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特開2024-119591見守りシステム、サーバ、方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119591
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】見守りシステム、サーバ、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240827BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026600
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】523065225
【氏名又は名称】Locaris Japan株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】306015490
【氏名又は名称】株式会社キットヒット
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】岡部 比古奈
(72)【発明者】
【氏名】濱田 敬治
(72)【発明者】
【氏名】石原 政道
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC12
5L050CC12
(57)【要約】
【課題】見守り対象の行動を分析し、見守り者に提供することを可能とする見守りシステム、見守りサーバ、方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】 見守り対象者等が携帯する位置情報タグTと、位置情報タグTとUWB信号により通信するベースステーション21と、見守り用情報端末31と、見守り用情報端末およびベースステーションとネットワークを介して通信可能に構成されたサーバ10と、を備える見守りシステムであって、ベースステーション21は、位置情報タグTの位置情報を所定の周期で記録し、サーバ10は、予め登録された定型行動パターンから外れた見守り対象の行動パターンが検出された場合に異常行動であると判定し、判定結果を見守り用情報端末31に表示させる行動パターン分析手段を備えることを特徴とする見守りシステム、見守りサーバ、方法およびプログラム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人または動物である見守り対象が携帯する位置情報タグと、位置情報タグとUWB信号により通信するベースステーションと、見守り用情報端末と、見守り用情報端末およびベースステーションとネットワークを介して通信可能に構成されたサーバと、を備える見守りシステムであって、
前記ベースステーションは、前記位置情報タグの位置情報を所定の周期で記録し、
前記サーバは、予め登録された定型行動パターンから外れた見守り対象の行動パターンが検出された場合に異常行動であると判定し、判定結果を見守り用情報端末に表示させる行動パターン分析手段を備えることを特徴とする見守りシステム。
【請求項2】
前記サーバは、所定の周期で記録した見守り対象の位置情報に基づく行動軌跡線を描画した見守り施設マップを見守り用情報端末に表示させる行動履歴表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項3】
前記サーバは、所定の周期で記録した見守り対象の位置情報に基づき各エリアに滞在時間別に異なる着色を施した見守り施設マップを見守り用情報端末に表示させる滞在時間表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項4】
前記サーバは、予め設定した危険エリアに前記見守り対象が進入した際に前記見守り用情報端末に警報を送信する危険一斉通知手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項5】
前記見守り対象は、前記位置情報タグをそれぞれ携帯する複数の見守り対象であり、
前記サーバは、一の見守り対象と他の見守り対象とが所定の距離内にいた時間の積算値を算出し、前記見守り用情報端末に表示させる関係性表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の見守りシステム。
