(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119514
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】酸化防止剤混合液の保管方法
(51)【国際特許分類】
C09K 15/08 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
C09K15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026479
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】榊原 勝己
【テーマコード(参考)】
4H025
【Fターム(参考)】
4H025AA17
(57)【要約】
【課題】沈殿を生じることなく、溶液状態で「マスキングされたフェノール系酸化防止剤」を金属製容器などの内部で長期間(所定期間)保管、もしくは滞留させる方法を提供する。
【解決手段】
酸化防止剤と、下記式(3)で表されるアルミニウム化合物とを含む酸化防止剤混合液を保管する、酸化防止剤混合液の保管方法。
AlR3 (3)
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数3以上のアルキル基またはハロゲン原子を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化防止剤と、下記式(3)で表されるアルミニウム化合物とを含む酸化防止剤混合液を保管する、酸化防止剤混合液の保管方法。
AlR3 (3)
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数3以上のアルキル基またはハロゲン原子を示す。)
【請求項2】
前記酸化防止剤混合液が炭化水素溶媒をさらに含む、請求項1に記載の酸化防止剤混合液の保管方法。
【請求項3】
前記酸化防止剤が、下記式(1)もしくは式(2)で表される酸化防止剤である、請求項1または2に記載の酸化防止剤混合液の保管方法。
【化1】
(式中、
nは1~4の整数を表す。
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のヒドロカルビル基または水素原子を示す。
RおよびR’は、炭素原子数1~20のヒドロカルビレン基を示す。
Aは、炭素原子数1~30のn価の炭化水素基を示す。)
【化2】
(式中、
R
3、R
4、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数5~8のシクロアルキル基、炭素原子数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素原子数7~12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R
5は水素原子または炭素原子数1~8のアルキル基を表す。
Xは単結合、硫黄原子もしくは-CHR
8-基(R
8は水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基または炭素原子数5~8のシクロアルキル基を示す)を表す。
A’は、炭素原子数2~8のヒドロカルビレン基を表す。
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基を表し、もう一方が水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
【請求項4】
前記式(1)中のnが4である、請求項3に記載の酸化防止剤混合液の保管方法。
【請求項5】
前記アルミニウム化合物が、下記式(4)で表される、請求項1または2に記載の酸化防止剤混合液の保管方法。
AlRnX3-n (4)
(式中、Rは炭素原子数3以上のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、0<n≦3である。複数存在するRおよびXは同一でも異なっていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化防止剤混合液の保管方法に関するものであり、オレフィン重合系への酸化防止剤添加技術に応用できるものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、触媒を用いてエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合する際に、トリエチルアルミニウムによりマスキングされたフェノール系酸化防止剤を、重合前または重合中に触媒系又は重合系に添加することを特徴とする安定化ポリマーの製造方法が記載されている。具体的には、特許文献1では、トリエチルアルミニウムとフェノール系酸化防止剤を23℃で5分間攪拌することにより、マスキングされたフェノール系酸化防止剤を得、その後ただちに、マスキングされたフェノール系酸化防止剤と触媒とを混合してプロピレンの重合を行っている([0033]、実施例1-1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大規模工場における連続的なポリマー製造に、従来技術を適用する場合、所定量の「マスキングされたフェノール系酸化防止剤」を、金属製容器、金属製反応器、および金属製配管中で長期間(所定期間)保管、もしくは滞留させる必要がある。(金属の種類として、例えば、ステンレスや炭素鋼、アルミニウム、チタン、銅、七三黄銅が選択される。)しかしながら、長期間金属と接触保管すると、沈殿が生じてしまい、プラントにおける容器や反応器への付着や、配管の閉塞などのプロセス上の問題が発生してしまい、望ましくないため、長期間保管においても、沈殿を生じることなく、溶液状態で保有する必要がある。
かかる状況の下、本発明が解決しようとする課題は、沈殿を生じることなく、溶液状態で「マスキングされたフェノール系酸化防止剤」を金属製容器などの中部で長期間(所定期間)保管、もしくは滞留させる方法を提供する点に存するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、このような背景に鑑みて鋭意検討をしたところ、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記のものである。
[1]
酸化防止剤と、下記式(3)で表されるアルミニウム化合物とを含む酸化防止剤混合液を保管する、酸化防止剤混合液の保管方法。
AlR3 (3)
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数3以上のアルキル基またはハロゲン原子を示す。)
【0006】
以下、[2]から[5]は、それぞれ本発明の好ましい態様又は実施形態である。
[2]
前記酸化防止剤混合液が炭化水素溶媒をさらに含む、[1]に記載の酸化防止剤混合液の保管方法。
[3]
前記酸化防止剤が、下記式(1)もしくは式(2)で表される酸化防止剤である、[1]または[2]に記載の酸化防止剤混合液の保管方法。
【化1】
(式中、
nは1~4の整数を表す。
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のヒドロカルビル基または水素原子を示す。
RおよびR’は、炭素原子数1~20のヒドロカルビレン基を示す。
Aは、炭素原子数1~30のn価の炭化水素基を示す。)
【化2】
(式中、
R
3、R
4、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数5~8のシクロアルキル基、炭素原子数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素原子数7~12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R
5は水素原子または炭素原子数1~8のアルキル基を表す。
Xは単結合、硫黄原子もしくは-CHR
8-基(R
8は水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基または炭素原子数5~8のシクロアルキル基を示す)を表す。
A’は、炭素原子数2~8のヒドロカルビレン基を表す。
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基を表し、もう一方が水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
[4]
前記式(1)中のnが4である、[3]に記載の酸化防止剤混合液の保管方法。
[5]
前記アルミニウム化合物が、下記式(4)で表される、[1]~[4]のいずれかに記載の酸化防止剤混合液の保管方法。
AlR
nX
3-n (4)
(式中、Rは炭素原子数3以上のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、0<n≦3である。複数存在するRおよびXは同一でも異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、沈殿を生じることなく、溶液状態で「マスキングされたフェノール系酸化防止剤」を金属製容器などの内部で長期間(所定期間)保管、もしくは滞留させる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例2において保管容器内の様子を撮影した写真を示す。
【
図2】
図2は、実施例4において保管容器内の様子を撮影した写真を示す。
【
図3】
図3は、比較例1において保管容器内の様子を撮影した写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
酸化防止剤混合液の保管方法
本発明の酸化防止剤混合液の保管方法は、下記のものである。
酸化防止剤と、下記式(3)で表されるアルミニウム化合物とを含む酸化防止剤混合液を保管する、酸化防止剤混合液の保管方法。
AlR3 (3)
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数3以上のアルキル基またはハロゲン原子を示す。)
【0010】
好ましくは、前記酸化防止剤混合液が炭化水素溶媒をさらに含むことができる。
炭化水素溶媒としては、本発明を利用した下記に示すヘテロファジックプロピレン重合材料又はオレフィン重合体などの製造において使用する溶媒と同じものを使用することができ、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼンおよびトルエンのような不活性炭化水素溶媒を使用することができる。
【0011】
好ましくは、前記酸化防止剤が、下記式(1)もしくは式(2)で表される酸化防止剤である。
【化1】
(式中、
nは1~4の整数を表す。
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のヒドロカルビル基または水素原子を示す。
RおよびR’は、炭素原子数1~20のヒドロカルビレン基を示す。
Aは、炭素原子数1~30のn価の炭化水素基を示す。)
【化2】
(式中、
R
3、R
