(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119622
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】射出成形機、および射出成形機の部品交換推奨情報の提供方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20240827BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20240827BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240827BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20240827BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240827BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/76
G06Q50/04
G06Q10/20
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026649
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】竹堂 公貴
(72)【発明者】
【氏名】大谷 愛
【テーマコード(参考)】
4F206
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
4F206AM14
4F206AM19
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL07
4F206JL08
4F206JP11
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP21
4F206JP27
4F206JP30
4F206JQ88
5L010AA04
5L010AA20
5L049AA04
5L049AA20
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】
【課題】ダウンタイムを短くすることができる射出成形機を提供する。
【解決手段】射出成形機(1)は、複数の管理部品を管理対象として寿命を予測する寿命予測手段を備える。寿命予測手段は、管理部品毎に使用を開始した使用開始日と、寿命に到達する予定日である寿命予定日と、発注から交換完了までに要するリードタイムの予想である予想リードタイムと、を管理する。そしていずれか1個または複数個の管理部品が、寿命予定日に対し予め定められた日数だけ前倒しした事前予告日に達しているとき、その管理部品を交換推奨部品とし、交換推奨部品について、交換を促す情報と予想リードタイムとを備えた部品交換推奨情報を提供するように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の構成部品のうち複数の管理部品を管理対象として寿命を予測する寿命予測手段を備え、
前記寿命予測手段は、前記管理部品毎に使用を開始した使用開始日と、寿命に到達する予定日である寿命予定日と、発注から交換完了までに要するリードタイムの予想である予想リードタイムと、を管理し、
いずれか1個または複数個の前記管理部品が、寿命予定日に対し予め定められた日数だけ前倒しした事前予告日に達しているとき前記管理部品を交換推奨部品とし、前記交換推奨部品について、交換を促す情報と予想リードタイムとを備えた部品交換推奨情報を提供するようになっている、射出成形機。
【請求項2】
前記寿命予測手段は、前記管理部品が故障したとき故障した前記管理部品を前記交換推奨部品として扱い、前記部品交換推奨情報を提供する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記寿命予測手段は、前記管理部品毎に部品価格を管理するようにし、前記部品交換推奨情報には前記交換推奨部品の前記部品価格が含まれている、請求項1または2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記交換推奨部品が複数個のとき、前記部品交換推奨情報には複数個の前記交換推奨部品の前記部品価格の合計額が含まれている、請求項3に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記射出成形機はネットワークによりサーバに接続され、前記管理部品に関する前記予想リードタイム、前記部品価格、は前記サーバ上に管理されている、請求項3に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記寿命予測手段は、前記射出成形機の価格である本体価格と、前記管理部品毎の交換履歴とを管理し、
