(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119549
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】作業機械を含むシステム、作業機械用コントローラ、および作業機械の経路生成方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026535
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 高史
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB07
(57)【要約】
【課題】掘削積込作業を自動制御するときの走行の経路を適切に設定する。
【解決手段】作業機械本体の周辺の物体は、作業機で掘削されるマテリアルの山である掘削対象200を含んでいる。走行体の走行経路を生成するコントローラは、センサの検出結果に基づき掘削対象200を認識し、作業機械が掘削対象200を掘削する掘削位置B2を選定し、作業機に積載されたマテリアルを積み込む積込対象300にマテリアルを積み込むときの積込位置A2が、掘削位置B2から離れるべき最小の距離x2を、作業機械の寸法により算出する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械を含むシステムであって、
走行体を有する作業機械本体と、
前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、
前記作業機械本体の周辺の物体を検出するセンサと、
前記走行体の走行経路を生成するコントローラと、を備え、
前記物体は、前記作業機で掘削されるマテリアルの山である掘削対象を含み、
前記走行経路は、前記作業機械が前記掘削対象を掘削する掘削位置と、前記マテリアルを積み込む積込対象に前記マテリアルを積み込むときの積込位置とを含み、
前記コントローラは、前記センサの検出結果に基づき前記掘削対象を認識し、前記掘削位置を選定し、前記積込位置が前記掘削位置から離れるべき最小距離を、前記作業機械の寸法により算出する、システム。
【請求項2】
前記作業機械の寸法は、前記作業機械の前後方向における寸法を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記掘削対象を掘削する前記作業機械が、前記作業機に一定量の前記マテリアルを積載するために前記掘削対象へ向かって前進する走行距離を最小にできる位置を、前記掘削位置に選定する、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記掘削位置から前記最小距離よりも大きく離れる位置に、前記マテリアルを前記積込対象に積み込むときの前記積込位置を決定する、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記マテリアルを前記積込対象に積み込むときの前記積込位置を、前記積込対象へ送信する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記作業機械を積荷後進から積荷前進へ切り換える切り返し位置を、前記作業機械の寸法により決定する、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記作業機械本体は、前フレームと、前記前フレームに対して屈曲可能な後フレームとを有する、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記作業機械は、前記掘削対象を掘削するとき、および、前記作業機に積載された前記マテリアルを前記積込対象に積み込むとき、前記前フレームと前記後フレームとが互いに屈曲しない直進姿勢をとる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記掘削対象の形状を認識し、前記掘削位置を前記掘削対象の形状に基づいて選定する、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項10】
走行体と作業機とを備える作業機械の、前記走行体の走行経路を生成する、作業機械用コントローラであって、
前記走行経路は、前記作業機で掘削されるマテリアルの山である掘削対象を前記作業機械が掘削する掘削位置と、前記マテリアルを積み込む積込対象に前記マテリアルを積み込むときの積込位置とを含み、
作業機械本体の周辺の物体を検出するセンサの検出結果に基づき、前記掘削対象を認識し、
前記掘削位置を選定し、
前記積込位置が前記掘削位置から離れるべき最小距離を、前記作業機械の寸法により算出する、作業機械用コントローラ。
【請求項11】
走行体と作業機とを備える作業機械の、前記走行体の走行経路を生成する、作業機械の経路生成方法であって、
前記走行経路は、前記作業機で掘削されるマテリアルの山である掘削対象を前記作業機械が掘削する掘削位置と、前記マテリアルを積み込む積込対象に前記マテリアルを積み込むときの積込位置とを含み、
作業機械本体の周辺の物体を検出するセンサの検出結果に基づき、前記掘削対象を認識することと、
前記掘削位置を選定することと、
前記積込位置が前記掘削位置から離れるべき最小距離を、前記作業機械の寸法により算出することと、を備える、作業機械の経路生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械を含むシステム、作業機械用コントローラ、および作業機械の経路生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のホイールローダは、たとえば特開2022-157259号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイールローダは、掘削作業と積込作業とを繰り返し行う。掘削作業と積込作業とを自動化するために、自動制御による走行の経路を適切に設定することが求められる。
【0005】
本開示では、掘削積込作業を自動制御するときの走行の経路を適切に設定できる、作業機械を含むシステム、作業機械用コントローラ、および作業機械の経路生成方法が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る作業機械を含むシステムは、走行体を有する作業機械本体と、作業機械本体に取り付けられた作業機と、作業機械本体の周辺の物体を検出するセンサと、走行体の走行経路を生成するコントローラと、を備えている。作業機械本体の周辺の物体は、作業機で掘削されるマテリアルの山である掘削対象を含んでいる。走行体の走行経路は、作業機械が掘削対象を掘削する掘削位置と、マテリアルを積み込む積込対象にマテリアルを積み込むときの積込位置とを含んでいる。コントローラは、センサの検出結果に基づき掘削対象を認識し、掘削位置を選定し、積込位置が掘削位置から離れるべき最小距離を、作業機械の寸法により算出する。
【0007】
本開示のある局面に係る作業機械用コントローラは、走行体と作業機とを備える作業機械の、走行体の走行経路を生成する。走行体の走行経路は、作業機で掘削されるマテリアルの山である掘削対象を作業機械が掘削する掘削位置と、マテリアルを積み込む積込対象にマテリアルを積み込むときの積込位置とを含んでいる。コントローラは、作業機械本体の周辺の物体を検出するセンサの検出結果に基づき、掘削対象を認識する。コントローラは、掘削位置を選定する。コントローラは、積込位置が掘削位置から離れるべき最小距離を、作業機械の寸法により算出する。
【0008】
本開示のある局面に係る作業機械の経路生成方法は、走行体と作業機とを備える作業機械の、走行体の走行経路を生成する方法である。走行体の走行経路は、作業機で掘削されるマテリアルの山である掘削対象を作業機械が掘削する掘削位置と、マテリアルを積み込む積込対象にマテリアルを積み込むときの積込位置とを含んでいる。経路生成方法は、以下のステップを備えている。第1のステップは、作業機械本体の周辺の物体を検出するセンサの検出結果に基づき、掘削対象を認識することである。第2のステップは、掘削位置を選定することである。第3のステップは、積込位置が掘削位置から離れるべき最小距離を、作業機械の寸法により算出することである。
【発明の効果】
【0009】
本開示の作業機械を含むシステム、作業機械用コントローラ、および作業機械の経路生成方法によると、掘削積込作業を自動制御するときの走行の経路を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。
