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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119513
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
H01L23/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026478
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】高千穂 慧
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BC01
5F136BC03
5F136EA44
5F136EA66
(57)【要約】
【課題】チップ部品と主回路基板との接触が抑制された電子制御装置を提供すること。
【解決手段】電子制御装置101は、一面S1と反対面S2とを有したMCM基板11と、一面に実装された発熱部品12と、反対面に実装された裏面チップ13とを備えたMCM10を備えている。電子制御装置は、反対面と対向した状態で実装されたマザー基板20と、MCMとマザー基板とを収容する筐体30とを備えている。電子制御装置は、発熱部品と筐体とに接する柔軟性を有した放熱ゲル40と、反対面とマザー基板との間に設けられ、放熱ゲルの熱膨張によりMCMにかかる応力に対して反発する作用部材50を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面(S1)と前記一面の反対面(S2)とを有した配線基板(11)と、前記一面に実装された少なくとも一つの発熱部品(12)と、前記反対面に実装された少なくとも一つのチップ部品(13)とを備えた回路基板(10)と、
前記反対面と対向し、前記回路基板が電気的に接続された状態で実装された主回路基板(20)と、
前記回路基板と前記主回路基板とを収容する筐体(30)と、
前記発熱部品と、前記筐体における前記発熱部品と対向する対向部とに接する柔軟性を有した熱伝導材(40)と、
前記反対面と前記主回路基板との間に設けられ、前記熱伝導材の熱膨張により前記回路基板にかかる応力に対して反発する作用部材(50)を備えている電子制御装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記対向部として、前記対向部の周辺よりも突出した突出部(31)が設けられている請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記作用部材は、樹脂を主成分として構成されている請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記作用部材は、前記熱伝導材と同等の線膨張係数を有する請求項3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記作用部材は、ばね部材である請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記回路基板は、複数の前記チップ部品を備えており、
少なくとも一部の前記チップ部品は、前記発熱部品の対向領域に配置されている請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記作用部材は、前記発熱部品の対向領域に設けられている請求項1~6のいずれか1項に記載の電子制御装置。
【請求項8】
前記作用部材は、前記反対面の対向領域の全域に設けられている請求項1~6のいずれか1項に記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記作用部材は、前記反対面に実装された前記チップ部品と接触することなく設けられている請求項1~6のいずれか1項に記載の電子制御装置。
【請求項10】
前記回路基板と前記主回路基板との対向領域に設けられ、前記回路基板と前記主回路基板とを電気的に接続する複数の接続端子(15)を備え、
複数の前記接続端子は、前記回路基板の外周に沿って環状に設けられた第1端子群と、前記第1端子群(15a)に囲まれた第2端子群(15b)とを有し、
前記作用部材は、前記第1端子群と前記第2端子群との間における少なくとも一箇所に設けられている請求項1~6のいずれか1項に記載の電子制御装置。
【請求項11】
