(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119509
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】タイヤ外観検査方法及びタイヤ外観検査装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/30 20060101AFI20240827BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240827BHJP
G01N 21/95 20060101ALI20240827BHJP
G01M 17/02 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
G01B11/30 A
G01B11/24 A
G01N21/95 Z
G01M17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026472
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】藤原 和也
(72)【発明者】
【氏名】平林 弘和
(72)【発明者】
【氏名】中川 剛基
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
【Fターム(参考)】
2F065AA49
2F065CC13
2F065FF11
2F065GG04
2F065HH05
2F065MM04
2F065PP13
2F065PP22
2F065QQ01
2F065QQ03
2F065QQ17
2F065QQ24
2G051AA90
2G051AB07
2G051CA04
2G051CB01
2G051EA17
(57)【要約】
【課題】タイヤの外観を精度よく検査する方法を提供する。
【解決手段】タイヤ外観検査方法は、基準位置からタイヤの外面までの第1方向の距離を測定することにより、外面の3次元形状である第1データーを取得する第1工程S1と、第1データーを第1方向で複数領域に分割して、複数に分割された第2データーを取得する第2工程S2と、それぞれの領域毎に、第2データーを第1方向の成分が強調されるように変形した第3データーを作成する第3工程S3と、第3データーを用いて外観を評価する第4工程S4とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの外観を検査する方法であって、
基準位置から前記タイヤの外面までの第1方向の距離を測定することにより、前記外面の3次元形状である第1データーを取得する第1工程と、
前記第1データーを前記第1方向で複数領域に分割して、複数に分割された第2データーを作成する第2工程と、
それぞれの領域毎に、前記第2データーを前記第1方向の成分が強調されるように変形した第3データーを作成する第3工程と、
前記第3データーを用いて前記外観を評価する第4工程とを含む、
タイヤ外観検査方法。
【請求項2】
前記第4工程は、前記それぞれの領域毎に、前記3次元形状の前記第1方向の成分が、濃淡で描かれた画像を作成する工程を含む、請求項1に記載のタイヤ外観検査方法。
【請求項3】
前記第4工程は、前記それぞれの領域毎に、異なる色彩で描かれた前記画像を作成する工程を含む、請求項2に記載のタイヤ外観検査方法。
【請求項4】
前記第1工程は、前記外面に向けてレーザー光を照射する工程を含み、前記第1方向は、前記レーザー光の光軸方向である、請求項1に記載のタイヤ外観検査方法。
【請求項5】
前記第1工程は、前記3次元形状を平面状に展開する工程を含む、請求項1に記載のタイヤ外観検査方法。
【請求項6】
前記外面は、前記タイヤのトレッド部を含み、
前記複数領域は、前記トレッド部の踏面を含む領域と、前記トレッド部に形成された最も深い溝底を含む、請求項1に記載のタイヤ外観検査方法。
【請求項7】
前記外面は、前記タイヤのトレッド部のタイヤ軸方向の両端に連なる一対のサイドウォール部を含み、
前記複数領域は、前記サイドウォール部の厚さ方向の外側に隆起する文字、記号又は図形からなる凸状標章が形成された領域を含む、請求項1に記載のタイヤ外観検査方法。
【請求項8】
前記外面の2次元画像を撮像する工程をさらに含む、請求項1に記載のタイヤ外観検査方法。
【請求項9】