【請求項6】
前記位置情報タグを前記見守り対象の世話者が携帯する場合に、
前記関係性表示手段は、一の見守り対象と世話者とが所定の距離内にいた時間の積算値を算出し、前記見守り用情報端末に表示させる機能を備え、
前記行動パターン分析手段は、予め登録された定型行動パターンから外れた世話者の行動パターンが検出された場合に異常行動であると判定し、判定結果を見守り用情報端末に表示させる機能を備えることを特徴とする請求項5に記載の見守りシステム。
【請求項7】
人または動物である見守り対象が携帯する位置情報タグ、位置情報タグとUWB信号により通信するベースステーション、および、見守り用情報端末とネットワークを介して通信可能に構成された見守りサーバであって、
前記ベースステーションが所定の周期で記録した前記位置情報タグの位置情報に基づき、予め登録された定型行動パターンから外れた見守り対象の行動パターンが検出された場合に異常行動であると判定し、判定結果を見守り用情報端末に表示させる行動パターン分析手段を備えることを特徴とする見守りサーバ。
【請求項8】
人または動物である見守り対象が携帯する位置情報タグ、位置情報タグとUWB信号により通信するベースステーション、および、見守り用情報端末とネットワークを介して通信可能に構成されたサーバを用いた見守り方法であって、
前記ベースステーションにより前記位置情報タグの位置情報を所定の周期で記録するステップと、
前記サーバが、予め登録された定型行動パターンから外れた見守り対象の行動パターンが検出された場合に異常行動であると判定し、判定結果を見守り用情報端末に表示させるステップと、を備えることを特徴とする見守り方法。
【請求項9】
人または動物である見守り対象が携帯する位置情報タグ、位置情報タグとUWB信号により通信するベースステーション、および、見守り用情報端末とネットワークを介して通信可能に構成されたサーバで実行されるプログラムであって、
前記サーバを、
前記ベースステーションが所定の周期で記録した前記位置情報タグの位置情報に基づき、予め登録された定型行動パターンから外れた見守り対象の行動パターンが検出された場合に異常行動であると判定し、判定結果を見守り用情報端末に表示させる行動パターン分析手段として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項1ないし6のいずれかに記載の見守りシステムで用いられる位置情報タグであって、前記ベースステーションにUWB信号を送信する位置情報タグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報センサを用いた見守りシステム、方法およびプログラムに関し、特に、UWB(Ultra Wide Band)通信方式による位置情報タグを用いた見守りシステム、サーバ、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、GPS(Global Positioning System)を利用した測位システムを利用して人や物の位置情報を取得することが行われている。近年、誤差を数cmないし数十cmに押さえることができるUWB通信を用いた測位システムが提案されている。UWB通信方式では、人や物品などの対象にUWBタグをとりつけ、屋内に所定間隔で設置した位置情報センサがUWBタグからの電波を受信することで、UWBタグの位置を特定することが可能である。
【0003】
例えば、特許文献1では、屋外ではGPSを利用し、屋内ではUWB通信等を利用することで、工場などの特定エリア内において、所定の携帯端末を携行する複数の作業者等の一人が、自分の居る場所を集合場所として、他の作業者等を呼び出すことを可能とする呼び出しシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-147627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今、見守り対象者等の行動を分析し、見守り者に提供するシステムが求められている。
【0006】