前記発熱部品は、システムオンチップ、メモリ装置、および、電源回路のいずれかである請求項1~6のいずれか1項に記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子制御装置の一例が開示されている。電子制御装置は、電子部品と筐体との間に柔軟性を有する熱伝導材が配置されている。電子制御装置は、熱伝導材を介して電子部品に発生した熱を放熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-289191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子制御装置は、一面に発熱部品が実装され反対面にチップ部品が実装された回路基板と、回路基板が実装された主回路基板と、回路基板が実装された主回路基板を収容する筐体とを備えた構成が考えられる。この電子制御装置に対して、特許文献1に記載された熱伝導材を適用した場合、発熱部品と筐体との間に熱伝導材が配置される構成が考えられる。この場合、回路基板は、チップ部品と主回路基板とが対向した状態で主回路基板に実装されることになる。
【0005】
熱伝導材は、発熱部品から発せられた熱によって熱膨張する。そのため、電子制御装置は、熱伝導材の熱膨張によって回路基板が押圧されて歪むことがある。電子制御装置は、回路基板が歪むことで、チップ部品が主回路基板に接触する虞がある。
【0006】
開示される一つの目的は、チップ部品と主回路基板との接触が抑制された電子制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された電子制御装置は、
一面(S1)と一面の反対面(S2)とを有した配線基板(11)と、一面に実装された少なくとも一つの発熱部品(12)と、反対面に実装された少なくとも一つのチップ部品(13)とを備えた回路基板(10)と、
反対面と対向し、回路基板が電気的に接続された状態で実装された主回路基板(20)と、
回路基板と主回路基板とを収容する筐体(30)と、
発熱部品と、筐体における発熱部品と対向する対向部とに接する柔軟性を有した熱伝導材(40)と、
反対面と主回路基板との間に設けられ、熱伝導材の熱膨張により回路基板にかかる応力に対して反発する作用部材(50)を備えていることを特徴とする。
【0008】
このように、電子制御装置は、反対面と主回路基板との間に作用部材が設けられている。作用部材は、熱伝導材の熱膨張により配線基板にかかる応力に対して反発する部材である。よって、作用部材は、反発による応力で配線基板の歪みを抑制できる。このため、電子制御装置は、作用部材が配線基板の歪みを抑制することで、チップ部品と主回路基板の接触を抑制できる。
【0009】
この明細書において開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態における電子制御装置の概略構成を示す平面図である。
図2図1のII‐II線に沿う断面図である。
図3】比較例における電子制御装置の概略構成を示す断面図である。
図4】第2実施形態における電子制御装置の概略構成を示す平面図である。
図5図4のV‐V線に沿う断面図である。
図6】第3実施形態における電子制御装置の概略構成を示す平面図である。
図7図6のVII‐VII線に沿う断面図である。
図8】第4実施形態における電子制御装置の概略構成を示す平面図である。
図9図8のIX‐IX線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、図面を参照しながら、本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を参照し適用できる。なお、以下においては、互いに直交する3方向をX方向、Y方向、Z方向と示す。
【0012】
(第1実施形態)
図1図2図3を用いて、本実施形態の電子制御装置101に関して説明する。電子制御装置101は、たとえば、車両に搭載可能に構成されている。電子制御装置101は、MCM10、マザー基板20、筐体30、放熱ゲル40、作用部材50などを備えている。以下において、これらの構成要素に関して説明する。なお、MCMは、マルチチップモジュールの略称である。
【0013】
<MCM>
図1図2に示すように、MCM10は、MCM基板11、発熱部品12、裏面チップ13、表面チップ14、MCM端子15などを備えている。なお、図1では、図面を簡略化するために表面チップ14を省略している。MCM10は、回路基板に相当する。MCM基板11は、配線基板に相当する。裏面チップ13は、チップ部品に相当する。MCM端子15は、接続端子に相当する。
