(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119547
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】冷暖房衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20240827BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/00 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026530
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】390003872
【氏名又は名称】豊島株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】森本 浩光
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AC02
3B011AC03
3B011AC21
3B211AA01
3B211AC02
3B211AC03
3B211AC21
(57)【要約】
【課題】ペルチェ素子ユニットから排出される加熱された空気を衣服内から素早く外部に排出することができる冷暖房衣服を提供する。
【解決手段】衣服本体3の内部に、ペルチェ素子5とこのペルチェ素子5の周囲からペルチェ素子5によって加熱された空気を外部に排出するファン7が組み合わされて構成されたペルチェ素子冷暖房ユニット9を配置する。ユニット位置調整機構11により、衣服本体3を着た使用者の背中に対するペルチェ素子冷暖房ユニット9の位置を調整する。ユニット位置調整機構11は、衣服本体3の両肩部に設けられた一対のスリット3A及び3Bから衣服本体3の内部に入る長さ調整可能な一対の長さ調整ベルト部材13A及び13Bと、衣服本体3の内部に配置されてペルチェ素子冷暖房ユニット9と衣服本体3の内部の下部領域とを連結する長さ調整可能な連結ベルト部材15とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服本体と、
前記衣服本体の内部に配置され、ペルチェ素子と該ペルチェ素子の周囲から加熱された空気を外に排出するファンが組み合わされてなるペルチェ素子冷暖房ユニットと、
前記ペルチェ素子冷暖房ユニットに取り付けられ、前記衣服本体を着た使用者の背中に対する前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの位置を調整するユニット位置調整機構を備え、
前記ユニット位置調整機構が、前記衣服本体の両肩部の前方から前記衣服本体の内部に入る長さ調整可能な一対の長さ調整ベルト部材と、前記衣服本体の内部に配置されて前記ペルチェ素子冷暖房ユニットと前記衣服本体の内面部とを位置調整可能に連結する連結ベルト部材とを備え、
前記一対の長さ調整ベルト部材は、前記衣服本体の内部に位置する先端部に設けられて前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの上側部分に締結される一対の上側締結端部と、前記衣服本体の前方に出ていて長さ調節の際に操作される一対の操作機構を備えており、
前記連結ベルト部材は、一端に前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの下側部分に締結される下側締結端部を備え、他端に前記衣服本体の前記内面部に位置調整可能に連結される連結端部を備えていることを特徴とする冷暖房衣服。
【請求項2】
前記一対の長さ調整ベルト部材の前記操作機構は、一端に前記上側締結端部を備え且つ他端に前記衣服本体の外部に位置する調整バックルを備えた第1のベルトと、前記衣服本体の外側部分に一端が固定され且つ前記調整バックルに折り返し部を形成するように係止されて他端に自由端部を有する第2のベルトを備えている請求項1に記載の冷暖房衣服。
【請求項3】
前記ペルチェ素子冷暖房ユニットは、ペルチェ素子により加熱された空気をファンにより相反する横二方向に排出する構造を有しており、
前記衣服本体の後ろ身頃部分には、前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの前記横二方向に空気を排出す2つの排出口に隣接して該2つの排出口から排出された空気を外部に排出する一対のメッシュ状排気領域を備えている請求項1に記載の冷暖房衣服。
【請求項4】
前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの電源となる電池を収納する電池収納部が、前記衣服本体の前身頃に前記電池を前記衣服本体の外側から交換できるように設けられている請求項1に記載の冷暖房衣服。
【請求項5】
前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの起動スイッチを収納するスイッチ収納部が、前記衣服本体の前身頃に前記起動スイッチを前記衣服本体の外側から操作できるように設けられている請求項1に記載の冷暖房衣服。
【請求項6】
前記衣服本体の内部には、前記一対の長さ調整ベルト部材を通す一対のベルトループが設けられている請求項1に記載の冷暖房衣服。
【請求項7】
前記衣服本体がベストである請求項1乃至6のいずれか1項に記載の冷暖房衣服。
【請求項8】
使用者が前記ベストを装着した状態で、内部に外気を押し込むファンを備えたウエアを装着することを特徴とする請求項7に記載の冷暖房衣服の使用方法。
【請求項9】
使用者が前記ベストを装着した状態で、墜落制止用器具を装着することを特徴とする請求項7に記載の冷暖房衣服の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルチェ素子を備えた冷暖房衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2022-63478号公報(特許文献1)の
