助風向部材46、47は、
図3乃至
図6の様に主風向部材45の両脇に配置されている。補助風向部材46、47の姿勢は、平面視したときに一方の斜辺55が給気壁11の壁際にあり、他方の斜辺55が側面壁12、16のいずれかと距離を開けて略平行に対向している。補助風向部材46、47の底辺53は、それぞれ温度槽2の中心側に向いている。
即ち、補助風向部材46、47は、側面91、92の一方が給気壁11の壁際にあり、側面91、92
の他方が側面壁12、16のいずれかと距離を開けて略平行に対向している。
二つの補助風向部材46、47の側面90は、それぞれ温度槽2の中心側に向いている。
【0044】
主風向部材45と補助風向部材46、47の位置関係を概観すると、平面視したときに、主風向部材45の斜辺51と、補助風向部材46、47の底辺53が間隔を開けて平行に対向している。主風向部材45の斜辺51を含む側面(側面81、82)と、補助風向部材46、47の底辺53を含む側面(側面90)の間には、実質的に第2通風路58a、58bとなる第2の隙間がある。
【0045】
温調空間20内の供試体300を設置する設置領域40には、供試体300を設置する設置板60が設けられている。設置板60には通気孔61が多数設けられている。
本実施形態では、段部17によって設置板60が中空に支持されているが、この構成は必須ではない。例えば、設置板60に脚部を設けて設置板60を中空に支持してもよい。また他の部材を介在させて設置板60を中空に支持してもよい。設置板60を直接、温調空間20の底に置いてもよい。さらに設置板60は無くてもよい。
【0046】
前記した蓋体6は、本体部5の開口部に被せられ、図示しないフック等の一時締結要素によって本体部5に固定される。蓋体6と本体部5の一方には図示しないパッキンがあり、蓋体6は気密性を確保した状態で本体部5に固定される。
【0047】
本実施形態の環境形成装置1は、前記した様に、空調部(気体供給部)100と、乾燥気体供給手段200と、温度槽2によって構成されている。そしてダクトやチューブ101によって、空調部(気体供給部)100と温度槽2の給気口21が配管接続されており、温度調節された空気が、給気口21から温調空間20内に供給される。なお温調空間20には図示しない温度センサーが設置されており、当該温度センサーの検知温度が空調部(気体供給部)100にフィードバックされ、温調空間20内に供給される空気の温度が制御される。温度センサーの位置は限定されるものではなく、空調部(気体供給部)100やダクトやチューブ101内にあってもよい。
ホース又はチューブ202により、乾燥気体供給手段200と蓋体6の孔13aが配管接続されており、蓋体6のガラス板25a、25bの間の隙間7に乾燥した気体が供給される。
【0048】
また供試体300が、温調空間20内の設置領域40に収容される。具体的には、設置領域40に設置された設置板60に供試体300が設置される。
供試体300に通電したり信号の授受を行うことが必要である場合は、蓋体6の側面に設けられた貫通孔23を経由して電力線や信号線が通される。また供試体300にセンサーが取り付けられた場合についても、貫通孔23を経由して信号線が通される。
【0049】
前記した様に、温度調節された空気が給気口21から温調空間20内に供給されるので、温度調節された空気で温調空間20が満たされ、さらに当該空気は、対向する排気壁15に設けられた排気口22から外部に排出される。即ち温調空間20は、温度調節された空気の通風環境となり、当該通風環境下に供試体300が設置されることとなる。
【0050】
次に、温調空間20内における送風の通過経路について
図6を参照しつつ説明する。
温度調節された空気が給気口21から温調空間20内に供給される。給気口21の正面に主風向部材45があり、送風の一部が主風向部材45と衝突して送風の流れが一つの主流Aと二つの支流B、Cに分かれ、最終的に設置領域40に至る。
即ち主流Aは、主風向部材45の頂面48を通過して直接的に設置領域40に至る空気の流れである。本実施形態で採用する主風向部材45は、給気口21と対向する位置にあるがその高さは低く、設置領域40側から給気口21を正面視すると、給気口21の一部が主風向部材45よりも上に露出する。本実施形態では、給気口21の上半分程度が、主風向部材45よりも上に露出している。そのため、給気口21から吹き出された送風の多くは、主風向部材45と衝突することなく直接的に設置領域40に流れ込む。