タイヤの外観を検査する装置であって、
基準位置から前記タイヤの外面までの第1方向の距離を測定することにより、前記外面の3次元形状である第1データーを取得するレーザー変位計と、
前記第1データーを前記第1方向で複数領域に分割して、複数に分割された第2データーを作成するデーター分割部と、
それぞれの領域毎に、前記第2データーを前記第1方向の成分が強調されるように変形した第3データーを作成するデーター強調部と、
前記第3データーを用いて前記外観を評価する評価部とを含む、
タイヤ外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの外観を検査する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種のアルゴリズムを用いて、タイヤの外観を検査する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タイヤは、ほぼ黒一色で微妙な光沢を有する製品の特長上、通常の画像処理手法では、適切な検査が困難な場合もあり、さらなる改良が望まれている。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、タイヤの外観を精度よく検査する方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤの外観を検査する方法であって、
基準位置から前記タイヤの外面までの第1方向の距離を測定することにより、前記外面の3次元形状である第1データーを取得する第1工程と、
前記第1データーを第1方向で複数領域に分割して、複数に分割された第2データーを取得する第2工程と、
それぞれの領域毎に、前記第2データーを前記第1方向の成分が強調されるように変形した第3データーを作成する第3工程と、
前記第3データーを用いて前記外観を評価する第4工程とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ外観検査方法は、それぞれの領域に分割した前記第2データーを前記第1方向の前記成分が強調されるように変形した前記第3データーを用いて前記外観を評価する。従って、前記タイヤの前記外観を精度よく検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のタイヤ外観検査方法の一実施形態の手順を示すフローチャートである。
【
図2】
図1のタイヤ外観検査方法の実施の要領を示す斜視図である。
【
図3】
図2のトレッド部の外面の第1データーを示す斜視図である。
【
図4】
図3の第1データーの一部を拡大して示す図である。
【
図5】
図4の第1データーから分割された第2データーの一部を示す図である。
【
図6】
図5の第2データーから第1方向の成分が拡大された第3データーを示す図である。
【
図7】踏面を含む最外領域の第1方向の成分を濃淡で描いた画像を示す図である。
【
図8】横溝の溝底を含む中間領域の第1方向の成分を濃淡で描いた画像を示す図である。
【
図9】周方向溝の溝底を含む最内領域の第1方向の成分を濃淡で描いた画像を示す図である。
【
図10】
図7ないし
図9の濃淡を異なる色彩で描かれた集約画像を示す図である。
【
図11】
図1のタイヤ外観検査方法に用いられるタイヤ外観検査装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図12】
図11のタイヤ外観検査装置の機能を示すブロック図である。
【
図14】平面状に展開されたトレッド部の外面の第1データーを示す斜視図である。
【
図15】
図2のサイドウォール部の外面の第1データーを示す斜視図である。
【
図16】平面状に展開されたサイドウォール部の外面の第1データーを示す斜視図である。
【
図17】
図1のタイヤ外観検査方法の変形例の手順を示すフローチャートである。
【
図18】
図17のタイヤ外観検査方法に用いられるタイヤ外観検査装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図19】
図18のタイヤ外観検査装置によって撮像された2次元画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ外観検査方法100の各工程の流れを示している。
