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特開2024-119614車載システム、配電車載装置、及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119614
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】車載システム、配電車載装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20240827BHJP
   H02H 3/093 20060101ALI20240827BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H02J1/00 307C
H02J1/00 309Q
H02H3/093 D
B60R16/02 645Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026640
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】内野 剛雄
(72)【発明者】
【氏名】小田 康太
(72)【発明者】
【氏名】谷中 裕太
【テーマコード(参考)】
5G004
5G165
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004AB03
5G004BA03
5G004BA04
5G004DA02
5G004DC01
5G004DC14
5G004EA01
5G165AA01
5G165BB04
5G165EA02
5G165FA01
5G165GA04
5G165GA09
5G165KA04
5G165NA05
(57)【要約】
【課題】車両が低電流状態である場合において、制御に必要な電力を低減することができる車載システム等を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る車載システムは、前記電源装置に接続する上流経路と、前記上流経路から分岐し、前記負荷に接続する下流経路と、前記上流経路に設けられる上流半導体ヒューズを含む上流車載装置と、前記下流経路それぞれに設けられる下流半導体ヒューズを含む下流車載装置とを備え、前記上流車載装置は、前記上流半導体ヒューズのオンまたはオフを制御する第1制御部とを備え、前記下流車載装置は、前記下流半導体ヒューズのオンまたはオフを制御する第2制御部とを備え、前記第1制御部は、前記車両が低電流状態である場合、前記上流半導体ヒューズの遮断特性を、前記車両が通常電流状態である場合に比べて低い特性に設定し、前記第2制御部は、前記車両が低電流状態である場合、前記下流半導体ヒューズをオンに固定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、電源装置から供給された電力を複数の負荷に分配する車載システムであって、
前記車両の状態は、前記負荷の消費電流が通常電流である通常電流状態と、前記負荷の消費電流が通常電流よりも小さい低電流状態とを含み、
前記電源装置に接続する上流経路と、
前記上流経路から分岐し、前記負荷に接続する下流経路と、
前記上流経路に設けられる上流半導体ヒューズを含む上流車載装置と、
前記下流経路それぞれに設けられ、ヒューズ機能及びリレー機能を有する下流半導体ヒューズを含む下流車載装置と
を備え、
前記上流車載装置は、
前記上流半導体ヒューズのオンまたはオフを制御する第1制御部と
を備え、
前記下流車載装置は、
前記下流半導体ヒューズのオンまたはオフを制御する第2制御部と
を備え、
前記第1制御部は、前記車両が低電流状態である場合、前記上流半導体ヒューズの遮断特性を、前記車両が通常電流状態である場合に比べて低い特性に設定し、
前記第2制御部は、前記車両が低電流状態である場合、前記下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止させる
車載システム。
【請求項2】
前記第1制御部は、前記下流経路に接続する前記負荷の組み合わせに基づいて前記上流半導体ヒューズの遮断特性を設定する
請求項1に記載の車載システム。
【請求項3】
前記第1制御部は、前記上流半導体ヒューズの遮断特性を、ヒューズ機能が有効である場合の前記下流半導体ヒューズの遮断特性における過電流の電流値に対して前記下流半導体ヒューズをオフにするまでの時間よりも過電流の電流値に対して前記上流半導体ヒューズをオフにするまでの時間が短くなり、前記車両が低電流状態である場合に前記下流経路における電流値の合計よりも定格電流値が高くなるように設定する
請求項1または2に記載の車載システム。
【請求項4】
前記第1制御部は、
前記上流経路の電流値を取得し、
取得した前記上流経路の電流が、前記上流半導体ヒューズの遮断特性における定格電流値を超えた状態で所定の時間以上流れた場合、前記上流半導体ヒューズをオフに切り替える
請求項1または2に記載の車載システム。
【請求項5】
複数の前記下流半導体ヒューズのうち、少なくとも一部はPチャネル型のFETである
請求項1または2に記載の車載システム。
【請求項6】
車両に搭載され、電源装置から供給された電力を複数の負荷に分配する配電車載装置であって、
前記車両の状態は、前記負荷の消費電流が通常電流である通常電流状態と、前記負荷の消費電流が通常電流よりも小さい低電流状態とを含み、
前記電源装置に接続する上流経路と、
前記上流経路から分岐し、前記負荷に接続する下流経路と、
前記上流経路に設けられる上流半導体ヒューズと、
前記下流経路それぞれに設けられ、ヒューズ機能及びリレー機能を有する下流半導体ヒューズと、
前記上流半導体ヒューズ及び前記下流半導体ヒューズのオンまたはオフを制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記車両が低電流状態である場合、前記下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止させ、
前記上流半導体ヒューズの遮断特性を、前記車両が通常電流状態である場合に比べて低い特性に設定する
配電車載装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記下流経路に接続する前記負荷の組み合わせに基づいて前記上流半導体ヒューズの遮断特性を設定する
請求項6に記載の配電車載装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記上流経路の電流値を取得し、
取得した前記上流経路の電流が、前記上流半導体ヒューズの遮断特性における定格電流値を超えた状態で所定の時間以上流れた場合、前記上流半導体ヒューズをオフに切り替える
請求項6または7に記載の配電車載装置。
【請求項9】
複数の前記下流半導体ヒューズのうち、少なくとも一部はPチャネル型のFETである
請求項6または7に記載の配電車載装置。
【請求項10】
車両に搭載され、電源装置から供給された電力を複数の負荷に分配する車載システムの制御方法であって、
前記車両の状態は、前記負荷の消費電流が通常電流である通常電流状態と、前記負荷の消費電流が通常電流よりも小さい低電流状態とを含み、
前記車載システムは、
前記電源装置に接続する上流経路と、
前記上流経路から分岐し、前記負荷に接続する下流経路と、
前記上流経路に設けられる上流半導体ヒューズと、
前記下流経路それぞれに設けられ、ヒューズ機能及びリレー機能を有する下流半導体ヒューズと
を備え、
前記車両の状態が低電流状態である場合、前記上流半導体ヒューズの遮断特性を、前記車両が通常電流状態である場合に比べて低い特性に設定し、
前記下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止させる