言い換えると、本実施形態では、主風向部材45の高さhaが第1壁18の高さに至らず、主風向部材45の頂面48と第1壁18の間には、第1通風路36となる隙間があるので、給気口21から吹き出された送風の多くは、第1通風路36を通過して直接的に設置領域40に流れ込む。そのため、給気口21から吹き出された送風の多くは、主風向部材45の頂面48上を通過して直接的に設置領域40に流れ込む。
【0051】
支流B、Cは、第2通風路58a、58bを通って側面壁12、16側に向かい、最終的に設置領域40に至る流れである。
前記した様に、給気口21の正面に主風向部材45があり、送風の一部が主風向部材45と衝突する。ここで主風向部材45は、平面視したときに三角形であり、先端の頂角部52が給気口21側に向いている。即ち、二つの側面(導風面)81、82の接する部分である直線85が、給気口21と対向している。
そのため送風の一部が頂角部52の部分(側面81、82が接する部分たる直線85)と衝突し、頂角部52に続く斜辺51に沿って斜めに方向を変える。即ち、送風の一部が直線85の部分と衝突し、側面(導風面)81、82に沿って斜めに方向を変える。
この様に送風は、主風向部材45の側面81、82によって構成される導風面に沿って流れる。
【0052】
本実施形態の温度槽2では、給気口21から温調空間20に吹き出された送風の一部は主風向部材45を通過して主流Aを構成し、給気口21から横方向に拡散しつつ直接的に供試体300が設置された設置領域40に入り、供試体300の表面を覆う。
一方、給気口21から温調空間20に吹き出された送風の残部の全部又は一部は、主風向部材45の側面81、82に導かれて支流B、Cを構成し、設置領域40の側面壁12、16方向に流れる。そのため供試体300の周囲の環境は、全体的にまんべんなく通風環境となり、供試体300の表面にまんべんなく風が当たる。そのため、供試体300に温度むらが生じにくい。
【0053】
さらに本実施形態では、主風向部材45の両脇に補助風向部材46、47があり、主風向部材45の斜辺51から垂下する側面(導風面)81、82と補助風向部材46、47の底辺53から垂下する側面90の間に、実質的に第2通風路58a、58bを形成する第2の隙間がある。また補助風向部材46、47の高さ(高さ方向の長さ)は、主風向部材45の高さ(高さ方向の長さ)よりも高く、その頂面は第1壁18に近い位置に至っている。そのため送風は側面壁12、16側に過度に広がらない。
給気口21の下半分から供給された送風は、主風向部材45と補助風向部材46、47の間の第2の隙間に入り、過度に拡散することなく側面壁12、16側に向かう。この様に、送風の一部は第2通風路58a、58bを流れて側面壁12、16側に向かう。
また、第2の隙間を流れる送風の一部はその上側に流れる場合もある。本実施形態では、補助風向部材46、47の高さは、主風向部材45の高さよりも高く、第2の隙間(第2通風路58a、58b)の高さよりも高い。そのため、第2の隙間の上側に流れた送風が側面壁側に過度に広がることが防止されている。
なお、補助風向部材46、47の高さは相当に高く、給気口21の最高高さのあるところよりもさらに高い。そのため給気口21から排出された送風は、補助風向部材46、47が障壁となり、第1コーナー部30と第4コーナー部33側に流れにくく、第1コーナー部30と第4コーナー部33で空気が滞留しにくい。
【0054】
また本実施形態で採用する温調空間20は、コーナー部が曲面であるから、コーナー部で空気が滞留しにくく、温調空間20の中が全体的に通風環境となるので、より一層、供試体300に温度むらが生じにくい。
【0055】
また本実施形態の温度槽2は、蓋体6に観測窓8が設けられているので、供試体の様子を目視したり、撮影することができる。また当該観測窓8にはガラス板25a、25bがはめ込まれており、両者の間の隙間7に乾燥した気体が供給される。そのため観測窓8が結露しにくく、曇りにくい。
【0056】