4、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数5~8のシクロアルキル基、炭素原子数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素原子数7~12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R
5は水素原子または炭素原子数1~8のアルキル基を表す。
Xは単結合、硫黄原子もしくは-CHR
8-基(R
8は水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基または炭素原子数5~8のシクロアルキル基を示す)を表す。
A’は、炭素原子数2~8のヒドロカルビレン基を表す。
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基を表し、もう一方が水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
【0012】
好ましくは、前記式(1)中のnが1又は4であり、より好ましくは、前記式(1)中のnが4である。
【0013】
好ましくは、前記アルミニウム化合物が、下記式(4)で表される。
AlRnX3-n (4)
(式中、Rは炭素原子数3以上のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、0<n≦3である。複数存在するRおよびXは同一でも異なっていてもよい。)
アルミニウム化合物は、本発明を利用した下記に示すヘテロファジックプロピレン重合材料又はオレフィン重合体などの製造において使用する溶媒と同じものを使用することができ、例えば、炭素-アルミニウム結合もしくはハロゲン-アルミニウム結合を1つ以上有する化合物であって、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルミニウムトリハライド、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、または、アルキルアルモキサンであり、さらに好ましくはトリイソブチルアルミニウムである。
【0014】
本発明の利用例
本発明の酸化防止剤混合液の保管方法は、下記[1]~[6]のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法又はオレフィン重合体の製造方法における「接触生成物」の製造の際に、利用することができる。
[1]
チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子および内部電子供与体を含むオレフィン重合用固体触媒成分と、アルミニウム化合物とを接触させて得られるオレフィン重合用触媒の存在下で、プロピレンを重合して重合体(I)を形成する第1の重合工程と、
前記重合体(I)、及び、下記接触生成物の存在下で、プロピレンと、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種とを共重合して重合体(II)を形成する第2の重合工程と
を含む、ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
接触生成物:アルミニウム化合物と、下記式(1)もしくは式(2)で表される酸化防止剤とを接触させて得られる接触生成物。
【化1】
(式中、
nは1~4の整数を表す。
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のヒドロカルビル基または水素原子を示す。
RおよびR’は、炭素原子数1~20のヒドロカルビレン基を示す。
Aは、炭素原子数1~30のn価の炭化水素基を示す。)
【化2】
(式中、
R
3、R
4、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数5~8のシクロアルキル基、炭素原子数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素原子数7~12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R
5は水素原子または炭素原子数1~8のアルキル基を表す。
Xは単結合、硫黄原子もしくは-CHR
8-基(R
8は水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基または炭素原子数5~8のシクロアルキル基を示す)を表す。
A’は、炭素原子数2~8のヒドロカルビレン基を表す。
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基を表し、もう一方が水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
[2]
前記第2の重合工程において、前記接触生成物と前記重合体(I)とを接触させた後に、前記共重合を実施する、[1]に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
[3]
下記オレフィン重合体(α)、及び、下記接触生成物の存在下で、
エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合を継続してオレフィン重合体を形成する工程を含む、オレフィン重合体の製造方法。
オレフィン重合体(α):オレフィン重合用固体触媒成分1gあたり、オレフィンが10kg以上60kg以下重合されたオレフィン重合体。
接触生成物:アルミニウム化合物と、下記式(1)もしくは式(2)で表される酸化防止剤とを接触させて得られる接触生成物。
【化1】
(式中、
nは1~4の整数を表す。
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のヒドロカルビル基または水素原子を示す。
RおよびR’は、炭素原子数1~20のヒドロカルビレン基を示す。
Aは、炭素原子数1~30のn価の炭化水素基を示す。)
【化2】
(式中、
R
3、R
4、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数5~8のシクロアルキル基、炭素原子数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素原子数7~12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R
5は水素原子または炭素原子数1~8のアルキル基を表す。
Xは単結合、硫黄原子もしくは-CHR
8-基(R
8は水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基または炭素原子数5~8のシクロアルキル基を示す)を表す。
A’は、炭素原子数2~8のヒドロカルビレン基を表す。
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基を表し、もう一方が水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
[4]
前記接触生成物中の式(1)もしくは式(2)で表される酸化防止剤の量が、前記オレフィン重合体(α)100重量部当たり、0.0001~1重量部である、[3]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
[5]
前記ヘテロファジックプロピレン重合材料が、
プロピレンに由来する構造単位を80質量%以上含有し、かつ、極限粘度が2.0dL/g以下である重合体(I)と、
エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種類に由来する構造単位と、プロピレンに由来する構造単位とを含有し、かつ、極限粘度が1.5~8.0dL/gである重合体(II)とを含む、[1]または[2]に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
[6]
前記重合体(I)の含有量が40~90質量%であり、前記重合体(II)の含有量が10~60質量%である、[1]、[2]または[5]に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
【0015】
ヘテロファジックプロピレン重合材料
本発明の利用例においてヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法により得られるヘテロファジックプロピレン重合材料は、重合体(I)を形成する第1の重合工程と、重合体(II)を形成する第2の重合工程を実施することにより製造することができる。これらの重合工程において採用される、重合触媒、重合方法及び重合方式の例示は、下記に説明する。
好ましくは、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料が、
プロピレンに由来する構造単位を80質量%以上含有し、かつ、極限粘度が2.0dL/g以下である重合体(I)と、
エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種類に由来する構造単位と、プロピレンに由来する構造単位とを含有し、かつ、極限粘度が1.5~8.0dL/gである重合体(II)とを含む。
更に好ましくは、前記重合体(I)の含有量が40~90質量%であり、前記重合体(II)の含有量が10~60質量%である。
【0016】
重合体(I)は、例えば、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレン以外の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。重合体(I)が、プロピレン以外の単量体に由来する構造単位を含む場合、この含有量は、重合体(I)の全質量を基準として、例えば、0.01質量%以上20質量%未満であってもよい。
【0017】
プロピレン以外の単量体としては、例えば、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンが挙げられる。中でも、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0018】
プロピレン以外の単量体に由来する構造単位を含む重合体としては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。
【0019】
重合体(I)は、成形体の寸法安定性の観点から、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン単独重合体がより好ましい。
【0020】
重合体(I)の含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量を基準として、40~90質量%であることが好ましく、45~90質量%であることがより好ましい。
【0021】
重合体(II)は、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する構造単位を20質量%以上含有し、かつ、プロピレンに由来する構造単位を含有することが好ましい。
【0022】
重合体(II)において、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する構造単位の含有量は、25~60質量%であってよく、30~60質量%であってもよい。
