(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119517
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 13/00 20060101AFI20240827BHJP
F24F 11/84 20180101ALI20240827BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F25B13/00 N
F25B13/00 104
F24F11/84
F25B1/00 304Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026487
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅利 峻
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
(72)【発明者】
【氏名】堀 福弥
【テーマコード(参考)】
3L092
3L260
【Fターム(参考)】
3L092EA18
3L092HA01
3L260AB03
3L260BA14
3L260BA15
3L260CB26
3L260FB07
(57)【要約】
【課題】異音の発生を抑制することができる冷凍サイクル装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の冷凍サイクル装置は、室外ユニットと、複数の室内ユニットと、第1配管と、第2配管と、第3配管と、切替ユニットと、制御部と、を持つ。室外ユニットは、圧縮機および室外熱交換器を含む。複数の室内ユニットは、室内膨張弁および室内熱交換器を含む。第1配管は、室外熱交換器と室内熱交換器との間で冷媒を流通させる。第2配管は、圧縮機から吐出された冷媒を室内熱交換器に流入させる。第3配管は、室内熱交換器から流出した冷媒を圧縮機に流入させる。切替ユニットは、室内熱交換器に対する第2配管および第3配管の接続を切り替える。制御部は、切替ユニットにおいて室内熱交換器が第3配管に接続された状態で、所定条件を満たす場合に、室内膨張弁の上限開度を設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機および室外熱交換器を含む室外ユニットと、
室内膨張弁および室内熱交換器を含む複数の室内ユニットと、
前記室外熱交換器と前記室内熱交換器との間で冷媒を流通させる第1配管と、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記室内熱交換器に流入させる第2配管と、
前記室内熱交換器から流出した冷媒を前記圧縮機に流入させる第3配管と、
前記室内熱交換器に対する前記第2配管および前記第3配管の接続を切り替える切替ユニットと、
前記切替ユニットにおいて前記室内熱交換器が前記第3配管に接続された状態で、所定条件を満たす場合に、前記室内膨張弁の上限開度を設定する制御部と、を有する、
冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記上限開度は、前記室内ユニットの能力情報および形態情報のうち少なくとも一つに応じた値である、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記所定条件は、前記上限開度の設定指示が前記制御部に入力されることである、
請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記所定条件は、前記室内ユニットが冷房運転を開始してから所定時間が経過していないことである、
請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記複数の室内ユニットに対応する枝配管および前記第3配管が接続される幹配管をさらに有し、
前記幹配管の軸方向に沿って前記第3配管からの距離が最大である前記枝配管に対応する前記室内ユニットを第1室内ユニットとしたとき、
前記制御部は、前記切替ユニットにおいて前記第1室内ユニットの前記室内熱交換器が前記第3配管に接続された状態で、前記所定条件を満たす場合に、前記第1室内ユニットの前記室内膨張弁の前記上限開度を設定する、
