(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119551
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】カーテンエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2338 20110101AFI20240827BHJP
B60R 21/232 20110101ALI20240827BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026538
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】中島 敦
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴之
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA04
3D054AA07
3D054AA18
3D054BB21
3D054CC04
3D054CC11
3D054CC34
3D054CC42
3D054DD13
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】緊急時に乗員の傷害値を効率よく抑えることが可能なカーテンエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】カーテンエアバッグ装置100のエアバッグクッション124は、中間チャンバ142と、中間チャンバ142の車両前側の第2フロントチャンバ140と、中間チャンバ142の車両後側のリアチャンバ144と、中間チャンバ142と第2フロントチャンバ140との間および中間チャンバ142とリアチャンバ144との間それぞれに設けられる一対のスリット160、162と、中間チャンバ142の車外側を通って第2フロントチャンバ140とリアチャンバ144とに差し渡されて当該エアバッグクッション124の膨張展開時に第2フロントチャンバ140とリアチャンバ144との間で緊張する形状の当て布150と、中間チャンバ142の下縁部分152と当て布とをつなぐ下側接合部154と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に長尺な収納形態になって車室側壁の上部に取り付けられるエアバッグクッションと、該エアバッグクッションにガスを供給するインフレータとを備えるカーテンエアバッグ装置において、
前記エアバッグクッションは、
前記車室側壁のサイドウィンドウ用開口を覆うよう膨張展開する中間チャンバと、
前記中間チャンバの車両前側に隣接して膨張展開するフロントチャンバと、
前記中間チャンバの車両後側に隣接して膨張展開するリアチャンバと、
前記中間チャンバと前記フロントチャンバとの間および該中間チャンバと前記リアチャンバとの間それぞれに設けられて該中間チャンバを該フロントチャンバおよび該リアチャンバから分離した自由端の状態にする一対のスリットと、
前記中間チャンバの車外側を通って前記フロントチャンバと前記リアチャンバとに差し渡されて当該エアバッグクッションの膨張展開時に該フロントチャンバと該リアチャンバとの間で緊張する形状の当て布と、
前記中間チャンバの下縁部分と前記当て布とをつなぐ、または該中間チャンバの下縁部分と前記フロントチャンバの下縁部分および前記リアチャンバの下縁部分それぞれとをつなぐ1または複数の下側接合部と、
を有することを特徴とするカーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
前記中間チャンバの下縁部分は、前記フロントチャンバの下縁部分および前記リアチャンバの下縁部分よりも下方に延びていて、
前記下側接合部は、前記中間チャンバの下縁部分の下端と前記当て布とをつなぐことを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項3】
前記当て布は、前記フロントチャンバの下縁部分および前記リアチャンバの下縁部分よりも下方に延びていて、
前記下側接合部は、前記中間チャンバの下縁部分の下端と、前記当て布のうち前記フロントチャンバの下縁部分および前記リアチャンバの下縁部分よりも下方の箇所とをつなぐことを特徴とする請求項2に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項4】
前記中間チャンバの下縁部分は、前記エアバッグクッションの収納形態において、上下方向に折り返しまたは折り畳まれた状態になっていることを特徴とする請求項2または3に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグクッションはさらに、車両前後方向における前記フロントチャンバと前記リアチャンバとの間の範囲を車両前後方向に縮ませるように折り畳んだタック部を有し、
前記フロントチャンバおよび前記リアチャンバは、それぞれの一部が前記中間チャンバの車外側に重なる程度に近接して膨張展開することを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項6】
前記フロントチャンバおよび前記リアチャンバは、前記当て布によって互いに引き寄せられてそれぞれの一部が前記中間チャンバの車外側に重なる程度に近接して膨張展開することを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項7】
