(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119615
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ホース用ゴム組成物及びホース
(51)【国際特許分類】
C08L 11/00 20060101AFI20240827BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20240827BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240827BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240827BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08L11/00
F16L11/04
C08L9/00
C08K3/013
C08K3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026641
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228120
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 蓮太朗
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 宗紀
【テーマコード(参考)】
3H111
4J002
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA12
3H111BA25
3H111BA32
3H111BA34
3H111CB06
3H111CB14
3H111CC03
3H111DA26
3H111EA04
3H111EA05
4J002AC032
4J002AC091
4J002DA036
4J002FD016
4J002GG01
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】加工性、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるホース用ゴム組成物、及びかかるホース用ゴム組成物を含み、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるホースを提供することを課題とする。
【解決手段】少なくともクロロプレンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、を含むホース用ゴム組成物であって、前記クロロプレンゴムの含有量が、前記ゴム成分100質量部中、70質量部以上であり、前記クロロプレンゴムは、ムーニー粘度が43~53M、かつ、0℃における結晶化開始時間が30~500分であり、前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、40質量部以上50質量部未満であり、前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積(N
2SA)が30~55m
2/gである、ホース1用ゴム組成物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともクロロプレンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、を含むホース用ゴム組成物であって、
前記クロロプレンゴムの含有量が、前記ゴム成分100質量部中、70質量部以上であり、
前記クロロプレンゴムは、ムーニー粘度が43~53M、かつ、0℃における結晶化開始時間が30~500分であり、
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、40質量部以上50質量部未満であり、
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積(N2SA)が30~55m2/gである、ホース用ゴム組成物。
【請求項2】
前記クロロプレンゴムの重量平均分子量が、20×104~40×104である、請求項1に記載のホース用ゴム組成物。
【請求項3】
前記クロロプレンゴムの含有量が、前記ゴム成分100質量部中、90質量部以下である、請求項1に記載のホース用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分が、更にブタジエンゴムを含む、請求項1に記載のホース用ゴム組成物。
【請求項5】
ホースの中間層に用いられる、請求項1に記載のホース用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のホース用ゴム組成物からなる中間層を有する、ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース用ゴム組成物及びホースに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、油圧ホース等のホースは、建設機械や産業機械等の油圧で作動する機械に広く使用されている。一般に、油圧ホースは、高圧に耐え、駆動力(圧力)を正確、かつ、迅速に伝達する必要があり、また、高い耐油性を有することや、圧力による体積膨張が少ないことも重要である。また、機械の作動中には作動油が高温になることから、油圧ホースには、耐熱性も求められる。前記油圧ホースは、通常、内側から、作動油と接する内管ゴム層と、作動油の圧力に耐えるための複数の補強層と、これら補強層及び内管ゴム層の損傷を防止するための外被ゴム層と、を順次積層した積層構造を有しており、また、複数の補強層の間に中間ゴム層が配置されている。