本発明は、見守り対象者等の行動を分析し、見守り者に提供することを可能とする見守りシステム、サーバ、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の見守りシステムは、人または動物である見守り対象が携帯する位置情報タグ位置情報タグと、位置情報タグとUWB信号により通信するベースステーションと、見守り用情報端末と、見守り用情報端末およびベースステーションとネットワークを介して通信可能に構成されたサーバと、を備える見守りシステムであって、前記ベースステーションは、前記位置情報タグの位置情報を所定の周期で記録し、前記サーバは、予め登録された定型行動パターンから外れた見守り対象の行動パターンが検出された場合に異常行動であると判定し、判定結果を見守り用情報端末に表示させる行動パターン分析手段を備えることを特徴とする。
前記見守りシステムにおいて、前記サーバは、所定の周期で記録した見守り対象の位置情報に基づく行動軌跡線を描画した見守り施設マップを見守り用情報端末に表示させる行動履歴表示手段をさらに備えることを特徴としてもよい。
前記見守りシステムにおいて、前記サーバは、所定の周期で記録した見守り対象の位置情報に基づき各エリアに滞在時間別に異なる着色を施した見守り施設マップを見守り用情報端末に表示させる滞在時間表示手段をさらに備えることを特徴としてもよい。
前記見守りシステムにおいて、前記サーバは、予め設定した危険エリアに前記見守り対象が進入した際に前記見守り用情報端末に警報を送信する危険一斉通知手段をさらに備えることを特徴としてもよい。
前記見守りシステムにおいて、前記見守り対象は、前記位置情報タグをそれぞれ携帯する複数の見守り対象であり、前記サーバは、一の見守り対象と他の見守り対象とが所定の距離内にいた時間の積算値を算出し、前記見守り用情報端末に表示させる関係性表示手段をさらに備えることを特徴としてもよい。
前記見守りシステムにおいて、前記位置情報タグを前記見守り対象の世話者が携帯する場合に、前記関係性表示手段は、一の見守り対象と世話者とが所定の距離内にいた時間の積算値を算出し、前記見守り用情報端末に表示させる機能を備え、前記行動パターン分析手段は、予め登録された定型行動パターンから外れた世話者の行動パターンが検出された場合に異常行動であると判定し、判定結果を見守り用情報端末に表示させる機能を備えることを特徴としてもよい。
【0008】
本発明の見守りサーバは、人または動物である見守り対象が携帯する位置情報タグ、位置情報タグとUWB信号により通信するベースステーション、および、見守り用情報端末とネットワークを介して通信可能に構成された見守りサーバであって、前記ベースステーションが所定の周期で記録した前記位置情報タグの位置情報に基づき、予め登録された定型行動パターンから外れた見守り対象の行動パターンが検出された場合に異常行動であると判定し、判定結果を見守り用情報端末に表示させる行動パターン分析手段を備えることを特徴とする見守りサーバ。
本発明の見守り方法は、人または動物である見守り対象が携帯する位置情報タグ、位置情報タグとUWB信号により通信するベースステーション、および、見守り用情報端末とネットワークを介して通信可能に構成されたサーバを用いた見守り方法であって、前記ベースステーションにより前記位置情報タグの位置情報を所定の周期で記録するステップと、前記サーバが、予め登録された定型行動パターンから外れた見守り対象の行動パターンが検出された場合に異常行動であると判定し、判定結果を見守り用情報端末に表示させるステップと、を備えることを特徴とする。
本発明のプログラムは、人または動物である見守り対象が携帯する位置情報タグ、位置情報タグとUWB信号により通信するベースステーション、および、見守り用情報端末とネットワークを介して通信可能に構成されたサーバで実行されるプログラムであって、前記サーバを、予め登録された定型行動パターンから外れた見守り対象の行動パターンが検出された場合に異常行動であると判定し、判定結果を見守り用情報端末に表示させる行動パターン分析手段として機能させるためのプログラムである。
本発明の位置情報タグは、前記見守りシステムで用いられる位置情報タグであって、前記ベースステーションにUWB信号を送信する位置情報タグである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、見守り対象者等の行動を分析し、見守り者に提供することを可能とする見守りシステム、サーバ、方法およびプログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態例に係る見守りシステムの構成図である。