前記中間チャンバの下縁部分は、前記フロントチャンバの下縁部分および前記リアチャンバの下縁部分よりも下方に延びていて、
前記エアバッグクッションはさらに、
前記中間チャンバの下縁部分のうち前記フロントチャンバの下縁部分よりも下方の箇所から車両前方に突出した前側突出部と、
前記中間チャンバの下縁部分のうち前記リアチャンバの下縁部分よりも下方の箇所から車両後方に突出した後側突出部と、
を有し、
前記1または複数の下側接合部は、複数設けられていて、
前記複数の下縁接続部は、前記前側突出部と前記フロントチャンバの下縁部分とをつなぐ第1下側接合部と、前記後側突出部と前記リアチャンバの下縁部分とをつなぐ第2下側接合部とを含むことを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側面衝突時やロールオーバ時に乗員保護を保護するカーテンエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーテンエアバッグ装置は、緊急時に車室側壁のサイドウィンドウ等を覆うエアバッグクッションを備えていて、乗員を側方から受け止めて拘束する。カーテンエアバッグ装置のエアバッグクッションは、車両が側面衝突からロールオーバに移行した場合であっても、乗員の車外放出を防ぐために、サイドウィンドウ用の開口を適切に覆うことが求められている。
【0003】
現在普及しているカーテンエアバッグ装置のエアバッグクッションには、ガスで膨張する膨張部を利用して乗員を拘束するものだけでなく、一部に布状の非膨張部を設けてこれを利用して乗員を拘束するものも存在している。例えば特許文献1の
図2のエアバッグ19には、前端側に布状のテンションクロス38が設けられている。特許文献1には、段落0037および
図5にて、テンションクロス38を利用して端部側膨張部26を屈曲させつつ支持することで、乗員MPを的確に保護することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
車両の側面衝突において衝突速度が速い場合、ドアトリムが車内側に変位する一方で、慣性によって乗員の頭部が車外側、すなわちドアトリム側に倒れようとすることがある。特に、乗員の身体がドアトリムによって車内側に押された場合、カーテンエアバッグ装置のエアバッグクッションと乗員との位置が離れ、乗員が車外側に傾いたときに頭部が本来よりもエアバッグクッションの下端側に接触することがある。この場合、もし乗員の頭部の位置がさらに下がると、頭部がドアトリムに接触するおそれが生じる。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、緊急時に乗員の傷害値を効率よく抑えることが可能なカーテンエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるカーテンエアバッグ装置の代表的な構成は、車両前後方向に長尺な収納形態になって車室側壁の上部に取り付けられるエアバッグクッションと、エアバッグクッションにガスを供給するインフレータとを備えるカーテンエアバッグ装置において、エアバッグクッションは、車室側壁のサイドウィンドウ用開口を覆うよう膨張展開する中間チャンバと、中間チャンバの車両前側に隣接して膨張展開するフロントチャンバと、中間チャンバの車両後側に隣接して膨張展開するリアチャンバと、中間チャンバとフロントチャンバとの間および中間チャンバとリアチャンバとの間それぞれに設けられて中間チャンバをフロントチャンバおよびリアチャンバから分離した自由端の状態にする一対のスリットと、中間チャンバの車外側を通ってフロントチャンバとリアチャンバとに差し渡されて当該エアバッグクッションの膨張展開時にフロントチャンバとリアチャンバとの間で緊張する形状の当て布と、中間チャンバの下縁部分と当て布とをつなぐ、または中間チャンバの下縁部分とフロントチャンバの下縁部分およびリアチャンバの下縁部分それぞれとをつなぐ1または複数の下側接合部と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記の中間チャンバは、自由端の状態になっているため、当て布に反発することでフロントチャンバ等に比べてより車内側の位置で膨張展開することができる。この中間チャンバによれば、乗員の頭部により接近した位置で膨張展開することで、頭部の早期拘束を達成し、乗員の車外放出を十全に防止することが可能になる。加えて、上記の中間チャンバによれば、車内側に位置が偏っていることで、側面衝突等によってドアトリムが車内側に変位した場合にもドアトリムの上方を覆うことができ、乗員が車外側に倒れようとしたときに頭部がドアトリムに触れることを防止できる。よって、上記構成によれば、緊急時に乗員の傷害値を効率よく抑えることが可能になる。
【0009】
上記の中間チャンバの下縁部分は、フロントチャンバの下縁部分およびリアチャンバの下縁部分よりも下方に延びていて、下側接合部は、中間チャンバの下縁部分の下端と当て布とをつないでもよい。
【0010】
この構成によれば、中間チャンバの下縁部分の下端と当て布とをつなぐことで、中間チャンバの位置を車内側に変位させつつ、中間チャンバの揺動を抑えてその展開挙動を安定させることで、中間チャンバを目的とする範囲に早期に膨張展開させることが可能になる。
【0011】