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、車載システム、配電車載装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、バッテリから負荷への給電を制御する給電制御装置(例えば、特許文献1を参照)が搭載されている。特許文献1に記載の給電制御装置では、バッテリから負荷に流れる電流の電流経路に半導体スイッチが設けられ、半導体スイッチをオン又はオフに切替えることによって、バッテリから負荷への給電を制御する。
【0003】
半導体スイッチは制御端を有する。例えば、半導体スイッチがFET(Field Effect Transistor)である場合、制御端はゲートである。半導体スイッチの両端間の抵抗値は、制御端の電圧に応じて変化する。制御端の電圧を調整することによって、半導体スイッチの両端間の抵抗値を十分に小さい値に調整し、半導体スイッチをオンに切替える。制御端の電圧を調整することによって、半導体スイッチの両端間の抵抗値を十分に大きい値に調整し、半導体スイッチをオフに切替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-143905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常電流状態または低電流状態のいずれかの状態をとる車両が低電流状態である場合、車両の車載システムの処理に供することができる電力は限られており、必要な電力を低減することが必要である。
【0006】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、車両が低電流状態である場合において、制御に必要な電力を低減することができる車載システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る車載システムは、車両に搭載され、電源装置から供給された電力を複数の負荷に分配する車載システムであって、前記車両の状態は、前記負荷の消費電流が通常電流である通常電流状態と、前記負荷の消費電流が通常電流よりも小さい低電流状態とを含み、前記電源装置に接続する上流経路と、前記上流経路から分岐し、前記負荷に接続する下流経路と、前記上流経路に設けられる上流半導体ヒューズを含む上流車載装置と、前記下流経路それぞれに設けられ、ヒューズ機能及びリレー機能を有する下流半導体ヒューズを含む下流車載装置とを備え、前記上流車載装置は、前記上流半導体ヒューズのオンまたはオフを制御する第1制御部とを備え、前記下流車載装置は、前記下流半導体ヒューズのオンまたはオフを制御する第2制御部とを備え、前記第1制御部は、前記車両が低電流状態である場合、前記上流半導体ヒューズの遮断特性を、前記車両が通常電流状態である場合に比べて低い特性に設定し、前記第2制御部は、前記車両が低電流状態である場合、前記下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止させる。
【0008】
本開示の一実施形態に係る配電車載装置は、車両に搭載され、電源装置から供給された電力を複数の負荷に分配する配電車載装置であって、前記車両の状態は、前記負荷の消費電流が通常電流である通常電流状態と、前記負荷の消費電流が通常電流よりも小さい低電流状態とを含み、前記電源装置に接続する上流経路と、前記上流経路から分岐し、前記負荷に接続する下流経路と、前記上流経路に設けられる上流半導体ヒューズと、前記下流経路それぞれに設けられ、ヒューズ機能及びリレー機能を有する下流半導体ヒューズと、前記上流半導体ヒューズ及び前記下流半導体ヒューズのオンまたはオフを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記車両が低電流状態である場合、前記下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止させ、前記上流半導体ヒューズの遮断特性を、前記車両が通常電流状態である場合に比べて低い特性に設定する。
【0009】
本開示の一実施形態に係る制御方法は、車両に搭載され、電源装置から供給された電力を複数の負荷に分配する車載システムの制御方法であって、前記車両の状態は、前記負荷の消費電流が通常電流である通常電流状態と、前記負荷の消費電流が通常電流よりも小さい低電流状態とを含み、前記車載システムは、前記電源装置に接続する上流経路と、前記上流経路から分岐し、前記負荷に接続する下流経路と、前記上流経路に設けられる上流半導体ヒューズと、前記下流経路それぞれに設けられ、ヒューズ機能及びリレー機能を有する下流半導体ヒューズとを備え、前記車両の状態が低電流状態である場合、前記上流半導体ヒューズの遮断特性を、前記車両が通常電流状態である場合に比べて低い特性に設定し、前記下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態に係る車載システムにあっては、車両が低電流状態である場合において、制御に必要な電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る車載システムの構成例を示すブロック図である。
図2】第1マイコンの構成例を示すブロック図である。
図3】遮断特性テーブルを示す説明図である。
図4】特性曲線を示す説明図である。
図5】第2マイコンの構成例を示すブロック図である。
図6】第1マイコンの処理手順を示すフローチャートである。
図7】第2マイコンの処理手順を示すフローチャートである。
図8】実施形態2に係る車載システムの構成例を示すブロック図である。
図9】実施形態2に係るマイコンの構成例を示すブロック図である。
図10】実施形態2に係るマイコンの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本開示の一態様に係る車載システムは、車両に搭載され、電源装置から供給された電力を複数の負荷に分配する車載システムであって、前記車両の状態は、前記負荷の消費電流が通常電流である通常電流状態と、前記負荷の消費電流が通常電流よりも小さい低電流状態とを含み、前記電源装置に接続する上流経路と、前記上流経路から分岐し、前記負荷に接続する下流経路と、前記上流経路に設けられる上流半導体ヒューズを含む上流車載装置と、前記下流経路それぞれに設けられ、ヒューズ機能及びリレー機能を有する下流半導体ヒューズを含む下流車載装置とを備え、前記上流車載装置は、前記上流半導体ヒューズのオンまたはオフを制御する第1制御部とを備え、前記下流車載装置は、前記下流半導体ヒューズのオンまたはオフを制御する第2制御部とを備え、前記第1制御部は、前記車両が低電流状態である場合、前記上流半導体ヒューズの遮断特性を、前記車両が通常電流状態である場合に比べて低い特性に設定し、前記第2制御部は、前記車両が低電流状態である場合、前記下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止させる。
【0014】
