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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119516
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】一体成型コイル及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20240827BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240827BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20240827BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240827BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240827BHJP
   H01F 27/08 20060101ALI20240827BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20240827BHJP
   H01F 27/22 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01F37/00 S
H02M7/48 Z
H01F37/00 N
H01F27/32 103
H01F27/29 H
H01F17/04 N
H01F27/32 140
H01F27/08 101
H01F27/30 101A
H01F27/22
H01F27/08 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026484
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山島 篤志
(72)【発明者】
【氏名】吉川 明孝
【テーマコード(参考)】
5E044
5E050
5E070
5H770
【Fターム(参考)】
5E044BB09
5E050BA03
5E050JA02
5E070AB08
5E070DA12
5E070DA18
5E070DB02
5H770PA22
5H770PA44
5H770QA01
5H770QA25
5H770QA35
(57)【要約】
【課題】冷却及び電磁シールドを簡易に実現すること。
【解決手段】本開示に係る一体成型コイルは、コイル部と、樹脂部と、を備える。前記樹脂部は、前記コイル部をインサートとして電気絶縁性及び熱伝導性を有する樹脂材料を成型して形成される。前記コイル部は、コイル本体と、それぞれが前記コイル本体から前記樹脂部の外部まで延びる一対以上のリードと、を有する。前記樹脂部の外表面は、電気伝導性を付与する表面処理が施され、かつ、前記一対以上のリードとは絶縁される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル部と、
前記コイル部をインサートとして電気絶縁性及び熱伝導性を有する樹脂材料を成型して形成される樹脂部と、を備え、
前記コイル部は、コイル本体と、それぞれが前記コイル本体から前記樹脂部の外部まで延びる一対以上のリードと、を有し、
前記樹脂部の外表面は、電気伝導性を付与する表面処理が施され、かつ、前記一対以上のリードとは絶縁される、
一体成型コイル。
【請求項2】
前記樹脂部は、前記コイル本体を内包する本体部と、前記本体部から延びて冷却部材と熱的及び電気的に接続される接続部と、を有し、
前記接続部は、前記冷却部材を介してグランド電位に接続される、
請求項1に記載の一体成型コイル。
【請求項3】
前記樹脂部の前記外表面から延びて、前記表面処理が施された前記外表面及び回路基板のそれぞれと電気的に接続される端子をさらに備え、
前記端子は、前記回路基板を介してグランド電位に接続される、
請求項1に記載の一体成型コイル。
【請求項4】
前記樹脂部は、前記コイル本体を内包する本体部と、前記本体部から延びて冷却部材と熱的に接続される接続部と、を有する、
請求項3に記載の一体成型コイル。
【請求項5】
前記樹脂部は、前記コイル本体を内包する本体部と、前記本体部から延びて拡大伝熱面を形成する拡大部と、を有する、
