IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特開2024-119553乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム
<>
  • 特開-乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム 図1
  • 特開-乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム 図2
  • 特開-乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム 図3
  • 特開-乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム 図4
  • 特開-乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム 図5
  • 特開-乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム 図6
  • 特開-乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム 図7
  • 特開-乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム 図8
  • 特開-乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム 図9
  • 特開-乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム 図10
  • 特開-乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム 図11
  • 特開-乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119553
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   F03D 17/00 20160101AFI20240827BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F03D17/00
F03D7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026543
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏雅
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝士
(72)【発明者】
【氏名】野沢 亨介
(72)【発明者】
【氏名】薬師 宏治
(72)【発明者】
【氏名】池田 史晃
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178AA51
3H178BB05
3H178BB41
3H178BB59
3H178BB65
3H178DD52Z
3H178DD55X
3H178EE02
3H178EE17
3H178EE23
3H178EE40
(57)【要約】
【課題】乱流風況を適切に容易に判定することができる乱流風況判定装置を提供する。
【解決手段】実施の形態による乱流風況判定装置は、所定の判定時間が経過する間に複数回取得された風速値に基づいて風速変動率を算出し、風速変動率が変動率閾値以上である回数を示すカウント数を算出するカウント部と、判定時間が経過した後、カウント数が第1カウント閾値以上であるか否かを判定する乱流判定部と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の判定時間が経過する間に複数回取得された風速値に基づいて風速変動率を算出し、前記風速変動率が変動率閾値以上である回数を示すカウント数を算出するカウント部と、
前記判定時間が経過した後、前記カウント数が第1カウント閾値以上であるか否かを判定する乱流判定部と、
を備えた、乱流風況判定装置。
【請求項2】
前記乱流判定部により前記カウント数が前記第1カウント閾値以上であると判定された場合、風力発電設備に出力抑制指令を発する出力抑制指令部を更に備えた、
請求項1に記載の乱流風況判定装置。
【請求項3】
出力抑制指令部は、
出力抑制指令値を決定する指令値決定部と、
前記指令値決定部により決定された前記出力抑制指令値を、前記風力発電設備の風力発電制御装置に発信する指令値発信部と、を含む、
請求項2に記載の乱流風況判定装置。
【請求項4】
前記指令値決定部は、風速に基づく値を変数として設定された複数の出力抑制プリセット値のうちのいずれかの出力抑制プリセット値を前記出力抑制指令値と決定し、
前記変動率閾値は、前記出力抑制プリセット値毎に設定され、
前記カウント部は、前記風速変動率が、対応する前記変動率閾値以上である回数を示す前記カウント数を前記変動率閾値毎に算出し、
前記乱流判定部は、各々の前記カウント数が前記第1カウント閾値以上であるか否かを判定する、
請求項3に記載の乱流風況判定装置。
【請求項5】
前記指令値決定部は、前記第1カウント閾値以上である前記カウント数に対応する前記出力抑制プリセット値のうち前記風力発電設備の発電出力を最も低下させることができる前記出力抑制プリセット値を前記出力抑制指令値と決定する、
請求項4に記載の乱流風況判定装置。
【請求項6】
前記出力抑制指令部が前記風力発電設備に前記出力抑制指令を発した後、前記出力抑制指令を解除する解除指令部を更に備え、
前記解除指令部は、前記カウント部に処理を実行させて得られた前記カウント数が、前記第1カウント閾値以下である第2カウント閾値よりも小さいと判定された場合、前記出力抑制指令を解除する、
請求項2または3に記載の乱流風況判定装置。
【請求項7】
所定の判定時間が経過する間に複数回取得された風速値に基づいて風速変動率を算出し、前記風速変動率が変動率閾値以上である回数を示すカウント数を算出するステップと、
前記判定時間が経過した後、前記カウント数が第1カウント閾値以上であるか否かを判定するステップと、
を備えた、乱流風況判定方法。
【請求項8】
