(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119531
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】液体吐出記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/175 121
B41J2/175 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026511
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】324006865
【氏名又は名称】理想テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】五味 隆典
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EC15
2C056EC18
2C056EC61
2C056KA01
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB11
2C056KB13
2C056KB37
2C056KC02
2C056KC20
(57)【要約】
【課題】停止時に液体吐出ヘッドのノズル面負圧を保持できる、液体吐出記録装置を提供すること。
【解決手段】実施形態の液体吐出記録装置は、液体吐出ヘッドと、液体供給タンクと、ポンプと、第1タンクと、第2タンクと、を備える。液体吐出ヘッドは、液体を吐出する。液体供給タンクは、前記液体を貯留する。ポンプは、前記液体吐出ヘッド内を通過する液量と前記液体吐出ヘッドから吐出される液量の合算よりも供給する液量が大きく設定される、停止時に前記液体の流れを規制できる。第1タンクは、前記液体供給タンクの下流側及び前記ポンプの上流側に接続される、液面が前記液体吐出ヘッドのノズル面よりも低い位置にある。第2タンクは、前記ポンプの下流側及び前記液体吐出ヘッドの上流側に接続される、液面が前記液体吐出ヘッドの前記ノズル面よりも高い位置にある。前記第1タンクの前記液面と前記第2タンクの前記液面との液面差をhとしたときに、停止中に前記液体吐出ヘッドの前記ノズル面は、液面差hの中点以上にある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体を貯留する液体供給タンクと、
前記液体吐出ヘッド内を通過する液量と前記液体吐出ヘッドから吐出される液量の合算よりも供給する液量が大きく設定される、停止時に前記液体の流れを規制できるポンプと、
前記液体供給タンクの下流側及び前記ポンプの上流側に接続される、液面が前記液体吐出ヘッドのノズル面よりも低い位置にある第1タンクと、
前記ポンプの下流側及び前記液体吐出ヘッドの上流側に接続される、液面が前記液体吐出ヘッドの前記ノズル面よりも高い位置にある第2タンクと、
を備え、
前記第1タンクの前記液面と前記第2タンクの前記液面との液面差をhとしたときに、停止中に前記液体吐出ヘッドの前記ノズル面は、液面差hの中点以上にある液体吐出記録装置。
【請求項2】
前記第1タンク及び前記第2タンクを接続するチューブと、
前記チューブに設けられるノーマルクローズの第1開閉弁と、
を備え、
前記第2タンクは、内部を2つの室に区画する第2タンク隔壁を有し、前記第2タンク隔壁で区画される一方の前記室が前記ポンプの下流側及び前記液体吐出ヘッドの上流側に接続され、前記第2タンク隔壁で区画される他方の前記室に前記チューブが接続される、請求項1に記載の液体吐出記録装置。
【請求項3】
ノーマルクローズの第2開閉弁を備え、
前記第2タンクは、大気開放部を有し、
前記第2開閉弁は、前記大気開放部を開閉する、請求項2に記載の液体吐出記録装置。
【請求項4】
前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁は、前記ポンプの駆動時に開く、請求項3に記載の液体吐出記録装置。
【請求項5】
前記液体供給タンク及び前記第1タンクを接続するチューブを備え、
前記第1タンクは、内部を2つの室に区画する第1タンク隔壁を有し、