以上説明した実施形態では、主風向部材45と給気口21の位置関係として、設置領域40側から給気口21を正面視したときに、主風向部材45が給気口21の下半分程度と重なることとしたが、重なりの程度は温調空間20の大きさ等によって適宜調節されるべきものである。そのため設置領域40側から給気口21を正面視したときに、主風向部材45が給気口21の全部と重なることとするのが望ましい場合もあり、わずかな部分を重ねることが望ましい場合もある。
【0057】
また主風向部材45と給気口21の左右方向の位置関係については、必ずしも中心が一致しなければならないわけではなく、中心が左右にずれていてもよい。
【0058】
主風向部材45の形状は、上記した実施形態に限定されるものでない。例えば
図9(a)に示す主風向部材70の様に、頂面71が傾斜したものであってもよい。また
図9(b)に示す主風向部材72の様に、角の部分が曲面であってもよい。
図9(c)に示す主風向部材73の様に、頂面75が曲面であってもよい。
また主風向部材の平面形状は、三角形や台形のような斜辺を有するものであることが望ましいが、送風を左右に分離できる他の形状であってもよい。例えば
図9(d)に示す主風向部材76の様に、平面形状が半円状であってもよい。この場合、平面視したときの円弧57から垂下される側面86が導風面となる。
側面等の関係は、前記した主風向部材45の相当する番号を付することによって詳細な説明を省略する。
補助風向部材46、47についても同様であり、一部が傾斜していたり、曲面であったり、平面形状が半円の様な三角形以外の形であってもよい。
【0059】
本実施形態で例示した主風向部材45等や、補助風向部材46、47等は、中実状のブロックであることが望ましいが、中空形状のものであってもよい。さらに主風向部材45等や、補助風向部材46、47等は板状のものであってもよい。
主風向部材や補助風向部材の平面形状が三角形の場合、直角二等辺三角形でなくてもよい。各部の角度は任意である。
【0060】
また上記した実施形態では、主風向部材45が補助風向部材46、47よりも小さいが、両者の大小関係についても限定されるものではなく。
図12に示す様に、風向部材45が補助風向部材46、47よりも大きくてもよい。
主風向部材45と補助風向部材46、47の位置関係について、給気口21から排気口22への空気の流れ方向の関係において、いずれの先端が排気口22側に位置しているかは限定されるものではなく、両者の先端が面一でもよい。
本実施形態では主風向部材45のいくつかの面と補助風向部材46、47のいくつかの面が平行であるが、そうでなくてもよい。主風向部材45の斜辺51と補助風向部材46、47の底辺53は平行でなくてもよい。即ち、第2の隙間の間隔が一定でなくてもよい。
補助風向部材46、47は、側面壁12、16と接していてもよい。
【0061】
主風向部材45や補助風向部材46、47の候補として、各種の大きさや形状のものを予め用意しておき、供試体300の形状等に応じて主風向部材45や補助風向部材46、47を置き換えることも推奨される。また、主風向部材45や補助風向部材46、47の角度が任意に変えられるように構成してもよい。
例えば
図10に示す主風向部材42の様に、二枚の板38を蝶番37で接続し、側面81と側面82の角度を任意に変更できる構造のものが考えられる。なお、補助風向部材にも
図10と同様の構造を採用することができる。
一枚の金属板や樹脂板を折り曲げて塑性変形させることにより、二つの側面を構成してもよい。この構造の主風向部材や補助風向部材も、二つの側面の角度を任意に変更することができる。
【0062】
主風向部材や補助風向部材の一例として、その大きさを変更できる構造のものが考えられる。
例えば
図11に示す主風向部材83は、二枚の板状部材85が一定の角度で接続されたものである。板状部材85は、ケース部材67と中板部材68によって構成されている。 ケース部材67は、中空であって一方の側面が開放されている。中板部材68は、ケース部材67の中に出没可能に収容されている。
図11(a)の様に、中板部材68がケース部材67の中に収容されている状態の場合は、主風向部材83の側面81、82は小さい。一方、