図2には、ペルチェ素子によって冷却される熱交換プレートと、熱交換プレートを冷却するペルチェ素子と、ペルチェ素子の発熱面に装着されるヒートシンクと、ヒートシンクによって加熱された空気を排出するファンと、ヒートシンク及びファンを覆うファンカバーと、身体装着板を備えた空気調和ユニットを、ファンが衣服の外側に位置するように配置した冷暖房衣服が開示されている。またこの公報の
図15には、空気調和ユニットを3箇所で支持するベルト式締結具を用いて使用者の背中に背負わせた状態で衣服の内側に配置する衣服の冷暖房技術が開示されている。
【0003】
また特開2021-46632号公報(特許文献2)には、メッシュ状の大きな支持体にペルチェ素子と送風機のセットを複数分散して配置したユニットを衣服の後ろ身頃に装着した冷暖房衣服が開示されている。
【0004】
さらにペルチェ素子を冷却する大型のファンをその吸引口が衣服の外に露出するように衣服に取り付け、衣服の内部に空気を送り込む冷暖房衣服が、ペルチェベスト「冷蔵服」(商標)の名称で市販されている。この冷暖房衣服では、衣服に直接装着したファンにベルトが取り付けられ、そのベルトを衣服の内側から外側に出して、衣服を変形させながら、衣服に装着されたファンの位置を変更する構造も採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-63478号公報
【特許文献2】特開2021-46632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の
図2に記載の冷暖房衣服では、ファンが衣服の外側に位置するため、冷却性能は高いものの、見た目が非常に悪い問題がある。また特許文献1の
図15に記載されたものでは、使用者が背中に背負う構造であるため、空気調和ユニットは衣服の内側に位置するため、見た目の問題はないものの、衣服を着た後に空気調和ユニットの位置を調整することができないという不便さがある。
【0007】
また特許文献2に記載の冷暖房衣服では、送風機のセットを複数個分散して配置したユニットを衣服にしっかりと装着する構造が必要になる。また送風機のセットを複数分散して配置したユニットの衣服に対する位置を変更することができない問題がある。
【0008】
さらに市販の冷暖房衣服では、大型のファンで外気を衣服の内部に送り込み、送り込んだ外気でペルチェ素子を冷却する。そのため、外気温が高いときには、ペルチェ素子の冷却性能が落ちる上、衣服内の温度が高くなる問題がある。また衣服に装着した大型のファンを移動させるためには、その移動を許容する目的のために、ファンを装着する衣服の寸法を大きくしなければならない。またファンの位置によっては、外側から見て、衣服の一部が引きつった状態になり、見た目が悪くなる問題も生じる。
【0009】
本発明の目的は、衣服の外観を変形させることなく、ファンを装着したペルチェ素子ユニットの位置を、衣服を着用した状態で調整することができる冷暖房衣服を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、ペルチェ素子冷暖房ユニットから排出される加熱された空気を衣服内から素早く外部に排出することができる冷暖房衣服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の冷暖房衣服は、衣服本体と、衣服本体の内部に配置されて、ペルチェ素子と該ペルチェ素子の周囲から加熱された空気を外に排出するファンが組み合わされてなるペルチェ素子冷暖房ユニットと、ペルチェ素子冷暖房ユニットに取り付けられ、衣服本体を着た使用者の背中に対するペルチェ素子冷暖房ユニットの位置を調整するユニット位置調整機構を備えている。ユニット位置調整機構は、衣服本体の両肩部の前方から衣服本体の内部に入る長さ調整可能な一対の長さ調整ベルト部材と、衣服本体の内部に配置されてペルチェ素子冷暖房ユニットと衣服本体の内面部とを連結位置調整可能に連結する連結ベルト部材とを備えている。一対の長さ調整ベルト部材は、衣服本体の内部に位置する先端部に設けられてペルチェ素子冷暖房ユニットの上側部分に締結される一対の上側締結端部と、衣服本体の前方に出ていて長さ調節の際に操作される一対の操作機構を備えている。そして連結ベルト部材は、一端にペルチェ素子冷暖房ユニットの下側部分に締結される下側締結端部を備え、他端に衣服本体の内面部に位置調整可能に連結される連結端部を備えている。
【0012】
本発明によれば、ユニット位置調整機構の連結ベルト部材の長さでペルチェ素子冷暖房ユニットの上限位置を決めておき、冷暖房衣服を使用者が着た状態で、衣服本体の前方に出ている一対の長さ調整ベルト部材の一対の操作機構を操作することにより、衣服本体を変形することなく、ペルチェ素子冷暖房ユニットの位置を上限位置よりも下の位置範囲内で調整することができる。したがって本発明によれば、利用者の利便性を大幅に高めることができる。
【0013】
一対の長さ調整ベルト部材の操作機構は、一端に上側締結端部を備え且つ他端に衣服本体の外部に位置する調整バックルを備えた第1のベルトと、衣服本体の外側部分に一端が固定され且つ調整バックルに折り返し部を形成するように係止されて他端に自由端部を有する第2のベルトを備えているのが好ましい。この構成であれば、第2のベルトの折り返し部の位置を変えることにより、一対の長さ調整ベルト部材の長さを調整することができる。
【0014】
