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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119556
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20240827BHJP
   G05D 1/46 20240101ALI20240827BHJP
   G05D 1/49 20240101ALI20240827BHJP
   B64U 10/10 20230101ALI20240827BHJP
   B64U 101/29 20230101ALN20240827BHJP
【FI】
A61L2/10
G05D1/10
G05D1/08 Z
B64U10/10
B64U101:29
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026547
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 渚紗
【テーマコード(参考)】
4C058
5H301
【Fターム(参考)】
4C058AA02
4C058AA23
4C058AA30
4C058BB06
4C058DD02
4C058DD20
4C058EE03
4C058KK02
4C058KK14
4C058KK26
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301DD06
(57)【要約】
【課題】汚染箇所の処理を適正に実施できる処理装置を提供すること。
【解決手段】実施形態によれば、処理装置は、移動体と、紫外線照射部と、制御部とを備える。紫外線照射部は、移動体に設けられ、紫外線光源を備えている。制御部は、紫外線光源の温度に基づいて、移動体の速度を調整する。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と;
前記移動体に設けられ、紫外線光源を備えた紫外線照射部と;
前記紫外線光源の温度に基づいて、前記移動体の速度を調整する制御部と、
を具備する処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記紫外線光源の点灯時間から推定される前記紫外線光源の温度に基づいて、前記移動体の速度を調整する、
請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
前記移動体に設けられ、前記紫外線光源の温度を検知する検知部を備え、
前記移動体の速度は、前記検知部で検知された温度と、前記紫外線光源の温度と放射照度との関係に基づいて決定される、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記紫外線光源の駆動回路に設けられ、前記紫外線光源に出力される電流から前記紫外線光源の温度を検知する、
請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記移動体は、飛行体である、
請求項1から4のいずれか1つに記載の処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の細菌やウイルス等による汚染箇所を紫外線等によって処理する処理装置が知られている。また、この種の処理装置の中で、飛行体等の移動体に処理機能を持たせることで空間を移動しながら処理を実施できる処理装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-180956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光源の種類によらず、光源から照射される光の明るさ(照度、光束、輝度、放射束等)の値は温度による影響を受けやすい。具体的には、光源の温度上昇に従って光源から照射される光の明るさは減少する傾向にある。したがって、例えば紫外線を用いた空気処理を行う場合には、光源の使用状況や、使用環境によっては同じ照射時間で紫外線を照射しても適正な処理をできない場合がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、汚染箇所の処理を適正に実施できる処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、処理装置は、移動体と、紫外線照射部と、制御部とを備える。紫外線照射部は、移動体に設けられ、紫外線光源を備えている。制御部は、紫外線光源の温度に基づいて、移動体の速度を調整する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、汚染箇所の処理を適正に実施できる処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る移動体の使用状態を示す概略図である。