【0023】
重合体(II)において、エチレン及び炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンとしては、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び1-デセンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0024】
重合体(II)としては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-デセン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体及びプロピレン-1-デセン共重合体が挙げられる。中でも、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がより好ましい。
【0025】
重合体(II)の含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量を基準として、10~60質量%であることが好ましく、10~55質量%であることがより好ましい。
【0026】
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のキシレン不溶(CXIS)成分の含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量を基準として、40~99質量%であることが好ましく、45~90質量%であることがより好ましい。
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のキシレン可溶(CXS成分)の含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量を基準として、1~60質量%であることが好ましく、10~55質量%であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態においては、ヘテロファジックプロピレン重合材料中のCXIS成分は、主として重合体(I)から構成され、ヘテロファジックプロピレン重合材料中のCXS成分は、主として重合体(II)から構成されると考えられる。
【0028】
ヘテロファジックプロピレン重合材料としては、例えば、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-オクテン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、及び(プロピレン-1-オクテン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料が挙げられる。
【0029】
ここで、「(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料」との記載は、「重合体(I)がプロピレン単独重合体であり、重合体(II)がプロピレン-エチレン共重合体であるヘテロファジックプロピレン重合材料」を意味する。他の類似の表現においても同様である。
【0030】
ヘテロファジックプロピレン重合材料としては、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、又は(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料が好ましく、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料がより好ましい。
【0031】
重合体(I)の極限粘度数([η]I)は、0.10~2.00dL/gであることが好ましく、0.50~1.50dL/gであることがより好ましく、0.70~1.40dL/gであることがより好ましい。
【0032】
重合体(II)の極限粘度数([η]II)は、1.50~8.00dL/gであることが好ましく、2.00~8.00dL/gであることがより好ましい。
【0033】
また、重合体(I)の極限粘度数([η]I)に対する重合体(II)の極限粘度数([η]II)の比([η]II/[η]I)は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~9であることが更に好ましい。
【0034】
重合体(I)の極限粘度数([η]I)の測定方法としては、例えば、重合体(I)を形成した後に、当該重合体の極限粘度数を測定する方法が挙げられる。
【0035】
重合体(II)の極限粘度数([η]II)は、例えば、ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度数([η]whole)、重合体(I)の極限粘度数([η]I)並びに重合体(II)及び重合体(I)の含有量を用いて、下記式(6)により算出できる。
【0036】
[η]II=([η]whole-[η]I×XI)/XII ・・・(6)
[η]whole:ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度数(dL/g)
[η]I:重合体(I)の極限粘度数(dL/g)
XI:ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量に対する重合体(I)の質量の比(重合体(I)の質量/ヘテロファジックプロピレン重合材料の質量)
XII:ヘテロファジックプロピレン重合材料の全質量に対する重合体(II)の質量の比(重合体(II)の質量/ヘテロファジックプロピレン重合材料の質量)
【0037】
ここで、XIIは、ヘテロファジックプロピレン重合材料の融解熱量を測定し、下記式を用いて算出した。ヘテロファジックプロピレン重合材料の試料(約5mg)をアルミパンに詰め、示差走査型熱量計DSC8500型装置(パーキンエルマー社製)内に設置し、230℃まで昇温し、230℃で5分間保持し、5℃/分で0℃まで降温し、0℃で5分間保持した後、5℃/分で200℃まで昇温して融解曲線を測定した。温度はインジウムの融点を156.6℃として補正した。融解曲線における融解ピーク面積から融解熱量(単位:J/g)を算出した後、下記式を用いてXIIを求めた。
XII=(1-(ヘテロファジックプロピレン重合材料の融解熱量)/105)×100
【0038】
なお、XI、XIIは、重合時の物質収支から算出しても良い。
【0039】
CXIS成分の極限粘度数([η]CXIS)は、0.10~2.00dL/gであることが好ましく、0.50~1.50dL/gであることがより好ましく、0.70~1.40dL/gであることがより好ましい。
【0040】
CXS成分の極限粘度数([η]CXS)は、1.50~8.00dL/gであることが好ましく、2.00~8.00dL/gであることがより好ましい。
【0041】
CXIS成分の極限粘度数([η]CXIS)に対するCXS成分の極限粘度数([η]CXS)の比([η]CXS/[η]CXIS)は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~9であることが更に好ましい。
【0042】
重合体(I)のアイソタクチックペンタッド分率([mmmm]分率ともいう)は、樹脂組成物からなる成形体の剛性及び寸法安定性の観点から、0.950以上であることが好ましく、0.970以上であることがより好ましい。重合体(I)のアイソタクチックペンタッド分率は、例えば、1.000以下であってもよい。
【0043】
アイソタクチックペンタッド分率は、ペンタッド単位での、アイソタクチック分率を意味する。すなわち、アイソタクチックペンタッド分率は、ペンタッド単位でみたときに、プロピレンに由来する構造単位が5個連続してメソ結合した構造の含有割合を示す。なお、対象の成分が共重合体である場合には、プロピレンに由来する構造単位の連鎖について測定される値をいう。
【0044】
本明細書において、アイソタクチックペンタッド分率は、13C-NMRスペクトルで測定される値をいう。具体的には、13C-NMRスペクトルによって得られるメチル炭素領域の全吸収ピークの面積に対するmmmmピークの面積の比を、アイソタクチックペンタッド分率とする。なお、13C-NMRスペクトルによるアイソタクチックペンタッド分率の測定方法は、例えば、A.ZambelliらによるMacromolecules,6,925(1973)に記載されている。ただし、13C-スペクトルによって得られる吸収ピークの帰属は、Macromolecules,8,687(1975)の記載に基づくものとする。
【0045】
本明細書において、重合体(I)の温度230℃、荷重2.16kgfでのメルトフローレートは、JIS K6758に準拠して230℃、2.16kgf荷重下で測定した値をいう。また、メルトフローレートを、以下、MFRと記すことがある。重合体(I)のメルトフローレートは、樹脂組成物の成形加工性の観点から、3g/10分以上であることが好ましく、10g/10分~500g/10分であることがより好ましい。
【0046】
重合体(II)の温度230℃、荷重2.16kgfでのメルトフローレートは、JIS K6758に準拠して230℃、2.16kgf荷重下で測定した値をいう。重合体(II)のメルトフローレートは、樹脂組成物の成形加工性の観点から、0.01g/10分以上であることが好ましく、0.02g/10分~20g/10分であることがより好ましい。
【0047】
重合体(I)および重合体(II)の製造においては、化石資源由来モノマー(エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン等)、植物由来モノマー(エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン等)、ケミカルリサイクルモノマー(エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン等)等を用いることができ、これらは2種以上組み合わせて用いられてもよい。具体的なモノマーの組み合せとしては、例えば、化石資源由来エチレン/植物由来エチレン/ケミカルリサイクルエチレン、化石資源由来エチレン/植物由来エチレン/ケミカルリサイクルエチレン/化石資源由来1-ブテン/植物由来1-ブテン/ケミカルリサイクル1-ブテン、化石資源由来エチレン/植物由来エチレン/ケミカルリサイクルエチレン/化石資源由来1-ヘキセン/植物由来1-ヘキセン/ケミカルリサイクル1-ヘキセン、化石資源由来プロピレン/植物由来プロピレン/ケミカルリサイクルプロピレン、化石資源由来プロピレン/植物由来プロピレン/ケミカルリサイクルプロピレン/化石資源由来エチレン/植物由来エチレン/ケミカルリサイクルエチレン、化石資源由来プロピレン/植物由来プロピレン/ケミカルリサイクルプロピレン/化石資源由来1-ブテン/植物由来1-ブテン/ケミカルリサイクル1-ブテン、があげられる。
【0048】
化石資源由来モノマーは、石油、石炭、天然ガスといった地下資源としての炭素を由来としており、一般的には炭素14(14C)が殆ど含まれていない。化石資源由来モノマーの製造方法としては、公知の方法、例えば、石油由来ナフサ・エタン等のクラッキング、エタン・プロパン等の脱水素等でオレフィンを製造する方法があげられる。