請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の室内ユニットにおいて冷房および暖房の同時運転を可能とする冷凍サイクル装置が利用されている。冷凍サイクル装置には、異音の発生を抑制することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、異音の発生を抑制することができる冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の態様1の冷凍サイクル装置は、室外ユニットと、複数の室内ユニットと、第1配管と、第2配管と、第3配管と、切替ユニットと、制御部と、を持つ。室外ユニットは、圧縮機および室外熱交換器を含む。複数の室内ユニットは、室内膨張弁および室内熱交換器を含む。第1配管は、室外熱交換器と室内熱交換器との間で冷媒を流通させる。第2配管は、圧縮機から吐出された冷媒を室内熱交換器に流入させる。第3配管は、室内熱交換器から流出した冷媒を圧縮機に流入させる。切替ユニットは、室内熱交換器に対する第2配管および第3配管の接続を切り替える。制御部は、切替ユニットにおいて室内熱交換器が第3配管に接続された状態で、所定条件を満たす場合に、室内膨張弁の上限開度を設定する。
【0006】
態様2の冷凍サイクル装置では、態様1の冷凍サイクル装置において、上限開度が、室内ユニットの能力情報および形態情報のうち少なくとも一つに応じた値である。
【0007】
態様3の冷凍サイクル装置では、態様1または2の冷凍サイクル装置において、所定条件が、上限開度の設定指示が制御部に入力されることである。
【0008】
態様4の冷凍サイクル装置では、態様1から3のいずれか1つの冷凍サイクル装置において、所定条件が、室内ユニットが冷房運転を開始してから所定時間が経過していないことである。
【0009】
態様5の冷凍サイクル装置は、態様1から4のいずれか1つの冷凍サイクル装置において、幹配管をさらに有する。幹配管には、複数の室内ユニットに対応する枝配管および第3配管が接続される。幹配管の軸方向に沿って第3配管からの距離が最大である枝配管に対応する室内ユニットが第1室内ユニットである。制御部は、切替ユニットにおいて第1室内ユニットの室内熱交換器が第3配管に接続された状態で、所定条件を満たす場合に、第1室内ユニットの室内膨張弁の上限開度を設定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の冷凍サイクル装置1を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態における冷凍サイクル装置1の回路図である。冷凍サイクル装置1は、室外ユニット11と、複数の室内ユニット10と、これらに冷媒を流通させる配管30と、を有する。冷凍サイクル装置1は、複数の室内ユニット10において冷房および暖房の同時運転を可能とする、熱回収型の空調システムである。
図1の例では、冷凍サイクル装置1が、第1室内ユニット10a、第2室内ユニット10b、第3室内ユニット10cおよび第4室内ユニット10dの、4個の室内ユニット10を有する。
【0012】
冷凍サイクル装置1は、R410A、R32、R1123、R454B、R466Aまたは二酸化炭素(CO2)等の冷媒を含む。冷媒は、相変化しながら冷凍サイクル装置1を循環する。本願では、冷媒の流通方向の下流側を単に「下流側」と呼び、冷媒の流通方向の上流側を単に「上流側」と呼ぶ場合がある。
【0013】
室外ユニット11は、圧縮機2と、逆止弁3と、四方弁18と、室外熱交換器8と、室外膨張弁6bと、を有する。四方弁18は、第1四方弁18aと、第2四方弁18bと、を有する。第1四方弁18aは、室外熱交換器8に対する圧縮機2の上流側および下流側の接続を切り替える。第2四方弁18bは、圧縮機2に対する第2配管32および第3配管33の接続を切り替える。
複数の室内ユニット10はそれぞれ、室内膨張弁6aと、室内熱交換器4と、を有する。例えば、室内膨張弁6aは電子制御弁(Pulse Motor Valve:PMV)である。室外膨張弁6bおよび室内膨張弁6aは、膨張装置6として機能する。
【0014】
配管30は、第1配管31と、第2配管32と、第3配管33と、を有する。
第1配管(液管)31は、室外熱交換器8と室内熱交換器4との間で冷媒を流通させる。室外膨張弁6bは、第1配管31に設置される。
第2配管(吐出ガス配管)32は、圧縮機2から吐出された冷媒を室内熱交換器4に流入させる。
第3配管(吸込ガス配管)33は、室内熱交換器4から流出した冷媒を圧縮機2に流入させる。
【0015】
冷凍サイクル装置1は、切替ユニット40を有する。切替ユニット40は、複数の室内ユニット10の室内熱交換器4に対する第2配管32および第3配管33の接続を切り替える。切替ユニット40は、枝配管61,62,63と、幹配管51,52,53と、開閉弁42,43と、を有する。