本態様にあっては、電源装置から供給される電力は、上流経路と、上流経路から分岐する複数の下流経路を介して、複数の負荷に供給される。各下流経路には、例えば一つずつ負荷が接続されている。上流経路と各下流経路とには、車載装置がそれぞれ設けられる。すなわち、車載装置は給電制御装置として作動する。車載装置は、上流経路に設けられる上流車載装置と、下流経路に設けられる下流車載装置とを含む。上流車載装置は、上流半導体ヒューズと上流半導体ヒューズを制御する第1制御部によって下流経路への給電を制御する。各下流車載装置は、下流半導体ヒューズと、下流半導体ヒューズを制御する第2制御装置によって負荷への給電を制御する。なお、下流車載装置は機械式スイッチを備え、第2制御装置は機械式スイッチを制御することによって負荷への給電を制御してもよい。車両が起動している場合、電源装置から負荷に通常電流が流れる通常電流状態となり、車両が停止している場合、電源装置から負荷に低電流(暗電流)が流れる低電流状態となる。低電流の電流値は通常電流の電流値よりも低く、例えば10mA~100mAである。低電流の電流値は、例えば通常電流の電流値の百分の一程度、または千分の一程度などの低い値である。車両が停止している場合、車両の負荷に供給される電流を低電流にすることで、電源装置の消耗を低減する。車両は、例えば、パワースイッチまたはイグニッションスイッチがオンである場合に起動し、オフである場合に停止する。車両が低電流状態である場合、第1制御部は、上流半導体ヒューズの遮断特性を、車両が通常電流状態である場合に比べて低い特性に設定する。また、各下流車載装置の第2制御部は、下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止(無効化)し、リレー機能を継続稼動(有効化)する。これにより、低電流状態である場合に第2制御部は下流半導体ヒューズのヒューズ機能によるオンまたはオフの切り替えを行う必要がなく、第2制御部の駆動周波数を減少させるまたは下流半導体ヒューズをオンに固定して第2制御部による下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止さることによって、第2制御部による処理に必要な電力を低減することが可能である。また、上流半導体ヒューズの遮断特性の値を低くすることにより、低電流状態における電流値を基準として過電流を判定することができ、下流経路を精度よく保護することが可能である。なお、下流半導体ヒューズはリレー機能を有さず、下流経路に別途リレーが設けられてもよい。この場合、車両が低電流状態である場合に下流半導体ヒューズはオンに固定され、通電が可能な状態でヒューズ機能が停止される。
【0015】
(2)本開示の一態様に係る車載システムは、前記第1制御部は、前記下流経路に接続する前記負荷の組み合わせに基づいて前記上流半導体ヒューズの遮断特性を設定する。
【0016】
本態様にあっては、第1制御部は、例えば、下流経路に接続される負荷の組み合わせに対して設定する遮断特性が格納されたテーブルを記憶し、該テーブルに基づいて上流半導体ヒューズの遮断特性を設定する。なお、第1制御部は、下流経路に接続される負荷のうち、車両が低電流状態である場合に起動する必要がある負荷の組み合わせに基づいて、上流半導体ヒューズの遮断特性を設定してもよい。これにより、低電流状態において電力が必要な負荷に電力を供給しつつ、下流経路を精度よく保護することが可能である。
【0017】
(3)本開示の一態様に係る車載システムは、前記第1制御部は、前記上流半導体ヒューズの遮断特性を、ヒューズ機能が有効である場合の前記下流半導体ヒューズの遮断特性における過電流の電流値に対して前記下流半導体ヒューズをオフにするまでの時間よりも過電流の電流値に対して前記上流半導体ヒューズをオフにするまでの時間が短くなり、前記車両が低電流状態である場合の前記下流経路における電流値の合計よりも定格電流値が高くなるように設定する。
【0018】
本態様にあっては、上流半導体ヒューズの遮断特性は、例えば、リレー機能によりオンにされている下流半導体ヒューズのうち、ヒューズ機能が有効である場合の遮断特性における過電流の電流値に対してオフにされるまでの時間が最も短い下流半導体ヒューズよりも、過電流の電流値に対して上流半導体ヒューズがオフにされるまでの時間が短くなるように設定される。また、上流半導体ヒューズの遮断特性は、例えば、リレー機能によりオンにされている下流半導体ヒューズに流れる電流値(下流経路における電流値)の合計よりも定格電流値が高くなるように設定される。すなわち、リレー機能によりオンにされている下流半導体ヒューズが一つである場合、上流半導体ヒューズの遮断特性は、該下流半導体ヒューズの遮断特性よりも低い値に設定される。これにより、より高い精度で下流経路を保護することが可能である。
【0019】
(4)本開示の一態様に係る車載システムは、前記第1制御部は、前記上流経路の電流値を取得し、取得した前記上流経路の電流が、前記上流半導体ヒューズの遮断特性における定格電流値を超えた状態で所定の時間以上流れた場合、前記上流半導体ヒューズをオフに切り替える。
【0020】
本態様にあっては、上流経路に定格電流値を超える電流が所定の時間流れた場合、上流半導体ヒューズをオフに切り替えることによって、下流経路を保護することが可能である。なお、第1制御部は、上流経路に流れる電流値が大きいほど短い時間で上流半導体ヒューズをオフに切り替える。遮断特性は、電流を遮断するための定格電流値と、定格電流値を超える電流(過電流)に対して電流を遮断するまでの時間とを含む上流半導体ヒューズの特性である。上流半導体ヒューズの遮断特性が高い場合、定格電流値は高く、過電流に対して遮断するまでの時間は長い。遮断特性を下げて低くした場合、定格電流値は低くなり、過電流に対して遮断するまでの時間は短くなる。すなわち、遮断特性の高低に応じて、電流値と遮断までの時間の積(電流積算値)は上下する。上流半導体ヒューズの遮断特性は、例えば、下流経路の発煙特性または下流経路に接続される負荷のデバイス特性の合計よりも低くなるように設定される。これにより、過電流が流れた場合、上流半導体ヒューズをオフにすることで、下流経路の発煙または負荷の故障が生じる可能性を低減することができる。なお、上流経路に流れる電流値が定格電流値以下である場合、第1制御部は、上流半導体ヒューズ32をオフに切り替えない。
【0021】
(5)本開示の一態様に係る車載システムは、複数の前記下流半導体ヒューズのうち、少なくとも一部はPチャネル型のFETである。
【0022】
本態様にあっては、車両が低電流状態である場合、下流半導体ヒューズに電圧を印加することなく下流半導体ヒューズをオンに固定することが出来る。これにより、第2制御部が下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止する際の処理または電圧の印加のための電力が不要となり、第2制御部による処理に必要な電力を低減することが可能である。
【0023】
(6)本開示の一態様に係る配電車載装置は、本開示の一実施形態に係る配電車載装置は、車両に搭載され、電源装置から供給された電力を複数の負荷に分配する配電車載装置であって、前記車両の状態は、前記負荷の消費電流が通常電流である通常電流状態と、前記負荷の消費電流が通常電流よりも小さい低電流状態とを含み、前記電源装置に接続する上流経路と、前記上流経路から分岐し、前記負荷に接続する下流経路と、前記上流経路に設けられる上流半導体ヒューズと、前記下流経路それぞれに設けられ、ヒューズ機能及びリレー機能を有する下流半導体ヒューズと、前記上流半導体ヒューズ及び前記下流半導体ヒューズのオンまたはオフを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記車両が低電流状態である場合、前記下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止させ、前記上流半導体ヒューズの遮断特性を、前記車両が通常電流状態である場合に比べて低い特性に設定する。
【0024】
本態様にあっては、電源装置から供給される電力は、車載装置を介して複数の負荷に供給される。すなわち、車載装置は給電制御装置として動作する。車載装置は、電源装置に接続する上流経路と、上流経路から分岐し、各負荷に接続する下流経路とを備える。車載装置の制御部は、上流経路に設けられる上流半導体ヒューズと、下流経路それぞれに設けられる下流半導体ヒューズのオンまたはオフを制御する。車両が低電流状態である場合、制御部は、下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止し、上流半導体ヒューズの遮断特性を低く設定することで、処理に必要な電力を低減しながら、下流経路を精度よく保護することが可能である。