前記液体供給タンク及び前記第1タンクを接続する前記チューブの下端は、前記第1タンク隔壁で区画される一方の前記室の前記第1タンク隔壁と同じ高さ位置に設けられる、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、液体吐出記録装置として、液体としてのインクを吐出する液体吐出ヘッドであるインクジェットヘッドを有し、インクを循環させてインクジェットヘッドにインクを供給するインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
インクジェットヘッドのインク循環方法では、圧力センサによる圧力検知、インクの液面検知、インク循環ポンプの流量可変等、安定したインクの循環を行うために、種々の制御を行う技術が知られている。しかしながら、インク循環停止時に、インクを保持できず、インクが下流に流れ、インクジェットヘッドからインクが抜ける虞がある。インクジェットヘッドからインクが抜けると、次回のインク循環開始が困難になることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-158557号公報
【特許文献2】特開2021-154514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、停止時に液体吐出ヘッドのノズル面負圧を保持できる、液体吐出記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の液体吐出記録装置は、液体吐出ヘッドと、液体供給タンクと、ポンプと、第1タンクと、第2タンクと、を備える。液体吐出ヘッドは、液体を吐出する。液体供給タンクは、前記液体を貯留する。ポンプは、前記液体吐出ヘッド内を通過する液量と前記液体吐出ヘッドから吐出される液量の合算よりも供給する液量が大きく設定される、停止時に前記液体の流れを規制できる。第1タンクは、前記液体供給タンクの下流側及び前記ポンプの上流側に接続される、液面が前記液体吐出ヘッドのノズル面よりも低い位置にある。第2タンクは、前記ポンプの下流側及び前記液体吐出ヘッドの上流側に接続される、液面が前記液体吐出ヘッドの前記ノズル面よりも高い位置にある。前記第1タンクの前記液面と前記第2タンクの前記液面との液面差をhとしたときに、停止中に前記液体吐出ヘッドの前記ノズル面は、液面差hの中点以上にある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る液体吐出記録装置の構成を概略的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る液体吐出記録装置1の構成を、
図1を用いて説明する。
図1は実施形態に係る液体吐出記録装置1の構成を概略的に示す説明図である。なお、
図1中に、駆動時におけるインク200の流れを矢印で示す。
【0009】
図1に示すように、液体吐出記録装置1は、液体吐出ヘッド3と、液体循環装置4と、制御装置5と、を備える。また、液体吐出記録装置1は、液体吐出ヘッド3を移動させる移動機構や、液体200を吐出する記録媒体を搬送する搬送機構を備えていてもよい。
【0010】
本実施形態の例において、液体吐出記録装置1は、液体200としてのインクを循環させて、液体吐出ヘッド3から記録媒体へインクを吐出する。このため、以下の説明において、液体吐出記録装置1をインクジェット記録装置1とし、液体吐出ヘッド3をインクジェットヘッド3とし、液体循環装置4をインク循環装置4とし、液体200をインク200として、以下説明する。
【0011】
インクジェットヘッド3には、ノズル面31に孔である複数のノズルが形成される。インクジェットヘッド3は、高さ方向の位置により、ノズル面31のノズルにメニスカスが形成され負圧が保たれるように調整される。インクジェットヘッド3は、アクチュエータを駆動することで、内部のインク200をノズルから吐出する。
【0012】
インク循環装置4は、インク供給タンク(液体供給タンク)11と、第1タンク12と、第2タンク13と、ポンプ14と、第1開閉弁15と、第2開閉弁16と、を備える。また、インク循環装置4は、インク供給タンク11、第1タンク12、第2タンク13、ポンプ14、第1開閉弁15及び第2開閉弁16を接続する複数のチューブ17を備える。
【0013】
