(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119632
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】不整脈種別判定装置、不整脈種別判定方法、不整脈種別判定プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/02 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
A61B8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026684
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】吉松 淳
(72)【発明者】
【氏名】柿ヶ野 藍子
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】藤丸 雅弘
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD01
4C601DD07
4C601DD09
4C601DD15
4C601DD27
4C601EE09
4C601JC06
4C601JC09
4C601JC12
4C601JC16
4C601LL21
(57)【要約】
【課題】心臓を撮影した画像から、不整脈の種別を精度良く判定する。
【解決手段】不整脈種別判定装置(1)は、心臓を撮影した画像に含まれる、左心房、左心室、右心房、および右心室の各領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおけるピーク周波数のうちピーク値が大きい上位の1または複数のピーク周波数に関するピーク情報を取得する取得部(101)と、ピーク情報に基づいて不整脈の種別を判定する判定部(102)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓を撮影した画像に含まれる、左心房、左心室、右心房、および右心室の各領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおけるピーク周波数のうちピーク値が大きい上位の1または複数の前記ピーク周波数に関するピーク情報を取得する取得部と、
前記ピーク情報に基づいて不整脈の種別を判定する判定部と、を備える不整脈種別判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、
ピーク値が最大となる前記ピーク周波数である第1ピーク周波数が、正常範囲として予め定められた基準周波数帯に存在する前記周波数スペクトルの個数である第1個数と、
前記第1ピーク周波数が前記基準周波数帯より値が大きい周波数帯に存在する前記周波数スペクトルの個数である第2個数と、
前記第1ピーク周波数が前記基準周波数帯より値が小さい周波数帯に存在する前記周波数スペクトルの個数である第3個数と、
の大小関係に基づいて前記種別を分類する、請求項1に記載の不整脈種別判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記第2個数が前記第3個数より多い場合、心房粗動および上室性頻拍の少なくともいずれかの可能性があると判定し、
前記第3個数が前記第2個数より多く、かつ、前記第3個数が前記第1個数以上である場合、完全房室ブロックおよび洞性徐脈の少なくともいずれかの可能性があると判定し、
前記第1個数が前記第2個数以上、かつ、前記第1個数が前記第3個数以上である場合、期外収縮、完全房室ブロック、および、正常の少なくともいずれかの可能性がある、と判定する、請求項2に記載の不整脈種別判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、
左心房および右心房の少なくとも一方の前記周波数スペクトルにおいて、ピーク値が最大となる前記ピーク周波数である第1ピーク周波数が、正常範囲として予め定められた基準周波数帯の最大周波数の所定倍以上である場合、
左心房および右心房の少なくとも一方の前記周波数スペクトルにおける、前記基準周波数帯より値が大きい第1周波数帯における最大のピーク値と、前記第1周波数帯より値が大きい第2周波数帯における最大のピーク値と、が所定関係を満たす場合、および、
左心房および右心房の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1周波数帯および前記第2周波数帯にピークが存在し、かつ、左心室および右心室の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1周波数帯および前記第2周波数帯の少なくとも一方にピークが存在しない場合、
の少なくともいずれかの場合、心房粗動の可能性があると判定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の不整脈種別判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、