直近の規定期間に交換した前記管理部品の前記部品価格の累計である累計部品価格と前記交換推奨部品の前記部品価格の合計額が前記本体価格より高いとき、前記部品交換推奨情報は前記射出成形機の新規購入を推奨する旨の情報を含む、請求項3に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記寿命予測手段は、前記射出成形機の価格である本体価格と、ユーザが予め設定する新規購入条件とを管理し、
前記新規購入条件は合計上限価格を含み、前記交換推奨部品の前記部品価格の合計額が前記合計上限価格より高いとき、前記部品交換推奨情報は前記射出成形機の新規購入を推奨する旨の情報を含む、請求項3に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記寿命予測手段は、前記管理部品毎の交換履歴を管理し、前記新規購入条件は累積上限価格を含み、直近の規定期間に交換した前記管理部品の前記部品価格の累計である累計部品価格と前記交換推奨部品の前記部品価格の合計額が前記累積上限価格より高いとき、前記部品交換推奨情報は前記射出成形機の新規購入を推奨する旨の情報を含む、請求項7に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記寿命予測手段は、前記管理部品毎に前記管理部品に関して発注の判断の参考となる部品参考情報を管理し、前記部品交換推奨情報は前記部品参考情報を含む、請求項1または2に記載の射出成形機。
【請求項10】
前記部品参考情報は前記管理部品の中古品価格である、請求項9に記載の射出成形機。
【請求項11】
前記射出成形機は、部品交換管理画面を備え、
前記部品交換管理画面は、複数個の前記管理部品を表示し、前記交換推奨部品があるとき前記交換推奨部品について前記部品交換推奨情報を表示するようになっている、請求項1または2に記載の射出成形機。
【請求項12】
前記射出成形機は、いずれか1個または複数個の前記管理部品が前記事前予告日に達したとき、前記部品交換推奨情報を警報メッセージとして出力する、請求項1または2に記載の射出成形機。
【請求項13】
射出成形機の構成部品のうち複数の管理部品を管理対象として、前記管理部品毎に使用を開始した使用開始日と、寿命に到達する予定日である寿命予定日と、発注から交換完了までに要するリードタイムの予想である予想リードタイムと、を管理し、
いずれか1個または複数個の前記管理部品が、寿命予定日に対し予め定められた日数だけ前倒しした事前予告日に達しているとき前記管理部品を交換推奨部品とし、前記交換推奨部品について、交換を促す情報と予想リードタイムとを備えた部品交換推奨情報を提供する、射出成形機の部品交換推奨情報の提供方法。
【請求項14】
前記管理部品が故障したとき故障した前記管理部品を前記交換推奨部品として扱い、前記部品交換推奨情報を提供する、請求項13に記載の射出成形機の部品交換推奨情報の提供方法。
【請求項15】
前記管理部品毎に部品価格を管理するようにし、前記部品交換推奨情報には前記交換推奨部品の前記部品価格を含ませるようにする、請求項13または14に記載の射出成形機の部品交換推奨情報の提供方法。
【請求項16】
前記交換推奨部品が複数個のとき、前記部品交換推奨情報には複数個の前記交換推奨部品の前記部品価格の合計額を含ませるようにする、請求項15に記載の射出成形機の部品交換推奨情報の提供方法。
【請求項17】
前記射出成形機はネットワークによりサーバに接続し、前記管理部品に関する前記予想リードタイム、前記部品価格、は前記サーバ上において管理し、前記射出成形機が参照するようにする、請求項15に記載の射出成形機の部品交換推奨情報の提供方法。
【請求項18】
前記射出成形機の価格である本体価格と、前記管理部品毎の交換履歴とを管理し、
過去に交換した前記管理部品の前記部品価格の累計である累計部品価格と前記交換推奨部品の前記部品価格の合計額が前記本体価格より高いとき、前記部品交換推奨情報には前記射出成形機の新規購入を推奨する旨の情報を含ませるようにする、請求項15に記載の射出成形機の部品交換推奨情報の提供方法。
【請求項19】
前記射出成形機の価格である本体価格と、ユーザが予め設定する新規購入条件とを管理し、
前記新規購入条件は合計上限価格を含み、前記交換推奨部品の前記部品価格の合計額が前記合計上限価格より高いとき、前記部品交換推奨情報は前記射出成形機の新規購入を推奨する旨の情報を含む、請求項15に記載の射出成形機の部品交換推奨情報の提供方法。
【請求項20】
