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特開2024-119558移動局、移動局の制御方法、移動局の制御プログラム、基地局、基地局の制御方法及び基地局の制御プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119558
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】移動局、移動局の制御方法、移動局の制御プログラム、基地局、基地局の制御方法及び基地局の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
H04B7/06 150
H04B7/06 152
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026550
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】524066085
【氏名又は名称】FCNT合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 純一
(57)【要約】
【課題】建物による反射が生じる場合でも通信区域外への電波の漏洩を抑制する。
【解決手段】本移動局は、電波を放射するアンテナと、自局の位置を取得する位置取得部と、上記自局の姿勢を取得する姿勢取得部と、通信区域内に配置された建物の位置を示す建物情報と、上記アンテナが放射する上記電波の上記自局を基準とした放射方向を示す放射方向情報とを記憶する記憶部と、上記アンテナによる上記電波の放射を制御する制御部と、を備える。上記制御部は、上記自局の上記位置と上記姿勢とを基に、上記自局を基準とした上記電波の第1放射方向を上記通信区域を基準とした第2放射方向に変換し、上記第2放射方向に上記電波を放射した場合における上記電波の到達範囲を、上記建物情報を基に算出し、算出した上記到達範囲に上記通信区域外の領域が含まれる場合には、上記第1放射方向への上記電波の放射を禁止する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を放射するアンテナと、
自局の位置を取得する位置取得部と、
前記自局の姿勢を取得する姿勢取得部と、
通信区域内に配置された建物の位置を示す建物情報と、前記アンテナが放射する前記電波の前記自局を基準とした放射方向を示す放射方向情報とを記憶する記憶部と、
前記アンテナによる前記電波の放射を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記自局の前記位置と前記姿勢とを基に、前記自局を基準とした前記電波の第1放射方向を前記通信区域を基準とした第2放射方向に変換し、
前記第2放射方向に前記電波を放射した場合における前記電波の到達範囲を、前記建物情報を基に算出し、
算出した前記到達範囲に前記通信区域外の領域が含まれる場合には、前記第1放射方向への前記電波の放射を禁止する、
移動局。
【請求項2】
前記制御部は、前記建物の3次元形状モデルを用いたシミュレーションによって、前記到達範囲を算出する、
請求項1に記載の移動局。
【請求項3】
前記制御部は、前記建物の新たな位置を示す更新情報を受信すると、前記更新情報にしたがって、前記記憶部に記憶された前記建物情報を更新する、
請求項1または2に記載の移動局。
【請求項4】
通信区域内に配置された建物の位置を示す建物情報と、アンテナが放射する電波の自局を基準とした放射方向を示す放射方向情報とを記憶する記憶部を備える移動局の制御方法であって、
前記移動局の位置を取得し、
前記移動局の姿勢を取得し、
前記移動局の前記位置と前記姿勢とを基に、前記移動局を基準とした前記電波の第1放射方向を前記通信区域を基準とした第2放射方向に変換し、
前記第2放射方向に前記電波を放射した場合における前記電波の到達範囲を、前記建物情報を基に算出し、
算出した前記到達範囲に前記通信区域外の領域が含まれる場合には、前記第1放射方向への前記電波の放射を禁止する、処理を前記移動局が実行する、
移動局の制御方法。
【請求項5】
通信区域内に配置された建物の位置を示す建物情報と、アンテナが放射する電波の自局を基準とした放射方向を示す放射方向情報とを記憶する記憶部を備える移動局の制御プログラムであって、
前記移動局の位置を取得し、
前記移動局の姿勢を取得し、
前記移動局の前記位置と前記姿勢とを基に、前記移動局を基準とした前記電波の第1放射方向を前記通信区域を基準とした第2放射方向に変換し、
前記第2放射方向に前記電波を放射した場合における前記電波の到達範囲を、前記建物情報を基に算出し、
算出した前記到達範囲に前記通信区域外の領域が含まれる場合には、前記第1放射方向への前記電波の放射を禁止する、処理を前記移動局に実行させる、
移動局の制御プログラム。
【請求項6】
測定信号の放射方向及び強度を組み合わせた測定信号情報と、通信区域を区分けしたエリアの夫々とを対応付ける第1対応関係、及び、通信区域内に配置された第1の建物の位置と、前記通信区域内に建設予定の第2の建物の位置と、を含む建物情報、を記憶する記憶部と、
前記第1対応関係を参照して、前記放射方向と前記強度を変更しながら前記測定信号をアンテナに繰り返し送信させ、前記測定信号に対する応答信号を移動局から受信すると、前記応答信号に含まれる前記移動局の識別情報と、前記移動局が存在する第1エリアと、前記移動局によって応答された前記測定信号の前記測定信号情報と、の第2対応関係を前記記憶部に記憶させる収集部と、
前記第2対応関係において、同一の前記識別情報と前記第1エリアの組み合わせに対して、既に対応付けられた第1の測定信号情報とは異なる第2の測定信号情報が新たに対応付けられたことを検出すると、前記第2の建物の位置を前記移動局に通知する更新部と、を備える、
基地局。
【請求項7】
前記更新部は、前記新たに対応付けられたことを検出すると、前記第1対応関係において前記第1エリアに対して前記第2の測定信号情報を対応付ける、
請求項6に記載の基地局。