請求項3に記載の一体成型コイル。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の一体成型コイルと、
前記一対以上のリードに電気的に接続され、前記一対以上のリードを介して前記コイル本体に電力を供給する回路基板と、を備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一体成型コイル及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車などに搭載される充電器として、高周波ノイズを低減するためにトロイダルコイルなどのフィルタコイルを用いた電力変換装置が知られている。フィルタコイルは、その発熱が大きく、また、放射ノイズが発生する。このため、電力変換装置に関し、冷却及び電磁シールドを実現する技術には需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-123656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コイルをポッティングして放熱構造を形成したり、ダイカストや板金のケーシングを用いて電磁波シールド構造を形成したりするなど、放熱構造及び電磁波シールド構造を別途設ける必要があり、装置の小型化は困難であった。
【0005】
本開示が解決しようとする課題の一つは、冷却及び電磁シールドを簡易に実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る一体成型コイルは、コイル部と、樹脂部と、を備える。前記樹脂部は、前記コイル部をインサートとして電気絶縁性及び熱伝導性を有する樹脂材料を成型して形成される。前記コイル部は、コイル本体と、それぞれが前記コイル本体から前記樹脂部の外部まで延びる一対以上のリードと、を有する。前記樹脂部の外表面は、電気伝導性を付与する表面処理が施され、かつ、前記一対以上のリードとは絶縁される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、冷却及び電磁シールドを簡易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1の一体成型コイルの概略構成を示す平面図である。
図3図3は、図1の一体成型コイルの概略構成を示す正面図である。
図4図4は、図1の一体成型コイルの概略構成を示す下面図である。
図5図5は、第2の実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す概略斜視図である。
図6図6は、図5の一体成型コイルの概略構成を示す正面図である。
図7図7は、第3の実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す概略斜視図である。
図8図8は、図7の一体成型コイルの概略構成を示す平面図である。
図9図9は、図7の一体成型コイルの概略構成を示す正面図である。
図10図10は、図7の一体成型コイルの概略構成を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る一体成型(成形)コイル及び電力変換装置の実施形態について説明する。
【0010】
なお、本開示の説明において、既出の図に関して前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、説明を適宜省略する場合もある。また、同一又は略同一の部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表されている場合もある。また、例えば図面の視認性を確保する観点から、各図面の説明において主要な構成要素だけに参照符号を付し、既出の図において前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素であっても参照符号を付していない場合もある。また、既出の図に関して前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素については、参照符号の末尾にa、b又はcを付して区別している場合もある。あるいは、同一又は略同一の機能を有する複数の構成要素を区別しない場合には、参照符号の末尾に付されたa、b又はcを省略することにより統合して記載する場合もある。
【0011】