【0003】
通常、前記補強層には、ブラスメッキを施した金属ワイヤーが主として用いられる一方、内管ゴム層、外被ゴム層、中間ゴム層には、その要求性能に応じて、種々のゴム組成物が用いられている。従来、内管ゴム層、外被ゴム層、中間ゴム層等のホースのゴム部分は、耐候性、耐摩耗性、耐熱性、耐油性等、多岐にわたるゴム特性が重要となることから、これらの特性のバランスの取れたクロロプレンゴム(CR)系のゴム組成物が主として用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記クロロプレンゴム(CR)は、ゴム製品以外にも用途が広いため、需給バランスがタイトになり易く、また、高価である。そのため、昨今、従来用いられてきたハイグレードのクロロプレンゴム(CR)を用いずに、より安価な汎用のクロロプレンゴム(CR)をゴム組成物に用いる検討が進められている。しかしながら、従来よりも安価な汎用のクロロプレンゴム(CR)を適用したゴム組成物は、ゴム練りや押し出し等の加工性及び巻き付け加工時のシート切れ防止に優れるが、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性が十分でなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、加工性、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるホース用ゴム組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかるホース用ゴム組成物を含み、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるホースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のホース用ゴム組成物及びホースの要旨構成は、以下のとおりである。
【0008】
[1] 少なくともクロロプレンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、を含むホース用ゴム組成物であって、
前記クロロプレンゴムの含有量が、前記ゴム成分100質量部中、70質量部以上であり、
前記クロロプレンゴムは、ムーニー粘度が43~53M、かつ、0℃における結晶化開始時間が30~500分であり、
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、40質量部以上50質量部未満であり、
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積(N2SA)が30~55m2/gである、ホース用ゴム組成物。
この場合、加工性、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるホース用ゴム組成物が得られる。
【0009】
[2] 前記クロロプレンゴムの重量平均分子量が、20×104~40×104である、[1]に記載のホース用ゴム組成物。
この場合、耐久性及び加工性により優れるホース用ゴム組成物が得られる。
【0010】
[3] 前記クロロプレンゴムの含有量が、前記ゴム成分100質量部中、90質量部以下である、[1]又は[2]に記載のホース用ゴム組成物。
この場合、耐伸張疲労性を維持しつつ、低温性能を確保することができる。
【0011】
[4] 前記ゴム成分が、更にブタジエンゴムを含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載のホース用ゴム組成物。
この場合、耐伸張疲労性を維持しつつ、低温性能に優れるホース用ゴム組成物が得られる。
【0012】
[5] ホースの中間層に用いられる、[1]~[4]のいずれか一つに記載のホース用ゴム組成物。
この場合、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるホースの中間層となる。
【0013】
[6] [1]~[5]のいずれか一つに記載のホース用ゴム組成物からなる中間層を有する、ホース。
この場合、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるホースとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加工性、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるホース用ゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、かかるホース用ゴム組成物を含み、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるホースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るホースを概略的に示す、斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明のホース用ゴム組成物、該ホース用ゴム組成物を有するホースをその実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0017】
<定義>