【0049】
植物由来モノマーは、動植物として地表面を循環する炭素を由来としており、一般的に一定割合の炭素14(14C)を含む。植物由来モノマーの製造方法としては、公知の方法、例えば、バイオナフサ・植物油・動物油等のクラッキング、バイオプロパン等の脱水素、サトウキビやトウモロコシ等の植物原料から抽出した糖等の発酵物からアルコールを分離し、それを脱水反応する方法(特表2010-511634、特表2011-506628、特表2013-503647等)、植物由来エタノールから得られるエチレンとn-ブテンをメタセシス反応させる方法(WO2007/055361等)があげられる。
【0050】
ケミカルリサイクルモノマーは、廃棄物の分解や燃焼により発生する炭素を由来としており、その炭素14(14C)含有量は、廃棄物によって種々の値となる。ケミカルリサイクルモノマーの製造方法としては、公知の方法、例えば、廃プラスチックを熱分解する方法(特表2017-512246等)、廃植物油・廃動物油等をクラッキングする方法(特表2018-522087等)、生ゴミ・バイオマス廃棄物・食品廃棄物・廃油・廃木材・紙ごみ・廃プラスチック等の廃棄物をガス化・アルコール変換・脱水反応する方法(特開2019-167424、WO2021/006245等)があげられる。
【0051】
化石資源由来オレフィン、植物由来オレフィンおよびケミカルリサイクルオレフィンを2種以上用いる場合、それぞれ個別に製造されたオレフィンを、化石資源由来オレフィン/植物由来オレフィン、化石資源由来オレフィン/ケミカルリサイクルオレフィン、植物由来オレフィン/ケミカルリサイクルオレフィン、化石資源由来オレフィン/植物由来オレフィン/ケミカルリサイクルオレフィンのような組み合わせで混合して用いてもよい。また、オレフィンの製造工程の原料・製造中間体に、化石資源由来化合物/植物由来化合物、化石資源由来化合物/ケミカルリサイクル化合物、植物由来化合物/ケミカルリサイクル化合物、化石資源由来化合物/植物由来化合物/ケミカルリサイクル化合物のような組み合わせの混合物を用いることによって、上記オレフィンの組み合わせの混合物として製造されたものを用いてもよい。
【0052】
重合体(I)および重合体(II)の炭素14(14C)濃度は、環境負荷低減の観点から、好ましくは0.2pMC(%)以上であり、より好ましくは0.5pMC(%)以上であり、更に好ましくは1pMC(%)以上であり、より更に好ましくは5pMC(%)以上であり、特に好ましくは10pMC(%)以上である。コストの観点から、好ましくは99pMC(%)以下であり、より好ましくは95pMC(%)以下であり、更に好ましくは90pMC(%)以下であり、より更に好ましくは70pMC(%)以下であり、特に好ましくは50pMC(%)以下である。
【0053】
重合体(I)および重合体(II)の炭素14(14C)濃度については、ポリオレフィン樹脂の製造に用いる化石資源由来オレフィン、植物由来オレフィンおよびケミカルリサイクルオレフィンの比率を変更することによって調整することができる。
【0054】
オレフィン重合用固体触媒成分
本発明の利用例において、ヘテロファジックプロピレン重合材料およびオレフィン重合体は、好ましくは、下記の製造方法によって製造することができる:
成分(A)と成分(B)と成分(C)とを接触させてオレフィン重合用触媒を得る工程と、
オレフィン重合用触媒の存在下で、オレフィンを重合して、ヘテロファジックプロピレン重合材料またはオレフィン重合体を得る工程を含む、製造方法。
成分(A):チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子および内部電子供与体を含むオレフィン重合用固体触媒成分
成分(B):アルミニウム化合物
成分(C):下記式(i)または(ii)で表されるケイ素化合物
R8’hSi(OR9)4-h (i)
(R8’:炭素原子数1~20のヒドロカルビル基または水素原子、R9:炭素原子数1~20のヒドロカルビル基、h:0≦h<4を満たす整数、R8’およびR9の一方または両方が複数存在する場合、複数のR8’およびR9は互いに同じであっても異なってもよい。)
R10
2Si(NR11R12)2 (ii)
(R10:炭素原子数1~20のヒドロカルビル基または水素原子、R11およびR12:炭素原子数1~12のヒドロカルビル基または水素原子)
【0055】
本明細書において、“オレフィン重合用固体触媒成分”とは、好ましくは、少なくともトルエン中で固形分として存在し、アルミニウム化合物等のオレフィン重合用助触媒と組み合されることにより、オレフィン重合用触媒となるものを意味する。
【0056】
オレフィン重合用固体触媒成分におけるチタン原子の一部または全部が、ハロゲン化チタン化合物に由来する。オレフィン重合用固体触媒成分におけるハロゲン原子の一部または全部が、ハロゲン化チタン化合物に由来する。
【0057】
オレフィン重合用固体触媒成分におけるマグネシウム原子の一部または全部が、マグネシウム化合物に由来する。マグネシウム化合物は、マグネシウム原子を含有する化合物であればよく、具体例としては、下式(iii)~(v)で表される化合物が挙げられる。
MgR13
kX2-k・・・(iii)
Mg(OR13)mX2-m・・・(iv)
MgX2・nR13OH・・・(v)
(式中、kは0≦k≦2を満足する数であり;mは0<m≦2を満足する数であり;nは0≦n≦3を満足する数であり;R13は炭素原子数1~20のヒドロカルビル基であり;Xはハロゲン原子である。)
【0058】
上記の式(iii)~(v)におけるXとしては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、およびフッ素原子を挙げることができ、好ましくは塩素原子である。複数のXは同一でも異なっていてもよい。
【0059】
式(iii)~(v)のマグネシウム化合物の具体例としては、マグネシウムジアルコキシドおよびハロゲン化マグネシウムが挙げられる。
【0060】
ハロゲン化マグネシウムは、市販のものをそのまま用いてもよいし、市販のものをアルコールに溶解した溶液を炭化水素液体中に滴下することによって生じる沈殿物を、液体と分離して用いてもよいし、米国特許第6,825,146号公報、国際公開第1998/044009号パンフレット、国際公開第2003/000754号パンフレット、国際公開第2003/000757号パンフレット、または国際公開第2003/085006号パンフレットに記載の方法等に基づいて製造したものを用いてもよい。
【0061】
マグネシウムジアルコキシドの製造方法としては、例えば、金属マグネシウムとアルコールとを触媒の存在下接触させる方法(例えば特開平4-368391号公報、特開平3-74341号公報、特開8-73388号公報、および国際公開第2013/058193号パンフレット)が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、およびオクタノールが挙げられる。触媒としては、ヨウ素、塩素、および臭素のようなハロゲン;ヨウ化マグネシウム、および塩化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウムが挙げられ、好ましくはヨウ素である。
【0062】
マグネシウム化合物は、担体物質に担持されていてもよい。担体物質としては、例えば、SiO2、Al2O3、MgO、TiO2、およびZrO2のような多孔質無機酸化物;ポリスチレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、スチレン-エチレングリコールジメタクリル酸共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、アクリル酸メチル-ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル-ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-ジビニルベンゼン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、およびポリプロピレンのような有機多孔質ポリマーが挙げられる。これらのうち好ましくは、多孔質無機酸化物であり、より好ましくは、SiO2である。
【0063】
担体物質として好ましくは、マグネシウム化合物を該担体物質に有効に固定化する観点から、多孔質であり、規格ISO15901-1:2005に従い水銀圧入法で求めた細孔半径10~780nmである細孔の合計容積が、0.2cm3/g以上である多孔質の担体物質がより好ましく、0.3cm3/g以上である多孔質の担体物質がさらに好ましい。また、細孔半径10~780nmである細孔の合計容積が、細孔半径2~100μmである細孔の合計容積に対して15%以上である多孔質の担体物質が好ましく、20%以上である多孔質の担体物質がより好ましい。
【0064】
マグネシウム化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。マグネシウム化合物は、本発明の利用例において効果が得られる範囲においてマグネシウム化合物および溶媒を含むマグネシウム化合物スラリーの形態でハロゲン化チタン化合物溶液と接触させてもよく、溶媒を含まない形態で接触させてもよい。
【0065】
オレフィン重合用固体触媒成分におけるマグネシウム原子の一部または全部が、マグネシウム化合物に由来する。また、オレフィン重合用固体触媒成分におけるハロゲン原子の一部が、マグネシウム化合物に由来し得る。
【0066】
内部電子供与体は、オレフィン重合用固体触媒成分に含まれる1つまたは複数の金属原子に対して電子対を供与可能な有機化合物を意味し、具体的には、モノエステル化合物、ジカルボン酸エステル化合物、ジオールジエステル化合物、β-アルコキシエステル化合物、およびジエーテル化合物等が挙げられる。
【0067】
また、特開2011-246699号公報に記載された内部電子供与体も例示することができる。
【0068】
中でも、好ましくは、ジカルボン酸エステル化合物、β-アルコキシエステル化合物およびジエーテル化合物である。内部電子供与体は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
オレフィン重合用固体触媒成分は、下記の製造方法によって製造することができる:
ハロゲン化チタン化合物と、マグネシウム化合物とを接触させ、固体生成物を含むスラリーを得る工程(I)を有する、オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法。
【0070】
好ましくは、上記のオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法においては、工程(I)において、ハロゲン化チタン化合物溶液へマグネシウム化合物を添加し、内部電子供与体が、モノエステル化合物、ジカルボン酸エステル化合物、ジオールジエステル化合物、β-アルコキシエステル化合物およびジエーテル化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物であり、マグネシウム化合物がマグネシウムジアルコキシドであり、固体生成物を含むスラリーへ内部電子供与体を添加する工程(II)をさらに有する。