【0014】
MCM基板11は、電気絶縁性の基材に、導電性の配線パターンが形成されている。MCM基板11は、たとえば、XY平面において矩形形状をなしている。MCM基板11は、一面S1と一面S1の反対面S2とを有している。配線パターンは、基材の表面に設けられた表層配線や、基材の内部に設けられた内層配線を含んでいる。表層配線の一部は、後ほど説明する回路部品などが実装されるランドを構成している。
【0015】
MCM基板11には、複数の回路部品が実装されている。回路部品は、はんだなどの導電性の接続部材を介してMCM基板11に実装されている。つまり、回路部品は、接続部材を介して、MCM基板11のランドと電気的に接続されている。回路部品は、一面S1に実装された発熱部品12、表面チップ14、反対面S2に実装された裏面チップ13などである。各回路部品は、配線パターンを介して接続されている。
【0016】
発熱部品12は、動作することで発熱する回路部品である。また、発熱部品12は、動作による発熱が、表面チップ14や裏面チップ13よりも顕著となる回路部品ともいえる。さらに、発熱部品12は、冷却(放熱)が必要な程度に発熱する回路部品ともいえる。発熱部品12は、たとえば、システムオンチップ(System on Chip)、メモリ装置、および、電源回路のいずれかである。なお、システムオンチップは、システムの動作に必要な機能が一つの半導体チップに実装されている。システムオンチップは、たとえば、通信機能を備えたものなどを採用えきる。
【0017】
図1図2では、一つの発熱部品12を図示している。しかしながら、発熱部品12は、MCM基板11に少なくとも一つ実装されていればよい。よって、発熱部品12は、MCM基板11に複数実装されていてもよい。つまり、MCM基板11は、種類(機能)が異なる複数の発熱部品12が実装されていてもよい。MCM基板11は、たとえば、発熱部品12として、システムオンチップ、メモリ装置、および、電源回路の全てが実装されていてもよい。
【0018】
裏面チップ13、表面チップ14は、抵抗素子やコンデンサなどである。しかしながら、裏面チップ13、表面チップ14は、これらに限定されず他の素子であってもよい。
【0019】
また、本実施形態では、一例として、複数の裏面チップ13と複数の表面チップ14がMCM基板11に実装された例を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されない。MCM基板11は、反対面S2に少なくとも一つの裏面チップ13が実装されていればよい。また、MCM基板11は、一面S1に表面チップ14が実装されていなくてもよいし、一面S1に一つの表面チップ14が実装されていてもよい。
【0020】
図1図2に示すように、少なくとも一部の裏面チップ13は、発熱部品12の対向領域に配置されている。ここでの対向領域は、Z方向における発熱部品12の対向領域である。よって、少なくとも一部の裏面チップ13は、Z方向において、発熱部品12と対向して配置されている。
【0021】
図2に示すように、MCM端子15は、反対面S2に設けられている。MCM端子15は、MCM基板11のランドと電気的に接続されている。MCM端子15は、はんだボールなどの導電性の接続部材である。MCM端子15は、MCM10とマザー基板20とを電気的に接続するための端子である。
【0022】
MCM10は、MCM端子15を介してマザー基板20に実装されている。また、MCM10は、Z方向においてマザー基板20に積層されている。MCM端子15は、マザー基板20のランドと電気的に接続されている。MCM10は、リフローはんだ付けなどによって、MCM端子15を介してマザー基板20に実装される。これによって、MCM10は、マザー基板20と電気的に接続される。なお、MCM10は、反対面S2が後ほど説明するマザー基板20の実装面S3と対向している。
【0023】
また、MCM10は、裏面チップ13がマザー基板20に接触しないようにマザー基板20に実装されている。つまり、MCM10は、後ほど説明する作用部材50が設けられていない状態や放熱ゲル40の熱膨張の影響を受けていない状態で、Z方向において、裏面チップ13とマザー基板20とが間隔が形成されるように実装されている。なお、上記状態における間隔は、初期間隔ともいえる。
【0024】
<マザー基板>