図11(b)の様に、中板部材68がケース部材67から引き出されると、主風向部材83の側面81、82が広がる。なお、補助風向部材にも
図11と同様の構造を採用することができる。
【0063】
以上説明した実施形態では、蓋体6を第1壁18とし、底を第2壁10としたが、第1壁と、第2壁の区別は、便宜的なものであり、いずれが第1壁であってもよく、いずれが第2壁であってもよい。また上記した実施形態では、第1壁18と主風向部材45の間に第1通風路36となる第1の隙間があるが、第1壁18と第2壁10の双方と主風向部材45の間に第1通風路36となる第1の隙間があってもよい。また第2壁10と主風向部材45の間に第1通風路36となる第1の隙間があってもよい。
【0064】
以上説明した実施形態では、主風向部材45の脇に補助風向部材46、47を設け、主風向部材45と補助風向部材46、47に送風を通過させたが、主風向部材45だけであっても給気口21から供給された送風を複数の流れに分岐することができる。従って、補助風向部材46、47は必ずしも必要ではない。補助風向部材46、47を持たない構造の場合、主風向部材45の側面(導風面)81、82と本体部5の側面壁12、16との間が第2通風路として機能する。
【0065】
以上説明した実施形態では、温調空間20の全てのコーナー部を円弧にしたが、円弧に代わって斜面にしても同様の効果が期待できる。また全てのコーナー部でなく一部のコーナー部だけを円弧状や斜面にしてもよい。例えば、給気口21から遠い位置にある第2コーナー部31や第3コーナー部32を円弧形状や傾斜形状としてもよい。もちろん全てのコーナー部が直角であってもよい。例えば
図13に示す温度槽93の様に、第1コーナー部30や第4コーナー部33に大きな傾斜をつけて補助風向部材に代えることも可能である。本実施形態では、主風向部材45と第1コーナー部30の間と主風向部材45と第4コーナー部33の間が第2の隙間であり、第2通風路63a、63bである。
【0066】
以上説明した実施形態では、供試体300と排気壁15の間に障害物はないが、供試体300と排気壁15の間に何らかの障害物があってもよい。
例えば
図14に示す温度槽95では、温調空間20の中央よりも排気壁15寄りの位置に風受け部材97が設置されている。温度槽95では、排気口22が設けられた排気壁15と給気壁11は対向している。温度槽95で採用する主風向部材96は、板状である。
風受け部材97は、給気口21側に向かって開く凹状の縦壁であり、中央に開口98が設けられている。風受け部材97は供試体300の排気壁15側の全域と、側面壁12、16側の一部を覆うものである。
風受け部材97は供試体300の大きさに応じて伸縮することができるものであることが望ましい。あるいは供試体300の大きさに応じて取り換えたり、組み替えることができるものであることが望ましい。
本実施形態の風受け部材97は、排気壁15に対向する本体部65と、側面壁12、16に対向する袖部66を有した「凹」状であるが、その平面形状が円弧状であってもよく、「L」状であってもよく、三角状であってもよい。
【0067】
本実施形態の温度槽95は、温調空間20の排気壁15寄りの位置に、送風が当たる風受け部材97が設けられている。そのため、送風が排気口22へ直接排気されにくい。そのため、供試体300が小さい場合であっても、供試体300に温度むらが生じにくい。
【0068】
給気口21の位置は給気壁11の中央に限定されるものではなく、偏った位置にあってもよい。排気口22は給気口21に対向した面になくともよい
【符号の説明】
【0069】
1 環境形成装置
2、93、95 温度槽
5 本体部
8 観測窓
10 第2壁(底壁)
11 給気壁
12、16 側面壁
15 排気壁
18 第1壁
20 温調空間
21 給気口
22 排気口
30 第1コーナー部
31 第2コーナー部
32 第3コーナー部
33 第4コーナー部
40 設置領域
41 風向部材配置領域
45 主風向部材
46、47 補助風向部材
51 第1通風路
58a、58b、63a、63b 第2通風路
42、45、70、72、73、76、83、96 主風向部材
81 側面(導風面)
300 供試体
ha 高さ(主風向部材)
hb 高さ(補助風向部材)