【0071】
オレフィン重合用触媒
一実施形態において、上記のオレフィン重合用固体触媒成分と、アルミニウム化合物とを例えば公知の方法によって接触させることによって、オレフィン重合用触媒を製造することができる。また、別の実施形態において、上記のオレフィン重合用固体触媒成分と、アルミニウム化合物と、外部電子供与体とを接触させることによって、オレフィン重合用触媒を製造することができる。
【0072】
そのため、オレフィン重合用触媒は、一実施形態において、上記のオレフィン重合用固体触媒成分およびアルミニウム化合物を含む。また、オレフィン重合用触媒は、別の実施形態において、上記のオレフィン重合用固体触媒成分、アルミニウム化合物および外部電子供与体を含む。
【0073】
アルミニウム化合物は、炭素-アルミニウム結合もしくはハロゲン-アルミニウム結合を1つ以上有する化合物であり、具体的には、特開平10-212319号公報に記載された化合物やトリハロゲン化アルミニウム(AlX3:Xはハロゲン)を例示することができる。中でも、好ましくは、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルミニウムトリハライド、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、または、アルキルアルモキサンであり、さらに好ましくはトリエチルアルミニウムである。
【0074】
外部電子供与体としては、特許第2950168号公報、特開2006-96936号公報、特開2009-173870号公報、および特開2010-168545号公報に記載された化合物を例示することができる。中でも、好ましくは酸素含有化合物または窒素含有化合物である。酸素含有化合物として、アルコキシケイ素化合物、エーテル、エステル、およびケトンを例示することができる。中でも、好ましくはアルコキシケイ素化合物またはエーテルである。窒素含有化合物として、アミノケイ素、アミン、イミン、アミド、イミド、シアンを例示することができる。中でも、好ましくはアミノケイ素化合物である。
【0075】
外部電子供与体としてのアルコキシケイ素化合物またはアミノケイ素化合物は、下式のケイ素化合物が好ましい。
成分(C):下記式(i)または(ii)で表されるケイ素化合物
R8’hSi(OR9)4-h (i)
(R8’:炭素原子数1~20のヒドロカルビル基または水素原子、R9:炭素原子数1~20のヒドロカルビル基、h:0≦h<4を満たす整数、R8’およびR9の一方または両方が複数存在する場合、複数のR8’およびR9は互いに同じであっても異なってもよい。)
R10
2Si(NR11R12)2 (ii)
(R10:炭素原子数1~20のヒドロカルビル基または水素原子、R11およびR12:炭素原子数1~12のヒドロカルビル基または水素原子)
【0076】
上式(i)におけるR8’およびR9のヒドロカルビル基としては、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基等が挙げられ、R8’およびR9のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、ノルマルブチル基、ノルマルペンチル基、ノルマルヘキシル基、ノルマルヘプチル基、およびノルマルオクチル基のような直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、および2-エチルヘキシル基のような分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、およびシクロオクチル基のような環状アルキル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基である。R8’およびR9のアラルキル基としては、ベンジル基、およびフェネチル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数7~20のアラルキル基である。R8’およびR9のアリール基としては、フェニル基、トリル基、およびキシリル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数6~20のアリール基である。R8’およびR9のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、および5-ヘキセニル基のような直鎖状アルケニル基;イソブテニル基、および5-メチル-3-ペンテニル基のような分岐状アルケニル基;2-シクロヘキセニル基、および3-シクロヘキセニル基のような環状アルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2~10のアルケニル基である。
【0077】
上式(i)で表されるアルコキシケイ素化合物の具体例としては、シクロヘキシルメチルジ、メトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ターシャリーブチルエチルジメトキシシラン、ターシャリーブチルノルマルプロピルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、セカンダリーブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシランが挙げられる。好ましくは、ターシャリーブチルノルマルプロピルジメトキシシランが挙げられる。
【0078】
上式(ii)におけるR10のヒドロカルビル基としては、上式R8’およびR9と同じもの等が挙げられる。
【0079】
上式(ii)におけるR11およびR12のヒドロカルビル基としては、アルキル基、アルケニル基等が挙げられ、R11およびR12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、ノルマルブチル基、ノルマルペンチル基、およびノルマルヘキシル基のような直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、イソペンチル基、およびネオペンチル基のような分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基のような環状アルキル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1~6の直鎖状アルキル基である。R4およびR5のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、および5-ヘキセニル基のような直鎖状アルケニル基;イソブテニル基、および5-メチル-3-ペンテニル基のような分岐状アルケニル基;2-シクロヘキセニル基、および3-シクロヘキセニル基のような環状アルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2~6の直鎖状アルケニル基であり、特に好ましくはメチル基およびエチル基である。
【0080】
上式(ii)で表されるアミノケイ素化合物の具体例としては、ビス(エチルアミノ)ジシクロペンチルシラン、ビス( エチルアミノ)ジイソプロピルシラン、ビス(メチルアミノ)ジターシャリーブチルシランが挙げられる。好ましくは、ビス(エチルアミノ)ジシクロペンチルシランが挙げられる。
また、WO2006/129773に記載されたアミノケイ素化合物も例示することができる。
【0081】
外部電子供与体のエーテルとして、好ましくは環状エーテル化合物である。環状エーテル化合物とは、環構造内に少なくとも一つの-C-O-C-結合を有する複素環式化合物であり、さらに好ましくは環構造内に少なくとも一つの-C-O-C-O-C-結合を有する環状エーテル化合物であり、特に好ましくは1,3-ジオキソラン、または1,3-ジオキサンである。
【0082】
外部電子供与体は、それぞれ単独で用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
オレフィン重合用固体触媒成分と、アルミニウム化合物と、外部電子供与体とを接触させる方法は、オレフィン重合用触媒が生成される限り、特に限定されない。接触は溶媒の存在下または非存在下で行われる。これらの接触混合物を重合槽に供給してもよいし、各成分を別々に重合槽に供給して重合槽中で接触させてもよいし、任意の二成分の接触混合物と残りの成分とを別々に重合槽に供給してこれらを重合槽中で接触させてもよい。
【0084】
アルミニウム化合物の使用量は、オレフィン重合用固体触媒成分1mgに対して、通常0.01~1000μmolであり、好ましくは0.1~700μmolである。
【0085】
外部電子供与体の使用量は、オレフィン重合用固体触媒成分1mgに対して、通常0.0001~1000μmolであり、好ましくは0.001~500μmolであり、より好ましくは0.01~150μmolである。
【0086】
オレフィン重合用触媒を形成する方法
本発明の利用例において上記製造方法は、上記のオレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合する。
【0087】
オレフィン重合用触媒を形成する方法は、一実施形態において、以下の工程からなる方法が好ましい場合がある:
(i)オレフィン重合用固体触媒成分およびアルミニウム化合物の存在下、少量のオレフィン(主要な重合工程(通常、本重合と言われる)で使用されるオレフィンと同一または異なる)を重合させ(生成されるオレフィン重合体の分子量を調節するために水素のような連鎖移動剤を用いてもよいし、外部電子供与体を用いてもよい)、該オレフィンの重合体で表面が覆われた触媒成分を生成させる工程(該重合は通常、予備重合と言われ、したがって該触媒成分は通常、予備重合触媒成分と言われる)
(ii)予備重合触媒成分と、アルミニウム化合物および外部電子供与体とを接触させる工程。
【0088】
予備重合は好ましくは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼンおよびトルエンのような不活性炭化水素を溶媒とするスラリー重合である。
【0089】
上記工程(i)で用いられるアルミニウム化合物の量は、工程(i)で用いられる固体触媒成分中のチタン原子1mol当たり、通常0.5mol~700mol、好ましくは0.8mol~500mol、特に好ましくは1mol~200molである。
【0090】
予備重合されるオレフィンの量は、工程(i)で用いられるオレフィン重合用固体触媒成分1g当たり通常0.01g~1000g、好ましくは0.05g~500g、特に好ましくは0.1g~200gである。
【0091】
上記工程(i)のスラリー重合におけるオレフィン重合用固体触媒成分のスラリー濃度は、好ましくは1~500g-オレフィン重合用固体触媒成分/リットル-溶媒、特に好ましくは3~300g-オレフィン重合用固体触媒成分/リットル-溶媒である。
【0092】
予備重合の温度は、好ましくは-20℃~100℃、特に好ましくは0℃~80℃である。予備重合における気相部のオレフィンの分圧は、好ましくは0.01MPa~2MPa、特に好ましくは0.1MPa~1MPaであるが、予備重合の圧力や温度において液状であるオレフィンについては、この限りではない。予備重合の時間は、好ましくは2分間~15時間である。