実施形態に係る電力変換装置1は、一例として、電気自動車などに搭載され、外部電源などの電源から供給される交流電力を所定の電圧の直流電力へ変換し、変換後の直流電力をリチウムイオンバッテリなどのバッテリへ出力する車載充電器である。実施形態に係る電力変換装置1は、DC/DCコンバータやインバータなどの回路構成が実装された、少なくとも1つの回路基板2を搭載する。
【0012】
実施形態に係る電力変換装置1は、例えば、電子部品や回路基板2、基板ユニットなどの複数の部品を、コネクタやカプラ、ネジ、ボルトなどの嵌合部材や接着剤を用いて結合することにより形成される。なお、実施形態に係る電力変換装置1においては、すべての部品間が結合されていなくてもよく、一部の部品間の電気的な接続や熱的な接続は、部品間の接触により実現されてもよい。また、結合又は接触する一部の部品間が絶縁又は断熱されていてもよい。
【0013】
実施形態に係る電子部品は、例えば、半導体素子、半導体モジュール、磁性体、コンデンサ及び遮断器などの部品である。半導体モジュールは、例えば複数の半導体素子により構成される。ここで、磁性体とは、トランスやトランス一体型プリント基板、変成器、リアクトル、チョークである。遮断器とは、リレーやヒューズである。
【0014】
実施形態に係る回路基板2は、例えば、プリント回路基板(PCB:Printed Circuit Board)である。プリント回路基板は、一例として、アルミニウム合金又は銅合金を母材として形成されたガラスエポキシ基板である。
【0015】
なお、実施形態に係る回路基板2は、基板ユニット、すなわち結合された複数の回路基板のうちの任意の回路基板であってもよい。
【0016】
なお、実施形態に係る回路基板2は、トランス、変成器、リアクトル又はチョーク等の磁性体の部品、すなわち磁性部品が有する回路基板であってもよい。この磁性部品は、例えば、導体パターンが巻線を形成する基板を有し、当該基板に形成された巻線の内側及び外側に磁性体コアを貫通させて閉磁路が形成されることにより、磁性部品としての機能を有してもよい。つまり、実施形態に係る磁性部品としての一体成型コイル5は、回路基板2を有していてもよい。
【0017】
なお、複数の部品としては、上記に限らず、電気的な接続のためのコネクタやカプラなどの端子部品、電力変換装置1の筐体や支持部材、冷却部品などが含まれてもよい。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置1aの構成の一例を示す概略斜視図である。図2は、図1の一体成型コイル5aの概略構成を示す平面図である。図3は、図1の一体成型コイル5aの概略構成を示す正面図である。図4は、図1の一体成型コイル5aの概略構成を示す下面図である。
【0019】
電力変換装置1aは、図1に示すように、回路基板2、冷却部材3及び一体成型コイル5aを有する。
【0020】
回路基板2は、一体成型コイル5aのコイル部55に電力を供給する。
【0021】
冷却部材3は、電力変換装置1aの冷却部品の一例である。冷却部材3は、一体成型コイル5aから放熱するための部品である。図1は、冷却部材3としてヒートシンクを例示する。冷却部材3は、電気伝導性及び熱伝導性を有する。一例として、冷却部材3は、アルミニウム合金又は銅合金により形成される。一例として、冷却部材3は、電力変換装置1の筐体や回路基板2などに電気的に接続されることにより、グランド(GND)電位に接続される。
【0022】
冷却部材3の基部31は、平板状の形状を有する。基部31の表面311(図面ではZ+側の面)には、少なくとも1つの凸部33が設けられている。図1は、2つの凸部33を例示する。凸部33は、基部31の表面311からZ+方向に延びる。凸部33は、冷却部材3に一体成型コイル5aを接続するために設けられる。一例として、凸部33は、Z+側から挿入されるネジ又はボルトと嵌合するネジ溝が設けられた穴部(図示しない)を有する。基部31の裏面312(図面ではZ-側の面)には、拡大部35が設けられている。拡大部35は、ヒートシンクの拡大伝熱面を形成する。なお、拡大部35は、矩形フィンに限らず、ピンフィンなど他の形状であってもよい。
【0023】
なお、冷却部材3としては、ヒートシンクに代えて、あるいはヒートシンクに加えて、熱拡散板や放熱シート、放熱ギャップフィラー、ヒートパイプなどの各種の放熱機構を適宜利用可能である。
【0024】
なお、冷却部材3は、電力変換装置1aの筐体に取り付けられてもよい。電力変換装置1aの筐体に取り付けられた冷却部材3は、一体成型コイル5aを含む複数の電子部品の間で共有されてもよい。これらの場合、一体成型コイル5aは、接続部53により電力変換装置1aの筐体に直接、熱的及び電気的に接続されてもよい。