図2】実施形態例に係る見守り施設マップと各機器の配置図である。
図3】実施形態例に係るベースステーションが記録するログデータの一例である。
図4】実施形態例に係る関係性表示機能の出力例を示す図である。
図5】実施形態例に係る行動パターン分析の出力例を示す図である。
図6】実施形態例に係る見守りシステムの自動見守り処理のフローチャートである。
図7】実施形態例に係る見守りシステムのオンデマンド処理のフローチャートである。
図8】実施形態例に係る行動パターン分析のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のシステムは、見守りシステムに関する。以下では本発明の実施形態例を、幼稚園または保育園用の見守りシステムの例で説明する。
【0012】
<構成>
図1は、実施形態例に係る見守りシステム1の構成図である。このシステムは、サーバ10と、ベースステーション21と、撮像装置22と、見守り用端末31と、管理用端末41と、位置情報タグTと、を主要な構成要素とする。見守りシステム1は、位置情報タグTを携帯する見守りの対象となる者A(以下、「対象者A」という)と、位置情報タグTを携帯する見守り対象者の世話をする者(以下、「世話者B」という)と、世話者Bを監督する者(以下、「監督者C」という。)、および、対象者Aの保護者や後見者である者(以下、「見守り者D」という)により利用される。
【0013】
[サーバ10]
サーバ10は、CPUからなる処理装置11と、管理プログラムおよびデータベースを格納する記憶装置12と、LANなどのネットワーク網による通信を可能とする通信装置13と、を備えたサーバ装置である。サーバ10は、1台で複数施設の管理をすることができるが、複数台により構成してもよい。サーバ10は、クラウド上のサーバ装置をインターネットを介して利用することができるが、建物51内に専用のサーバ装置を設置してもよい。
【0014】
処理装置11により実行される管理プログラムは、マップ管理機能、所在確認機能、関係性表示機能、行動履歴表示機能、行動パターン分析機能、滞在時間表示機能、アクション記録確認機能、危険一斉通知機能を備えている。各機能の詳細については後述する。
【0015】
[ベースステーション21]
ベースステーション21は、処理部、記憶部、アンテナ部および通信部を備えており、UWB通信方式により位置情報タグTからの電波信号(UWB信号)をアンテナ部で受信する。ベースステーション21は、例えば、ローバンドとして3.4~4.8GHz、ハイバンドとして7.25~10.25GHzの周波数帯を使用する。ベースステーション21は、例えば、ToF(Time of Flight)法、TDOA(Time Difference of Arrival)法またはAOA(Angle Of Arrival)法を利用して高い精度(例えば、位置精度50cm以下)で位置情報タグTの位置を特定することが可能である。TDOA法の測位には最低4つのベースステーション21が必要であり、部屋の仕切り壁などある場合は、別エリアとして扱う必要がある。AOA法の測位は、ベースステーション21は1つあれば足り、位置情報タグTとの距離・角度を取得することが可能である。AOA法はTDOA法と比較すると測位精度は落ちるものの、狭い空間での利用や、ベースステーションの台数が少なくてもよい点で優れている。
【0016】
ベースステーション21は、建物51内の監視対象となるエリア単位に設置される。各ベースステーション21の設置場所の座標は、後述のマップ管理機能によりサーバ10に登録される。本実施形態例では、図2に示すように、建物51の各部屋内に1台ずつと、L字形の廊下に2台と、校庭Hに4台設置されている。また、乗物52内にもベースステーション21(不図示)が1台設置されており、乗物52が敷地内に駐車してサーバ10との無線通信が可能になると見守りを開始する。ベースステーション21は、屋内であれば壁や天井に露出した状態で設置してもよいし、風雨を避けることができるラックやキャビネット内に収納して屋外に設置してもよい。なお、建物51の各部屋内や乗物52内に複数台のベースステーション21を設置してもよい。
【0017】