図2図2は、移動体の一例を示す図である。
図3図3は、一例の光源の温度と放射照度との関係を示す図である。
図4図4は、移動体の一例の構成を示すブロック図である。
図5図5は、移動体の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る処理装置は、紫外線を照射対象物(例えば、細菌やウイルス等が少なくとも1つ以上付着している汚染箇所や空気)に照射することで、照射対象物を除菌、殺菌又は滅菌するように構成されている。以下の実施形態において記載される用語「除菌」は、「滅菌」又は「殺菌」に置き換えることが可能である。
【0010】
実施形態に係る処理装置は、移動体(1)と、紫外線照射部(103)と、制御部(201)とを備える。紫外線照射部(103)は、移動体(1)に設けられ、紫外線光源を備えている。制御部(201)は、紫外線光源の温度に基づいて、移動体(1)の速度を調整する。
【0011】
また、実施形態において、制御部(201)は、紫外線光源の点灯時間から推定される紫外線光源の温度に基づいて、移動体の速度を調整する。
【0012】
また、実施形態に係る処理装置は、移動体(1)に設けられ、紫外線光源の温度を検知する検知部(104)を備える。移動体の速度は、検知部(104)で検知された温度と、紫外線光源の温度と放射照度との関係に基づいて決定される。
【0013】
また、実施形態において、検知部(104)は、紫外線光源の駆動回路に設けられ、紫外線光源に出力される電流から紫外線光源の温度を検知する。
【0014】
また、実施形態において、移動体(1)は、飛行体である。
【0015】
以上の構成によれば、光源の温度に応じて移動体の速度が調整されるので、温度上昇による光源の放射束の減少が生じても汚染箇所に対して必要な紫外線の照射時間が確保される。このため、汚染箇所への紫外線照射が適正に行われ得る。
【0016】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る移動体の使用状態を示す概略図である。移動体は、処理装置の一例である。図1に示すように、実施形態に係る移動体1は、例えば、屋内において使用される。屋内とは、劇場、映画館等の内側空間であり得る。劇場、映画館等の床には、多数の椅子2が設置されている。図1は、屋内を側面方向から見た図を示している。椅子2は、図1の奥行方向にも設置されていてもよい。移動体1は、例えば屋内を飛行しながら紫外線UVを照射することにより、椅子2を含む屋内の汚染箇所を除菌する。実施形態では、屋内は、劇場、映画館等の屋内であるとされているがこれに限定されるものではない。屋内は、オフィス環境、カフェ、貸会議室、ファミリーレストラン等の除菌が要求される任意の屋内であってよい。また、汚染箇所は、細菌及びウイルスによる汚染が生じ得る箇所であって紫外線UVの照射の対象となる箇所である。例えば、汚染箇所は、細菌及びウイルス等が1つ以上付着し得る箇所であってもよいし、細菌やウイルス等が単位面積あたりに規定数量以上付着し得る箇所であってもよい。
【0017】
図2は、移動体1の一例を示す図である。図2では、移動体1としてドローン(飛行する移動体の一例)が示されている。ドローンは、空中での飛行姿勢を自由に変更できるように複数のロータを備えたマルチコプターである。ここで、移動体1は、ドローンに限るものではない。移動体1として、空中を飛行しながら紫外線を照射できる各種の移動体が採用され得る。例えば、移動体1として、ラジコン飛行機、ラジコンヘリコプター、ラジコン飛行船、バルーン等の飛行体が用いられてもよい。さらには、移動体1は、必ずしも空中を飛行できるものでなくてもよい。例えば、移動体1は、屋内の汚染箇所を自走しながら汚染箇所に紫外線を照射する自走移動体であってもよい。例えば、移動体1は、AGV(Auto Guided Vehicle)、自律型の移動ロボット等であってもよい。以下では、移動体1はドローンであるとして説明が続けられる。
【0018】
移動体1は、筐体101と、ロータ102と、紫外線照射部103と、検知部104とを有する。
【0019】
図2の移動体1では、筐体101の内部に複数のロータ102が設けられている。筐体101の上部及び下部にはロータ102を露出させるための開口が空けられており、移動体1は、複数のロータ102をバランスよく回転させることで飛行する。ロータ102の周囲が筐体101に囲まれていることにより、移動体1の飛行中において屋内に居る人とロータ102との接触が抑制され得る。一方で、実施形態においては、ロータ102は必ずしも筐体101の内部に設けられていなくてもない。
【0020】