乱流風況判定方法をコンピュータに実行させる乱流風況判定プログラムであって、
前記乱流風況判定方法は、
所定の判定時間が経過する間に複数回取得された風速値に基づいて風速変動率を算出し、前記風速変動率が変動率閾値以上である回数を示すカウント数を算出するステップと、
前記判定時間が経過した後、前記カウント数が第1カウント閾値以上であるか否かを判定するステップと、
を備えた、乱流風況判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
将来の主要電源と言われている風力発電設備は、山岳地帯の高原や尾根などに設置される場合がある。この場合、事業計画に見合った発電電力量を見込める風況が期待できる地点が選択される。山岳地帯では、発電電力量を見込める風速を得やすく、とりわけ、風速が増大し得る気圧配置が続くような地点は、風力発電設備の設置に好適である。一方、周囲の地形によっては、台風などの接近がなくても風が乱れて乱流風況を形成する場合がある。
【0003】
このような乱流風況下では、風車ブレードに不均一な風荷重が頻繁に与えられる。このため、風車の過速度保護トリップまたはナセル振動保護トリップなどの一般的な保護機構が動作し、運転と停止が繰り返される。停止後には再起動されるが、再起動過程では、運転が不安定になりやすい。そして、不安定な運転を乱流風況下で繰り返すことになる。このため、風力発電設備の機器に損傷を与える恐れがある。例えば、ナセルに内蔵された変速機の寿命、または風車の回転を発電機に伝達するロータを支持する主軸受の寿命などが短くなり得る。
【0004】
このことに対処するためには、乱流風況下で風力発電設備の発電出力を抑制することが考えられる。このため、乱流風況を適切に判定することが望まれている。このことは、風力発電設備に限られることではなく、安全性を確保するという観点で、鉄道または道路などの交通機関においてもニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3962645号公報
【特許文献2】特許第6421134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施の形態は、このような点を考慮してなされたものであり、乱流風況を適切に容易に判定することができる乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態による乱流風況判定装置は、所定の判定時間が経過する間に複数回取得された風速値に基づいて風速変動率を算出し、風速変動率が変動率閾値以上である回数を示すカウント数を算出するカウント部と、判定時間が経過した後、カウント数が第1カウント閾値以上であるか否かを判定する乱流判定部と、を備えている。
【0008】
実施の形態による乱流風況判定方法は、所定の判定時間が経過する間に複数回取得された風速値に基づいて風速変動率を算出し、風速変動率が変動率閾値以上である回数を示すカウント数を算出するステップと、判定時間が経過した後、カウント数が第1カウント閾値以上であるか否かを判定するステップと、を備えている。
【0009】
実施の形態による乱流風況判定プログラムは、乱流風況判定方法をコンピュータに実行させるプログラムである。乱流風況判定方法は、所定の判定時間が経過する間に複数回取得された風速値に基づいて風速変動率を算出し、風速変動率が変動率閾値以上である回数を示すカウント数を算出するステップと、判定時間が経過した後、カウント数が第1カウント閾値以上であるか否かを判定するステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
実施の形態によれば、乱流風況を適切に容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施の形態による風力発電設備を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す風力発電設備を制御するウィンドファーム制御システムを示す図である。
図3図3は、本実施の形態による風力発電設備の乱流風況判定装置を示すブロック図である。
図4図4は、風速変動を示すイメージ図である。
図5図5は、風速推定値および風速変動率に応じて設定された第1変動率閾値のマトリクスを示す図である。
図6図6は、風速推定値および風速変動率に応じて算出されるカウント数のマトリクスを示す図である。
図7図7は、風速推定値および風速変動率に応じて設定された出力抑制プリセット値のマトリクスを示す図である。
図8図8は、風速推定値を説明するための図である。
図9図9は、風速推定値および風速変動率に応じて設定された第2変動率閾値のマトリクスを示す図である。
図10図10は、本実施の形態による風力発電設備の乱流風況判定方法を示すフローチャートである。
図11図11は、図10のステップS10をより詳細に示すフローチャートである。
図12図12は、図10のステップS30をより詳細に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本実施の形態による乱流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラムについて説明する。
【0013】
本実施の形態においては、乱が流風況判定装置、乱流風況判定方法および乱流風況判定プログラムが風力発電設備に適用される例について図1図9を用いて説明する。ここではまず、風力発電設備について図1を用いて説明する。風力発電設備は、山岳地帯などの地上に設置されていてもよいが、このことに限られることはなく、洋上に設置されていてもよい。なお、乱流という用語は、流体力学などで用いられる乱流という用語ではなく、単に風が比較的乱れていることを意味する用語として用いている。
【0014】
図1に示すように、風力発電設備1は、鉛直方向に細長に延びるタワー2と、タワー2に支持されたナセル3と、ナセル3に回転可能に設けられた風車4と、を含んでいる。ナセル3内に、風車4の回転によって発電を行う発電機5が内蔵されている。ナセル3は、タワー2の長手軸に対して垂直な面内で回転可能に構成されている。
【0015】
風車4は、ロータ6に連結されたハブ4aと、ハブ4aに連結された3つのブレード4bと、を含んでいる。ハブ4aと各ブレード4bは、ロータ6とともに一体に回転するように構成されている。なお、ブレード4bの個数は3つに限られることはなく、任意である。