前記管理部品毎の交換履歴を管理し、前記新規購入条件は累積上限価格を含み、過去に交換した前記管理部品の前記部品価格の累計である累計部品価格と前記交換推奨部品の前記部品価格の合計額が前記累積上限価格より高いとき、前記部品交換推奨情報には前記射出成形機の新規購入を推奨する旨の情報を含ませるようにする、請求項19に記載の射出成形機の部品交換推奨情報の提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の寿命を予測し部品の交換について情報を提供する射出成形機、および射出成形機の部品交換推奨情報の提供方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は複数の部品から構成されており、長期間の運転により劣化して故障する部品がある。例えば、ボールねじ、サーボアンプ、冷却ファン、リレー等である。これらの部品が故障すると、当該部品の交換をするまで射出成形機を運転することができない。射出成形機の管理者は、部品の寿命が近いと判断したら早期に部品を発注して射出成形機の運転ができないダウンタイムを短くすることができる。しかしながら、劣化に気づかずに故障してしまうと、部品を入手して交換するまでの期間、射出成形機を運転することができない。特に発注から入手するまでの時間が長い部品が故障したときは、長期運転停止が避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
特許文献1には、射出成形機を構成するそれぞれの部品について、累積利用時間を計算して寿命を予測して表示させる射出成形機が提案されている。この射出成形機は部品の価格も情報として提供するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の射出成形機は、部品の寿命を予測して情報を提供するので管理者は早期に部品を発注することができる。しかしながら解決すべき課題も見受けられる。具体的には、部品の調達に要する時間について考慮されていない点である。部品にはいわゆる汎用部品のように容易に入手ができるものもあるが、例えば受注生産しているような部品の場合、あるいは海外から取り寄せる場合、発注から入手まで長期間を要する。特許文献1に記載の射出成形機において、部品の故障前に寿命を予測して管理者に発注を促したとしても、その部品の入手に時間がかかる場合、部品の入手前に部品が故障して射出成形機が長期間停止してしまう可能性がある。
【0006】
本開示において、寿命が近づいた部品を適切な時期に入手でき、ダウンタイムを短くすることができる射出成形機を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る射出成形機は、射出成形機の構成部品のうち複数の管理部品を管理対象として寿命を予測する寿命予測手段を備える。寿命予測手段は、管理部品毎に使用を開始した使用開始日と、寿命に到達する予定日である寿命予定日と、発注から交換完了までに要するリードタイムの予想である予想リードタイムと、を管理する。そしていずれか1個または複数個の管理部品が、寿命予定日に対し予め定められた日数だけ前倒しした事前予告日に達しているとき、その管理部品を交換推奨部品とし、交換推奨部品について、交換を促す情報と予想リードタイムとを備えた部品交換推奨情報を提供するように構成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、予想リードタイムの情報を活用できるので寿命が近づいた部品を適切な時期に入手でき、ダウンタイムを短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る射出成形機の正面図である。
【
図2】本実施の形態に係る部品寿命予測画面である。
【
図3】本実施の形態に係る部品寿命予測画面である。
【
図4】本実施の形態に係る部品交換管理画面である。
【
図5】本実施の形態に係る部品詳細情報画面である。
【
図6】本実施の形態に係るリセット処理画面である。
【
図8】本実施の形態に係るユーザ条件設定画面である。
【
図9】本実施の形態の変形例に係る射出成形機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
[本実施の形態]
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、
図1に示されているように、型締装置2と、射出装置3と、を備えている。射出成形機1はコントローラつまり制御装置4を備えており、型締装置2、射出装置3、等は制御装置4によって制御されるようになっている。制御装置4にはモニタ4aが設けられており、各種画面が表示されるようになっている。
【0013】
<型締装置>