【0093】
予備重合における、オレフィン重合用固体触媒成分、アルミニウム化合物およびオレフィンを重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)オレフィン重合用固体触媒成分とアルミニウム化合物とを供給した後、オレフィンを供給する方法
(2)オレフィン重合用固体触媒成分とオレフィンとを供給した後、アルミニウム化合物を供給する方法。
【0094】
予備重合における、オレフィンを重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)重合槽内の圧力を所定の圧力に維持するようにオレフィンを重合槽へ順次供給する方法
(2)オレフィンの所定量の全量を一括して重合槽へ供給する方法。
【0095】
予備重合で用いられる外部電子供与体の量は、オレフィン重合用固体触媒成分中に含まれるチタン原子1molに対して、通常0.01mol~400mol、好ましくは0.02mol~200mol、特に好ましくは、0.03mol~100molであり、アルミニウム化合物1molに対して、通常0.003mol~50mol、好ましくは0.005mol~30mol、特に好ましくは0.01mol~10molである。
【0096】
予備重合における、外部電子供与体を重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)外部電子供与体を単独で重合槽へ供給する方法
(2)外部電子供与体とアルミニウム化合物との接触物を重合槽へ供給する方法。
【0097】
本重合時のアルミニウム化合物の使用量は、オレフィン重合用固体触媒成分中のチタン原子1molあたり、通常1mol~1000mol、特に好ましくは5mol~600molである。
【0098】
本重合で外部電子供与体を使用する場合の外部電子供与体の使用量は、オレフィン重合用固体触媒成分中に含まれるチタン原子1molあたり、通常0.1mol~2000mol、好ましくは0.3mol~1000mol、特に好ましくは0.5mol~800molであり、アルミニウム化合物1molあたり、通常0.001mol~5mol、好ましくは0.005mol~3mol、特に好ましくは0.01mol~1molである。
【0099】
本重合の温度は、通常-30℃~300℃、好ましくは20℃~180℃である。重合圧力は特に制限されず、工業的かつ経済的であるという点で、一般に常圧~10MPa、好ましくは200kPa~5MPa程度である。重合はバッチ式または連続式であり、重合方法としてプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのような不活性炭化水素を溶媒とするスラリー重合法または溶液重合法や、重合温度において液状であるオレフィンを媒体とするバルク重合法や、気相重合法を例示することができる。
【0100】
本重合で得られる重合体の分子量を調節するために、連鎖移動剤(例えば、水素や、ジメチル亜鉛およびジエチル亜鉛のようなアルキル亜鉛)を用いてもよい。
【0101】
ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法
本発明の利用例においてヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法は、下記のものである:
チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子および内部電子供与体を含むオレフィン重合用固体触媒成分と、アルミニウム化合物とを接触させて得られるオレフィン重合用触媒の存在下で、プロピレンを重合して重合体(I)を形成する第1の重合工程と、
前記重合体(I)、及び、下記接触生成物の存在下で、プロピレンと、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種とを共重合して重合体(II)を形成する第2の重合工程と
を含む、ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
接触生成物:アルミニウム化合物と、下記式(1)もしくは式(2)で表される酸化防止剤とを接触させて得られる接触生成物。
【化1】
(式中、
nは1~4の整数を表す。
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のヒドロカルビル基または水素原子を示す。
RおよびR’は、炭素原子数1~20のヒドロカルビレン基を示す。
Aは、炭素原子数1~30のn価の炭化水素基を示す。)
【化2】
(式中、
R
3、R
4、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数5~8のシクロアルキル基、炭素原子数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素原子数7~12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R
5は水素原子または炭素原子数1~8のアルキル基を表す。
Xは単結合、硫黄原子もしくは-CHR
8-基(R
8は水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基または炭素原子数5~8のシクロアルキル基を示す)を表す。
A’は、炭素原子数2~8のヒドロカルビレン基を表す。
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基を表し、もう一方が水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
好ましくは、前記第2の重合工程において、前記接触生成物と前記重合体(I)とを接触させた後に、前記共重合を実施できる。
【0102】
本発明の利用例においてヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法は、上記のオレフィン重合用触媒の存在下でプロピレン等を重合する。
【0103】
上記ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法の一例を説明する。この製造方法は、第1の重合工程および第2の重合工程を含む。
【0104】
第1の重合工程:水素/プロピレン比が適切な条件で、液相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体(a)を得る工程1-a;および、
水素/プロピレン比が適切な条件で、気相で、プロピレンを含む単量体を重合し、少なくとも一部のプロピレン系重合体(a)を得る工程1-b
からなる群より選ばれる少なくとも一種の工程
および第2の重合工程:水素/プロピレン比が適切な条件で、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンとプロピレンとを含む単量体を重合し、プロピレン系共重合体(b)を得る工程
【0105】
ただし、本明細書において、水素/プロピレン比は、下記のように定義される。
液相で重合する場合、水素/プロピレン比は、反応器供給部における気体である水素と液体であるプロピレンとの物質量の比をいう。
気相で重合する場合、水素/プロピレン比は、反応装置出口における気体である水素と気体であるプロピレンとの物質量の比をいう。
本明細書において、例えば「水素/プロピレン比が1molppmである」との記載は、「水素/プロピレン比が1×10-6mol/molである」と同義であり、1molのプロピレンに対し、水素が1×10-6molであることを意味する。
水素/プロピレン比は、通常、0.00001~10mol/molであり、好ましくは、0.0001~1mol/molであり、より好ましくは、0.001~0.5mol/molである。
【0106】
[工程1-a]
工程1-aでは、例えば、液相重合反応器を用いて、重合触媒および水素の存在下で、プロピレンを含む単量体を重合する。重合に用いる単量体の構成は、プロピレン系重合体(a)を構成する構造単位の種類および含有量に基づき適宜調整できる。単量体中のプロピレンの含有量は、単量体の全質量に対して、例えば、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0107】
液相重合反応器としては、例えば、ループ型液相反応器およびベッセル型液相反応器が挙げられる。
【0108】
重合触媒としては、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒やメタロセン系触媒等が挙げられ、好ましくは、チーグラー・ナッタ型触媒である。チーグラー・ナッタ型触媒としては、例えば、上記のオレフィン重合用固体触媒成分とアルミニウム化合物と電子供与性化合物とを含有する触媒である。少量のオレフィンを接触させ、予備活性化させた触媒を重合触媒として用いることもできる。
【0109】
重合触媒として、上記のオレフィン重合用固体触媒成分、ノルマルヘキサン、トリエチルアルミニウム、ターシャリーブチルノルマルプロピルジメトキシシラン等の存在下で、オレフィンを予備重合させて得られる予備重合触媒成分を用いることもできる。予備重合に用いるオレフィンは、ヘテロファジックプロピレン重合材料を構成するオレフィンのうちのいずれかであることが好ましい。
【0110】
重合温度は、例えば0~120℃とすることができる。重合圧力は、例えば常圧~10MPaGとすることができる。
【0111】
工程1-aは、複数の反応器を用いて直列に多段で連続的に実施してもよい。
【0112】
[工程1-b]
工程1-bでは、例えば、気相重合反応器を用いて、重合触媒および水素の存在下で、プロピレンを含む単量体を重合する。重合に用いる単量体の構成は、プロピレン系重合体(a)を構成する構造単位の種類および含有量に基づき適宜調整できる。単量体中のプロピレンの含有量は、単量体の全質量に対して、例えば、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0113】
気相重合反応器としては、例えば、ベッセル型反応器、流動層型反応器および噴流層型反応器が挙げられる。
【0114】
気相重合反応器は、直列に接続された複数の反応領域を有する多段気相重合反応装置であってもよい。多段気相重合反応装置は、直列に接続された複数の重合槽を有する多段気相重合反応装置であってもよい。このような装置によれば、プロピレン系重合体(a)の極限粘度を上記範囲に調整し易いと考えられる。
【0115】
多段気相重合反応装置は、例えば、鉛直方向に延びる円筒部と、円筒部に形成され、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端にガス導入用開口を有する縮径部とを備え、縮径部の内面と縮径部よりも上方の円筒部の内面とによって囲まれ、その内部に噴流層が形成される噴流層型オレフィン重合反応領域と、流動層型オレフィン重合反応領域とを備えることができる。
【0116】