【0016】
ロータ6は、変速機7を介して上述した発電機5に連結されていてもよい。この場合、変速機7は、ロータ6の回転速度を増速して発電機5に回転を伝達する。発電機5は、変速機7から伝達された回転エネルギを用いて発電を行う。ロータ6は、軸受8を介してナセル3回転可能に支持されている。ロータ6の回転は、変速機7を介さずに、発電機5に直接的に伝達されてもよい。
【0017】
図1に示すように、ナセル3の上部に、風況検出器9が設けられている。風況検出器9は、風速風向計とも称される。風況検出器9は、風速値と風向を含む風況を計測する。風況検出器9が検出する風向は、風況検出器9が位置する水平面において風速値が最大となる方向を示す。その方向に沿う風速値と風向が風況検出器9により検出される。検出された風速値および風向を含む風況は、後述する風力発電制御装置10に検出信号として送信される。
【0018】
ナセル3内に、風力発電制御装置10(図2参照)が内蔵されていてもよい。あるいは、風力発電制御装置10は、ナセル3の外部に設置されていてもよい。風力発電制御装置10は、風力発電設備1の運転を制御する。風力発電制御装置10は、後述する風力発電設備1の乱流風況判定装置30とは別体の装置として構成されていてもよい。
【0019】
このように構成された風力発電設備1は、ウィンドファームに設置されている。図2に示すように、ウィンドファームには、複数の上述した風力発電設備1が設置されている。1つの風力発電設備1が、1つの風力発電制御装置10で制御される。各風力発電設備1の風力発電制御装置10は、ウィンドファーム内のネットワーク21を介して、ウィンドファーム制御装置20に接続されている。ウィンドファーム制御装置20は、ウィンドファーム内の各風力発電制御装置10の上位制御装置であり、各風力発電制御装置10を制御するように構成されている。
【0020】
ウィンドファーム制御装置20には、エンジニアリング端末装置22が接続されていてもよい。エンジニアリング端末装置22は、後述する閾値等の各種パラメータ等を調整可能になっている。パラメータは、オペレータが、エンジニアリング端末装置22を利用して調整可能になっていてもよい。パラメータの調整は、統計的演算を利用して自動的に行われてもよい。この場合、図2に示すように、ウィンドファーム制御装置20に統計演算装置23が接続されて、統計演算装置23が、パラメータの自動調整を行ってもよい。エンジニアリング端末装置22は、制御に必要な情報を入力可能になっていてもよい。エンジニアリング端末装置22は、後述する乱流風況判定装置30の判定結果および出力抑制指令値等が表示可能になっていてもよい。
【0021】
次に、本実施の形態による風力発電設備の乱流風況判定装置30について図3を用いて説明する。
【0022】
乱流風況判定装置30は、風力発電設備1の周囲に乱流風況が発生しているか否かを判定する装置である。乱流風況判定装置30は、上述したウィンドファーム制御装置20とは別体に構成されていてもよく、またはウィンドファーム制御装置20に組み込まれていてもよい。この場合、乱流風況判定装置30は、各々の風力発電設備1の周囲に乱流風況が発生しているか否かを判定し、乱流風況が発生したと判定された風力発電設備1に対して個別に、出力抑制指令を発するようにしてもよい。あるいは、乱流風況判定装置30は、上述した風力発電制御装置10とは別体に構成されていてもよく、または風力発電制御装置10に組み込まれていてもよい。この場合、乱流風況判定装置30は、対応する風力発電設備1の周囲に風況が発生した場合に当該風力発電設備1に、出力抑制指令を発するようにしてもよい。
【0023】
図3に示すように、乱流風況判定装置30は、通信部31と、記憶部32と、演算部33と、を含んでいる。
【0024】
通信部31は、上述した風力発電制御装置10とネットワーク21を介して通信可能に構成されている。通信部31は、無線で風力発電制御装置10と通信可能であってもよく、有線で風力発電制御装置10と通信可能であってもよい。
【0025】
記憶部32は、任意の情報を記憶するように構成されていてもよい。記憶部32には、風況検出器9により検出された風速値が、風力発電制御装置10および通信部31を介して、検出信号として送信される。送信された風速値は、検出時間と関連付けられて記憶部32に記憶されて、風速値データが構築される。記憶部32には、風力発電制御装置10を介することなく、風況検出器9から風速値が送信されるようにしてもよい。記憶部32には、後述する乱流風況判定プログラムが記憶されていてもよい。記憶部32には、風況検出器9により検出された風向が記憶されてもよい。
【0026】
図3に示すように、演算部33は、乱流風況が発生しているか否かを判定するための演算処理を実行するように構成されている。演算部33は、カウント部40と、乱流判定部50と、出力抑制指令部60と、解除指令部70と、を含んでいてもよい。各部の機能は、例えば、上述した記憶部32に格納されたコンピュータプログラムを実行することで実現されてもよい。このプログラムは乱流風況判定プログラムの一例であり、記録媒体から乱流風況判定装置30にインストールされていてもよい。
【0027】
カウント部40は、所定の乱流判定時間が経過する間に複数回取得された風速値に基づいて風速変動率を算出するとともに、算出された風速変動率が第1変動率閾値以上である回数を算出する。風速変動率が第1変動率閾値以上である回数をカウント数と称して以下説明する。
【0028】
ここで、図4を用いて風速変動について説明する。風速変動は、複数の周期の変動が重なった変動と考えることができる。基本的には、空気の粘性および慣性力等の影響により、大きな変動の周期は長くなる。一方、短い周期の変動は振幅が小さくなり、風車4のブレード4bに与える影響も大きくならないと考えられる。しかしながら、乱流風況が発生している場合には、この短い周期の変動の振幅が大きくなり得る。一般的な判定方法として、平均風速を算出して乱流の発生の有無を判定するという方法が知られている。しかしながら、この方法を用いる場合、算出された平均風速の妥当性に問題があり、乱流の発生の有無を適切に判定することが困難になり得る。
【0029】