【
図2】
図1に示されるホイールローダの平面図である。
【
図3】ホイールローダによる掘削積込作業を説明する図である。
【
図4】ホイールローダの制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図5】ホイールローダの自動制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】ダンプトラックのベッセルを側方から見た模式図である。
【
図7】掘削積込作業を行うホイールローダの走行経路を示す模式図である。
【
図8】ホイールローダの走行経路を生成する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】ベッセルに対する積込位置の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0012】
<ホイールローダ1の全体構成>
実施形態においては、作業機械の一例としてホイールローダ1について説明する。
図1は、作業機械の一例としてのホイールローダ1の側面図である。
図2は、
図1に示されるホイールローダ1の平面図である。
【0013】
図1,2に示されるように、ホイールローダ1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行装置4と、キャブ5とを主に備えている。車体フレーム2、キャブ5などからホイールローダ1の車体が構成されている。ホイールローダ1の車体には、作業機3および走行装置4が取り付けられている。ホイールローダ1の本体(作業機械本体)は、車体と、走行装置4とを有している。
【0014】
走行装置4は、ホイールローダ1の車体を走行させるものであり、走行輪4a,4bを含んでいる。ホイールローダ1は、車体の左右方向の両側に走行用回転体として走行輪4a,4bを備える装輪車両である。ホイールローダ1は、走行輪4a,4bが回転駆動されることにより自走可能であり、作業機3を用いて所望の作業を行うことができる。走行装置4は、「走行体」の一例に対応する。
【0015】
本明細書中において、ホイールローダ1が直進走行する方向を、ホイールローダ1の前後方向という。ホイールローダ1の前後方向において、車体フレーム2に対して作業機3が配置されている側を前方向とし、前方向と反対側を後方向とする。ホイールローダ1の左右方向とは、平坦な地面上にあるホイールローダ1を平面視したときに前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。ホイールローダ1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0016】
車体フレーム2は、前フレーム2aと後フレーム2bとを含んでいる。前フレーム2aは、後フレーム2bの前方に配置されている。前フレーム2aと後フレーム2bとは、センタピン10により、互いに左右方向に動作可能に取り付けられている。
【0017】
前フレーム2aと後フレーム2bとに亘って、左右一対のステアリングシリンダ11が取り付けられている。ステアリングシリンダ11は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ11が図示しないステアリングポンプからの作動油によって伸縮することによって、ホイールローダ1の進行方向が左右に変更される。前フレーム2aと後フレーム2bとにより、アーティキュレート構造の車体フレーム2が構成されている。ホイールローダ1は、前フレーム2aと後フレーム2bとが屈曲動作可能に連結されたアーティキュレート式の作業機械である。
【0018】
前フレーム2aには、作業機3および一対の走行輪(前輪)4aが取り付けられている。作業機3は、ホイールローダ1の車体の前方に取り付けられている。作業機3は、ホイールローダ1の車体によって支持されている。作業機3は具体的には、車体フレーム2、より特定的には前フレーム2aによって、回転可能に支持されている。作業機3は、車体フレーム2の前方に配置されている。
【0019】
作業機3は、ブーム14を含んでいる。ブーム14の基端部は、ブームピン9によって前フレーム2aに回転自在に取付けられている。ブーム14は、左ブーム部材14Lと、右ブーム部材14Rとを含んでいる。左ブーム部材14Lと右ブーム部材14Rとが左右方向に延びる接合部材により互いに相対移動不能に接合されて、一体構造のブーム14が形成されている。ブームピン9は、左右一対の左ブームピン9Lと右ブームピン9Rとを含んでいる。ブーム14は、左ブームピン9Lおよび右ブームピン9Rを回転中心として、前フレーム2aに対して回転可能である。左ブームピン9Lと右ブームピン9Rとは、作業機3を車体フレーム2に対して回転可能に支持している。
【0020】
作業機3は、バケット6を含んでいる。バケット6は、作業機3の先端に配置されている。バケット6は、掘削・積込用の作業具である。刃先6aは、バケット6の先端部である。背面6bは、バケット6の外面の一部である。背面6bは、平面で形成されている。背面6bは、刃先6aから後方に延びている。バケット6は、ブーム14の先端に位置するバケットピン17によって、回転自在にブーム14に取付けられている。バケット6は、左ブーム部材14Lが取り付けられる左ブーム取付部と、右ブーム部材14Rが取り付けられる右ブーム取付部とを有している。
【0021】
作業機3は、ベルクランク18と、リンク15とをさらに含んでいる。ベルクランク18は、そのほぼ中央部が、ブーム14の長手方向のほぼ中央に位置する支持ピン18aによって、ブーム14に回転自在に支持されている。リンク15は、ベルクランク18の下端部(先端部)に設けられた連結ピン18cに連結されている。リンク15は、ベルクランク18とバケット6とを連結している。ベルクランク18とリンク15とは、左右方向において、左ブーム部材14Lと右ブーム部材14Rとの間に配置されている。
【0022】
前フレーム2aとブーム14とは、一対のブームシリンダ16により連結されている。ブームシリンダ16は、油圧シリンダである。ブームシリンダ16は、ブーム14を、ブームピン9を中心として上下に回転駆動する。ブームシリンダ16の基端は、前フレーム2aに取り付けられている。ブームシリンダ16の先端は、ブーム14に取り付けられている。ブームシリンダ16は、ブーム14を前フレーム2aに対し上下に動作させる油圧アクチュエータである。ブーム14の昇降に伴って、ブーム14の先端に取り付けられたバケット6も昇降する。
【0023】
バケットシリンダ19は、ベルクランク18と前フレーム2aとを連結している。バケットシリンダ19の基端は、前フレーム2aに取り付けられている。バケットシリンダ19の先端は、ベルクランク18の上端部(基端部)に設けられた連結ピン18bに取り付けられている。バケットシリンダ19は、バケット6をブーム14に対し上下に回動させる油圧アクチュエータである。バケットシリンダ19は、バケット6を駆動する作業具シリンダである。バケットシリンダ19は、バケット6を、バケットピン17を中心として回転駆動する。バケット6は、ブーム14に対し動作可能に構成されている。バケット6は、前フレーム2aに対し動作可能に構成されている。
【0024】
ブームシリンダ16と、バケットシリンダ19とは、作業機3を駆動する作業機アクチュエータを構成している。
【0025】
後フレーム2bには、オペレータが搭乗するキャブ5、および一対の走行輪(後輪)4bが取り付けられている。箱状のキャブ5は、ブーム14の後方に配置されている。キャブ5は、後フレーム2bに搭載されている。キャブ5は、車体フレーム2上に載置されている。キャブ5内には、ホイールローダ1のオペレータが着座するシート、および後述する操作装置8などが配置されている。
【0026】
キャブ5には、知覚装置111が設けられている。知覚装置111は、たとえばキャブ5の天井部に配置されている。知覚装置111は、たとえばキャブ5の上面に搭載されている。知覚装置111は、たとえばキャブ5の前部に配置されている。知覚装置111は、たとえば前方を向いてキャブ5に取り付けられており、キャブ5の前方の情報を取得可能である。知覚装置111の詳細は後述する。
【0027】
図1に示される長さL1は、前後方向における、バケット6の刃先6aから車体の後端までの長さ(ホイールローダ1の全長)である。長さL2は、前後方向における、前輪4aの前端から車体の後端までの長さ(ホイールローダ1の車体長)である。長さL3は、前後方向における、前輪4aの中心から後輪4bの中心までの長さ(ホイールベース長)である。長さL4は、前後方向における、前輪4aの中心から前フレーム2aと後フレーム2bとの屈曲中心までの長さである。長さL5は、前後方向における、前フレーム2aと後フレーム2bとの屈曲中心から後輪4bの中心までの長さである。
