(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119593
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】油性顔料分散体、及び化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/29 20060101AFI20240827BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240827BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240827BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20240827BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A61K8/29
A61K8/37
A61K8/31
A61K8/85
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026602
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】391015373
【氏名又は名称】大東化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】奈良▲崎▼ 健二
(72)【発明者】
【氏名】白戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】服部 春香
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB242
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC122
4C083AC232
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC532
4C083AC662
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD262
4C083BB23
4C083CC05
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC14
4C083CC19
4C083DD32
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE09
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】油剤に対する分散性、及び分散安定性に優れ、しかも化粧料に配合した際に優れた感触特性、及び紫外線防御性をもたらすことが可能な油性顔料分散体を提供する。
【解決手段】(A)酸化チタンと、(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物と、(D)炭素数が21以下であるアルカン系溶媒とを含み、(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物と、(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体との質量比(C/B)は、0.1~2である油性顔料分散体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸化チタンと、
(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、
(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物と、
(D)炭素数が21以下であるアルカン系溶媒と
を含み、
前記(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物と、前記(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体との質量比(C/B)は、0.1~2である油性顔料分散体。
【請求項2】
前記(A)酸化チタンは、表面処理剤によって表面処理されてなる粉粒体である請求項1に記載の油性顔料分散体。
【請求項3】
前記(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体における脂肪酸の炭素数は、12~20である請求項1に記載の油性顔料分散体。
【請求項4】
前記(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、前記(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物との合計含有量は、2~20質量%である請求項1に記載の油性顔料分散体。
【請求項5】
前記(D)炭素数が21以下であるアルカン系溶媒は、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、及びトリデカンからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1に記載の油性顔料分散体。
【請求項6】
「ISO16128に基づく化粧品の自然及びオーガニックに係る指数表示に関するガイドライン」に示された算出方法により算出される自然由来指数が0.8以上である請求項1~5の何れか一項に記載の油性顔料分散体。
【請求項7】
請求項6に記載の油性顔料分散体を配合した化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性顔料分散体、及び当該油性顔料分散体を配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線による皮膚への悪影響に対する意識の向上から、種々の日焼け止め化粧料、紫外線防御化粧料等が市販されている。これらの化粧料には、紫外線の遮断のため、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が配合されている。化粧料において、紫外線散乱剤として、例えば酸化チタンが使用されており、この紫外線散乱剤は、分散剤によって油剤に分散されている。
【0003】
ここで、化粧料の配合成分が石油系由来の合成品である場合、かかる合成品は、皮膚刺激性、アレルギー等の健康上の問題を引き起こす虞がある。また、合成品は、生分解性を有しないものが殆どであることから、環境中に放出されることによりマイクロプラスチック等の環境問題を引き起こす虞もある。