右心房の前記周波数スペクトルにおける、正常範囲として予め定められた基準周波数帯より値が大きい第1周波数帯における最大のピーク値に対する、前記第1周波数帯より値が大きい第2周波数帯における最大のピーク値の割合と、右心室の前記周波数スペクトルにおける、前記第1周波数帯における最大のピーク値に対する、前記第2周波数帯における最大のピーク値の割合と、が所定関係を満たす場合、および、
左心房の前記周波数スペクトルにおける、前記基準周波数帯より値が大きい第1周波数帯における最大のピーク値に対する、前記第1周波数帯より値が大きい第2周波数帯における最大のピーク値の割合と、左心室の前記周波数スペクトルにおける、前記第1周波数帯における最大のピーク値に対する、前記第2周波数帯における最大のピーク値の割合と、が前記所定関係を満たす場合、
の少なくともいずれかの場合、上室性頻拍の可能性があると判定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の不整脈種別判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、
左心房および右心房の少なくとも一方の前記周波数スペクトルにおいて、ピーク値が最大となる前記ピーク周波数である第1ピーク周波数が正常範囲として予め定められた基準周波数帯内に存在し、かつ、左心室および右心室の少なくとも一方の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1ピーク周波数が前記基準周波数帯より小さい場合、および、
左心房および右心房の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1ピーク周波数が前記基準周波数帯より小さく、かつ、左心房および右心房の前記周波数スペクトルにおいて、前記基準周波数帯内に2番目に大きいピーク値の前記ピーク周波数である第2ピーク周波数が存在し、かつ、左心房および右心房の少なくとも一方の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1ピーク周波数におけるピーク値と前記第2ピーク周波数におけるピーク値との割合が、所定関係を満たす場合、
の少なくともいずれかの場合、完全房室ブロックの可能性があると判定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の不整脈種別判定装置。
【請求項7】
前記判定部は、
左心房および右心房の前記周波数スペクトルにおいて、ピーク値が最大となる前記ピーク周波数である第1ピーク周波数が正常範囲として予め定められた基準周波数帯より小さく、かつ、左心室および右心室の少なくとも一方の前記周波数スペクトルにおいて、前記基準周波数帯内に2番目に大きいピーク値の前記ピーク周波数である第2ピーク周波数が存在しない場合、および、
左心房、右心房、左心室および右心室の前記周波数スペクトルの各々において、前記第1ピーク周波数が前記基準周波数帯より小さい場合、
の少なくともいずれかの場合、洞性徐脈の可能性があると判定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の不整脈種別判定装置。
【請求項8】
前記判定部は、
左心房および右心房の前記周波数スペクトルにおいて、ピーク値が最大となる前記ピーク周波数である第1ピーク周波数が正常範囲として予め定められた基準周波数帯内に存在し、かつ、左心室および右心室の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1ピーク周波数が前記基準周波数帯より小さく、かつ、左心室および右心室の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1ピーク周波数におけるピーク値と2番目に大きいピーク値との割合が所定関係を満たす場合、完全房室ブロックの可能性があると判定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の不整脈種別判定装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記周波数スペクトルにおいてピーク値が最大となる前記ピーク周波数である第1ピーク周波数の値が、前記信号波形を時間周波数解析して得られる時間周波数解析データにおいて所定割合以上に変化した期間が存在する場合、期外収縮であると判定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の不整脈種別判定装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記第1ピーク周波数の値が前記所定割合以上に減少し始める時間から、前記減少後の値から前記所定割合以上に増加し終わる時間までを、上記期間として特定する、請求項9に記載の不整脈種別判定装置。
【請求項11】
前記時間周波数解析データにおける周波数成分のうち、前記第1ピーク周波数から離れた周波数ほど減衰させる減衰部をさらに備え、
前記判定部は、前記減衰後の前記時間周波数解析データにおいて前記期間の有無を判定する、請求項9に記載の不整脈種別判定装置。
【請求項12】
1または複数の情報処理装置により実行される不整脈種別判定方法であって、