上記の当て布は、フロントチャンバの下縁部分およびリアチャンバの下縁部分よりも下方に延びていて、下側接合部は、中間チャンバの下縁部分の下端と、当て布のうちフロントチャンバの下縁部分およびリアチャンバの下縁部分よりも下方の箇所とをつないでもよい。
【0012】
この構成によっても、中間チャンバの位置を車内側に変位させつつ、中間チャンバの揺動を抑えてその展開挙動を安定させることで、中間チャンバを目的とする範囲に早期に膨張展開させることが可能になる。
【0013】
上記の中間チャンバの下縁部分は、エアバッグクッションの収納形態において、上下方向に折り返しまたは折り畳まれた状態になっていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、中間チャンバの下縁部分を折り返し等させて収納することで、中間チャンバの膨張展開と共に下縁部分も円滑に展開することが可能になる。
【0015】
上記のエアバッグクッションはさらに、車両前後方向におけるフロントチャンバとリアチャンバとの間の範囲を車両前後方向に縮ませるように折り畳んだタック部を有し、フロントチャンバおよびリアチャンバは、それぞれの一部が中間チャンバの車外側に重なる程度に近接して膨張展開してもよい。
【0016】
上記構成によれば、フロントチャンバおよびリアチャンバが中間チャンバを車外側から支えた状態になるため、中間チャンバを車内側に変位させつつ、中間チャンバの拘束力を向上させることが可能になる。
【0017】
上記のフロントチャンバおよびリアチャンバは、当て布によって互いに引き寄せられてそれぞれの一部が中間チャンバの車外側に重なる程度に近接して膨張展開してもよい。
【0018】
上記構成によっても、フロントチャンバおよびリアチャンバが中間チャンバを車外側から支えた状態になるため、中間チャンバを車内側に変位させつつ、中間チャンバの拘束力を向上させることが可能になる。
【0019】
上記の中間チャンバの下縁部分は、フロントチャンバの下縁部分およびリアチャンバの下縁部分よりも下方に延びていて、エアバッグクッションはさらに、中間チャンバの下縁部分のうちフロントチャンバの下縁部分よりも下方の箇所から車両前方に突出した前側突出部と、中間チャンバの下縁部分のうちリアチャンバの下縁部分よりも下方の箇所から車両後方に突出した後側突出部と、を有し、1または複数の下側接合部は、複数設けられていて、複数の下縁接続部は、前側突出部とフロントチャンバの下縁部分とをつなぐ第1下側接合部と、後側突出部とリアチャンバの下縁部分とをつなぐ第2下側接合部とを含んでもよい。
【0020】
上記構成によっても、中間チャンバの下縁部分をフロントチャンバの下縁部分およびリアチャンバの下縁部分につなぐことで、中間チャンバの位置を車内側に変位させつつ、中間チャンバの揺動を抑えてその展開挙動を安定させることで、中間チャンバを目的とする範囲に早期に膨張展開させることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、緊急時に乗員の傷害値を効率よく抑えることが可能なカーテンエアバッグ装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態にかかるカーテンエアバッグ装置の概要を例示する図である。
【
図2】
図1(b)のエアバッグクッションを単独で例示した図である。
【
図3】
図2(a)の当て布をエアバッグクッションに取り付ける過程を例示した図である。
【
図4】
図2(c)のエアバッグクッションが側面衝突時に乗員を拘束する過程を例示した図である。
【
図5】
図3に例示したエアバッグクッションの第1変形例である。
【
図6】
図3に例示したエアバッグクッションの第2変形例である。
【
図7】
図3に例示したエアバッグクッションの第3変形例である。
【
図8】
図7(d)の各断面に対応したエアバッグクッションの膨張展開時の様子である。
【
図9】
図3に例示したエアバッグクッションの第4変形例である。
【
図10】
図3に例示したエアバッグクッションの第5変形例である。
【
図11】
図10に続いてエアバッグクッションを例示した図である。
【
図12】
図3に例示したエアバッグクッションの第6変形例である。
【
図13】
図2に例示したエアバッグクッションの第7変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態にかかるカーテンエアバッグ装置100の概要を例示する図である。
図1(a)はカーテンエアバッグ装置100の作動前の様子を例示した図である。図中で例示するカーテンエアバッグ装置100は、車室の左側面用のものであるが、図示を省略する右側面用のものも同様の対称な構造を有する。
【0025】
以下、
図1(a)その他の図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Back)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Left)、R(Right)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(Up)、D(Down)で例示する。特に、上方とは座席に正規に着座した姿勢の乗員から見て頭部の方向のことであり、下方とは当該乗員から見て下肢部の方向のことである。
【0026】
車両102は、車両前方から前列座席104および後列座席106が配置された2列シートの車両を想定している。車両102には、ルーフを支える複数のピラーが設けられている。複数のピラーには、車両の前方からAピラー108、Bピラー110、およびCピラー112が含まれている。