【0004】
このような健康上の問題、及び環境問題に対処すべく、紫外線散乱剤、分散剤、及び油剤として天然物由来のもの(原材料)を用いることが提案されている。
【0005】
例えば、化粧料に配合される油性顔料分散体において、分散剤として天然物由来の高級脂肪酸エステル等、油剤として天然物由来でありかつ揮発性を有する油性溶媒を用いることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
また、例えば、化粧料等の皮膚外用剤(油性顔料分散体)において、分散剤として植物由来の脂肪酸から誘導される分散剤、油剤として植物由来の25℃、1気圧で液状の油剤を用いることが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-171945号公報
【特許文献2】特開2014-156414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2の油性顔料分散体においては、紫外線散乱剤の分散性、分散安定性が不十分となる虞がある。また、油性顔料分散体を化粧料に配合した際、化粧料の感触特性、紫外線防御効果(SPF)が不十分となる虞がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、油剤に対する分散性、及び分散安定性に優れ、しかも化粧料に配合した際に優れた感触特性、及び紫外線防御性をもたらすことが可能な油性顔料分散体、及び当該油性顔料分散体を配合した化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、紫外線散乱剤として酸化チタンを用いた油性顔料分散体において、分散剤として特定の分散剤(ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物との2種類)を採用し、油剤として特定の油剤(炭素数が21以下であるアルカン系溶媒)を採用し、特定の2種類の分散剤の配合比率を特定の範囲とすることで、油剤に対する酸化チタンの分散性、及び分散安定性に優れ、しかも化粧料に配合した際に高い感触特性のみならず、高いSPF値をも示す油性顔料分散体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、上記課題を解決するための本発明に係る油性顔料分散体の特徴構成は、
(A)酸化チタンと、
(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、
(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物と、
(D)炭素数が21以下であるアルカン系溶媒と
を含み、
前記(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物と、前記(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体との質量比(C/B)は、0.1~2であることにある。
【0012】
本構成の油性顔料分散体によれば、当該油性顔料分散体が、(A)酸化チタンと、(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物と、(D)炭素数が21以下であるアルカン系溶媒とを含み、質量比(C/B)が0.1~2であることで、油剤としての(D)炭素数が21以下であるアルカン系溶媒中において、(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物とが、適度な粘性を付与しつつ、(D)炭素数が21以下であるアルカン系溶媒に対して(A)酸化チタンの優れた分散剤として機能する。その結果、(D)炭素数が21以下であるアルカン系溶媒中において、(A)酸化チタンが凝集、沈降して局所的に存在することを抑制することができる。これにより、(A)酸化チタンが良好に分散され、また、良好な分散状態が持続される。ここで、(A)酸化チタンは、紫外線防御性を有するが、当該油性顔料分散体中において(A)酸化チタンが局所的に存在すると、当該油性顔料分散体を化粧料に配合したとき、化粧料中においても(A)酸化チタンが局所的に存在することになるため、紫外線防御性が化粧料の全体にわたって十分に発揮されないことがある。しかし、油性顔料分散体中において(A)酸化チタンが良好に分散していることにより、当該油性顔料分散体は、化粧料に優れた紫外線防御性をもたらすことができる。また、皮膚に対する感触特性(使用感)が優れたものとなる。
【0013】
本発明に係る油性顔料分散体において、
前記(A)酸化チタンは、表面処理剤によって表面処理されてなる粉粒体であることが好ましい。
【0014】
本構成の油性顔料分散体によれば、(A)酸化チタンが表面処理剤によって表面処理されてなる粉粒体であることにより、当該油性顔料分散体における(A)酸化チタンの分散性を向上させることができる。
【0015】
本発明に係る油性顔料分散体において、
前記(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体における脂肪酸の炭素数は、12~20であることが好ましい。
【0016】
本構成の油性顔料分散体によれば、(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体における脂肪酸の炭素数が12~20であることにより、当該油性顔料分散体における(A)酸化チタンの分散性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る油性顔料分散体において、
前記(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、前記(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物との合計含有量は、2~20質量%であることが好ましい。
【0018】
本構成の油性顔料分散体によれば、当該油性顔料分散体における(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物との合計含有量が2質量%以上であることにより、当該油性顔料分散体の経時的なゲル化、(A)酸化チタンの沈降等を抑制することができるため、当該油性顔料分散体の分散安定性を向上させることができる。当該油性顔料分散体における(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物との合計含有量が20質量%以下であることにより、当該油性顔料分散体を化粧料に配合したときの化粧料の感触特性を向上させることができる。また、(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体、及び(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物は、他の成分と比較して高価なものが多いため、上記合計含有量が20質量%以下であることによって、経済的となる。