型締装置2は、ベッドBに固定されている固定盤7と、ベッドB上をスライド自在に設けられている可動盤8と、型締ハウジング9と、を備えている。固定盤7と型締ハウジング9は複数本のタイバー11、11、…により連結されており、可動盤8は固定盤7と型締ハウジング9の間でスライド自在になっている。型締ハウジング9と可動盤8の間には型締機構が、すなわち本実施の形態においてはトグル機構13が設けられている。トグル機構13はボールねじ14を含む駆動手段によって駆動されるようになっている。固定盤7と可動盤8には、それぞれ固定側金型15、可動側金型16が設けられている。従って、トグル機構13を駆動すると金型15、16が型開閉される。
【0014】
<射出装置>
射出装置3は、加熱シリンダ19と、加熱シリンダ19内に設けられているスクリュ20と、スクリュ駆動装置22と、を備えている。加熱シリンダ19はスクリュ駆動装置22に支持されており、スクリュ20はスクリュ駆動装置22によって回転方向と軸方向とに駆動されるようになっている。加熱シリンダ19にはホッパ23と、射出ノズル24とが設けられている。このような射出装置3において、加熱シリンダ19にはヒータ25、25、…が設けられ、熱電対からなる温度センサ26、26、…が埋め込まれている。
【0015】
射出装置3において、ヒータ25、25、…により加熱シリンダ19を加熱し、ホッパ23から射出材料を供給してスクリュ20を回転する。そうすると射出材料は溶融し、加熱シリンダ19の先端に送られて、スクリュ20は後退する。すなわち計量される。温度センサ26、26、…により射出材料の温度を監視し、ヒータ25、25、…の出力を制御しながら計量を続ける。計量が完了したらスクリュ20を軸方向に駆動する。そうすると射出材料が射出される。
【0016】
<管理部品>
射出成形機1は、このように複数の部品から構成されており、長期運転により劣化して交換が必要になる部品がある。本実施の形態に係る射出成形機1は、所定の部品を管理対象として寿命を予測し、そして寿命に達したらあるいは寿命に近づいたら交換を推奨するようになっている。このような管理対象の部品を本明細書では管理部品と呼ぶ。管理部品として本実施の形態では以下の種類を対象としている。すなわちボールねじ、基板、サーボアンプ、冷却ファン、熱電対、リレーである。
【0017】
ボールねじは、型締装置2に設けられている型締用のボールねじ14だけでなく、説明していないがスクリュ駆動装置22内にも設けられているし、他にも設けられている。基板、サーボアンプ、リレーのそれぞれは、図示しないがいずれもベッドB内に入れられている。基板は、電子回路からなり各種装置を制御するようになっており、サーボアンプは各種装置を駆動するサーボモータに三相交流電圧を供給するようになっており、リレーは制御回路と各種装置とを接続している。冷却ファンは、ベッドBだけでなく、各種装置に設けられており、これらを冷却している。なお、管理部品としてどのような種類の部品を対象とするか任意であり、本実施の形態が採用している部品に限定する必要はない。
【0018】
<寿命管理機能>
本実施の形態に係る射出成形機1は、管理部品について寿命を予測し、部品の交換を推奨するようになっている、このような寿命管理機能は制御装置4内に設けられている。
図1には寿命管理機能を実現するためのファイル群、処理群が示されている。ファイル群には、管理部品購入関連情報ファイル31、管理部品交換管理ファイル32、管理部品交換履歴ファイル33がある。そして処理群には、寿命予測処理35、故障検出処理36、警報処理37、画面処理38がある。ただし、これらのファイル群、処理群は、説明し易いように概念化して便宜的にまとめているだけであり、これらの構成に限定する必要はない。ファイル群、処理群について簡単に説明する。
【0019】
<管理部品購入関連情報ファイル>
管理部品購入関連情報ファイル31は、管理部品の新規購入に当たって参考とすべき情報を備えている。管理部品毎に以下の情報が格納されている。
・部品価格
管理部品の購入価格。日本円だけでなく、米ドル等の他国通貨であってもよい。
・予想リードタイム
発注から交換完了までに要するリードタイムの予想期間。
・事前予告日数
管理部品について寿命予定日より前倒しされた事前予告日を計算するための、前倒しの日数。事前予告日とは、ユーザに管理部品の交換について推奨し、その情報を提供する日である。0日を設定している場合には、事前予告日は寿命予定日になる。なお、事前予告日数は管理部品毎に設定せず、全ての管理部品に共通の日数として設定されるようにしてもよい。
・部品参考情報
中古品価格等、部品購入の判断において参考となる情報。
【0020】
<管理部品交換管理ファイル>
管理部品交換管理ファイル32は、現在使用中の管理部品についての情報が入れられている。管理部品毎に以下の情報が格納されている。
・使用開始日
管理部品の使用を開始した日。交換した場合には交換日。
・使用可能期間
管理部品毎に予め定められている、通常の負荷、使用頻度で運転した場合における使用が可能な期間。
・故障有無
制御装置4による故障の検出が可能な管理部品のみが対象。故障しているか否かの情報。
【0021】
<管理部品交換履歴ファイル>