【0027】
ルーフサイドレール114は、車室側壁の上部を形成する部材である。ルーフサイドレール114は不図示のルーフトリムによって覆われる。そして、車室の側壁には、ルーフサイドレール114と各ピラーとに囲まれた領域として、サイドウィンドウ116、118を設けるためのサイドウィンドウ用開口120、122が形成されている。
【0028】
作動前のカーテンエアバッグ装置100のエアバッグクッション124は、巻回または折り畳みによって、車両前後方向に長尺な収納形態になっている。エアバッグクッション124は、Aピラー108の付近からルーフサイドレール114に沿って取り付けられる。作動前のエアバッグクッション124は、不図示のルーフトリムに覆い隠されるため、乗員からは視認不能である。
【0029】
カーテンエアバッグ装置100は、エアバッグクッション124にガスを供給するガス発生装置として、インフレータ126を備えている。インフレータ126は、本実施形態では円筒状のシリンダ型のものを採用していて、エアバッグクッション124に一部が挿入された状態でルーフサイドレール114に固定される。エアバッグクッション124には、インフレータ126を取り付ける部位として、インフレータ取付部128が後方の上部に設けられている。
【0030】
現在普及しているインフレータには、ガス発生剤が充填されていてこれを燃焼させてガスを発生させるタイプや、圧縮ガスが充填されていて熱を発生させることなくガスを供給するタイプ、または燃焼ガスと圧縮ガスとを両方利用するハイブリッドタイプのものなどがある。インフレータ126としては、いずれのタイプのものも利用可能である。
【0031】
図1(b)はカーテンエアバッグ装置100の作動後の様子を例示した図である。カーテンエアバッグ装置100は、各種センサによってオフセット衝突や側面衝突が予測されたり検知されたりした場合に作動する。インフレータ126は不図示の制御部からの信号を受けて作動し、エアバッグクッション124はインフレータ126から供給されるガスの圧力によって不図示のルーフトリムを押しのけて膨張展開して乗員を拘束する。
【0032】
エアバッグクッション124は、前列座席104および後列座席106の車外側にて、サイドウィンドウ用開口120、122に沿って車両前後方向に広く膨張展開する。エアバッグクッション124の各所の膨張部は、ガスの流れや乗員および座席等の構造物に応じて、例えば中間チャンバ142(
図2(a)参照)などのチャンバと呼ばれる小部屋に区画されている。
【0033】
エアバッグクッション124は、ルーフサイドレール114への固定を行う部位として、上縁に複数のタブ130を備えている。タブ130は、帯状の部位であって、ブラケットやボルトなどを使用してルーフサイドレール114に固定される。
【0034】
エアバッグクッション124の前端側には、ストラップ132が備えられている。ストラップ132は、紐状の部材であって、Aピラー108に接続されている。ストラップ132は、エアバッグクッション124の膨張展開時の揺動を抑える作用があり、これによってエアバッグクッション124は目的の範囲を迅速に覆うことが可能になる。同様のストラップとしては、前端側のストラップ132以外にも、エアバッグクッション124の後端側をCピラー112につなぐものを採用可能である。
【0035】
図2は、
図1(b)のエアバッグクッション124を単独で例示した図である。
図2(a)は、エアバッグクッション124の全体の概要を例示している。
【0036】
エアバッグクッション124は、例えば、その表面を構成する基布を表裏で縫製したり、OPW(One-Piece Woven)を用いて紡織したりすることにより袋状に形成されている。
【0037】
エアバッグクッション124には、ガスで膨張展開する膨張部として、インフレータ取付部128から前後方向に延びるダクト部136、乗員を拘束する第1フロントチャンバ138、第2フロントチャンバ140、中間チャンバ142、リアチャンバ144、および後列用チャンバ146が設けられている。
【0038】
中間チャンバ142などの各チャンバは、当該エアバッグクッション124の主要な膨張部であって、上部のダクト部136からガスを受給してサイドウィンドウ用開口120、122(
図1(a)参照)を覆うように膨張展開して、車室内の乗員を拘束して車外への移動を防ぐ。第1フロントチャンバ138からリアチャンバ144は主に前列座席104の乗員を拘束し、後列用チャンバ146は主に後列座席106の乗員を拘束する。
【0039】
中間チャンバ142は、主に前列座席104の側方に位置する箇所に配置され、前列座席104の乗員の頭部がドアトリム148(
図1(a)参照)に接触することを防いでいる。第2フロントチャンバ140は中間チャンバ142の車両前側に隣接して膨張展開し、リアチャンバ144は中間チャンバ142の車両後側に隣接して膨張展開する。
【0040】
図2(b)は、
図2(a)のエアバッグクッション124のA-A断面図である。本実施形態では、中間チャンバ142の車外側には、当て布150が設けられている。
【0041】
当て布150は、布状の非膨張の部材であって、中間チャンバ142の車外側を通って第2フロントチャンバ140とリアチャンバ144とに差し渡されている。当て布150は、エアバッグクッション124の膨張展開時に第2フロントチャンバ140とリアチャンバ144との間で緊張する形状および寸法を有していて、中間チャンバ142を車外側から支えることが可能になっている。
