(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119569
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】濃度計
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20240827BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
G01N21/59 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026567
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 良一
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE12
2G059GG02
2G059JJ01
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM10
2G059MM14
2G059PP02
(57)【要約】
【課題】解析対象の薬液について効率的な解析をすること。
【解決手段】濃度計10は、投光部110と、分光部120と、受光部131と、記憶部140と、設定部132と、処理部133とを備える。投光部110は、測定対象の薬液に光を投光する。分光部120は、測定対象の薬液を透過した投光部110による光を分光する。受光部131は、分光部120によって分光された光を受光する。記憶部140は、受光部131により受光された光のデータを記憶する。設定部132は、測定対象の薬液ごとに予め定められた解析に必要なデータ数を設定する。処理部133は、記憶部140に測定対象の薬液ごとに記憶された光のデータの数である第1データ数が、設定部132により設定された解析に必要なデータ数に達した場合に処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の薬液に光を投光する投光部と、
前記測定対象の薬液を透過した前記投光部による光を分光する分光部と、
前記分光部によって分光された光を受光する受光部と、
前記受光部により受光された光のデータを記憶する記憶部と、
前記測定対象の薬液ごとに予め定められた解析に必要なデータ数を設定する設定部と、
前記記憶部に前記測定対象の薬液ごとに記憶された前記光のデータの数である第1データ数が、前記設定部により設定された解析に必要なデータ数に達した場合に処理を行う処理部と、
を備えることを特徴とする濃度計。
【請求項2】
前記処理部は、前記記憶部に記憶された前記第1データ数のデータ群の中から、所定の閾値に基づき、スペクトル強度が異常と判断したデータを切り捨てる
ことを特徴とする請求項1に記載の濃度計。
【請求項3】
前記設定部は、前記測定対象の薬液ごとに予め定められた、濃度測定処理に使用されるデータ数をさらに設定し、
前記第1データ数から前記処理部により切り捨てられたデータ数を除いた第2データ数が、前記濃度測定処理に使用されるデータ数に達しない場合に、異常通知を行う通知部をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の濃度計。
【請求項4】
前記投光部における光源の順電圧値を取得し、光源を制御する光源制御部と、
前記順電圧値と、前記受光部によって受光した光のスペクトル強度とに基づき、前記受光部により受光された光のデータの補正を行うデータ補正部とをさらに備え、
前記記憶部は、前記データ補正部により補正が行われた前記データを記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載の濃度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体のエッチング液や洗浄液といった水溶液に対して光を照射し、発光強度と水溶液を介して受光した光との強度とから水溶液の濃度を測定する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では、解析対象の薬液について効率的な解析が難しい場合があった。