【0028】
図2に示される長さL9は、左右方向における、バケット6の左端から右端までの長さ(バケット幅)である。バケット6の幅方向中心6cは、左右方向におけるバケット6の中心点である。
【0029】
図1,2に示される長さL1~L5,L9は、ホイールローダ1の仕様値に含まれる。ホイールローダ1の仕様値はさらに、車体の最小旋回半径を含む。ホイールローダ1は、前フレーム2aと後フレーム2bとが互いに屈曲可能なアーティキュレート構造を備えていることにより、リジッド構造と比較して、車体の最小旋回半径が小さくなっている。ホイールローダ1の仕様値は、ホイールローダ1の個体ごとに固有の値であり、後述する車体コントローラ50に記憶されている。
【0030】
<掘削積込作業>
本実施形態のホイールローダ1は、マテリアルをバケット6に掬い取り、ダンプトラックなどの積込対象にバケット6内のマテリアルを積み込む、掘削積込作業を実行する。マテリアルは、作業現場で掘削された、またはダンプトラックなどの運搬機械により作業現場に搬入された、土砂、岩石または鉱石などである。
図3は、実施形態に基づくホイールローダ1による掘削積込作業を説明する図である。
【0031】
図3(A)には、空荷前進をするホイールローダ1が図示されている。ホイールローダ1は、マテリアルの山である掘削対象200に向かって前進走行する。作業機3をブーム14の先端が低い位置にありバケット6が水平を向いた掘削姿勢にするように、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19が動作する。
【0032】
図3(B)(C)には、掘削動作をするホイールローダ1が図示されている。ホイールローダ1は、バケット6の刃先6aを掘削対象200へ突っ込み、前進走行を停止する。
図3(B)に示される掘削(突込み)動作によって、バケット6の刃先6aが掘削対象200に食い込む。その状態で、ブーム14およびバケット6が上昇するとともにバケット6がチルトバックすることにより、
図3(C)中の矢印のようにバケット軌跡BLに沿ってバケット6が移動する。この動作によって、
図3(C)に示される、バケット6内に掘削対象200を掬い取る掘削(掬込み)動作が実行される。
【0033】
掘削対象200の種類によって、バケット6を1回チルトバックさせるだけで掘削(掬込み)動作が完了する場合がある。または、掘削(掬込み)動作において、バケット6をチルトバックさせ、中立にし、再びチルトバックさせるという動作を繰り返す場合もある。
【0034】
図3(D)には、積荷後進をするホイールローダ1が図示されている。ホイールローダ1は、バケット6内に掘削対象200が積み込まれた状態で後進走行する。ホイールローダ1は、後進走行しながらバケット6を上昇させてもよい。
【0035】
図3(E)には、積荷前進をするホイールローダ1が図示されている。ホイールローダ1は、バケット6を上昇させながら、またはバケット6を上昇させた状態を維持しながら、積込対象300へ向かって前進走行する。ホイールローダ1は、バケット6が積込対象300の荷台のほぼ真上に位置する所定位置に到達するまで、積込対象300に接近する。
【0036】
図3(F)には、積込対象300への排土動作をするホイールローダ1が図示されている。ホイールローダ1は、積込対象300に接近して所定位置に到達すると、バケット6をダンプして、バケット6内のマテリアルを積込対象300に積み込む。その後、ホイールローダ1は、
図3(E)で前進走行を開始した位置まで後進しながら、ブーム14を下降させて作業機3を掘削姿勢に戻す。
【0037】
以上が、掘削積込作業の1サイクルをなす典型的な動作である。ホイールローダ1は、上述した複数の動作を順次に行うことを繰り返して、掘削対象200を掘削し、ダンプトラックなどの積込対象300に掘削したマテリアルを積み込んでいる。
【0038】
ホイールローダ1は、
図3(B)(C)に示される掘削対象200を掘削するとき、前フレーム2aと後フレーム2bとが互いに屈曲しない、直進姿勢をとっている。ホイールローダ1は、
図3(F)に示されるバケット6内のマテリアルを積込対象300に積み込むとき、前フレーム2aと後フレーム2bとが互いに屈曲しない、直進姿勢をとっている。
【0039】
<システム構成>
図4は、ホイールローダ1を制御する制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【0040】
エンジン21は、作業機3および走行装置4を駆動するための駆動力を発生する駆動源であり、たとえばディーゼルエンジンである。駆動源として、エンジン21に代えて、蓄電体により駆動するモータが用いられてもよく、またエンジンとモータとの双方が用いられてもよい。エンジン21の出力は、エンジン21のシリンダ内に噴射する燃料量を調整することにより制御される。
【0041】
エンジン21の発生する駆動力は、トランスミッション23へ伝達される。トランスミッション23は、駆動力を適切なトルクおよび回転速度に変速する。トランスミッション23の出力軸に、アクスル25が接続されている。トランスミッション23で変速された駆動力は、アクスル25に伝達される。アクスル25から走行輪4a,4b(
図1,2)に、駆動力が伝達される。これにより、ホイールローダ1が走行する。実施形態のホイールローダ1においては、走行輪4aと走行輪4bとの両方が、駆動力を受けてホイールローダ1を走行させる駆動輪を構成している。
【0042】
エンジン21の駆動力の一部は、作業機ポンプ13に伝達される。作業機ポンプ13は、エンジン21により駆動され、吐出する作動油によって作業機3を作動させる油圧ポンプである。作業機3は、作業機ポンプ13からの作動油によって駆動される。作業機ポンプ13から吐出された作動油は、メインバルブ32を介して、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19に供給される。ブームシリンダ16が作動油の供給を受けて伸縮することによって、ブーム14が昇降する。バケットシリンダ19が作動油の供給を受けて伸縮することによって、バケット6が上下に回動する。
【0043】
ホイールローダ1は、車体コントローラ50を備えている。車体コントローラ50は、エンジンコントローラ60と、トランスミッションコントローラ70と、作業機コントローラ80とを含んでいる。
【0044】
車体コントローラ50は、一般的にCPU(Central Processing Unit)により各種のプログラムを読み込むことにより実現される。車体コントローラ50は、図示しないメモリを有している。メモリは、ワークメモリとして機能するとともに、ホイールローダ1の機能を実現するための各種のプログラムを格納する。
【0045】
操作装置8は、キャブ5に設けられている。操作装置8は、オペレータによって操作される。操作装置8は、オペレータがホイールローダ1を動作させるために操作する、複数種類の操作部材を備えている。操作装置8は、アクセルペダル41と、作業機操作レバー42とを含んでいる。操作装置8は、図示しないステアリングハンドル、シフトレバーなどを含んでいてもよい。
【0046】
アクセルペダル41は、エンジン21の目標回転数を設定するために操作される。エンジンコントローラ60は、アクセルペダル41の操作量に基づいて、エンジン21の出力を制御する。アクセルペダル41の操作量(踏み込み量)を増大すると、エンジン21の出力が増大する。アクセルペダル41の操作量を減少すると、エンジン21の出力が減少する。トランスミッションコントローラ70は、アクセルペダル41の操作量に基づいて、トランスミッション23を制御する。
【0047】
作業機操作レバー42は、作業機3を動作させるために操作される。作業機コントローラ80は、作業機操作レバー42の操作量に基づいて、電磁比例制御弁35,36を制御する。
【0048】
電磁比例制御弁35は、バケットシリンダ19を縮めて、バケット6がダンプ方向(バケット6の刃先が下がる方向)に移動するように、メインバルブ32を切り換える。また電磁比例制御弁35は、バケットシリンダ19を伸ばして、バケット6がチルト方向(バケット6の刃先が上がる方向)に移動するように、メインバルブ32を切り換える。電磁比例制御弁36は、ブームシリンダ16を縮めて、ブーム14が下がるようにメインバルブ32を切り換える。また電磁比例制御弁36は、ブームシリンダ16を伸ばして、ブーム14が上がるようにメインバルブ32を切り換える。