紫外線照射部103は、例えば筐体101の下部、すなわち飛行時に屋内の床と面する側に設けられる。紫外線照射部103は、光源と、駆動回路とを備える。光源は、紫外線光源である。駆動回路は、電源からの電力に基づいて光源を発光させる。光源としては、ランプ(例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光形紫外線ランプ、エキシマランプ等)であってもよく、LED(Light Emitting Diode)光源(SMD、COB、CSP等)であってもよい。本実施形態の紫外線は、240nm以上、300nm以下の範囲内にピーク波長を有する紫外線である。また、光源は、複数の光源によって構成されていてもよい。
【0021】
ここで、光源は、温度特性を有している。図3は、一例の光源の温度と放射照度との関係を示す図である。なお、以下では光源の明るさパラメータとしては、放射照度を用いて説明を行うが、以下で登場する放射照度は、放射束、照度、輝度、光束等と置き換えても差し支えない。また光源がLEDの場合、ここでの温度は、例えば、LED素子のジャンクション温度であったり、LED素子実装基板の基板温度であったりする。図3に示すように、放射照度は、温度の上昇に伴って減少する。通常、光源の温度は、光源の使用に伴って上昇する傾向にある。したがって、図1に示したように、光源から紫外線を照射しつつ、屋内の汚染箇所の除菌を実施する場合においては、温度上昇による放射照度の低下も考慮して汚染箇所への紫外線の照射が実施されることが望ましい。
【0022】
また、紫外線照射部103が筐体101の下部に設けられる場合、移動体1が地上にある基地に帰還するために着陸した際に紫外線照射部103が床面や基地等と接触する可能性がある。このような移動体1の着陸時における紫外線照射部103の接触を避けるために、筐体101に脚部101aが設けられていてもよい。一方で、基地等が天井にあって紫外線照射部103の接触がないことが保証される場合には筐体101に脚部101aが設けられていなくてもよい。
【0023】
検知部104は、紫外線照射部103の光源の温度を検知する。例えば、検知部104は、サーミスタ等の温度センサであり、光源の近く、例えば光源の駆動回路に配置されて光源の温度を検知する。または、検知部104は、光源の駆動回路内に実装され、光源の駆動回路から光源に出力される電流の大きさに基づいて計算されるジュール熱から間接的に光源の温度を検知してもよい。さらには、移動体1の周囲の環境温度を光源の初期温度とみなし、検知部104は、光源の使用時間による初期温度からの温度上昇に基づいて光源の温度を推定してもよい。このように、検知部104は、光源の温度を検知できるものであれば特に限定されない。
【0024】
図4は、移動体1の一例の構成を示すブロック図である。一例の移動体1は、制御部201と、ロータ駆動部202と、点灯駆動部203と、通信部204と、電源部205とを有する。
【0025】
制御部201は、移動体1の全体的な制御を実施する。制御部201は、プロセッサ及び記憶媒体を備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイコン、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びDSP(Digital Signal processor)等である。記憶媒体は、プロセッサによって実行される移動体1の制御のためのプログラム等を記憶する。記憶媒体は、半導体メモリ等であってよい。ここで、実施形態の記憶媒体は、図3で示した光源の温度特性の情報を記憶している。また、実施形態の記憶媒体は、光源点灯時間と、光源温度と、の関係を示す、時間×温度情報(第1の時間×温度情報)も合わせて記憶していてもよい。この特性情報は、光源が点灯開始した時間を0として、時間が経つにつれてどのように温度が上昇していくかを関連付けた情報である。なお光源の出力を変更可能な場合は、光源の出力ごとに複数種類の時間×温度情報を記憶していてもよい。また、時間×温度情報において、光源点灯時間に代えて、移動体の駆動時間(飛行時間)としてもよい。プロセッサ及び記憶媒体は、それぞれ1つずつであってもよいし、複数であってもよい。
【0026】
ロータ駆動部202は、ロータ102を回転させるための駆動機構及びこの駆動機構を動作させるための駆動回路を含む。駆動機構は、モータ等を備える。ロータ駆動部202は、制御部201からの制御指令に応じてそれぞれのロータ102を個別に回転させることで移動体1を任意の方向に移動させる。ロータ駆動部202は、ロータ102の向きを変えるための調整機構及び調整機構を動作させるための駆動回路をさらに有していてもよい。調整機構は、モータ等を備える。調整機構を有していることにより、ロータ駆動部202は、制御部201からの制御指令に応じてそれぞれのロータ102の向きを変えることにより、移動体1のより複雑な姿勢の調整をし得る。