【0025】
(7)本開示の一態様に係る配電車載装置は、前記制御部は、前記下流経路に接続する前記負荷の組み合わせに基づいて前記上流半導体ヒューズの遮断特性を設定する。
【0026】
本態様にあっては、制御部は、例えば、下流経路に接続される負荷の組み合わせに対して設定する遮断特性が格納されたテーブルを記憶し、該テーブルに基づいて上流半導体ヒューズの遮断特性を設定する。なお、第1制御部は、下流経路に接続される負荷のうち、車両が低電流状態である場合に起動する必要がある負荷の組み合わせに基づいて、上流半導体ヒューズの遮断特性を設定してもよい。これにより、低電流状態において電力が必要な負荷に電力を供給しつつ、下流経路を精度よく保護することが可能である。
【0027】
(8)本開示の一態様に係る配電車載装置は、前記制御部は、前記上流経路の電流値を取得し、取得した前記上流経路の電流が、前記上流半導体ヒューズの遮断特性における定格電流値を超えた状態で所定の時間以上流れた場合、前記上流半導体ヒューズをオフに切り替える。
【0028】
本態様にあっては、上流経路に定格電流値を超える電流が所定の時間流れた場合、上流半導体ヒューズをオフに切り替えることによって、下流経路を保護することが可能である。
【0029】
(9)本開示の一態様に係る配電車載装置は、複数の前記下流半導体ヒューズのうち、少なくとも一部はPチャネル型のFETである。
【0030】
本態様にあっては、車両が低電流状態である場合、下流半導体ヒューズに電圧を印加することなく下流半導体ヒューズをオンに固定することが出来るので、下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止する際の制御部による処理に必要な電力を低減することが可能である。
【0031】
(10)本開示の一実施形態に係る制御方法は、車両に搭載され、電源装置から供給された電力を複数の負荷に分配する車載システムの制御方法であって、前記車両の状態は、前記負荷の消費電流が通常電流である通常電流状態と、前記負荷の消費電流が通常電流よりも小さい低電流状態とを含み、前記車載システムは、前記電源装置に接続する上流経路と、前記上流経路から分岐し、前記負荷に接続する下流経路と、前記上流経路に設けられる上流半導体ヒューズと、前記下流経路それぞれに設けられ、ヒューズ機能及びリレー機能を有する下流半導体ヒューズとを備え、前記車両の状態が低電流状態である場合、前記上流半導体ヒューズの遮断特性を、前記車両が通常電流状態である場合に比べて低い特性に設定し、前記下流半導体ヒューズのヒューズ機能を停止させる。
【0032】
本態様にあっては、車載システムの処理に必要な電力を低減しながら、下流経路を精度よく保護することが可能である。
【0033】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る給電制御装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0034】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車載システムの構成例を示すブロック図である。車載システムSは、車両Cに備えられ、電源装置1、電路2、上流車載装置3、複数の下流車載装置4、及び複数の負荷5を備える。電路2は、電源装置に接続する上流電路(上流経路)21と、上流電路から分岐し、負荷に接続する下流電路(下流経路)22とを含む。電源装置1は、鉛蓄電池、水素電池、または二次電池などのバッテリ、またはオルタネータなどの直流電流を出力する電源である。上流車載装置3は、電源装置1の正極と、複数の下流車載装置4とに接続される。各下流車載装置4は、上流車載装置3と、負荷5の一端に接続される。上流車載装置3及び下流車載装置4は、例えば、電源装置1から負荷5への電流を制御するECU(Electronic Control Unit)である。電源装置1の負極と、負荷5の他端は接地されている。各下流経路22は、例えば一つの負荷5に接続する。本実施形態においては、上流経路21から流れる電流は3本の下流経路22に分岐し、3つの負荷5に給電される態様を説明する。なお、下流経路22の本数及び負荷5の個数は3に限られない。
【0035】
車両が起動した場合、電源装置1は負荷5を作動させるための電流(通常電流)の電力を供給し、車両は通常電流状態となる。車両が停止した場合、電源装置1は通常電流よりも電流値が低い低電流の電力を供給し、車両は低電流状態となる。低電流の電力が供給される負荷5は、例えば、車内灯、またはセキュリティに関する装置など、車両停止中であっても作動する必要がある装置の負荷である。
【0036】
上流車載装置3は、上流経路21に設けられ、電源装置1から受電した電力を下流車載装置4に送電する。上流車載装置3は、第1マイクロコンピュータ(マイコン)31、上流半導体ヒューズ32、駆動回路33、抵抗34、及び電流検出回路35を備える。第1マイコン31の詳細については後述する。
【0037】
上流半導体ヒューズ32は、例えば、Nチャネル型のFET(Field Effect Transistor)であり、ドレインがソースに対して上流側に配置されるように上流経路21に設けられている。すなわち、上流半導体ヒューズ32のドレインは電源装置1に接続されている。なお、上流半導体ヒューズ32には、Pチャネル型のFET、トランジスタ、サイリスタ、またはIPD(Intelligent Power Device)などが用いられてもよい。上流半導体ヒューズ32のゲートに電圧が印加された場合、上流半導体ヒューズ32はオンとなり、電流が流れることが可能である。上流半導体ヒューズ32のゲートに電圧が印加されない場合、上流半導体ヒューズ32はオフとなり、電流は流れない。
【0038】
駆動回路33は、上流半導体ヒューズ32のゲートに印加する電圧を制御することにより、上流半導体ヒューズ32をオンまたはオフに切り替える。駆動回路33は、例えば、FPGA、ASIC、またはASSPなどの電子デバイスである。なお、駆動回路33はマイコンまたはDSP等のソフトウェア処理部であってもよい。駆動回路33は、第1マイコン31から上流半導体ヒューズ32をオンにする指示を示す信号(Hi電圧)が入力された場合、上流半導体ヒューズ32のゲートに電圧を印加し、上流半導体ヒューズ32をオンにする。駆動回路33は、第1マイコン31から上流半導体ヒューズ32をオフにする指示を示す信号(Lоw電圧)が入力された場合、上流半導体ヒューズ32のゲートに電圧を印加せず、上流半導体ヒューズ32をオフにする。
【0039】
抵抗34の一端は、上流半導体ヒューズ32のソースに接続されている。抵抗34の他端は、下流車載装置4に接続されている。なお、抵抗34は上流半導体ヒューズ32の上流側に設けられてもよい。
【0040】
電流検出回路35は、抵抗34を流れる電流の電流値(上流電流値)を検出する。電流検出回路35は、検出した上流電流値を示すアナログの上流電流情報を第1マイコン31に出力する。
【0041】
下流車載装置4は、下流経路22に設けられ、上流車載装置3から受電した電力を負荷5に送電する。車載システムSが備える複数の下流車載装置4は同様の構成である。このため、以下では一つの下流車載装置4について説明する。下流車載装置4は、第2マイコン41、下流半導体ヒューズ42、駆動回路43、抵抗44、及び電流検出回路45を備える。第2マイコン41の詳細については後述する。
【0042】