ペルチェ素子冷暖房ユニットは、ペルチェ素子により加熱された空気をファンにより相反する横二方向に排出する構造を有しているのが好ましい。そして衣服本体の後ろ身頃部分には、ペルチェ素子冷暖房ユニットの横二方向に空気を排出す2つの排出口に隣接して該2つの排出口から排出された空気を外部に排出する一対のメッシュ状排気領域を備えているのが好ましい。このようにするとペルチェ素子冷暖房ユニットによって加熱された空気は、一対のメッシュ状排気領域から直ぐに使用者の後方に排出されるので、ペルチェ素子冷暖房ユニットの冷却性能を最大限発揮することができる。
【0015】
またペルチェ素子冷暖房ユニットの電源となる電池を収納する電池収納部が、衣服本体の前身頃に電池を衣服本体の外側から交換できるように設けられているのが好ましい。このようにすると冷暖房衣服を着用した状態で、電池交換をすることができるので、使用者の利便性を高めることができる。
【0016】
更にペルチェ素子冷暖房ユニットの起動スイッチを収納するスイッチ収納部が、衣服本体の前身頃に起動スイッチを衣服本体の外側から操作できるように設けられているのが好ましい。このようにすると冷暖房衣服を着用した状態で、起動スイッチの操作ができるので、使用者の利便性を高めることができる。
【0017】
衣服本体の内部には、一対の長さ調整ベルト部材を通す一対のベルトループが設けられていてもよい。このようなベルトループを設けると、ベルトループのガイド機能によりスムーズにペルチェ素子冷暖房ユニットの位置調整をすることができる。
【0018】
衣服本体は、どのようなものでもよいが、ベストであれば、ベストの袖ぐり部分も排気に利用できるので、冷却効果が高くなる利点がある。
【0019】
使用者がベストを装着した状態で、ベストの上に内部に外気を押し込むファンを備えたウエアを装着すると使用者の体感温度をさらに下げることができる。
【0020】
使用者がベストを装着した状態で、墜落制止用器具(安全帯)を併用する場合、墜落制止用器具の位置または大きさに合わせて、ペルチェ素子冷暖房ユニットの位置調整をすることができるので、使用者の利便性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(A)及び(B)は、冷暖房衣服の正面図及び背面図である。
【
図2】冷暖房衣服の肩部を切り開いた展開図である。
【
図3】ペルチェ素子冷暖房ユニットの概略構成図である。
【
図4】操作機構の詳細を説明するため用いる図である。
【
図5】(A)乃至(C)は、接続構造を説明するために用いる図である。
【
図6】電池収納部の構造を説明するために用いる図である。
【
図7】スイッチ収納部の構造を説明するために用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の冷暖房衣服1の詳細について説明する。
図1(A)及び(B)は、冷暖房衣服1の正面図及び背面図であり、
図2は冷暖房衣服1の肩部を切り開いた展開図であり、
図3は後述するペルチェ素子冷暖房ユニット9の概略構成図である。本実施の形態の冷暖房衣服1の衣服本体3は、ベストの形態を有している。衣服本体3の内部には、ペルチェ素子5とこのペルチェ素子5の周囲からペルチェ素子5によって加熱された空気を外部に排出するファン7が組み合わされて構成されたペルチェ素子冷暖房ユニット9が配置されている。なおこのファン7としては、シロッコファンと呼ばれる誘引ファンを用いることができる。ペルチェ素子5から加熱された空気を誘引してケーシング8の側方外部に排出する誘引ファンまたはペルチェ素子5に空気を吹き付けてケーシング8の側方外部に加熱された空気を吹き出す押し込みファンのいずれを用いても良い。なおペルチェ素子冷暖房ユニット9は、ケーシング8の使用者の背中と対向する部分が、ペルチェ素子5の吸熱により冷却される。
【0023】
ペルチェ素子冷暖房ユニット9は、ケーシング8の上端に2つのフック10A及び10Bを備え、またケーシング8の下端の中央に1つのフック10Cを備えている。ペルチェ素子冷暖房ユニット9は、ユニット位置調整機構11により、衣服本体3を着た使用者の背中に対するペルチェ素子冷暖房ユニット9の位置の調整が可能である。ユニット位置調整機構11は、衣服本体3の両肩部に設けられた一対のスリット3A及び3Bから衣服本体3の内部に入る長さ調整可能な一対の長さ調整ベルト部材13A及び13Bと、衣服本体3の内部に配置されてペルチェ素子冷暖房ユニット9と衣服本体3の内部の下部領域とを連結する長さ調整可能な連結ベルト部材15とを備えている。
【0024】
一対の長さ調整ベルト部材13A及び13Bは、衣服本体3の内部に位置する先端部に設けられてペルチェ素子冷暖房ユニット9の上側部分にあるフック10A及び10Bと締結される一対の上側締結端部14A及び14Bと、衣服本体3の前方に出ていて長さ調節の際に操作される一対の操作機構12A及び12Bを備えている。一方の長さ調整ベルト部材13Aを例にして説明する。
図1及び
図4に示すように、長さ調整ベルト部材13Aは、調整バックル19と、第1のベルト21と、第2のベルト23を備えている。第1のベルト21の上側締結端部14Aには、ペルチェ素子冷暖房ユニット9のフック10Aに着脱可能に取り付けるために、フック面17Aとループ面17Bとを備えた面ファスナ17が取り付けされている。更に第1のベルト21の他端には、衣服本体3の外部に位置する調整バックル19を備えている。第2のベルト23は、衣服本体3の外側部分に一端23Aが固定され且つ調整バックル19に折り返し部25を形成するように係止されて他端23Bに自由端部を有する。この構成であれば、第2のベルト23の折り返し部25の位置を変えることにより、長さ調整ベルト部材13Aの長さを調整することができる。他方の長さ調整ベルト部材13Bの構成も長さ調整ベルト部材13Aの構成と同じである。
【0025】
そして連結ベルト部材15は、一端にペルチェ素子冷暖房ユニット9の下側部分に締結される下側締結端部15Aを備え、他端に衣服本体の内面部に位置調整可能に連結端部16Aを備えている。本実施の形態では、連結ベルト部材15の連結端部16Aに設けられた