管理部品交換履歴ファイル33は、管理部品を交換した履歴が入れられている。以下の情報が格納されている。
・管理部品情報
交換した管理部品の名称、機器番号。
・交換日
管理部品を交換した日。
・部品価格
交換時における管理部品の購入価格。日本円だけでなく、米ドル等の他国通貨であってもよい。
【0022】
<寿命予測処理>
寿命予測処理35は、定期的に、例えば毎日実行される。また画面処理38からも実行される。実行されると、寿命予測処理35は管理部品毎に寿命を予測し、寿命予定日を計算する。具体的には、管理部品毎に、管理部品交換管理ファイル32に格納されている「使用開始日」に対して「使用可能期間」を加算して寿命予定日を計算する。現在の日時が、計算した寿命予定日から「事前予告日数」を前倒しした日、つまり事前予告日に達しているか否かを判断する。
【0023】
ところで、寿命予測処理35は寿命予定日の計算方法を変形することもできる。管理部品の種類によっては使用時の負荷の累積によって早期に寿命に到達することもあるからである。例えばボールねじの場合、負荷である回転数が規定の回転数つまり寿命回転数に達したら寿命に到達したと見なすことができる。成形サイクル1回あたりのボールねじの回転数を予め得ておき、「使用開始日」以降に実施された成形サイクル数を乗じれば、累積負荷である総回転数を得ることができる。寿命回転数に対する総回転数の割合を計算すれば、寿命に達するまでのボールねじの劣化度を評価することができ、使用開始日から現在までの期間を元に、寿命に到達する日を予測できる。そこで、寿命予測処理35は、このように予測した寿命に到達すると予測される日が、「使用可能期間」から計算される寿命予定日より早まるようであれば寿命予定日を前倒しすることができる。
【0024】
他の管理部品についても、ボールねじにおける回転数のように、計算可能な指標について負荷として扱うようにすれば、累積負荷による寿命の到達日を計算することができる。寿命予測処理35がこのような累積負荷による寿命の到達度を計算する場合、管理部品交換管理ファイル32に管理部品についての累積負荷情報を格納するようにし、これを寿命予測処理35が更新するようにすればよい。寿命予定日の計算方法をこのように変形した場合であっても、寿命予測処理35は、計算した寿命予定日から「事前予告日数」を前倒しした事前予告日に達しているか否かを判断する。
【0025】
<故障検出処理>
管理部品によっては故障時に検出が可能なものがある。例えばサーボアンプ、リレー等である。出力されるべき電圧が検出されない等により故障を検出することができる。故障検出処理36はこのような故障の検出が可能な管理部品について故障を検出したら、管理部品交換管理ファイル32の「故障有無」に故障状態を示す「有」を書き込むと共に、警報処理37に通知する。
【0026】
<警報処理>
寿命予測処理35が事前予告日に達した管理部品があると判断したとき、管理部品について寿命予想日に達したとき、あるいは故障検出処理36が故障を検出したとき、管理部品の交換について推奨する警報を出力する。出力する警報はモニタ4aに表示される画面、つまり後で説明する警報画面87A、87B、87C(
図7A、
図7B、
図7C)として出力される。
【0027】
<画面処理>
以下、本実施の形態に係る射出成形機1において寿命管理機能を実現している各種画面について説明する。
【0028】
<部品寿命予測画面>
部品寿命予測画面40が、
図2に示されている。部品寿命予測画面40は、制御装置4のモニタ4aにおいて所定の操作をすると表示される。部品寿命予測画面40は寿命予測処理35(
図1参照)を実行し、寿命予測処理35が計算した寿命に関する情報を表示する。部品寿命予測画面40の上段には、複数の表示切換ボタン42a、42b、…が設けられている。左端先頭の「TOP」の表示切換ボタン42aを選択すると、
図2に示されているように全種類の管理部品について寿命についての情報が示される。すなわち、ボールねじ、基板、サーボアンプ、冷却ファン、熱電対、リレーである。それぞれの種類の管理部品、例えばボールねじは射出成形機1(
図1参照)に複数本設けられているが、それらのうち、最も寿命に近づいている1本のボールねじが代表として表示されるようになっている。
【0029】
それぞれの種類の管理部品には寿命予定日が表示され、「使用開始日」からの寿命予定日までに至るまでの寿命到達状況が百分率のグラフで示される。例えばボールねじは、寿命予定日が2023/08と表示され、寿命予定日までの寿命到達状況は95%になっている。このグラフにおいて0%は「使用開始日」に、100%は寿命予定日にそれぞれ対応している。なお、この例では寿命予定日は月単位で表示されているが、日単位で表示するようにしてもよい。
【0030】
