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特開2024-119574防水シート、樹脂組成物及びシーリング材
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  • 特開-防水シート、樹脂組成物及びシーリング材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119574
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】防水シート、樹脂組成物及びシーリング材
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20240827BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20240827BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240827BHJP
   E04D 5/06 20060101ALI20240827BHJP
   E04B 1/66 20060101ALI20240827BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L33/04
C08L67/00
E04D5/06 B
E04B1/66 A
E04B1/00 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026576
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】天牛 英清
(72)【発明者】
【氏名】別宮 浩之
【テーマコード(参考)】
2E001
4J002
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001FA13
2E001FA16
2E001GA24
2E001HD13
2E001MA01
4J002BD041
4J002BD061
4J002BD071
4J002BG042
4J002BG052
4J002BG062
4J002CF032
4J002FD022
4J002GJ02
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】耐久性が高い防水シートを提供する。また、このような防水シートの成形に用いられる樹脂組成物、及び、このような防水シートのシーリングに用いられるシーリング材を提供する。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含み、可塑剤は、ゴルドニア(Gordonia)属のバクテリアと共に下記条件で培養した後の分解率が40%以下である防水シート。
(条件)
可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’sLB培地でバクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
[分解率]=(A-B)/A×100
(式中、Aは培養前の混合液に含まれる可塑剤量を表し、Bは培養後の混合液に含まれる可塑剤量を表す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含み、
前記可塑剤は、ゴルドニア(Gordonia)属のバクテリアと共に下記条件で培養した後の分解率が40%以下である防水シート。
(条件)
可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’s LB培地で前記バクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
[分解率]=(A-B)/A×100
(式中、Aは培養前の前記混合液に含まれる可塑剤量を表し、Bは培養後の前記混合液に含まれる可塑剤量を表す)
【請求項2】
塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含み、
前記可塑剤は、ロドコッカス(Rhodococcus)属のバクテリアと共に下記条件で培養した後の分解率が10%以下である防水シート。
(条件)
可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’s LB培地で前記バクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
[分解率]=(A-B)/A×100
(式中、Aは培養前の前記混合液に含まれる可塑剤量を表し、Bは培養後の前記混合液に含まれる可塑剤量を表す)
【請求項3】
前記可塑剤は、重量平均分子量が800以上5000以下である請求項1又は2に記載の防水シート。
【請求項4】
前記可塑剤は、ポリエステル系重合体及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体のいずれか一方又は両方である請求項3に記載の防水シート。
【請求項5】
前記可塑剤は、側鎖に官能基を有さない請求項4に記載の防水シート。
【請求項6】
前記可塑剤は、ガラス転移点Tgが-100℃以上-30℃以下である請求項4に記載の防水シート。
【請求項7】