図2は、タイヤ外観検査方法100の実施の要領を示している。
【0010】
タイヤ外観検査方法100は、タイヤTの外面の3次元形状である第1データーを取得する第1工程S1と、第1データーを第1方向Dr1(
図2参照)で複数領域に分割して第2データーを作成する第2工程S2と、第2データーを変形した第3データーを作成する第3工程S3と、第3データーを用いて外観を評価する第4工程S4とを含んでいる。
【0011】
タイヤTは、トレッド部2と、トレッド部2のタイヤ軸方向の両端に連なる一対のサイドウォール部3とを含んでいる。タイヤTの外面には、トレッド部2の外面及びサイドウォール部3の外面が含まれる。
図2では、第1データーとしてトレッド部2の外面の3次元形状を取得する要領が示される。
【0012】
図2に示されるように、第1工程S1では、基準位置SからタイヤTの外面までの第1方向Dr1の距離Ds1、Ds2、Ds3...Dsnが測定される。本実施形態の基準位置Sは、タイヤTのトレッド部2に正対し、タイヤ軸方向にのびる線分によって定義される。
【0013】
タイヤTをタイヤ軸の廻りに回転させながら、基準位置S上の任意の点S1、S2、S3...Snからの距離Ds1、Ds2、Ds3...Dsnが測定されることにより、タイヤTの外面の3次元形状である第1データーが取得される。このように取得された、3次元形状を示す第1データーには、前記第1方向Dr1、タイヤ軸方向Dr2及びタイヤ周方向Dr3の成分が含まれ、第1データーは、タイヤ周方向Dr3を
図3の奥行き方向として直線状に展開される。
【0014】
図3は、トレッド部2の外面の第1データーDt1を示している。同図では、第1データーDt1を視覚的に容易に認識できるよう、トレッド部2の外面が基準位置Sからの距離Dsnに応じて、色付けられている。
【0015】
第2工程S2では、第1データーDt1を第1方向Dr1で複数領域に分割することにより、複数に分割された第2データーが作成される。
【0016】
図4は、第1データーDt1の一部(同図では、周方向溝4及び横溝5を含むトレッド部2の断面)を示している。
図5は、第1データーDt1の当該部分から分割された第2データーDt21~Dt23の一部を示している。本実施形態の第2データーDt21~Dt23は、第1データーDt1を3分割することにより作成される。
【0017】
第1方向Dr1に隣り合う第2データーDt21、Dt22及び第2データーDt22、Dt23は、互いに重複する領域を有していてもよく、突き合わせた状態で連続的であってもよく、離散的に離れていてもよい(
図5では、離散的に分割された第2データーDt21~Dt23の例が示されている)。なお、第2データーDt21~Dt2nの分割数nは、タイヤTの外面の複雑さに応じて設定される。
【0018】
ところで、タイヤTの外観不良Xの一例として、加硫金型の成形面に付着した異物の痕跡や局所的なゴムの流れ不良等が挙げられる。このような外観不良Xは、タイヤTの外面の中でも特定の領域(例えば、トレッド部2の踏面20、溝底40、50等)に発生しがちである。従って、第2データーDt21~Dt2nを上記特定の領域を含むように設定することにより、外観不良が発生しがちな領域を重点的に検査することが可能となる。
【0019】
本実施形態では、第2データーDt21は、踏面20を含む第1方向Dr1の距離が最小領域の3次元形状を示すデーターである。第2データーDt22は、周方向溝4の溝底40を含む第1方向Dr1の距離が中間領域の3次元形状を示すデーターである。第2データーDt23は、横溝5の溝底50を含む第1方向Dr1の距離が最大領域の3次元形状を示すデーターである。このような第2データーDt21~Dt23によって、踏面20、溝底40、50での外観不良を重点的に検査することが可能となる。
【0020】
第3工程S3では、それぞれの領域毎に、第2データーDt21~Dt2nを第1方向Dr1の成分が強調されるように変形することにより、第3データーDt31~Dt3nが作成される(後述する
図6参照)。
【0021】
図4、5に示されるように、上記タイヤTの外観不良Xは、溝深さ等に対して厚さ方向すなわち第1方向Dr1の変位が小さく、第1データーDt1から直接検出することは困難を伴う。例えば、踏面20から最も深い周方向溝4の溝底40に亘って、第1方向Dr1の距離を単色のグラデーション画像で表示したとき、踏面20及び外観不良Xは、共に淡色となり区別が付きにくく、外観不良Xの検出が困難となる。