例えば、従来の技術では、解析する薬液種に関わらず、複数の薬液に対して同じ更新周期で解析データが出力されるため、データ採取数が少なくても計測できる薬液についても、更新周期が遅い薬液が出力される周期に合わせなければならず、待ち時間が発生することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の濃度計は、測定対象の薬液に光を投光する投光部と、測定対象の薬液を透過した投光部による光を分光する分光部と、分光部によって分光された光を受光する受光部と、受光部により受光された光のデータを記憶する記憶部と、測定対象の薬液ごとに予め定められた解析に必要なデータ数を設定する設定部と、記憶部に測定対象の薬液ごとに記憶された光のデータの数である第1データ数が、設定部により設定された解析に必要なデータ数に達した場合に処理を行う処理部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、解析対象の薬液について効率的な解析をすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る濃度計の概要を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る濃度計の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る濃度計の処理部における異常データ切り捨て処理及び通知部における異常通知処理の具体例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る濃度計の処理の具体例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る濃度計の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る濃度計の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本願に係る濃度計の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る濃度計が限定されるものではない。
【0009】
〔1.はじめに〕
図1は、本実施形態に係る濃度計の概要を示す図である。
図1の例では、本実施形態に係る濃度計による、測定対象の薬液の濃度測定処理の概要を示している。例えば、濃度計10は、変換器100と検出器200とから構成され、濃度計10は、投光部110から投光された光を、配管20を流れる測定対象の薬液に通過させ、通過した光を分光・受光し、解析することにより、薬液の濃度を測定する。そして、濃度計10は、測定した濃度を外部の端末装置30に出力する。
【0010】
濃度計10は、測定対象の薬液に光を投光し、測定対象を透過した光を分光する。その後、濃度計10は、分光された光を受光し、受光した光のデータを記憶する。そして、濃度計10は、測定対象の薬液ごとに予め定められた解析に必要なデータ数を設定し、薬液ごとに記憶された光のデータの数である第1データ数が、設定された解析に必要なデータ数に達した場合に、処理を行う。
【0011】
濃度計10は、まず、測定対象の薬液に光を投光し、測定対象の薬液を透過した光を分光する。例えば、濃度計10を構成する変換器100は、測定対象の薬液にLED(Light Emitting Diode)から出力された光を、配管20を流れる測定対象の薬液に通過させ、通過した光を分光器により各波長に分光する。
【0012】
そして、濃度計10は、分光された光を受光し、受光した光のデータを記憶する。例えば、濃度計10を構成する変換器100は、前述の分光器により分光された各波長を受光し、受光した波長のスペクトル強度等のデータを光のデータとして記憶する。
【0013】
その後、濃度計10は、測定対象の薬液ごとに予め定められた解析に必要なデータ数を設定し、測定対象の薬液ごとに記憶された光のデータの数である第1データ数が、設定された解析に必要なデータ数に達した場合に処理を行う。
【0014】
例えば、濃度計10を構成する変換器100は、測定対象の薬液ごとに予め設定された、濃度測定処理を開始するために必要なデータ数を処理部133に設定し、前述の記憶された光の波長データの数である第1データ数が、処理部133に設定したデータ数に到達した場合に、濃度測定処理を開始する。
【0015】
なお、変換器100は、例えば、外部の端末装置30と通信の送受信を行う通信部150を有し、外部に測定した濃度の値を出力してもよいし、光源の制御を行う光源制御部135の制御値の変更及び分光の制御を行う分光制御部137の制御値の変更について外部から受信してもよい。また、変換器100は、例えば、光源についての制御状況や分光についての制御状況を表示部160により表示してもよく、操作部170に備えられたボタン等の操作により、光源等の制御値の変更について受付けてもよい。
【0016】
濃度計を構成する検出器200は、投光部110から投光された光を、配管20を流れる薬液に伝える投光器210と、薬液を透過した光を分光部120に伝える受光器220とを有し、例えば、投光器210及び受光器220はレンズにより構成される。また、投光部110と投光器210及び受光器220と分光部120は、例えば、光ファイバーにより接続される。