管理部品のリレーにおいて、警告マーク43が表示されている。これは複数個設けられているリレーのうち、少なくとも1個のリレーについて早期に交換を検討する必要があることを示している。この例ではリレーは寿命予定日に到達して100%を超えており警告マーク43の表示条件を満たしている。管理部品交換管理ファイル32(
図1参照)において「故障有無」が「有」になっている管理部品があるときも、警告マーク43が表示される。
【0031】
部品寿命予測画面40には、部品交換管理ボタン45、警告表示のON/OFFボタン46が設けられている。部品交換管理ボタン45を選択すると、後で
図4を参照して詳しく説明する部品交換管理画面55に展開する。警告表示のON/OFFボタン46を選択すると、ONとOFFとが切り換えられる。ONになっている場合、警報処理37が実行可能な状態になる。一方OFFになっている場合、警報処理37(
図1参照)は実行されない状態になり警報画面87A、87B、87C(
図7A、
図7B、
図7C参照)の表示が抑制される。
【0032】
部品寿命予測画面40において、2番目以降の表示切換ボタン42b、42c、…を選択すると、選択した1種類の管理部品について寿命に関する情報が表示される。例えば「リレー」の表示切換ボタン42gを選択すると、
図3に示されているように「リレー」の画面表示に切り換えられる。このように1種類の管理部品についての画面表示になっているとき、左に複数個の機器選択ボタン48a、48b、48cが示される。これらは射出成形機1(
図1参照)に設けられている、その種類の管理部品の個数分だけ示される。リレーの場合にはリレーの個数分だけ表示される。複数個の機器選択ボタン48a、48b、48cには、それぞれ機器番号Xa、Xb、Xcが表示されている。いずれかの機器選択ボタン48bを選択するとその機器番号(
図3では機器番号Xb)のリレーについて寿命に関する情報が表示される。
【0033】
画面の右欄下方には管理部品場所情報50が示され、射出成形機1(
図1参照)において当該機器番号のリレーが設けられている場所が示される。画面の右欄上方には当該機器番号のリレーについて、寿命予定日と、「使用開始日」からの寿命予定日までに至るまでの寿命到達状況が百分率のグラフで示されている。また、管理部品購入関連情報ファイル31において管理部品のリレーに関して格納されている「部品価格」と「予想リードタイム」が、交換の判断において参考となる情報として部品価格表示欄51、予想リードタイム表示欄52にそれぞれ表示される。リセットボタン53は、当該機器番号のリレーを交換したとき操作する。リセットボタン53を選択すると、後で説明する
図6に示されているリセット処理画面80が表示される。部品詳細情報ボタン54は、後で説明する
図5に示されている部品詳細情報画面70を表示するためのボタンになっている。
【0034】
<部品交換管理画面>
部品交換管理画面55が、
図4に示されている。部品交換管理画面55は、制御装置4(
図1参照)のモニタ4aにおいて所定の操作をすると表示され、寿命予測処理35を実行する。そして、交換を推奨する管理部品つまり交換推奨部品と管理部品の交換履歴とを表示するようになっている。
【0035】
部品交換管理画面55の上段の交換推奨部品欄に表示されている交換管理部品は、寿命予測処理35の予測により事前予告日に到達した管理部品と、故障検出処理36(
図1参照)によって故障が検出された管理部品とが対象となる。
図4の例では、交換推奨部品は3個表示されている。すなわち機器番号REL-Xbのリレーと、機器番号BLSCR-Xaのボールねじと、機器番号REL-Xaのリレーである。これらの交換推奨部品について、寿命予定日と部品価格と予想リードタイムとが表示される。部品価格と予想リードタイムは、管理部品購入関連情報ファイル31に格納されている「部品価格」と「予想リードタイム」である。
【0036】
ユーザは部品価格を参考にして管理部品を発注するか否かを判断し、予想リードタイムを参考にして、管理部品を発注する時期を検討することができる。なお、部品価格は日本円だけでなく、他国通貨で表示するようにしてもよい。これらの交換推奨部品の先頭にはボタン57、57、…が設けられている。ボタン57、57、…を選択すると、後で説明する部品詳細情報画面70(
図5参照)が表示される。
【0037】
交換推奨部品欄には、交換推奨部品の部品価格の合計である交換推奨部品合計額を表示する交換推奨部品合計額表示欄59と、交換を推奨するか否かのアドバイスを表示するアドバイス表示欄60とが設けられている。本実施の形態に係る射出成形機1(
図1参照)は、
図8に示されているユーザ条件画面91の合計上限価格設定欄92によってユーザは合計上限価格を設定できるようになっている。交換推奨合計額がユーザの設定する合計上限価格を超えたら、その旨を知らせると共に射出成形機の新規購入の検討を勧めるアドバイスをアドバイス表示欄60に表示する。交換推奨合計額が合計上限価格を超えなければその旨を知らせると共に交換推奨部品を交換することを勧めるアドバイスを表示する。