心臓を撮影した画像に含まれる、左心房、左心室、右心房、および右心室の各領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおけるピーク周波数のうちピーク値が大きい上位の1または複数の前記ピーク周波数に関するピーク情報を取得する取得ステップと、
前記ピーク情報に基づいて不整脈の種別を判定する判定ステップと、を含む不整脈種別判定方法。
【請求項13】
請求項1に記載の不整脈種別判定装置としてコンピュータを機能させるための不整脈種別判定プログラムであって、前記取得部および前記判定部としてコンピュータを機能させるための不整脈種別判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整脈の種別を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓の超音波診断動画像から、心臓の左右間の関連、および房室間の関連を把握する技術が広く利用されている。例えば、特許文献1には、超音波動画像において複数の心腔における境界位置群を特定し、該境界位置群の追跡結果に基づいて、少なくとも1心拍以上の区間に亘る複数の心腔の境界位置を取得する超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、不整脈診断には主に心電図が使用されるが、発生した不整脈の種別を判定することが困難な場合があり、判定精度の面で改善の余地があった。
【0005】
本発明の一態様は、心臓を撮影した画像から、不整脈の種別を精度良く判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る不整脈種別判定装置は、心臓を撮影した画像に含まれる、左心房、左心室、右心房、および右心室の各領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおけるピーク周波数のうちピーク値が大きい上位の1または複数の前記ピーク周波数に関するピーク情報を取得する取得部と、前記ピーク情報に基づいて不整脈の種別を判定する判定部と、を備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る不整脈種別判定方法は、1または複数の情報処理装置により実行される不整脈種別判定方法であって、心臓を撮影した画像に含まれる、左心房、左心室、右心房、および右心室の各領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおけるピーク周波数のうちピーク値が大きい上位の1または複数の前記ピーク周波数に関するピーク情報を取得する取得ステップと、前記ピーク情報に基づいて不整脈の種別を判定する判定ステップと、を含む。
【0008】
本発明の各態様に係る不整脈種別判定装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記不整脈種別判定装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記不整脈種別判定装置をコンピュータにて実現させる前記情報処理装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、心臓を撮影した画像から、不整脈の種別を精度良く判定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る不整脈種別判定システムの構成例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る不整脈種別判定装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る情報処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る学習装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る不整脈検出装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】心臓を撮影した画像における検出対象となる領域の例を示す図である。
【
図7】情報処理装置が行う処理の一例を説明するための図である。
【
図8】各心房および各心室の面積の時系列変化を示す信号波形の一例を示す図である。
【
図9】各心房および各心室の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルから抽出されるピーク情報の例を説明するための図である。
【
図10】心臓の各領域の面積の時系列変化を示す信号波形を時間周波数解析して得られる時間周波数解析データのデータ構造の一例、および時間周波数解析データから生成したヒートマップの一例を示す図である。
【
図11】各心房および各心室の面積の時系列変化を示す信号波形のウェーブレット解析の結果の補正方法の一例を示す図である。
【
図12】各心房および各心室の面積の時系列変化を示す信号波形のウェーブレット解析の結果に基づいて、期外収縮を判定した場合を説明するための図である。
【
図13】不整脈種別判定システムが行う処理の一例を示すシーケンス図である。
【