【請求項8】
測定信号の放射方向及び強度を組み合わせた測定信号情報と、通信区域を区分けしたエリアの夫々とを対応付ける第1対応関係、及び、前記通信区域内に配置された第1の建物の位置と、前記通信区域内に建設予定の第2の建物の位置と、を含む建物情報、を記憶する記憶部にアクセス可能な基地局が、
前記第1対応関係を参照して、前記放射方向と前記強度を変更しながら前記測定信号をアンテナに繰り返し送信させ、前記測定信号に対する応答信号を移動局から受信すると、前記応答信号に含まれる前記移動局の識別情報と、前記移動局が存在する第1エリアと、前記移動局によって応答された前記測定信号の前記測定信号情報と、の第2対応関係を前記記憶部に記憶させ、
前記第2対応関係において、同一の前記識別情報と前記第1エリアの組み合わせに対して、既に対応付けられた第1の測定信号情報とは異なる第2の測定信号情報が新たに対応付けられたことを検出すると、前記第2の建物の位置を前記移動局に通知する、
基地局の制御方法。
【請求項9】
測定信号の放射方向及び強度を組み合わせた測定信号情報と、通信区域を区分けしたエリアの夫々とを対応付ける第1対応関係、及び、前記通信区域内に配置された第1の建物の位置と、前記通信区域内に建設予定の第2の建物の位置と、を含む建物情報、を記憶する記憶部にアクセス可能な基地局に、
前記第1対応関係を参照して、前記放射方向と前記強度を変更しながら前記測定信号をアンテナに繰り返し送信させ、前記測定信号に対する応答信号を移動局から受信すると、前記応答信号に含まれる前記移動局の識別情報と、前記移動局が存在する第1エリアと、前記移動局によって応答された前記測定信号の前記測定信号情報と、の第2対応関係を前記記憶部に記憶させ、
前記第2対応関係において、同一の前記識別情報と前記第1エリアの組み合わせに対して、既に対応付けられた第1の測定信号情報とは異なる第2の測定信号情報が新たに対応付けられたことを検出すると、前記建物情報を前記移動局に送信させる、
基地局の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局、移動局の制御方法、移動局の制御プログラム、基地局、基地局の制御方法及び基地局の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信において、第5世代移動通信システム(5G)の普及が進められている。無線通信では、信号の振幅及び指向方向を制御する技術や、アンテナの方向を決定する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-081457号公報
【特許文献2】特開2021-077921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
5Gにおいては、5Gの利用を希望する事業者や地方公共団体等によって、自社の敷地等の限定した通信区域内で使用する5Gネットワーク(ローカル5G)も利用されている。ローカル5Gでは、許可された通信区域外への規定以上の強度の電波の漏洩が生じないように運用することが求められる。アンテナの放射方向を通信区域内に向けるように制御しても、建物によって反射された電波が通信区域外に漏洩する虞がある。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、建物による反射が生じる場合でも通信区域外への電波の漏洩を抑制できる移動局、移動局の制御方法、移動局の制御プログラム、基地局、基地局の制御方法及び基地局の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような移動局によって例示される。本移動局は、電波を放射するアンテナと、自局の位置を取得する位置取得部と、上記自局の姿勢を取得する姿勢取得部と、通信区域内に配置された建物の位置を示す建物情報と、上記アンテナが放射する上記電波の上記自局を基準とした放射方向を示す放射方向情報とを記憶する記憶部と、上記アンテナによる上記電波の放射を制御する制御部と、を備える。上記制御部は、上記自局の上記位置と上記姿勢とを基に、上記自局を基準とした上記電波の第1放射方向を上記通信区域を基準とした第2放射方向に変換し、上記第2放射方向に上記電波を放射した場合における上記電波の到達範囲を、上記建物情報を基に算出し、算出した上記到達範囲に上記通信区域外の領域が含まれる場合には、上記第1放射方向への上記電波の放射を禁止する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、建物による反射が生じる場合でも通信区域外への電波の漏洩を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る無線通信システムの一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る基地局のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る移動局のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る移動局の処理ブロックの一例を示す図である。
図5図5は、管理データベースに格納される放射角度管理テーブルの一例を示す図である。
図6図6は、アンテナによって放射される電波を模式的に示す図である。
図7図7は、管理データベースに格納される建物管理テーブルの一例を示す図である。
図8図8は、座標変換部による移動局座標系から敷地座標系への変換を模式的に示す図である。
図9図9は、禁止部による電波の放射禁止を模式的に示す図である。
図10図10は、実施形態に係る移動局の処理フローの一例を示す第1の図である。
図11図11は、実施形態に係る移動局の処理フローの一例を示す第2の図である。
図12図12は、第1変形例に係る無線通信システムの一例を示す図である。
図13図13は、第1変形例に係る基地局の処理ブロックの一例を示す図である。
図14図14は、メッシュ状に区切られた自社敷地を例示する図である。