【0022】
一方、本実施形態では、第1データーDt1を複数の第2データーDt21~Dt2nに分割し、その第1方向Dr1の成分が強調された第3データーDt31~Dt3nが作成される。以下、本実施形態でタイヤ外観検査に用いられる第3データーDt31~Dt3nについて説明する。
【0023】
図6は、第1方向Drの成分が拡大された第3データーDt31~Dt3nを示している。第3データーDt31~Dt3nにおいて、外観不良箇所の第1方向Dr1の成分が拡大されることにより、外観不良箇所とその周辺領域との高低差が明確となり、外観不良Xの検出が容易となる。
【0024】
第4工程S4では、第1方向Dr1の成分が強調された第3データーDt31~Dt3nを用いてタイヤTの外観が評価される。これにより、タイヤTの外観の異常が検出されやすくなり、タイヤTの外観を精度よく検査することが可能となる。
【0025】
第4工程S4では、作業者の目視による手法の他、例えば、第3データーDt31~Dt3nにおいて、第1方向Dr1の成分の第2方向Dr2及び第3方向Dr3への連続性を解析することにより、タイヤTの外観が評価される。第1方向Dr1の成分が第2方向Dr2及び第3方向Dr3において不連続となっている箇所は、外観不良Xが生じているものと判定できる。本実施形態のタイヤ外観検査方法100では、第3データーDt31~Dt3nにおいて第1方向Dr1の成分が強調されているため、外観不良Xの検出は容易になされる。
【0026】
図6に示されるように、それぞれの領域の第3データーDt31~Dt3nは、第1方向Dr1の成分を、濃淡で描くことができる。すなわち、第4工程S4は、それぞれの領域毎に、3次元形状の第1方向Dr1の成分が、濃淡で描かれた画像を作成する工程を含むことができる。
【0027】
図7ないし9は、各領域の第3データーDt31~Dt33毎に、第1方向Dr1の成分を濃淡で描いた画像を示している。このうち、
図7は、踏面20を含む第1方向Dr1の距離が最小領域の第3データーDt31の画像G1である。
図8は、横溝5の溝底50を含む第1方向Dr1の距離が中間領域の第3データーDt32の画像G2である。
図9は、周方向溝4の溝底40を含む第1方向Dr1の距離が最大領域の第3データーDt33の画像G3である。
【0028】
各画像G1、G2及びG3において、外観不良Xは、その周辺領域との濃淡差が明確となり(すなわち、外観不良Xの濃淡が強調して描かれ)、外観不良Xの検出が容易となる。
【0029】
図7ないし9の画像G1乃至G3は、それぞれを異なる色彩で描くことにより、複数の第3データーDt31~Dt3nを一つの画像に集約することができる。すなわち、第4工程S4は、それぞれの領域毎に、異なる色彩で描かれた画像を作成する工程を含むことができる。
【0030】
図10は、画像G1ないし画像G3を一つに集約した画像G10を示している。画像G10では、第3データーDt31の画像G1の領域が赤色Rで、第3データーDt32の画像G2の領域が青色Bで、第3データーDt33の画像G3の領域が緑色Gで描かれている。画像G10では、各領域の濃淡が異なる色彩で一つの画像に集約されるため、各領域に存在する外観不良Xの有無が一目で確認できるようになる。
【0031】
図11は、タイヤ外観検査方法100を実施するための装置の一例であるタイヤ外観検査装置200を示している。タイヤ外観検査装置200は、タイヤTの外面に向けてレーザー光Lを照射し、その反射光を受光するレーザー変位計10と、レーザー変位計10の制御及びレーザー変位計10から入力された信号に基づいて各種の演算処理を行なう制御部11とを有している。
【0032】
レーザー変位計10は、レーザー光Lの反射光から、基準位置S(
図2参照)からタイヤTの外面までの第1方向Dr1の距離Dsを測定する。これにより、タイヤTの外面の3次元形状である第1データーDt1が取得される。レーザー変位計10と制御部11とは、有線または無線によって接続されている。
【0033】
第1工程S1では、レーザー変位計10を用いて、第1データーDt1が取得される。すなわち、第1工程S1は、タイヤTの外面に向けてレーザー光Lを照射する工程を含む。そして、第1方向Dr1は、レーザー光Lの光軸方向である。
【0034】