マザー基板20は、樹脂やセラミックスなどの電気絶縁性の基材に、導電性の部材を主成分とする複数の配線が設けられたプリント基板である。マザー基板20は、MCM10が実装される実装面S3を有している。配線の一部は、実装面S3に露出して、ランドを構成している。
【0025】
図1図2では、一つのMCM10が実装されたマザー基板20を図示している。しかしながら、マザー基板20は、複数のMCM10が実装されていてもよい。また、マザー基板20は、MCM10以外の回路部品が実装されていてもよい。さらに、マザー基板20は、実装面S3の反対面(裏面)に回路部品が実装されていてもよい。マザー基板20は、主回路基板に相当する。
【0026】
<筐体>
図2に示すように、筐体30は、MCM10とマザー基板20とを収容するものである。筐体30は、アルミニウムなどの金属を主成分として構成されている。筐体30は、たとえば、ベースとカバーの二つの部材を備えるものなどを採用できる。この場合、筐体30は、ベースとカバーとを組み付けることで、MCM10とマザー基板20の収容空間を形成できる。しかしながら、筐体30は、これに限定されない。
【0027】
筐体30は、発熱部品12と対向する対向部として、突出部31が設けられている。突出部31は、突出部31の周辺よりも突出した部位である。また、突出部31は、筐体30における一面S1と対向する一部からZ方向に突出している。
【0028】
突出部31は、MCM10とマザー基板20とが筐体30に収容された状態で、発熱部品12と接しないように設けられている。これは、発熱部品12と突出部31との間に、後ほど説明する放熱ゲル40を配置するためである。
【0029】
突出部31は、発熱部品12と対向する対向面が設けられている。対向面は、XY平面に沿う面である。対向面の面積は、たとえば、発熱部品12の面積と同程度とすることができる。これによって、筐体30は、発熱部品12から筐体30へ、放熱ゲル40を介して放熱しやすくできる。また、電子制御装置101は、発熱部品12から発せられた熱を効率的に筐体30に放熱できるともいえる。発熱部品12の面積は、発熱部品12の上面、すなわち突出部31と対向するXY平面に沿う面の面積である。
【0030】
なお、筐体30は、突出部31が設けられていなくてもよい。筐体30は、発熱部品12と対向する対向部と、発熱部品12との間に放熱ゲル40が配置されていてもよい。また、筐体30は、樹脂部材を主成分としつつ、対向部などに放熱経路が設けられたものであっても採用できる。つまり、筐体30は、樹脂部材の一部に金属によって放熱経路が設けられていてもよい。
【0031】
<放熱ゲル>
図2に示すように、放熱ゲル40は、発熱部品12と突出部31との間に設けられている。放熱ゲル40は、発熱部品12と突出部31とに接して設けられている。放熱ゲル40は、発熱部品12から発せられた熱を筐体30へ逃がすために設けられている。放熱ゲル40は、柔軟性を有している。放熱ゲル40は、ケイ素を主成分として構成されたものなどを採用できる。放熱ゲル40は、熱伝導材に相当する。
【0032】
放熱ゲル40は、発熱部品12の発熱などによって温度が上昇する。そして、放熱ゲル40は、温度上昇に応じて熱膨張する。放熱ゲル40は、熱膨張することで、白抜き矢印E1に示すように発熱部品12および筐体30の応力を印加することになる。放熱ゲル40は、発熱部品12および筐体30に対して、Z方向に応力を印加する。なお、以下においては、放熱ゲル40の熱膨張による応力を膨張応力とも称することがある。
【0033】
よって、MCM10は、膨張応力が発熱部品12を介してMCM基板11にも印加されることになる。このため、MCM基板11は、反対面S2から実装面S3に向かう方向に膨張応力が印加される。
【0034】
<作用部材>
図2に示すように、作用部材50は、反対面S2とマザー基板20との間に設けられている。作用部材50は、MCM基板11にかかる膨張応力に対して反発する部材である。
【0035】
作用部材50は、樹脂を主成分として構成されている。作用部材50は、放熱ゲル40と同様、温度上昇に応じて熱膨張する。作用部材50は、ケイ素を主成分として構成されたものなどを採用できる。よって、作用部材50は、放熱ゲル40と同じ材料で構成されてもよい。なお、作用部材50は、電気絶縁性の樹脂部材ともいえる。
【0036】
作用部材50は、温度上昇に応じて、放熱ゲル40とともに熱膨張する。これによって、作用部材50は、白抜き矢印E2に示すように膨張応力に反発する。このため、作用部材50は、熱膨張に応じて、MCM10およびマザー基板20に応力を印加することになる。以下においては、作用部材50の熱膨張による応力を反発応力とも称することがある。しかしながら、作用部材50は、これに限定されず、膨張応力に対して反発するものであればよい。