ここで、複数のチューブ17は、インク供給タンク11及び第1タンク12を接続する第1チューブ171と、第1タンク12及び第2タンク13を接続する第2チューブ172及び第3チューブ173と、第2タンク13及びインクジェットヘッド3を接続する第4チューブ174と、インクジェットヘッド3及び第1タンク12を接続する第5チューブ175と、第2タンク13に設けられる大気開放用の第6チューブ(大気開放部)176と、を含む。
【0014】
インク供給タンク11は、インク200を貯留する。インク供給タンク11は、第1タンク12よりも高い位置に配置される。インク供給タンク11は、第1チューブ171を介して第1タンク12にインク200を供給する。例えば、インク供給タンク11は、密閉される。
【0015】
第1タンク12は、内部を複数の室、例えば、2つの第1室121及び第2室122に区画する、第1タンク12の天井よりも低い所定の高さの隔壁(第1タンク隔壁)123を有する。第1室121は、インク供給タンク11から供給されるインク200を貯留する。即ち、第1室121は、インク供給タンク11に貯留されたインク200の流れ方向で、インク供給タンク11の下流に接続される。第2室122は、隔壁123を超えて第1室121からオーバーフローしたインク200を貯留する。即ち、第1タンク12の第1室121に貯留される最大液面(液面LA)は、隔壁123の上端と同じ高さとなる。第1タンク12は、例えば、大気開放される。
【0016】
第2タンク13は、第1タンク12よりも高い位置に配置される。第2タンク13は、内部を複数の室、例えば、2つの第1室131及び第2室132に区画する、第1タンク12の天井よりも低い所定の高さの隔壁(第2タンク隔壁)133を有する。第1室131は、第1タンク12から供給されるインク200を貯留する。第2室132は、隔壁133を超えて第1室131からオーバーフローしたインク200を貯留する。即ち、第2タンク13の第1室131に貯留される最大液面(液面LB)は、隔壁133の上端と同じ高さとなる。
【0017】
第2タンク13の第1室131は、第1タンク12の第1室121と、第2チューブ172を介して接続される。第2タンク13の第2室132は、第1タンク12の第1室121と、第3チューブ173を介して接続される。また、第2タンク13の第1室131は、インクジェットヘッド3の上流側に、第4チューブ174を介して接続される。
【0018】
また、第2タンク13は、密閉されるとともに、上端に接続された大気開放部としての第6チューブ176及び第2開閉弁16を介して大気開放可能に形成される。
【0019】
ポンプ14は、第1タンク12の第1室121及び第2タンク13の第1室131を接続する第2チューブ172に設けられる。ポンプ14は、第1タンク12の第1室121の下流側に接続され、そして、第2タンク13の第1室131の上流側に接続される。ポンプ14は、駆動時に第2チューブ172を介して、ポンプ14の上流側に設けられる上流タンクである第1タンク12の第1室121のインク200を、ポンプ14の下流側に設けられる下流タンクである第2タンク13の第1室131に供給する。また、ポンプ14は、停止時において、インク200の移動を規制する。
【0020】
ポンプ14は、例えば、チューブポンプ(蠕動ポンプ)である。ポンプ14としてのチューブポンプは、駆動することで上流側から下流側へインク200を供給するとともに、停止することで、第2チューブ172を閉塞し、インク200の流れを規制する機能を有する。
【0021】
ポンプ14は、制御装置5に接続され、制御装置5から出力される駆動信号に基づいて駆動する。また、ポンプ14が駆動したときにポンプ14が下流へ供給するインク量は、インクジェットヘッド3内を通過するインク量とインクジェットヘッド3から吐出されるインク量の合算よりも大きく設定される。
【0022】
第1開閉弁15は、制御装置5に電気的に接続され、制御装置5からの出力信号に基づいて駆動する。第1開閉弁15は、常時閉であり、制御装置5から信号が入力されると開となる、ノーマルクローズの開閉弁である。第1開閉弁15は、第3チューブ173に設けられる。
【0023】
第2開閉弁16は、制御装置5に電気的に接続され、制御装置5からの出力信号に基づいて駆動する。第2開閉弁16は、常時閉であり、制御装置5から信号が入力されると開となる、ノーマルクローズの開閉弁である。第2開閉弁16は、第6チューブ176に設けられる。第2開閉弁16は、第2タンク13の大気開放部である第6チューブ176を開閉する。
【0024】