【0016】
切替ユニット40は、枝配管61,62,63として、第1枝配管61と、第2枝配管62と、第3枝配管63と、を有する。切替ユニット40は、複数の室内ユニット10に対応して、複数の第1枝配管61、複数の第2枝配管62および複数の第3枝配管63を有する。第1枝配管61は、室内膨張弁6aを介して、室内熱交換器4の入口および出口のうち一方に接続される。第2枝配管62および第3枝配管63は、接続配管67に合流する。接続配管67は、室内熱交換器4の入口および出口のうち他方に接続される。
【0017】
切替ユニット40は、幹配管51,52,53として、第1幹配管51と、第2幹配管52と、第3幹配管53と、を有する。第1幹配管51に対して、第1配管31および複数の第1枝配管61が接続される。第2幹配管52に対して、第2配管32および複数の第2枝配管62が接続される。第3幹配管53に対して、第3配管33および複数の第3枝配管63が接続される。第1~第3幹配管(ヘッダ管)に複数の枝配管が接続されて、第1~第3ヘッダが構成される。
【0018】
図2は、第3幹配管53および第3枝配管63の断面図である。第3幹配管53の一方の端部に第3配管33が接続される。第3幹配管53の他方の端部は閉塞される。複数の第3枝配管63が、第3幹配管53の軸方向に並んで、第3幹配管53の軸方向の中間部に接続される。第3幹配管53の軸方向に沿う第3配管33からの距離は、第1室内ユニット10aに対応する第3枝配管63が最大である。複数の第3枝配管63の先端が、第3幹配管53の内部に突出する。
図1に示される第1幹配管51の第1ヘッダおよび第2幹配管52の第2ヘッダも、第3幹配管53の第3ヘッダと同様に構成される。
【0019】
切替ユニット40は、開閉弁42,43として、第2開閉弁42と、第3開閉弁43と、を有する。第2開閉弁42は、第2枝配管62を開閉する。第3開閉弁43は、第3枝配管63を開閉する。第2枝配管62および第3開閉弁43は、いずれか一方のみが開弁される。第2枝配管62のみが開弁されるとき、第2配管32が第2幹配管52を介して室内熱交換器4に接続される。第3開閉弁43のみが開弁されるとき、第3配管33が第3幹配管53を介して室内熱交換器4に接続される。
【0020】
切替ユニット40の内部には、外側ストレーナ35および内側ストレーナ65が設置される。外側ストレーナ35は、幹配管51,52,53の室外ユニット11側の配管31,32,33に設置される。内側ストレーナ65は、幹配管51,52,53の室内ユニット10側の第1枝配管61および接続配管67に設置される。外側ストレーナ35および内側ストレーナ65は、配管を流通する冷媒中の異物を捕捉する。
【0021】
冷凍サイクル装置1は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、補助記憶装置などを有する。CPUは、メモリおよび補助記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、制御部19として機能する。制御部19は、冷凍サイクル装置1の各部の動作を制御する。制御部19は、四方弁18の動作を制御する。制御部19は、室外膨張弁6bおよび室内膨張弁6aの動作を制御する。制御部19は、開閉弁42,43の動作を制御する。
【0022】
全ての室内ユニット10が冷房運転を行う場合(単独冷房)について説明する。
制御部19は、全ての四方弁18を
図1の状態にする。圧縮機2の下流側が室外熱交換器8に接続される。制御部19は、全ての室内ユニット10に対応する第3開閉弁43を開弁し、第2開閉弁42を閉弁する。全ての室内ユニット10の室内熱交換器4が、第3配管33に接続される。
【0023】
圧縮機2は、内部に吸い込んだ低圧の気体冷媒を圧縮して高温・高圧の気体冷媒にする。圧縮機2から吐出された冷媒は、オイルセパレータ2bおよび逆止弁3を介して、第1四方弁18aに流入する。冷媒は、第1四方弁18aから室外ユニット11の室外熱交換器8に流入する。
【0024】
室外熱交換器8は、凝縮器(放熱器)として機能する。凝縮器は、圧縮機2から流入する高温・高圧の気体冷媒から放熱して、高温・高圧の気体冷媒を高圧の液体冷媒にする。
【0025】
室外熱交換器8から流出した冷媒は、第1配管31を通り、室外膨張弁6bおよび全ての室内ユニット10の室内膨張弁6aに流入する。室外膨張弁6bおよび室内膨張弁6aは、室外熱交換器8から供給される高圧の液体冷媒の圧力を下げ、高圧の液体冷媒を低温・低圧の気液二相冷媒にする。室内膨張弁6aから流出した冷媒は、室内熱交換器4に流入する。