レーザー変位計10によって取得された第1データーDt1は、制御部11に入力される。制御部11は、例えば、各種の演算処理、情報処理等を実行するCPU(Central Processing Unit)と、CPUの動作を司るプログラム及び各種の情報を記憶するメモリ等とを有している。制御部11の各種の機能は、CPU、メモリ及びプログラムによって実現される。より具体的には、第2工程S2ないし第4工程S4の処理は、制御部11にて実行される。
【0035】
図12は、タイヤ外観検査装置200のブロック図を示している。タイヤ外観検査装置200は、第2工程S2を実行するデーター分割部11aと、第3工程S3を実行するデーター強調部11bと、第4工程S4を実行する評価部11cとを含んでいる。データー分割部11a、データー強調部11b及び評価部11cは、制御部11が上記プログラムを実行することにより実現される。
【0036】
本実施形態のタイヤ外観検査装置200において、レーザー変位計10は、トレッド部2の外面の3次元形状である第1データーDt1を取得するためのレーザー変位計12を含んでいる。レーザー変位計12は、トレッド部2に正対するように、タイヤTのタイヤ半径方向の外側に所定の距離を隔てて配されている。
【0037】
レーザー変位計12によって測定されたトレッド部2の外面の第1データーDt1は、
図3の第1データーDt1と同様である。第1工程S1でレーザー変位計12によって第1データーDt1が取得される場合、それ以降の工程において、第1方向Dr1は、タイヤ半径方向で近似されていてもよい。
【0038】
第1工程S1でレーザー変位計12によって第1データーDt1が取得される場合、複数の第2データーの領域は、トレッド部2の踏面20を含むタイヤ半径方向の最外領域と、トレッド部2に形成された最も深い溝底(
図4では周方向溝4の溝底40)を含むタイヤ半径方向の最内領域とを含む、のが望ましい。
【0039】
第1工程S1は、トレッド部2の外面の3次元形状を平面状に展開する工程とを含む、のが望ましい。トレッド部2の外面の3次元形状を平面状に展開する際には、タイヤTの基準断面形状が用いられる。
【0040】
図13は、タイヤTの基準断面形状Pを示している。「タイヤTの基準断面形状」とは、タイヤTの子午断面から同図において破線で示されるトレッド部2及びサイドウォール部3に形成された各種の溝及びスピュー、凸状模様等の詳細な凹凸を除いた断面形状であり、タイヤTの外面の大部分を構成する基準となるプロファイル(輪郭)を意図している。タイヤTの基準断面形状は、例えば、タイヤTを加硫成形するための加硫金型の設計図面に基づいて取得される。また、タイヤTの基準断面形状は、レーザー変位計10によって測定された3次元形状から各種の溝及びスピュー、凸状模様等の詳細な凹凸を除去することにより、取得されてもよい。後者の場合は、同一の加硫金型で加硫成形された複数のタイヤTの中であっても、個々のタイヤT毎に基準断面形状Pが異なっていてもよい。
【0041】
図14は、第1データーDt1の変形例である第1データーDt1zである。第1データーDt1zは、
図3に示されたトレッド部2の第1データーDt1が平面状に展開、すなわち、平滑化されたデーターである。
【0042】
第1データーDt1zは、第1方向の成分で、第1データーDt1とトレッド部2の基準断面形状Pとの差分をとることにより展開されたデーターとして取得される。すなわち、第1工程S1は、第1データーDt1を展開し、第1データーDt1zを取得する工程を含む。第1データーDt1zを用いる場合であっても、第2工程S2以降の手順は、第1データーDt1を用いる場合と同様である。
【0043】
平面状に展開された第1データーDt1zによって、タイヤTのタイヤ赤道近傍とショルダー部とのタイヤ半径の差が是正され、適切な第2データーDt21~Dt23が作成される。なお、当該第1工程S1において平滑化されるのは、
図2において実線で示されるタイヤ固有の基準となるプロファイルに係る成分のみである。従って、タイヤTの外観不良Xに係る詳細に凹凸は、第1工程S1の後にも残存し、第3工程S3で強調処理される。
【0044】
図11に示されるように、レーザー変位計10は、サイドウォール部3の外面の3次元形状である第1データーDt1を取得するための一対のレーザー変位計13を含んでいてもよい。一対のレーザー変位計13は、一対のサイドウォール部3に正対するように、タイヤTのタイヤ軸方向の両側に配されている。第1工程S1でレーザー変位計13によって第1データーDt1が取得される場合、それ以降の第1方向Dr1は、タイヤ軸方向で近似されていてもよい(