【0042】
図2(c)は、
図2(a)のエアバッグクッション124のB-B断面図である。中間チャンバ142は、緊張した当て布150に車外側から支えられることによって、第2フロントチャンバ140(
図2(b)参照)およびリアチャンバ144に比べて、より車内側の位置で膨張展開する。中間チャンバ142によれば、乗員の頭部により接近した位置で膨張展開することができるため、乗員の早期拘束を達成することが可能になる。
【0043】
中間チャンバ142の下縁に沿った非膨張の下縁部分152は、下側接合部154によって当て布150の下端側につながれている。下側接合部154は、縫製や溶着、接着などによって下縁部分152を当て布150に接続させることができる。
【0044】
図3は、
図2(a)の当て布をエアバッグクッション124に取り付ける過程を例示した図である。
図3(a)は、
図2(a)のエアバッグクッション124から当て布150を省略した状態の図である。
【0045】
中間チャンバ142の前側のシーム部156と後側のシーム部158とには、一対のスリット160、162が設けられている。シーム部156、158は、エアバッグクッション124の車外側のパネルと車内側のパネルとを縫製や溶着等によって接合させた、チャンバを区画する非膨張の部位である。スリット160、162は、シーム部156、158をエアバッグクッション124の下端から上部のダクト部136に向かって切り込むことで設けられている。
【0046】
図3(b)は、
図3(a)の中間チャンバ142を上げた状態の図である。スリット160、162は、中間チャンバ142と第2フロントチャンバ140との間、および中間チャンバ142とリアチャンバ144との間それぞれに設けられている。中間チャンバ142は、前後のスリット160、162によって、第2フロントチャンバ140およびリアチャンバ144から分離した自由端の状態になっている。
【0047】
図3(c)は、
図3(b)のエアバッグクッション124に当て布150を取り付けた状態の図である。当て布150は、第2フロントチャンバ140の後縁部分164およびリアチャンバ144の前縁部分166に対して車内側から配置し、縫製や溶着等による前側接合部170および後側接合部172によって接合させて取り付けることができる。このとき、当て布150やその取付箇所となる後縁部分164および前縁部分166には、各所に位置決め用の孔168を設けておくと取付作業の効率が向上する。
【0048】
なお、当て布150は、第2フロントチャンバ140およびリアチャンバ144に対して車外側に配置して取り付けることも可能である。また、当て布150は、第2フロントチャンバ140の後縁部分164およびリアチャンバ144の前縁部分166以外にも、これら第2フロントチャンバ140およびリアチャンバ144の膨張部分のパネルに接合させて取り付けることも可能である。
【0049】
図3(d)は、
図3(c)の中間チャンバ142の下縁部分152に下側接合部154を設けた状態の図である。下側接合部154は、中間チャンバ142の下縁部分152の下端側を当て布150に縫製や溶着等によって接合させて設けることができる。
【0050】
図4は、
図2(c)のエアバッグクッション124が側面衝突時に乗員176を拘束する過程を例示した図である。
図4(a)は、エアバッグクッション124が乗員176を拘束する前の様子を例示した図である。
【0051】
車両102(
図1(a)参照)は、各種センサおよび所定の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)を介して側面衝突等の衝突を予測または検知すると、カーテンエアバッグ装置100を作動させる。これによって、上述したエアバッグクッション124が膨張展開し、中間チャンバ142がサイドウィンドウ用開口120を覆うように膨張展開する。
【0052】
図4(b)は、
図4(a)よりも側面衝突が進行した時の様子を例示した図である。側面衝突によって車両102(
図1(a)参照)に側方から力が加わると、ドアトリム148は車内側に変位する。また、衝突の力によって、乗員176の身体も車両ごと移動する一方、慣性によって頭部178は車外側に倒れようとする。よって、乗員176の頭部178がドアトリム148に対して上方から接触する可能性が生じる。
【0053】
当該カーテンエアバッグ装置100では、中間チャンバ142が自由端の状態になっていて、中間チャンバ142は当て布150に反発することで第2フロントチャンバ140(
図2(b)参照)等に比べてより車内側の位置で膨張展開する。この中間チャンバ142によれば、車内側に位置が偏っていることで、側面衝突等によってドアトリム148が車内側に変位した場合にもドアトリム148の上方を覆うことができ、乗員176が車外側に倒れようとしたときに頭部178がドアトリム148に触れることを防止できる。
【0054】
また中間チャンバ142は、乗員176の頭部178により接近した位置で膨張展開することで、頭部178の早期拘束を達成し、乗員176の車外放出を十全に防止することができる。これらのように、当該カーテンエアバッグ装置100によれば、特にドアトリム148の変位が生じるような速い速度の側面衝突が発生した場合において、中間チャンバ142および当て布150を利用して乗員176の傷害値を効率よく抑えることが可能である。