【0049】
機械モニタ51は、車体コントローラ50から指令信号の入力を受けて、各種情報を表示する。機械モニタ51に表示される各種情報は、たとえば、ホイールローダ1により実行される作業に関する情報、燃料残量、冷却水温度および作動油温度などの車体情報、ホイールローダ1の周辺を撮像した周辺画像などであってもよい。機械モニタ51はタッチパネルであってもよく、この場合、オペレータが機械モニタ51の一部に触れることにより生成される信号が、機械モニタ51から車体コントローラ50に出力される。
【0050】
<ホイールローダ1の自動制御システム>
ホイールローダ1の作業を自動化するにあたり、熟練オペレータの操作を自動制御によって再現することが望まれている。
図5は、ホイールローダ1の自動制御システムの構成を示すブロック図である。
【0051】
自動化コントローラ100は、
図4を参照して説明した車体コントローラ50との間で信号の送受信が可能に構成されている。自動化コントローラ100はまた、外界情報取得部110との間で信号の送受信が可能に構成されている。外界情報取得部110は、知覚装置111と、位置情報取得装置112とを有している。知覚装置111と位置情報取得装置112とは、ホイールローダ1に搭載されている。
【0052】
知覚装置111は、ホイールローダ1の周囲の情報を取得する。知覚装置111は、たとえばキャブ5の上面の前部に取り付けられている。知覚装置111は、ホイールローダ1の本体(作業機械本体)の周辺の物体を検出する「物体センサ」の一例に対応する。
【0053】
知覚装置111は、ホイールローダ1の外部の対象物の方向および対象物までの距離を、非接触で検出する。知覚装置111はたとえば、レーザ光を射出して対象物の情報を取得するLiDAR(Light Detection and Ranging)である。知覚装置111は、カメラを含む視覚センサであってもよい。知覚装置111は、電波を射出することにより対象物の情報を取得するRadar(Radio Detection and Ranging)であってもよい。知覚装置111は、赤外線センサであってもよい。
【0054】
位置情報取得装置112は、ホイールローダ1の現在位置の情報を取得する。位置情報取得装置112はたとえば、衛星測位システムを利用して、地球を基準としたグローバル座標系におけるホイールローダ1の位置情報を取得する。位置情報取得装置112はたとえば、GNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)を用いるものであり、GNSSレシーバを有している。衛星測位システムは、GNSSレシーバが衛星から受信した測位信号により、GNSSレシーバのアンテナの位置を演算して、ホイールローダ1の位置を算出する。
【0055】
知覚装置111によるホイールローダ1の外界情報、および、位置情報取得装置112によるホイールローダ1の位置情報は、自動化コントローラ100に入力される。
【0056】
車体コントローラ50は、車両情報取得部120との間で信号の送受信が可能に構成されており、車両情報取得部120が取得するホイールローダ1の情報の入力を受ける。車両情報取得部120は、ホイールローダ1に搭載されている各種のセンサにより構成されている。車両情報取得部120は、アーティキュレート角度センサ121、車両速度センサ122、ブーム角度センサ123、バケット角度センサ124、およびブームシリンダ圧力センサ125を有している。
【0057】
アーティキュレート角度センサ121は、前フレーム2aと後フレーム2bとのなす角度であるアーティキュレート角度を検出し、検出したアーティキュレート角度の信号を発生する。アーティキュレート角度センサ121は、アーティキュレート角度の信号を車体コントローラ50に出力する。
【0058】
車両速度センサ122は、たとえば、トランスミッション23の出力軸の回転速度を検出することにより、走行装置4によるホイールローダ1の移動速度を検出し、検出した車速の信号を発生する。車両速度センサ122は、車速の信号を車体コントローラ50に出力する。車両速度センサ122は、走行装置4(走行体)の進行状況を検出する走行センサの一例に対応する。
【0059】
ブーム角度センサ123は、たとえば、ブーム14の車体フレーム2に対する取付部であるブームピン9に設けられたロータリーエンコーダで構成される。ブーム角度センサ123は、水平方向に対するブーム14の角度(ブーム角度)を検出し、検出したブーム14の角度の信号を発生する。ブーム角度センサ123は、ブーム14の角度の信号を車体コントローラ50に出力する。
【0060】
バケット角度センサ124は、たとえば、ベルクランク18の回転軸である支持ピン18aに設けられたロータリーエンコーダで構成される。バケット角度センサ124は、ブーム14に対するベルクランク18の角度(ベルクランク角度)を検出し、検出したベルクランク18の角度の信号を発生する。車両情報取得部120、または車体コントローラ50は、検出したベルクランク18の角度から、ブーム14に対するバケット6の角度(バケット角度)を算出する。
【0061】
ブーム角度センサ123と、バケット角度センサ124とは、作業機3の姿勢を検出する作業機姿勢センサの一例に対応する。ブーム角度センサ123は、ブームシリンダ16に配置されたストロークセンサであってもよい。バケット角度センサ124は、バケットピン17に取り付けられたポテンショメータまたは近接スイッチであってもよく、バケットシリンダ19に配置されたストロークセンサであってもよい。
【0062】
ブームシリンダ圧力センサ125は、ブームシリンダ16のボトム側の圧力(ブームボトム圧)を検出し、検出したブームボトム圧の信号を発生する。ブームボトム圧は、バケット6に荷が積まれた場合に高くなり、空荷の場合に低くなる。ブームシリンダ圧力センサ125は、ブームボトム圧の信号を車体コントローラ50に出力する。
【0063】
車体コントローラ50は、車両情報取得部120から入力された情報を、自動化コントローラ100へ出力する。自動化コントローラ100は、車体コントローラ50を介して、車両速度センサ122、ブーム角度センサ123およびバケット角度センサ124の検出値を入力する。
【0064】
アクチュエータ140は、車体コントローラ50との間で信号の送受信が可能に構成されている。車体コントローラ50からの指令信号を受けて、アクチュエータ140が駆動する。アクチュエータ140は、走行装置4のブレーキを作動させるためのブレーキEPC(電磁比例制御弁)141と、ホイールローダ1の走行方向を調節するためのステアリングEPC142と、作業機3を動作させるための作業機EPC143と、HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)144とを含んでいる。
【0065】
図4に示される電磁比例制御弁35,36は、作業機EPC143を構成している。
図4に示されるトランスミッション23は、電子制御を活用したHMT144として実現される。トランスミッション23は、HST(Hydro-Static Transmission)であってもよい。エンジン21から走行輪4a,4bへ動力を伝達する動力伝達装置は、ディーゼル・エレクトリック方式などの電気式駆動装置を含んでもよく、HMT、HST、電気式駆動装置のいずれかの組み合わせを含んでもよい。
【0066】
トランスミッションコントローラ70は、ブレーキ制御部71と、アクセル制御部72とを有している。ブレーキ制御部71は、ブレーキEPC141に対して、ブレーキの作動を制御するための指令信号を出力する。アクセル制御部72は、HMT144に対して、車速を制御するための指令信号を出力する。
【0067】
作業機コントローラ80は、ステアリング制御部81と、作業機制御部82とを有している。ステアリング制御部81は、ステアリングEPC142に対して、ホイールローダ1の走行方向を制御するための指令信号を出力する。作業機制御部82は、作業機EPC143に対して、作業機3の動作を制御するための指令信号を出力する。
【0068】
自動化コントローラ100は、位置推定部101と、パスプランニング部102と、経路追従制御部103とを有している。
【0069】