本明細書に記載されている化合物は、部分的に、又は全てが化石資源由来であってもよく、植物資源等の生物資源由来であってもよく、使用済タイヤ等の再生資源由来であってもよい。また、化石資源、生物資源、再生資源のいずれか2つ以上の混合物由来であってもよい。
【0018】
本明細書において、数値範囲を「A~B」と記載した場合、端点である「A」及び「B」も数値範囲内に含まれることを意味する。
【0019】
<ゴム組成物>
本実施形態のホース用ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」ということもある)は、少なくともクロロプレンゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、を含むホース用ゴム組成物であって、
前記クロロプレンゴムの含有量が、前記ゴム成分100質量部中、70質量部以上であり、
前記クロロプレンゴムは、ムーニー粘度が43~53M、かつ、0℃における結晶化開始時間が30~500分であり、
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、40質量部以上50質量部未満であり、
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積(N2SA)が30~55m2/gである、ことを特徴とする。
【0020】
本発明のホース用ゴム組成物は、上記条件を満たすクロロプレンゴムとカーボンブラックとを組み合わせることによって、加工性、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるゴム組成物とすることができる。
【0021】
以下、本発明のホース用ゴム組成物を構成する成分について説明する。
【0022】
[ゴム成分]
本発明のホース用ゴム組成物は、ゴム成分を含む。
本実施形態のゴム成分としては、クロロプレンゴム(CR)が含まれ、また、その他のゴム成分を含んでもよい。その他のゴム成分としては、クロロプレンゴム以外のブタジエン単位を含むゴム等を含むことができる。
【0023】
(クロロプレンゴム)
本発明のホース用ゴム組成物は、前記ゴム成分としてクロロプレンゴムを含む。
前記クロロプレンゴムの含有量は、前記ゴム成分100質量部中、70質量部以上である。クロロプレンゴムの含有量が前記ゴム成分100質量部中、70質量部以上であると、ゴム組成物の耐伸張疲労性及び耐油性が向上する。また、耐伸張疲労性及び耐油性の観点から、クロロプレンゴムの含有量は、前記ゴム成分100質量部中、75質量部以上であるのが好ましく、77質量部以上であるのが更に好ましく、80質量部以上であるのがより一層好ましく、83質量部以上であるのが特に好ましい。また、低温性能の観点から、クロロプレンゴムの含有量は、ゴム成分100質量部中、90質量部以下であるのが好ましく、88質量部以下であるのがより好ましく、87質量部以下であるのが特に好ましい。
【0024】
前記クロロプレンゴムは、ムーニー粘度が43~53Mである。ムーニー粘度が43~53Mの範囲内であると、ゴム組成物の加工性が良くなる。同様の観点から、クロロプレンゴムのムーニー粘度は、44~52Mであるのが好ましく、45~51Mであるのがより好ましく、46~50Mであるのが更に好ましく、47~50Mであるのがより一層好ましい。
【0025】
なお、本明細書において、クロロプレンゴムのムーニー粘度は、JIS K6300-1準拠して、ムーニー粘度計(東洋精機社製)により、100℃のムーニー粘度を測定されるものとする。
【0026】
前記クロロプレンゴムの0℃における結晶化開始時間は、30~500分である。クロロプレンゴムの結晶化開始時間がこの範囲内であると、ゴム組成物の加工性及び生産性が向上する。同様の観点から、クロロプレンゴムの結晶化開始時間は、35~400分が好ましく、35~300分がより好ましく、40~200分が更に好ましく、45~150分がより一層好ましい。なお、0℃における結晶化開始時間とは、クロロプレンゴムの0℃における結晶化が開始する時間をいう。
【0027】
なお、本明細書において、クロロプレンゴムの結晶化開始時間は、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量計(TAインスツルメンツ社製)を用い、等温結晶化測定で測定されるものとする。
【0028】
前記クロロプレンゴムの重量平均分子量(Mw)は、20×104~40×104である。クロロプレンゴムの重量平均分子量(Mw)がこの範囲内であると、ゴム組成物の加工性及び耐久性の両方が向上する。加工性及び耐久性の観点から、本実施形態のクロロプレンゴムの重量平均分子量は、23×104~40×104であるのが好ましく、25×104~40×104であるのがより好ましく、27×104~39×104であるのが更に好ましい。
【0029】
なお、本明細書において、クロロプレンゴムの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量測定により測定されるものとする。
【0030】
(その他のゴム成分)
本発明のホース用ゴム組成物は、クロロプレンゴム以外のゴム成分を含んでもよい。該クロロプレンゴム以外のゴム成分としては、ブタジエン単位を含むゴムを含むことができ、限定されるものではないが、例えばブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)又はこれらの変性体等を用いることができる。これらその他のゴム成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