下流半導体ヒューズ42は、例えば、Pチャネル型のFETであり、ソースがドレインに対して上流側に配置されるように下流経路22に設けられている。すなわち、下流半導体ヒューズ42のソースは、上流車載装置3に接続されている。なお、下流半導体ヒューズ42には、Fチャネル型のFET、トランジスタ、サイリスタ、またはIPDなどが用いられてもよい。また、下流半導体ヒューズ42に代えて、機械式スイッチが設けられてもよい。下流半導体ヒューズ42のゲートに電圧が印加された場合、下流半導体ヒューズ42はオフとなり、電流は流れない。下流半導体ヒューズ42のゲートに電圧が印加されない場合、下流半導体ヒューズ42はオンとなり、電流が流れることが可能である。
【0043】
駆動回路43は、下流半導体ヒューズ42のゲートに印加する電圧を制御することにより、下流半導体ヒューズ42をオンまたはオフに切り替える。駆動回路43は、例えば、FPGA、ASIC、またはASSPなどの電子デバイスである。なお、駆動回路43はマイコンまたはDSP等のソフトウェア処理部であってもよい。駆動回路43は、第2マイコン41から下流半導体ヒューズ42をオンにする指示を示す信号(Low電圧)が入力された場合、または信号が出力されていない場合、下流半導体ヒューズ42のゲートに電圧を印加し、下流半導体ヒューズ42をオンにする。駆動回路43は、第2マイコン41から下流半導体ヒューズ42をオフにする指示を示す信号(Hi電圧)が入力された場合、下流半導体ヒューズ42のゲートに電圧を印加し、下流半導体ヒューズ42をオフにする。
【0044】
抵抗44の一端は、下流半導体ヒューズ42のドレインに接続されている。抵抗44の他端は、負荷5に接続されている。なお、抵抗44は、下流半導体ヒューズ42の上流側に設けられてもよい。また、抵抗44と負荷5との間に溶断素子(機械式ヒューズ)が設けられてもよい。
【0045】
電流検出回路45は、抵抗44を流れる電流の電流値(下流電流値)を検出する。電流検出回路45は、検出した下流電流値を示すアナログの下流電流情報を第2マイコン41に出力する。
【0046】
図2は、第1マイコン31の構成例を示すブロック図である。第1マイコン31は、車両Cの状態の判定、及び上流半導体ヒューズ32の制御が可能な第1制御部として作動する。第1マイコン31は、入力部310、入力部311、A/D変換部312、出力部313、記憶部314、及び処理部315を備える。入力部310、A/D変換部312、出力部313、記憶部314、及び処理部315は、内部バス316に接続されている。A/D変換部312は、入力部311に接続されている。
【0047】
入力部310には、下流経路22に接続されている負荷5の種類を識別する識別信号が入力される。入力部310に入力される識別信号は、例えば、負荷5が出力した信号であるが、下流経路22に接続されている負荷5の種類を判定可能な他の車載装置によって出力された信号であってもよい。
【0048】
入力部311には、電流検出回路35から上流電流情報(上流電流値)が入力される。入力部311は、上流電流情報が入力された場合、入力されたアナログの上流電流情報をA/D変換部312に出力する。処理部315は、A/D変換部312が変換したデジタルの上流電流情報を、A/D変換部312から取得する。
【0049】
出力部313は、駆動回路33にHi電圧またはLow電圧を出力する。出力部313は、処理部315の指示に従って、駆動回路33に出力する電圧をHi電圧またはLow電圧に切り替える。駆動回路33は、出力部313から入力されている電圧に応じて、上流半導体ヒューズ32をオンまたはオフに切り替える。
【0050】
記憶部314は不揮発性メモリである。記憶部314には、コンピュータプログラムP1及び遮断特性テーブルTが記憶されている。処理部315は、処理を実行する処理素子、例えば、CPU(Central Processing Unit)を有する。処理部315の処理素子は、コンピュータプログラムP1を実行することによって、車両Cの状態を判定する処理、及び上流半導体ヒューズ32を制御する処理を実行する。コンピュータプログラムP1は、処理部315の処理素子(コンピュータ)に処理を実行させるために用いられる。
【0051】
なお、コンピュータプログラムP1は、処理部315の処理素子が読み取り可能に、記憶媒体Eに記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体Eから読み出されたコンピュータプログラムP1が記憶部314に記憶される。記憶媒体Eは、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。光ディスクは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、又は、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)等である。磁気ディスクは、例えばハードディスクである。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラムP1をダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムP1を記憶部314に記憶してもよい。
【0052】
また、処理部315が有する処理素子の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。処理部315が複数の処理素子を有する場合、複数の処理素子が協同して処理を実行してもよい。
【0053】
図3は、遮断特性テーブルTを示す説明図である。図4は、特性曲線を示す説明図である。遮断特性テーブルTの管理項目は、例えば、接続負荷フィールドと、特性曲線フィールドとを含む。接続負荷フィールドには、下流経路22に接続される負荷5の種類の組み合わせが格納される。本実施形態においては、負荷5の種類がA、B、C、及びDの4種類を含む形態を説明する。なお、負荷5の種類は、例えば負荷5が備えられる車内灯などの機器の種類に対応するものであってもよい。また、図3に示す例においては、3本の下流経路22すべてに種類が異なる負荷5が接続される形態を示しているが、これに限られない。負荷5は一部の下流経路22にのみ接続されてもよく、同種の負荷5が複数の下流経路22に接続されてもよい。
【0054】
特性曲線フィールドには、低電流状態において、下流経路22に接続される負荷5の種類の組み合わせに対して選択される、上流半導体ヒューズ32の遮断特性を示す特性曲線が格納されている。本実施形態においては、特性曲線はW、X、Y、及びZの4種を含む。特性曲線フィールドに格納される特性曲線は、例えば、二次配列のデータ形式で格納される。処理部315は、負荷5の種類の組み合わせに基づいて、遮断特性テーブルTに格納されている特性曲線を選択することによって、遮断特性を設定する。
【0055】
遮断特性は、処理部315が上流半導体ヒューズ32をオフにして電流を遮断する電流値と、定格電流値を超える電流(過電流)に対して電流を遮断するまでの通電時間とを含む上流半導体ヒューズ32の特性である。上流半導体ヒューズの遮断特性が高い場合、定格電流値は高く、過電流に対して遮断するまでの通電時間は長い。遮断特性を下げて低くした場合、定格電流値は低くなり、過電流に対して遮断するまでの通電時間は短くなる。すなわち、遮断特性の高低に応じて、電流値と遮断までの通電時間の積(電流積算値)は上下する。処理部315は、上流電流値が特性曲線において定義されている最低の電流値
以上である状態、すなわち定格電流値を超えている状態で、通電時間が所定の時間以上となった場合、上流半導体ヒューズ32をオフに切り替える。また、定格電流値は、長時間電流を流しても上流半導体ヒューズ32がオフにされない最高の電流値を示す。遮断特性の高低に応じて、定格電流値は上下する。
【0056】