位置推定部101は、位置情報取得装置112が取得した位置情報によって、ホイールローダ1の自己位置を推定する。また位置推定部101は、知覚装置111が取得した外界情報によって、目標位置を認識する。目標位置は、たとえば、掘削対象200における、ホイールローダ1がバケット6で掘削対象200を掘削する掘削位置である。またたとえば、目標位置は、積込対象300における、マテリアルを積込対象300に積み込むときの積込対象300に対する作業機3(バケット6)の相対位置である積込位置である。知覚装置111が目標位置を認識して自動化コントローラ100に入力してもよく、知覚装置111が検出した検出結果に基づいて位置推定部101が目標位置を認識してもよい。
【0070】
パスプランニング部102は、ホイールローダ1を自動制御するときの、ホイールローダ1の最適経路を生成する。最適経路は、走行装置4による走行の経路と、作業機3の動作の経路とを含んでいる。
【0071】
たとえば、パスプランニング部102は、掘削対象200へ向かって空荷前進するホイールローダ1の走行の経路を生成する。パスプランニング部102は、掘削作業における作業機3の動作の経路を生成する。パスプランニング部102は、積荷後進して掘削対象200から離れるホイールローダ1の走行の経路と、積荷後進中の作業機3の動作の経路とを生成する。パスプランニング部102は、積込対象300へ向かって積荷前進するホイールローダ1の走行の経路と、積荷前進中の作業機3の動作の経路とを生成する。パスプランニング部102は、バケット6に掬い込んだマテリアルを積込対象300に排土する作業機3の動作の経路を生成する。パスプランニング部102は、空荷後進して積込対象300から離れるホイールローダ1の走行の経路と、空荷後進中の作業機3の動作の経路とを生成する。
【0072】
パスプランニング部102はまた、掘削積込作業を実行中に、ホイールローダ1の現在の自己位置と、ホイールローダ1がこれから向かう目標位置と、をむすぶ最適経路を生成する。
【0073】
経路追従制御部103は、走行装置4および作業機3の動作を指令する。経路追従制御部103は、パスプランニング部102が生成した最適経路に追従してホイールローダ1が走行するように、アクセル、ブレーキおよびステアリングを制御する。経路追従制御部103から、ブレーキ制御部71、アクセル制御部72およびステアリング制御部81に、ホイールローダ1を最適経路に沿って走行させるための指令信号が出力される。経路追従制御部103は、パスプランニング部102が生成した最適経路に沿って作業機3が動作するように、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19を制御する。経路追従制御部103から、作業機制御部82に、作業機3を最適経路に沿って移動させるための指令信号が出力される。
【0074】
インターフェース130は、車体コントローラ50との間で信号の送受信が可能に構成されている。インターフェース130は、自動化切替スイッチ131、エンジン緊急停止スイッチ132、およびモードランプ133を有している。
【0075】
自動化切替スイッチ131は、オペレータによって操作される。オペレータは、自動化切替スイッチ131を操作することにより、ホイールローダ1をマニュアルで操作するか、ホイールローダ1を自動制御するかを切り替える。エンジン緊急停止スイッチ132は、オペレータによって操作される。エンジン21を緊急停止させることが求められる事象が発生したとき、オペレータは、エンジン緊急停止スイッチ132を操作する。自動化切替スイッチ131およびエンジン緊急停止スイッチ132の操作の信号は、車体コントローラ50に入力される。
【0076】
モードランプ133は、ホイールローダ1が現在、オペレータによるマニュアル操作されるモードであるか、または自動制御されるモードであるか、を表示する。車体コントローラ50からモードランプ133に、ランプの点灯を制御するための指令信号が出力される。
【0077】
自動化コントローラ100はまた、通信装置150との間で信号の送受信が可能に構成されている。ホイールローダ1の自動制御システムは、自動化コントローラ100が持つ情報を、通信装置150を介して、ダンプトラックなどの積込対象300へ指令できるように構成されている。
【0078】
<ベッセル301>
積込対象300の一例としてのダンプトラックは、ベッセル301を有している。ベッセル301は、作業機3(バケット6)に積載されたマテリアルが積み込まれる容器の一例である。
図6は、ダンプトラックのベッセル301を側方から見た模式図である。
図6および後続の
図9には、ダンプトラックの左側から見たベッセル301の概略形状が図示されている。図中の太線は、ベッセル301の内部形状を構成する面をダンプトラックの左方から見たときの概略形状を示している。
【0079】
図6,9においては、図中の左右方向がダンプトラックの前後方向(ベッセル301の前後方向)に相当する。
図6,9における、図中の左方向がダンプトラック(ベッセル301)の前方向であり、図中の右方向がダンプトラック(ベッセル301)の後方向である。
図6,9においては、紙面垂直方向がダンプトラックの左右方向(ベッセル301の左右方向)に相当する。
図6,9においては、図中の上下方向がダンプトラックの上下方向(ベッセル301の上下方向)に相当する。
【0080】
ベッセル301は、ダンプトラックの後部に設けられている。ダンプトラックの前部にはキャブが設けられており、ベッセル301はキャブの後方に配置されている。ベッセル301は、土砂、砕石などの、重量のあるマテリアルを積載可能な構造とされている。
【0081】
図6に示されるように、ベッセル301は、底面302と、前方壁面303と、後方傾斜面305とを有している。底面302は、平坦な形状を有している。底面302は、ダンプトラック(ベッセル301)の前後方向および左右方向に延びる平面形状を有している。
【0082】
前方壁面303は、平坦な形状を有している。前方壁面303は、底面302の前端から前方かつ上方に向かって延びている。前方壁面303は、上方に向かうに従って前方側に向かって傾斜するように延びている。前方壁面303は、ベッセル301の前方の壁面を構成している。ベッセル301の前方の壁面は、前方に向かうに従って上方に傾斜している。前方壁面303は、前上縁304を有している。前上縁304は左右方向に延びている。前上縁304は、ベッセル301の前方の縁部を構成している。
【0083】
後方傾斜面305は、平坦な形状を有している。後方傾斜面305は、底面302の後端から後方かつ上方に向かって延びている。後方傾斜面305は、上方に向かうに従って後方側に向かって傾斜するように延びている。後方傾斜面305は、後方に向かうに従って上方に傾斜している。後方傾斜面305は、後上縁306を有している。後上縁306は左右方向に延びている。後上縁306は、ベッセル301の後方の縁部を構成している。後上縁306は、前上縁304よりも低い位置にある。
【0084】
図6には、テールゲートの無いベッセル301の形状が例示されている。ベッセル301がテールゲートを有する場合には、テールゲートは、後方傾斜面305の後端から上方に向かって延びるように配置される。テールゲートの上縁が、後上縁306を構成する。
【0085】
<自動掘削積込作業時の走行経路生成処理>
図3を参照して説明した掘削積込作業を自動制御するときの、ホイールローダ1の走行の経路を生成する処理について、以下に説明する。
図7は、掘削積込作業を行うホイールローダ1の走行経路を示す模式図である。
図8は、ホイールローダ1の走行経路を生成する処理の流れを示すフローチャートである。
【0086】
図7に示される掘削対象200は、ホイールローダ1のバケット6で掘削されるマテリアルの山である。掘削対象200は、ストックヤードなどのマテリアル集積地に集積されたマテリアルの山であってもよい。掘削対象200は、更地に形成されたマテリアルの山であってもよい。掘削対象200は、山高さが最も高い山頂部201と、手前側(ホイールローダ1が掘削対象200を掘削する側。
図7においては図中の下側)の裾野202とを有している。裾野202は模式的に、直線状に図示されている。掘削対象200の山高さは、均一ではなく、山頂部201から裾野202へ向かうにしたがって山高さが次第に低くなっている。
【0087】
掘削対象200は、裾野202の近傍において、マテリアルの集積量が小さく山高さが低い低山領域203と、マテリアルの集積量が低山領域203よりも大きく山高さが低山領域203よりも高い集積領域204とを有している。
【0088】