そこで本実施の形態においては、乱流判定時間が経過する間に風速変動が比較的激しくなった回数を算出して、算出されたカウント数を利用して乱流の発生の有無を判定する。乱流判定時間は、特に限られることはなく任意に設定されてもよいが、実際の風況に応じて乱流判定精度を向上できるように任意に調整されてもよい。風速変動は、乱流判定時間中の任意の時間間隔における風速変動であってもよい。この時間間隔は、特に限られることはなく任意に設定されてもよいが、乱流風況判定装置30の演算部33の演算周期および通信周期より長くなるように設定されてもよい。また、時間間隔は、実際の風況に応じて乱流判定精度を向上できるように任意に調整されてもよい。時間間隔は、乱流判定時間を複数に区切った時間枠が連続するように設定されていてもよい。この場合、乱流判定時間は、時間間隔の整数倍となり、連続する時間枠は互いにオーバーラップしない。しかしながら、このことに限られることはなく、時間間隔は、オーバーラップするように設定された時間枠であってもよい。
【0030】
図3を用いて、カウント部40についてより具体的に説明する。カウント部40は、初期化部41と、風速取得部42と、変動率算出部43と、変動率判定部44と、加算部45と、経過時間判定部46と、を含んでいてもよい。
【0031】
初期化部41は、カウント数を初期化する。より具体的には、カウント数F(v)にゼロ(0)が代入される。
【0032】
風速取得部42は、風速値を取得する。風速値は、上述した記憶部32に記憶された風速値データから取得されてもよい。あるいは、風速取得部42は、風力発電制御装置10および通信部31を介して風況検出器9から、現在の風速値を取得してもよい。風速取得部42は、乱流判定時間が経過する間に、上述した時間間隔で風速値を取得してもよい。
【0033】
変動率算出部43は、風速取得部42により取得された風速値に基づいて風速変動率を算出する。より具体的には、変動率算出部43は、乱流判定時間が経過する間に、上述した時間間隔で風速変動率を算出してもよい。
【0034】
上述した時間間隔の開始時刻tにおける風速値をv、終了時刻tにおける風速値をvとすると、風速変動率Δv/vは、以下のように表される。
【数1】
【0035】
変動率判定部44は、変動率算出部43により算出された風速変動率が、第1変動率閾値以上であるか否かを判定する。第1変動率閾値は、乱流判定精度を向上できるように任意に調整されてもよい。
【0036】
加算部45は、変動率判定部44により風速変動率が第1変動率閾値以上であると判定された場合、風速変動率が第1変動率閾値以上である回数を示すカウント数に1を加算する。
【0037】
より具体的には、風速変動率が第1変動率閾値DS1以上である場合、以下に示すように、カウント数F(v)に1が加算される。
【数2】
【0038】
一方、算出された風速変動率が、第1変動率閾値DS1よりも小さい場合、以下に示すようにカウント数F(v)には1が加算されずに、現状の値が維持される。
【数3】
【0039】
経過時間判定部46は、カウント部40により処理が開始されてから乱流判定時間が経過したか否かを判定する。乱流判定時間が経過していないと判定された場合、風速取得部42、変動率算出部43、変動率判定部44および加算部45による処理が再度実行される。そして、乱流判定時間が経過するまで、風速取得部42、変動率算出部43、変動率判定部44および加算部45による処理が繰り返される。乱流判定時間が経過したと判定された場合、カウント部40による処理が終了する。
【0040】
乱流判定部50は、乱流判定時間が経過した後、風速変動率が第1変動率閾値以上である回数を示すカウント数が、第1カウント閾値以上であるか否かを判定する。カウント数が第1カウント閾値以上である場合、乱流風況が発生していると判定される。
【0041】
より具体的には、乱流判定時間が経過した時点での最終的なカウント数F(v)が、第1カウント閾値C以上であるか否かが判定される。F(v)は、乱流判定時間が経過するまでの間に、風速変動率が第1変動率閾値以上である回数の積算値になっている。
【数4】
【0042】
ここで、カウント部40および乱流判定部50の処理についてより詳細に説明する。
【0043】
カウント部40は、後述する図7に示す出力抑制プリセット値毎に、カウント数F(v)を算出してもよい。すなわち、出力抑制プリセット値は、後述する風速推定値および風速変動率を変数としてm×n個設定されており、出力抑制プリセット値毎に、図5に示すように、m×n個の第1変動率閾値DS1が設定さている。カウント部40は、風速変動率が、対応する第1変動率閾値以上である回数を示すカウント数を第1変動率閾値毎に算出する。各第1変動率閾値DS1に対応させて、図6に示すように、m×n個のカウント数F(v)が算出されてもよい。この場合、上述した式(2)および式(3)において、カウント数F(v)は、式(1)により算出された風速変動率を用いて、第1変動率閾値DS1毎に算出される。第1変動率閾値に対応するカウント数は、風速推定値および風速変動率が等しくなっている。第1変動率閾値に対応する出力抑制プリセット値も同様であり、カウント数に対応する出力抑制プリセット値も同様である。
【0044】
より具体的には、変動率判定部44による風速変動率が第1変動率閾値以上であるか否かの判定は、第1変動率閾値DS1毎に行われる。その判定結果に基づいて、加算部45により、上述した式(2)に示すように、カウント数F(v)に1が加算されたり、上述した式(3)に示すように、カウント数F(v)に1が加算されなかったりする。経過時間判定部46により乱流判定時間が経過するまで、上述した処理が繰り返される。
【0045】
乱流判定時間経過後、乱流判定部50は、各々のカウント数F(v)が、第1カウント閾値以上であるか否かを判定する。各カウント数の判定に用いる第1カウント閾値は、一定の値であってもよい。図6に示す全てのカウント数が第1カウント閾値以上であると判定される可能性があるが、図6に示す全てのカウント数が第1カウント閾値よりも小さいと判定される可能性がある。あるいは、図6に示す全てのカウント数のうちの一部のカウント数が、第1カウント閾値以上であり、残りのカウント数が、第1カウント閾値よりも小さいと判定される可能性もある。
【0046】
出力抑制指令部60は、乱流判定部50によりカウント数が第1カウント閾値以上であると判定された場合、風力発電設備1の出力抑制指令を発する。出力抑制指令部60は、上述した各カウント数F(v)のうちの少なくとも1つのカウント数が第1カウント閾値以上であると判定された場合に出力抑制指令を発してもよい。出力抑制指令部60は、指令値決定部61と、指令値発信部62と、を含んでいてもよい。