図14】不整脈種別判定装置が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】不整脈種別判定装置による不整脈の種別の分類基準の一例を示す図である。
【
図16】不整脈種別判定装置による不整脈の種別の分類結果の一例を示す図である。
【
図17】不整脈種別判定装置による不整脈の種別の判定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(不整脈種別判定装置1の概要)
本発明の一実施形態に係る不整脈種別判定装置1は、心臓に含まれる各領域、すなわち、左心房、左心室、右心房、および右心室の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルから得られるピーク情報に基づいて不整脈の種別を判定する。ここで、ピーク情報は、各心房および各心室の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおけるピーク周波数のうちピーク値が大きい上位の1または複数のピーク周波数に関する情報である。
【0013】
各心房および各心室の面積は、対象者の心臓を撮影した、複数のフレームの画像を含む入力画像(例えば、断層画像形成用エコー画像などの超音波画像)に写る各心房および各心室に対応する各領域の面積に基づいて算出され得る。超音波画像では、心臓が有する各心房および各心室が閉空間として撮影される。各心房および各心室に対応する各領域の面積はフレーム毎に算出され得る。すなわち、超音波画像から、対象者の心臓の左心房、左心室、右心房、および右心室の面積を算出し、時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルを解析し、ピーク情報を得ることができる。以下において、各心房および各心室に対応する各領域の面積を、「各心房および各心室の面積」または「各領域の面積」と記載する。
【0014】
不整脈種別判定装置1は、ピーク情報に基づいて、正常範囲として予め定められた基準周波数帯(例えば、100bpm以上170bpm以下)の周波数の心拍を示す「正常」、および下記の6種類の不整脈の種別を判定し得る。
・「上室性期外収縮(PAC)」:心房で収縮リズムから外れた収縮が発生する不整脈。
・「心室性期外収縮(PVC)」:心室で収縮リズムから外れた収縮が発生する不整脈。
・「心房粗動(AFL)」:心房で約200~350bpmの細かい動きが発生する不整脈。
・「上室性頻拍(SVT)」:心房および心室の動きが基準周波数帯の周波数より早くなる不整脈。
・「洞性徐脈」:心房および心室の動きが基準周波数帯の周波数より遅くなる不整脈。
・「完全房室ブロック(CAVB)」:心房は正常に動いているが、心室は動きが遅く、心房と心室とが連動しない不整脈。
【0015】
各心房および各心室の面積は、胎児を撮影した、複数のフレームの画像を含む超音波画像に基づいて生成されてもよい。胎児を撮影した超音波画像には胎児の心臓が写っており、当該超音波画像から、胎児の心臓の左心房、左心室、右心房、および右心室の面積を算出し、時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルを解析し、ピーク情報を得ることができる。
【0016】
本発明の発明者らは、ピーク情報(例えば、各ピーク周波数の帯域、および各ピーク値の割合など)は、不整脈の種別毎に異なることを見出した。この判定手法を用いれば、例えば、心臓を撮影した超音波画像から、当該心臓に発生した不整脈の種別を精度良く判定することができる。
【0017】
(不整脈種別判定システム100の構成)
まず、本発明の一実施形態に係る不整脈種別判定システム100の構成を
図1に基づいて説明する。
図1は、不整脈種別判定システム100の構成例を示す図である。不整脈種別判定システム100には、撮影装置2、情報処理装置3、学習装置5、不整脈検出装置4、不整脈種別判定装置1、および表示装置6が含まれていてもよい。
【0018】
撮影装置2は、対象者の体内を無侵襲で撮影可能な超音波撮影装置であってもよい。撮影装置2は、図示のように、情報処理装置3と通信可能に接続されていてもよく、この場合、情報処理装置3は、撮影装置2によって撮影された入力画像を撮影装置2から直接取得してもよい。
【0019】
情報処理装置3は、入力画像に写る心臓の各心房および各心室に対応する各領域を、学習モデルを用いて検出する。また、情報処理装置3は、検出した各心房および各心室の面積を、フレーム毎に算出する。情報処理装置3は、撮影装置2が設置された施設(例えば、医療施設)に設置してもよいし、あるいは遠隔地に設置してもよい。遠隔地に設置する場合、情報処理装置3は、入力画像をインターネットなどの通信ネットワークを介した通信により取得すればよい。
【0020】
学習装置5は、撮影装置2が撮影した心臓の画像から、心臓の各心房および各心室に対応する各領域を検出するために用いられる学習モデルを生成する。学習装置5は、コンピュータを学習装置として機能させるプログラムを実行する。学習装置5の機能は情報処理装置3が有してもよく、この場合、不整脈種別判定システム100の構成要素から学習装置5が省略される。
【0021】