図8に示されるように、まずステップS21において、ホイールローダ1に搭載された知覚装置111が、掘削対象200を検出する。知覚装置111が検出するホイールローダ1の周辺の物体は、掘削対象200を含む。知覚装置111は、掘削対象200の検出結果を、自動化コントローラ100の位置推定部101に入力する。位置推定部101は、知覚装置111の検出結果に基づき、掘削対象200であるマテリアルの山の位置および形状を認識する。
【0089】
ステップS22において、自動化コントローラ100のパスプランニング部102は、掘削対象200の形状に基づいて、掘削位置B2を選定する。ホイールローダ1が掘削対象200を掘削するときに、掘削対象200の裾野202の延びる方向(
図7においては図中の左右方向)における、バケット6の幅方向中心6c(
図2)が向かうべき位置を、掘削位置B2とする。パスプランニング部102は、掘削対象200を掘削するホイールローダ1が、バケット6内にマテリアルを掬い込み作業機3に一定量のマテリアルを積載するために、典型的にはバケット6内にマテリアルを満載するために、掘削対象200へ向かって前進する走行距離を最小にできる距離を、掘削位置B2に選定することができる。
【0090】
図7に示される例の場合、掘削対象200は、裾野202の近傍において、低山領域203と、集積領域204とを有している。ホイールローダ1は、低山領域203に向かって前進走行して掘削対象200を掘削するよりも、集積領域204に向かって前進走行して掘削対象200を掘削するほうが、短い走行距離でバケット6内により多くのマテリアルを掬い込むことができる。ホイールローダ1は、集積領域204に向かって前進走行して掘削対象200を掘削することで、裾野202により近い位置でバケット6内にマテリアルを満載できる。そこで、パスプランニング部102は、裾野202の延びる方向における集積領域204のほぼ中央の位置を、掘削位置B2に選定することができる。
【0091】
ステップS23において、パスプランニング部102は、掘削対象200の裾野202と、積込対象300のベッセル301の左側面とのなす角度θ2を決定する。角度θ2は、任意の角度に決定することができる。一例として、角度θ2は、掘削積込作業に望ましい60°の角度とすることができる。角度θ2は、作業現場の状況または周囲の環境に応じて、60°とは異なる他の角度に決定されてもよい。
【0092】
ステップS24において、パスプランニング部102は、ダンプトラックなどの積込対象300における、マテリアルを積込対象300に積み込むときの積込対象300に対する作業機3(バケット6)の相対位置である積込位置A2が、掘削対象200の裾野202から離れる距離を決定する。
【0093】
図9は、ベッセル301に対する積込位置A2の例を示す模式図である。
図9には、積込対象300の左側から見たベッセル301が模式的に図示されている。
図9にはまた、ホイールローダ1の後方から見た(前方向に向いて見た)バケット6が、模式的に図示されている。バケット6は、幅方向に延びる刃先6aを有している。中心点6aCは、バケット6の幅方向における刃先6aの中心点である。
図9に示されるバケット6は、フルダンプ姿勢にある。
図9に示される姿勢をとるバケット6は、ダンプ方向に最大限移動している。バケット6が
図9に示される姿勢をとるとき、バケットシリンダ19のシリンダストローク長さが最小になっている。
【0094】
図7に示されるように、ホイールローダ1は積込対象300の側方(左方)からベッセル301へ向かって前進走行して、積込作業を行う。積込作業中のバケット6の幅方向は、積込対象300(ベッセル301)の前後方向(
図9においては、図中の左右方向)に一致する。積込作業中、ホイールローダ1は直進姿勢をとっているので、ホイールローダ1の左右方向と、バケット6の幅方向とは一致している。
【0095】
図9には、バケット6から積込対象300のベッセル301に積み込まれたマテリアルMが示されている。パスプランニング部102は、ベッセル301に積み込まれるマテリアルMがベッセル301からこぼれないときの、積込対象300の前後方向における、バケット6の刃先6aの中心点6aCに相当する、ベッセル301の左側面上端の位置を、積込位置A2として認識する。
【0096】
積込位置A2は、フルダンプ姿勢のバケット6を、ホイールローダ1の後方から見た(前方向に向いて見た)ときに、バケット6の右側の端部がベッセル301の後上縁306から所定距離だけ離れる位置として、設定される。バケット6の幅方向の寸法から、刃先6aの中心点6aCに対するバケット6の右側の端部の相対位置が算出される。バケット6が積込位置A2にあるとき、バケット6の右側の端部は、積込対象300の前後方向において、後上縁306から所定距離だけ前方に離れている。
【0097】
具体的には、パスプランニング部102は、マテリアルMがその安息角を成してベッセル301に積み込まれるときにマテリアルMがベッセル301からこぼれない位置に、積込位置A2を決定する。たとえば、砂の安息角30°を使って、後上縁306(
図6)においてマテリアルMが積込対象300の前後方向に対して成す角度が30°以下になるように、積込位置A2を決定することができる。
【0098】
パスプランニング部102は、積込対象300が掘削対象200と干渉しない、かつ、積込位置A2へ向かって走行し積込位置A2においてバケット6内のマテリアルを積込対象300に積み込むホイールローダ1が掘削対象200と干渉しないような、積込位置A2が掘削対象200から離れる距離を決定する。パスプランニング部102は、直線状に延びる裾野202に対して直交する方向における、積込位置A2と裾野202との距離を決定する。パスプランニング部102は、掘削対象200に向かって直進するホイールローダ1の走行方向(
図7においては図中の上下方向)における、積込位置A2と裾野202との距離を決定する。
【0099】
ステップS25において、パスプランニング部102は、ホイールローダ1の仕様値から、ホイールローダ1を停車させたまま操舵する据え切りをせずにVシェープ走行できる積込位置A2を決定する。Vシェープ走行とは、ホイールローダ1が掘削積込作業を行うときの典型的な走行の経路であり、ホイールローダ1の走行経路がV字形状をなす。ホイールローダ1がVシェープ走行して掘削積込作業を行う場合、ホイールローダ1の走行距離が最小となるため、効率のよい走行経路とされている。
【0100】
図3および
図7を参照して、ホイールローダ1は、掘削対象200を掘削した後、前進から後進へ切り換えられ、積荷後進する。ホイールローダ1は、後進から前進へ切り換えられ、積込対象300の積込位置A2へ向かって、積荷前進する。ホイールローダ1の動作が積荷後進から積荷前進へ切り換わる位置を、切り返し位置と称する。積荷後進するホイールローダ1は、掘削対象200から切り返し位置へ直進してもよい。積荷前進するホイールローダ1が積込対象300の積込位置A2へ向かって走行する経路は、少なくとも一部が、曲線状、典型的には円弧状であってもよい。
【0101】
ホイールローダ1の仕様値は、
図1,2を参照して説明したホイールローダ1の各部の長さL1~L5,L9を含む。
図1を参照して説明したとおり、長さL1は、ホイールローダ1の全長であり、ホイールローダ1の前後方向における寸法である。ホイールローダ1の仕様値はまた、ホイールローダ1が据え切りをせずに旋回可能な最小半径を含む。
【0102】
ホイールローダ1は、バケット6内のマテリアルを積込対象300のベッセル301に積み込むとき、前フレーム2aと後フレーム2bとが互いに屈曲しない、直進姿勢をとる。ホイールローダ1は、バケット6内のマテリアルを積込対象300のベッセル301に積み込むとき、積込対象300のベッセル301に作業機3(バケット6)の位置姿勢を合わせる。具体的に、ホイールローダ1は、バケット6の幅方向が積込対象300の前後方向に一致し、バケット6の幅方向中心6c(
図2)を積込位置A2に合わせた姿勢をとる。
【0103】
図7に示されるように、パスプランニング部102は、バケット6の刃先6aの中心点6aC(
図9)が掘削対象200の裾野202上の掘削位置B2から長さL1離れる位置を、切り返し位置Tとすることができる。
【0104】
切り返し位置Tを決定するためのホイールローダ1の寸法は、長さL1に限られない。ホイールローダ1の車体に対して作業機3は姿勢を変更可能であり、長さL1は作業機3の移動に伴って変動することがある。バケット6を交換することで長さL1が変動することもある。一方、ホイールローダ1の本体寸法の一例である長さL2は、ホイールローダ1の前後方向における寸法であって、作業機3に依らず一定の寸法である。パスプランニング部102は、長さL2を基準として、切り返し位置Tを決定してもよい。