【0019】
本発明に係る油性顔料分散体において、
前記(D)炭素数が21以下であるアルカン系溶媒は、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、及びトリデカンからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0020】
本構成の油性顔料分散体によれば、(D)炭素数が21以下であるアルカン系溶媒がノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、及びトリデカンからなる群から選択される少なくとも一つであることにより、当該油性顔料分散体における(A)酸化チタンの分散性を向上させることができる。また、これらアルカン系溶媒は揮発性を有するため、当該油性顔料分散体を化粧料に配合したときの感触特性を向上させることができる。
【0021】
本発明に係る油性顔料分散体において、
「ISO16128に基づく化粧品の自然及びオーガニックに係る指数表示に関するガイドライン」に示された算出方法により算出される自然由来指数が0.8以上であることが好ましい。
【0022】
本構成の油性顔料分散体によれば、当該油性顔料分散体(の全体)の自然由来指数が0.8以上であることにより、当該油性顔料分散体は、人体に低刺激となり、かつ環境負荷を低減することができる。また、当該油性顔料分散体を化粧料に配合することにより、化粧料は、身体、及び環境に優しいものとなる。さらに、当該油性顔料分散体が低刺激であることにより、化粧料中に比較的多量に配合することが可能になるため、化粧料のSPF値を増加させることができる。
【0023】
上記課題を解決するための本発明に係る化粧料は、
上述の油性顔料分散体を配合したことにある。
【0024】
本構成の化粧料は、上述の油性顔料分散体を配合したことにより、感触特性、及び紫外線防御性が優れたものとなる。また、自然由来指数が0.8以上である油性顔料分散体を配合したことにより、身体、及び環境に優しい化粧料となる。さらに、油性顔料分散体が低刺激であることにより、化粧料中に比較的多量に配合することが可能になるため、SPF値が増加した化粧料となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の油性顔料分散体、及び化粧料について、詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態及び実施例に限定されることを意図するものではない。
【0026】
〔油性顔料分散体〕
本発明の油性顔料分散体は、以下の成分(A)~(D)を含む。
(A)酸化チタン
(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体
(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物
(D)炭素数が21以下であるアルカン系溶媒
【0027】
上記の成分(A)~(D)を含むように油性顔料分散体を調製すると、(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体、及び(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物は、(A)酸化チタンの表面に化学的に吸着していない状態で(A)酸化チタンと共存し、(A)酸化チタンは、(D)炭素数が21以下であるアルカン系溶媒に分散される。ここで、「表面に化学的に吸着していない」とは、共有結合、イオン結合等の化学結合により結合していない状態を意味する。従って、物理的吸着や水素結合のような化学結合を伴わない結合は、「表面に化学的に吸着していない」ものに含まれる。
【0028】
<酸化チタン>
酸化チタンは、紫外線防御性を有するものである。酸化チタンは、表面処理剤によって表面処理されてなる粉粒体であることが好ましい。ここで、「粉粒体」とは、ナノオーダーの一次粒子が凝集し、サブミクロンないしミクロンオーダーの二次粒子を形成している状態である。酸化チタンの平均一次粒子径は、100nm以下が好ましく、1~50nmがより好ましい。酸化チタンの平均二次粒子径は、1000nm以下が好ましく、50~500nmがより好ましい。酸化チタンが表面処理剤によって表面処理されてなるなる粉粒体であることにより、油性顔料分散体における酸化チタンの分散性を高めることができる。表面処理剤としては、含水シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、トリメトキシカプリリルシラン、ハイドロキシジメチコン等が挙げられる。これらの表面処理剤は、一種を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0029】
表面処理剤も含めて酸化チタンは、自然由来成分であるものが好ましい。ここで、自然由来とは、天然物由来であることを意味し、天然物とは、化学合成によって生成された合成物質でなく、自然界に存在する動植物や微生物若しくは人為的に養殖、栽培された動植物、又は培養された微生物を意味する。天然物由来とは、天然物より産出されるものや、天然物から精製抽出されたものを意味する。自然由来は、「ISO16128に基づく化粧品の自然及びオーガニックに係る指数表示に関するガイドライン」に示された算出方法により算出される自然由来指数が指標となる。同ガイドラインによれば、自然由来指数が1の場合が100%自然由来であり、0の場合が非自然由来であるとされている。酸化チタンが自然由来成分であることで、油性顔料分散体は、人体に低刺激となり、かつ環境負荷を低減することができる。また、当該油性顔料分散体を化粧料に配合することにより、化粧料は、身体、及び環境に優しいものとなる。
【0030】
酸化チタンの自然由来指数は、0.8以上が好ましく、1がより好ましい。酸化チタンの自然由来指数が0.8以上であることにより、人体と接触する固形成分である酸化チタンが、人体に低刺激となり、かつ環境負荷を低減することができる。また、このような酸化チタンを含有する油性顔料分散体を化粧料に配合することにより、化粧料は、身体、及び環境に優しいものとなる。酸化チタンの表面処理に用いられる自然由来の表面処理剤としては、含水シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。これらの表面処理剤の自然由来指数は、1である。