【0055】
(変形例)
以下、上述した各構成要素の変形例について説明する。
図5以降では既に説明した構成要素と同じものには同じ符号を付していて、これによって既出の構成要素については説明を省略する。また、以下の説明において、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、例え異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有しているものとする。
【0056】
図5は、
図3に例示したエアバッグクッション124の第1変形例(エアバッグクッション200)である。エアバッグクッション200は、中間チャンバ142の下縁部分202が延長されている点において、
図3(a)のエアバッグクッション124と構成が異なっている。
【0057】
中間チャンバ142の下縁部分202は、第2フロントチャンバ140の下縁部分180およびリアチャンバ144の下縁部分182よりも下方に延びる程度に、寸法が延長されている。
【0058】
図5(b)は、
図5(a)の下縁部分202に下側接合部204を設けた状態の図である。下側接合部204は、中間チャンバ142の下縁部分202の下端と当て布150とをつなぐ。
【0059】
図5(c)は、
図5(b)の下縁部分202のC-C断面図である。中間チャンバ142の下縁部分202は、エアバッグクッション200の収納形態において、上下方向に折り返しまたは折り畳むことができる。例えば、本実施例では、下縁部分202は、折り目206で上方に折り返した後、折り目208で下方に折り返した状態になっている。寸法が延長された下縁部分202であっても、折り返し等させて収納することで、中間チャンバ142の膨張展開と共に円滑に展開することが可能になる。
【0060】
図5(d)は、
図5(b)のC-C断面に対応した中間チャンバ142の膨張展開時の様子である。中間チャンバ142は、下縁部分202が延長していることで、より車内側に膨出するように膨張展開することができる。このとき、下縁部分202の下端は下側接合部204によって当て布150につながれているため、中間チャンバ142の揺動を抑えてその展開挙動を安定させ、中間チャンバ142を目的とする範囲に早期に膨張展開させることが可能になっている。
【0061】
図6は、
図3に例示したエアバッグクッション124の第2変形例(エアバッグクッション220)である。エアバッグクッション220は、中間チャンバ142の下縁部分202に加えて当て布222も延長されている点において、
図3(a)のエアバッグクッション124と構成が異なっている。
【0062】
当て布222は、第2フロントチャンバ140の下縁部分180およびリアチャンバ144の下縁部分182よりも下方に延びる程度に寸法が延長されている。下側接合部204は、中間チャンバ142の下縁部分202の下端と、当て布222のうち第2フロントチャンバ140の下縁部分180およびリアチャンバ144の下縁部分182よりも下方の箇所とをつないでいる。
【0063】
図6(b)は、
図6(a)のD-D断面に対応したエアバッグクッション220の膨張展開時の様子である。中間チャンバ142は、下縁部分202および当て布222が延長されていることで、より車内側に膨出するように膨張展開することができる。このとき、下側接合部204によって下縁部分202の下端が当て布222につながれているため、中間チャンバ142の揺動を抑えてその展開挙動を安定させ、中間チャンバ142を目的とする範囲に早期に膨張展開させることが可能になっている。
【0064】
図7は、
図3に例示したエアバッグクッション124の第3変形例(エアバッグクッション240)である。エアバッグクッション240は、タック部242が形成されている点において、
図3(a)のエアバッグクッション124と構成が異なっている。
【0065】
図7(a)は、
図3(a)に対応したエアバッグクッション240の状態を例示した図である。エアバッグクッション240も、スリット160、162によって中間チャンバ142が自由端の状態になっている。
【0066】
図7(b)は、
図7(a)のエアバッグクッション240にタック部242を設けた状態の図である。タック部242は、エアバッグクッション240のうち車両前後方向における第2フロントチャンバ140とリアチャンバ144との間の範囲であって、例えば中間チャンバ142およびダクト部136に上下方向にわたる折り目244を設けて形成される。タック部242は、エアバッグクッション240を車両前後方向に縮ませるように折り畳むことで、第2フロントチャンバ140とリアチャンバ144とを近接させた状態にすることができる。
【0067】
図7(c)は、
図7(b)のエアバッグクッション240に当て布246を取り付けた状態の図である。当て布246は、
図3(b)の当て布150に比べて車両前後方向の寸法が縮小されていて、第2フロントチャンバ140とリアチャンバ144とを引き寄せた状態にして取り付けられる。
【0068】
図7(d)は、
図7(c)の中間チャンバ142の下縁部分152に下側接合部154を設けた状態の図である。下側接合部154によって、中間チャンバ142の下縁部分152の下端側は当て布246に接合される。
【0069】
図8は、
図7(d)の各断面に対応したエアバッグクッション240の膨張展開時の様子である。
図8(a)は、
図7(d)のE-E断面に対応したエアバッグクッション240の膨張展開時の様子である。