多段気相重合反応装置は、鉛直方向に複数の反応領域を有することが好ましい。多段気相重合反応装置は、プロピレン系重合体(a)の極限粘度の観点から、例えば、鉛直方向に複数の反応領域を有し、そのうち最上段が流動層型オレフィン重合反応領域であり、残りが複数の噴流層型オレフィン重合反応領域であることが好ましい。このような装置においては、例えば、装置の上部から固体成分を供給し、装置の下部から気体成分を供給することにより、反応領域に流動層又は噴流層を形成する。気体成分は、プロピレンを含む単量体および水素の他に、窒素等の不活性ガスを含んでいてもよい。当該装置において、噴流層型オレフィン重合反応領域の数は、3以上が好ましい。
【0117】
複数の反応領域を鉛直方向に設ける場合、下段の反応領域は、上段の反応領域の斜め下方向に配置されていてもよい。このような装置においては、例えば、上段の反応領域で得られた固体成分を斜め下方向に排出し、排出された固体成分は、下段の反応領域に、斜め上方向から供給される。この場合、気体成分は、例えば、下段の反応領域の上部から排出した気体成分を、上段の反応領域の下部から供給する。
【0118】
重合触媒の具体例は、上記同様である。
【0119】
重合温度は、例えば0~120℃であってもよく、20~100℃であってもよく、40~100℃であってもよい。重合圧力は、例えば常圧~10MPaGであってもよく、1~5MPaGであってもよい。
【0120】
[第2の重合工程]
第2の重合工程は、液相でも気相でもよいが、例えば、気相で実施される。液相で実施される場合、例えば、ループ型、ベッセル型等の液相反応器を用いることができる。気相で実施される場合、例えば、ベッセル型反応器、流動層型反応器、噴流層型反応器等の気相反応器を用いることができる。
【0121】
第2の重合工程では、例えば、重合触媒および水素の存在下で、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンとプロピレンとを含む単量体を重合する。重合に用いる単量体の構成は、プロピレン系共重合体(b)を構成する構造単位の種類および含有量に基づき適宜調整できる。重合に用いる単量体中のエチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンの含有量は、単量体の全質量に対して、例えば、30~55質量%であってもよく、35~50質量%であってもよい。
【0122】
重合触媒の具体例は、上記同様である。
【0123】
液相で重合する場合、重合温度は、例えば40~100℃であり、重合圧力は、例えば常圧~5MPaGである。気相で重合する場合、重合温度は、例えば40~100℃であり、重合圧力は、例えば0.5~5MPaGである。
【0124】
プロピレン系重合体(a)およびプロピレン系共重合体(b)を、それぞれの工程で作製し、重合触媒を失活させてから、これらを溶液状態、溶融状態等で混合してもよいが、触媒を失活させることなく、得られた重合体を次の工程に供給することにより、連続的に重合体を作製してもよい。触媒を失活させることなく連続的に重合する場合、前工程の重合触媒は、後工程の重合触媒としても作用する。
【0125】
第1の重合工程および第2の重合工程の順序に特に制限はない。第1の重合工程は、工程1-aおよび工程1-bを含むことができる。
【0126】
本実施形態に係る製造方法は、例えば、工程1-aと工程1-bと第2の重合工程とをこの順に含んでいてもよく、工程1-bを含まなくても良い。
【0127】
オレフィン重合体の製造方法
本発明の利用例においてオレフィン重合体の製造方法は、下記のものである:
下記オレフィン重合体(α)、及び、下記接触生成物の存在下で、
エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合を継続してオレフィン重合体を形成する工程を含む、オレフィン重合体の製造方法。
オレフィン重合体(α):オレフィン重合用固体触媒成分1gあたり、オレフィンが10kg以上60kg以下重合されたオレフィン重合体。
接触生成物:アルミニウム化合物と、下記式(1)もしくは式(2)で表される酸化防止剤とを接触させて得られる接触生成物。
【化1】
(式中、
nは1~4の整数を表す。
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のヒドロカルビル基または水素原子を示す。
RおよびR’は、炭素原子数1~20のヒドロカルビレン基を示す。
Aは、炭素原子数1~30のn価の炭化水素基を示す。)
【化2】
(式中、
R
3、R
4、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数5~8のシクロアルキル基、炭素原子数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素原子数7~12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R
5は水素原子または炭素原子数1~8のアルキル基を表す。
Xは単結合、硫黄原子もしくは-CHR
8-基(R
8は水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基または炭素原子数5~8のシクロアルキル基を示す)を表す。
A’は、炭素原子数2~8のヒドロカルビレン基を表す。
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基を表し、もう一方が水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
【0128】
本発明の利用例におけるオレフィン重合体の製造方法において、前記接触生成物中の酸化防止剤の量が、前記オレフィン重合体(α)100重量部当たり、好ましくは0.0001~1重量部、より好ましくは0.001~0.5重量部、更により好ましくは0.002~0.3重量部であることができる。
本発明の利用例におけるオレフィン重合体の製造方法において、「重合を継続してオレフィン重合体を形成する工程」は、本発明の利用例においてヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法における「第2の重合工程」と同等の工程であることができる。
オレフィン重合体(α)は、好ましくは「プロピレン重合体」であり、より好ましくは前記重合体(I)である。オレフィン重合体(α)は、本発明の利用例においてヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法における「第1の重合工程」と同等の工程によって製造されたものであることができる。
本発明の利用例においてオレフィン重合体の製造方法は、好ましくは、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法である。
【0129】
オレフィン重合体
本発明の利用例においてオレフィン重合体の製造方法により得られるオレフィン重合体は、好ましくは、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料である。
【0130】
酸化防止剤
本発明の利用例における製造方法において使用する酸化防止剤は、下記式(1)もしくは式(2)で表される酸化防止剤である:
【化1】
(式中、
nは1~4の整数を表す。
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のヒドロカルビル基または水素原子を示す。
RおよびR’は、炭素原子数1~20のヒドロカルビレン基を示す。
Aは、炭素原子数1~30のn価の炭化水素基を示す。)
【化2】
(式中、
R
3、R
4、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数5~8のシクロアルキル基、炭素原子数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素原子数7~12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R
5は水素原子または炭素原子数1~8のアルキル基を表す。
Xは単結合、硫黄原子もしくは-CHR
8-基(R
8は水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基または炭素原子数5~8のシクロアルキル基を示す)を表す。
A’は、炭素原子数2~8のヒドロカルビレン基を表す。
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基を表し、もう一方が水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
【0131】
上記の式中、好ましくは、n=1または4である。
【0132】
式(1)で表される酸化防止剤、及び、式(1)で表されないが本発明で使用可能な酸化防止剤としては、例えば次のようなものが挙げられる。
2,6-ジ-タシャリーブチル-4-エチルフェノール、2-ターシャリーブチル-4,6-ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-ターシャリーブチルフェノール)、2,2’-チオビス-(6-ターシャリーブチル-4-メチルフェノール)、2,2’-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]、2-メチル-4,6-ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール、2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、2,2’-オキサミド-ビス[エチル-3-(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]、2-エチルヘキシル-3-(3’,5’-ジ-タシャリーブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、2,2’-エチレンビス(4,6-ジ-タシャリーブチルフェノール)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパン酸およびC13~15アルキルのエステル、2,5-ジ-タシャリーアミルヒドロキノン、ヒンダードフェノールの重合物(アデカパルマロマール社製、商品名AO.OH.98)、2,2’-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、2-ターシャリーブチル-6-(3-ターシャリーブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリル酸、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-タシャリーペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-タシャリーペンチルフェニルアクリル酸、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、ビス[モノエチル(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホン酸カルシウム塩、5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾフラノンとo-キシレンとの反応