【0017】
配管20は、測定対象の薬液が流れており、例えば、配管20の一部に光を投光することで、測定対象の水溶液の濃度が測定される。また、配管内を流れる水溶液は複数であってもよい。
【0018】
端末装置30は、濃度計10によって測定された濃度が出力される外部の端末であり、例えば、コンピュータ等により構成される。また、端末装置30は、例えば、濃度計10と通信可能に接続され、端末装置30への入力操作により、濃度計10について各種設定を行ってもよい。
【0019】
〔2.濃度計10の構成〕
次に、
図2を参照し、
図1に示した濃度計10の構成を説明する。
図2は、実施形態に係る濃度計の構成例を示す図である。
図2に示すように、実施形態に係る濃度計10は、変換器100と、検出器200とを有する。以下では、変換器100の構成について説明する。変換器100は、投光部110と、分光部120と、制御部130と、記憶部140と、通信部150とを有する。
【0020】
投光部110は、測定対象の薬液に光を投光する。例えば、投光部110は、検出器200の投光器210と光ファイバー等により接続され、LEDやハロゲンランプといった光源から出力された光を、検出器200の投光器210を介して、配管20を流れる測定対象の薬液に投光する。
【0021】
分光部120は、測定対象の薬液を透過した投光部110による光を分光する。例えば、分光部120は、検出器200の受光器220と光ファイバー等により接続され、測定対象を透過した光を、検出器200の受光器220を介して受光し、分光器により波長ごとに分光する。
【0022】
記憶部140は、例えば、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の記憶装置によって実現され、制御部130による各種処理に必要なデータ及びプログラムを格納する。また、記憶部140は、受光部131により受光された光のデータを記憶する。
【0023】
例えば、記憶部140は、後述する受光部131によって受光された各波長のスペクトル強度等のデータを、測定対象の薬液ごとに記憶する。ここで、記憶部140が記憶する各波長のデータは、複数回の投光・受光処理によって取得されたデータ群であり、測定対象の薬液ごとにデータを蓄積させる。
【0024】
さらに、記憶部140は、データ補正部136により補正が行われたデータを記憶してもよい。例えば、記憶部140は、後述するデータ補正部136により、光源についての順電圧値と受光した光のデータとから補正された各波長のデータについて記憶する。
【0025】
制御部130は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、変換器100内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路により実現される。制御部130は、受光部131と、設定部132と、処理部133とを有し、必要に応じて、通知部134と、光源制御部135と、データ補正部136とを有してもよい。
【0026】
受光部131は、分光部120によって分光された光を受光する。例えば、受光部131は、分光部120により分光された各波長の光を受光し、受光した光の波長のデータを後述する記憶部140またはデータ補正部136に、格納または通知する。
【0027】
設定部132は、薬液ごとに予め定められた解析に必要なデータ数を設定する。例えば、設定部132は、後述する濃度測定処理に使用されるデータ数を考慮して、予め設定された解析に必要なデータ数を、測定対象の薬液ごとに、後述する処理部133に設定する。なお、設定部132は、薬液ごとに1つずつ設定を行う構成部分を分割して設定してもよいし、1つの構成から全ての薬液ごとの設定を行ってもよい。
【0028】
また、設定部132は、薬液ごとに予め定められた、濃度測定処理に使用されるデータ数をさらに設定してもよい。例えば、設定部132は、濃度測定処理における予測誤差が最小となるデータ数を、濃度測定処理に使用されるデータ数として、測定対象の薬液ごとに、後述する処理部133に設定する。なお、濃度測定処理に使用されるデータ数は、前述の解析に必要なデータ数よりも小さい値であり、例えば、濃度測定処理に使用されるデータ数が「10」の場合には、解析に必要なデータ数は「100」といった関係となる。
【0029】
さらに、設定部132は、例えば、前述の操作部170または通信部150を介して外部の端末装置30から入力された、光源制御部135または分光制御部137についての制御値の変更を受付け、光源制御部135または分光制御部137の制御値の設定をしてもよい。
【0030】