図5(A)に示すフック面20Aが、面ファスナ構造により位置調整可能に連結されるループ面20Bを備えたベルト状部材16Bが衣服本体3の内面部に固定されている。
図5(A)に示すように、連結ベルト部材15の下側締結端部15Aは、フック面18Aとループ面18Bからなる面ファスナ18を用いて形成した折り返し部をペルチェ素子冷暖房ユニット9に設けられたフック10Cに掛けることにより締結されている。本実施の形態では、連結ベルト部材15の他端に設けたフック面20Aとベルト状部材16Bのループ面20Bとの締結位置によって、連結ベルト部材15の他端の衣服本体3の内面部に対する位置が調整される。
【0026】
本実施の形態によれば、ユニット位置調整機構11の連結ベルト部材15の他端にある連結端部16Aの締結位置でペルチェ素子冷暖房ユニット11の上限位置を決めておく。そして冷暖房衣服を使用者が着た状態で、衣服本体3の前方に出ている一対の長さ調整ベルト部材13A及び13Bの一対の操作機構12A及び12Bを操作することにより、衣服本体3を変形させることなく、ペルチェ素子冷暖房ユニット9の位置を上限位置よりも下の位置範囲内で調整することができる。
【0027】
前述のペルチェ素子冷暖房ユニット9は、ペルチェ素子5によって加熱された空気をファン7によりケーシング8から排出する空気を相反する横二方向に排出する構造を有している。そして衣服本体3の後ろ身頃部分には、ペルチェ素子冷暖房ユニット9の横二方向に空気を排出す2つの排出口10D及び10Eに隣接して該2つの排出口10D及び10Eから排出された空気を外部に排出する一対のメッシュ状排気領域27A及び27Bを備えている。一対のメッシュ状排気領域27A及び27Bを設けると、ペルチェ素子冷暖房ユニット9によって加熱されて排出された空気は、一対のメッシュ状排気領域27A及び27Bから直ぐに使用者の後方に排出されるので、ペルチェ素子冷暖房ユニット9の冷却性能を最大限発揮することができる。
【0028】
なお
図2に示すように、衣服本体3の内部には、一対の長さ調整ベルト部材13A及び13Bを通す一対のベルトループ28A及び28Bを設けてもよい。このようなベルトループ28A及び28Bを設けると、ベルトループ28A及び28Bのガイド機能によりスムーズにペルチェ素子冷暖房ユニット9の位置調整をすることができる。
【0029】
衣服本体3の前身頃には、電池収納部31とスイッチ収納部33とが設けられている。
図6に示すように、電池収納部31は長さ調整ベルト部材13Bが固定されるカバー部32を備えている。カバー部32は、上端部に設らけれたタブ36の下に設けられたループ面24Bと衣服本体3側に設けられたフック面24Aからなる面ファスナ24によって開閉される。電池収納部31内には、ペルチェ素子冷暖房ユニット9の電源となる二次電池が収納される。このようにすると冷暖房衣服を着用した状態で、電池交換をすることができるので、使用者の利便性を高めることができる。
【0030】
また
図7に示すように、衣服本体3の前身頃に設けられたスイッチ収納部33は、カバー部37を備えている。スイッチ収納部33には、ペルチェ素子冷暖房ユニット9の起動スイッチ34を収納する。カバー部37には、3箇所にループ面38Bが設けられており、衣服本体3側にこれら3箇所にループ面38Bと3つの面ファスナ38を構成するフック面38Aが設けられている。起動スイッチ34を操作する際には、カバー37を開いて、衣服本体3の外側から操作する。起動スイッチ34につながるリード線39Aは電子収納部31内に収納された電池にコネクタを介して接続され、起動スイッチ34につながるリード線39Bは衣服本体3の内部側に引き回されて、ペルチェ素子冷暖房ユニット9内の制御回路に接続される。
図2に示すように、衣服本体3の内側の下部領域には、リード線39Bをガイドするガイド部の一部を構成するタブ41A乃至41Cが固定されている。
図5(C)に示すように、タブ41Aに設けたフック面42Aと衣服本体3側に設けたループ面42Bにより面ファスナ42が構成されている。リード線39Bは、面ファスナ42の接合によって形成されたタブ41Aと衣服本体3との間の隙間を通ってペルチェ素子冷暖房ユニット9へとガイドされる。本実施例では、
図5(B)に示すように、タブ41Bに設けたフック面20Cとベルト状部材16Bのループ面20Bとによりリード線39Bの追加のガイド部が構成されている。また本実施の形態では、タブ41Cを用いて、タブ41Aと同様にリード線39Bの追加のガイド部が構成されている。このようにするとリード線39Bの長さ調節をできる上、冷暖房衣服を着用した状態で、起動スイッチの操作ができるので、使用者の利便性を高めることができる。
【0031】
上記実施の形態では、衣服本体3がベストの形態をしているので、ベストの袖ぐり部分も排気に利用できる。その結果、ペルチェ素子冷暖房ユニット9の冷却効果が高くなる利点がある。
【0032】
(その他)
使用者が本実施の形態のベストを装着した状態で、内部に外気を押し込むファンを備えたハーネスウエアを装着してもよい。このような使用方法をすると、使用者の体感温度をさらに下げることができる。
【0033】
また使用者がベストを装着した状態で、墜落制止用器具(安全帯)を併用してもよい。この場合、墜落制止用器具の位置または大きさに合わせて、ペルチェ素子冷暖房ユニットの位置調整をすることができるので、使用者の利便性が高くなる。
【0034】
上記の実施の形態は、冷房時の説明であるが、暖房に使用する場合には、ペルチェ素子への通電方向を変えて、ファンを停止させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、ユニット位置調整機構の連結ベルト部材の長さでペルチェ素子冷暖房ユニットの上限位置を決めておき、冷暖房衣服を使用者が着た状態で、衣服本体の前方に出ている一対の長さ調整ベルト部材の一対の操作機構を操作することにより、衣服本体を変形させることなく、ペルチェ素子冷暖房ユニットの位置を上限位置よりも下の位置範囲内で調整することができるので、利用者の利便性を大幅に高めることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 冷暖房衣服