図15図15は、管理データベースに格納されるエリア管理テーブルの一例を示す図である。
図16図16は、管理データベースに格納される送信電波管理テーブルの一例を示す図である。
図17図17は、管理データベースに格納されるエリア・電力対応管理テーブルの一例を示す図である。
図18図18は、管理データベースに格納される建物管理テーブルの一例を示す図である。
図19図19は、管理データベースに格納される移動局管理テーブルの一例を示す図である。
図20図20は、新たに建物が建設された場合における移動局管理テーブルの一例を示す図である。
図21図21は、更新指示部による更新後の建物管理テーブルの一例を示す図である。
図22図22は、更新指示部による更新後のエリア・電力対応管理テーブルの一例を示す図である。
図23図23は、第1変形例に係る移動局の処理ブロックの一例を示す図である。
図24図24は、更新部によって更新された建物管理テーブルの一例を示す図である。
図25図25は、第1変形例に係る基地局の処理フローの一例を示す図である。
図26図26は、第1変形例に係る移動局における、建物管理テーブルの更新処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下、図面を参照して実施形態についてさらに説明する。図1は、実施形態に係る無線通信システム1の一例を示す図である。無線通信システム1は、自社敷地500内に配置された基地局2及び移動局3を備える。自社敷地500内には、住居41、工場42が配置される。自社敷地500の隣には、他社が有する他社敷地600が存在する。なお、図1では、自社敷地500内に基地局2及び移動局3はひとつずつ配置されているが、基地局2及び移動局3は自社敷地500内に複数配置されてもよい。
【0010】
無線通信システム1は、例えば、自社敷地500を有する企業が自社敷地500内で使用するローカル5Gシステムである。ローカル5Gでは、他社敷地600のような自社敷地500外の領域に対して、無線通信システム1で使用する電波が規定以上の強度で漏洩することは禁止される。以下、本明細書において、規定以上の強度で他社敷地600に電波が漏洩することを、他社敷地600に電波が漏洩するとも称する。
【0011】
基地局2は、移動局3との電波を用いた無線通信に用いられる移動しない無線通信装置である。基地局2は、基地局2から放射される電波が他社敷地600に届かない位置に配置される。移動局3は、自社敷地500内を走行する無線通信車両である。移動局3は、基地局2を介して他の移動局3と無線通信する。なお、図1では移動局3は車両として描かれているが、移動局3が車両に限定されるわけではない。移動局3は、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、ノートブック型パーソナルコンピュータ、ウェアラブルコンピュータ、フィーチャーフォン等であってもよい。
【0012】
住居41及び工場42は、自社敷地500内に建設された建物である。住居41及び工場42を区別しないときは、建物4とも称する。
【0013】
(基地局2のハードウェア構成)
図2は、実施形態に係る基地局2のハードウェア構成の一例を示す図である。基地局2は、アンテナ201、無線処理部202、制御部203、主記憶部204、補助記憶部205、内部バスB1及び内部バスB2を備える。アンテナ201と無線処理部202とは、内部バスB1によって接続される。無線処理部202と制御部203、主記憶部204、補助記憶部205とは、内部バスB2によって接続される。
【0014】
アンテナ201は、無線処理部202からの電気信号を電波として放射したり、外部から受信した電波を電気信号として無線処理部202に入力したりする。無線処理部202は、アンテナ201から入力された電気信号を復調して制御部203に入力したり、制御部203から入力された電気信号を変調してアンテナ201に電波として放射させたりする。
【0015】
制御部203は、例えば、プロセッサである。制御部203は、Digital Signal Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)、数値演算プロセッサ、ベクトルプロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用プロセッサを含んでもよい。制御部203は、プロセッサと集積回路との組み合わせであってもよい。組み合わせは、例えば、マイクロコントローラーユニット(MCU)、System-on-a-chip(SoC)、システムLSI、チップセットなどと呼ばれる。制御部203は、補助記憶部205に記憶されたプログラムを主記憶部204の作業領域に展開し、プログラムの実行を通じて所定の目的に合致した処理を実行する。主記憶部204及び補助記憶部205は、制御部203が読み取り可能な記録媒体である。
【0016】
主記憶部204は、制御部203から直接アクセスされる記憶部として例示される。主記憶部204は、例えば、Random Access Memory(RAM)やRead Only Memory(ROM)である。
【0017】
補助記憶部205は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納する。補助記憶部205は、例えば、Erasable Programmable
ROM(EPROM)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive、SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD)等である。また、補助記憶部103は、例えば、Compact Disc(CD)ドラ
イブ装置、Digital Versatile Disc(DVD)ドライブ装置、Blu-ray(登録商標) Disc(BD)ドライブ装置等である。
【0018】
(移動局3のハードウェア構成)