前記塩化ビニル系樹脂100.0質量部に対して、前記可塑剤を20.0質量部以上90.0質量部以下含む請求項1又は2に記載の防水シート。
【請求項8】
さらに、安定剤を含む請求項1又は2に記載の防水シート。
【請求項9】
塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含み、
前記可塑剤は、ゴルドニア(Gordonia)属のバクテリアと共に下記条件で培養した後の分解率が40%以下である樹脂組成物。
(条件)
可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’s LB培地で前記バクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
[分解率]=(A-B)/A×100
(式中、Aは培養前の前記混合液に含まれる可塑剤量を表し、Bは培養後の前記混合液に含まれる可塑剤量を表す)
【請求項10】
塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、溶媒とを含み、
前記可塑剤は、ゴルドニア(Gordonia)属のバクテリアと共に下記条件で培養した後の分解率が40%以下であるシーリング材。
(条件)
可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’s LB培地で前記バクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
[分解率]=(A-B)/A×100
(式中、Aは培養前の前記混合液に含まれる可塑剤量を表し、Bは培養後の前記混合液に含まれる可塑剤量を表す)
【請求項11】
塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含み、
前記可塑剤は、ロドコッカス(Rhodococcus)属のバクテリアと共に下記条件で培養した後の分解率が10%以下である樹脂組成物。
(条件)
可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’s LB培地で前記バクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
[分解率]=(A-B)/A×100
(式中、Aは培養前の前記混合液に含まれる可塑剤量を表し、Bは培養後の前記混合液に含まれる可塑剤量を表す)
【請求項12】
塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、溶媒とを含み、
前記可塑剤は、ロドコッカス(Rhodococcus)属のバクテリアと共に下記条件で培養した後の分解率が10%以下であるシーリング材。
(条件)
可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’s LB培地で前記バクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
[分解率]=(A-B)/A×100
(式中、Aは培養前の前記混合液に含まれる可塑剤量を表し、Bは培養後の前記混合液に含まれる可塑剤量を表す)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シート、樹脂組成物及びシーリング材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の高耐久化が求められるに伴って、多くの建築物の屋上やベランダ等において、防水シート(樹脂シート)を敷設施工したシート防水構造が採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このシート防水構造は、例えば、防水シートと複数の固定ディスクとを備えるものであり、躯体の少なくとも一部に敷設された防水シートを、固定ディスクを介して、躯体に対して接合(固定)する構成とする。これにより、躯体に対する雨水等に対する防水性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-53517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記防水シートは、例えば、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有する樹脂組成物を形成材料とする。このような樹脂組成物を用いた防水シートでは、防水シートから可塑剤が経年的に失われた結果、防水シートの柔軟性が低下して亀裂や破断が生じ、防水性が低下すると言う課題が知られている。防水シートから可塑剤が失われる原因としては、例えば、雨水や、日光に曝されることによる可塑剤の漏出(ブリードアウト)が知られている。
【0006】
そのため、防水シートに含まれる可塑剤の低減が抑制され、耐久性が高い防水シートの開発が求められていた。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、耐久性が高い防水シートを提供することを目的とする。また、このような防水シートの成形に用いられる樹脂組成物、及び、このような防水シートのシーリングに用いられるシーリング材を提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