図15参照)。
【0045】
図15は、レーザー変位計13によって測定された一方のサイドウォール部3の外面の第1データーDt1を示している。
【0046】
第1工程S1でレーザー変位計13によって第1データーDt1が取得される場合、複数の第2データーDt2の領域は、サイドウォール部3の厚さ方向の外側に隆起する文字、記号又は図形からなる凸状標章31(例えば、
図13参照)が形成された領域を含む、のが望ましい。また、複数の第2データーDt2の領域は、さらに上述した基準断面形状を構成する外面を含む、のが望ましい。
【0047】
図16は、サイドウォール部3の第1データーDt1の変形例である第1データーDt1zである。第1データーDt1zは、
図15に示されたサイドウォール部3の第1データーDt1が平面状に展開されたデーターである。第1データーDt1zは、第1データーDt1とサイドウォール部3の基準断面形状Pとの差分をとることにより展開されたデーターとして取得される。
【0048】
平面状に展開された第1データーDt1によって、タイヤTの最大幅部近傍とバットレス部及びビード部とのタイヤ軸方向の長さの差が是正され、適切な第2データーDt2が作成される。
【0049】
図17は、
図1のタイヤ外観検査方法100の変形例であるタイヤ外観検査方法100Aの手順を示すフローチャートである。
図18は、
図11のタイヤ外観検査装置200の変形例であるタイヤ外観検査装置200Aの構成を示している。タイヤ外観検査方法100A及びタイヤ外観検査装置200Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述したタイヤ外観検査方法100及びタイヤ外観検査装置200の構成が採用されうる。
【0050】
タイヤ外観検査方法100Aでは、第3工程S3の後、タイヤTの外面の2次元画像を撮像する工程S3.5をさらに含んでいる。タイヤTの外面の2次元画像は、タイヤ外観検査装置200Aにおいて、2次元カメラ15によって撮像される。
【0051】
タイヤ外観検査装置200Aは、複数の2次元カメラ15を有している。本実施形態では、2次元カメラ15は、トレッド部2を撮像する2次元カメラ16と、一対のサイドウォール部3を撮像する一対の2次元カメラ17とを含んでいる。2次元カメラ16によって、トレッド部2の外面の2次元画像が取得される。2次元カメラ17によって、サイドウォール部3の外面の2次元画像が取得される。各2次元カメラ15には、被写体であるタイヤTに照明光を照射する照射部が必要に応じて併用されていてもよい。
【0052】
各2次元カメラ15は、カラー画像を撮像する形態が望ましい。これにより、タイヤTの外観不良Xの検出に2次元画像に含まれる色情報を用いることができ、検出精度を高めることが可能となる。
【0053】
各2次元カメラ15は、有線または無線にて制御部11と接続されている。そして、各2次元カメラ15によって撮像された2次元画像は、第4データーとして制御部11に入力される。
【0054】
図19は、2次元カメラ16によって撮像された2次元画像G20を示している。2次元画像G20は、第4データーDt4として制御部11に入力される。なお、本2次元画像G20の撮像用に提供されたタイヤTは、評価用として準備されたものであり、より具体的には、トレッド部2の外面に故意的に多数の外観不良Xnを施したものである。
【0055】
図20は、第1工程S1ないし第3工程S3を経て作成された第3データーDt31、Dt32及びDt33の画像G10を示している。なお、
図19の2次元画像G20と
図20の画像G10とは、同一の評価用タイヤTのトレッド部2の同一領域の画像を示している。
【0056】
第4工程S4では、制御部11が第3データーDt31、Dt32及びDt33の画像G10と、第4データーDt4の2次元画像G20とを用いて、タイヤTの外観を評価する。
【0057】
図19に示されるように、タイヤTの外面の大部分は黒色であるため、2次元画像G20は表面の損傷等の凹凸X1の発見には適していない。一方、
図20に示されるように、3次元データーから加工された画像G10では、微小な凹凸X1が増幅されて表示されるため、その発見は容易となる。