3 衣服本体
5 ペルチェ素子
7 ファン
8 ケーシング
9 ペルチェ素子冷暖房ユニット
11 ユニット位置調整機構
12A,12B 操作機構
13A,13B 長さ調整ベルト部材
15 連結ベルト部材
17 面ファスナ
19 調整バックル
21 第1のベルト
23 第2のベルト
31 電池収納部
33 スイッチ収納部
36 タブ
41A,41B,41C タブ
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルチェ素子を備えた冷暖房衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2022-63478号公報(特許文献1)の
図2には、ペルチェ素子によって冷却される熱交換プレートと、熱交換プレートを冷却するペルチェ素子と、ペルチェ素子の発熱面に装着されるヒートシンクと、ヒートシンクによって加熱された空気を排出するファンと、ヒートシンク及びファンを覆うファンカバーと、身体装着板を備えた空気調和ユニットを、ファンが衣服の外側に位置するように配置した冷暖房衣服が開示されている。またこの公報の
図15には、空気調和ユニットを3箇所で支持するベルト式締結具を用いて使用者の背中に背負わせた状態で衣服の内側に配置する衣服の冷暖房技術が開示されている。
【0003】
また特開2021-46632号公報(特許文献2)には、メッシュ状の大きな支持体にペルチェ素子と送風機のセットを複数分散して配置したユニットを衣服の後ろ身頃に装着した冷暖房衣服が開示されている。
【0004】
さらにペルチェ素子を冷却する大型のファンをその吸引口が衣服の外に露出するように衣服に取り付け、衣服の内部に空気を送り込む冷暖房衣服が、ペルチェベスト「冷蔵服」(商標)の名称で市販されている。この冷暖房衣服では、衣服に直接装着したファンにベルトが取り付けられ、そのベルトを衣服の内側から外側に出して、衣服を変形させながら、衣服に装着されたファンの位置を変更する構造も採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-63478号公報
【特許文献2】特開2021-46632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の
図2に記載の冷暖房衣服では、ファンが衣服の外側に位置するため、冷却性能は高いものの、見た目が非常に悪い問題がある。また特許文献1の
図15に記載されたものでは、使用者が背中に背負う構造であるため、空気調和ユニットは衣服の内側に位置するため、見た目の問題はないものの、衣服を着た後に空気調和ユニットの位置を調整することができないという不便さがある。
【0007】
また特許文献2に記載の冷暖房衣服では、送風機のセットを複数個分散して配置したユニットを衣服にしっかりと装着する構造が必要になる。また送風機のセットを複数分散して配置したユニットの衣服に対する位置を変更することができない問題がある。
【0008】
さらに市販の冷暖房衣服では、大型のファンで外気を衣服の内部に送り込み、送り込んだ外気でペルチェ素子を冷却する。そのため、外気温が高いときには、ペルチェ素子の冷却性能が落ちる上、衣服内の温度が高くなる問題がある。また衣服に装着した大型のファンを移動させるためには、その移動を許容する目的のために、ファンを装着する衣服の寸法を大きくしなければならない。またファンの位置によっては、外側から見て、衣服の一部が引きつった状態になり、見た目が悪くなる問題も生じる。
【0009】
本発明の目的は、ペルチェ素子冷暖房ユニットから排出される加熱された空気を衣服内から素早く外部に排出することができる冷暖房衣服を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、衣服の外観を変形させることなく、ファンを装着したペルチェ素子ユニットの位置を、衣服を着用した状態で調整することができる冷暖房衣服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の冷暖房衣服は、衣服本体と、衣服本体の内部に配置されて、ペルチェ素子と該ペルチェ素子の周囲から加熱された空気を外に排出するファンが組み合わされてなるペルチェ素子冷暖房ユニットと、ペルチェ素子冷暖房ユニットに取り付けられ、衣服本体を着た使用者の背中に対するペルチェ素子冷暖房ユニットの位置を調整するユニット位置調整機構を備えている。
【0012】
ペルチェ素子冷暖房ユニットは、ペルチェ素子により加熱された空気をファンにより相反する横二方向に排出する構造を有している。そして衣服本体の後ろ身頃部分には、ペルチェ素子冷暖房ユニットの横二方向に空気を排出す2つの排出口に隣接して該2つの排出口から排出された空気を外部に排出する一対のメッシュ状排気領域を備えているのが好ましい。このようにするとペルチェ素子冷暖房ユニットによって加熱された空気は、一対のメッシュ状排気領域から直ぐに使用者の後方に排出されるので、ペルチェ素子冷暖房ユニットの冷却性能を最大限発揮することができる。
【0013】
またユニット位置調整機構は、衣服本体の両肩部の前方から衣服本体の内部に入る長さ調整可能な一対の長さ調整ベルト部材と、衣服本体の内部に配置されてペルチェ素子冷暖房ユニットと衣服本体の内面部とを連結位置調整可能に連結する連結ベルト部材とを備えている。一対の長さ調整ベルト部材は、衣服本体の内部に位置する先端部に設けられてペルチェ素子冷暖房ユニットの上側部分に締結される一対の上側締結端部と、衣服本体の前方に出ていて長さ調節の際に操作される一対の操作機構を備えている。そして連結ベルト部材は、一端にペルチェ素子冷暖房ユニットの下側部分に締結される下側締結端部を備え、他端に衣服本体の内面部に位置調整可能に連結される連結端部を備えている。