処理部133は、記憶部140に測定対象の薬液ごとに記憶された光のデータの数である第1データ数が、設定部132により設定された解析に必要なデータ数に達した場合に処理を行う。例えば、処理部133は、記憶部140に記憶された前述の波長のデータ群のデータ数である第1データ数が、測定対象の薬液ごとに設定された解析に必要なデータ数に達した場合に、薬液ごとに更新周期が異なる、後述の異常データ切り捨て処理及び濃度測定処理を行う。
【0031】
また、処理部133は、記憶部140に記憶された第1データ数のデータ群の中から、所定の閾値に基づき、スペクトル強度が異常と判断したデータを切り捨ててもよい。例えば、処理部133は、記憶部140に記憶された第1データ数分の波長のデータ群の中から、所定の閾値を基準としてスペクトル強度を降順にソートし、上位データに異常データが存在する場合に、異常データを切り捨てる。
【0032】
ここで、所定の閾値は、例えば、処理に使用する素子や分解能に応じて予め設定されるものであり、スペクトル強度が異常と判断されたデータは、例えば、受光した波長のデータにおいて、気泡の影響が大きいデータ等を指す。
【0033】
通知部134は、第1データ数から処理部133により切り捨てられたデータ数を除いた第2のデータ数が、濃度測定処理に使用されるデータ数に達しない場合に、異常通知を行う。例えば、通知部134は、前述の第1データ数から処理部133によって切り捨てられたデータを除いた第2データ数が、予め設定された濃度測定処理に使用されるデータ数に達しない場合に、通信部150を介して、外部の端末装置30に異常通知を行う。
【0034】
ここで、
図3を参照し、異常データ切り捨て処理及び異常通知処理について説明する。
図3は、実施形態に係る濃度計の処理部における異常データ切り捨て処理及び通知部における異常通知処理の具体例を示す図である。
図3の例では、薬液「アンモニア」について濃度測定を行い、予め解析に必要なデータ数が「100」、濃度測定処理に必要なデータ数が「10」と設定されている。
【0035】
まず、処理部133は、記憶部140に蓄積されたアンモニアについての光のデータ数(第1のデータ数)が「100」となった場合に、第1データ数が解析に必要なデータ数「100」に達したと判断し、処理を開始する。そして、処理部133は、記憶部140に蓄積されたデータ群の中から、所定の閾値との比較により、スペクトル強度が異常と判断されたデータを切り捨てる。
【0036】
ここで、スペクトル強度が異常と判断され、切り捨てられたデータ数が「95」となった場合は、通知部134は切り捨て後のデータ数(第2データ数)「5」が濃度測定処理に使用されるデータ数「10」に達していないと判断し、通信部150を介して、外部の端末装置30に異常通知を行う。また、処理部133は、異常通知と同時に「5」データを使用して濃度演算を行い、通信部150を介して、外部の端末装置30に測定した濃度を出力する。
【0037】
一方、スペクトル強度が異常と判断されたデータが90以下である場合には、処理部133は、濃度測定処理に使用する際に最適なデータを、濃度測定処理に使用されるデータ数「10」の分だけ選択し、それ以外のデータ「90」を切り捨てる。つまり、スペクトル強度が異常と判断されたデータが90以下である場合には、切り捨てるデータ数は「90」となり、切り捨て後のデータ数(第2データ数)は「10」となる。その後、処理部133は、選択した「10」データを使用して濃度演算を行い、通信部150を介して、外部の端末装置30に測定した濃度を出力する。
【0038】
光源制御部135は、投光部110における光源が定電流となるように制御し、制御中の光源の順電圧値を取得する。例えば、投光部110が有する光源であるLEDを流れる電流が100mAとなるように制御し、その時の順電圧値を取得する。また、光源制御部135は、取得した光源の順電圧値を後述するデータ補正部136に通知する。
【0039】
データ補正部136は、順電圧値と、受光部131によって受光した光のスペクトル強度とに基づき、受光部131により受光された光のデータの補正を行う。例えば、データ補正部136は、前述の光源制御部135により通知された光源の順電圧値と、前述の受光部131により受光された波長のスペクトル強度とにより、順電圧値の誤差等による波長のデータの誤差を補正し、補正した波長のデータを記憶部140に格納する。
【0040】
通信部150は、例えば、Ethernet(登録商標)、フィールドバス等によって実現され、外部の端末装置30と有線又は無線で接続され、情報の送受信を行う。また、通信部150は、例えば、外部からの設定値の変更等の入力を受付ける入力部と、外部に濃度の測定値を出力する出力部とを有してもよい。
【0041】