【0031】
酸化チタンの結晶型には、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型があるが、光触媒活性が低いルチル型を使用することが好ましい。酸化チタンとして、アナターゼ型のような光触媒活性が高いものを使用すると、酸化チタンが表面処理剤や溶媒を分解してしまう虞があるからである。
【0032】
油性顔料分散体における酸化チタンの含有量は、分散安定性、紫外線防御性、化粧料中の処方配合の自由度等の観点から、20~60質量%が好ましい。油性顔料分散体における酸化チタンの含有量を20質量%以上とすることにより、油性顔料分散体の紫外線防御性が十分なものとなるため、化粧料への油性顔料分散体の配合量を抑えることができ、その結果、油性顔料分散体以外の成分の配合量を減らすことなく、化粧料の処方設計の自由度を増加させることができる。また、油性顔料分散体における酸化チタンの含有量を60質量%以下とすることにより、油性顔料分散体の粘度の大幅な増加や、油性顔料分散体の経時的なゲル化を抑制することができる。
【0033】
<ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体>
ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体は、ヒドロキシ脂肪酸が、ヒドロキシ脂肪酸以外の他の成分と共重合を形成することなく、ヒドロキシ脂肪酸のみで重合体(ホモポリマー)を形成しているものである。ただし、単独重合体自体は、複数種であってもよく、この場合、ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体は、油性顔料分散体中に、2種以上の混合物として配合されることになる。ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体は、炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物とともに、分散剤として機能する。
【0034】
ヒドロキシ脂肪酸は、脂肪酸の水素原子の少なくとも一つがヒドロキシ基に置換されたものである。ヒドロキシ脂肪酸は、直鎖状のもの又は分岐鎖を有するものの何れであってもよい。ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体における脂肪酸の炭素数は、12~20であることが好ましい。脂肪酸の炭素数が12~20であることにより、油性顔料分散体における酸化チタンの分散性を向上させることができる。このようなヒドロキシ脂肪酸の単独重合体における脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸等が例示される。好ましいヒドロキシ脂肪酸としては、例えばヒドロキシステアリン酸が挙げられる。
【0035】
ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体は、自然由来であるものが好ましい。ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体が自然由来であることで、油性顔料分散体は、人体に低刺激となり、かつ環境負荷を低減することができる。また、このような油性顔料分散体を化粧料に配合することにより、化粧料は、身体、及び環境に優しいものとなる。また、油性顔料分散体が低刺激であることにより、化粧料中に比較的多量に配合することが可能になるため、化粧料のSPF値を増加させることができる。油性顔料分散体をより低刺激とし、環境負荷を低減し得る点で、ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体の自然由来指数は、0.8以上が好ましく、1がより好ましい。
【0036】
自然由来のヒドロキシ脂肪酸の単独重合体としては、例えば自然由来指数が1であるポリヒドロキシステアリン酸が挙げられる。
【0037】
油性顔料分散体におけるヒドロキシ脂肪酸の単独重合体の含有量は、後述するように(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物と、(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体との質量比(C/B)が0.1~2となり、これらの合計含有量が2~20質量%となるように適宜設定することができる。例えば油性顔料分散体におけるヒドロキシ脂肪酸の単独重合体の含有量は、4~12質量%が好ましい。油性顔料分散体におけるヒドロキシ脂肪酸の単独重合体の含有量が4質量%以上であることにより、油性顔料分散体における酸化チタンの分散性を向上させることができる。油性顔料分散体におけるヒドロキシ脂肪酸の単独重合体の含有量が12質量%以下であることにより、油性顔料分散体を配合した化粧料は、皮膚等への感触特性が向上されたものとなる。
【0038】
<炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物>
炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物は、炭素数8~20の脂肪酸が単独又は複数でグリセリンとエステル結合しているものである。脂肪酸と結合するグリセリンは、単独又は重合体(ポリグリセリン)のいずれであってもよい。脂肪酸と結合するグリセリンが重合体である場合、かかるグリセリン重合体は、直鎖状のもの又は分岐鎖を有するものの何れであってもよい。炭素数8~20の脂肪酸は、直鎖状のもの又は分岐鎖を有するものの何れであってもよい。このような炭素数8~20の脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸等が挙げられる。炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物は、一種を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物は、ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体とともに、分散剤として機能する。
【0039】
炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物としては、テトライソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ラウリン酸グリセリル、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル等が挙げられる。これらのうち、特にテトライソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリルが好ましく、これらエステル化合物は、ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と組み合わせることで油性顔料分散体における酸化チタンの分散性をより向上させることができる。
【0040】
炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物は、自然由来であるものが好ましい。炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物が自然由来であることで、調製された油性顔料分散体は、人体に低刺激となり、かつ環境負荷を低減することができる。また、当該油性顔料分散体を化粧料に配合することにより、化粧料は、身体、及び環境に優しいものとなる。油性顔料分散体をより低刺激とし、環境負荷を低減し得る点で、炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物の自然由来指数は、0.8以上が好ましく、1がより好ましい。
【0041】
油性顔料分散体における炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物の含有量は、後述するように(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物と、(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体との質量比(C/B)が0.1~2となり、これらの合計含有量が2~20質量%となるように適宜設定することができる。例えば油性顔料分散体における炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物の含有量は、3~12質量%が好ましい。油性顔料分散体における炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物の含有量が3質量%以上であることにより、油性顔料分散体における酸化チタンの分散性を向上させることができる。油性顔料分散体における炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物の含有量が12質量%以下であることにより、油性顔料分散体を配合した化粧料は、皮膚等への感触特性が向上されたものとなる。
【0042】
<ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物との関係>
油性顔料分散体における(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物と、(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体との質量比(C/B)は、0.1~2である。油性顔料分散体が酸化チタンと、ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物と、炭素数が21以下であるアルカン系溶媒とを含むことに加えて、上記質量比(C/B)が0.1~2であることにより、ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物とは、油剤としての炭素数が21以下であるアルカン系溶媒に適度な粘性を付与しつつ、炭素数が21以下であるアルカン系溶媒に対して酸化チタンの優れた分散剤として機能する。その結果、炭素数が21以下であるアルカン系溶媒中において、酸化チタンが凝集、沈降して局所的に偏在することが抑制され、良好な分散状態が持続される。また、酸化チタンは、紫外線防御性を有するが、油性顔料分散体中において酸化チタンが良好に分散していると、化粧料に優れた紫外線防御性をもたらし、皮膚に対する感触特性(使用感)が優れたものとなる。当該油性顔料分散体中において酸化チタンが局所的に偏在すると、油性顔料分散体を化粧料に配合したとき、紫外線防御性が化粧料の全体にわたって十分に発揮されない虞がある。
【0043】
油性顔料分散体におけるヒドロキシ脂肪酸の単独重合体と、炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物との合計含有量は、2~20質量%が好ましい。上記合計含有量が2質量%以上であることにより、油性顔料分散体の経時的なゲル化、酸化チタンの沈降等を抑制することができ、油性顔料分散体の分散安定性を向上させることができる。上記合計含有量が20質量%以下であることにより、油性顔料分散体を化粧料に配合したときの化粧料の感触特性を向上させることができる。また、ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体、及び炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物は、他の成分と比較して高価なものが多いため、上記合計含有量が20質量%以下であることによって、経済的となる。
【0044】
<炭素数が21以下であるアルカン系溶媒>
炭素数が21以下であるアルカン系溶媒は、化粧料の一般的な使用環境の範囲内(40℃以下)において液体として存在し、油性顔料分散体における分散媒として機能するものである。アルカン系溶媒の炭素数は9~21が好ましく、9~13がより好ましい。アルカン系溶媒の炭素数が9~13であることにより、油性顔料分散体における酸化チタンの分散性を向上させることができる。また、これらアルカン系溶媒は揮発性を有するため、油性顔料分散体を化粧料に配合したときの感触特性を向上させることができる。炭素数が9~13であるアルカン系溶媒としては、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等が挙げられる。これらのアルカン系溶媒は、単独で使用することができるが、二種以上を組み合わせた混合溶媒として使用することもできる。
【0045】
炭素数が21以下であるアルカン系溶媒は、自然由来であるものが好ましい。炭素数が21以下であるアルカン系溶媒が自然由来であることで、油性顔料分散体は、人体に低刺激となり、かつ環境負荷を低減することができる。また、当該油性顔料分散体を化粧料に配合することにより、化粧料は、身体、及び環境に優しいものとなる。さらに、油性顔料分散体が低刺激であることにより、化粧料中に比較的多量に配合することが可能になるため、化粧料のSPF値を増加させることができる。油性顔料分散体をより低刺激とし、環境負荷を低減し得る点で、炭素数が21以下であるアルカン系溶媒の自然由来指数は、0.8以上が好ましく、1がより好ましい。