第1チューブ171は、インク供給タンク11及び第1タンク12を接続する。例えば、第1チューブ171の上端は、インク供給タンク11の下方、例えば、インク供給タンク11の下面に接続される。第1チューブ171の下端は、第1タンク12の第1室121に接続される。例えば、第1チューブ171の下端は、第1タンク12の隔壁123の上端と同じ高さに配置される。即ち、第1チューブ171の下端は、第1タンク12の第1室121の最大液面である液面LAと同じ高さに設定される。
【0025】
第2チューブ172は、第1タンク12及び第2タンク13を接続する。第2チューブ172は、第1タンク12の第1室121及び第2タンク13の第1室131を接続する。第2チューブ172の下端は、第1タンク12の第1室121の液面LAよりも低い位置に配置される。第2チューブ172の上端は、第2タンク13の第1室131の液面LBよりも低い位置に配置される。第2チューブ172の上端は、例えば、第2タンク13の第1室131の側壁の液面LBよりも低い位置に接続される。
【0026】
第3チューブ173は、第2タンク13及び第1タンク12を接続する。第3チューブ173は、第2タンク13の第2室132及び第1タンク12の第1室121を接続する。第3チューブ173の上端は、第2タンク13の第2室132の下方、例えば、第2室132の下面に接続される。第3チューブ173の下端は、第1タンク12の第1室121の液面LAよりも低い位置に配置される。例えば、第3チューブ173の内径(管径)は、例えば、第1チューブ171、第2チューブ172、第4チューブ174及び第5チューブ175の内径(管径)よりも大きい。
【0027】
第4チューブ174は、第2タンク13の第1室131及びインクジェットヘッド3を接続する。第4チューブ174の上端は、第2タンク13の第1室131の下方、例えば、第2タンク13の第1室131の下面に接続される。第4チューブ174の下端は、インクジェットヘッド3の供給管32に接続される。
【0028】
第5チューブ175は、インクジェットヘッド3及び第1タンク12の第1室121を接続する。第5チューブ175の上端は、インクジェットヘッド3の排出管33に接続される。第5チューブ175の下端は、第1タンク12の第1室121の液面LAよりも低い位置に配置される。第4チューブ174の内径及び第5チューブ175の内径は、例えば、同一径に形成される。なお、本実施形態の例において、第1チューブ171、第2チューブ172、第4チューブ174及び第5チューブ175は、同一径に形成される。
【0029】
第6チューブ176の一端は、第2タンク13の隔壁133よりも上方、例えば、第2タンク13の上面に接続される。第6チューブ176の他端には、第2開閉弁16が接続され、第2開閉弁16が開放することで、第2タンク13を大気開放とする。
【0030】
制御装置5は、インクジェットヘッド3、ポンプ14、第1開閉弁15及び第2開閉弁16に電気的に接続される。制御装置5は、インクジェットヘッド3、ポンプ14、第1開閉弁15及び第2開閉弁16に駆動信号を出力する。
【0031】
例えば、制御装置5は、インクジェットヘッド3からインク200を吐出できる駆動時において、ポンプ14に駆動信号を出力して、ポンプ14を駆動するとともに、第1開閉弁15及び第2開閉弁16に駆動信号を出力して、第1開閉弁15及び第2開閉弁16を開く。また、制御装置5は、駆動時において、インクジェットヘッド3のアクチュエータに駆動信号を出力し、アクチュエータを駆動することで、ノズル面31のノズルから、インク200を吐出する。
【0032】
また、例えば、制御装置5は、インクジェットヘッド3からインク200を吐出しない停止時においては、ポンプ14、第1開閉弁15及び第2開閉弁16に信号の出力を行わない。これにより、ポンプ14が停止し、ポンプ14におけるインク200の流れが規制されるとともに、ノーマルクローズの第1開閉弁15及び第2開閉弁16が閉じ、第1開閉弁15及び第2開閉弁16を通過するインク200の流れが規制される。
【0033】
次に、このような液体吐出記録装置1のインクジェットヘッド3のノズル面31と、インクジェットヘッド3に流体的に接続される第1タンク12の第1室121の液面LA及び第2タンク13の第1室131の液面LBとの関係について説明する。
【0034】