【0037】
また、図1図2に示すように、作用部材50は、反対面S2の対向領域の全域に作用部材50が設けられた例を採用している。この場合、作用部材50は、アンダーフィルともいえる。作用部材50は、反対面S2の対向領域からはみ出していてもよいし、はみ出さないようにしてもよい。なお、作用部材50は、MCM10がマザー基板20に実装された状態で、反対面S2とマザー基板20との間に流しこむことで反対面S2とマザー基板20との間に設けることができる。
【0038】
<効果>
ここで、比較例の電子制御装置10xを用いつつ、電子制御装置101の効果を説明する。図3に示すように、電子制御装置10xは、電子制御装置101と同じ構成要素に関しては同じ符号を付与している。電子制御装置10xは、作用部材50が設けられていない点が電子制御装置101と異なる。
【0039】
電子制御装置10xは、発熱部品12を放熱させるために放熱ゲル40が設けられている。このため、MCM基板11は、白抜き矢印E3に示すように膨張応力が印加される。つまり、MCM基板11は、膨張応力によって反対面S2がマザー基板20側に近づくように歪む。MCM10は、MCM基板11の歪みによって裏面チップ13がマザー基板20に近づくことになる。また、図3に示すように、膨張応力の大きさや初期間隔によっては、裏面チップ13とマザー基板20が接触する。なお、反対面S2からマザー基板20に向かう方向は、下方向ともいえる。
【0040】
このように、電子制御装置10xは、裏面チップ13がマザー基板20に接触すると配線を損傷させる虞がある。そこで、電子制御装置10xは、裏面チップ13がマザー基板20に接触しても、マザー基板20に電気的な影響がないように、すなわち、回路動作に影響がないように配線レイアウトを決めることも考えられる。しかしながら、電子制御装置10xは、配線レイアウトに制約が生じる。
【0041】
これに対して、電子制御装置101は、反対面S2とマザー基板20との間に作用部材50が設けられている。作用部材50は、放熱ゲル40の熱膨張によりMCM基板11にかかる膨張応力に対して反発する部材である。よって、作用部材50は、反発応力によって、MCM基板11の歪みを抑制する。そして、作用部材50は、MCM基板11の歪みを抑制することで、裏面チップ13とマザー基板20の接触を抑制する。
【0042】
このため、電子制御装置101は、膨張応力が生じたとしても裏面チップ13とマザー基板20が接触することを抑制できる。つまり、電子制御装置101は、放熱ゲル40で発熱部品12からの熱を放熱しつつ、裏面チップ13とマザー基板20が接触することを抑制できる。
【0043】
また、電子制御装置101は、裏面チップ13とマザー基板20が接触してもいいように、マザー基板20の配線レイアウトを設計する必要がない。このため、電子制御装置101は、マザー基板20における配線レイアウトの自由度が低下することを抑制できる。
【0044】
本実施形態では、一例として、反対面S2の対向領域の全域に作用部材50が設けられている。電子制御装置101は、反対面S2の対向領域の全域に作用部材50を設けることで、MCM基板11の全体において歪みを抑制できる。よって、電子制御装置101は、反対面S2の全域において、裏面チップ13とマザー基板20の接触を抑制できる。
【0045】
また、MCM基板11の歪みは、膨張応力によって発熱部品12が下方向に押圧されることによって生じる。つまり、電子制御装置101は、発熱部品12の対向領域に設けられた裏面チップ13がマザー基板20と接触しやすい。そこで、作用部材50は、発熱部品12の対向領域のみに設けられていれもよい。これによって、電子制御装置101は、必要な箇所にのみ作用部材50を配置でき、裏面チップ13とマザー基板20の接触を効率的に抑制できる。なお、作用部材50の位置は、膨張応力が生じたとしても裏面チップ13とマザー基板20が接触することを抑制できる位置であればよい。
【0046】
さらに、作用部材50は、放熱ゲル40と同等の線膨張係数を有していてもよい。なお、同等とは、両線膨張係数が同じであることを含んでいる。また、両線膨張係数が異なっていても、誤差の範囲内、公差の範囲内、予め決められた基準値内であれば同等とみなせる。これによって、電子制御装置101は、膨張応力と反発応力のバランスをとることができる。このため、電子制御装置101は、裏面チップ13とマザー基板20の接触を確実に抑制できる。