【0046】
自然由来の炭素数が21以下であるであるアルカン系溶媒としては、例えば、自然由来指数が1であるウンデカン、ドデカン、トリデカン、ウンデカンとトリデカンとの混合溶媒(BASF社製CetiolUltimat5e)が挙げられる。
【0047】
油性顔料分散体における炭素数が21以下であるアルカン系溶媒の含有量は、20~60質量%が好ましい。油性顔料分散体における炭素数が21以下であるアルカン系溶媒の含有量が20質量%以上であることにより、油性顔料分散体の粘度が過度に大きくなることを抑制し得るため、油性顔料分散体を皮膚等に塗布し易いものとすることができる。油性顔料分散体における炭素数が21以下であるアルカン系溶媒の含有量が60質量%以下であることにより、過度に粘度が小さくなることを抑制し得るため、油性顔料分散体中の酸化チタンの分散性を向上させることができる。
【0048】
<その他の成分>
本発明の油性顔料分散体は、その他の成分を含むことも可能である。その他の成分としては、紫外線吸収剤、ゲル化剤、感触向上剤等が挙げられる。また、当該油性顔料分散体は、1質量%以下の水を含んでいてもよい。
【0049】
〔油性顔料分散体の自然由来指数〕
油性顔料分散体は、自然由来指数が0.8以上であることが好ましく、1であることがより好ましい。油性顔料分散体(の全体)の自然由来指数が0.8以上であることにより、油性顔料分散体は、人体に低刺激となり、かつ環境負荷を低減することができる。また、当該油性顔料分散体を化粧料に配合することにより、化粧料は、身体、及び環境に優しいものとなる。また、油性顔料分散体が低刺激であることにより、化粧料中に比較的多量に配合することが可能になるため、化粧料のSPF値を増加させることができる。油性顔料分散体の自然由来指数を0.8以上とするうえで、酸化チタン、ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体、炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物、及び炭素数が21以下であるアルカン系溶媒の自然由来指数が何れも0.8以上であることが好ましい。
【0050】
〔油性顔料分散体の製造方法〕
本発明の油性顔料分散体は、各原材料を混合する混合工程を実施して製造される。
【0051】
(混合工程)
混合工程では、酸化チタンに、ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体、炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物、炭素数が21以下であるアルカン系溶媒、及び任意でその他の成分を添加し、これらを混合することによって、ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体、及び炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物の存在下で、炭素数が21以下であるアルカン系溶媒中に酸化チタンが分散した油性顔料分散体が得られる。各原材料の混合方法としては、例えば、湿式ビーズミルを用いる方法が挙げられる。
【0052】
〔化粧料〕
本発明の化粧料は、上述した油性顔料分散体を配合したものである。油性顔料分散体の配合量は特に限定されないが、好ましくは1~95質量%である。上述した油性顔料分散体を配合することによって、化粧料は、感触特性、及び紫外線防御性が優れた製品となる。化粧料は、自然由来指数が0.8以上である油性顔料分散体を配合したものであることが好ましい。このような化粧料は、身体、及び環境に優しいものとなる。また、油性顔料分散体が低刺激であることにより、化粧料中に比較的多量に配合することが可能になるため、SPF値が増加した化粧料となる。
【0053】
本発明の化粧料は、水中油滴型(O/W型)のエマルジョン、及び油中水滴型(W/O型)のエマルジョンの何れの形態も採用できるが、油中水滴型(W/O型)のエマルジョンが好適である。
【0054】
さらに、本発明の化粧料には、通常化粧料に用いられる成分、例えば、酸化チタン以外の粉体、界面活性剤、油剤、ゲル化剤、高分子、美容成分、保湿剤、色素、防腐剤、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【実施例0055】
<油性顔料分散体>
本発明の油性顔料分散体(実施例1~6)を下記表1の処方に基づいて調製し、分散性、及び分散安定性を評価した。なお、分散性は粘度と相関があるため、粘度から分散性を評価した。また、比較のため、本発明の範囲外となる油性顔料分散体(比較例1~4)を下記表2の処方に基づいて調製し、同様の評価を実施した。
【0056】
〔実施例1〕
成分(A)である酸化チタンとして、水酸化アルミニウム及びステアリン酸により表面処理されてなる微粒子酸化チタン(品名:MT-100TV、テイカ株式会社製)50.0質量%に、成分(B)としてのポリヒドロキシステアリン酸(品名:サラコスHS-6C、日清オイリオグループ株式会社製)4.0質量%、成分(C)としてのテトライソステアリン酸ジグリセリル(品名:コスモール44V、日清オイリオグループ株式会社製)3.0質量%、及び成分(D)としてのドデカン43.0質量%を添加し、湿式ビーズミル(品名:1.4L DYNO-MILL KDL-Pilot、WAB社製)にて混合し、実施例1の油性顔料分散体を得た。上記湿式ビーズミルによる処理は、直径(φ)0.5mmのジルコニアビーズを充填率70%となるように投入し、周速14m/s、流量0.5kg/minにて実施した。微粒子酸化チタン、ポリヒドロキシステアリン酸、テトライソステアリン酸ジグリセリル、及びドデカンとしては、自然由来指数が1のものを使用した。
【0057】
〔実施例2〕
原材料の配合を変更したこと以外は実施例1と同様の処理を行って実施例2の油性顔料分散体を得た。実施例2の原材料の配合は、酸化チタン50.0質量%、ポリヒドロキシステアリン酸12.0質量%、テトライソステアリン酸ジグリセリル3.0質量%、及びドデカン35.0質量%である。
【0058】
〔実施例3〕
酸化チタン50.0質量%に、ポリヒドロキシステアリン酸6.0質量%、テトライソステアリン酸ジグリセリル6.0質量%、及び成分(D)としてのウンデカンとトリデカンとの混合物(ウンデカン/トリデカン)38.0質量%を添加し、実施例1と同様の処理を行って実施例3の油性顔料分散体を得た。ウンデカン/トリデカンとしては、自然由来指数が1のものを使用した。
【0059】
〔実施例4〕