【0105】
パスプランニング部102は、ホイールローダ1が、切り返し位置Tにあるときのバケット6の幅方向中心6cを起点とする、曲線状の経路Pを設定する。パスプランニング部102は、バケット6の幅方向中心6cが、ステップS24で決定した距離だけ掘削対象200の裾野202から離れた位置に到達するときに、バケット6の幅方向が、掘削対象200の裾野202に対して角度θ2をなして停車する積込対象300の前後方向に一致する経路Pを設定する。
【0106】
パスプランニング部102は、経路Pに沿って走行するホイールローダ1が据え切りをせずに旋回可能なように、経路Pを設定する。経路Pに沿って走行するホイールローダ1は、据え切りをせずに旋回可能な最小半径よりも大きい旋回半径で、旋回する。経路Pは、ホイールローダ1が据え切りをせずに旋回可能な旋回半径で旋回するときの、バケット6の幅方向中心6cが辿る軌跡となる。パスプランニング部102は、経路Pに沿って走行するホイールローダ1が、据え切りをせずに走行可能であることを確認する。
【0107】
パスプランニング部102は、切り返し位置Tを始点とするときの経路Pの終点を、積込位置A2として決定する。切り返し位置Tから経路Pに沿って積込位置A2に積荷前進するホイールローダ1は、据え切りをせずに旋回可能であり、かつ、積込位置A2において積込対象300のベッセル301に作業機3(バケット6)の位置および姿勢を適切に合わせることが可能である。
【0108】
図7に示されるように、掘削対象200の裾野202に対して角度θ2をなして停車する積込対象300の左右方向における、切り返し位置Tと積込位置A2との距離が、ホイールローダ1の全長である長さL1であってもよい。
【0109】
ステップS26において、パスプランニング部102は、ステップS25で決定された積込位置A2に対応する、掘削対象200の裾野202の延びる方向(
図7においては図中の左右方向)における距離x2を計算する。パスプランニング部102は、掘削対象200の裾野202の延びる方向における、切り返し位置Tから積込位置A2までの距離を、距離x2と設定することができる。
【0110】
図7に示されるように、掘削位置B2と積込位置A2とは、裾野202の延びる方向において距離x2離れている。距離x2は、積込対象300にマテリアルを積み込む位置として決定される積込位置A2が、ホイールローダ1が掘削対象200を掘削する掘削位置B2から離れるべき最小距離として設定される。
【0111】
ステップS27において、パスプランニング部102は、掘削対象200の裾野202の延びる方向において、積込位置A2よりも掘削位置B2から離れる位置に、積込位置Axを選定する。パスプランニング部102は、掘削位置B2から距離x2よりも大きく離れる位置に、積込位置Axを選定する。積込位置A2は、掘削位置B2と積込位置A2との距離を最小の距離x2にできる位置であり、積込位置A2よりも掘削対象200から離れる位置に積込対象300を配置してもよい。掘削位置B2と積込位置Axとの距離は、距離x2よりも大きくてもよい。
【0112】
作業現場の状況または周囲の環境などの他の要因を考慮しながら、積込位置Axを選定してもよい。たとえば積込位置A2に窪みまたはぬかるみなどが存在することが認識された場合に、積込対象300を掘削対象200から離して、積込対象300がその窪みまたはぬかるみを避けて走行できるように、積込位置Axを選定してもよい。
【0113】
ステップS28において、パスプランニング部102は、積込位置Axと掘削位置B2とを結ぶ最短経路を生成する。パスプランニング部102は、掘削位置B2を起点として掘削対象200の裾野202から長さL1離れる位置を、切り返し位置Tとして決定している。パスプランニング部102は、掘削位置B2と切り返し位置Tとを結ぶ直線の経路を、ホイールローダ1が掘削対象200へ向かう空荷前進の経路として、およびホイールローダ1が掘削対象200から離れる積荷後進の経路として、生成することができる。
【0114】
パスプランニング部102は、その切り返し位置Tから積荷前進を開始するホイールローダ1が、積込対象300の積込位置Axにバケット6の刃先6aの中心点6aCを到達させ、到達したときのバケット6の幅方向が積込対象300の前後方向に一致するような、直線および任意の曲率を有する曲線を組み合わせた経路を生成することができる。この経路に含まれる曲線の曲率半径は、ホイールローダ1が据え切りをせずに旋回可能な最小半径よりも大きいので、ホイールローダ1は、据え切りをせずに、切り返し位置Tから積込位置Axへ前進走行することができる。パスプランニング部102は、この生成した経路を、ホイールローダ1が積込対象300へ向かう積荷前進の経路、およびホイールローダ1が積込対象300から離れる空荷後進の経路とすることができる。
【0115】
切り返し位置から距離x2よりも大きく離れる位置を積込位置Axとすることにより、切り返し位置から積込位置Axへ向かって積荷前進するホイールローダ1は、据え切りをせずに、バケット6が積込位置Axに到達するときにバケット6の幅方向を積込対象300の前後方向に一致させることが可能になる。
【0116】
パスプランニング部102は、切り返し位置におけるホイールローダ1が直進姿勢をとるように経路を生成してもよい。パスプランニング部102は、切り返し位置において前フレーム2aと後フレーム2bとが互いに屈曲する姿勢をとるように経路を生成してもよい。
【0117】
ステップS29において、パスプランニング部102は、ダンプトラックなどの積込対象300に、積込位置Axと角度θ2とを指令する。自動化コントローラ100は、通信装置150(
図5)に、積込位置Axおよび角度θ2を示す情報を出力する。通信装置150を介して、積込位置Axおよび角度θ2を示す情報が積込対象300に送信されて、積込対象300が停車すべき位置および積込対象300の停車位置への進行方向が、積込対象300に指令される。
【0118】
このようにして、ホイールローダ1の走行の経路を生成する一連の処理が終了する(
図8の「エンド」)。
【0119】
<作用および効果>
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0120】
図5、
図7および
図8に示されるように、自動化コントローラ100の位置推定部101は、知覚装置111の検出結果に基づき、作業機3で掘削されるマテリアルの山である掘削対象200を認識する。自動化コントローラ100のパスプランニング部102は、掘削対象200を掘削する掘削位置B2を、掘削対象200の形状に基づいて選定する。パスプランニング部102は、掘削積込作業を実行するホイールローダ1が、据え切りをせずに旋回して積込対象300に作業機3のバケット6の位置姿勢を合わせてマテリアルを積込対象300に積み込むときの積込位置が、掘削位置B2から離れるべき最小の距離x2を、ホイールローダ1の寸法により算出する。
【0121】
ホイールローダ1の寸法から、ホイールローダ1の旋回能力で据え切りなしで走行できる最短経路を決定することで、掘削積込作業を自動制御するときの走行の経路を適切に設定することができる。ホイールローダ1がVシェープ走行できる最短経路を設定することができ、掘削積込作業を効率的に実行することが可能になる。
【0122】
図1および
図7に示されるように、ホイールローダ1の寸法は、ホイールローダ1の前後方向における寸法を含んでもよい。前後方向におけるホイールローダ1の全長である長さL1などにより、距離x2を算出することができ、掘削積込作業を自動制御するときの走行の経路を適切に設定することができる。
【0123】
図7に示されるように、パスプランニング部102は、掘削対象200を掘削するホイールローダ1が、作業機3に一定量のマテリアルを積載するために掘削対象200へ向かって前進する走行距離を最小にできる位置を、掘削位置B2に選定してもよい。ホイールローダ1が掘削作業を実行するときの走行の経路を最短経路に設定することで、掘削作業を効率的に実行することができる。
【0124】
図7に示されるように、パスプランニング部102は、掘削位置B2から距離x2よりも大きく離れる位置に、マテリアルを積込対象300に積み込むときの積込位置Axを決定してもよい。距離x2はホイールローダ1が据え切りをせずに旋回可能な最小の距離であり、掘削位置B2と積込位置Axとの距離を距離x2よりも大きくすることで、ホイールローダ1を据え切りなしで走行させることができる。作業現場の状況または周囲の環境などを考慮した、適切な積込位置Axを決定することができる。