先ず、第1タンク12の第1室121の液面LAと第2タンク13の第1室131の液面LBとの高さ方向における液面差をhとすると、少なくともポンプ14の停止中におけるインクジェットヘッド3のノズル面31は、液面差hの中点(h/2)以上の高さ位置であって、且つ、第2タンク13よりも低い位置に設定される。好ましくは、インクジェットヘッド3のノズル面31は、液面差hの中点に対して水頭差Δhが生じる、液面差hの中点よりも高い位置に配置される。
【0035】
また、インクジェットヘッド3のノズル負圧は、液面差hと、水頭差Δhと、第4チューブ174の圧力損失及び第5チューブ175の圧力損失により、計算で求めることができる。なお、インクジェットヘッド3のノズル面31のノズル負圧の計算を簡素化する為に、インクジェットヘッド3の上流側に接続される第4チューブ174とインクジェットヘッド3の下流側に接続される第5チューブ175との長さと太さを同じにすることが好ましい。これは、第4チューブ174及び第5チューブ175の圧力損失で発生する圧力がインクジェットヘッド3のINとOUTにおいて同じとなり、相殺することができるためである。
【0036】
また、インク200の流量は、第4チューブ174の圧力損失、第5チューブ175の圧力損失、インクジェットヘッド3の内部圧力損失、及び、液面差hから求めることができる。
【0037】
次に、このような液体吐出記録装置1の駆動及び停止時におけるインク200の流れの一例について説明する。
【0038】
先ず、液体吐出記録装置1の駆動時及び停止時の双方において、インク供給タンク11は、第1タンク12の第1室121にインク200を供給する。実施形態において、インク供給タンク11は、密閉されていることから、第1チューブ171を介して第1室121にインク200を供給するとともに、第1チューブ171を介して空気を吸い込む。また、第1チューブ171の下端が、隔壁123の上端と同じ位置に配置されることから、第1タンク12の第1室121のインク200の液面が最大液面である液面LAに達すると、インク供給タンク11からのインク200の供給は停止する。
【0039】
なお、第1タンク12の第1室121に液面LAを超える余分なインク200が流れ込むと、第1室121のインク200は、隔壁123を超えて第2室122に移動する。これにより、第1タンク12の第1室121における液面LAは、常に一定の液面となる。例えば、第1タンク12の第1室121への余分なインク200の流れ込みは、液体吐出記録装置1の駆動時等において、第2タンク13の第2室132及び/又はインクジェットヘッド3の排出管33から第3チューブ173及び/又は第5チューブ175を介して流れたインク200の帰還流等により生じる。
【0040】
次に、インクジェット記録装置1の駆動時において、制御装置5は、ポンプ14を駆動し、そして、第1開閉弁15及び第2開閉弁16を開く。このため、第2タンク13が大気開放となり、ポンプ14により第1タンク12の第1室121から第2タンク13の第1室131へインクが供給される。よって、インク200は、第1タンク12の第1室121から第2チューブ172を通り、第2タンク13の第1室131へ移動するとともに、第2タンク13の第1室131から第4チューブ174、インクジェットヘッド3、第5チューブ175を通過して第1タンク12の第1室121へ移動する。このように、インクジェット記録装置1の駆動時においては、第1タンク12の第1室121、第2タンク13の第1室131及びインクジェットヘッド3の間でインク200の循環が行われる。
【0041】
また、駆動するポンプ14がインク200を下流へ供給するインク量は、インクジェットヘッド3内を通過するインク量とインクジェットヘッド3から吐出されるインク量との合算値よりも大きい。このため、ポンプ14から第2タンク13の第1室131に供給されたインク200の量は、第2タンク13の第1室131からインクジェットヘッド3を通過して第1タンク12に戻るインク200の循環流量よりも多い。しかしながら、第2タンク13の第1室131に供給され、そして、隔壁133(液面LB)を超えたインク200は、第1室131から第2室132へ移動する。また、第2タンク13は、第2開閉弁16が開状態にあるため、大気開放であり、また、第1開閉弁15が開状態にある。このため、第2室132へ移動したインク200は、第3チューブ173を介して、第1タンク12の第1室121に戻る。よって、第2タンク13の第1室131の液面LBは一定となる。また、第3チューブ173の内径を、第2チューブ172、第4チューブ174及び第5チューブ175の内径よりも大きくすることで、第2タンク13の第2室132のインク200の液面は上昇が抑制され、第2室132のインク200が隔壁133を超えることを防止できる。