【0026】
室内熱交換器4は、蒸発器(吸熱器)として機能する。蒸発器は、室内膨張弁6aから流入した気液二相冷媒を低圧の気体冷媒にする。全ての室内ユニット10の室内熱交換器4から流出した冷媒は、第3配管33を通り、アキュムレータ(気液分離器)2aを介して、圧縮機2に流入する。
【0027】
全ての室内ユニット10が暖房運転を行う場合(単独暖房)について説明する。
制御部19は、全ての四方弁18を
図1の状態から切り替える。圧縮機2の上流側が室外熱交換器8に接続される。第2配管32が圧縮機2の下流側に接続される。制御部19は、全ての室内ユニット10に対応する第2開閉弁42を開弁し、第3開閉弁43を閉弁する。全ての室内ユニット10の室内熱交換器4が、第2配管32に接続される。
【0028】
圧縮機2から吐出された冷媒は、第2四方弁18bおよび第2配管32を通り、全ての室内ユニット10の室内熱交換器4に流入する。室内熱交換器4は、凝縮器(放熱器)として機能する。全ての室内ユニット10の室内熱交換器4から流出した冷媒は、室内膨張弁6a、第1配管31および室外膨張弁6bを通り、室外熱交換器8に流入する。室外熱交換器8は、蒸発器(吸熱器)として機能する。室外熱交換器8から流出した冷媒は、第1四方弁18aを通り、圧縮機2に流入する。
【0029】
複数の室内ユニット10のうち、第1室内ユニット10aの暖房運転と、他の室内ユニット10b-10dの冷房運転とが、同時に実施される場合について説明する。冷凍サイクル装置1は、冷房を主体とする冷暖および暖房の同時運転(同時冷房)を実施する。
【0030】
制御部19は、第1四方弁18aを
図1の状態にする。圧縮機2の下流側が室外熱交換器8に接続される。制御部19は、第2四方弁18bを
図1の状態から切り替える。第2配管32が圧縮機2の下流側に接続される。
【0031】
制御部19は、第1室内ユニット10aに対応する第2開閉弁42を開弁し、第3開閉弁43を閉弁する。第1室内ユニット10aの室内熱交換器4が、第2配管32に接続される。制御部19は、他の室内ユニット10b,10c,10dに対応する第3開閉弁43を開弁し、第2開閉弁42を閉弁する。他の室内ユニット10b,10c,10dの室内熱交換器4が、第3配管33に接続される。
【0032】
圧縮機2から吐出された冷媒が、第2四方弁18bおよび第2配管32を通り、第1室内ユニット10aに流入する。第1室内ユニット10aの室内熱交換器4が凝縮器(放熱器)として機能する。この室内熱交換器4から流出した冷媒は、第1幹配管51に流入する。
【0033】
圧縮機2から吐出された冷媒が、第1四方弁18a、室外熱交換器8および第1配管31を通り、第1幹配管51に流入する。第1幹配管51の冷媒が、他の室内ユニット10b,10c,10dに流入する。他の室内ユニット10b,10c,10dの室内熱交換器4が蒸発器(吸熱器)として機能する。これらの室内熱交換器4から流出した冷媒は、第3配管33を通り、圧縮機2に流入する。
【0034】
複数の室内ユニット10のうち、第1室内ユニット10aの冷房運転と、他の室内ユニット10b-10dの暖房運転とが、同時に実施される場合について説明する。冷凍サイクル装置1は、暖房を主体とする冷暖および暖房の同時運転(同時暖房)を実施する。
【0035】
制御部19は、第1四方弁18aを
図1の状態から切り替える。圧縮機2の上流側が室外熱交換器8に接続される。制御部19は、第2四方弁18bを
図1の状態にする。
【0036】
制御部19は、第1室内ユニット10aに対応する第3開閉弁43を開弁し、第2開閉弁42を閉弁する。第1室内ユニット10aの室内熱交換器4が、第3配管33に接続される。制御部19は、他の室内ユニット10b,10c,10dに対応する第2開閉弁42を開弁し、第3開閉弁43を閉弁する。他の室内ユニット10b,10c,10dの室内熱交換器4が、第2配管32に接続される。
【0037】
圧縮機2から吐出された冷媒が、第2四方弁18bおよび第2配管32を通り、他の室内ユニット10b,10c,10dに流入する。他の室内ユニット10b,10c,10dの室内熱交換器4が凝縮器(放熱器)として機能する。これらの室内熱交換器4から流出した冷媒は、第1幹配管51に流入する。第1幹配管51の冷媒の一部が、第1配管31および室外熱交換器8を通り、圧縮機2に流入する。
【0038】