【0125】
図5および
図8に示されるように、自動化コントローラ100は、マテリアルを積込対象300に積み込むときの積込位置Axを、積込対象300へ送信してもよい。信号を受信した積込対象300を、積込位置Axに合わせて停車させることにより、ホイールローダ1を最短経路でVシェープ走行させることができ、掘削積込作業を効率的に実行することができる。
【0126】
図7に示されるように、パスプランニング部102は、ホイールローダ1を積荷後進から積荷前進へ切り換える切り返し位置Tを、ホイールローダ1の寸法により決定してもよい。パスプランニング部102は、掘削位置B2を起点として掘削対象200から長さL1離れる位置を、切り返し位置Tとして決定することができ、掘削積込作業を自動制御するときの走行の経路を適切に設定することができる。
【0127】
図1および
図2に示されるように、ホイールローダ1の本体は、前フレーム2aと、前フレーム2aに対して屈曲可能な後フレーム2bとを有していてもよい。ホイールローダ1が前フレーム2aと後フレーム2bとが互いに屈曲可能なアーティキュレート構造を備えていることにより、旋回走行時の旋回半径を小さくすることができる。ホイールローダ1が掘削積込作業を実行するときの走行の経路を短くすることができる。
【0128】
図7に示されるように、ホイールローダ1は、掘削対象200を掘削するとき、および、作業機3に積載されたマテリアルを積込対象300に積み込むとき、前フレーム2aと後フレーム2bとが互いに屈曲しない直進姿勢をとってもよい。掘削対象200を掘削するときにホイールローダ1を直進姿勢にすることで、車両の牽引力を作業機3の先端のバケット6に十分に伝達することができる。マテリアルを積込対象300に積み込むときにホイールローダ1を直進姿勢にすることで、車両を安定させることができる。
【0129】
上記の実施形態では、自動化コントローラ100の位置推定部101は、知覚装置111の検出結果に基づいて積込対象300の位置を認識した。これに限られず、通信装置150を介した自動化コントローラ100と積込対象300との車車間通信によって、積込対象300の自己位置の情報が積込対象300から自動化コントローラ100に入力されてもよい。位置推定部101は、位置情報取得装置112で取得されるホイールローダ1の現在位置の情報と、積込対象300の自己位置の情報とから、ホイールローダ1に対する積込対象300の相対位置を認識することができる。位置推定部101は、知覚装置111で取得される掘削対象200の情報と、ホイールローダ1に対する積込対象300の相対位置とから、掘削対象200に対する積込対象300の相対位置を認識することができる。
【0130】
上記の実施形態で説明した、ホイールローダ1の自動制御システムを構成する自動化コントローラ100は、必ずしもホイールローダ1に搭載されていなくてもよい。ホイールローダ1の外部のコントローラが、自動化コントローラ100を構成するシステムを構築してもよい。ホイールローダ1に搭載されたコントローラが、外界情報取得部110および車両情報取得部120などによって取得された情報を、外部のコントローラへ送信する処理を行い、信号を受信した外部のコントローラが、ホイールローダ1の走行経路を生成してもよい。
【0131】
外部のコントローラは、ホイールローダ1の作業現場に配置されてもよく、ホイールローダ1の作業現場から離れた遠隔地に配置されてもよい。外部のコントローラは、可搬式の機器であってもよい。外部のコントローラは、ノートパソコン、タブレットコンピュータ、スマートフォンなどの、作業者が携帯して使用可能な携帯機器であってもよい。
【0132】
実施形態では、積込対象300としてダンプトラックを例示して、作業機3(バケット6)に積載されたマテリアルをベッセル301に積み込む作業について説明した。バケット6内のマテリアルを積み込むための積込対象300は、ダンプトラックのベッセル301に限られず、たとえばホッパなどであってもよい。
【0133】
実施形態では、ホイールローダ1に搭載された知覚装置111により掘削対象200および積込対象300を検出する例について説明した。ホイールローダ1の本体(作業機械本体)の周辺の物体を検出する物体センサは、必ずしもホイールローダ1に搭載されていなくてもよい。物体センサは、作業機械の外部に配置されてもよい。たとえば、物体センサは、作業現場の所定地点に配置されてもよく、他の作業機械に搭載されてもよく、ドローンなどの無人航空機に搭載されてもよい。
【0134】
実施形態では、ホイールローダ1はキャブ5を備えており、オペレータがキャブ5に搭乗する有人車両である例について説明した。ホイールローダ1は、無人車両であってもよい。ホイールローダ1は、オペレータが搭乗して操作するためのキャブ5を備えていなくてもよい。ホイールローダ1は、搭乗したオペレータによる操縦機能を搭載していなくてもよい。ホイールローダ1は、遠隔操縦専用の作業機械であってもよい。ホイールローダ1の操縦は、遠隔操縦装置からの無線信号により行われてもよい。
【0135】
<付記>
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0136】
(付記1)
作業機械を含むシステムであって、
走行体を有する作業機械本体と、
前記作業機械本体に取り付けられた作業機と、
前記作業機械本体の周辺の物体を検出するセンサと、
前記走行体の走行経路を生成するコントローラと、を備え、
前記物体は、前記作業機で掘削されるマテリアルの山である掘削対象を含み、
前記走行経路は、前記作業機械が前記掘削対象を掘削する掘削位置を含み、
前記コントローラは、前記センサの検出結果に基づき前記掘削対象を認識し、前記掘削位置を選定し、前記作業機に積載された前記マテリアルを積み込む積込対象に前記マテリアルを積み込むときの積込位置が、前記掘削位置から離れるべき最小距離を、前記作業機械の寸法により算出する、システム。
【0137】
(付記2)
前記作業機械の寸法は、前記作業機械の前後方向における寸法を含む、付記1に記載のシステム。
【0138】
(付記3)
前記コントローラは、前記掘削対象を掘削する前記作業機械が、前記作業機に一定量の前記マテリアルを積載するために前記掘削対象へ向かって前進する走行距離を最小にできる位置を、前記掘削位置に選定する、付記1または付記2に記載のシステム。
【0139】
(付記4)
前記コントローラは、前記掘削位置から前記最小距離よりも大きく離れる位置に、前記マテリアルを前記積込対象に積み込むときの前記積込位置を決定する、付記1から付記3のいずれか1つに記載のシステム。
【0140】
(付記5)
前記コントローラは、前記マテリアルを前記積込対象に積み込むときの前記積込位置を、前記積込対象へ送信する、付記4に記載のシステム。
【0141】
(付記6)
前記コントローラは、前記作業機械を積荷後進から積荷前進へ切り換える切り返し位置を、前記作業機械の寸法により決定する、付記1から付記5のいずれか1つに記載のシステム。
【0142】
(付記7)
前記作業機械本体は、前フレームと、前記前フレームに対して屈曲可能な後フレームとを有する、付記1から付記6のいずれか1つに記載のシステム。
【0143】
(付記8)
前記作業機械は、前記掘削対象を掘削するとき、および、前記作業機に積載された前記マテリアルを前記積込対象に積み込むとき、前記前フレームと前記後フレームとが互いに屈曲しない直進姿勢をとる、付記7に記載のシステム。
【0144】
(付記9)
前記コントローラは、前記掘削対象の形状を認識し、前記掘削位置を前記掘削対象の形状に基づいて選定する、付記1から付記8のいずれか1つに記載のシステム。
【0145】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0146】
1 ホイールローダ、2 車体フレーム、2a 前フレーム、2b 後フレーム、3 作業機、4 走行装置、4a 前輪、4b 後輪、6 バケット、6a 刃先、6aC 中心点、6c 幅方向中心、14 ブーム、50 車体コントローラ、60 エンジンコントローラ、70 トランスミッションコントローラ、80 作業機コントローラ、100 自動化コントローラ、101 位置推定部、102 パスプランニング部、103 経路追従制御部、110 外界情報取得部、111 知覚装置、120 車両情報取得部、150 通信装置、200 掘削対象、201 山頂部、202 裾野、203 低山領域、204 集積領域、300 積込対象、301 ベッセル、306 後上縁、Ax 積込位置、B2 掘削位置、P 経路、T 切り返し位置、x2 距離。