特性曲線は、上流半導体ヒューズ32の遮断特性、すなわち上流経路21を流れる電流値に対して処理部315が上流半導体ヒューズ32をオフに切替えるまでの通電時間を示す曲線である。図4に示すグラフは、通常電流状態及び低電流状態における上流半導体ヒューズ32の特性曲線を示し、縦軸に上流経路21を流れる電流値(上流電流値)、横軸に通電時間を示す。
【0057】
図4に示すように、処理部315は、低電流状態である場合、通常電流状態である場合の遮断特性(通常時特性)に対して、上流半導体ヒューズ32の遮断特性を低い特性に設定する。なお、低電流状態である場合の上流半導体ヒューズ32の各遮断特性は、例えば、下流経路22に接続され、下流半導体ヒューズ42のリレー機能によって給電される各負荷5のデバイス特性の合計よりも低くなるようにオフセットされた特性である。すなわち、車両が低電流状態である場合の上流半導体ヒューズ32の遮断特性は、リレー機能によりオンにされている下流半導体ヒューズ42のうち、ヒューズ機能が有効である場合の遮断特性における過電流の電流値に対してオフにされるまでの時間が最も短い下流半導体ヒューズ42よりも、過電流の電流値に対して上流半導体ヒューズ32がオフにされるまでの時間が短くなるように設定される。
【0058】
本実施形態においては、低電流状態において負荷5が消費する電力は、種類A、B、C、Dの順に大きい。この場合、遮断特性を示す特性曲線はW、X、Y、Zの順に高い。すなわち、下流経路22に接続される負荷5の消費電力が大きいほど、処理部315は、上流半導体ヒューズ32の遮断特性を高い値に設定する。すなわち、上流半導体ヒューズ32の遮断特性は、リレー機能によりオンにされている下流半導体ヒューズ42及び該下流半導体ヒューズ42に接続される負荷5に流れる電流値(下流経路における電流値)の合計よりも定格電流値が高くなるように設定される。
【0059】
本実施形態において処理部315は、下流経路22に接続される負荷5の種類の組み合わせに対して選択される特性曲線が格納されている遮断特性テーブルTに基づいて上流半導体ヒューズ32の遮断特性を設定するが、これに限られない。記憶部314は、各負荷5の種類に対してのデバイス特性が格納されているテーブルを記憶し、処理部315は該テーブルに基づき、下流経路22に接続される負荷5のデバイス特性の合計を、オフセット値を用いて下方にシフト(低減)することによって上流半導体ヒューズ32の遮断特性に設定してもよい。なお、オフセット値は、負荷5のデバイス特性の合計に対して乗算される、例えば0.8等の1未満となる所定係数であってもよい。また、処理部315は、下流経路22の発煙特性の合計を、オフセット値を用いてシフトすることによって上流半導体ヒューズ32の遮断特性に設定してもよい。
【0060】
図5は、第2マイコン41の構成例を示すブロック図である。第2マイコン41は、車両Cの状態の判定、及び下流半導体ヒューズ42のヒューズ機能及びリレー機能の制御が可能な第2制御部として作動する。第2マイコン41は、入力部411、A/D変換部412、出力部413、記憶部414、及び処理部415を備える。入力部410、A/D変換部412、出力部413、記憶部414、及び処理部415は、内部バス416に接続されている。A/D変換部412は、入力部411に接続されている。
【0061】
入力部411には、電流検出回路45から下流電流情報が入力される。入力部は、下流電流情報が入力された場合、入力されたアナログの下流電流情報をA/D変換部412に出力する。処理部415は、A/D変換部412が変換したデジタルの下流電流情報を、A/D変換部412から取得する。
【0062】
出力部413は、駆動回路43にHi電圧またはLow電圧を出力する。出力部413は、処理部415の指示に従って、駆動回路43に出力する電圧をHi電圧またはLow電圧に切り替える。駆動回路43は、出力部413から入力されている電圧に応じて、下流半導体ヒューズ42をオンまたはオフに切り替える。
【0063】
記憶部414は不揮発性メモリである。記憶部414には、コンピュータプログラムPが記憶されている。処理部415は、処理を実行する処理素子、例えば、CPUを有する。処理部415の処理素子は、コンピュータプログラムPを実行することによって、車両Cの状態を判定する処理、及び下流半導体ヒューズ42のヒューズ機能及びリレー機能の停止(無効化)または継続稼動(有効化)を制御する処理を実行する。コンピュータプログラムPは、処理部415の処理素子(コンピュータ)に処理を実行させるために用いられる。処理部415は、ヒューズ機能が継続稼動している場合(有効化されている場合)、下流半導体ヒューズ42に流れる電流値が、下流半導体ヒューズ42の定格電流値を超えた際に下流半導体ヒューズ42をオフにする。また、処理部415は、リレー機能が継続稼動している場合(有効化されている場合)、下流半導体ヒューズ42に接続されている負荷5への電力供給の要否に基づいて、下流半導体ヒューズ42をオンまたはオフに切り替える。
【0064】
なお、コンピュータプログラムPは、処理部415の処理素子が読み取り可能に、記憶媒体Eに記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体Eから読み出されたコンピュータプログラムPが記憶部414に記憶される。記憶媒体Eは、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。光ディスクは、CD-ROM、DVD-ROM、又は、BD等である。磁気ディスクは、例えばハードディスクである。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラムPをダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムPを記憶部414に記憶してもよい。
【0065】
図6は、第1マイコン31の処理手順を示すフローチャートである。なお、初期状態において、上流半導体ヒューズ32は第1マイコン31によってオンにされている。第1マイコン31の処理部315は、電流検出回路35から上流電流値を取得する(S1)。処理部315は、取得した上流電流値に基づき、車両Cが通常電流状態であるか否か(低電流状態であるか)を判定する(S2)。S2において、処理部315は、取得した上流電流値が所定の閾値以上である場合、車両Cは通常電流状態であると判定し、所定の閾値未満である場合、車両Cは低電流状態であると判定する。車両Cが通常電流状態である場合(S2:YES)、処理部315は、上流半導体ヒューズ32の遮断特性を通常特性に設定し(S3)、処理をS1に返す。車両Cが低電流状態である場合(S2:NO)、処理部315は、入力部310に入力された負荷識別信号を取得する(S4)。処理部315は、記憶部314から遮断特性テーブルTを読み出し(S5)、負荷識別信号と遮断特性テーブルとに基づいて、上流半導体ヒューズ32を制御するための遮断特性を設定する(S6)。
【0066】
処理部315は、電流検出回路35から上流電流値を取得する(S7)。処理部315は、遮断特性と上流電流値とに基づき、上流経路21の電流を遮断するか否かを判定する(S8)。S8において、処理部315は、上流電流値が定格電流値を超えている場合、通電時間が特性曲線において電流値に対応する所定の時間以上となると電流を遮断する。または、処理部315は、電流積算値が所定の値以上となった場合に電流を遮断すると判定してもよい。なお、所定の時間が経過するより先に上流電流値が定格電流値以下となった場合、処理部315は電流を遮断しないと判定する。また、上流電流値が特性曲線において定義される最大の電流値を超えている場合、処理部315は瞬時に電流を遮断すると判定する。上流経路21の電流を遮断する場合(S8:YES)、処理部315は、駆動回路33に上流半導体ヒューズ32をオフにさせ(S9)、処理を終了する。上流経路21の電流を遮断しない場合(S8:NO)、処理部315は処理をS1に返す。