【0047】
指令値決定部61は、風力発電設備1の風力発電制御装置10に発信するための出力抑制指令値を決定する。指令値決定部61は、風速に基づく値を変数として設定された複数の出力抑制プリセット値のうちのいずれかの出力抑制プリセット値を出力抑制指令値として決定してもよい。風速に基づく値は、後述する風速推定値および風速変動率の少なくとも1つを含んでいてもよい。本実施の形態においては、出力抑制プリセット値は、風速推定値および風速変動率の両方を変数として設定されている。出力抑制指令値は、通常運転時の発電出力値を低下させる割合を示す数値であってもよい。
【0048】
図7には、出力抑制指令値の候補となる複数の出力抑制プリセット値を成分とするマトリクスが示されている。横軸は風速推定値を示し、縦軸は風速変動率を示している。風速推定値および風速変動率を変数として複数の出力抑制プリセット値が設定されている。指令値決定部61は、複数の出力抑制プリセット値のうちのいずれかの出力抑制プリセット値を出力抑制指令値と決定する。このことは、出力抑制プリセット値をPSETとすると、出力抑制指令値PDMDは、以下の式(5)のように表される。
【数5】
ここで、
【数6】
は、風速推定値を示す。
【0049】
図7に示す出力抑制プリセット値は、風速推定値が大きくなるにしたがって大きい値となるように設定されていてもよい。風速推定値が比較的大きい出力抑制プリセット値を出力抑制指令値と決定した場合、風力発電設備1の発電出力を、比較的大きく、低減することができる。出力抑制プリセット値は、風速変動率が大きくなるにしたがって大きい値となるように設定されていてもよい。風速変動率が比較的大きい出力抑制プリセット値を出力抑制指令値と決定した場合、風力発電設備1の発電出力を、比較的大きく、低減することができる。
【0050】
風速推定値について説明する。風速推定値は、統計モデルにより算出されてもよい。統計モデルは、リアルタイム制御に適用するためのモデルであってもよく、例えば、自己回帰モデルであってもよい。
【0051】
風速推定値の代わりに、風速の移動平均値を用いることも考えられる。しかしながら、図8に示すように、風速値が長い周期で上昇するような風況では、移動平均値を規定する時間間隔の初期の風速値は小さい。例えば、図8に示すΔtの時間間隔では、時刻tにおける風速値は、時刻tにおける風速値よりも小さくなる。このため、移動平均値は小さくなり、その後も、図8に破線で示す移動平均値カーブのように、小さい値で推移する。これに対して風速推定値は、風速値が上昇していることを加味した値となるため、精度良く風速値を推定することができる。このため、図8に1点鎖線で示す風速推定値カーブのように、移動平均値カーブよりも大きい値で推移する。時間間隔を短くすれば、移動平均値と風速推定値との差を小さくできる可能性はあるが、時刻によっては、その差が大きくなる可能性がある。例えば、図8の時刻tにおける移動平均値vaveと風速推定値vstaとの差は比較的大きい。このため、移動平均値ではなく、風速推定値を用いることにより、出力抑制指令値を精度良く決定することができる。
【0052】
指令値決定部61は、第1カウント閾値以上であると判定されたカウント数に対応する複数の出力抑制プリセット値のうち、風力発電設備1の発電出力を最も低下させることができる出力抑制プリセット値を出力抑制指令値として決定してもよい。一例として、図6に示す全てのカウント数のうちの一部のカウント数が第1カウント閾値以上であり、残りのカウント数が、第1カウント閾値よりも小さい場合について説明する。この場合、第1カウント閾値以上であるカウント数に対応する出力抑制プリセット値のうち、発電出力を最も低下させることができる出力抑制プリセット値が、出力抑制指令値として決定される。このことにより、乱流判定時間において最も強い乱流風況に対応する出力抑制指令値を決定することができる。このため、風力発電設備1の発電出力を、最も強い乱流風況に応じて低下させることができ、風車4のブレード4bに掛かる風荷重を効果的に低減することができる。第1カウント閾値以上であるカウント数が1つのみである場合、このカウント数に対応する出力抑制プリセット値が、出力抑制指令値として決定されてもよい。
【0053】
指令値発信部62は、指令値決定部61により決定された出力抑制指令値を、風力発電設備1の風力発電制御装置10に発信する。この出力抑制指令値に基づいて、風力発電制御装置10は、風力発電設備1の発電出力を抑制する。
【0054】
解除指令部70は、出力抑制指令部60が風力発電設備1の風力発電制御装置10に出力抑制指令を発した後、カウント部40に処理を実行させて得られたカウント数が、第2カウント閾値よりも小さいと判定された場合、出力抑制指令を解除する。解除指令部70は、解除判定部71と、解除指令信号発信部72と、を含んでいてもよい。
【0055】
解除指令部70は、カウント部40に上述した処理を実行させる。より具体的には、上述した初期化部41、風速取得部42、変動率算出部43、変動率判定部44、加算部45および経過時間判定部46に処理を実行させる。この際、変動率判定部44による風速変動率の判定には、第1変動率閾値の代わりに第2変動率閾値が用いられてもよい。第2変動率閾値は、第1変動率閾値よりも小さくてもよいが、等しくてもよい。第2変動率閾値は、乱流判定精度を向上できるように任意に調整されてもよい。
【0056】
加算部45では、風速変動率が第2変動率閾値DS2以上である場合、以下に示すように、カウント数F(v)に1が加算される。
【数7】
【0057】
一方、算出された風速変動率が、第2変動率閾値DS2よりも小さい場合、以下に示すようにカウント数F(v)には1が加算されずに、現状の値が維持される。
【数8】
【0058】
経過時間判定部46は、カウント部40により処理が開始されてから所定の解除判定時間が経過したか否かを判定する。解除判定時間が経過していないと判定された場合、風速取得部42、変動率算出部43、変動率判定部44および加算部45による処理が再度実行される。そして、解除判定時間が経過するまで、風速取得部42、変動率算出部43、変動率判定部44および加算部45による処理が繰り返される。解除判定時間は、乱流判定時間と等しくてもよいが、異なっていてもよい。解除判定時間が経過したと判定された場合、カウント部40による処理が終了する。