ベースステーション21は、位置情報タグTの位置情報等をログデータとして時間情報と紐付けて記憶装置に記憶する。図3は、ベースステーション21が記憶装置に記録するログデータの一例を示している。図3中、「tag ID」は各位置情報タグTに割り当てられた固有のIDであり、「anchor ID」は各ベースステーション21に割り当てられた固有のIDであり、「UTC」は通信により一定周期で同期している協定世界時である。また、「location」はXYZ方向の3次元座標情報であるが、2次元座標の監視で足りる場合にはlocation Zに固定値を記録する。
【0018】
ベースステーション21は、有線LANまたはWi-Fi(登録商標)によりサーバ10と通信可能に構成されており、記録した位置情報タグTのログデータを一定の周期でサーバ10に送信する。また、ベースステーション21は、撮像装置22が撮影した静止画像や動画像を時間情報と紐付けて記憶装置に記憶し、一定の周期でサーバ10に送信する。ベースステーション21は、HDD等の外部記憶装置をUSBケーブル等で接続することができるので、動画像等の容量が大きいデータを外部装置に記憶しておくことも可能である。
【0019】
[撮像装置22]
撮像装置22は、カメラ、処理部、記憶部および通信部を備えている。カメラは、CCDカメラやCMOSカメラであり、静止画像と動画像を撮像することができる。撮像装置22は、予め設定された周期で、或いは連続的に撮像範囲の画像を撮像し、記憶部に記憶する。記憶部は、記憶容量を補うために、SDカード等の外部メモリを装着して容量を拡張することが可能である。撮像装置22は、通信部を介して有線LANまたはWi-Fi(登録商標)によりベースステーション21および/またはサーバ10と通信可能に構成されており、撮像した画像をサーバ10に予め設定された周期で、或いはオンデマンドで送信する。
【0020】
撮像装置22は、ベースステーション21が設置されたエリアのうち、必要なエリアにのみ設置される。撮像装置22の台数はベースステーション21の台数と比べ少なくても問題はないし、逆に多くても問題はない。撮像装置22は、サーバ10またはベースステーション21と通信が可能であればベースステーション21から離れた場所に設置しても問題はない。各撮像装置22の設置場所の座標は、サーバ10に登録されている。
【0021】
[位置情報タグT]
位置情報タグTは、タグ制御部と、UWB電波を送受信する通信部と、点灯部と、電池とを備えている。タグ制御部は、通信部を介してベースステーション21にUWB信号を送信する。サーバ10は、各ベースステーション21と位置情報タグTとのUWB信号の送受信に要した時間の差から位置情報タグTとの間の距離を算出する。位置情報タグTは、少なくとも数十mの距離にあるベースステーション21と通信することが可能である。
【0022】
位置情報タグTは、手の平に収まるサイズであり、重量は10g以下で、一次電池または二次電池により動作する。位置情報タグTにスピーカを設け、ベースステーション21から受信したUWB信号に基づきビープ音を発するように構成してもよい。位置情報タグTの点灯部は、ペアリングされた見守り用端末31から所定の操作をすると点灯する、或いは、電池の残量を示すために用いられる。
【0023】
[見守り用端末31]
見守り用端末31は、液晶タッチパネルおよび無線通信モジュールを備えたスマートフォンやタブレット端末などの情報処理端末であり、見守り用アプリケーション(以下、「見守りアプリ」という)がインストールされている。世話者Bおよび見守り者Dは、見守り用端末31を用いて対象者Aの見守りを行う。
【0024】
なお、実施形態例とは異なり、見守り用アプリケーションをインストールせずに、Webブラウザによりサーバ10と双方向通信を行いながら上述の各機能を実行することを可能としてもよい。
【0025】
[管理用端末41]
管理用端末41は、パーソナルコンピュータ、ノートパソコン、タブレット、スマートフォンなどの情報処理端末であり、サーバ10と通信する通信機能、キーボードやタッチパネルなどのユーザが情報を入力するための入力機能、ディスプレイなどのユーザに情報を表示する表示機能を有する。監督者Cは、管理用端末41からサーバ10の管理画面にアクセスして見守りシステム1を利用するユーザである対象者AなどのID管理や上述の各機能の設定を行う。管理用端末41は、見守りアプリがインストールされており、見守り用端末を兼ねる場合もある。
【0026】
[対象者A]
本実施形態例における対象者Aは、園児や幼児であり、衣服のポケット等に収納された位置情報タグTを携帯している。