図3は、実施形態に係る移動局3のハードウェア構成の一例を示す図である。移動局3は、アンテナ301、無線処理部302、制御部303、主記憶部304、補助記憶部305、位置センサ306、方位センサ307、内部バスB3及び内部バスB4を備える。アンテナ301、無線処理部302、制御部303、主記憶部304、補助記憶部305、内部バスB3及び内部バスB4は、基地局2のアンテナ201、無線処理部202、制御部203、主記憶部204、補助記憶部205、内部バスB1及び内部バスB2と同様であるため、その説明を省略する。
【0019】
位置センサ306は、移動局3の現在位置を取得するセンサである。位置センサ306は、例えば、Global Positioning System(GPS)受信機である。方位センサ307は、移動局3の向き(移動局3の前方が向けられた方向)を取得するセンサである。方位センサ307は、例えば、地磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ等である。
【0020】
(移動局3の処理ブロック)
図4は、実施形態に係る移動局3の処理ブロックの一例を示す図である。移動局3は、位置取得部31、姿勢取得部32、座標変換部33、算出部34、禁止部35及び管理データベース36を備える。移動局3は、主記憶部304に読みだされたコンピュータプログラムを制御部303が実行することで、上記移動局3の、位置取得部31、姿勢取得部32、座標変換部33、算出部34、禁止部35及び管理データベース36等の各部としての処理を実行する。
【0021】
管理データベース36は、アンテナ301によって放射される電波の角度及び自社敷地500内に建設された建物4の位置を記憶するデータベースである。管理データベース36は、例えば、補助記憶部305上に構築される。図5は、管理データベース36に格納される放射角度管理テーブル361の一例を示す図である。放射角度管理テーブル361は、「アンテナ」、「方位ID」、「角度」の各項目を有する。「アンテナ」には、移動局3が実装するアンテナ201のうちいずれかひとつのアンテナを特定する名称が格納される。移動局3がアンテナ201をひとつのみ実装する場合には、放射角度管理テーブル361から「アンテナ」の項目が省略されてもよい。
【0022】
「方位ID」には、アンテナ201によって放射される電波の放射方向を特定する情報が格納される。図6は、アンテナ201によって放射される電波を模式的に示す図である。アンテナ201は、例えば、ビームフォーミングによって、電波の放射方向を切り替えることができる。図6では、各方向に放射された電波は楕円形で模式的に示される。各方向に放射される電波の夫々には、ユニークな方位IDが割り当てられる。図6では、方位ID11、12、13、14、15、16、17の電波が例示される。
【0023】
図5に戻り、「角度」には、電波の放射角度が格納される。ここで、「角度」に格納される放射角度は、移動局3を基準として仮想的に設定された座標系(以下、移動局座標系とも称する)における角度である。放射角度管理テーブル361によって、アンテナ201、アンテナ201によって放射される各方向の電波、及び、電波の放射角度が対応付けられる。放射角度管理テーブル361を参照すると、図6に例示される「方位ID」が「11」の電波の角度は、「θ11、Φ11」であることが理解できる。
【0024】
図7は、管理データベース36に格納される建物管理テーブル362の一例を示す図で
ある。建物管理テーブル362は、「建物種別」、「建物ID」、「位置」及び「モデル」の各項目を含む。「建物種別」には、建物4の種別を示す情報が格納される。「建物ID」には、個々の建物4にユニークに割り当てられたIDが格納される。「位置」には、敷地座標系における建物4が配置された位置が格納される。「モデル」には、建物4に対して電波を照射した場合における反射方向の算出に用いる建物4の3次元の形状を示す3次元形状モデルを示す情報が格納される。3次元形状モデルは、補助記憶部305において管理データベース36とは別の領域に格納されてもよい。この場合、建物管理テーブル362の「モデル」には、3次元形状モデルが格納された領域を示すアドレス情報が格納されてもよい。また、建物管理テーブル362の「モデル」には、3次元形状モデルそのものが格納されてもよい。建物管理テーブル362は、「建物情報」の一例である。
【0025】
図4に戻り、位置取得部31は、位置センサ306を用いて移動局3の現在位置を取得する。移動局3の現在位置は、例えば、自社敷地500上に仮想的に設定された座標系(以下、敷地座標系とも称する)における位置として取得される。
【0026】
姿勢取得部32は、方位センサ307を用いて移動局3の姿勢を示す姿勢情報を取得する。姿勢情報としては、例えば、移動局3の敷地座標系における方位角、仰俯角を挙げることができる。
【0027】
座標変換部33は、姿勢取得部32によって取得した姿勢情報を基に、放射角度管理テーブル361に格納された移動局座標系における電波の放射方向を、敷地座標系における電波の放射方向に変換する。図8は、座標変換部33による移動局座標系から敷地座標系への変換を模式的に示す図である。図8において、移動局座標系はx軸、y軸、z軸が互いに直交する座標系であり、敷地座標系はx´軸、y´軸、z´軸が互いに直交する座標系である。座標変換部33は、例えば、移動局座標系における電波の放射方向(θ11、Φ11)を敷地座標系における(θ´11、Φ´11)に変換する。
【0028】
図4に戻り、算出部34は、アンテナ201によって放射される各方向の電波夫々について、アンテナ201から放射された場合における到達範囲を算出する。算出部34は、建物管理テーブル362を参照して、自社敷地500内の建物4の位置を取得する。算出部34は、位置取得部31によって取得された移動局3の現在位置と、座標変換部33によって変換されたアンテナ201によって放射される電波の方向とに基づいて、アンテナ201が放射する放射方向夫々の電波について、放射方向に位置する建物4を特定する。その上で、建物4は、アンテナ201に電波を放射させたときにおける到達範囲を、建物4による反射の影響も含めて算出する。ここで、到達範囲の算出には、建物4の3次元形状モデルに対してアンテナ201から電波を放射したときにおける反射波の到達範囲をシミュレーションによって決定する処理が含まれてよい。