【0047】
また、作用部材50は、樹脂で構成されている。このため、電子制御装置101は、作用部材50を設けた構成であっても、MCM10とマザー基板20との電気的な絶縁性を確保できる。よって、電子制御装置101は、電気的な絶縁性を確保するために、マザー基板20の配線レイアウトなどを工夫する必要がない。よって、電子制御装置101は、マザー基板20の設計自由度を低下させることなく、作用部材50を設けることができる。
【0048】
さらに、作用部材50は、膨張応力に対して反発する部材であれば採用できる。よって、作用部材50は、たとえば、ばね部材であっても採用できる。作用部材50は、樹脂を主成分として構成されている。さらに、作用部材50は、MCM10のリフローはんだ付け時の温度(リフロー温度)であっても形状および機能を維持可能なものであると好ましい。この場合、作用部材50は、MCM10のリフローはんだ付け前に、反対面S2とマザー基板20との間に配置することができる。よって、電子制御装置101は、反対面S2とマザー基板20との間に作用部材50を配置しやすくなる。また、電子制御装置101は、反対面S2とマザー基板20に対して、作用部材50の位置決めが容易となる。
【0049】
なお、作用部材50は、リフローはんだ付け後に、反対面S2とマザー基板20との間に配置するものであれば、リフロー温度で形状や機能が変化する材料であっても採用できる。また、作用部材50は、MCM10およびマザー基板20と電気的に絶縁可能であれば金属を主成分として構成されていてもよい。
【0050】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、上記実施形態に何ら制限されることはなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。以下に、本開示のその他の形態として、第2実施形態~第4実施形態に関して説明する。上記実施形態および第2実施形態~第4実施形態は、それぞれ単独で実施することも可能であるが、適宜組み合わせて実施することも可能である。本開示は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【0051】
(第2実施形態)
図4図5を用いて、第2実施形態の電子制御装置102に関して説明する。ここでは、主に、電子制御装置102における電子制御装置101と異なる点に関して説明する。電子制御装置102は、主に、作用部材50の位置、およびMCM端子15の構成が電子制御装置101と異なる。
【0052】
図4に示すように、MCM基板11は、MCM端子15として、第1端子群15aと第2端子群15bとが設けられている。第1端子群15aは、MCM基板11の外周に沿って環状に設けられている。第1端子群15aは、複数のMCM端子15を含んでいる。第2端子群15bは、第1端子群15aに囲まれた位置に設けられている。第2端子群15bは、複数のMCM端子15を含んでいる。
【0053】
図4図5に示すように、作用部材50は、第1端子群15aと第2端子群15bとの間における少なくとも一箇所に設けられている。本実施形態では、一例として、発熱部品12の対向領域、および第2端子群15bを囲うように環状に設けられた作用部材50を採用している。なお、作用部材50は、分割されていてもよい。
【0054】
さらに、作用部材50は、裏面チップ13と接触することなく設けられている。作用部材50は、膨張応力および反発応力が生じた状態であっても裏面チップ13と接触しないように設けられている。
【0055】
このため、電子制御装置102は、反発応力が裏面チップ13に印加されることを防止できる。よって、電子制御装置102は、裏面チップ13にクラックなどが生じることを抑制できる。さらに、電子制御装置102は、裏面チップ13とMCM基板11との接続部などにクラックなどが生じることも抑制できる。また、電子制御装置102は、電子制御装置101よりも作用部材50を少なくすることもできる。なお、電子制御装置102は、電子制御装置101と同様、裏面チップ13とマザー基板20の接触を抑制できるとともに、配線レイアウトの自由度が低下することを抑制できる。
【0056】
(第3実施形態)
図6図7を用いて、第3実施形態の電子制御装置103に関して説明する。ここでは、主に、電子制御装置103における電子制御装置102と異なる点に関して説明する。電子制御装置103は、主に、作用部材50の位置、MCM10の構成が電子制御装置102と異なる。