酸化チタン50.0質量%に、ポリヒドロキシステアリン酸4.0質量%、成分(C)としてのトリイソステアリン酸ジグリセリル(品名:コスモール43V、日清オイリオグループ株式会社製)3.0質量%、及びドデカン43.0質量%を添加し、実施例1と同様の処理を行って実施例4の油性顔料分散体を得た。トリイソステアリン酸ジグリセリルとしては、自然由来指数が1のものを使用した。
【0060】
〔実施例5〕
原材料の配合を変更したこと以外は実施例1と同様の処理を行って実施例5の油性顔料分散体を得た。実施例5の原材料の配合は、酸化チタン50.0質量%、ポリヒドロキシステアリン酸6.0質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(品名:O.D.O、日清オイリオグループ株式会社製)2.0質量%、及びC18-21アルカン(炭素数18~21のアルカンの混合物)42.0質量%である。C18-21アルカンとしては、自然由来指数が1のものを使用した。
【0061】
〔実施例6〕
原材料の配合を変更したこと以外は実施例1と同様の処理を行って実施例6の油性顔料分散体を得た。実施例6の原材料の配合は、酸化チタン55.0質量%、ポリヒドロキシステアリン酸6.0質量%、テトライソステアリン酸ジグリセリル12.0質量%、及びドデカン27.0質量%である。
【0062】
〔比較例1〕
酸化チタン50.0質量%に、ポリヒドロキシステアリン酸4.0質量%、及びドデカン46.0質量%を添加し、実施例1と同様の処理を行って比較例1の油性顔料分散体を得た。比較例1の油性顔料分散体は、(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物を含まない処方である。
【0063】
〔比較例2〕
酸化チタン50.0質量%に、テトライソステアリン酸ジグリセリル15.0質量%、及びドデカン35.0質量%を添加し、実施例1と同様の処理を行って比較例2の油性顔料分散体を得た。比較例2の油性顔料分散体は、(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体を含まない処方である。
【0064】
〔比較例3〕
酸化チタン50.0質量%に、ポリヒドロキシステアリン酸6.0質量%、テトライソステアリン酸ジグリセリル6.0質量%、及び成分(d)としてのデカメチルシクロペンタシロキサン(品名:KF-995、信越化学工業株式会社製)38.0質量%を添加し、実施例1と同様の処理を行って比較例3の油性顔料分散体を得た。成分(d)は、炭素数が10であるシリコーン系溶媒である。すなわち、比較例3の油性顔料分散体は、(D)炭素数が21以下であるアルカン系溶媒を含まない処方である。
【0065】
〔比較例4〕
配合を変更したこと以外は実施例4と同様の原材料を用い、実施例1と同様の処理を行って比較例4の油性顔料分散体を得た。比較例4の原材料の配合は、酸化チタン50.0質量%、ポリヒドロキシステアリン酸6.0質量%、トリイソステアリン酸ジグリセリル15.0質量%、及びドデカン29.0質量%である。比較例4の油性顔料分散体は、(C)炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物と、(B)ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体との質量比(C/B)が2.50となる処方である。
【0066】
次に、実施例1~6、及び比較例1~4の油性顔料分散体について、分散性(粘度)、及び分散安定性を評価した。
【0067】
〔調製直後の油性顔料分散体の粘度〕
B型回転粘度計(品名:TVB-10H、東機産業株式会社製)を用い、調製直後の油性顔料分散体の粘度を測定した。B型回転粘度計においては、M2ローター、及びM3ローターを使用し、25℃、60rpmで60秒間の条件に設定した。具体的には、M2ローターを使用した場合の粘度の測定値の上限が500mPa・sであり、M3ローターを使用した場合の粘度の測定値の上限が2000mPa・sであることから、M2ローターを使用して粘度を測定できる場合には、M2ローターを使用し、M2ローターを使用して粘度を測定できない場合には、M3ローターを使用し、25℃、60rpmで60秒間の条件にて粘度を測定した。結果を表1及び2に示す。
【0068】
〔分散安定性〕
調製直後の油性顔料分散体を25℃又は50℃の恒温槽に1ヶ月間保存し、保存後の油性顔料分散体の粘度(mPa・s)を夫々測定した。粘度の測定条件は、調製直後と同様である。調製直後の粘度と比較して、保存後の粘度の変化(差)が小さい程、油性顔料分散体が初期の分散安定性に優れるものと評価される。結果を表1及び2に示す。
【0069】
【0070】
【0071】
表1に示すように、酸化チタン(成分(A))と、ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体(成分(B))と、炭素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物(成分(C))と、炭素数が21以下であるアルカン系溶媒(成分(D))とを含有し、成分(C)と成分(B)との質量比(C/B)が0.1~2である実施例1~6の油性顔料分散体の粘度は、調製直後と、室温1ヶ月後とで粘度に大きな差はなく、安定した分散状態が維持されていることが示された。特に、実施例2~6の油性顔料分散体は、調製直後、25℃1ヶ月後、及び50℃1ヶ月後において粘度に大きな差はなく、より安定した分散状態が維持されていることが示された。
【0072】
表2に示すように、成分(B)を含有しておらず、それゆえ質量比(C/B)を算出できない比較例2の油性顔料分散体は、調製直後の粘度が極めて高いことが示された。このように粘度が高過ぎると、湿式ビーズミル等の分散機によって成分(A)を均一に分散させることは困難であった。それゆえ、比較例2の油性顔料分散体については、分散安定性を評価しなかった。成分(D)に代えて、アルカン系溶媒ではない溶媒(成分(d))としてデカメチルシクロペンタシロキサン(シリコーンオイル)を用いた比較例3の油性顔料分散体は、成分(B)及び成分(C)と、デカメチルシクロペンタシロキサンとの相溶性が低いため、デカメチルシクロペンタシロキサンに成分(A)を分散させることができなかった。それゆえ、比較例3の油性顔料分散体については、分散安定性を評価しなかった。
【0073】
一方、成分(C)を含有しておらず、質量比(C/B)が0.1未満である比較例1の油性顔料分散体、及び成分(A)~(D)を含有しているものの、質量比(C/B)が2を超えている比較例4の油性顔料分散体は、調製直後の粘度も適切であり、分散安定性も良好であった。しかし、後述する表4及び6に示すように、比較例1及び4の油性顔料分散体は、化粧料に配合したときの感触特性、及び紫外線防御効果(SPF値)の少なくとも一方において劣るものであった。