【0029】
禁止部35は、算出部34によって算出された到達範囲に他社敷地600が含まれる方向への電波の放射を禁止する。禁止部35は、例えば、アンテナ201によって放射されて直接他社敷地600に到達する方向への電波の放射を禁止する。また、禁止部35は、アンテナ201によって放射された後に建物4によって反射された反射波が他社敷地600に到達する方向への電波の放射を禁止する。
【0030】
図9は、禁止部35による電波の放射禁止を模式的に示す図である。図9では、移動局3のアンテナ201によって放射される電波W10、W20が例示される。電波W10及び電波W20の夫々について算出部34によって到達範囲が算出された結果、電波W10は工場42によって反射され、その反射波W11は他社敷地600にまで到達することが判明し、電波W20は、他社敷地600には到達しないことが判明する。このような場合、禁止部35は、電波W10の方向へのアンテナ201による電波の放射を禁止する。一
方で、禁止部35は、他社敷地600に到達しない電波W20の方向へのアンテナ201による電波の放射は禁止しない。
【0031】
(処理フロー)
図10から図11は、実施形態に係る移動局3の処理フローの一例を示す図である。以下、図10から図11を参照して、移動局3の処理フローの一例を説明する。
【0032】
T1では、算出部34は、建物管理テーブル362を参照して、自社敷地500内の建物4の位置を取得する。T2では、位置取得部31は、移動局3の現在位置を取得する。また、姿勢取得部32は、移動局3の姿勢を取得する。T3では、算出部34は、放射角度管理テーブル361を参照して、アンテナ201が放射する電波の方向を取得する。
【0033】
T4では、算出部34は、T1で取得した建物の位置、T2で取得した移動局3の現在位置及び姿勢、T3で取得した電波の放射方向を基に、電波の到達範囲を算出する。算出した電波の到達範囲が他社敷地600に到達する場合(T5でYES)、処理はT6に進められる。算出した電波の到達範囲が他社敷地600に到達しない場合(T5でNO)、かつ、全ての方向(放射角度管理テーブル361で管理される電波の全ID)についてT4からT6の処理が完了している場合には、処理はT7に進められる。算出した電波の到達範囲が他社敷地600に到達しない場合(T5でNO)、かつ、放射角度管理テーブル361で管理される電波の全IDのうちT4からT6の処理が完了していないIDの電波が存在する場合には、処理はT4に進められる。
【0034】
T6では、禁止部35は、T5において他社敷地600に到達すると判定された方向への電波の放射を禁止する。禁止部35は、例えば、禁止の対象となった電波のIDを補助記憶部305に記憶させる。
【0035】
T7では、制御部303は、T6において禁止されていないIDの電波を順次用いて、受信動作を行う。T8では、制御部303は、SS/PBCHブロックを受け取った中で基地局2との通信に最適な電波のIDを選択する。T9では、制御部303は、T8で選択したIDの電波を用いてランダムアクセスを開始する。
【0036】
(実施形態の作用効果)
本実施形態では、自社敷地500内に配置された建物4による反射も考慮して、移動局3から放射された電波の到達範囲が算出される。そして、算出された到達範囲に他社敷地600が含まれる場合には、当該方向への電波の放射が禁止部35によって禁止される。そのため、本実施形態によれば、移動局3から他社敷地600への電波の漏洩が抑制される。
【0037】
なお、本実施形態では、建物4の3次元形状モデルを使用したシミュレーションが算出部34によって行われたが、算出部34のシミュレーションで用いられる建物4の3次元形状モデルは、精密に建物4の形状をモデル化したものでなくともよい。建物4の3次元形状モデルは、例えば、直方体や球体等の形状を用いて形成された簡略化されたモデルであってもよい。
【0038】
<第1変形例>
以上説明した実施形態では、自社敷地500内の建物4の配置に変動が無い場合が説明された。しかしながら、建物4は新規に建設されたり撤去されたりし得る。そこで、第1変形例では、自社敷地500内において、建物4の新規建設や撤去が行われる場合に、移動局3からの電波の他社敷地600への漏洩を抑制する技術について説明する。実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略される。以下、図面を参
照して、第1変形例について説明する。
【0039】
図12は、第1変形例に係る無線通信システム1Aの一例を示す図である。無線通信システム1Aは、基地局2A及び移動局3Aを備える。基地局2A及び移動局3Aのハードウェア構成は、実施形態に係る基地局2及び移動局3と夫々同様である。
【0040】
(基地局2Aの処理ブロック)
図13は、第1変形例に係る基地局2Aの処理ブロックの一例を示す図である。基地局2Aは、収集部21、検出部22、更新指示部23及び管理データベース24を備える。基地局2Aは、主記憶部204に読みだされたコンピュータプログラムを制御部203が実行することで、上記基地局2Aの、収集部21、検出部22、更新指示部23及び管理データベース24等の各部としての処理を実行する。
【0041】
管理データベース24は、自社敷地500のメッシュデータ、基地局2Aが放射する電波の放射方向及び出力、自社敷地500内の建物4の配置を管理するデータベースである。管理データベース24は、例えば、補助記憶部205上に構築される。
【0042】
管理データベース24では、例えば、自社敷地500は矩形のメッシュ状に区切られて管理される。図14は、メッシュ状に区切られた自社敷地500を例示する図である。管理データベース24では、自社敷地500が複数の矩形領域(エリア)に区切られ、夫々のエリアにはユニークなIDが割り当てられる。
【0043】