防水シートに用いられる可塑剤には、土壌中のバクテリア(菌)により分解を受けるものがあることが知られている。また、防水シートは基本的に屋外において使用するものであり、バクテリアを含む土や土埃に曝されるため、屋内で用いる樹脂成形体と比べバクテリアの影響を強く受けると想定される。
【0009】
発明者らはこの点に着目し、防水シートに含まれる可塑剤について、バクテリアによる分解度合いを指標とすることで、耐久性が高い防水シートが得られると考え鋭意検討を行い、発明を完成させた。
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
【0011】
[1]塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含み、前記可塑剤は、ゴルドニア(Gordonia)属のバクテリアと共に下記条件で培養した後の分解率が40%以下である防水シート。
(条件)
可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’sLB培地で前記バクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
[分解率]=(A-B)/A×100
(式中、Aは培養前の前記混合液に含まれる可塑剤量を表し、Bは培養後の前記混合液に含まれる可塑剤量を表す)
【0012】
[2]塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含み、前記可塑剤は、ロドコッカス(Rhodococcus)属のバクテリアと共に下記条件で培養した後の分解率が10%以下である防水シート。
(条件)
可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’sLB培地で前記バクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
[分解率]=(A-B)/A×100
(式中、Aは培養前の前記混合液に含まれる可塑剤量を表し、Bは培養後の前記混合液に含まれる可塑剤量を表す)
【0013】
[3]前記可塑剤は、重量平均分子量が800以上5000以下である[1]又は[2]に記載の防水シート。
【0014】
[4]前記可塑剤は、ポリエステル系重合体及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体のいずれか一方又は両方である[3]に記載の防水シート。
【0015】
[5]前記可塑剤は、側鎖に官能基を有さない[4]に記載の防水シート。
【0016】
[6]前記可塑剤は、ガラス転移点Tgが-100℃以上-30℃以下である[4]又は[5]に記載の防水シート。
【0017】
[7]前記塩化ビニル系樹脂100.0質量部に対して、前記可塑剤を20.0質量部以上90.0質量部以下含む[1]から[6]のいずれか1項に記載の防水シート。
【0018】
[8]さらに、安定剤を含む[1]から[7]のいずれか1項に記載の防水シート。
【0019】
[9]塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含み、前記可塑剤は、ゴルドニア(Gordonia)属のバクテリアと共に下記条件で培養した後の分解率が40%以下である樹脂組成物。
(条件)
可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’sLB培地で前記バクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
[分解率]=(A-B)/A×100
(式中、Aは培養前の前記混合液に含まれる可塑剤量を表し、Bは培養後の前記混合液に含まれる可塑剤量を表す)
【0020】
[10]塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、溶媒とを含み、前記可塑剤は、ゴルドニア(Gordonia)属のバクテリアと共に下記条件で培養した後の分解率が40%以下であるシーリング材。
(条件)可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’sLB培地で前記バクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
[分解率]=(A-B)/A×100
(式中、Aは培養前の前記混合液に含まれる可塑剤量を表し、Bは培養後の前記混合液に含まれる可塑剤量を表す)
【0021】
[11]塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含み、前記可塑剤は、ロドコッカス(Rhodococcus)属のバクテリアと共に下記条件で培養した後の分解率が10%以下である樹脂組成物。
(条件)
可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’sLB培地で前記バクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
[分解率]=(A-B)/A×100
(式中、Aは培養前の前記混合液に含まれる可塑剤量を表し、Bは培養後の前記混合液に含まれる可塑剤量を表す)
【0022】
[12]塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、溶媒とを含み、前記可塑剤は、ロドコッカス(Rhodococcus)属のバクテリアと共に下記条件で培養した後の分解率が10%以下であるシーリング材。