前記クロロプレンゴム以外のゴム成分としては、限定されるものではないが、低温性能に優れるゴム成分であるのが好ましい。この場合、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に加えて、低温性能に優れるゴム組成物となる。
【0032】
前記クロロプレンゴム以外のゴム成分としては、ブタジエンゴムを含むのが好ましい。ゴム組成物がさらにブタジエンゴムを含むことで、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に加えて、低温性能に優れたゴム組成物となる。
【0033】
前記ブタジエンゴムの含有量は、前記ゴム成分100質量部中、10~30質量部であるのが好ましく、10~25質量部であるのがより好ましく、10~20質量部であるのが更に好ましい。
【0034】
[カーボンブラック]
本発明のホース用ゴム組成物は、カーボンブラックを含む。該カーボンブラックは、ゴム組成物を補強して、ゴム組成物の耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性を向上させることができる。
前記カーボンブラックの含有量は、前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、40質量部以上50質量部未満である。カーボンブラックの含有量がこの範囲内であることで、補強性が高く、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるゴム組成物となる。補強性の観点から、前記カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、41質量部以上であるのが好ましく、42質量部以上であるのが更に好ましく、43質量部であるのがより一層好ましい。また、耐伸張疲労性の観点から、前記カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、49質量部以下であるのが好ましく、48質量部以下であるのがより好ましく、46質量部以下であるのが更に好ましく、44質量部以下であるのがより一層好ましい。
【0035】
また、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、30~55m2/gである。カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が30~55m2/gであると、補強性が高く、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるゴム組成物となる。同様の観点から、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、33~52m2/gであるのが好ましく、35~50m2/gであるのがより好ましく、38~47m2/gであるのが更に好ましい。
【0036】
前記カーボンブラックとしては、例えばFEFグレードのカーボンブラックが挙げられるが、本実施形態の窒素吸着比表面積を満たすグレードのカーボンブラックであれば使用することができる。これらのカーボンブラックは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0037】
なお、本明細書において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K6217-2に準拠して測定されるものとする。
【0038】
(その他の成分)
本発明のホース用ゴム組成物は、ゴム成分とカーボンブラックに加え、種々の配合剤を含有することができる。かかる配合剤としては、例えば、カーボンブラック以外の充填剤、軟化剤、加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、加硫遅延剤、ワックス類、発泡剤、オイル、滑剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、分散剤、相溶化剤、均質化剤等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
[充填剤]
本発明のホース用ゴム組成物は、更にカーボンブラック以外の充填剤を含んでもよい。ホース用ゴム組成物がカーボンブラック以外の充填剤を含むことで、ホース用ゴム組成物の剛性が向上する。充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、クレー等が挙げられ、これらの中でも炭酸カルシウム及びシリカが好ましい。
【0040】
前記充填剤の含有量は、特に限定されないが、前記ゴム成分100質量部に対して、31~120質量部であるのが好ましく、40~90質量部であるのがより好ましい。また、炭酸カルシウムの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、30~100質量部であることが好ましく、40~80質量部であることがより好ましい。また、シリカの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1~20質量部であるのが好ましく、5~15質量部であるのがより好ましい。
【0041】
[軟化剤]