図15は、管理データベース24に格納されるエリア管理テーブル241の一例を示す図である。エリア管理テーブル241は、図14に例示するようなメッシュ状に区切られた自社敷地500の管理に用いられるテーブルである。エリア管理テーブル241は、「エリアID」及び「エリア」の各項目を有する。「エリアID」には、自社敷地500をメッシュ状に区切った夫々のエリアを示すユニークなIDが格納される。「エリア」には、自社敷地500における夫々のエリアの位置を示す情報が格納される。エリアの位置を示す情報としては、例えば、矩形に形成されたエリアの対向する2つの角の頂点を示す座標値の組み合わせを挙げることができる。座標値としては、例えば、緯度、経度を採用することができる。
【0044】
図16は、管理データベース24に格納される送信電波管理テーブル242の一例を示す図である。送信電波管理テーブル242は、「CSI-RS ID」及び「送信電力」の各項目を有する。「CSI-RS ID」には、基地局2Aが送信するCSI-RSの送信方向夫々についてのユニークなIDが格納される。「送信電力」には、CSI-RSを送信する際の送信電力が格納される。送信電波管理テーブル242の「送信電力」における「A」、「B」、「C」、・・・、「Y」、「Z」の夫々は、送信電力を例示する。そして、送信電波管理テーブル242において、「CSI-RS ID」と「送信電力」とを組み合わせた「1A」、「3C」等は、CSI-RSの送信方向と送信電力との組み合わせを一意に識別する符号として用いられる。すなわち、送信電波管理テーブル242において「2B」は、ID「2」の方向に送信電力「B」でCSI-RSを送信することを示す。CSI-RSの送信方向と送信電力との組み合わせは、「測定信号情報」の一例である。
【0045】
図17は、管理データベース24に格納されるエリア・電力対応管理テーブル243の一例を示す図である。エリア・電力対応管理テーブル243は、自社敷地500における各エリアに電波を到達させるための電波の送信方向と送信電力とを管理するテーブルである。エリア・電力対応管理テーブル243は、「CSI-RS情報」及び「エリアID」の各項目を有する。「CSI-RS情報」には、送信電波管理テーブル242における「
CSI-RS ID」と「送信電力」との組み合わせが格納される。「エリアID」は、エリア管理テーブル241の「エリアID」と同様であるため、その説明を省略する。図17の例の場合、例えば、エリアID「9」に基地局2AからのCSI-RS信号を到達させるには、「CSI-RS ID」が「1」、「送信電力」が「B」となることが理解できる。
【0046】
図18は、管理データベース24に格納される建物管理テーブル244の一例を示す図である。建物管理テーブル244には、既設の建物4に係る情報や建設計画が立案された新規の建物4に係る情報が格納される。建物管理テーブル244は、自社敷地500に既設の建物4の情報、及び、自社敷地500に建設予定の建物4の情報が格納される。建物管理テーブル244は、「建物種別」、「建物ID」、「位置」、「モデル」及び「建設時期」の各項目を有する。建物管理テーブル244の「建物種別」、「建物ID」、「位置」及び「モデル」は、建物管理テーブル362の「建物種別」、「建物ID」、「位置」及び「モデル」と同様であるため、その説明を省略する。「建設時期」は、建物4が建設される時期が格納される。建設予定の建物4については建物4の完成時期が格納される完成時期は、例えば、年4桁月2桁で示される。既設の建物4については、例えば、「既設」が格納される。
【0047】
図19は、管理データベース24に格納される移動局管理テーブル245の一例を示す図である。移動局管理テーブル245は、移動局3Aの位置と、当該位置に存在する移動局3Aが応答したCSI-RSに係る情報を管理するテーブルである。移動局管理テーブル245は、「受信時刻」、「移動局情報」及び「CSI-RS情報」の各項目を有する。「受信時刻」には、基地局2Aが送信したCSI-RS信号に対する移動局3Aからの応答信号を受信した時刻が格納される。「移動局情報」には、移動局3Aの個体識別情報、移動局3Aの姿勢情報、移動局3Aのエリア情報の組み合わせが格納される。
【0048】
移動局3Aの個体識別情報は、例えば、International Mobile Equipment Identity(IMEI)である。姿勢情報は、移動局3Aの姿勢を示す情報であり、例えば、移動局3Aの敷地座標系における方位角、仰俯角である。姿勢情報は、例えば、方位角及び仰俯角の夫々を所定角度(例えば、5度)ずつの領域で区切り、区切った領域のうち移動局3Aの姿勢が該当する領域を示す情報であってもよい。移動局3Aのエリア情報は、CSI-RS信号に対する移動局3Aからの応答信号に含まれる移動局3Aの現在位置に対応するエリアを示す情報である。「CSI-RS情報」は、移動局3Aからの応答信号が受信されたCSI-RS信号の、「CSI-RS ID」と「送信電力」の組み合わせが格納される。
【0049】
収集部21は、CSI-RS信号の「CSI-RS ID」及び「送信電力」を変更しながらCSI-RS信号を送信し、移動局3Aからの応答信号を受信する。CSI-RS信号には、「CSI-RS ID」と「送信電力」との組み合わせである「CSI-RS情報」が含まれる。収集部21は、受信した応答信号に含まれる情報を、移動局管理テーブル245に格納する。
【0050】
検出部22は、移動局管理テーブル245を参照して、自社敷地500に新たに建物4が建設されたか否かを判定する。図20は、新たに建物4が建設された場合における移動局管理テーブル245の一例を示す図である。検出部22は、収集部21によって移動局管理テーブル245が更新される度に移動局管理テーブル245を参照し、「移動局情報」と「CSI-RS情報」の組み合わせについての変化の有無を判定する。図20の場合、「移動局情報」が「XXXX-YY-5-44」について、「受信時刻」が「T0」のときには「CSI-RS情報」が「5D」である一方で、「受信時刻」が「T102」のときには「CSI-RS情報」が「7E」となっており、「移動局情報」と「CSI-R
S情報」の組み合わせが変化している。