(条件)
可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’sLB培地で前記バクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
[分解率]=(A-B)/A×100
(式中、Aは培養前の前記混合液に含まれる可塑剤量を表し、Bは培養後の前記混合液に含まれる可塑剤量を表す)
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、耐久性が高い防水シートを提供することができる。また、このような防水シートの成形に用いられる樹脂組成物、及び、このような防水シートのシーリングに用いられるシーリング材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本実施形態の防水シート、樹脂組成物及びシーリング材を用いて躯体に施されたシート防水構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1を参照しながら、本実施形態に係る防水シート、樹脂組成物及びシーリング材について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0026】
図1は、本実施形態の防水シート、樹脂組成物及びシーリング材を用いて躯体に施されたシート防水構造を示す斜視図である。シート防水構造10は、躯体100と、第1防水シート30と、配置部材50と、第2防水シート70とを有する。第1防水シート30と第2防水シート70とは、いずれも本発明の「防水シート」に相当する。
【0027】
シート防水構造10においては、躯体100と、躯体100の上に配置された配置部材50とを覆って、第1防水シート30が設けられている。さらに、第1防水シート30の表面には、平面視で配置部材50と躯体100とにまたがって、第2防水シート70が設けられている。これら、第1防水シート30、配置部材50及び第2防水シート70は、相互に密着して躯体100の表面を覆っている。これにより、シート防水構造10では、躯体100を防水している。
【0028】
[躯体]
躯体100は、防水構造を付与される対象物であり、床部101と、床部101の縁において立設する壁部102とを有する。
【0029】
[配置部材]
配置部材50は、配置部材50は、矩形状をなす底部51と、底部51の長辺の端部に接続された立ち上がり部52とを有する。配置部材50は、長辺に交差する仮想面における断面において、躯体100の床部101と壁部102との境界部と同様に屈曲している。配置部材50は、躯体100の床部101と壁部102との境界部に配置されている。
【0030】
配置部材50は、金属板と、金属板の表面を被覆する樹脂層とで構成される。
【0031】
配置部材50の材料である金属板は、例えば、ステンレス鋼板、鉄板のような鋼板、アルミ板、銅板等で構成される。配置部材50の剤量としては、鋼板が好ましい。
【0032】
配置部材50の材料である金属板の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上3mm以下程度であるのが好ましく、0.3mm以上2.5mm以下程度であるのがより好ましい。
【0033】
配置部材50の樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、塩化ビニル系樹脂であるのが好ましく、ポリ塩化ビニルがより好ましい。ポリ塩化ビニルは、溶剤を用いて溶着しやすく、また熱融着も容易である。そのため、配置部材50と第1防水シート30とを密着しやすく、容易に防水構造を形成可能である。
【0034】
また、樹脂層にこれらの樹脂を用いた配置部材50は、金属板の腐食を抑制しやすい。
【0035】
さらに、配置部材50が有する樹脂層の材料は、後述する防水シート30を構成する樹脂と同種または同一であることが好ましい。これにより、配置部材50と防水シート30とを密着させやすくなる。同様に、樹脂層を構成する樹脂には、後述する防水シート30を構成する樹脂組成物と同様の添加物が含まれていてもよい。
【0036】
樹脂層の厚さは特に限定されないが、0.1mm以上であると好ましく、0.3mm以上0.8mm以下であるとより好ましい。これにより、防水シート30が風で煽られることに起因して、樹脂層に応力が作用したとしても、樹脂層に亀裂や破断が生じるのを的確に抑制することができる。
【0037】
[防水シート]
シート防水構造10は、防水シートとして、第1防水シート30と第2防水シート70とを含む。
【0038】
[第1防水シート]
第1防水シート30は、躯体100と配置部材50との表面を覆っている。第1防水シート30は、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤とを含む。第1防水シート30は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含む樹脂組成物をシート状に成形した成形体である。
【0039】
(塩化ビニル系樹脂)
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルを含む重合体であれば特に限定されるものではない。塩化ビニル系樹脂としては、モノマーである塩化ビニルの単独重合体(ホモポリマー)、又は塩化ビニルと、塩化ビニルと共重合可能なモノマーとの共重合体(コポリマー)を挙げることができる。塩化ビニルと教授号可能名モノマーとしては、エチレン、プロピレンを挙げることができる。