第1幹配管51の冷媒の残部が、第1室内ユニット10aに流入する。第1室内ユニット10aの室内熱交換器4が蒸発器(吸熱器)として機能する。この室内熱交換器4から流出した冷媒は、第3配管33を通り、圧縮機2に流入する。
【0039】
室内ユニット10の冷房運転中に発生する異音について説明する。
室内ユニット10が冷房運転を行う場合に、室内熱交換器4は蒸発器(吸熱器)として機能する。室内熱交換器4は、気液二相冷媒を低圧の気体冷媒に変化させる。室内ユニット10が冷房運転を行う場合に、第3開閉弁43が開弁され、第2開閉弁42が閉弁される。室内熱交換器4は、第3配管33に接続される。室内熱交換器4から流出した冷媒は、接続配管67、第3枝配管63、第3幹配管53および第3配管33を通り、圧縮機2に流入する。
【0040】
室内熱交換器4から気液二相冷媒が流出する場合がある。気液二相冷媒に含まれる液体冷媒が圧縮機2に流入すると、圧縮機2が故障する可能性がある。制御部19は、室内熱交換器4から流出する冷媒の過熱度の目標値を設定する。制御部19は、過熱度が目標値を上回るように、室内膨張弁6aの開度を制御する。過熱度が目標値を上回ることにより、室内熱交換器4からの液体冷媒の流出が抑制される。
【0041】
室内ユニット10の運転の開始時または停止時や、圧縮機2の回転数の変化時などに、過熱度が目標値を下回る場合がある。この場合には、室内熱交換器4から液体冷媒を含む気液二相冷媒が流出する。液体冷媒が接続配管67、第3枝配管63、第3幹配管53および第3配管33を流通する過程で、異音が発生する。異音は、4~7Hz程度のキーン音である。異音は、接続配管67に設置された内側ストレーナ65、第3枝配管63に設置された第3開閉弁43、第3幹配管53の内部、または第3配管33に設置された外側ストレーナ35などで発生する。
図2に示されるように、第3幹配管53の内部には、第3枝配管63の先端が突出している。液体冷媒が第3幹配管53の内部を流通するとき、第3枝配管63の先端で渦が発生すると、異音発生のリスクが高くなる。
【0042】
制御部19は、所定条件を満たす場合に、冷房運転を行う室内ユニット10の冷媒流量抑制動作を行う。制御部19は、冷媒流量抑制動作として、冷房運転を行う室内ユニット10の室内膨張弁6aの上限開度(開度の上限値)を設定する。上限開度は、冷凍サイクル装置1に応じて予め決定された一定値である。上限開度は、室内ユニット10が冷房定格条件で運転を行う場合に、過熱度が目標値よりも大きくなるような室内膨張弁6aの開度である。例えば、開度制御範囲が0~500plsの室内膨張弁6aであれば、上限開度が150plsに設定される。
【0043】
制御部19は、室内膨張弁6aの開度が上限開度以下となるように制御する。室内熱交換器4を流通する冷媒の流量が制限される。室内熱交換器4での熱交換が少量の冷媒に対して行われるので、冷媒の温度が上昇しやすくなる。室内熱交換器4から流出する冷媒の過熱度が目標値を上回る。室内熱交換器4からの液体冷媒の流出が抑制される。液体冷媒の流通に伴う異音の発生が抑制される。
【0044】
上限開度は、室内ユニット10の能力情報および形態情報のうち少なくとも一つに応じた値である。一般に、室内ユニット10の能力および形態により、冷媒循環量が異なる。室内ユニット10のパフォーマンスの発揮と異音の抑制とのバランスが取れるように、上限開度が設定される。
【0045】
室内ユニット10の能力が大きいほど、上限開度は大きな値に設定される。室内ユニット10の能力が小さいほど、上限開度は小さな値に設定される。室内ユニット10の能力は、馬力(HP)で表される。例えば、室内ユニット10の能力が6HPの場合に、上限開度が200plsに設定される。室内ユニット10の能力が1HPの場合に、上限開度が100plsに設定される。
【0046】
室内ユニット10の形態により、室内熱交換器4の熱交換量が異なる。室内熱交換器4の熱交換量が大きいほど、上限開度は大きな値に設定される。室内熱交換器4の熱交換量が小さいほど、上限開度は小さな値に設定される。例えば、室内ユニット10の形態が天井カセット形4方向吹出タイプの場合には、室内熱交換器4の熱交換量が大きいので、上限開度が170plsに設定される。室内ユニット10の形態がダクトタイプの場合には、室内熱交換器4の熱交換量が小さいので、上限開度が130plsに設定される。
【0047】
前述されたように、制御部19は、所定条件を満たす場合に、室内膨張弁6aの上限開度を設定する。