【0025】
一体成型コイル5aは、電力変換装置1aの磁性部品の一例である。一体成型コイル5aは、図1図4に示すように、樹脂部50及びコイル部55を有する。一体成型コイル5aは、コイル部55をインサートとして配置した状態で樹脂部50を構成する樹脂を射出成型するインサート成型により形成される。なお、一体成型コイル5aは、射出成型の他の成型によりコイル部55の周囲に樹脂部50を設けることにより形成されてもよい。例えば、一体成型コイル5aは、コイル部55の周囲に樹脂を押出する押出し成型により形成されてもよい。例えば、一体成型コイル5aは、コイル部55の周囲に配置した樹脂シートを加圧によりコイル部55に圧着させる真空成型により形成されてもよい。このように、一体成型コイル5aにおいて樹脂部50及びコイル部55は、一体に形成されている。
【0026】
樹脂部50は、インサート成型に利用可能な樹脂材料により形成される。樹脂部50を形成する樹脂材料は、例えばフェノール樹脂などの熱硬化型の樹脂材料であるが、他の樹脂材料により形成されてもよい。他の樹脂材料としては、例えば、コイル部55の発熱に対する耐熱性及び熱伝導性を有し、かつ、コイル部55及び冷却部材3の間を絶縁可能な電気絶縁性を有する樹脂材料が適宜利用可能である。
【0027】
樹脂部50の本体部51は、コイル本体551を内包する部材である。図1図4は、リング状のコイル本体551の形状に沿うように形成された、円柱状の形状を有する本体部51を例示する。
【0028】
本体部51の側面513(図面ではZ軸に平行な面)には、少なくとも1つの接続部53が設けられている。図1図4は、2つの接続部53を例示する。接続部53は、本体部51の径方向において、本体部51の側面513から外側に向かって延びる。
【0029】
接続部53は、一体成型コイル5aに冷却部材3を接続するために設けられる。一例として、接続部53は、その表面531(図面ではZ+側の面)と裏面532(図面ではZ-側の面)との間を空間的に接続する、すなわち貫通するように設けられた穴部534を有する。穴部534には、ブッシュ56が挿入される。ブッシュ56は、例えば円筒状の形状を有する。ブッシュ56の穴部561は、接続部53の穴部534にZ+側から挿入されて冷却部材3の凸部33の穴部と嵌合するネジ又はボルトの軸径より僅かに大きい。ブッシュ56は、当該ネジ又はボルトと、接続部53の穴部534との間の隙間を埋めるための部品である。
【0030】
なお、本体部51の形状は、コイル本体551の形状に応じて他の形状であってもよいし、コイル本体551の形状に沿った形状でなくてもよい。
【0031】
なお、図1図4は、冷却部材3の基部31の表面311との接触面がX-Y面に平行な樹脂部50の接続部53を例示するが、これに限らない。接続部53は、例えば、その表面531又は裏面532からZ方向に延びるL字状の形状を有していてもよく、冷却部材3の基部31の表面311との接触面がZ方向に平行であるなど、X-Y面に平行でなくてもよい。
【0032】
コイル部55のコイル本体551は、コイル部55のコイル本体551は、例えばポッティングの場合と同様に、樹脂部50により覆われている。コイル本体551は、例えばトロイダルコイルなどのフィルタコイルであるが、他のコイルであっても構わない。コイル部55には、一対以上のリード552,553が設けられている。図1及び図2は、一対以上のリード552,553のうちの任意の一対のリードを例示する。つまり、コイル部55には、少なくとも一対のリードが設けられていればよく、図示しない他のリードが設けられていてもよく、3本以上の複数のリードが設けられていてもよい。一対以上のリード552,553のそれぞれの一端は、樹脂部50の内部においてコイル本体551に電気的に接続される。つまり、一対以上のリード552,553は、コイル本体551を介して電気的に接続される。一対以上のリード552,553のそれぞれの他の一端は、樹脂部50の外部まで延びる。換言すれば、一対以上のリード552,553は、それぞれがコイル本体551から樹脂部50の外部まで延びる一対以上のリードの一例である。
【0033】