【0038】
部品交換管理画面55の下段の交換履歴欄には、過去に交換した管理部品の履歴が表示される。管理部品の種類と機器番号だけでなく、管理部品交換履歴ファイル33(
図1参照)において交換した管理部品毎に記録されている「交換日」、「部品価格」が表示される。なお、本実施の形態に係る射出成形機1(
図1参照)は、
図8に示されているユーザ条件画面91の累積対象の規定期間設定欄94によってユーザは累積対象の規定期間を設定できるようになっている。この累積対象の規定期間は、部品交換管理画面55(
図4参照)において累積対象の規定期間表示欄62で表示されており、交換履歴欄に表示される交換済みの管理部品は、直近のこの期間(
図4に示す例では60月の間)に交換した管理部品だけになっている。累積対象の規定期間として0月が設定されている場合には、全ての交換済みの管理部品について表示される。
【0039】
交換済の累積部品価格表示欄64には、上に表示されている交換した管理部品の部品価格の合計額が表示される。そして、合計額表示欄65には、交換済の累積部品価格表示欄64に表示されている合計額に、交換推奨部品合計額表示欄59に表示されている額が加算された金額が表示される。つまり、過去に交換した管理部品の累積部品価格とこれから交換する管理部品の部品価格の合計額が表示される。この画面の交換履歴欄には射出成形機本体価格表示欄67と、アドバイス表示欄68とが設けられている。アドバイス表示欄68には、合計額表示欄65に表示されている合計額が射出成形本体価格を超えたら、その旨を知らせると共に射出成形機の新規購入の検討を勧めるアドバイスを表示する。合計額が合計射出成形本体価格を超えなければその旨を知らせると共に交換推奨部品を交換することを勧めるアドバイスを表示する。なお、合計額表示欄65に表示されている合計額が射出成形本体価格に所定の比率(例えば0.6)を乗じた値が射出成形本体価格を超えたら、その旨を知らせると共に射出成形機の新規購入の検討を勧めるアドバイスを表示するようにしてもよい。また、交換推奨部品合計額表示欄59に表示されている額が射出成形本体価格に所定の比率を乗じた値が射出成形本体価格を超えたら、その旨を知らせると共に射出成形機の新規購入の検討を勧めるアドバイスを表示するようにしてもよい。
【0040】
合計額表示欄65に表示される合計額は、別のチェックも受けるようになっている。ユーザは
図8に示されているユーザ条件画面91の累積上限価格設定欄93によって累積上限価格を設定できるようになっている。合計額表示欄65に表示される合計額が、累積上限価格を超えたらアドバイス表示欄68にその旨表示し、射出成形機の新規購入の検討を勧めるアドバイスを表示する。
【0041】
<部品詳細情報画面>
部品寿命予測画面40(
図3参照)において部品詳細情報ボタン54が選択されたとき、または部品交換管理画面55(
図4参照)においてボタン57、57、…が選択されたとき
図5に示されている部品詳細情報画面70が表示される。部品詳細情報画面70は、所定の機器番号の管理部品について、詳細情報を表示する画面であり、寿命予定日、部品価格、予想リードタイムの他に、管理部品の発注にあたり参考となる情報、つまり部品参考情報が表示される。部品参考情報には、価格変動幅表示欄72に表示される価格変動幅、リードタイム変動幅表示欄73に表示されるリードタイム変動幅、中古品価格表示欄74に表示される中古品価格がある。さらに、備考表示欄75に備考が表示される。これらの部品参考情報は管理部品購入関連情報ファイル31の「部品参考情報」に格納されており、管理部品毎に表示項目を増減してよい。
【0042】
この画面にはリセットボタン78が設けられている。管理部品を交換したときに操作するボタンになっている。リセットボタン78を選択すると、
図6に示されている次に説明するリセット処理画面80に展開する。
【0043】
<リセット処理画面>
部品寿命予測画面40(
図3参照)においてリセットボタン53が選択されたとき、または部品詳細情報画面70(
図5参照)においてリセットボタン78が選択されたとき
図6に示されているリセット処理画面80が表示される。リセット処理画面80は、管理部品を交換したときに寿命をリセットするための画面になっている。この画面には部品交換日入力欄82と、部品価格入力欄83とが設けられている。ユーザは部品交換日と、実際に購入した部品価格とを入力する。次いで実行ボタン84を選択する。そうすると、当該管理部品について管理部品交換履歴ファイル33(
図1参照)に情報が追加される。そして管理部品交換管理ファイル32において当該管理部品の「使用開始日」が部品交換日によって書き換えられる。すなわち寿命がリセットされる。
【0044】
<警報画面>
図7A、
図7B、