【0059】
解除判定部71は、風速変動率が第2変動率閾値以上である回数を示すカウント数が、第2カウント閾値よりも小さいか否かを判定する。カウント数が第2カウント閾値よりも小さい場合、乱流風況が発生していないと判定される。第2カウント閾値は、第1カウント閾値よりも小さくてもよく、等しくてもよい。
【0060】
より具体的には、解除判定時間が経過した時点でのカウント数F(v)が、第2カウント閾値Cよりも小さいか否かが判定される。カウント数F(v)は、解除判定時間が経過するまでの間に、風速変動率が第2変動率閾値以上である回数の積算値になっている。
【数9】
【0061】
解除指令信号発信部72は、解除判定部71によりカウント数が第2カウント閾値よりも小さいと判定された場合、出力抑制指令部60による出力抑制指令を解除するための解除指令信号を発信する。解除指令信号は、風力発電制御装置10に発信される。
【0062】
解除指令部70がカウント部40にカウント数を算出させる場合にも、上述した出力抑制プリセット値毎にカウント数F(v)が算出されてもよい。この場合、全てのカウント数F(v)に対して、解除指令部70による処理が実行されてもよい。
【0063】
第2変動率閾値DS2は、図9に示すように、上述した出力抑制プリセット値毎に設定されている。各第2変動率閾値は、対応する第1変動率閾値よりも小さい値であってもよい。カウント部40は、風速変動率が対応する第2変動率閾値よりも小さい回数を示すカウント数を出力抑制プリセット値毎に算出する。各第2変動率閾値DS2に対応させて、m×n個のカウント数F(v)が算出されてもよい。この場合、上述した式(6)および式(7)において、カウント数F(v)は、風速変動率を用いて第2変動率閾値DS2毎に算出される。
【0064】
より具体的には、変動率判定部44による風速変動率が第2変動率閾値よりも小さいか否かの判定は、第2変動率閾値DS2毎に行われる。その判定結果に基づいて、加算部45により、上述した式(6)に示すように、カウント数F(v)に1が加算されたり、上述した式(7)に示すように、カウント数F(v)に1が加算されなかったりする。経過時間判定部46により解除判定時間が経過するまで、上述した処理が繰り返される。
【0065】
解除判定時間経過後、解除判定部71により、各々のカウント数F(v)が、第2カウント閾値よりも小さいか否かを判定する。各カウント数の判定に用いる第2カウント閾値は、一定の値であってもよい。この場合、解除判定処理を行った全てのカウント数が第2カウント閾値よりも小さいと判定される可能性があるが、全てのカウント数が第2カウント閾値以上であると判定される可能性がある。あるいは、解除判定処理を行った全てのカウント数のうちの一部のカウント数が、第2カウント閾値よりも小さく、残りのカウント数が、第2カウント閾値よりも小さいと判定される可能性もある。
【0066】
全てのカウント数が第2カウント閾値よりも小さいと判定された場合の解除指令信号発信部72の処理について説明する。この場合、解除指令信号発信部72は、指令値発信部62が発信した出力抑制指令値を解除するための解除指令信号を発信する。このことにより、出力抑制指令が解除される。
【0067】
全てのカウント数が第2カウント閾値以上であると判定された場合の解除指令信号発信部72の処理について説明する。この場合、解除指令信号発信部72は、解除指令信号を発信しない。このことにより、出力抑制指令が継続される。
【0068】
全てのカウント数の一部のカウント数が第2カウント閾値以上であると判定された場合の解除指令信号発信部72の処理について説明する。この場合、解除指令信号発信部72は、指令値発信部62が発信した出力抑制指令値PSETを解除するための解除指令信号を発信する。この際、解除指令信号発信部72は、第2カウント閾値以上であると判定されたカウント数F(v)に対応する出力抑制プリセット値PSETを、出力抑制指令値として風力発電制御装置10に発信する。複数のカウント数F(v)が第2カウント閾値以上であると判定された場合、対応する出力抑制プリセット値PSETのうち風力発電設備1の発電出力を最も低下させることができる出力抑制プリセット値を出力抑制指令値として風力発電制御装置10に発信する。このことにより、最も強い乱流風況に応じた出力抑制指令が解除判定時間が経過するときに解除された場合であっても、依然として残っている比較的弱い乱流風況に応じた出力抑制指令を行うことができる。このため、出力抑制が全面的に解除されることを防止でき、出力抑制をきめ細かく制御することができる。
【0069】
次に、本実施の形態による乱流風況判定方法について図10図12を用いて説明する。
【0070】
図10に示すように、まず、ステップS10として、乱流判定時間が経過する間に複数回取得された風速値に基づいて風速変動率を算出するとともに、算出された風速変動率が第1変動率閾値以上である回数(カウント数F(V))を算出する。ステップS10は、乱流風況判定装置30のカウント部40が実行する処理ステップである。ステップS10は、図11に示すように、以下のステップS11~ステップS17を含んでいてもよい。
【0071】
まず、ステップS11として、初期化部41によって各カウント数F(v)が初期化される。より具体的には、カウント数F(v)にゼロ(0)が代入される。
【0072】
ステップS11の後、ステップS12として、風速取得部42により風速値が取得される。取得された風速値は、記憶部32に記憶されてもよい。
【0073】
ステップS12の後、ステップS13として、変動率算出部43により風速変動率Δv/vが算出される。
【0074】
ステップS13の後、ステップS14として、変動率判定部44により、風速変動率Δv/vが第1変動率閾値DS1以上であるか否かが第1変動率閾値毎に判定される。風速変動率が第1変動率閾値以上である場合、ステップS15において、対応するカウント数F(v)に1が加算され、ステップS17に移行する。一方、ステップS14において、風速変動率が第1変動率閾値よりも小さい場合、ステップS16において、対応するカウント数F(v)に1は加算されず、ステップS17に移行する。
【0075】