電力変換装置1aにおいて、一体成型コイル5aは、冷却部材3に熱的及び電気的に接続される。具体的には、樹脂部50の本体部51の裏面512(図面ではZ-側の面)と、冷却部材3の基部31の表面311とは、その接触により熱的及び電気的に接続される。また、樹脂部50の接続部53の裏面532と、冷却部材3の凸部33とは、その接触により熱的及び電気的に接続される。換言すれば、樹脂部50の接続部53は、本体部51から延びて冷却部材3と熱的及び電気的に接続される。また、樹脂部50の接続部53は、冷却部材3を介してグランドGND電位に接続される。
【0034】
一例として、樹脂部50の接続部53と、冷却部材3の凸部33とは、樹脂部50の接続部53の穴部534にZ+側から挿入されるネジ又はボルトにより締結される。
【0035】
なお、樹脂部50の接続部53の裏面532と、冷却部材3の凸部33とは、ブッシュ56を介して電気的及び熱的に接続されてもよい。
【0036】
なお、樹脂部50の接続部53と、冷却部材3の凸部33とは、ネジ又はボルトによる結合に限らず、放熱ボンドなどの熱伝導性及び電気伝導性を有する接着剤により結合されてもよい。同様に、樹脂部50の本体部51の裏面512と、冷却部材3の基部31の表面311とは、放熱ボンドなどの熱伝導性及び電気伝導性を有する接着剤により結合されてもよい。また、樹脂部50の本体部51の裏面512と、冷却部材3の基部31の表面311とが結合される場合、樹脂部50の接続部53は、設けられていなくてもよい。
【0037】
電力変換装置1aにおいて、一体成型コイル5aは、回路基板2に電気的に接続される。具体的には、樹脂部50の本体部51から突出したコイル部55の一対以上のリード552,553は、回路基板2に設けられた回路パターン(図示しない)などに電気的に接続される。つまり、コイル部55のコイル本体551は、一対以上のリード552,553を介して回路基板2から電力の供給を受ける。例えば、フィルタコイルとしてのコイル本体551は、回路基板2の電力ラインを流れる電流の高周波成分を除去する。
【0038】
一例として、一対以上のリード552,553は、回路基板2の裏面202(図面ではZ-側の面)から表面201(図面ではZ+側の面)を貫通し、回路基板2の表面201上に設けられたはんだランドなどの回路パターンに、例えばはんだ接合により電気的に接続される。
【0039】
上記のように構成された電力変換装置1aにおいて、一体成型コイル5aの樹脂部50の外表面には、電気伝導性(導電性)を付与する表面処理が施されている。本実施形態では、表面処理として、電気伝導性を有するコーディングが施されている場合を例示する。なお、樹脂部50の外表面に対する表面処理は、金属めっき処理など、コーティングの他の処理であってもよい。
【0040】
具体的には、本体部51において、表面511(図面ではZ+側の面)のうちの一対以上のリード552,553との接触部分を除く領域と、裏面512と、側面513とのそれぞれには、電気伝導性を有するコーディングが施されている。つまり、本体部51の外表面に施されたコーティングは、一対以上のリード552,553と電気的に接続されない、すなわち絶縁される。また、接続部53において、表面531と、裏面532と、側面533と、穴部534の内周面とのそれぞれには、電気伝導性を有するコーディングが施されている。
【0041】
なお、ブッシュ56が樹脂などの導電性を有さない材料により形成されている場合、ブッシュ56の外表面にも金属コーティングが施されてもよい。
【0042】
一例として、電気伝導性を有するコーディングは、金属コーティングであってもよい。例えば、金属コーディングは、電気伝導性を有する、金属などの導電体を含有する塗料を、インサート成型後の一体成型コイル5aの外表面に対して塗布又は塗装することにより施されてもよい。
【0043】
一例として、金属コーティングは、コイル部55をインサートとして配置した状態で、金属箔などの導電性を有するフィルムをさらに配置し、樹脂部50を構成する樹脂をコイル部55とフィルムとの間に射出成型することにより施されてもよい。つまり、一体成型コイル5aは、インサート成型としての加飾成型により形成されても構わない。
【0044】
このように、実施形態に係る一体成型コイル5aは、一体成型の技術を用いてフィルタコイルを樹脂部材と一体に形成するとともに、インサート成型の成型品の外壁に金属コーティングによるシールド機能を付加することにより形成されている。つまり、実施形態に係る一体成型コイル5aは、コイル一体成型の技術と金属コーティングによるシールドとを組み合わせて形成されたコイル構造を有する。
【0045】