【0058】
また、
図20に示されるように、3次元データーから加工された画像G10は、トレッド部2の外面に施された識別用の色線や文字等の不良X2、ジョイント不良(図示せず)、さらには表面に付着した黒色以外の薄膜状の異物X3の発見には適していない。また、複雑なトレッドパターンを有するトレッド部2では、レーザー変位計10の死角に存在する不良(図示せず)を検出できない。一方、
図19に示されるように、2次元画像G20では、色線等の不良X2、黒色以外の薄膜状の異物X3の発見は容易となる。
【0059】
タイヤ外観検査方法100Aでは、第4工程S4において第3データーDt31、Dt32及びDt33の画像G10と、第4データーDt4の2次元画像G20とを用いて、タイヤTの外観を評価するので、両者の欠点が互いに補われ、タイヤTの外観をより一層精度よく検査することが可能となる。
【0060】
以上、本発明のタイヤ1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【0061】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0062】
[本発明1]
タイヤの外観を検査する方法であって、
基準位置から前記タイヤの外面までの第1方向の距離を測定することにより、前記外面の3次元形状である第1データーを取得する第1工程と、
前記第1データーを前記第1方向で複数領域に分割して、複数に分割された第2データーを作成する第2工程と、
それぞれの領域毎に、前記第2データーを前記第1方向の成分が強調されるように変形した第3データーを作成する第3工程と、
前記第3データーを用いて前記外観を評価する第4工程とを含む、
タイヤ外観検査方法。
[本発明2]
前記第4工程は、前記それぞれの領域毎に、前記3次元形状の前記第1方向の成分が、濃淡で描かれた画像を作成する工程を含む、本発明1に記載のタイヤ外観検査方法。
[本発明3]
前記第4工程は、前記それぞれの領域毎に、異なる色彩で描かれた前記画像を作成する工程を含む、本発明2に記載のタイヤ外観検査方法。
[本発明4]
前記第1工程は、前記外面に向けてレーザー光を照射する工程を含み、前記第1方向は、前記レーザー光の光軸方向である、本発明1ないし3に記載のタイヤ外観検査方法。
[本発明5]
前記第1工程は、前記3次元形状を平面状に展開する工程を含む、本発明1ないし4に記載のタイヤ外観検査方法。
[本発明6]
前記外面は、前記タイヤのトレッド部を含み、
前記複数領域は、前記トレッド部の踏面を含む領域と、前記トレッド部に形成された最も深い溝底を含む、本発明1ないし5に記載のタイヤ外観検査方法。
[本発明7]
前記外面は、前記タイヤのトレッド部のタイヤ軸方向の両端に連なる一対のサイドウォール部を含み、
前記複数領域は、前記サイドウォール部の厚さ方向の外側に隆起する文字、記号又は図形からなる凸状標章が形成された領域を含む、本発明1ないし6に記載のタイヤ外観検査方法。
[本発明8]
前記外面の2次元画像を撮像する工程をさらに含む、本発明1ないし7に記載のタイヤ外観検査方法。
[本発明9]
タイヤの外観を検査する装置であって、
基準位置から前記タイヤの外面までの第1方向の距離を測定することにより、前記外面の3次元形状である第1データーを取得するレーザー変位計と、
前記第1データーを前記第1方向で複数領域に分割して、複数に分割された第2データーを作成するデーター分割部と、
それぞれの領域毎に、前記第2データーを前記第1方向の成分が強調されるように変形した第3データーを作成するデーター強調部と、
前記第3データーを用いて前記外観を評価する評価部とを含む、
タイヤ外観検査装置。
【符号の説明】
【0063】
1 :タイヤ
2 :トレッド部
3 :サイドウォール部
20 :踏面
31 :凸状標章
40 :溝底
50 :溝底
100 :タイヤ外観検査方法
100A :タイヤ外観検査方法
200 :タイヤ外観検査装置
200A :タイヤ外観検査装置
Dr1 :第1方向
Dr2 :タイヤ軸方向
Dsn :距離
Dt1 :第1データー
Dt2n :第2データー
Dt3n :第3データー
G1 :画像
G10 :画像
G2 :画像
G20 :2次元画像
G3 :画像
L :レーザー光
S :基準位置
S1 :第1工程
S2 :第2工程
S3 :第3工程
S4 :第4工程
T :タイヤ