【0014】
本発明によれば、ユニット位置調整機構の連結ベルト部材の長さでペルチェ素子冷暖房ユニットの上限位置を決めておき、冷暖房衣服を使用者が着た状態で、衣服本体の前方に出ている一対の長さ調整ベルト部材の一対の操作機構を操作することにより、衣服本体を変形することなく、ペルチェ素子冷暖房ユニットの位置を上限位置よりも下の位置範囲内で調整することができる。したがって本発明によれば、利用者の利便性を大幅に高めることができる。
【0015】
一対の長さ調整ベルト部材の操作機構は、一端に上側締結端部を備え且つ他端に衣服本体の外部に位置する調整バックルを備えた第1のベルトと、衣服本体の外側部分に一端が固定され且つ調整バックルに折り返し部を形成するように係止されて他端に自由端部を有する第2のベルトを備えているのが好ましい。この構成であれば、第2のベルトの折り返し部の位置を変えることにより、一対の長さ調整ベルト部材の長さを調整することができる。
【0016】
またペルチェ素子冷暖房ユニットの電源となる電池を収納する電池収納部が、衣服本体の前身頃に電池を衣服本体の外側から交換できるように設けられているのが好ましい。このようにすると冷暖房衣服を着用した状態で、電池交換をすることができるので、使用者の利便性を高めることができる。
【0017】
更にペルチェ素子冷暖房ユニットの起動スイッチを収納するスイッチ収納部が、衣服本体の前身頃に起動スイッチを衣服本体の外側から操作できるように設けられているのが好ましい。このようにすると冷暖房衣服を着用した状態で、起動スイッチの操作ができるので、使用者の利便性を高めることができる。
【0018】
衣服本体の内部には、一対の長さ調整ベルト部材を通す一対のベルトループが設けられていてもよい。このようなベルトループを設けると、ベルトループのガイド機能によりスムーズにペルチェ素子冷暖房ユニットの位置調整をすることができる。
【0019】
衣服本体は、どのようなものでもよいが、ベストであれば、ベストの袖ぐり部分も排気に利用できるので、冷却効果が高くなる利点がある。
【0020】
使用者がベストを装着した状態で、ベストの上に内部に外気を押し込むファンを備えたウエアを装着すると使用者の体感温度をさらに下げることができる。
【0021】
使用者がベストを装着した状態で、墜落制止用器具(安全帯)を併用する場合、墜落制止用器具の位置または大きさに合わせて、ペルチェ素子冷暖房ユニットの位置調整をすることができるので、使用者の利便性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(A)及び(B)は、冷暖房衣服の正面図及び背面図である。
【
図2】冷暖房衣服の肩部を切り開いた展開図である。
【
図3】ペルチェ素子冷暖房ユニットの概略構成図である。
【
図4】操作機構の詳細を説明するため用いる図である。
【
図5】(A)乃至(C)は、接続構造を説明するために用いる図である。
【
図6】電池収納部の構造を説明するために用いる図である。
【
図7】スイッチ収納部の構造を説明するために用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の冷暖房衣服1の詳細について説明する。
図1(A)及び(B)は、冷暖房衣服1の正面図及び背面図であり、
図2は冷暖房衣服1の肩部を切り開いた展開図であり、
図3は後述するペルチェ素子冷暖房ユニット9の概略構成図である。本実施の形態の冷暖房衣服1の衣服本体3は、ベストの形態を有している。衣服本体3の内部には、ペルチェ素子5とこのペルチェ素子5の周囲からペルチェ素子5によって加熱された空気を外部に排出するファン7が組み合わされて構成されたペルチェ素子冷暖房ユニット9が配置されている。なおこのファン7としては、シロッコファンと呼ばれる誘引ファンを用いることができる。ペルチェ素子5から加熱された空気を誘引してケーシング8の側方外部に排出する誘引ファンまたはペルチェ素子5に空気を吹き付けてケーシング8の側方外部に加熱された空気を吹き出す押し込みファンのいずれを用いても良い。なおペルチェ素子冷暖房ユニット9は、ケーシング8の使用者の背中と対向する部分が、ペルチェ素子5の吸熱により冷却される。
【0024】
ペルチェ素子冷暖房ユニット9は、ケーシング8の上端に2つのフック10A及び10Bを備え、またケーシング8の下端の中央に1つのフック10Cを備えている。ペルチェ素子冷暖房ユニット9は、ユニット位置調整機構11により、衣服本体3を着た使用者の背中に対するペルチェ素子冷暖房ユニット9の位置の調整が可能である。ユニット位置調整機構11は、衣服本体3の両肩部に設けられた一対のスリット3A及び3Bから衣服本体3の内部に入る長さ調整可能な一対の長さ調整ベルト部材13A及び13Bと、衣服本体3の内部に配置されてペルチェ素子冷暖房ユニット9と衣服本体3の内部の下部領域とを連結する長さ調整可能な連結ベルト部材15とを備えている。
【0025】
一対の長さ調整ベルト部材13A及び13Bは、衣服本体3の内部に位置する先端部に設けられてペルチェ素子冷暖房ユニット9の上側部分にあるフック10A及び10Bと締結される一対の上側締結端部14A及び14Bと、衣服本体3の前方に出ていて長さ調節の際に操作される一対の操作機構12A及び12Bを備えている。一方の長さ調整ベルト部材13Aを例にして説明する。
図1及び