従来は、車載充電器のフィルタコイルは、発熱及び放射ノイズが大きいため、絶縁しながら冷却しつつ、電磁シールドを設ける必要があった。このような中、コイル部55を樹脂部50と一体成型化することにより、ポッティング以上の放熱構造を実現することができる。さらに、成型品の外表面に対して金属コーティングを施すことにより、静電シールド(静電遮蔽)構造を実現することができる。
【0046】
したがって、本開示のシールド機能を有するコイル一体成型構造によれば、一体成型により製造を簡単化するとともに、金属コーティングにより放熱機能及びシールド機能を付加できるため、冷却や電磁シールドのための大掛かりな構造を不要として内部構造を簡易化できる。つまり、上記構成によれば、冷却及び電磁シールドを簡易に実現することができる。
【0047】
例えば、ギャップフィラーや放熱シート、ポッティングなどによりコイルで発生した熱を筐体に放熱したり、筐体を強制水冷したりするための従来の冷却構造を不要とすることができる。また、例えば、大規模なシールド構造や間接材を使った放熱構造の削減により、製造面での制約を緩和することができる。
【0048】
さらに、一体成型コイル5aに施された金属コーティングは、例えば冷却部材3を介して筐体に電気的に接続されている。この構成によれば、金属コーティングによるシールド構造のGNDを取りつつ放熱を行うことができるため、部品数を低減することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本開示の第2の実施形態を説明する。ここでは、主として第1の実施形態との相違点を説明し、重複する説明については適宜省略する。
【0050】
図5は、第2の実施形態に係る電力変換装置1bの構成の一例を示す概略斜視図である。図6は、図5の一体成型コイル5bの概略構成を示す正面図である。
【0051】
本実施形態に係る一体成型コイル5bは、図5及び図6に示すように、GND(グランド)端子57をさらに有する。つまり、本実施形態に係る一体成型コイル5bは、第1の実施形態に係る一体成型コイル5aにGND端子57を加えた構成である。
【0052】
GND端子57は、図5に示すように、一端が樹脂部50の本体部51に電気的に接続され、他端が回路基板2に設けられた回路パターン(図示しない)などのGND電位のノードに電気的に接続される。GND端子57は、図6に示すように、樹脂部50の本体部51の表面511上に設けられる。GND端子57は、樹脂部50の外表面に設けられた金属コーティングに電気的に接続される。換言すれば、GND端子57は、樹脂部50の外表面から延びて金属コーティング及び回路基板2のそれぞれと電気的に接続される端子である。つまり、GND端子57は、回路基板2を介してGND電位に接続される。一方、GND端子57は、コイル部55とは接触せず、絶縁される。
【0053】
なお、GND端子57は、樹脂部50の本体部51の表面511に限らず、側面513上に設けられていてもよい。また、GND端子57は、冷却部材3上に設けられ、冷却部材3を介して一体成型コイル5bの金属コーティングの電位をGND電位に落としてもよい。
【0054】
なお、本実施形態に係る電力変換装置1bにおいて、冷却部材3は、電気伝導性を有していなくてもよい。また、冷却部材3は、電力変換装置1の筐体や回路基板2に電気的に接続されていなくてもよく、GND端子57を介さずにGND電位に接続されていなくてもよい。換言すれば、樹脂部50の接続部53は、本体部51から延びて冷却部材3と少なくとも熱的に接続される。
【0055】
なお、一体成型コイル5bは、コイル部55に加えてGND端子をインサートとして配置した状態で樹脂部50を構成する樹脂を射出成型するインサート成型により形成されてもよい。
【0056】
このように、一体成型コイル5aと、冷却部材3とは、電気的に接続されていなくてもよく、金属コーティングの電位を回路基板2のGND電位のノードに落としてもよい。この構成であっても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0057】
また、例えば冷却部材3により十分に冷却できる場合など、一体成型コイル5bを電力変換装置1bの筐体に取り付けて冷却する必要がない場合には、一体成型コイル5bを回路基板2にそのまま実装することができる。回路基板2に直接取り付ける構成によれば、電力変換装置1bの構成をより簡易化することができる。