【0042】
次に、インクジェット記録装置1の停止時においては、ポンプ14は、停止時において、インク200の流れを規制する機能を有することから、インク200は、ポンプ14を通過しない。また、インクジェット記録装置1の停止時においては、ノーマルクローズの第1開閉弁15及び第2開閉弁16が閉じる。これにより、第2タンク13は密閉され、そして、第3チューブ173の流路が閉塞される。また、インクジェットヘッド3は、第5チューブ175により第1タンク12の第1室121に接続されており、そして、インクジェットヘッド3ノズル面31は、液面差hの中点(h/2)以上の高さ位置にある。また、インクジェットヘッド3ノズル面31が液面差hの中点(h/2)より高い位置にある場合には、ノズル面31のノズルには、第4チューブ174の下端が配置される第1タンク12の第1室121の液面LAにより、h/2との水頭差Δh分のインクポテンシャルエネルギによる圧力が発生し、インクジェットヘッド3のノズル面31のノズルにおけるインクは負圧となる。
【0043】
よって、停止時におけるインクジェットヘッド3のノズル面31(ノズル)において、インク200の圧力は大気圧と釣り合うか、又は、大気圧に対して負圧となり、インク200がノズル面31から垂れることがない。
【0044】
また、インクジェット記録装置1の停止時において、インク200の流れが止まるため、第1タンク12の第1室121における液面LA及び第2タンク13の第1室131における液面LBは変わらない。よって、次回のインクジェット記録装置1の駆動時である、インク200の循環開始時において、第1開閉弁15及び第2開閉弁16が開状態となり、ポンプ14が駆動すると、インクジェットヘッド3のノズル面31におけるノズルの負圧は維持したまま、インク200の循環が開始される。
【0045】
このように構成されたインクジェット記録装置1によれば、インクジェットヘッド3のノズル面31を第1タンク12の第1室121の液面LA及び第2タンク13の第1室131の液面LBの液面差hの中点(h/2)以上の高さとした。また、第1開閉弁15及び第2開閉弁16は、ノーマルクローズの開閉弁であり、ポンプ14は、停止時にインク200が流れない機能を有する。これらの構成により、インクジェット記録装置1は、制御装置5に電源が供給されていないか、又は、制御装置5から信号がポンプ14、第1開閉弁15及び第2開閉弁16へ出力されていない停止時に、第2タンク13及びインクジェットヘッド3のインク200が第1タンク12に流れることを防止できる。また、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド3のノズルからインクが滴下することを防止できる。即ち、インクジェット記録装置1は、停止時において、インク200のポテンシャルエネルギを利用して、インクジェットヘッド3のノズル面31のノズルからインク200が滴下することを防止できる。このように、インクジェット記録装置1のインク循環装置4は、停止時にインクジェットヘッド3の液体を保持できる。
【0046】
よって、インクジェット記録装置1の停止時において、インクジェットヘッド3のノズル面31における負圧を維持できるとともに、インクジェット記録装置1の次回駆動時において、ノズル面31における負圧を維持したままインク200の循環を開始することができる。このため、インクジェット記録装置1は、次回のインクジェット記録装置1の駆動開始からインクジェットヘッド3からインク200を吐出する迄の間にインク供給のための制御動作を行う必要がなく、駆動からインク200を吐出可能とするまでの時間を短くすることができる。
【0047】
また、インク200のポテンシャルエネルギを利用する構成であることから、インクジェット記録装置1は、第1タンク12の第1室121及び第2タンク13の第1室131の液面管理にセンサ等を要さないことから、簡素な構成で液面管理を行うことができる。また、第1タンク12の第1室121の液面LA及び第2タンク13の第1室131の液面LBは、隔壁133によって一定に保たれる。このため、インクジェット記録装置1は、プログラムが必要とされる制御等の複雑な制御を液面管理に要することなく、装置構成及び制御を簡素化できる。