図4に示すように、長さ調整ベルト部材13Aは、調整バックル19と、第1のベルト21と、第2のベルト23を備えている。第1のベルト21の上側締結端部14Aには、ペルチェ素子冷暖房ユニット9のフック10Aに着脱可能に取り付けるために、フック面17Aとループ面17Bとを備えた面ファスナ17が取り付けされている。更に第1のベルト21の他端には、衣服本体3の外部に位置する調整バックル19を備えている。第2のベルト23は、衣服本体3の外側部分に一端23Aが固定され且つ調整バックル19に折り返し部25を形成するように係止されて他端23Bに自由端部を有する。この構成であれば、第2のベルト23の折り返し部25の位置を変えることにより、長さ調整ベルト部材13Aの長さを調整することができる。他方の長さ調整ベルト部材13Bの構成も長さ調整ベルト部材13Aの構成と同じである。
【0026】
そして連結ベルト部材15は、一端にペルチェ素子冷暖房ユニット9の下側部分に締結される下側締結端部15Aを備え、他端に衣服本体の内面部に位置調整可能に連結端部16Aを備えている。本実施の形態では、連結ベルト部材15の連結端部16Aに設けられた
図5(A)に示すフック面20Aが、面ファスナ構造により位置調整可能に連結されるループ面20Bを備えたベルト状部材16Bが衣服本体3の内面部に固定されている。
図5(A)に示すように、連結ベルト部材15の下側締結端部15Aは、フック面18Aとループ面18Bからなる面ファスナ18を用いて形成した折り返し部をペルチェ素子冷暖房ユニット9に設けられたフック10Cに掛けることにより締結されている。本実施の形態では、連結ベルト部材15の他端に設けたフック面20Aとベルト状部材16Bのループ面20Bとの締結位置によって、連結ベルト部材15の他端の衣服本体3の内面部に対する位置が調整される。
【0027】
本実施の形態によれば、ユニット位置調整機構11の連結ベルト部材15の他端にある連結端部16Aの締結位置でペルチェ素子冷暖房ユニット11の上限位置を決めておく。そして冷暖房衣服を使用者が着た状態で、衣服本体3の前方に出ている一対の長さ調整ベルト部材13A及び13Bの一対の操作機構12A及び12Bを操作することにより、衣服本体3を変形させることなく、ペルチェ素子冷暖房ユニット9の位置を上限位置よりも下の位置範囲内で調整することができる。
【0028】
前述のペルチェ素子冷暖房ユニット9は、ペルチェ素子5によって加熱された空気をファン7によりケーシング8から排出する空気を相反する横二方向に排出する構造を有している。そして衣服本体3の後ろ身頃部分には、ペルチェ素子冷暖房ユニット9の横二方向に空気を排出す2つの排出口10D及び10Eに隣接して該2つの排出口10D及び10Eから排出された空気を外部に排出する一対のメッシュ状排気領域27A及び27Bを備えている。一対のメッシュ状排気領域27A及び27Bを設けると、ペルチェ素子冷暖房ユニット9によって加熱されて排出された空気は、一対のメッシュ状排気領域27A及び27Bから直ぐに使用者の後方に排出されるので、ペルチェ素子冷暖房ユニット9の冷却性能を最大限発揮することができる。
【0029】
なお
図2に示すように、衣服本体3の内部には、一対の長さ調整ベルト部材13A及び13Bを通す一対のベルトループ28A及び28Bを設けてもよい。このようなベルトループ28A及び28Bを設けると、ベルトループ28A及び28Bのガイド機能によりスムーズにペルチェ素子冷暖房ユニット9の位置調整をすることができる。
【0030】
衣服本体3の前身頃には、電池収納部31とスイッチ収納部33とが設けられている。
図6に示すように、電池収納部31は長さ調整ベルト部材13Bが固定されるカバー部32を備えている。カバー部32は、上端部に設らけれたタブ36の下に設けられたループ面24Bと衣服本体3側に設けられたフック面24Aからなる面ファスナ24によって開閉される。電池収納部31内には、ペルチェ素子冷暖房ユニット9の電源となる二次電池が収納される。このようにすると冷暖房衣服を着用した状態で、電池交換をすることができるので、使用者の利便性を高めることができる。
【0031】
また
図7に示すように、衣服本体3の前身頃に設けられたスイッチ収納部33は、カバー部37を備えている。スイッチ収納部33には、ペルチェ素子冷暖房ユニット9の起動スイッチ34を収納する。カバー部37には、3箇所にループ面38Bが設けられており、衣服本体3側にこれら3箇所にループ面38Bと3つの面ファスナ38を構成するフック面38Aが設けられている。起動スイッチ34を操作する際には、カバー37を開いて、衣服本体3の外側から操作する。起動スイッチ34につながるリード線39Aは電子収納部31内に収納された電池にコネクタを介して接続され、起動スイッチ34につながるリード線39Bは衣服本体3の内部側に引き回されて、ペルチェ素子冷暖房ユニット9内の制御回路に接続される。
図2に示すように、衣服本体3の内側の下部領域には、リード線39Bをガイドするガイド部の一部を構成するタブ41A乃至41Cが固定されている。
図5(C)に示すように、タブ41Aに設けたフック面42Aと衣服本体3側に設けたループ面42Bにより面ファスナ42が構成されている。リード線39Bは、面ファスナ42の接合によって形成されたタブ41Aと衣服本体3との間の隙間を通ってペルチェ素子冷暖房ユニット9へとガイドされる。本実施例では、
図5(B)に示すように、タブ41Bに設けたフック面20Cとベルト状部材16Bのループ面20Bとによりリード線39Bの追加のガイド部が構成されている。また本実施の形態では、タブ41Cを用いて、タブ41Aと同様にリード線39Bの追加のガイド部が構成されている。このようにするとリード線39Bの長さ調節をできる上、冷暖房衣服を着用した状態で、起動スイッチの操作ができるので、使用者の利便性を高めることができる。
【0032】
上記実施の形態では、衣服本体3がベストの形態をしているので、ベストの袖ぐり部分も排気に利用できる。その結果、ペルチェ素子冷暖房ユニット9の冷却効果が高くなる利点がある。
【0033】
(その他)
使用者が本実施の形態のベストを装着した状態で、内部に外気を押し込むファンを備えたハーネスウエアを装着してもよい。このような使用方法をすると、使用者の体感温度をさらに下げることができる。
【0034】