【0067】
図7は、第2マイコン41の処理手順を示すフローチャートである。第2マイコンの処理部415は、電流検出回路45から下流電流値を取得する(S11)。処理部415は、下流電流値に基づいて車両Cが通常電流状態であるか否かを判定する(S12)。車両Cが通常電流状態である場合(S12:YES)、処理部415は処理をS11に返す。車両Cが低電流状態である場合(S12:NO)、処理部415は、下流半導体ヒューズ42のヒューズ機能を停止してリレー機能を継続稼動させ(S13)、処理を終了する。
【0068】
以上の構成及び処理によれば、第2マイコン41は、車両Cが暗電流状態である場合において下流半導体ヒューズ42のヒューズ機能に係る制御する必要がない。これにより、処理に必要な電力を低減しながら、下流経路22を保護することが可能である。
【0069】
(実施形態2)
実施形態1において、電路2は複数の装置の間で上流経路21から下流経路22に分岐するが、一つの装置内において分岐してもよい。以下では、実施形態2について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成は実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には、実施形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0070】
図8は、実施形態2に係る車載システムSの構成例を示すブロック図である。実施形態2に係る車載システムSは、電源装置1、電路2、配電車載装置6、及び複数の負荷5を備える。配電車載装置6は、電源装置1の正極と、複数の負荷5の一端とに接続される。配電車載装置6は、例えば、電源装置1から負荷5への電流を制御するECUである。配電車載装置6は、電源装置1から負荷5への電流が流れる電路2を備える。電路2は、電源装置に接続する上流電路(上流経路)21と、上流経路21から分岐し、負荷に接続する下流電路(下流経路)22とを含む。本実施形態においては、下流経路22は3本に分岐している。
【0071】
配電車載装置6は、マイコン61、上流半導体ヒューズ62、上流駆動回路63、抵抗64、電流検出回路65、複数の下流半導体ヒューズ66、及び複数の下流駆動回路67を備える。マイコン61の詳細については後述する。
【0072】
上流半導体ヒューズ62は、例えば、Nチャネル型のFETであり、ドレインがソースに対して上流側に配置されるように上流経路21に設けられている。すなわち、上流半導体ヒューズ62のドレインは電源装置1に接続されている。なお、上流半導体ヒューズ62には、Pチャネル型のFET、トランジスタ、サイリスタ、またはIPDなどが用いられてもよい。上流半導体ヒューズ62のゲートに電圧が印加された場合、上流半導体ヒューズ62はオンとなり、電流が流れることが可能である。上流半導体ヒューズ62のゲートに電圧が印加されない場合、上流半導体ヒューズ62はオフとなり、電流は流れない。
【0073】
上流駆動回路63は、上流半導体ヒューズ62のゲートに印加する電圧を制御することにより、上流半導体ヒューズ62をオンまたはオフに切り替える。上流駆動回路63は、例えば、FPGA、ASIC、またはASSPなどの電子デバイスである。なお、上流駆動回路63はマイコンまたはDSP等のソフトウェア処理部であってもよい。上流駆動回路63は、マイコン61から上流半導体ヒューズ62をオンにする指示を示す信号(Hi電圧)が入力された場合、上流半導体ヒューズ62のゲートに電圧を印加し、上流半導体ヒューズ62をオンにする。上流駆動回路63は、マイコン61から上流半導体ヒューズ62をオフにする指示を示す信号(Lоw電圧)が入力された場合、上流半導体ヒューズ62のゲートに電圧を印加せず、上流半導体ヒューズ62をオフにする。
【0074】
抵抗64の一端は、上流半導体ヒューズ62のソースに接続されている。抵抗64の他端は、下流半導体ヒューズ66に接続されている。なお、抵抗64は上流半導体ヒューズ62の上流側に設けられてもよい。
【0075】
電流検出回路65は、抵抗64を流れる電流の電流値(上流電流値)を検出する。電流検出回路65は、検出した上流電流値を示すアナログの電流情報をマイコン61に出力する。
【0076】
下流半導体ヒューズ66は、各下流経路22に一つずつ設けられる。下流半導体ヒューズ66は、例えば、Pチャネル型のFETであり、ソースがドレインに対して上流側に配置されるように下流経路22に設けられている。すなわち、下流半導体ヒューズ66のソースは、抵抗64に接続されている。なお、下流半導体ヒューズ66には、Fチャネル型のFET、トランジスタ、サイリスタ、またはIPDなどが用いられてもよい。また、下流半導体ヒューズ66に代えて、機械式スイッチが設けられてもよい。下流半導体ヒューズ66のゲートに電圧が印加された場合、下流半導体ヒューズ66はオフとなり、電流は流れない。下流半導体ヒューズ66のゲートに電圧が印加されない場合、下流半導体ヒューズ66はオンとなり、電流が流れることが可能である。
【0077】
下流駆動回路67は、各下流半導体ヒューズ66に対して一つずつ設けられる。下流駆動回路67は、下流半導体ヒューズ66のゲートに印加する電圧を制御することにより、下流半導体ヒューズ66をオンまたはオフに切り替える。下流駆動回路67は、例えば、FPGA、ASIC、またはASSPなどの電子デバイスである。なお、下流駆動回路67はマイコンまたはDSP等のソフトウェア処理部であってもよい。下流駆動回路67は、第2マイコン41から下流半導体ヒューズ66をオンにする指示を示す信号(Low電圧)が入力された場合、または信号が出力されていない場合、下流半導体ヒューズ66のゲートに電圧を印加し、下流半導体ヒューズ66をオンにする。下流駆動回路67は、マイコン61から下流半導体ヒューズ66をオフにする指示を示す信号(Hi電圧)が入力された場合、下流半導体ヒューズ66のゲートに電圧を印加し、下流半導体ヒューズ66をオフにする。
【0078】
図9は、実施形態2に係るマイコン61の構成例を示すブロック図である。マイコン61は、車両Cの状態の判定、及び上流半導体ヒューズ62の制御、及び下流半導体ヒューズ66のヒューズ機能及びリレー機能の制御が可能な制御部として作動する。入力部610、入力部611、A/D変換部612、出力部613、出力部617~619、記憶部614、及び処理部615を備える。入力部610、A/D変換部612、出力部613、出力部617~619、記憶部614、及び処理部615は、内部バス616に接続されている。A/D変換部612は、入力部611に接続されている。
【0079】
入力部610には、下流経路22に接続されている負荷5の種類を識別する識別信号が入力される。入力部610に入力される識別信号は、例えば、負荷5が出力した信号であるが、下流経路22に接続されている負荷5の種類を判定可能な他の車載装置によって出力された信号であってもよい。
【0080】
入力部611には、電流検出回路65から上流電流情報(上流電流値)が入力される。入力部611は、上流電流情報が入力された場合、入力されたアナログの電流情報をA/D変換部612に出力する。処理部615は、A/D変換部612が変換したデジタルの電流情報を、A/D変換部612から取得する。
【0081】
出力部613は、上流駆動回路63にHi電圧またはLow電圧を出力する。出力部613は、処理部615の指示に従って、上流駆動回路63に出力する電圧をHi電圧またはLow電圧に切り替える。上流駆動回路63は、出力部613から入力されている電圧に応じて、上流半導体ヒューズ62をオンまたはオフに切り替える。