【0074】
<化粧料>
上述した実施例1~6、及び比較例1及び4の油性顔料分散体を用いて化粧料を調製した。具体的には、表3及び4に示す処方で、実施例7~12、及び比較例5~6の油中水滴(W/O)型サンスクリーン化粧料を調製した。また、表5及び6に示す処方で、実施例13~18、及び比較例7~8の水中油滴(O/W)型サンスクリーン化粧料を調製した。なお、表3~6において、各成分の配合量の単位は質量%とする。得られたサンスクリーン化粧料について、感触特性試験、及び紫外線防御効果試験を行った。
【0075】
〔W/O型サンスクリーン化粧料の製法〕
油性成分である成分Xを混合し、ディスパーミキサーを用いて均一になるまでよく撹拌混合した。これとは別に、水性成分である成分Yを混合し、ディスパーミキサーを用いて均一になるまでよく撹拌混合した。次に、成分Xの混合物をホモミキサーで攪拌しながら、攪拌下の成分Xの混合物に、成分Yの混合物を徐々に添加し、十分に攪拌混合することによりW/O型のエマルジョンを形成し、実施例7~12、及び比較例5~6のW/O型のサンスクリーン化粧料を得た。
【0076】
〔O/W型サンスクリーン化粧料の製法〕
水性成分である成分X´を混合し、ディスパーミキサーを用いて均一になるまでよく撹拌混合した。これとは別に、油性成分である成分Y´を混合し、ディスパーミキサーを用いて均一になるまでよく撹拌混合した。次に、成分X´の混合物をホモミキサーで攪拌しながら、攪拌下の成分X´の混合物に、成分Y´の混合物を徐々に添加し、十分に攪拌混合することによりO/W型のエマルジョンを形成し、実施例13~18、及び比較例7~8のO/W型のサンスクリーン化粧料を得た。
【0077】
〔W/O型サンスクリーン化粧料の紫外線防御効果試験〕
実施例7~12、及び比較例5~6のW/O型サンスクリーン化粧料をPMMA板に塗布し、乾燥後、PMMA板上の所定の5箇所においてSPFアナライザー(Labsphere UV-2000S、Labsphere社製)を用いてSPF値を測定した。評価値は、5箇所での測定値の平均を採用した。結果を表3及び4に示す。
【0078】
〔W/O型サンスクリーン化粧料の感触特性試験〕
実施例7~12、及び比較例5~6のW/O型サンスクリーン化粧料について、専門パネラー10名による官能試験により感触特性を評価した。試験項目は、「伸びの良さ」、及び「ベタツキ感の無さ」の2項目とし、判定基準は1点~5点の5段階とした。点数が大きい程、特性が良好であることを示す。各項目に関する各パネラーの評価点数の平均値を評価結果とした。また、これら2項目の評価結果に基づいて、総合的な感触特性の評価を行った。結果を表3及び4に示す。
【0079】
(伸びの良さ)
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
【0080】
(ベタツキ感の無さ)
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
【0081】
(感触特性評価)
「伸びの良さ」の評価点数と、「ベタツキ感の無さ」の評価点数との合計点数を、下記の判定基準で評価した。「A」は非常に良好、「B」は良好、「C」は不良を示す。
A:8点以上
B:5点以上8点未満
C:5点未満
【0082】
〔O/W型サンスクリーン化粧料の紫外線防御効果試験〕
実施例13~18、及び比較例7~8のO/W型サンスクリーン化粧料について、W/O型サンスクリーン化粧料の紫外線防御効果試験と同様にSPF値を測定した。結果を表5及び6に示す。
【0083】
〔O/W型サンスクリーン化粧料の感触特性試験〕
実施例13~18、及び比較例7~8のO/W型サンスクリーン化粧料について、専門パネラー10名による官能試験により感触特性を評価した。試験項目は、「さっぱり感」、及び「みずみずしさ」の2項目とし、判定基準は1点~5点の5段階とした。点数が大きい程、特性が良好であることを示す。各項目に関する各パネラーの評価点数の平均値を評価結果とした。また、これら2項目の評価結果に基づいて、総合的な感触特性の評価を行った。結果を表5及び6に示す。
【0084】
(さっぱり感)
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
【0085】
(みずみずしさ)
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
【0086】
(感触特性評価)
「さっぱり感」の評価点数と、「みずみずしさ」の評価点数との合計点数を、下記の判定基準で評価した。「A」は非常に良好、「B」は良好、「C」は不良を示す。
A:8点以上
B:5点以上8点未満
C:5点未満
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
表3に示すように、実施例1~6の油性顔料分散体を使用した実施例7~12のW/O型サンスクリーン化粧料は、優れた感触特性と、高いSPF値とが得られた。
【0092】
これに対し、表4に示すように、比較例1の油性顔料分散体を使用した比較例5のW/O型サンスクリーン化粧料は、実施例7~12のW/O型サンスクリーン化粧料と比較して、感触特性は同等であるが、SPF値が低いものであった。このことから、分散剤としてヒドロキシ脂肪酸の単独重合体(成分(B))のみを使用する場合よりも、ヒドロキシ脂肪酸の単独重合体(成分B)と、素数8~20の脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物(成分(C))との2種類を使用することで、高い紫外線防御効果が得られることが示された。また、質量比(C/B)が2超である比較例4の油性顔料分散体を使用した比較例6のW/O型サンスクリーン化粧料は、成分(C)の配合比率が高いため、伸びとベタツキ感とが不良であり、またSPF値も低いものであった。
【0093】
表5に示すように、実施例1~6の油性顔料分散体を使用した実施例13~18のO/W型サンスクリーン化粧料は、優れた感触特性と、高いSPF値とが得られた。
【0094】
これに対し、表6に示すように、比較例1の油性顔料分散体を使用した比較例7のO/W型サンスクリーン化粧料、及び比較例4の油性顔料分散体を使用した比較例8のO/W型サンスクリーン化粧料は、実施例13~18のO/W型サンスクリーン化粧料と比較して、感触特性とSPF値とが低いものであった。
本発明の油性顔料分散体は、ファンデーション、アイシャドウ、ほほ紅等のメイクアップ化粧料、サンスクリーン化粧料、乳液、クリームといった広範な基礎化粧品への利用に適する。