【0040】
塩化ビニル系樹脂としては、上記ホモポリマー又はコポリマーに、他の重合体がグラフト重合した重合体であってもよい。また、塩化ビニル系樹脂としては、上記重合体の1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0041】
また、後述する可塑剤のブリードアウトを抑止するため、塩化ビニル系樹脂は、分岐構造を有さず直鎖状であることが好ましい。
【0042】
(可塑剤)
可塑剤は、防水シートに柔軟性を付与するために含有される。一方、防水シートに用いられる可塑剤には、土壌中のバクテリア(菌)により分解を受けるものがあることが知られている。防水シートは基本的に屋外において使用するものであり、バクテリアを含む土や土埃に曝されるため、屋内で用いる樹脂成形体と比べバクテリアの影響を強く受けると想定される。
【0043】
発明者らはこの点に着目し、防水シートに含まれる可塑剤について、バクテリアによる分解度合いを指標とすることで、耐久性が高い防水シートが得られると考え鋭意検討を行い、発明を完成させた。
【0044】
すなわち、本実施形態の防水シートは、可塑剤として、下記の条件で測定した分解率が規定以下であるものを含む。
(条件)
可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’s LB培地でバクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養する。
培養前の混合液に含まれる可塑剤量をA、培養後の混合液に含まれる可塑剤量をBとしたとき、分解率は下記式で表される。
[分解率]=(A-B)/A×100
【0045】
培養するバクテリアとして、ゴルドニア(Gordonia)属のバクテリアを用いた場合、本実施形態の防水シートは、分解率が40%以下である可塑剤を含む。
また、培養するバクテリアとして、ロドコッカス(Rhodococcus)属のバクテリアを用いた場合、本実施形態の防水シートは、分解率が10%以下である可塑剤を含む。
【0046】
上記分解率を求める際に用いるバクテリア(ゴルドニア、ロドコッカス)は、土壌に含まれるバクテリアとして一般的な好気性細菌である。以下の説明においては、上記分解率を求める際に用いる土壌中のバクテリアを「土壌バクテリア」と称することがある。土壌バクテリアは、防水シートの施工場所として想定される通常の屋外環境の土壌に含まれる。そのため、防水シートを屋外で使用していると、可塑剤がこれらの土壌バクテリアにより分解され、防水シートの柔軟性が徐々に失われると考えられる。防水シートの柔軟性が失われると、防水シートに亀裂や破断が生じ易く、防水性能の低下につながる。
【0047】
対して、本発明の防止シートでは、上記分解率の要件を満たす可塑剤を含むこととしている。これにより、上記分解率の要件を満たさない可塑剤を含む防水シートと比べ、屋外使用時に可塑剤の含有量が低減しにくく、防水性能を維持しやすい。
【0048】
このような可塑剤としては、重量平均分子量が800以上5000以下である化合物が好ましく、1000以上3500以下である化合物がより好ましい。
【0049】
また、このような可塑剤としては、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系重合体及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることもできる。なかでも、可塑剤としては、ポリエステル系重合体又は(メタ)アクリル酸エステル系重合体のいずれか一方又は両方が好ましい。さらに、防水シートの屋外暴露時における汚れの付着を防止する観点から(メタ)アクリル酸エステル系重合体がより好ましい。
【0050】
(エポキシ系可塑剤)
エポキシ系可塑剤としては、不飽和脂肪酸エステルをエポキシ化した化合物を用いることができる。エポキシ系可塑剤としては、エポキシ化大豆油(分子量950)、エポキシ化アマニ油(分子量950)を用いることができる。
【0051】
このようなエポキシ系可塑剤としては、例えば、新日本理化株式会社製のエポキシ系可塑剤(商品名:サンソサイザー)や、株式会社ADEKA製のエポキシ系可塑剤(商品名:アデカサイザー)のような市販品を用いることができる。
【0052】
(ポリエステル系重合体)
ポリエステル系重合体としては、多価アルコールと多価カルボン酸との重合体を用いることができる。ポリエステル系重合体は、分子末端が1価アルコールやモノカルボン酸で封止されていてもよい。
【0053】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-へキサンジオール、1,6-へキサンジオール、及びネオペンチルグリコールを挙げることができる。
【0054】
多価カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸を挙げることができる。
【0055】
ポリエステル系重合体としては、例えば、ポリ(エチレングリコール/アジピン酸)エステル、ポリ(1,3ブタンジオール/アジピン酸)エステル、ポリ(プロピレングリコール/セバシン酸)エステルを挙げることができる。
【0056】