〔3.実施例〕
ここで、
図4を参照し、本実施形態における濃度計10における測定対象ごとに濃度を測定する処理と測定した濃度を出力する処理とを説明する。
図4は、実施形態に係る濃度計の処理の具体例を示す図である。
図4の例では、アンモニアと過酸化水素水との濃度を測定する。そして、濃度計10による濃度測定処理が行われる前に、アンモニアの解析に必要なデータ数が「10」であり、過酸化水素水の解析に必要なデータ数が「500」であることが設定されている。
【0042】
濃度計10は、まず、設定部132により、処理部133に対して「アンモニアの解析用データ数が10」及び「過酸化水素水の解析用データ数が500」であることを、それぞれ処理部133の一部である「アンモニア濃度処理部」及び「過酸化水素水濃度処理部」に設定する。
【0043】
その後、濃度計10は、測定対象の薬液であるアンモニア及び過酸化水素水について、前述の光を投光する処理から光のデータを記憶する処理までをそれぞれ行う。そして、記憶部140に過酸化水素水の蓄積されたデータ数(第1データ数)と、アンモニアの蓄積されたデータ数(第1データ数)とが、それぞれ「10」となったときに、アンモニア濃度処理部は、アンモニアの第1データ数「10」が、アンモニア解析用データ数「10」に到達したと判断して、蓄積されたデータを使用し濃度測定処理を行う。
【0044】
一方で、過酸化水素水濃度処理部は、過酸化水素水の蓄積されたデータ数(第1データ数)は「10」であり、過酸化水素水解析用データ数「500」に到達していないため、濃度測定処理を行わない。
【0045】
そして、アンモニア濃度測定処理部により濃度が測定された後、通信部150の一部であるアンモニア濃度出力部に、測定されたアンモニア濃度が通知される。さらに、アンモニア濃度出力部により、通知されたアンモニア濃度が外部の端末装置30に出力される。
【0046】
これにより、解析に必要なデータ数が過酸化水素水の50分の1であるアンモニアは、蓄積されたデータ数が「10」となる度に濃度を測定することができるため、過酸化水素水よりも50倍速い更新周期で濃度値を更新することができる。
【0047】
〔4.濃度計による処理の一例〕
次に、
図5を用いて、濃度計10よる処理について説明する。
図5は、実施形態に係る濃度計の処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、設定部132は、測定対象の薬液ごとに予め設定された解析に必要なデータ数を設定する(ステップS101)。
【0048】
その後、投光部110は、測定対象の薬液に光を投光する(ステップS102)。そして、分光部120は、測定対象を透過した光を分光する(ステップS103)。その後、受光部131は、分光された光を受光する(ステップS104)。そして、記憶部140は、受光された光のデータを記憶する(ステップS105)。
【0049】
その後、処理部133は、測定対象の薬液ごとに記憶部140に蓄積された光のデータ数である第1データ数が、解析に必要なデータ数に到達したか否かを判断する(ステップS106)。第1データ数が、解析に必要なデータ数に到達した場合には(ステップS106;Yes)、処理部133は、濃度演算処理を行い(ステップS107)、濃度計10は工程を終了する。一方、第1データ数が、解析に必要なデータ数に到達していない場合には(ステップS106;No)、処理部133は、第1データ数が解析に必要なデータ数に到達するまで待機する。
【0050】
次に、
図6を用いて、濃度計10において、記憶されたデータの中から、異常データを切り捨てる処理及び異常通知を行う処理を含む場合の処理手順について説明する。
図6は、実施形態に係る濃度計の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0051】
まず、記憶部140が、設定部132により設定された解析に必要なデータ数である第1データ数分のスペクトルデータ(光のデータ)を記憶する(ステップS201)。そして、処理部133は、所定の波長のスペクトル強度を基準に、スペクトルデータを降順にソートする(ステップS202)。その後、処理部133は、上位データに異常データが存在するか否かを判断する(ステップS203)。
【0052】
上位データに異常データが存在する場合には(ステップS203;Yes)、処理部133は、異常データを切り捨てる(ステップS204)。そして、ステップS204の工程の後、または、上位データに異常データが存在しない場合には(ステップS203;No),処理部133は、異常データを切り捨てた後のデータ数である第2データ数が、濃度測定処理に使用されるデータ数に到達したか否かを判断する(ステップS205)。
【0053】