生成物、2,6-ジ-タシャリーブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、DL-a-トコフェノール(ビタミンE)、2,6-ビス(α-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、ビス[3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-ターシャリーブチル-フェニル)ブタン酸]グリコールエステル、2,6-ジ-タシャリーブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、ジステアリル(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホン酸、トリデシル-3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]、4,4’-チオビス(6-ターシャリーブチル-m-クレゾール)、2-オクチルチオ-4,6-ジ(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェノキシ)-s-トリアジン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6ターシャリーブチルフェノール)、ビス[3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-ターシャリーブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’-ブチリデンビス(2,6-ジ-タシャリーブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-ターシャリーブチル-3-メチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-タシャリーブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-ターシャリーブチルフェニル)ブタン、ビス[2-ターシャリーブチル6-(2-ヒドロキシ-3-ターシャリーブチル-5-メチルベンジル)-4-メチル-フェニル]テレフタル酸、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-ターシャリーブチルベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌル酸、テトラキス[3-(3’,5’-ジ-タシャリーブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、2ターシャリーブチル-4-メチル-6-(2-アクロイルオキシ-3-ターシャリーブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス[2-(3-ターシャリーブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルヒドロシンナモイルオキシ)-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β-(3-ターシャリーブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸]、ステアリル-3-(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、パルミチル-3-(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、ミリスチル-3-(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、ラウリル-3-(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミドおよびそれらの混合物など。
また特に好ましいフェノール系酸化防止剤としては、テトラキス[3-(3’,5’-ジ-タシャリーブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-タシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸が挙げられる。
【0133】
式(2)で表される酸化防止剤としては、例えば、特許第4193223号に記載されたものが挙げられる。また、特に好ましいフェノールホスファイト系酸化防止剤としては、6-[3-[3-(3-ターシャリーブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-ターシャリーブチルジベンジ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンが挙げられる。
【0134】
また、式(1)もしくは式(2)と、リン系酸化防止剤を併用しても良い。リン系酸化防止剤としては、例えば次のようなものが挙げられる。
トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-タシャリーブチルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-タシャリーブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-タシャリーブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-タシャリーブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリターシャリーブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-タシャリーブチルフェニル)-4,4’-ジフェニレンジホスホナイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-タシャリーブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-タシャリーブチルフェニル)フルオロホスファイト、ビス(2,4-ジ-タシャリーブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト、ビス(2,4-ジ-タシャリーブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイト、2-(2,4,6-トリターシャリーブチルフェニル)-5-エチル-5-ブチル-1,3,2-オキサホスホリナン、2,2’,2’’-ニトリロ[トリエチル-トリス(3,3’,5,5’-テトラ-ターシャリーブチル-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイトおよびそれらの混合物など。
また特に好ましいリン系酸化防止剤としては、トリス(2,4-ジ-タシャリーブチルフェニル)ホスファイトが挙げられる。
【0135】
酸化防止剤と、上記式(3)で表されるアルミニウム化合物とを含む酸化防止剤混合液
本発明において、
上記式(3)で表されるアルミニウム化合物は、好ましくは、上記オレフィン重合用触媒における上記アルミニウム化合物と同じものであることができ、さらに好ましくはトリイソブチルアルミニウムである。
当該
酸化防止剤混合液は、アルミニウム化合物と酸化防止剤とを、酸化防止剤1g当たりアルミニウム化合物0.1~20mmol、好ましくは1~15mmolの比率で接触させることにより、得ることができる。
当該
酸化防止剤混合液は、単なる混合液して考えることが可能であるだけでなく、反応による接触生成物として考えることも可能である。当該接触生成物の化学構造式は、必ずしも明らかではないが、例えば、下記の反応式(式(1)で表される酸化防止剤とアルミニウム化合物(AlEt
3:トリエチルアルミニウム)との反応式)のように、酸化防止剤中の-OH基がアルミニウム化合物と反応して酸化防止剤がマスキングされた接触生成物を、一例として考えることが可能である。
【化A】
【実施例0136】
以下、実施例、および、比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0137】
<使用した酸化防止剤>
(1)Irganox1010
【化1】
・テトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール
・フェノール系酸化防止剤
・分子量:1178
【0138】
(2)Irgafos168
【化2】
・トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト
・ホスファイト系酸化防止剤
・分子量:647
【0139】
(3)Irganox1076
【化3】
・オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸
・フェノール系酸化防止剤
・分子量:531
【0140】
表1に示す材質からなる保管容器内を窒素ガスで置換した。その後、保管容器内へ、酸化防止剤、ヘキサン、および、有機アルミニウム化合物のヘキサン溶液(1mol/L)を表1に示す比率で加えた後、5分間撹拌した。その後、15~25℃で表1に示す保管圧力(ゲージ圧力、加圧にはアルゴンを使用)、保管期間で静置した後、沈殿の有無を目視で確認した。沈殿は、酸化防止剤中のヒドロキシ基と、有機アルミニウム化合物のアルキル基とが反応し、酸素架橋することで高分子量化、または、ネットワーク構造を形成し、不溶化して発生すると推定される。本願発明は、これらの反応を効果的に抑制するという効果がある。Rが炭素原子数4のアルキル基(炭素原子数3以上のアルキル基)である有機アルミニウム化合物を使用した実施例1~6では沈殿が確認されず、Rが炭素原子数2のアルキル基である(炭素原子数3以上のアルキル基ではない)有機アルミニウム化合物を使用した比較例1では、沈殿が確認された。実施例2および4において保管容器内の溶液の様子を撮影した写真を、それぞれ、
図1および
図2に示す。いずれの実施例も、沈殿が無いことが確認される。また、比較例1において保管容器内の溶液の様子を撮影した写真を、
図3に示す。比較例1では、沈殿が確認される。
【0141】
本発明によれば、沈殿を生じることなく、溶液状態で「マスキングされたフェノール系酸化防止剤」を金属製容器などの中部で長期間(所定期間)保管、もしくは滞留させることができるので、大規模工場における連続的なポリマー製造時において、沈殿が生じることによるプロセス上の問題を排除できる。本発明は、ヘテロファジックプロピレン重合材料又はオレフィン重合体などの製造において利用することができる。本発明を利用することによって得られたヘテロファジックプロピレン重合材料又はオレフィン重合体などは、射出成型用材料を含むインストルメントパネル、グローブボックス、トリム類、ハウジング類、ピラー、バンパー、フェンダー、バックドアーなどの各種自動車内外装部品をはじめ、家電機器の各種部品、各種住宅設備機器部品、各種工業部品、各種建材部品などの用途に好適に用いられ、輸送機械産業、電気電子産業、建築建設産業等の産業の各分野において高い利用可能性を有する。