このようなポリエステル系重合体としては、例えば、株式会社ADEKA製のポリエステル系可塑剤(商品名:アデカサイザー)や、DIC株式会社製のポリエステル系可塑剤(商品名:ポリサイザー)のような市販品を用いることができる。
【0057】
((メタ)アクリル酸エステル系重合体)
(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー主成分とする重合体である。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの双方を含む意味で用いる。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体が共重合体である場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。共重合体における共重合モノマーは、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレン又はプロピレンを挙げることができる。
【0059】
また(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、側鎖がグラフト重合されたグラフト共重合体であってもよい。
【0060】
モノマーである(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステルを挙げることができる。
【0061】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルが挙げられる。
【0062】
(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。
【0063】
(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、(メタ)アクリル酸フェニルが挙げられる。
【0064】
これら(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
これらの中でも、モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルが好ましい。可塑剤として、これらのモノマーの重合体を用いることで、可塑剤の防水シートからの漏出をより的確に抑制できる。
【0066】
このような(メタ)アクリル酸エステル系重合体としては、例えば、東亞合成株式会社製のアクリルポリマー(商品名:アルフォン)のような市販品を用いることができる。
【0067】
上記可塑剤は、無官能のホモポリマーであることが好ましい。このような可塑剤は、防水シートから漏出しにくく好ましい。
【0068】
さらに、無官能のホモポリマーは、ガラス転移点Tgが-100℃以上-30℃以下であるのが好ましく、-95℃以上-75℃以下であるのがより好ましい。
【0069】
ガラス転移点Tgが上述の範囲内であるホモポリマー(可塑剤)は、防水シートから漏出しにくく好ましい。
【0070】
防水シート中における可塑剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル系樹脂100.0重量部に対して、20.0重量部以上90.0重量部以下であることが好ましく、50.0重量部以上75.0重量部以下であることがより好ましい。これにより、防水シートに優れた柔軟性を確実に付与することができ、かつ、躯体100への水の浸入を防止する防水シートとしての機能を確実に発揮させることができる。また、主材料である塩化ビニル系樹脂により可塑剤を保持し、第1防水シート30からの可塑剤の漏出をより抑制できる。
【0071】
(その他の可塑剤)
その他の可塑剤として、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、芳香族カルボン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤等の低分子可塑剤を用いることができる。
【0072】
フタル酸エステル系可塑剤としては、DINP(ジイソノニルフタレート)、DOP(ジオクチルフタレート)、DIBP(ジイソブチルフタレート)、DHP(ジヘプチルフタレート)を挙げることができる。
【0073】
脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤としては、DOA(ジ-2-エチルヘキシルアジペート)、DIDA(ジイソデシルアジペート)、DOS(ジ-2-エチルヘキシルセバセート)を挙げることができる。
【0074】
芳香族カルボン酸エステル系可塑剤としては、エチレングリコールのベンゾエート類を挙げることができる。
【0075】
トリメリット酸エステル系可塑剤としては、TOTM(トリオクチルトリメリテート)を挙げることができる。
【0076】
上記低分子可塑剤を用いる場合、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
第1防水シート30が上記低分子可塑剤を含むことで、第1防水シート30の表面に汚れが付着しにくくなる。
【0078】
(その他添加剤)
また、第1防水シート30は、安定剤、安定助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加工助剤、滑剤、充填材、難燃剤、遮蔽材及び色材等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0079】