第2データ数が、濃度測定処理に使用されるデータ数に到達していない場合には(ステップS205;No)、通知部134は、異常通知を行う(ステップS206)。そして、ステップS206の工程の後、または、第2データ数が、濃度測定処理に使用されるデータ数に到達した場合には(ステップS205;Yes)、処理部133は、濃度演算処理を行い(ステップS207)、濃度計10は工程を終了する。
【0054】
〔5.実施形態の効果〕
前述してきたように、本実施形態に係る濃度計10は、投光部110と、分光部120と、受光部131と、記憶部140と、設定部132と、処理部133とを備える。投光部110は、測定対象の薬液に光を投光する。分光部120は、測定対象を透過した投光部110による光を分光する。
【0055】
受光部131は、分光部120によって分光された光を受光する。記憶部140は、受光部131により受光された光のデータを記憶する。設定部132は、薬液ごとに予め定められた解析に必要なデータ数を設定する。処理部133は、記憶部140に薬液ごとに記憶された光のデータの数である第1データ数が、設定部132により設定された解析に必要なデータ数に達した場合に処理を行う。
【0056】
これにより、濃度計10は、測定対象の薬液ごとに濃度の更新周期が異なる場合に、各薬液の濃度更新周期に合わせて濃度を出力し、濃度更新をすることができるため、データ採取数が少なくても解析することができる薬液について、解析時間を短縮することができるという効果を奏する。
【0057】
また、濃度計10の処理部133は、記憶部140に記憶された第1データ数のデータ群の中から、所定の閾値に基づき、スペクトル強度が異常と判断したデータを切り捨てる。これにより、濃度計10は、スペクトル強度が異常であるデータを切り捨てて、正常なデータのみを使用して濃度測定処理を行うことができるため、精度の高い濃度測定処理を行うことができるという効果を奏する。
【0058】
さらに、濃度計10の設定部132は、薬液ごとに予め定められた、濃度測定処理に使用されるデータ数をさらに設定し、濃度計10の通知部134は、第1データ数から処理部133により切り捨てられたデータ数を除いた第2データ数が、濃度測定処理に使用されるデータ数に達しない場合に、異常通知を行う。
【0059】
これにより、濃度計10は、投光処理から受光処理までの処理に不具合が生じたこと等により、切り捨てられたデータが想定よりも多くなり、第2データ数が濃度測定処理に使用されるデータ数に達しない場合に、濃度計の処理に何らかの異常が発生したことを外部に通知することができるという効果を奏する。
【0060】
また、濃度計10の光源制御部135は、投光部110における光源に定電流が流れるように制御しながら、その時の順電圧値を取得し、濃度計10のデータ補正部136は、順電圧値と、受光部131によって受光した光のスペクトル強度とに基づき、受光部131により受光された光のデータの補正を行う。そして、濃度計10の記憶部140は、データ補正部136により補正が行われたデータを記憶する。
【0061】
これにより、濃度計10は、光源であるLEDについての順電圧値を取得して、順電圧値の誤差等による光のデータの誤差を補正することができるため、精度の高い濃度測定処理を行うことができるという効果を奏する。
【0062】
[6.その他]
前述の実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0063】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の通り構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0064】
前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述してきた実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0065】
また、前述してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」等に読み替えることができる。例えば、制御部は、制御手段や制御回路に読み替えることができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 濃度計
20 配管
30 端末装置
100 変換器
110 投光部
120 分光部
130 制御部
131 受光部
132 設定部
133 処理部
134 通知部
135 光源制御部
136 データ補正部
137 分光制御部
140 記憶部
150 通信部
160 表示部
170 操作部
200 検出器
210 投光器
220 受光器