ステップS17として、経過時間判定部46により、カウント部40の処理が開始されてから乱流判定時間が経過したか否かが判定される。乱流判定時間が経過していないと判定された場合、上述したステップS12に戻り、上述したステップS12~ステップS16の処理が実行される。
【0076】
ステップS17において、経過時間判定部46により乱流判定時間が経過していると判定された場合、ステップS18に移行する。
【0077】
ステップS18として、乱流判定部50により、各カウント数F(v)が、第1カウント閾値C以上であるか否かが判定される。全てのカウント数が第1カウント閾値よりも小さいと判定された場合、上述したステップS11に戻り、カウント部40の処理、より具体的にはステップS12~ステップS17の処理が実行される。
【0078】
図10に示すように、ステップS18において少なくとも1つのカウント数が第1カウント閾値以上であると判定された場合、ステップS20に移行する。
【0079】
ステップS20として、出力抑制指令部60により、風力発電設備1の出力抑制指令が発せられる。ステップS20は、乱流風況判定装置30の出力抑制指令部60が実行する処理ステップである。ステップS20は、図10に示すように、以下のステップS21およびステップS22を含んでいてもよい。
【0080】
まず、ステップS21として、指令値決定部61により、風力発電設備1の風力発電制御装置10に発信するための出力抑制指令値が決定される。ステップS18において第1カウント閾値以上であると判定されたカウント数に対応する出力抑制プリセット値から出力抑制指令値が決定されてもよい。複数のカウント数が第1カウント閾値以上であると判定された場合、対応する複数の出力抑制プリセット値のうち発電出力を最も低下させることができる出力抑制プリセット値が、出力抑制指令値として決定されてもよい。
【0081】
ステップS21の後、ステップS22として、指令値発信部62により、出力抑制指令値が風力発電設備1の風力発電制御装置10に発信される。この場合、風力発電制御装置10は、受信した出力抑制指令値で、風力発電設備1の通常運転時の発電出力値を低下させる。このことにより、風力発電設備1は出力抑制指令を受けて、発電出力が低下する。
【0082】
ステップS22の後、ステップS30として、カウント部40に処理を実行させて得られたカウント数が、第2カウント閾値よりも小さいと判定された場合、出力抑制指令が解除される。すなわち、ステップ30として、解除判定時間が経過する間に複数回取得された風速値に基づいて風速変動率を算出するとともに、算出された風速変動率が第2変動率閾値以上である回数(カウント数F(v))を算出する。ステップS30は、乱流風況判定装置30の解除指令部70が上述したカウント部40に処理を実行させる処理ステップである。ステップS30は、図12に示すように、以下のステップS31~ステップS37を含んでいてもよい。
【0083】
まず、ステップS31として、上述したステップS11と同様にして、初期化部41によって各カウント数が初期化される。
【0084】
ステップS31の後、ステップS32として、上述したステップS12と同様にして、風速取得部42により風速値が取得される。
【0085】
ステップS32の後、ステップS33として、上述したステップS13と同様にして、変動率算出部43により風速変動率Δv/vが算出される。
【0086】
ステップS33の後、ステップS34として、上述したステップS14と同様にして、変動率判定部44により、風速変動率Δv/vが第2変動率閾値DS2以上であるか否かが第2変動率閾値毎に判定される。風速変動率が第2変動率閾値以上である場合、ステップS35において、対応するカウント数F(v)に1が加算され、ステップS37に移行する。一方、ステップS34において、風速変動率が第2変動率閾値よりも小さい場合、ステップS36において、対応するカウント数F(v)に1は加算されず、ステップS37に移行する。
【0087】
ステップS37として、上述したステップS17と同様にして、経過時間判定部46により、カウント部40の処理が開始されてから解除判定時間が経過したか否かが判定される。解除判定時間が経過していないと判定された場合、上述したステップS32に戻り、上述したステップS32~ステップS36の処理が実行される。
【0088】
ステップS37において、経過時間判定部46により乱流判定時間が経過していると判定された場合、ステップS38に移行する。
【0089】
ステップS38として、解除判定部71により、上述したカウント数F(v)が、第2カウント閾値(C)よりも小さいか否かが判定される。全てのカウント数が第2ウント閾値以上であると判定された場合、上述したステップS31に戻り、カウント部40の処理、より具体的にはステップS32~ステップS37の処理が実行される。
【0090】
図12に示すように、ステップS38において少なくとも1つのカウント数が第2カウント閾値よりも小さいと判定された場合、ステップS39に移行する。
【0091】
ステップS39として、解除指令信号発信部72により、風力発電設備1の出力抑制指令を解除するための解除指令信号が発信される。
【0092】
全てのカウント数が第2カウント閾値よりも小さい場合、出力抑制指令が解除される。解除指令信号は風力発電制御装置10に送信される。この場合、風力発電制御装置10は、受信した解除指令信号で、風力発電設備1の発電出力値を通常時の発電出力値に戻す。このことにより、風力発電設備1は、通常時の発電を行うことができる。
【0093】
全てのカウント数の一部のカウント数が第2カウント閾値よりも小さく、残りのカウント数が第2カウント閾値以上であると判定された場合について説明する。この場合、指令値発信部62が発信した出力抑制指令値を解除するための解除指令信号が発信される。そして、上述したように、第2カウント閾値以上であるカウント数に対応する出力抑制プリセット値が、出力抑制指令値として風力発電制御装置10に発信される。複数のカウント数が第2カウント閾値以上であると判定された場合、対応する複数の出力抑制プリセット値のうち発電出力を最も低下させることができる出力抑制プリセット値が、出力抑制指令値として発信されてもよい。
【0094】
ステップS39の後には、上述したステップS10に戻り、上述した各ステップの処理が実行されて、乱流風況判定が継続されてもよい。このような乱流風況判定方法は、風力発電設備1の運転が継続している間、実行され続けてもよい。運転を停止する際に、乱流風況判定方法の実行を停止してもよい。