安定剤としては、例えば、有機スズ系安定剤、有機シリコーン系安定剤、ブチルステアレート等のエステル系安定剤、カルシウム-亜鉛系安定剤、バリウム-亜鉛系安定剤、バリウム-カドミウム系安定剤等が挙げられる。
【0080】
この場合の安定助剤としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリキシリル(TXP)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸2-エチルヘキシル・ジフェニルのような有機リン酸エステル等が挙げられる。
【0081】
第1防水シート30に含まれる酸化防止剤、紫外線吸収剤、加工助剤、滑剤、充填材、難燃剤、遮蔽材及び色材としては、塩化ビニル系樹脂を用いた成形体に用いられる添加物として公知の材料を適宜採用可能である。
【0082】
第1防水シート30は、上述した構成材料で構成される樹脂シートであってもよく、樹脂シートと繊維シート(繊維層)とが積層された積層体であってもよい。例えば、一対の樹脂シートで繊維シートを挟持した積層体であってもよい。
【0083】
繊維層は、繊維の集合体で構成されたものであり、例えば、織布や不織布等のクロス、縦糸と横糸とで複数の格子を形成したネット等の繊維シートが挙げられる。第1防水シート30が繊維層を備えることにより、第1防水シートの強度及び耐久性を向上させることができる。
【0084】
第1防水シート30の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上3mm以下が好ましく、0.8mm以上3mm以下がより好ましい。
【0085】
[樹脂組成物]
上記第1防水シート30は、塩化ビニル系樹脂と、上記分解率の要件を満たす可塑剤とを含む樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0086】
第1防水シート30が上記樹脂シートである場合、第1防水シート30は、公知のロールシート又はロールプレスシートとして製造することができる。また、第1防水シート30が樹脂シートと繊維シートとの積層体である場合、ロールシートである樹脂シートと繊維シートとを積層した上で、プレス加工することにより製造することができる。
【0087】
[第2防水シート]
第2防水シート70は、平面視矩形の短冊状の部材である。第2防水シート70は、床部101と底部51との境界部において第1防水シート30の表面に形成された段差部31を覆っている。
【0088】
第2防水シート70は、上記第1防水シート30と同じく、塩化ビニル系樹脂と、上記分解率の要件を満たす可塑剤とを含むことが好ましい。第2防水シート70と第1防水シート30とは、例えば同じロールシートから切り出して作製してもよい。
【0089】
第1防水シート30において段差部31が形成されている部分では、段差部31が形成されていない部分と比べて加わる応力が大きい。また、段差部31には土埃が貯まりやすく、土埃に含まれる土壌バクテリアにより第1防水シート30に含まれる可塑剤が分解されやすい。これにより、段差部31においては、第1防水シート30に亀裂や破断等が生じ易いと考えられる。
【0090】
そのため、段差部31において亀裂や破断が生じた部分や、亀裂や破断が生じると予測される部分に選択的に第2防水シート70を貼付することで、防水性能の維持及び向上を図ることができる。
【0091】
[シーリング材]
また、シート防水構造10において、第2防水シート70の周縁部には、第1防水シート30と第2防水シート70とを接合するシーリング部が形成されていてもよい。シーリング部は、ペースト状のシーリング材を塗工し、乾燥させることにより形成することができる。
【0092】
シーリング材は、塩化ビニル系樹脂と、上記分解率の要件を満たす可塑剤と、溶媒とを含む。
【0093】
シーリング材に含まれる溶媒としては、塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を溶解可能であれば特に限定されない。溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、トルエン、o-キシレンのような炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソブチルのようなエステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)のようなエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノールのようなアルコール系溶媒が挙げられる。
【0094】
以上のような構成の防水シートによれば、土壌バクテリアによる可塑剤の分解が抑制され、耐久性が高い防水シートとなる。また、以上のような構成の樹脂組成物、シーリング材は、このように耐久性が高い防水シートの成形に用いられる樹脂組成物、及び、耐久性が高いシーリング材となる。
【0095】
なお、本実施形態においては、第1防水シート30と第2防水シート70との両方が、塩化ビニル系樹脂と、上記分解率の要件を満たす可塑剤とを含む本発明の防水シートであることとしたが、これに限らない。第1防水シート30と第2防水シート70とのいずれか一方でも本発明の防水シートとすることで、本発明の効果を奏することができる。