本発明のホース用ゴム組成物は、更に軟化剤を含んでもよい。軟化剤としては、特に限定されず、例えばオイルが挙げられる。オイルは、特に限定されず、鉱物油系、植物油系、合成系などの各種オイルを使用することができる。鉱物油系オイルとしては、例えば、ナフテン系、パラフィン系等のプロセス油等が挙げられる。植物油系オイルとしては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油等が挙げられる。合成系オイルとしては、グリセリンエステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、イソソルバイドエステル系化合物、ポリカプロラクトン系化合物などが挙げられる。
【0042】
前記軟化剤の含有量は、特に限定されないが、前記ゴム成分100質量部に対して、5~30質量部であるのが好ましく、10~20質量部であるのがより好ましい。
【0043】
[加硫剤]
本発明のホース用ゴム組成物は、加硫剤(架橋剤)を含んでもよい。該加硫剤は、ゴム成分を架橋して、ゴム組成物の破壊強度を向上させる。加硫剤としては、特に限定されないが、例えば硫黄が挙げられる。
【0044】
前記加硫剤の含有量は、特に限定されないが、前記ゴム成分100質量部に対して、1~10質量部であるのが好ましく、2~7質量部であるのがより好ましく、3~5質量部であるのが更に好ましい。
【0045】
[加硫促進剤]
本発明のホース用ゴム組成物は、加硫促進剤を含んでもよい。該加硫促進剤は、ゴム組成物の加硫速度を向上させる作用を有する。加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)等のチアゾール系加硫促進剤、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(NS)等のスルフェンアミド系加硫促進剤、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)等のグアニジン系加硫促進剤等が挙げられる。
【0046】
前記加硫促進剤の含有量は、前記ゴム組成物100質量部に対して、0.1~3質量部であるのが好ましく、0.5~2質量部であるのがより好ましく、0.6~1.5質量部であるのが更に好ましい。
【0047】
[加硫促進助剤]
本発明のホース用ゴム組成物は、加硫促進助剤を含んでもよい。該加硫促進助剤としては、特に限定されないが、例えば亜鉛華(酸化亜鉛)を用いることができる。
【0048】
前記加硫促進助剤の含有量は、特に限定されないが、前記ゴム成分100質量部に対して、1~10質量部であるのが好ましく、3~7質量部であるのがより好ましく、4~6質量部であるのが更に好ましい。
【0049】
(ゴム組成物の調製方法)
本発明のホース用ゴム組成物の調製方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば上記の各成分を、開放混合式の練りロール機、密閉式混合機のバンバリーミキサー、ニーダー等の混練機を用いて混練りすることによって得ることができる。
【0050】
<ホース>
本発明に係る一実施形態のホースの積層構造の一例を、
図1を用いて説明する。
図1において、ホース1は、内管ゴム層11と、該内管ゴム層11の径方向外側に位置する中間ゴム層13と、該中間ゴム層13の径方向外側に位置する外被ゴム層14と、を有しており、更に、内管ゴム層11と中間ゴム層13との間、及び中間ゴム層13と外被ゴム層14との間には、それぞれ補強層12が配置されている。
【0051】
本発明のゴム組成物を、ホースの中間ゴム層に用いるのが好ましい。本発明のゴム組成物をホースの中間層に用いることで、耐亀裂性成長性及び耐伸張疲労性に優れるホースとなる。
【0052】
本発明のホースは、本発明のゴム組成物からなる中間層を有するのが好ましい。本発明のゴム組成物からなる中間層を有することで、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるホースとなる。
【0053】
前記ホースの構造は、要求に応じて適宜選択することができ、例えば、前記補強層及び前記中間ゴム層が、それぞれ2層以上であってもよい。また、前記中間ゴム層は、前記補強層の間に位置していてもよい。
【0054】
また、前記補強層は、金属ワイヤーで形成されているのが好ましく、ブラスメッキワイヤーで形成されているのがより好ましい。
【0055】
(ホースの製造方法)
前記ホース1を製造するには、以下の方法を例示することができる。
まず、ホース内径と同程度の直径を有する芯体(マンドレル)の外側に、内管ゴム層11用のゴム組成物を射出成型して該マンドレルを被覆し、内管ゴム層11を形成する(内管押出工程)。次に、該内管押出工程で形成した内管ゴム層11の外側に、所定本数のブラスメッキワイヤーを編み上げて補強層12を二層形成し(編み上げ工程)、該二層の補強層12の間に本発明のホース用ゴム組成物からなるゴムシートを挿入形成して、中間ゴム層13を形成する。更に、ゴム組成物からなる外被ゴム層14を押出し形成する(外被押出工程)。
次に、外被押出工程で形成した外被ゴム層14の外側を適宜好適な樹脂で被覆し(樹脂モールド被覆工程)、これを所定の条件で加硫する(加硫工程)。加硫後、上記被覆樹脂を剥離し(樹脂モールド剥離工程)、マンドレルを取り除く(マンドレル抜出工程)ことにより、内管ゴム層11と外被ゴム層14との間に、補強層12と中間ゴム層13と、を有するホース1が得られる。
【実施例0056】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
<クロロプレンゴム1及び2の物性測定>
クロロプレンゴム1(東ソー社製、商品名「スカイプレン」、グレード:B-30)及びクロロプレンゴム2(デンカ社製、商品名「デンカクロロプレン」、グレード:DCR-36)について、以下の物性測定を行った。
【0058】
(1)ムーニー粘度