【0058】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本開示の第3の実施形態を説明する。ここでは、主として第2の実施形態との相違点を説明し、重複する説明については適宜省略する。
【0059】
図7は、第3の実施形態に係る電力変換装置1cの構成の一例を示す概略斜視図である。図8は、図7の一体成型コイル5cの概略構成を示す平面図である。図9は、図7の一体成型コイル5cの概略構成を示す正面図である。図10は、図7の一体成型コイル5cの概略構成を示す下面図である。
【0060】
本実施形態に係る電力変換装置1cは、図7に示すように、冷却部材3を有さない。また、本実施形態に係る一体成型コイル5cの樹脂部50には、接続部53が設けられていない。一方、樹脂部50の本体部51の裏面512には、拡大部59が設けられている。
【0061】
拡大部59は、本体部51から延びて、ヒートシンクの拡大伝熱面を形成する。図7図10は、本体部51の円柱状の形状、すなわち裏面512の円状の形状に応じて、Y方向の長さがX方向に沿って変化するフィン列として形成された樹脂部50の拡大部59を例示する。
【0062】
なお、拡大部59の外表面、すなわち拡大伝熱面と、樹脂部50の本体部51の裏面512とのそれぞれには、金属コーティングが施される。
【0063】
なお、樹脂部50の拡大部59の形状は、本体部51の形状に沿う形状でなくてもよい。例えば、拡大部59は、X-Y面において本体部51の裏面512より大きくてもよく、矩形フィンであってもよい。
【0064】
なお、樹脂部50の拡大部59は、本体部51の裏面512に代えて、あるいは加えて、表面511や側面513に設けられていてもよい。
【0065】
このように、一体成型コイル5cの樹脂部50の一部を、インサート成型によりヒートシンク状に形成してもよい。この構成によれば、電力変換装置1cの構成をより簡易化することができる。
【0066】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、冷却及び電磁シールドを簡易に実現することができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0068】
(付記)
以上の実施の形態の記載により、下記の技術が開示される。
(1)
コイル部と、
前記コイル部をインサートとして電気絶縁性及び熱伝導性を有する樹脂材料を成型して形成される樹脂部と、を備え、
前記コイル部は、コイル本体と、それぞれが前記コイル本体から前記樹脂部の外部まで延びる一対以上のリードと、を有し、
前記樹脂部の外表面は、電気伝導性を付与する表面処理が施され、かつ、前記一対以上のリードとは絶縁される、
一体成型コイル。
(2)
前記樹脂部は、前記コイル本体を内包する本体部と、前記本体部から延びて冷却部材と熱的及び電気的に接続される接続部と、を有し、
前記接続部は、前記冷却部材を介してグランド電位に接続される、
上記(1)に記載の一体成型コイル。
(3)
前記樹脂部の前記外表面から延びて、前記表面処理が施された前記外表面及び回路基板のそれぞれと電気的に接続される端子をさらに備え、
前記端子は、前記回路基板を介してグランド電位に接続される、
上記(1)又は上記(2)に記載の一体成型コイル。
(4)
前記樹脂部は、前記コイル本体を内包する本体部と、前記本体部から延びて冷却部材と熱的に接続される接続部と、を有する、
上記(3)に記載の一体成型コイル。
(5)
前記樹脂部は、前記コイル本体を内包する本体部と、前記本体部から延びて拡大伝熱面を形成する拡大部と、を有する、
上記(3)に記載の一体成型コイル。
(6)
上記(1)から上記(5)のうちのいずれか一項に記載の一体成型コイルと、
前記一対以上のリードに電気的に接続され、前記一対以上のリードを介して前記コイル本体に電力を供給する回路基板と、を備える、
電力変換装置。
【符号の説明】
【0069】
1,1a,1b,1c 電力変換装置
2 回路基板
201 表面
202 裏面
3 冷却部材
31 基部
311 表面
312 裏面
33 凸部
35 拡大部
5,5a,5b,5c 一体成型コイル
50 樹脂部
51 本体部
511 表面
512 裏面
513 側面
53 接続部
531 表面
532 裏面
533 側面
534 穴部
55 コイル部
551 コイル本体
552 リード
553 リード
56 ブッシュ
561 穴部
57 GND端子
59 拡大部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10