図7Cにそれぞれ示されている警報画面87A、87B、87Cは、警報処理37(
図1参照)によって表示される。警報画面87Aは、寿命予定日に到達した管理部品があるとき表示される。警報画面87Bは、管理部品が寿命に関して事前に予告する事前予告日に到達した時に表示される。そして警報画面87Cは、故障検出処理36(
図1参照)が管理部品の故障を検出して警報処理37が呼び出されたときに表示される。これらの警報画面87A、87B、87Cには部品交換管理ボタン89が設けられている。これを選択すると既に説明した部品交換管理画面55(
図4参照)が表示される。以後、ユーザは部品交換管理画面55によって管理部品の発注を検討することができる。
【0045】
[本実施の形態の変形例]
本実施の形態の変形例を説明する。本実施の形態の変形例に係る射出成形機1‘が
図9に示されている。本実施の形態の変形例に係る射出成形機1‘において型締装置2、射出装置3については、
図1に示されている本実施の形態に係る射出成形機1と同様に構成されている。したがって、これらについての説明は省略する。本実施の形態の変形例に係る射出成形機1‘において制御装置4に設けられている寿命管理機能を実現するファイル群、処理群のほとんどは、本実施の形態に係る射出成形機1におけるファイル群、処理群と同様に構成されている。具体的には、管理部品購入関連情報ファイル31、管理部品交換管理ファイル32、管理部品交換履歴ファイル33、寿命予測処理35、故障検出処理36、警報処理37、画面処理38である。これらについての説明も省略する。
【0046】
<通信処理>
本実施の形態の変形例に係る射出成形機1‘において、寿命管理機能に通信処理95が設けられている。これは本実施の形態に係る射出成形機1(
図1参照)にはない処理である。通信処理95は、ネットワーク100を介して、サーバ101にアクセスする処理になっている。サーバ101は、例えば射出成形機1’を提供しているメーカが管理しており、管理部品についての部品価格、予想リードタイム、中古品価格等の部品参考情報が格納されている。部品価格は改定されるたびに更新され、予想リードタイムは管理部品の在庫状況等によって必要に応じて更新されている。また中古品価格等は、最新の情報で更新されている通信処理95は、これらの情報を収集して、管理部品購入関連情報ファイル31の情報を更新する。これによって、最新の情報を元に、管理部品の寿命を管理することができる。
【0047】
<他の変形例>
本実施の形態は他の変形も可能である。例えば、部品価格等については日本円だけで無く他国通貨での表示も可能であるように説明した。これを変形して複数の通貨による価格表示を画面上において並列で表示するようにすることもできる。寿命予測処理35(
図1参照)についても変形が可能である。寿命予測処理35は、「使用開始日」と「使用可能期間」とから寿命予測日を計算する方法、あるいは管理部品の累積負荷を計算して寿命に到達する日を予測し、寿命予測日を前倒しする方法、を説明した。しかしながら、他の方法を採用することもできる。例えば、管理部品について定期的に技術者による点検を実施して、その都度劣化状況を確認し、これを元に寿命予測日を計算するようにすることもできる。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御装置
4a モニタ 7 固定盤
8 可動盤 9 型締ハウジング
11 タイバー 13 トグル機構
14 ボールねじ 15 固定側金型
16 可動側金型 19 加熱シリンダ
20 スクリュ 22 スクリュ駆動装置
23 ホッパ 24 射出ノズル
25 ヒータ 26 温度センサ
31 管理部品購入関連情報ファイル 32 管理部品交換管理ファイル
33 管理部品交換履歴ファイル 35 寿命予測処理
36 故障検出処理 37 警報処理
38 画面処理 40 寿命予測画面
42a、42b、42c 表示切換ボタン
43 警告マーク 45 部品交換管理ボタン
46 警告表示のON/OFFボタン
48a、48b、48c 機器選択ボタン
50 管理部品場所情報 51 部品価格表示欄
52 予想リードタイム表示欄 53 リセットボタン
54 部品詳細情報ボタン 55 部品交換管理画面
59 交換推奨部品合計額表示欄 60 アドバイス表示欄
62 累積対象の規定期間表示欄 64 交換済の累積部品価格表示欄
65 合計額表示欄 67 射出成形機本体価格表示欄
68 アドバイス表示欄 70 部品詳細情報画面
72 価格変動幅表示欄 73 リードタイム変動幅表示欄
74 中古品価格表示欄 75 備考表示欄
78 リセットボタン 80 リセット処理画面
82 部品交換日入力欄 83 部品価格入力欄
84 実行ボタン 91 ユーザ条件画面
92 合計上限価格設定欄 93 累積上限価格設定欄
94 累積対象の規定期間設定欄 95 通信処理
100 ネットワーク 101 サーバ