所定条件の一つは、上限開度の設定指示が制御部19に入力されることである。冷凍サイクル装置1の操作者(保守作業者またはユーザなど)は、異音が聞こえた場合に、上限開度の設定指示を入力する。操作者は、室外ユニット11の制御基板または室内ユニット10の遠隔操作機器(リモートコントローラ)などから、上限開度の設定指示を入力する。制御部19は、上限開度の設定指示が入力された場合に、室内膨張弁6aの上限開度を設定する。室内ユニット10の冷房運転中における異音の発生が抑制される。
【0048】
所定条件の一つは、室内ユニット10が冷房運転を開始してから、所定時間が経過していないことである。室内ユニット10の運転停止中には、冷媒の温度が低下するため、室内ユニット10に液体冷媒が滞留している。室内ユニット10の運転開始時には、滞留していた液体冷媒が流通するので、異音が発生しやすい。制御部19は、室内ユニット10が冷房運転を開始してから所定時間が経過するまで、室内膨張弁6aの上限開度を設定する。室内ユニット10の冷房運転の開始時における異音の発生が抑制される。
【0049】
室内ユニットの冷房運転の開始時に設定される第1上限開度は、操作者の指示に基づいて設定される第2上限開度と同じである。第1上限開度は、第2上限開度より小さくてもよい。異音の発生が良好に抑制される。
第1上限開度が設定される所定時間は、第1上限開度の大きさに応じて予め決定されている。所定時間は、滞留していた液体冷媒が気化するのに十分な時間である。
制御部19が第1上限開度の設定を開始するタイミングは、室内ユニット10が冷房運転を開始する時点に代えて、圧縮機2が運転を開始する時点でもよい。
【0050】
図2に示されるように、切替ユニット40は、第3幹配管53を有する。第3幹配管53には、第3配管33と、複数の室内ユニット10に対応する第3枝配管63とが接続される。第1室内ユニット10aは、第3幹配管53の軸方向に沿って、第3配管33からの距離が最大の第3枝配管63に対応する室内ユニット10である。制御部19は、所定条件を満たす場合に、冷房運転を行う第1室内ユニット10aの室内膨張弁6aの上限開度を設定する。
【0051】
第1室内ユニット10aに対応する第3枝配管63を「端部の第3枝配管63」と呼び、他の室内ユニット10b,10c,10dに対応する第3枝配管63を「他の第3枝配管63」と呼ぶ。第1室内ユニット10aが冷房運転を行う場合に、端部の第3枝配管63から第3幹配管53に冷媒が流入する。第3幹配管53の内部において、端部の第3枝配管63と第3配管33との間には、他の第3枝配管63の先端が突出している。端部の第3枝配管63から第3幹配管53に流入した液体冷媒は、他の全ての第3枝配管63の先端を通過する。他の第3枝配管63の先端で渦が発生すると、異音発生のリスクが高くなる。端部の第3枝配管63から第3幹配管53に流入した液体冷媒は、他の第3枝配管63から第3幹配管53に流入した冷媒に比べて、第3枝配管63の先端を通過する機会が多い。第1室内ユニット10aが冷房運転を行う場合には、他の室内ユニット10b,10c,10dが冷房運転を行う場合に比べて、異音発生のリスクが高くなる。
【0052】
制御部19は、少なくとも第1室内ユニット10aが冷房運転を行う場合に、室内膨張弁6aの上限開度を設定する。端部の第3枝配管63から第3幹配管53への液体冷媒の流入が抑制される。異音の発生が良好に抑制される。制御部19は、他の室内ユニット10b,10c,10dが冷房運転を行う場合にも、室内膨張弁6aの上限開度を設定することが望ましい。異音の発生が良好に抑制される。
【0053】
以上に詳述されたように、実施形態の冷凍サイクル装置1は、室外ユニット11と、複数の室内ユニット10と、第1配管31と、第2配管32と、第3配管33と、切替ユニット40と、制御部19と、を持つ。室外ユニット11は、圧縮機2および室外熱交換器8を含む。複数の室内ユニット10は、室内膨張弁6aおよび室内熱交換器4を含む。第1配管31は、室外熱交換器8と室内熱交換器4との間で冷媒を流通させる。第2配管32は、圧縮機2から吐出された冷媒を室内熱交換器4に流入させる。第3配管33は、室内熱交換器4から流出した冷媒を圧縮機2に流入させる。切替ユニット40は、室内熱交換器4に対する第2配管32および第3配管33の接続を切り替える。制御部19は、切替ユニット40において室内熱交換器4が第3配管33に接続された状態で、所定条件を満たす場合に、室内膨張弁6aの上限開度を設定する。
【0054】
室内膨張弁6aの上限開度を設定することにより、室内熱交換器4を流通する冷媒の流量が制限される。室内熱交換器4での熱交換が少量の冷媒に対して行われるので、冷媒の温度が上昇しやすくなる。室内熱交換器4から流出する冷媒の過熱度が目標値を上回る。室内熱交換器4からの液体冷媒の流出が抑制される。液体冷媒の流通に伴う異音の発生が抑制される。