【0096】
また、本実施形態においては、第1防水シート30と第2防水シート70とを有することとしたが、第2防水シート70は省略することもできる。
【0097】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計、仕様等に基づき種々変更可能である。
【実施例0098】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0099】
本実施例においては、以下の材料を用いた。なお、可塑剤の分子量は、メーカカタログ値を用いた。
【0100】
(塩化ビニル系樹脂)
塩化ビニル系樹脂:塩化ビニルのホモポリマー(重合度1300(メーカカタログ値)、平均粒径1μm)
【0101】
(可塑剤)
可塑剤1:ポリエステル系可塑剤(ポリサイザーW-2640-S、平均分子量2600、DIC株式会社製)
可塑剤2:無官能のアクリル酸エステル重合体(アルフォンUP-1021、平均分子量1600,東亞合成株式会社製)
可塑剤3:エポキシ化大豆油(O-130P、平均分子量950、株式会社ADEKA製)
可塑剤4:TOTM(トリオクチルトリメリテート)(株式会社ジェイ・プラス製)、分子量550
可塑剤5:DINP(ジイソノニルフタレート)(株式会社ジェイ・プラス製)、分子量420
可塑剤6:DOP(ジオクチルフタレート)(株式会社ジェイ・プラス製)、分子量390
【0102】
(可塑剤の分解率評価)
用いた各可塑剤について、可塑剤0.1%(w/v)を添加したMS培地10mlに、1/2濃度のMiller’s LB培地でバクテリアを24時間培養した培養液を10μL加え、得られた混合液を撹拌速度121rpm、30℃で48時間培養した。
培養前の混合液に含まれる可塑剤量をA、培養後の混合液に含まれる可塑剤量をBとしたとき、下記式から分解率を求めた。
[分解率]=(A-B)/A×100
【0103】
培養するバクテリアとして、ゴルドニア(Gordonia)属のバクテリアと、ロドコッカス(Rhodococcus)属のバクテリアと、を用いた。
【0104】
なお、MS培地は以下の組成であり、pH7.0であった。
KHPO :1.5g/L
NaHPO :1.5g/L
MgSO・7HO:0.2g/L
ZnSO・7HO:0.002g/L
CaCl・2HO:0.01g/L
FeSO・7HO:0.005g/L
MnSO・4HO:0.002g/L
NHNO :1.0g/L
【0105】
求めた分解率について、下記基準に従って評価した。
A:3%以下
B:3%を超え10%以下
C:10%を超え40%以下
D:40%を超える
【0106】
(添加剤)
安定剤:バリウム-亜鉛系安定剤(堺化学工業社製)
遮蔽材:酸化チタン
充填材:炭酸カルシウム
色材:カーボンブラック(三菱カーボンブラック#45、三菱ケミカル株式会社製)
【0107】
[実施例1~3,比較例1~3]
表1に示す量の材料を秤量し、ミキサーを用いて25℃で均一に混合して樹脂組成物を得た。表1の数値は、重量部を示す。
【0108】
次いで、樹脂組成物を用い、8インチ2本ロールで0.7mm厚シート状に成形した後、2.0mm厚に熱プレスすることで、実施例及び比較例の防水シートを得た。
【0109】
(バクテリア処理)
得られた防水シートを60mm×80mmに切削して試験片を作製し、得られた試験片をバクテリア培養液に48時間浸漬した。バクテリア培養液は、上記(可塑剤の分解率評価)と同じく、1/2濃度のMiller’s LB培地でバクテリアを24時間培養した培養液を用いた。
【0110】
(防水シートの引張伸び率)
得られた防水シートについて、JIS A6008に従って引張伸び率を評価した。測定時の温度は20℃、引張速度は200mm/minであった。
未処理の防水シート(未処理品)の引張伸び率を100%したときの、処理後の防水シート(処理品)の残存伸び率(%)を下記式に基づいて求めた。
残存伸び率(%)=[処理品の引張伸び率]/[未処理品の引張伸び率]×100
【0111】
求めた引張伸び率について、下記基準に従って評価した。
A:90%以上
B:70%以上90%未満
C:70%未満
【0112】
【表1】
【0113】
実施例1~3の防水シートで用いた可塑剤は、バクテリアによる分解率が本発明の基準を満たしているため、防水シートを屋外で用いたときに、可塑剤が低減しにくく耐久性が高いと想定される。
【0114】
引張伸び率を求めたところ、実施例1~3の防水シートは、いずれも70%以上の引張伸び率であったのに対し、比較例1~3の防水シートでは引張伸び率がいずれも70%を下回っていた。防水シートの伸び率が低いほど、シートが破断しやすくなり、漏水につながると考えられることから、実施例1~3の各防水シートは、比較例1~3の各防水シートよりも耐久性が高い防水シートになると考えられる。
【0115】
また、上記耐久性の違いは、用いた可塑剤がバクテリアに分解されやすいか否かによる違いであると考えられる。そのため、実施例1~3で用いた(本発明において規定する分解率の要件を満たす)可塑剤を用いた樹脂組成物及びシーリング材は、上記防水シートと同様に、耐久性が高い樹脂組成物及びシーリング材となると想定される。
【0116】
以上より、本発明が有用であることが確かめられた。
【符号の説明】
【0117】
10…シート防水構造、30…第1防水シート(防水シート)、70…第2防水シート(防水シート)
図1