【0051】
自社敷地500において建物4が新規に建設されると、基地局2Aが放射する電波の反射経路が変動するため、同一の位置に到達する「CSI-RS ID」も変動する。そのため、検出部22は、移動局管理テーブル245における「移動局情報」と「CSI-RS情報」の組み合わせが変化した場合に自社敷地500に新たに建物4が建設されたと判定(以下、「新規建設判定」とも称する)する。
【0052】
更新指示部23は、検出部22によって新規建設判定がされると、移動局3Aに対して建物管理テーブル362の更新を指示する。更新指示部23による更新指示は、例えば、建物管理テーブル244に格納された情報のうち、「建物種別」、「建物ID」、「位置」及び「モデル」に格納された情報を移動局3Aに対して送信することで行われる。
【0053】
なお、更新指示部23は、新規建設判定された時期に応じて、建物管理テーブル244の一部を送信してもよい。例えば、新規建設判定された時期が2023年4月である場合、「建設時期」が2024年1月である建物ID:44の「事務所」は建設されていない。そのため、更新指示部23は、建物管理テーブル244のうち、建物ID:44の「事務所」に係る情報は、移動局3Aに送信しなくともよい。すなわち、更新指示部23は、更新指示を送信する時期と建物管理テーブル244に格納された「建設時期」とを基に、移動局3Aに送信する情報を選択してもよい。また、更新指示部23は、既設の建物4に係る情報は更新指示に含めなくともよい。すなわち、更新指示部23は、「建設時期」を基に新規建設判定時に建設されたと判定した建物4に係る情報のみを更新指示に含めてもよい。
【0054】
さらに、更新指示部23は、新規建設判定に応じて、建物管理テーブル244を更新する。すなわち、更新指示部23は、新たに建設された建物(例えば、建物ID:43の建物)に対応する「建設時期」を「既設」に変更する。更新指示部23は、例えば、検出部22による新規建設判定された時期が2023年4月である場合、建物管理テーブル244の「建設時期」を参照すると、新規に建設された建物4は建物ID:44の「事務所」であると判定できる。このような場合、更新指示部23は、建物ID:44の「事務所」に対応付けられた「建設時期」を「202304」から「既設」に更新する。図21は、更新指示部23による更新後の建物管理テーブル244の一例を示す図である。図21図18とを比較すると、建物ID:44に対応付けられた「建設時期」が「202304」から「既設」に更新されたことが理解できる。
【0055】
また、更新指示部23は、新規建設判定に応じて、エリア・電力対応管理テーブル243を更新する。すなわち、新規に建設された建物4によってCSI-RS信号の反射経路が変更されることで、「CSI-RS情報」と「エリアID」との対応が変動するため、更新指示部23は、この変動に対応するため、エリア・電力対応管理テーブル243の更新を行う。更新指示部23は、移動局管理テーブル245を参照して、「受信時刻」が「T0」であるときの「CSI-RS情報」が「5D」である一方で、「受信時刻」が「T102」であるときの「CSI-RS情報」が「7E」に変更されている検知する。
【0056】
更新指示部23は、エリア・電力対応管理テーブル243において、変更される前の「CSI-RS情報」である「5D」に対応する「エリアID」を特定する。ここでは、図17を基に、「エリアID」として「29」が特定されたものとする。更新指示部23は、特定した「エリアID」に対応する「CSI-RS情報」を、新規建設判定後の「CSI-RS情報」である「7E」に更新する。図22は、更新指示部23による更新後のエリア・電力対応管理テーブル243の一例を示す図である。図22図17とを比較すると、エリアID:29に対応付けられた「CSI-RS情報」が「5D」から「7E」に
更新されたことが理解できる。エリア・電力対応管理テーブル243が更新されることで、収集部21は、新規建設判定後の自社敷地500における建物4の配置に応じたCSI-RS信号を送信することができる。
【0057】
(移動局3Aの処理ブロック)
図23は、第1変形例に係る移動局3Aの処理ブロックの一例を示す図である。移動局3Aは、応答部37及び更新部38をさらに備える点で、実施形態に係る移動局3とは異なる。
【0058】
応答部37は、基地局2AからのCSI-RS信号に対する応答信号を送信する。応答信号には、位置取得部31によって取得された移動局3Aの現在位置、姿勢取得部32によって取得された移動局3Aの姿勢を示す情報、受信したCSI-RS信号中の「CSI-RS情報」が含まれる。
【0059】
更新部38は、基地局2Aからの更新指示にしたがって、建物管理テーブル362を更新する。図24は、更新部38によって更新された建物管理テーブル362の一例を示す図である。図24では、例えば、建物ID:43の建物4が新たに建設されたことで基地局2Aから更新指示が送信された場合における、建物管理テーブル362が例示される。更新部38は、更新指示に応じて建物管理テーブル362を更新することで、建物ID:43に係る情報が建物管理テーブル362に追加される。
【0060】
(基地局2Aの処理フロー)
図25は、第1変形例に係る基地局2Aの処理フローの一例を示す図である。以下、図25を参照して、基地局2Aの処理フローの一例について説明する。
【0061】
T11では、収集部21は、CSI-RS信号を送信する。T12では、収集部21は、CSI-RS信号に対する応答信号を移動局3Aから受信する。収集部21は、受信した応答信号に含まれる情報を、移動局管理テーブル245に格納する。
【0062】
T13では、検出部22は、移動局管理テーブル245を参照して、自社敷地500に新たに建物4が建設されたか否かを判定する。検出部22によって新規建設判定された場合(T13で「YES」)、処理はT12に進められる。検出部22によって新規建設判定されなかった場合(T13で「NO」)、処理はT11に進められる。
【0063】
T12では、更新指示部23は、更新指示を移動局3Aに対して送信する。
【0064】