また使用者がベストを装着した状態で、墜落制止用器具(安全帯)を併用してもよい。この場合、墜落制止用器具の位置または大きさに合わせて、ペルチェ素子冷暖房ユニットの位置調整をすることができるので、使用者の利便性が高くなる。
【0035】
上記の実施の形態は、冷房時の説明であるが、暖房に使用する場合には、ペルチェ素子への通電方向を変えて、ファンを停止させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、ペルチェ素子冷暖房ユニットによって加熱された空気は、一対のメッシュ状排気領域から直ぐに使用者の後方に排出されるので、ペルチェ素子冷暖房ユニットの冷却性能を最大限発揮することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 冷暖房衣服
3 衣服本体
5 ペルチェ素子
7 ファン
8 ケーシング
9 ペルチェ素子冷暖房ユニット
11 ユニット位置調整機構
12A,12B 操作機構
13A,13B 長さ調整ベルト部材
15 連結ベルト部材
17 面ファスナ
19 調整バックル
21 第1のベルト
23 第2のベルト
31 電池収納部
33 スイッチ収納部
36 タブ
41A,41B,41C タブ
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服本体と、
前記衣服本体の内部に配置され、ペルチェ素子と該ペルチェ素子の周囲から加熱された空気を外に排出するファンが組み合わされてなるペルチェ素子冷暖房ユニットと、
前記ペルチェ素子冷暖房ユニットに取り付けられ、前記衣服本体を着た使用者の背中に対する前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの位置を調整するユニット位置調整機構を備え、
前記ペルチェ素子冷暖房ユニットは、ペルチェ素子により加熱された空気をファンにより相反する横二方向に排出する構造を有しており、
前記衣服本体の後ろ身頃部分には、前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの前記横二方向に空気を排出す2つの排出口に隣接して該2つの排出口から排出された空気を外部に排出する一対のメッシュ状排気領域を備えていることを特徴とする冷暖房衣服。
【請求項2】
衣服本体と、
前記衣服本体の内部に配置され、ペルチェ素子と該ペルチェ素子の周囲から加熱された空気を外に排出するファンが組み合わされてなるペルチェ素子冷暖房ユニットと、
前記ペルチェ素子冷暖房ユニットに取り付けられ、前記衣服本体を着た使用者の背中に対する前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの位置を調整するユニット位置調整機構を備え、
前記ユニット位置調整機構が、前記衣服本体の両肩部の前方から前記衣服本体の内部に入る長さ調整可能な一対の長さ調整ベルト部材と、前記衣服本体の内部に配置されて前記ペルチェ素子冷暖房ユニットと前記衣服本体の内面部とを位置調整可能に連結する連結ベルト部材とを備え、
前記一対の長さ調整ベルト部材は、前記衣服本体の内部に位置する先端部に設けられて前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの上側部分に締結される一対の上側締結端部と、前記衣服本体の前方に出ていて長さ調節の際に操作される一対の操作機構を備えており、
前記連結ベルト部材は、一端に前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの下側部分に締結される下側締結端部を備え、他端に前記衣服本体の前記内面部に位置調整可能に連結される連結端部を備えていることを特徴とする冷暖房衣服。
【請求項3】
前記一対の長さ調整ベルト部材の前記操作機構は、一端に前記上側締結端部を備え且つ他端に前記衣服本体の外部に位置する調整バックルを備えた第1のベルトと、前記衣服本体の外側部分に一端が固定され且つ前記調整バックルに折り返し部を形成するように係止されて他端に自由端部を有する第2のベルトを備えている請求項2に記載の冷暖房衣服。
【請求項4】
前記ペルチェ素子冷暖房ユニットは、ペルチェ素子により加熱された空気をファンにより相反する横二方向に排出する構造を有しており、
前記衣服本体の後ろ身頃部分には、前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの前記横二方向に空気を排出す2つの排出口に隣接して該2つの排出口から排出された空気を外部に排出する一対のメッシュ状排気領域を備えている請求項2に記載の冷暖房衣服。
【請求項5】
前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの電源となる電池を収納する電池収納部が、前記衣服本体の前身頃に前記電池を前記衣服本体の外側から交換できるように設けられている請求項2に記載の冷暖房衣服。
【請求項6】
前記ペルチェ素子冷暖房ユニットの起動スイッチを収納するスイッチ収納部が、前記衣服本体の前身頃に前記起動スイッチを前記衣服本体の外側から操作できるように設けられている請求項2に記載の冷暖房衣服。
【請求項7】
前記衣服本体の内部には、前記一対の長さ調整ベルト部材を通す一対のベルトループが設けられている請求項2に記載の冷暖房衣服。
【請求項8】
前記衣服本体がベストである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の冷暖房衣服。
【請求項9】
使用者が前記ベストを装着した状態で、内部に外気を押し込むファンを備えたウエアを装着することを特徴とする請求項8に記載の冷暖房衣服の使用方法。
【請求項10】
使用者が前記ベストを装着した状態で、墜落制止用器具を装着することを特徴とする請求項8に記載の冷暖房衣服の使用方法。