ムーニー粘度は、JIS K6300-1に準拠して、ムーニー粘度計(東洋精機社製)を用いて、100℃で測定した。100℃で1分間予熱後、4分後のトルク値をムーニー単位で測定した。なお、ムーニー粘度は、数値が小さいほど未加硫粘度が小さく、数値が大きいほど固い。
測定した結果は、クロロプレンゴム1が49Mであり、クロロプレンゴム2が80Mであった。
【0059】
(2)結晶化開始時間
結晶化開始時間は、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量計(DSC、TAインスツルメンツ社製)を用いて、0℃で、等温結晶化測定を行って、測定した。
測定した結果は、クロロプレンゴム1が120分であり、クロロプレンゴム2が3000分であった。
【0060】
(3)重量平均分子量
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー社製HLC-8020、カラム:東ソー製GMH-XL、検出器:示差屈折率計(RI)]で東ソー製の標準ポリスチレンを基準として求めた。
測定した結果は、クロロプレンゴム1が39×104であり、クロロプレンゴム2が57×104であった。
【0061】
<ゴム組成物の調製と評価>
表1に示す各成分をインターナルミキサーに投入し、混錬してゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物について、以下の方法で評価した。評価結果は表1に示す。
【0062】
(1)加工性の評価
実施例及び比較例の各サンプルについて、JIS K6300-1に準拠して、ロータレスムーニー測定機(東洋精機社製)を用い、未加硫ゴム組成物を127℃で1分間予熱後、4分後のトルク値をムーニー単位で測定した。
数値が小さいほど、練りや押し出し等の加工性に優れることを示す。
【0063】
(2)シート切れ評価
実施例及び比較例の各サンプルについて、未加硫ゴム組成物をロールでシート状に成型し、JIS K6251に準拠して、室温で引張試験を行い、100%の変形モジュラスを測定した。
数値が大きいほど、巻き付け時シート切れ防止ができることを示す。
【0064】
(3)耐伸張疲労性の評価(破断回数)
耐伸張疲労性の指標として、破断回数を測定した。
実施例及び比較例の各サンプルについて、加硫処理を施した後、引張試験装置(オリエンテック社製)を使用し、DIN3型の試験片を2.5Hzで、繰り返し200%引張する試験を行った。数値は、試験片が破断したときの引張回数を示している。
数値が大きいほど、耐伸張疲労性に優れることを示す。
なお、表1の数値は、2回測定した平均値である。
【0065】
(4)耐亀裂成長性の評価(デマチャ屈曲回数)
耐亀裂成長性の指標として、デマチャ屈曲回数を測定した。
実施例及び比較例の各サンプルについて、加硫処理を施した後、JIS K6260に準拠して、デマチャ屈曲試験機(上島製作所社製)を使用し、140×25×6.3mmの試験片の中央部に直線形の2.5mmの切り込みを入れ、35℃での屈曲回数を測定した。数値は、試験片の亀裂の長辺の大きさが20mmに到達しときの屈曲回数を示している。
数値が大きいほど、耐亀裂成長性に優れることを示す。
なお、表1の数値は、2回測定した平均値である。
【0066】
【0067】
*1:ブタジエンゴム:JSR社製、商品名「SBR#1500」
*2:クロロプレンゴム1:東ソー社製、商品名「スカイプレン」、グレード:B-30、100℃でのムーニー粘度=49M、0℃における結晶化開始時間=120分、重量平均分子量(Mw)=39×104
*3:クロロプレンゴム2:デンカ社製、商品名「デンカクロロプレン」、グレード:DCR-36、100℃でのムーニー粘度=80M、0℃における結晶化開始時間=3000分、重量平均分子量(Mw)=57×104
*4:カーボンブラック1:FEF級カーボンブラック、東海カーボン社製、商品名「シーストF」、窒素吸着比表面積(N2SA):45m2/g
*5:カーボンブラック2:SRF級カーボンブラック、旭カーボン社製、商品名「#50」、窒素吸着比表面積(N2SA):28m2/g
*6:炭酸カルシウム:日東粉化社製、商品名「NS#100」
*7:シリカ:東ソー社製、商品名「ニップシール AQ」
*8:オイル:JXTGエネルギー社製、商品名「スーパーオイル Y22」
*9:硫黄:鶴見化学工業社製、商品名「サルファックス5」
*10:加硫促進剤:大内新興化学社製、商品名「ノクセラー NS-F」
*11:亜鉛華:ハクスイテック社製、商品名「3号亜鉛華」
【0068】
所定の条件を満たすクロロプレンゴム及びカーボンブラックを組み合わせた実施例1及び2のゴム組成物は、ロータレスムーニー、破断回数及びデマチャ屈曲回数が優れており、加工性、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性の全てに優れることがわかる。一方、各比較例のゴム組成物は、加工性、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性のいずれかが実施例1及び2と同等である場合があるものの、加工性、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性の全てが優れてはおらず、実施例1及び2に比べて劣る結果となっていることが分かる。
本発明によれば、加工性、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるホース用ゴム組成物を提供することができる。また、かかるホース用ゴム組成物を含み、耐亀裂成長性及び耐伸張疲労性に優れるホースを提供することができる。