(移動局3Aの処理フロー)
図26は、第1変形例に係る移動局3Aにおける、建物管理テーブル362の更新処理の一例を示す図である。以下、図26を参照して、移動局3Aにおける、建物管理テーブル362の更新処理について説明する。
【0065】
T21では、応答部37は、基地局2AからのCSI-RS信号を受信すると、受信したCSI-RS信号に対する応答信号を基地局2Aに送信する。
【0066】
T22では、更新部38は、基地局2Aから更新指示を受信したか否かを判定する。更新指示を受信した場合、(T22で「YES」)、処理はT23に進められる。更新指示を受信していない場合(T22で「NO」)、処理は終了される。
【0067】
T23では、更新部38は、T22で受信した更新指示にしたがって、建物管理テーブル362を更新する。
【0068】
(第1変形例の作用効果)
第1変形例によれば、移動局3Aは、基地局2Aから受信する応答信号に含まれる情報の履歴を移動局管理テーブル245によって管理する。そして、基地局2Aは、移動局管理テーブル245において同一の「移動局情報」に対応する「CSI-RS情報」に変動を検知した場合、建物管理テーブル362の更新を指示する更新指示を移動局3Aに対して送信する。移動局3Aでは、更新指示にしたがって、建物管理テーブル362が更新される。移動局3Aでは、更新された建物管理テーブル362を参照して、実施形態で説明した禁止部35による禁止処理が行われる。そのため、第1変形例によれば、自社敷地500において新規に建物4が建設されても、新規の建物4を考慮して、他社敷地600への電波の漏洩が抑制される。
【0069】
なお、第1変形例では建物4が新規に建設される場合について説明されたが、建物4が撤去される場合にも第1変形例で説明した技術は適用できる。このような場合、建物管理テーブル244において建物4の撤去時期が管理され、検出部22は、移動局管理テーブル245における「移動局情報」と「CSI-RS情報」の組み合わせが変化した場合に、組み合わせの変化を検知した時期と撤去時期とを照合して、建物4の撤去を検出する。そして、更新指示部23は、検出部22によって建物4の撤去が検出されると、撤去された建物4を建物管理テーブル362から削除させる更新指示を移動局3Aに送信する。移動局3Aは、更新指示を受信すると、撤去された建物4に係る情報を建物管理テーブル362から削除すればよい。
【0070】
<その他の変形>
以上説明した実施形態では、自社敷地500から他社敷地600への電波の漏洩が抑制された。しかしながら、実施形態に係る無線通信システム1は、自社敷地500から他社敷地600への漏洩の抑制に限定されない。実施形態に係る無線通信システム1は、例えば、自社敷地500内に構築された通信エリアから、当該通信エリア外(自社敷地500内であって通信エリア外の領域を含む)への電波の漏洩を抑制してもよい。
【0071】
以上説明した実施形態ではローカル5Gにおける他社敷地600への電波の漏洩が抑制されたが、実施形態に係る無線通信システム1では、ローカル5G以外の通信規格が採用されてもよい。このような通信規格として、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等を挙げることができる。Wi-FiやBluetoothに適用する場合、基地局2に代えて親機が用いられ、CSI-RS信号に代えてビーコンやアドバタイズパケット等が用いられれば良い。
【0072】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【0073】
<コンピュータが読み取り可能な記録媒体>
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させる情報処理プログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0074】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、Compact Disc-Recordable(CD-R)、Compact Disc-Re
Writerable(CD-RW)、Digital Versatile Disc(DVD)、ブルーレイディスク(BD)、Digital Audio Tape(DAT)、8mmテープ、フラッシュメモリー、外付け型のハードディスクドライブやSolid State Drive(SSD)等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体として内蔵型のハードディスクドライブ、SSDやROM等がある。
【符号の説明】
【0075】
1・・無線通信システム
1A・・無線通信システム
2・・基地局
2A・・基地局
21・・収集部
22・・検出部
23・・更新指示部
24・・管理データベース
241・・エリア管理テーブル
242・・送信電波管理テーブル
243・・エリア・電力対応管理テーブル
244・・建物管理テーブル
245・・移動局管理テーブル
3・・移動局
3A・・移動局
31・・位置取得部
32・・姿勢取得部
33・・座標変換部
34・・算出部
35・・禁止部
36・・管理データベース
37・・応答部
38・・更新部
361・・放射角度管理テーブル
362・・建物管理テーブル
4・・建物
41・・住居
42・・工場
201・・アンテナ
202・・無線処理部
203・・制御部
204・・主記憶部
205・・補助記憶部
301・・アンテナ
302・・無線処理部
303・・制御部
304・・主記憶部
305・・補助記憶部
306・・位置センサ
307・・方位センサ
500・・自社敷地
600・・他社敷地
B1・・内部バス
B2・・内部バス
B3・・内部バス
B4・・内部バス
W10・・電波
W11・・反射波
W20・・電波
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
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図26