【0048】
また、ポンプ14の下流側の第2タンク13は、ポンプ14の駆動時に第2開閉弁16が開き、大気開放となることから、インクジェットヘッド3に供給されるインク200に、ポンプ14によるインク200の送液による脈動が生じることがない。よって、所望のインク200の循環流量でインク200の循環を行うことができるため、ノズル面31を含むインクジェットヘッド3内の圧力変動が抑制される。インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド3により液滴の吐出が安定し、印字精度を向上させることができる。
【0049】
また、インクジェット記録装置1は、インク供給タンク11を密閉し、インク供給タンク11及び第1タンク12の第1室121を接続する第1チューブの下端を隔壁123の上端(液面LAの高さ)に配置する。これにより、インク供給タンク11からインク循環系である第1タンク12の第1室121へのインク200の補充も自動的に行われる。よって、インクジェット記録装置1は、インク供給タンク11が空になるまで、インク供給タンク11から第1タンク12の第1室121へのインク200の供給の為の制御を行う必要がない。
【0050】
上述した実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、装置構成及び制御を簡素化できるとともに、停止時にインクジェットヘッド3のノズル面負圧を保持できる。
【0051】
なお、実施形態は上述した例に限定されない。例えば、上述した例では、ポンプ14は、チューブポンプ(蠕動ポンプ)である例を説明した。しかしながら、ポンプ14は、停止することで、第2チューブ172を閉塞し、インク200の流れを規制する機能を有する構成であればよい。例えば、ポンプ14は、インク200を上流側から下流側へ供給するポンプ本体と、ポンプ本体の駆動時に開放され、ポンプ本体の停止時に閉塞するノーマルクローズの開閉弁と、を備える構成であってもよい。
【0052】
また、上述した例では、第1タンク12は、第1室121から隔壁123を超えた液体200を第2室122で回収する例を説明した。しかしながら、液体吐出記録装置1は、この構成に限定されない。即ち、液体吐出記録装置1は、第1タンク12の第2室122で回収した液体200を液体供給タンク11にくみ上げる装置を備えてもよい。例えば、第1タンク12の第2室122の液体200を液体供給タンク11にくみ上げる装置は、例えば、チューブ、ポンプ及びフィルタ等を備える構成とすればよい。
【0053】
また、上述した例では、液体吐出記録装置1は、液体としてインク200をインク循環装置4で循環し、インクジェットヘッド3から吐出させる例を説明したが、液体はインク200に限定されない。即ち、液体吐出記録装置1は、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、液体循環装置4は、種々の液体において、停止時に液体吐出ヘッド3の液体を保持できる。
【0054】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、停止時に液体吐出ヘッドのノズル面負圧を保持できる液体吐出記録装置を提供できる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1…インクジェット記録装置(液体吐出記録装置)、3…インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)、31…ノズル面、32…供給管、33…排出管、4…インク循環装置(液体循環装置)、5…制御装置、11…インク供給タンク(液体供給タンク)、12…第1タンク(上流タンク)、121…第1室、122…第2室、123…隔壁(第1タンク隔壁)、13…第2タンク(下流タンク)、131…第1室、132…第2室、133…隔壁(第2タンク隔壁)、14…ポンプ、15…第1開閉弁、16…第2開閉弁、17…チューブ、171…第1チューブ、172…第2チューブ、173…第3チューブ、174…第4チューブ、175…第5チューブ、176…第6チューブ(大気開放部)、200…インク(液体)。