【0082】
出力部617~619は、各下流駆動回路67にHi電圧またはLow電圧を出力する。出力部617~619は、処理部615の指示に従って、下流駆動回路67に出力する電圧をHi電圧またはLow電圧に切り替える。各下流駆動回路67は、出力部617~619から入力されている電圧に応じて、各下流半導体ヒューズ66をオンまたはオフに切り替える。
【0083】
記憶部614は不揮発性メモリである。記憶部614には、コンピュータプログラムP及び遮断特性テーブルTが記憶されている。遮断特性テーブルTの構成は、実施形態1と同様である。処理部615は、処理を実行する処理素子、例えば、CPUを有する。処理部615の処理素子は、コンピュータプログラムPを実行することによって、車両Cの状態を判定する処理、及び上流半導体ヒューズ62を制御する処理、及び下流半導体ヒューズ66のヒューズ機能及びリレー機能の停止(無効化)または継続稼動(有効化)を制御する処理を実行する。コンピュータプログラムPは、処理部615の処理素子(コンピュータ)に処理を実行させるために用いられる。処理部615は、ヒューズ機能が継続稼動している場合(有効化されている場合)、下流半導体ヒューズ66に流れる電流値が、下流半導体ヒューズ66の定格電流値を超えた際に下流半導体ヒューズ42をオフにする。また、処理部615は、リレー機能が継続稼動している場合(有効化されている場合)、下流半導体ヒューズ66に接続されている負荷5への電力供給の要否に基づいて、下流半導体ヒューズ66をオンまたはオフに切り替える。
【0084】
なお、コンピュータプログラムPは、処理部615の処理素子が読み取り可能に、記憶媒体Eに記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体Eから読み出されたコンピュータプログラムPが記憶部614に記憶される。記憶媒体Eは、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。光ディスクは、CD-ROM、DVD-ROM、又は、BD等である。磁気ディスクは、例えばハードディスクである。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラムPをダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムPを記憶部614に記憶してもよい。
【0085】
また、処理部615が有する処理素子の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。処理部615が複数の処理素子を有する場合、複数の処理素子が協同して処理を実行してもよい。
【0086】
図10は、実施形態2に係るマイコン61の処理手順を示すフローチャートである。マイコン61の処理部615は、電流検出回路35から上流電流値を取得する(S21)。処理部615は、取得した上流電流値に基づき、車両Cが通常電流状態であるか否か(低電流状態であるか)を判定する(S22)。S22において、処理部615は、取得した上流電流値が所定の閾値以上である場合、車両Cは通常電流状態であると判定し、所定の閾値未満である場合、車両Cは低電流状態であると判定する。車両Cが通常電流状態である場合(S22:YES)、処理部615は、上流半導体ヒューズ62の遮断特性を通常特性に設定し(S23)、処理をS21に返す。車両Cが低電流状態である場合(S22:NO)、処理部315は、入力部610に入力された負荷識別信号を取得する(S24)。処理部315は、記憶部314から遮断特性テーブルTを読み出し(S25)、負荷識別信号と遮断特性テーブルとに基づいて、上流半導体ヒューズ62を制御するための遮断特性を設定する(S26)。処理部615は、下流半導体ヒューズ66のヒューズ機能を停止してリレー機能を継続稼動させる(S27)。
【0087】
処理部615は、電流検出回路65から上流電流値を取得する(S28)。処理部615は、遮断特性と上流電流値に基づき、上流経路21の電流を遮断するか否かを判定する(S29)。S29において、処理部615は、上流電流値が定格電流値を超えている場合、通電時間が特性曲線において電流値に対応する所定の時間以上となると電流を遮断する。または、処理部615は、電流積算値が所定の値以上となった場合に電流を遮断すると判定してもよい。なお、所定の時間が経過するより先に上流電流値が定格電流値以下となった場合、処理部615は電流を遮断しないと判定する。また、上流電流値が特性曲線において定義される最大の電流値を超えている場合、処理部615は瞬時に電流を遮断すると判定する。上流経路21の電流を遮断する場合(S29:YES)、処理部615は、上流駆動回路63に上流半導体ヒューズ62をオフにさせ(S30)、処理を終了する。上流経路21の電流を遮断しない場合(S29:NO)、処理部615は処理をS1に返す。
【0088】
(変形例)
上述の各実施形態において、上流車載装置3、下流車載装置4、及び配電車載装置6は電路上に設けられるが、これに限られない。上流車載装置3、下流車載装置4、配電車載装置6は、電路2上に設けられた上流半導体ヒューズ32,62または下流半導体ヒューズ42,66を、別箇所から遠隔制御する態様であってもよい。
【0089】
上述の各実施形態において、上流車載装置3、下流車載装置4、及び配電車載装置6は、車両Cが通常電流状態であるか低電流状態であるかを判定するが、これに限られない。上流車載装置3、下流車載装置4、または配電車載装置6は、他の車載装置が判定した車両Cの状態の情報を取得し、取得した車両Cの状態の情報に基づいて上流半導体ヒューズ32,62または下流半導体ヒューズ42,66の制御を行ってもよい。
【0090】
上述の各実施形態において、第1マイコン31またはマイコン61は、遮断特性テーブルTを参照し、下流経路22に接続される負荷5の種類に基づいて上流半導体ヒューズ32,62の遮断特性を設定するが、これに限られない。第1マイコン31またはマイコン61は、車両Cが低電流状態である場合、上流半導体ヒューズ32,62の遮断特性を一定の遮断特性に設定してもよい。また、第1マイコン31またはマイコン61は、車両Cが低電流状態である場合、下流経路22に接続される負荷5のうち、低電流状態において電力供給が必要な負荷5の種類に基づいて上流半導体ヒューズ32,62の遮断特性を設定してもよい。
【0091】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0092】
1 電源装置
2 電路
21 上流電路(上流経路)
22 下流電路(下流経路)
3 上流車載装置
31 第1マイクロコンピュータ(マイコン)
310 入力部
311 入力部
312 A/D変換部
313 出力部
314 記憶部
315 処理部
316 内部バス
32 上流半導体ヒューズ
33 駆動回路
34 抵抗
35 電流検出回路
4 下流車載装置
41 第2マイコン
410 入力部
411 入力部
412 A/D変換部
413 出力部
414 記憶部
415 処理部
416 内部バス
42 下流半導体ヒューズ
43 駆動回路
44 抵抗
45 電流検出回路
5 負荷
6 配電車載装置
61 マイコン
610 入力部
611 入力部
612 A/D変換部
613 出力部
614 記憶部
615 処理部
616 内部バス
617 出力部
618 出力部
619 出力部
62 上流半導体ヒューズ
63 上流駆動回路
64 抵抗
65 電流検出回路
66 下流半導体ヒューズ
67 下流駆動回路
C 車両
E 記憶媒体
P コンピュータプログラム
S 車載システム
T 遮断特性テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10