【0027】
点灯駆動部203は、紫外線照射部103の紫外線光源を点灯/消灯するための点灯回路を含む。点灯駆動部203は、制御部201からの制御指令に応じて紫外線光源を点灯又は消灯する。点灯駆動部203は、一定強度で紫外線光源を点灯させるように構成されていてよい。または、点灯駆動部203は、制御部201からの制御指令に応じた強度で紫外線光源を点灯させるように構成されていてもよい。ここで、点灯駆動部203から紫外線照射部103の光源に出力される電流は、検知部104でも検知されてよい。検知部104は、検知した電流の値を制御部201に通知してよい。
【0028】
通信部204は、移動体1と移動体1の外部機器との通信のための通信回路を含む。移動体1の外部機器は、例えば制御装置3である。制御装置3は、少なくとも移動体1の飛行方向を指示する装置である。制御装置3は、例えば、コンピュータ、スマートデバイスであってよい。この場合、制御装置3は、プロセッサ及び記憶媒体を備える。プロセッサは、CPU、GPU、ASIC、マイコン、FPGA及びDSP(Digital Signal processor)等である。記憶媒体は、記憶媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、及び、半導体メモリ(USBメモリ、SSD等)等であってよい。制御装置3のプロセッサ及び記憶媒体はそれぞれ1つであってもよく、複数であってもよい。また、制御装置3は、移動体1のリモートコントローラであってもよい。この場合には、制御装置3は、ユーザの操作を受け付けるユーザインタフェースを備えていて、ユーザの操作に応じた信号を移動体1に送信する。ユーザインタフェースは、ボタン、スイッチ、ジョイスティック等であり得る。通信部204による制御装置3と移動体1との通信手法は、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の無線通信であり得る。しかしながら、移動体1が飛行体でない場合等では、制御装置3と移動体1との通信手法として有線通信も採用され得る。
【0029】
電源部205は、移動体1の電源を含む。電源は、例えば二次電池であって図示しない基地からの電力によって充電され得る。また、電源部205は、変換回路を含む。変換回路は、電源の電圧を、ロータ102、紫外線照射部103、検知部104、制御部201、ロータ駆動部202、点灯駆動部203、通信部204のそれぞれの動作に必要な電圧に変換する回路である。変換回路は、DC/DC変換回路、DC/AC変換回路、AC/DC変換回路等を含むことができる。図4においては、電源部205は、1つしか記載されていないが、電源部205は複数設けられてもよい。その場合、それぞれの電源部205が電力を供給する先は別々であっても、共通であってもよい。例えば、電源部205が2つ設けられた場合、一方の電源部205は、ロータ駆動部202と、検知部104と、通信部204とへ電力を供給し、他方の電源部205は、点灯駆動部203と、紫外線照射部103へ電力を供給するように構成されてもよい。また、一方の電源部205は、ロータ駆動部202と、検知部104と、通信部204と、点灯駆動部203と、紫外線照射部103とへ電力を供給し、他方の電源部205は、ロータ駆動部202と、点灯駆動部203と、紫外線照射部103とへ電力を供給するように構成されてもよい。
【0030】
次に、移動体1の動作を説明する。図5は、移動体1の動作を示すフローチャートである。図5の処理は、制御部201によって制御される。ここで、以下の説明では、制御装置3は、リモートコントローラであるとする。つまり、移動体1は、ユーザの操作に従って飛行するものとする。
【0031】
図5の処理は、例えば移動体1の電源投入後に開始される。電源投入後のステップS1において、制御部201は、紫外線照射部103の光源を点灯するように点灯駆動部203に指令を出す。これを受けて、点灯駆動部203は、紫外線照射部103の光源に信号を出力して光源を点灯させる。なお、ステップS1は、ステップS2と同時に行われてもよいし、最初に照射を開始する地点まで移動体が移動してからステップS1の処理が行われてもよい。
【0032】
ステップS2において、制御部201は、制御装置3から指定された移動方向に従って移動体1の移動を移動させるようにロータ駆動部202に対して指令を出す。これを受けて、ロータ駆動部202は、ロータ102の駆動機構を駆動して移動体1を移動させる。例えば、ユーザは、移動体1を所望の方向に移動させるように制御装置3のユーザインタフェースを操作する。これを受けて制御装置3は、移動体1に対して移動指令を送信する。移動方向は、移動体1が飛行体であれば飛行方向である。また、移動方向は、移動体1が自走移動体であれば、床面等に対する走行方向である。