【0070】
第2フロントチャンバ140およびリアチャンバ144は、上述したタック部242および当て布246によって、それぞれの一部が中間チャンバ142の車外側に重なる程度に近接して膨張展開する。よって、中間チャンバ142は、第2フロントチャンバ140およびリアチャンバ144によって車外側から支えられた状態に膨張展開する。
【0071】
図8(b)は、
図7(d)のF-F断面に対応したエアバッグクッション240の膨張展開時の様子である。中間チャンバ142は、第2フロントチャンバ140およびリアチャンバ144によって車外側から支えられた状態になることで、より車内側に位置して膨張展開することができる。この構成によれば、中間チャンバ142をより車内側に位置させて乗員176(
図4(b)参照)の早期拘束を達成しつつ、第2フロントチャンバ140およびリアチャンバ144を利用して中間チャンバ142を支えてその拘束力を向上させることができる。
【0072】
図9は、
図3に例示したエアバッグクッション124の第4変形例(エアバッグクッション260)である。エアバッグクッション260は、当て布262(
図9(b)参照)の形状等の点において、
図3(b)のエアバッグクッション260と異なっている。
【0073】
図9(a)は、
図3(b)に対応したエアバッグクッション260の状態を例示した図である。エアバッグクッション260も、スリット160、162によって中間チャンバ142が自由端の状態になっている。
【0074】
図9(b)は、
図9(a)の第2フロントチャンバ140とリアチャンバ144とを引き寄せた状態の図である。本変形例で利用する当て布262は、形状および寸法が
図3(b)の当て布150に比べて削減されている。
【0075】
図9(c)は、
図9(b)のエアバッグクッション260に当て布262を取り付けた状態の図である。第2フロントチャンバ140およびリアチャンバ144は、当て布262を取り付けることによって、互いに引き寄せられた状態に保持される。
【0076】
図9(d)は、
図9(c)の中間チャンバ142の下縁部分152に下側接合部154を設けた状態の図である。下側接合部154によって、下縁部分の下端側は当て布262に接合される。
【0077】
当該エアバッグクッション260においても、
図8(a)のエアバッグクッション240と同様に、第2フロントチャンバ140およびリアチャンバ144が当て布によって引き寄せられることで、それぞれの一部が中間チャンバ142の車外側に重なる程度に近接して膨張展開する。
【0078】
エアバッグクッション260によっても、
図8(a)と同様に、中間チャンバ142は第2フロントチャンバ140およびリアチャンバ144によって車外側から支えられた状態に膨張展開する。エアバッグクッション260によっても、中間チャンバ142をより車内側に位置させて乗員176(
図4(b)参照)の早期拘束を達成しつつ、第2フロントチャンバ140およびリアチャンバ144を利用して中間チャンバ142を支えてその拘束力を向上させることが可能になる。
【0079】
図10は、
図3に例示したエアバッグクッション124の第5変形例(エアバッグクッション280)である。エアバッグクッション280は、下縁部分282の形状において、
図3(a)のエアバッグクッション280と構成が異なっている。
【0080】
上記の中間チャンバ142の下縁部分282は、第2フロントチャンバ140の下縁部分180およびリアチャンバ144の下縁部分182よりも下方に延びた形状になっている。そして、下縁部分282には、前側突出部284および後側突出部286が設けられている。前側突出部284は、下縁部分282のうち、第2フロントチャンバ140の下縁部分180よりも下方の箇所から車両前方に突出した部位である。後側突出部286は、下縁部分282のうち、リアチャンバ144の下縁部分182よりも下方の箇所から車両後方に突出した部位である。
【0081】
図10(b)は、
図3(b)に対応したエアバッグクッション280の状態を例示した図である。エアバッグクッション280に採用する当て布288は、
図3(b)の当て布150に比べて、上下方向の寸法が削減されている。
【0082】
図10(c)は、
図10(b)のエアバッグクッション280に当て布288を取り付けた状態の図である。当て布288もまた、第2フロントチャンバ140とリアチャンバ144とに差し渡すように取り付けられる。
【0083】
図10(d)は、
図10(c)の中間チャンバ142を降ろした状態の図である。当て布288は、上下方向の寸法が削減されていて、中間チャンバ142の中央付近を前後方向にわたった状態に設けられている。
【0084】
図11は、
図10に続いてエアバッグクッション280を例示した図である。
図11(a)は、
図10(c)の中間チャンバ142の下縁部分282に第1下側接合部290および第2下側接合部292を設けた状態の図である。
【0085】
下縁部分282は、下端側を上方に折り返した状態で、第1下側接合部290および第2下側接合部292が設けられる。このうち、第1下側接合部290は前側突出部284と第2フロントチャンバ140の下縁部分180とをつなぎ、第2下側接続部292は後側突出部286とリアチャンバ144の下縁部分182とをつなぐ。
【0086】
図11(b)は、