【0055】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、冷房運転を行う室内ユニット10の室内膨張弁6aの上限開度を設定する制御部19を持つ。これにより、異音の発生を抑制することができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
1…冷凍サイクル装置、2…圧縮機、4…室内熱交換器、6a…室内膨張弁、8…室外熱交換器、10…室内ユニット、10a…第1室内ユニット、11…室外ユニット、19…制御部、31…第1配管、32…第2配管、33…第3配管、40…切替ユニット、53…第3幹配管(幹配管)、63…第3枝配管(枝配管)。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機および室外熱交換器を含む室外ユニットと、
室内膨張弁および室内熱交換器を含む複数の室内ユニットと、
前記室外熱交換器と前記室内熱交換器との間で冷媒を流通させる第1配管と、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記室内熱交換器に流入させる第2配管と、
前記室内熱交換器から流出した冷媒を前記圧縮機に流入させる第3配管と、
前記室内熱交換器に対する前記第2配管および前記第3配管の接続を切り替える切替ユニットと、
前記切替ユニットにおいて前記室内熱交換器が前記第3配管に接続された状態で、所定条件を満たす場合に、前記室内膨張弁の上限開度を設定する制御部と、を有し、
前記複数の室内ユニットに対応する枝配管および前記第3配管が接続される幹配管をさらに有し、
前記幹配管の軸方向に沿って前記第3配管からの距離が最大である前記枝配管に対応する前記室内ユニットを第1室内ユニットとしたとき、
前記幹配管の内部において、前記第1室内ユニットに対応する前記枝配管と前記第3配管との間に、前記第1室内ユニット以外の前記複数の室内ユニットに対応する前記枝配管の先端が突出し、
前記制御部は、前記切替ユニットにおいて前記第1室内ユニットの前記室内熱交換器が前記第3配管に接続された状態で、前記所定条件を満たす場合に、前記第1室内ユニットの前記室内膨張弁の前記上限開度を設定する、
冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記上限開度は、前記室内ユニットの能力情報および形態情報のうち少なくとも一つに応じた値である、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記所定条件は、前記上限開度の設定指示が前記制御部に入力されることである、
請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記所定条件は、前記室内ユニットが冷房運転を開始してから所定時間が経過していないことである、
請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
実施形態の態様1の冷凍サイクル装置は、室外ユニットと、複数の室内ユニットと、第1配管と、第2配管と、第3配管と、切替ユニットと、制御部と、幹配管と、を持つ。室外ユニットは、圧縮機および室外熱交換器を含む。複数の室内ユニットは、室内膨張弁および室内熱交換器を含む。第1配管は、室外熱交換器と室内熱交換器との間で冷媒を流通させる。第2配管は、圧縮機から吐出された冷媒を室内熱交換器に流入させる。第3配管は、室内熱交換器から流出した冷媒を圧縮機に流入させる。切替ユニットは、室内熱交換器に対する第2配管および第3配管の接続を切り替える。制御部は、切替ユニットにおいて室内熱交換器が第3配管に接続された状態で、所定条件を満たす場合に、室内膨張弁の上限開度を設定する。幹配管には、複数の室内ユニットに対応する枝配管および第3配管が接続される。幹配管の軸方向に沿って第3配管からの距離が最大である枝配管に対応する室内ユニットを第1室内ユニットとする。幹配管の内部において、第1室内ユニットに対応する枝配管と第3配管との間に、第1室内ユニット以外の複数の室内ユニットに対応する枝配管の先端が突出する。制御部は、切替ユニットにおいて第1室内ユニットの室内熱交換器が第3配管に接続された状態で、所定条件を満たす場合に、第1室内ユニットの室内膨張弁の上限開度を設定する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】