【0027】
[世話者B]
本実施形態例における世話者Bは、保育士その他の職員や保育園・幼稚園の経営者であり、衣服のポケット等に収納された位置情報タグTを携帯している。位置情報タグTを携帯する者の属性情報(対象者Aまたは世話者B)は、サーバ10に登録されている。
【0028】
[監督者C]
本実施形態例における監督者Cは、見守りシステム1のシステム管理者であり、教員または職員である場合もあれば、委託先企業の社員である場合もある。監督者Cは、位置情報タグTを携帯する必要はない。
【0029】
[見守り者D]
本実施形態例における見守り者Dは、園児や幼児の保護者である。見守り者Dは、位置情報タグTを携帯する必要はない。
【0030】
[マップ管理機能]
マップ管理機能は、各ベースステーション21の設置場所の座標と、見守り対象エリアの座標とが紐付けられた見守り施設マップを作成する機能である。図2の例では、部屋A~D、廊下F~G、WC(トイレ)、校庭H、駐車場が見守り対象エリアとなる。座標情報と紐付けられた対象エリアを設定することで、算出した座標情報に基づいてどの対象エリアにいたかを特定し、特定された対象エリアに着色処理等を施すことが可能となる。
【0031】
[所在確認機能]
所在確認機能は、世話者Bおよび見守り者Dが対象者Aの所在場所をリアルタイムで確認することを可能とする機能である。例えば、対象者Aの居場所を知りたい世話者Bが所在確認機能を見守りアプリから実行すると、サーバ10がベースステーション21a,21b・・・に対象者Aの位置情報を照会し、ベースステーション21a,21b・・・は対象者Aの位置情報(座標情報)をサーバ10に回答する。この回答に基づき、サーバ10は、見守り施設マップ上に対象者Aの現在位置を描画して、世話者Bの見守りアプリに表示させる。
【0032】
[関係性表示機能]
関係性表示機能は、位置情報タグTを所有する人同士が、一定の距離範囲にいた時間の積算値をグラフ等で表示する機能である。関係性表示機能を実行すると、位置情報タグTを携帯する特定の対象者Axと他の対象者Aまたは世話者Bが近くにいた時間の積算値をグラフで視覚的に把握することが可能となる。図4は、関係性表示機能の出力例を示すグラフである。図4から、ある日において対象者Aが最も一緒に過ごした時間が多いのはB1先生であり、次いでAちゃんと過ごした時間が多いことが分かる。なお、図示とはことなり、円グラフその他のグラフで表示することも当然可能である。
【0033】
また、積算時間の合計値が少ない場合には、いわゆる独りぼっちでいたことが推測されることから、積算時間の合計値が一定以下の場合にはアラートを世話者B、監督者Cおよび/または見守り者Dにメール等で通知するようにしてもよい。関係性表示機能によれば、他の対象者Aと一定の距離範囲にいた時間の積算値を算出することができるので、対象者Aの友人関係を把握することも可能である。なお、関係性表示機能におけるデータ解析においては、お昼寝タイムは積算時間に含めないといった除外時間帯を設定できるような機能を設けてもよい。
【0034】
[滞在時間表示機能]
滞在時間表示機能は、見守り対象者Dからの照会に応じて対象者Aが滞在していた場所の滞在時間別に異なる着色を施したヒートマップを作成する機能である。例えば、対象者Aの見守り者Dが登園日を指定して滞在時間表示機能を見守りアプリから実行すると、対象者Aが部屋Aに1時間滞在し、部屋Cに3時間滞在し、校庭Hに2時間滞在していた場合、部屋Aを水色に着色し、部屋Cを濃い赤色に着色し、校庭Hを薄い赤色に着色した見守り施設マップを作成し、見守り者Dの見守りアプリに表示させる。なお、見守り施設マップを着色することに加え、各滞在場所に滞在時間を数値で表示させるようにしてもよい。
【0035】
[行動履歴表示機能]
行動履歴表示機能は、対象者Aの指定時間帯における行動履歴を線で表示する機能である。例えば、対象者Aの見守り者Dが登園日を指定して行動履歴表示機能を見守りアプリから実行すると、サーバ10は対象者Aの指定日における時系列の所在場所情報(座標情報)を抽出し、対象者Aの行動軌跡線が描かれた見守り施設マップを作成し、見守り者Dの見守りアプリに表示させる。行動軌跡線を描画するための時間単位は、例えば、数十秒単位、数分単位、数十分単位とすることができる。図5に、行動履歴表示機能を実行することにより得られた行動軌跡線が描かれた見守り施設マップの一例を示す。