【0033】
ステップS3において、制御部201は、例えば光源への出力電流の値から光源の現在の温度を検知もしくは、ステップS1からの経過時間を用いて光源の現在の温度を推定する。
【0034】
ステップS4において、制御部201は、検知、推定した温度と予め記憶している光源の温度特性とに基づいて、現在の光源の放射照度を取得(推定)する。ステップS5において、制御部201は、現在の放射照度に基づき、汚染箇所の除菌に必要な照射時間を計算する。紫外線の照射による除菌の程度は、一般に紫外線の照射量によって決まる。一例では、ウイルスを99.99%程度除菌できる照射量は4000μJ/cm2であり、ウイルスを99.90%程度除菌できる照射量は3000μJ/cm2であり、ウイルスを99.00程度%除菌できる照射量は2000μJ/cm2であり、ウイルスを90.00%程度除菌できる照射量は1000μJ/cm2であるとされている。制御部201には、これらの何れかの照射量が予め設定されている。照射量は、放射照度と照射時間の積によって決まるので、制御部201は、予め定められた除菌に必要な照射量を現在の放射照度の値で除することによって、所望の照射量を得るために必要な照射時間を計算する。
【0035】
ステップS6において、制御部201は、計算した照射時間に基づいて移動体1の速度を調整するようにロータ駆動部202に対して指令を出す。つまり、制御部201は、汚染箇所への紫外線の照射が計算された照射時間だけ行われるように移動体1の速度を遅くする、又は照射時間だけ移動体1を静止させる。なお、制御装置3から速度が指定される場合もあり得るが、制御装置3から指定された速度よりも照射時間に基づいて決定される速度のほうが遅い場合には、制御部201は、制御装置3からの速度の指定を無視する。一方で、制御装置3から指定された速度よりも照射時間に基づいて決定される速度のほうが速い場合には、制御部201は、制御装置3からの速度の指定を無視してもよいし、しなくてもよい。
【0036】
ステップS7において、制御部201は、動作を終了するか否かを判定する。例えば、図示しない基地に帰還したことが判定されたときに動作を終了すると判定される。ステップS7において、動作を終了すると判定されていないときには、処理はステップS3に戻る。ステップS7において、動作を終了すると判定されたときには、処理はステップS8に移行する。
【0037】
ステップS8において、制御部201は、紫外線照射部103の光源を消灯するように点灯駆動部203に指令を出す。これを受けて、点灯駆動部203は、紫外線照射部103の光源に信号を出力して光源を消灯させる。その後、図5の処理は終了する。このとき、実施形態の記憶媒体は、光源が消灯時にどのように温度が低下するかを示す、時間×温度情報(第2の時間×温度情報)も合わせて記憶していてもよい。この特性情報は、光源が消灯した時間を0として、時間が経つにつれてどのように温度が低下していくかを関連付けた情報である。光源が消灯した時の光源温度が一意に決まらない場合は、光源が消灯した時の光源温度ごとに複数種類の時間×温度情報を記憶していてもよい。そして、制御部201は、次の除菌作業に向けて、第2の時間×温度情報を用いて、光源消灯後の光源温度を推定してもよい。
【0038】
以上説明したように実施形態によれば、光源の温度上昇に伴う紫外線の放射束の低減による紫外線の照射量の減少が移動体の速度を遅くすることによって補われる。したがって、光源の温度によらずに所望の汚染箇所への紫外線の照射が適正に行われ得る。
【0039】
また、温度と放射照度の関係に基づいて決定される速度よりも制御装置3から指定される速度の方が速い場合には、制御部201は、制御装置3から指定される速度を無視して、温度と放射照度の関係に基づいて決定される速度となるように移動体1を制御する。これによっても所望の汚染箇所への紫外線の照射が適正に行われ得る。
【0040】
ここで、図5の例では、制御装置3は、リモートコントローラであるとされているが、制御装置3は、コンピュータ、スマートデバイス等であってもよい。この場合、制御装置3は、移動体1の検知部104で検知された光源の温度の情報を受け取って移動体1の速度を制御してもよい。
【0041】
また、制御部201の記憶媒体には、光源温度と移動体1の速度との関係が記憶されていてもよく、制御部201が光源の温度を推定する際の補正に用いてもよい。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1…移動体、2…椅子、3…制御装置、101…筐体、101a…脚部、102…ロータ、103…紫外線照射部、104…検知部、201…制御部、202…ロータ駆動部、203…点灯駆動部、204…通信部、205…電源部。

図1
図2
図3
図4
図5