不整脈検出装置4は、情報処理装置3から算出結果を用いて、各心房および各心室の面積の時系列変化を解析する。不整脈検出装置4は、左心房、右心房、左心室、および右心室の各々の面積の周期的な増減パターンの乱れを検出することによって、不整脈を検出可能であってもよい。不整脈検出装置4の機能は情報処理装置3が有してもよく、この場合、不整脈種別判定システム100の構成要素から不整脈検出装置4が省略される。
【0022】
不整脈種別判定装置1は、不整脈検出装置4から出力される解析結果を用いて、不整脈の種別を判定する。不整脈種別判定装置1は、図示のように、不整脈検出装置4と通信可能に接続されていてもよく、この場合、不整脈種別判定装置1は、不整脈検出装置4によって解析された解析結果を不整脈検出装置4から直接取得してもよい。なお、不整脈検出装置4が解析した解析結果は、例えば携帯型の記録媒体に記憶させてもよく、この場合、不整脈種別判定装置1は、記録媒体から解析結果を読み出せばよい。あるいは、不整脈検出装置4が解析した解析結果は、例えば記憶装置(不図示)に対象者毎の対象者情報(例えば、電子カルテ情報)と対応付けて記憶される構成であってもよく、この場合、不整脈種別判定装置1は記憶装置から解析結果を取得すればよい。
【0023】
不整脈種別判定装置1は、不整脈検出装置4が設置された施設(例えば、医療施設)に設置してもよいし、あるいは遠隔地に設置してもよい。遠隔地に設置する場合、不整脈種別判定装置1は、不整脈検出装置4によって解析された解析結果をインターネットなどの通信ネットワークを介した通信により取得すればよい。
【0024】
表示装置6は、不整脈種別判定装置1から出力される各種情報を表示可能な装置である。表示装置6は、不整脈種別判定装置1から出力される各種情報に加えて、不整脈検出装置から出力される検出結果、および不整脈検出装置4から出力される解析結果などを表示してもよい。
【0025】
また、不整脈種別判定装置1が行う処理の一部を他のコンピュータ・システムで行う構成としてもよい。例えば、不整脈の種別の判定には後述する分類処理と判定処理とが含まれ得るが、分類処理および判定処理のいずれか一方を他のコンピュータ・システムで行う構成としてもよい。この場合、不整脈種別判定装置1は、分類処理または判定処理に必要な情報を、通信ネットワークを介した通信により他のコンピュータ・システムに送信し、上記他のコンピュータ・システムから送信される処理結果を受信すればよい。
【0026】
不整脈種別判定装置1が、情報処理装置3の機能、不整脈検出装置4の機能、学習装置5の機能のうちのいずれか、あるいはすべてを有していてもよい。例えば、不整脈種別判定装置1が、情報処理装置3の機能、および不整脈検出装置4の機能を有している場合、不整脈種別判定システム100の構成要素から情報処理装置3および不整脈検出装置4が省略される。
【0027】
(不整脈種別判定装置1の構成)
次に、不整脈種別判定装置1の構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、不整脈種別判定装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、不整脈種別判定装置1は、プロセッサ10、メモリ11、および記憶装置12を備えている。不整脈種別判定装置1は、一例として、パーソナルコンピュータ、サーバー、またはワークステーションであってもよい。プロセッサ10は、記憶装置12に記憶されている情報処理プログラムをメモリ11にロードして実行することにより、後述する取得部101、判定部102、減衰部104、および出力制御部103として機能する。
【0028】
プロセッサ10は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現することもできるし、ソフトウェアによって実現することもできる。ソフトウェアによって実現する場合、プロセッサ10は、例えばCPU(Central Processing Unit)で構成してもよいし、GPU(Graphics Processing Unit)で構成してもよく、これらの組み合わせで構成してもよい。また、この場合、上記ソフトウェアは、記憶装置12に保存しておく。そして、プロセッサ10は、上記ソフトウェアをメモリ11に読み込んで実行する。
【0029】
メモリ11と記憶装置12は、何れも不整脈種別判定装置1が使用する各種データを記憶する記憶装置である。メモリ11は記憶装置12と比べて高速でデータの書き込みおよび読出しが可能な記憶装置である。記憶装置12はメモリ11と比べてデータの記憶容量が大きい。メモリ11としては、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random-Access Memory)等の高速アクセスメモリを適用することもできる。また、記憶装置12としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid-State Drive)、SD(Secure Digital)カード、あるいはeMMC(embedded Multi-Media Controller)等を適用することもできる。
【0030】
また、不整脈種別判定装置1は、外部の機器とのインタフェース(IF)として、不整脈検出装置IF部13および表示装置IF部14を備えている。これらのインタフェースは任意のものを適用可能であり、例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)等を適用してもよい。