【0036】
[行動パターン分析機能]
行動パターン分析機能は、所定の時間について記録した対象者Aの位置情報データを解析することにより、正常な行動範囲から外れた場所に対象者Aがいる場合や他の対象者Aと異なる行動傾向にある対象者Aを抽出する機能である。例えば、対象者Aが入るべきではない調理室や倉庫などへの進入履歴を検出すること、他の対象者Aとの行動時間が極端に短い独りぼっち状態を検出することなどが可能である。本実施形態例では、多層構造の深層ニューラルネットワークをモデルとした深層学習(ディープラーニング)により、園児の行動パターンと位置情報の遷移の関係を機械学習させることで行動パターンを分析するための学習済みモデルを構築した。園児の行動パターンデータが蓄積されれば、鬼ごっこやかくれんぼのように、対象者A同士が必ずしも近接しない位置関係で特定の行動をとる行動パターンの分析も可能である。行動パターン分析の具体的な処理については、図8を参照しながら後述する。
【0037】
[アクション記録確認機能]
アクション記録確認機能は、指定した場所の指定時間における映像を抽出する機能である。管理用端末41からアクション記録確認機能を実行することにより、指定した撮像装置22について指定した時間に動画像または静止画像を撮像し、サーバ10に送信することが可能である。また、見守りアプリを利用する特定の見守り者Dに対してサーバ10の記憶装置に記憶された撮像画像を公開することが可能である。例えば、幼稚園における運動会の練習の様子を校庭Hに設置した撮像装置22で撮像し、その動画を見守りアプリの利用者に公開することが可能である。
【0038】
[危険一斉通知機能]
危険一斉通知機能は、危険エリアに対象者Aが近づいた際に世話者Bの見守り用端末31に警報を通知する機能である。例えば、校庭Hの池の周辺が危険エリアとして設定されている場合、池の周辺の危険エリアに対象者Aが進入すると、全ての世話者Bの見守り用端末31に危険エリアへの進入を知らせるメッセージが届き、バイブレーションにより通知される。これにより、全ての世話者Bは、危険エリアに対象者Aが進入したことをリアルタイムで知ることができる。この際、対象者Aが携帯する位置情報タグTからビープ音を発するようにしてもよい。
【0039】
危険一斉通知機能は、時間単位で危険エリアを設定することも可能である。例えば、午前9時以降は乗物52内を危険エリアに設定することが可能である。これにより、通園バス等の乗物52内に園児が取り残される事故を防ぐことが可能となる。
【0040】
<使用方法>
位置情報タグT携帯する対象者Aおよび世話者Bの位置情報は、所定の周期でベースステーション21が記録している。記録された位置情報に基づき、見守りシステム1は、自動見守り処理と特定機能のオンデマンド処理を行うことが可能である。
【0041】
図6は、実施形態例に係る見守りシステム1の自動見守り処理のフローチャートである。管理用端末41からサーバ10の管理画面にアクセスして自動見守りを実行すると、サーバ10は各ベースステーション21に自動見守りの開始命令を送信する(STEP101)。開始命令を受信したベースステーション21は、位置情報タグTの位置情報を時間情報と紐付けて所定周期で記録し、所定周期でサーバ10に送信する(STEP102)。サーバ10は、記録した位置情報データに基づいて、位置情報タグTの所在位置がどのエリアに該当するかを算出する(STEP103)。位置情報タグTの所在地が警報条件に合致するエリアである場合、サーバ10はベースステーション21を介して、予め設定された見守り用端末31に警報命令を送信する(STEP105)。警報条件は、例えば、上述の危険一斉通知機能である。警報後、予め設定された見守り時間内である場合には見守りを継続し、見守り時間を経過している場合には自動見守りを終了する(STEP106,107)。警報条件に該当しない場合も同様である。
なお、STEP103の処理は、サーバ10ではなく、ベースステーション21で行ってもよい。
【0042】