【0057】
図6に示すように、MCM10は、反対面S2の中央に裏面チップ13が設けられていない。つまり、MCM10は、反対面S2の中央を囲うように複数の裏面チップ13が設けられている。
【0058】
また、図6に示すように、発熱部品12は、第1端子群15aの角部に偏った位置に配置されている。このため、発熱部品12は、第1端子群15aの対向領域に隣り合って設けられている。また、発熱部品12は、二つの側壁が第1端子群15aの対向領域に沿うように配置されている。
【0059】
言い換えると、発熱部品12は、二つの側壁が、第1端子群15aで囲まれた領域を規定する仮想環状線に沿うように配置されている。つまり、発熱部品12は、二つの側壁が仮想環状線における角部を介して連なる二つの辺に沿うように配置されている。なお、仮想環状線は、第1端子群15aの対向領域で囲まれた領域を規定する仮想線ともいえる。発熱部品12は、二つの側壁と仮想環状線における二つの辺が一致し、角部が仮想環状線における角部と一致するように配置されていてもよい。なお、発熱部品12は、一部が第1端子群15aの対向領域上に配置されていてもよい。
【0060】
図6図7に示すように、作用部材50は、発熱部品12の対向領域、および発熱部品12の対向領域の周辺に設けられている。つまり、作用部材50は、反対面S2の中央に裏面チップ13に接触することなく設けられている。また、作用部材50は、発熱部品12における上記二つの側壁とは異なる二つの側壁の対向領域に沿って二か所に設けられている。なお、作用部材50は、さらに分割されていてもよい。
【0061】
電子制御装置103は、MCM基板11に膨張応力が印加された場合、作用部材50に加えて、第1端子群15aのMCM端子15によって、MCM基板11の歪みを抑制できる。よって、電子制御装置103は、電子制御装置102よりも作用部材50を減らすことができる。電子制御装置103は、102と同様の効果を奏することができる。
【0062】
なお、第3実施形態は、第2実施形態と組み合わせて実施することもできる。例えば、複数の発熱部品12が設けられていた場合、発熱部品12の位置に応じて、作用部材50の位置を異ならせてもよい。電子制御装置103と電子制御装置102を組み合わせた構成は、第1端子群15aの角部に偏った位置と、MCM基板11の中央に発熱部品12が配置された構成となる。この構成では、第1端子群15aの角部に偏った位置の発熱部品12に対応して本実施形態のように作用部材50を配置する。また、MCM基板11の中央の発熱部品12に対応して第2実施形態のように作用部材50を配置する。これによって、電子制御装置103は、発熱部品12の位置によらず裏面チップ13とマザー基板20との接触を抑制できる。
【0063】
(第4実施形態)
図8図9を用いて、第4実施形態の電子制御装置104に関して説明する。ここでは、主に、電子制御装置104における電子制御装置103と異なる点に関して説明する。電子制御装置104は、主に、作用部材50の位置、MCM10の構成が電子制御装置103と異なる。
【0064】
図8に示すように、MCM10は、反対面S2の全域に複数の裏面チップ13が設けられていない。つまり、MCM10は、反対面S2の中央にも裏面チップ13が設けられている。
【0065】
図8図9に示すように、作用部材50は、裏面チップ13に接触することなく設けられている。また、作用部材50は、発熱部品12における上記二つの側壁とは異なる二つの側壁の対向領域に沿って設けられている。
【0066】
電子制御装置104は、電子制御装置103と同様の効果を奏することができる。なお、第4実施形態は、第2実施形態や第3実施形態と組み合わせて実施することもできる。つまり、発熱部品12の構成や、MCM基板11における発熱部品12の位置に応じて、作用部材50の位置を異ならせてもよい。
【0067】
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0068】
10…MCM、11…MCM基板、12…発熱部品、13…裏面チップ、14…表面チップ、15…MCM端子、15a…第1端子群、15b…第2端子群、S1…一面、S2…反対面、20…マザー基板、S3…実装面、30…筐体、31…突出部、40…放熱ゲル、50…作用部材、101~104…電子制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9