【0031】
不整脈検出装置IF部13は、不整脈検出装置4と不整脈種別判定装置1とを通信接続するためのインタフェースである。不整脈検出装置IF部13は、有線通信用のものであってもよいし、無線通信用のものであってもよい。例えば、これらのIF部として、USB、LAN(Local-Area Network)や無線LAN等を適用することもできる。撮影装置2から上述の入力画像を取得するためのインタフェースである。また、表示装置IF部14は、不整脈種別判定装置1が出力する情報を表示装置6に送信するためのインタフェースである。
【0032】
表示装置IF部14は、不整脈種別判定装置1が図示しない表示装置6に画像を表示させる際に使用するインタフェースである。例えば、不整脈種別判定装置1は、表示装置IF部14を介して、不整脈検出装置が解析した解析結果を表示装置6に表示させることもできる。なお、不整脈種別判定装置1が表示装置6として機能可能な表示部を備えていてもよい。
【0033】
不整脈種別判定装置1は、不整脈種別判定装置1が例えばインターネット等の通信ネットワーク上の各種機器(例えば、記憶装置など)と通信するためのインタフェースをさらに備えていてもよい。また、不整脈種別判定装置1は、上述したインタフェース以外にも例えば外付けの記憶装置(例えばハードディスク)にアクセスするためのインタフェース等を備えていてもよい。
【0034】
プロセッサ10は、上述のように取得部101、判定部102、減衰部104、および出力制御部103の各部として機能する。以下、各部について説明する。
【0035】
取得部101は、不整脈検出装置4が心臓の各領域の面積の時系列変化を解析した解析結果を取得する。解析結果は、具体的には、入力画像に写る心臓の、左心房、左心室、右心房、および右心室の各領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおけるピーク周波数のうちピーク値が大きい上位の1または複数のピーク周波数に関するピーク情報である。解析結果の取得方法は特に限定されず、例えば、取得部101は、不整脈検出装置IF部13を介して撮影装置2から撮影画像を取得してもよい。
【0036】
判定部102は、不整脈検出装置4が心臓の各領域の面積の時系列変化を解析した解析結果であるピーク情報に基づいて、当該心臓において発生している不整脈の種別を判定する。
【0037】
なお、各領域の面積の時系列変化を示す信号波形を時間周波数解析して得られる時間周波数解析データがピーク情報に含まれていてもよい。この場合、判定部102は、時間周波数解析データにおける第1ピーク周波数の時系列的変化に基づいて、不整脈の種別(例えば、期外収縮)を判定してもよい。この場合、不整脈種別判定装置1は、期外収縮判定装置として機能する。判定部102は、第1ピーク周波数の値が、時間周波数解析データにおいて所定割合(例えば10%)以上に変化した期間が存在する場合、期外収縮であると判定してもよい。この場合、判定部102は、第1ピーク周波数の値が所定割合以上に減少し始める時間から、減少後の値から所定割合以上に増加し終わる時間までを、期外収縮が生じている期間として特定してもよい。
【0038】
減衰部104は、各領域の面積の時系列変化を示す信号波形を時間周波数解析して得られた時間周波数解析データにおける周波数成分のうち、第1ピーク周波数から離れた周波数ほど減衰させる(
図11参照)。これにより、不整脈種別判定装置1は、期外収縮を精度良く判定することができる。
【0039】
出力制御部103は、不整脈種別判定装置1による分類結果および判定結果の、表示装置6への出力を制御する。
【0040】
この構成によれば、不整脈種別判定装置1は、心臓に生じた不整脈の種別を精度良く判定することができる。判定部102が不整脈の種別を判定する処理については、後に説明する。
【0041】
(情報処理装置3の構成)
次に、情報処理装置3の構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、情報処理装置3の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、情報処理装置3は、プロセッサ30、メモリ31、および記憶装置32を備えている。情報処理装置3は、一例として、パーソナルコンピュータ、サーバー、またはワークステーションであってもよい。プロセッサ30は、記憶装置32に記憶されている情報処理プログラムをメモリ31にロードして実行することにより、後述する画像取得部301から出力制御部304までの各部として機能する。
【0042】
プロセッサ30は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現することもできるし、ソフトウェアによって実現することもできる。ソフトウェアによって実現する場合、プロセッサ30は、例えばCPUで構成してもよいし、GPUで構成してもよく、これらの組み合わせで構成してもよい。また、この場合、上記ソフトウェアは、記憶装置12に保存しておく。そして、プロセッサ30は、上記ソフトウェアをメモリ31に読み込んで実行する。
【0043】