図11(a)のG-G断面に対応したエアバッグクッション280の膨張展開時の様子である。中間チャンバ142は、当て布288によって上下方向の中央付近を車外側から支えられた状態になり、この中央部分がより車内側に膨出するように膨張展開することができる。エアバッグクッション280によっても、中間チャンバ142をより車内側に位置させて乗員176(
図4(b)参照)の早期拘束を達成しつつ、第2フロントチャンバ140およびリアチャンバ144を利用して中間チャンバ142の拘束力を向上させることが可能になる。
【0087】
図12は、
図3に例示したエアバッグクッション124の第6変形例(エアバッグクッション300)である。
【0088】
図12(a)は、
図11(a)に対応してエアバッグクッション300の状態を例示した図である。エアバッグクッション300は、
図11(a)のエアバッグクッション300と構成が似つつ、下縁部分282が折り畳まれた状態になっている。
【0089】
図12(b)は、
図12(a)のH-H断面に対応したエアバッグクッション300の膨張展開時の様子を例示した図である。中間チャンバ142の下縁部分282は、エアバッグクッションの収納形態において、折り目302で上方に折り返した後、折り目304で下方に折り返した状態になっている。寸法が延長された下縁部分282であっても、折り返し等させて収納することで、中間チャンバ142の膨張展開と共に円滑に展開することが可能になる。
【0090】
図13は、
図2に例示したエアバッグクッション124の第7変形例(エアバッグクッション320)である。
【0091】
図13(a)は、
図2(a)に対応してエアバッグクッション320を例示した図である。エアバッグクッション320は、ガスで膨張展開して乗員を拘束する膨張部として、車両前方からフロントチャンバ322、第1中間チャンバ324、第2中間チャンバ326、リアチャンバ328を有している。このうち、エアバッグクッション320では、当て布330を利用して、第1中間チャンバ324および第2中間チャンバ326の二つのチャンバを車内側に偏った位置に膨張展開させることが可能になっている。
【0092】
エアバッグクッション320では、フロントチャンバ322と第1中間チャンバ324との間のシーム部332にスリット334を設け、第2中間チャンバ326とリアチャンバ328との間のシーム部336にスリット338を設けている。そして、当て布330は、第1中間チャンバ324および第2中間チャンバ326の車外側を通って、フロントチャンバ322とリアチャンバ328との間に差し渡されていて、これらフロントチャンバ322とリアチャンバ328との間で緊張する構成になっている。
【0093】
図13(b)は、
図13(a)のI-I断面に対応したエアバッグクッション320の膨張展開時の様子である。エアバッグクッション320では、第1中間チャンバ324および第2中間チャンバ326を含む広い範囲を当て布330に反発させて、リアチャンバ328等に比べてより車内側の位置で膨張展開させることができる。
【0094】
このように、本発明に係るエアバッグクッションでは、複数の中間チャンバを設けてそれらを当て布によって車内側に膨張展開させることも可能である。これらの構成によれば、広い範囲の膨張部を乗員176(
図4(b)参照)に接近した位置に膨張展開させることで、乗員176がドアトリム148に触れる機会を減らすと共に、乗員176の早期拘束を達成して車外放出を十全に防止するなど、乗員176の傷害値を効率よく抑えることが可能になる。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0096】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、車両の側面衝突時やロールオーバ時に乗員保護を保護するカーテンエアバッグ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
100…カーテンエアバッグ装置、102…車両、104…前列座席、106…後列座席、108…Aピラー、110…Bピラー、112…Cピラー、114…ルーフサイドレール、116…サイドウィンドウ、120…サイドウィンドウ用開口、124…エアバッグクッション、126…インフレータ、128…インフレータ取付部、130…タブ、132…ストラップ、136…ダクト部、138…第1フロントチャンバ、140…第2フロントチャンバ、142…中間チャンバ、144…リアチャンバ、146…後列用チャンバ、148…ドアトリム、150…当て布、152…下縁部分、154…下側接合部、156…シーム部、158…シーム部、160、162…スリット、164…後縁部分、166…前縁部分、168…孔、170…前側接合部、172…後側接合部、176…乗員、178…頭部、180…下縁部分、182…下縁部分、200…エアバッグクッション、202…下縁部分、204…下側接合部、206…折り目、208…折り目、220…エアバッグクッション、222…当て布、240…エアバッグクッション、242…タック部、244…折り目、246…当て布、260…エアバッグクッション、262…当て布、280…エアバッグクッション、282…下縁部分、284…前側突出部、286…後側突出部、288…当て布、290…第1下側接合部、292…第2下側接続部、300…エアバッグクッション、302…折り目、304…折り目、320…エアバッグクッション、322…フロントチャンバ、324…第1中間チャンバ、326…第2中間チャンバ、328…リアチャンバ、330…当て布、332、336…シーム部、334、338…スリット