【0095】
このように本実施の形態によれば、乱流判定時間が経過する間に複数回取得された風速値に基づいて風速変動率が算出され、風速変動率が変動率閾値以上である回数が算出される。乱流判定時間が経過した後、風速変動率が変動率閾値以上である回数を示すカウント数が、第1カウント閾値以上であるか否かが判定される。このことにより、乱流判定時間中に、比較的激しい風速変動が、ある程度の頻度で発生したか否かに基づいて、乱流の発生の有無を適切に判定することができる。また、乱流強度を分析したり、複雑な演算を行ったりすることを不要にでき、乱流の判定に用いる風速値の演算を簡略化することができる。この結果、乱流風況を適切に容易に判定することができる。
【0096】
また、本実施の形態によれば、乱流判定部50によりカウント数が第1カウント閾値以上であると判定された場合、風力発電設備1に出力抑制指令が発せられる。このことにより、乱流風況が発生した場合、風力発電設備1の発電出力を低下させることができる。このため、乱流風況によって風車4のブレード4bにかかる荷重を低減することができ、風力発電設備1の損傷が発生することを抑制することができる。
【0097】
また、本実施の形態によれば、風力発電設備1に出力抑制指令が発せられた後、風速変動率が変動率閾値以上である回数を示すカウント数が、第2カウント閾値よりも小さいと判定された場合、風力発電設備1への出力抑制指令が解除される。このことにより、乱流風況の発生が途切れた場合には、風力発電設備1の発電出力を通常時の発電出力に戻すことができる。このため、発電機会が逸失されることを抑制することができる。
【0098】
なお、上述した本実施の形態においては、少なくとも1つのカウント数が第1カウント閾値以上であると判定された場合、全てのカウント数に対して解除指令部70による処理が行われる例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、第1カウント閾値以上であると判定されたカウント数については、解除指令部70による処理が実行されてもよい。第1カウント閾値よりも小さいと判定されたカウント数については、解除指令部70ではなく、カウント部40および乱流判定部50による処理が実行されてもよい。
【0099】
また、上述した本実施の形態においては、加算部45が、風速変動率が第1変動率閾値DS1以上である場合、カウント数F(v)に1を加算し、カウント数が積算される例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、カウント数は、乱流判定時間が経過した後に、第1変動率閾値以上であった回数を合算することにより算出されてもよい。
【0100】
また、上述した本実施の形態においては、乱流風況判定装置30、乱流風況判定方法および乱流風況プログラムが、風力発電設備1に適用される例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、鉄道または道路などの交通機関で、乱流風況判定装置30、乱流風況判定方法および乱流風況プログラムが用いられてもよい。この場合、乱流判定部50によりカウント数が第1カウント閾値以上であると判定された場合、乱流風況が発生している旨を、管理システム上に表示したり、アラームを発したりしてもよい。また、この場合、ナセル3に設けられた風況検出器9の代わりとして、風速を検出することができる任意の機器が用いられてもよい。
【0101】
また、上述した本実施の形態においては、ステップS30として、風速変動率が第2変動率閾値以上である回数(カウント数F(v))を算出する例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、風速変動率が第2変動率閾値以上であるカウント数を算出することに加えて、風速変動率が第3変動率閾値以上であるカウント数を算出してもよい。第3変動率閾値は、上述した出力抑制プリセット値毎に設定されていてもよい。各第3変動率閾値は、対応する第2変動率閾値よりも小さい値であってもよい。
【0102】
例えば、第2変動率閾値を用いて算出されたカウント数の全てが、第2カウント閾値よりも小さい場合、出力抑制指令が解除される。この場合、第2カウント閾値以上であるカウント数は存在しないため、風力発電設備1の発電出力値は通常時の発電出力値に戻る。そこで、第3変動率閾値を用いて算出されたカウント数が、第3カウント閾値よりも小さいか否かが判断されてもよい。第3カウント閾値は、第2カウント閾値よりも小さくてもよく、等しくてもよい。第3変動率閾値を用いて算出されたカウント数の一部のカウント数が第3カウント閾値以上であると判定された場合、第3カウント閾値以上であるカウント数に対応する出力抑制プリセット値が、出力抑制指令値として風力発電制御装置10に発信されてもよい。複数のカウント数が第3カウント閾値以上であると判定された場合、対応する複数の出力抑制プリセット値のうち発電出力を最も低下させることができる出力抑制プリセット値が、出力抑制指令値として発信されてもよい。このことにより、依然として残っている比較的弱い乱流風況に応じた出力抑制指令を行うことができる。このため、出力抑制が全面的に解除されることを防止でき、出力抑制をきめ細かく制御することができる。
【0103】
更に、第2変動率閾値を用いたカウント数の算出および第3変動率閾値を用いたカウント数の算出に加えて、第4変動率閾値を用いてカウント数を算出し、上述と同様の処理を行ってもよい。この場合、出力抑制をより一層きめ細かく制御することができる。第4変動率閾値は、上述した出力抑制プリセット値毎に設定されていてもよい。各第4変動率閾値は、対応する第3変動率閾値よりも小さい値であってもよい。
【0104】
以上述べた実施の形態によれば、乱流風況を適切に容易に判定することができる。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0106】
1:風力発電設備、10:風力発電制御装置、30:乱流風況判定装置、40:カウント部、50:乱流判定部、60:出力抑制指令部、61:指令値決定部、62:指令値発信部、70:解除指令部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12