メモリ31と記憶装置32は、何れも情報処理装置3が使用する各種データを記憶する記憶装置である。メモリ31は記憶装置32と比べて高速でデータの書き込みおよび読出しが可能な記憶装置である。記憶装置32はメモリ31と比べてデータの記憶容量が大きい。メモリ31としては、例えばSDRAM等の高速アクセスメモリを適用することもできる。また、記憶装置32としては、例えばHDD、SSD、SDカード、あるいはeMMC等を適用することもできる。
【0044】
また、情報処理装置3は、外部の機器とのインタフェース(IF)として、撮影装置IF部33、不整脈検出装置IF部35、および表示装置IF部34を備えている。これらのインタフェースは任意のものを適用可能であり、例えば、USB、HDMI(登録商標)等を適用してもよい。
【0045】
撮影装置IF部33は、撮影装置2と情報処理装置3とを通信接続するためのインタフェースである。撮影装置IF部33は、有線通信用のものであってもよいし、無線通信用のものであってもよい。例えば、これらのIF部として、USB、LANや無線LAN等を適用することもできる。撮影装置2から上述の入力画像を取得するためのインタフェースである。不整脈検出装置IF部35は、情報処理装置3が出力する情報を不整脈検出装置4に送信するためのインタフェースである。また、表示装置IF部34は、情報処理装置3が出力する情報を表示装置6に送信するためのインタフェースである。
【0046】
情報処理装置3は、情報処理装置3が例えばインターネット等の通信ネットワーク上の各種機器(例えば、記憶装置など)と通信するためのインタフェースをさらに備えていてもよい。また、情報処理装置3は、上述したインタフェース以外にも例えば外付けの記憶装置(例えばハードディスク)にアクセスするためのインタフェース等を備えていてもよい。
【0047】
プロセッサ30は、上述のように画像取得部301、検出部302、解析部303、および出力制御部304の各部として機能する。以下、各部について説明する。
【0048】
画像取得部301は、撮影装置2で心臓を撮影した入力画像を取得する。入力画像の取得方法は特に限定されず、例えば、画像取得部301は、撮影装置IF部33を介して撮影装置2から撮影画像を取得してもよい。
【0049】
検出部302は、機械学習によって生成された学習モデルを用いて、心臓を撮影した入力画像に含まれる各フレームの画像から、検出対象となる領域である、各心房および各心室に対応する各領域を検出する。学習モデルを生成するための機械学習については、後に説明する。
【0050】
解析部303は、検出した各心房および各心室の面積を、フレーム毎に算出する。ここで、各領域の面積は、フレーム毎の画像において、左心房、右心房、左心室、および右心室に対応する領域に含まれる画素数(pixel数)で示されてもよい。あるいは、実際の左心房、右心房、左心室、および右心室の大きさに基づいて換算した面積(mm2)で示されてもよい。
【0051】
検出部302は、各心房および各心室に対応する各領域の検出に用いた入力画像に二値化処理を施して二値化画像を生成して、二値化画像に含まれる各フレームの画像から、各心房および各心室の内部空間に対応する各領域を検出する機能を備えていてもよい。この二値化処理における二値化の基準値は、各心房および各心室の内部空間に対応する各領域の画素値と、心臓の組織(心筋、房室弁など)に対応する領域の画素値とが異なるように設定され得る。例えば、二値化画像において、各心房および各心室の内部空間に対応する各領域などの画素値は「0」であり、心臓の組織(例えば、心筋など)に対応する領域などの画素値は「1」である。
【0052】
検出部302は、入力画像から検出された各心房および各心室に対応する各領域、および該入力画像から生成した二値化画像を用いて、各心房および各心室の内部空間に対応する各領域を検出する。例えば、二値化画像において、各心房および各心室の内部空間に対応する領域などの画素値が「0」である場合、検出部302は、入力画像における各心房および各心室に対応する各領域に含まれ、かつ、二値化画像において画素値が「0」である領域を、各心房および各心室の内部空間に対応する各領域として検出する。例えば、二値化画像において、各心房および各心室の内部空間に対応する領域などの画素値が「1」である場合、検出部302は、入力画像における各心房および各心室に対応する各領域に含まれ、かつ、二値化画像において画素値が「1」である領域を、各心房および各心室の内部空間に対応する各領域として検出すればよい。
【0053】
なお、検出部302は、二値化画像を用いた機械学習によって生成された生成学習モデルを用いて、二値化画像に含まれる各フレームの画像から、各心房および各心室の内部空間に対応する各領域を検出してもよい。この場合、解析部303は、検出した各心房および各心室の内部空間の面積を、フレーム毎に算出する。
【0054】
出力制御部304は、情報処理装置3からの解析結果の出力を制御する。
【0055】
(学習装置5の構成)