図7は、実施形態例に係る見守りシステム1のオンデマンド処理のフローチャートである。見守り用端末31の見守りアプリからオンデマンド機能を実行すると、サーバ10は当該機能の実行に必要な位置情報タグTの位置情報データを抽出し(STEP202)、位置情報タグTの所在位置がどのエリアに該当するかを算出する(STEP203)。サーバ10は、抽出した位置情報データの解析が必要であるかを判定し、データ解析が不要である場合(STEP204でNoの場合)には、見守り用端末31の見守りアプリに実行結果を出力する(STEP206)。データ解析が不要な場合とは、例えば、上述の所在確認機能、アクション記録確認機能を実行する場合である。データ解析が必要な場合(STEP204でYesの場合)には、データ解析を実行した結果を見守り用端末31の見守りアプリに出力する(STEP206)。データ解析が必要な場合とは、例えば、上述の関係性表示機能、行動履歴表示機能、行動パターン分析機能、滞在時間表示機能を実行する場合である。
【0043】
図8は、実施形態例に係る行動パターン分析のフローチャートである。行動パターン分析を実施するにあたっては、まず対象者AのユーザIDについてタイムテーブルを作成する(STEP301)。タイムテーブルに入力した予定のうち、食事時間やお昼寝タイムなどの定型行動パターンに該当するものがある場合は、定型行動パターンを割り当てる。管理用端末41または見守り用端末31から行動パターン分析を実行すると(STEP303)、サーバ10は当該機能の実行に必要な位置情報タグTの位置情報データを抽出し(STEP304)、位置情報タグTの所在位置がどのエリアに該当するかを算出する(STEP305)。続いて、所定の時間帯における行動パターン分析を行う。指定時間帯は、例えば、登園時間から1時間を初期値とすることが開示される。指定時間についてタイムテーブルを参照し、定型行動パターンの登録があるかを判定する(STEP307)。定型行動パターンがある場合には、定型行動パターンから外れた行動パターンが検出されるかにより異常行動の判定が行われる。例えば、食事時間やお昼寝タイムの定型行動パターンが割り付けられた時間帯に対象者Aが動き回っている場合には異常行動と判定する(STEP309)。非定型行動パターン分析においては、他の対象者Aとの行動時間が極端に短い独りぼっち状態を検出したり、他の対象者Aの行動傾向と明らかに異なる行動傾向(例えば、他動傾向)を検出したりすることが開示される。対象日の全ての時間帯についての分析が完了した場合(STEP310でNoの場合)、実行結果が管理用端末41または見守り用端末31に表示される。対象日の全ての時間帯についての分析が完了していない場合(STEP310でYesの場合)、次の時間帯が指定され(STEP311)、指定時間における行動パターン分析が実行される。
【0044】
以上に説明した実施形態例に係る見守りシステム1によれば、世話者Bおよび見守り者Dは、見守り施設マップ上に描画された対象者Aの位置情報をリアルタイムで取得することが可能となる。また、見守り者Dは、対象者Aが他の対象者Aや世話者Bと過ごした時間を視覚的に把握することが可能となる。また、取得した位置情報データを解析することにより、世話者Bが気づくことができなかった対象者Aの異常な行動パターンを検出することが可能となる。また、見守りエアリアップ上に描画された対象者Aの行動軌跡やヒートマップとして表示された対象者Aの滞在時間を視覚的に把握することが可能となる。また、指定した場所の指定時間における映像を見守り者Dに閲覧させることが容易である。また、世話者Bが気づくことができなかった対象者Aの危険エリアへの進入をリアルタイムで検出することが可能となる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、見守り施設で新型コロナウィルス等の感染症が発生した場合に、関係性表示機能を用いて濃厚接触者である者を抽出する機能を管理プログラムに設けてもよい。
また、位置情報タグTに加速度センサを内蔵させ、加速度センサからのデータを分析して転倒を検出する機能を管理プログラムに設けてもよい。このような機能は、例えば、老人ホームの老人や一人暮らしの老人の見守りに有用である。
また、見守り対象は、人間のみならず、ペットや家畜であってもよい。例えば、餌場への移動がない牛を見守り対象として行動パターン分析機能で抽出し、具合が悪い牛を検出してもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 サーバ
21 ベースステーション
22 撮像装置
31 見守り用端末
41 管理用端末
51 建物
52 乗物
T 位置情報タグ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8