次に、学習モデルを生成する学習装置5の構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、学習装置5の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、学習装置5は、プロセッサ50、メモリ51、および記憶装置52を備えている。学習装置5は、情報処理装置3と同様に、パーソナルコンピュータ、サーバー、またはワークステーションであってもよい。プロセッサ50は、記憶装置52に記憶されている学習プログラムをメモリ51にロードして実行することにより、後述する画像取得部501から学習部504までの各部として機能する。
【0056】
プロセッサ50は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現することもできるし、ソフトウェアによって実現することもできる。ソフトウェアによって実現する場合、プロセッサ50は、例えばCPUで構成してもよいし、GPUで構成してもよく、これらの組み合わせで構成してもよい。また、この場合、上記ソフトウェアは、記憶装置52に保存しておく。そして、プロセッサ50は、上記ソフトウェアをメモリ51に読み込んで実行する。
【0057】
メモリ51と記憶装置52は、何れも学習装置5が使用する各種データを記憶する記憶装置である。メモリ51は記憶装置52と比べて高速でデータの書き込みおよび読出しが可能な記憶装置である。記憶装置52はメモリ51と比べてデータの記憶容量が大きい。メモリ51としては、例えばSDRAM等の高速アクセスメモリを適用することもできる。また、記憶装置52としては、例えばHDD、SSD、SDカード、あるいはeMMC等を適用することもできる。
【0058】
また、学習装置5は、外部の機器とのインターフェース(IF)として、撮影装置IF部53、入力装置IF部55、および表示装置IF部54を備えている。入力装置IF部55は、キーボードやマウスなどの入力装置からの入力信号を受け付けるためのインタフェースである。入力装置IF部55は、例えばUSB等のインタフェースであってもよい。学習装置5が備えるインタフェースのうち、
図2の情報処理装置3が備えるものと同名のインタフェースは機能も同様であるから説明を繰り返さない。
【0059】
プロセッサ50は、上述のように画像取得部501、アノテーション取得部502、教師データ生成部503、および学習部504の各部として機能する。以下、各部について説明する。
【0060】
画像取得部501は、撮影装置2で撮影した学習用画像を取得する。学習用画像の取得方法は特に限定されず、例えば、画像取得部501は、撮影装置IF部53を介して撮影装置2から上述の学習用画像を取得してもよい。また、例えば、画像取得部501は、情報処理装置3の記憶装置12に保存されている学習用画像を情報処理装置3と通信することにより取得してもよい。さらに、例えば、学習用画像が情報処理装置3の外部の記憶装置に記憶されている場合には、画像取得部301はその記憶装置にアクセスして撮影画像を取得してもよい。
【0061】
アノテーション取得部502は、学習用画像に写る心臓における検出対象の領域のそれぞれについて、互いに異なる分類を取得する。分類は、学習用画像を確認した医療関係者などによって入力装置を介して入力され得る。
【0062】
<検出対象の領域R1~R4>
ここでは、心臓Tを撮影した画像における対象領域および集合領域について、
図6を用いて説明する。
図6は、心臓Tを撮影した画像における検出対象となる領域R1~R4の例を示す図である。心臓Tは、解剖学的に4つの領域(すなわち、2つの心室と2つの心房)が含まれている。それゆえ、
図6に示すように、心臓Tにおいて、右心室に対応する対象領域R1、左心室に対応する対象領域R2、左心房に対応する対象領域R3、および右心房に対応する対象領域R4が、検出対象の領域として設定され得る。
【0063】
心臓Tを撮影した超音波画像において、領域R1~R4の各々に対して互いに異なる分類を対応付けることが可能である。例えば、対象領域R1~R4のそれぞれに対して、「右心室」、「左心室」、「左心房」、および「右心房」という分類をアノテーションとして付すことが可能である。
【0064】
教師データ生成部503は、領域R1~R4の各々に、互いに異なる分類がアノテーションとして付された教師画像を生成する。教師画像は、学習部504が学習モデルの機械学習時に用いられる教師データである。なお、学習モデルは、情報処理装置3の検出部302が対象領域および集合領域の検出に用いるモデルである。
【0065】
学習部504は、機械学習により学習モデルを生成する。学習モデルの生成には、上述のとおり、教師データ生成部503が生成する教師画像が用いられる。
【0066】
なお、学習装置5は、二値化画像における、心臓の各心房および各心室の内部空間に対応する領域(例えば画素値が「0」である領域)を検出するための学習モデルを生成することも可能である。情報処理装置3は、このような学習モデルに二値化画像を入力することによって、二値化画像に含まれる各フレームの画像から、各心房および各心室の内部空間に対応する各領域を検出することができる。
【0067】
(不整脈検出装置4の構成)
次に、不整脈検出装置4の構成について、
図5を用いて説明する。
図5は、不整脈検出装置4の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、不整脈検出装置4は、プロセッサ40、メモリ41、および記憶装置42を備えている。不整脈検出装置4は、一例として、パーソナルコンピュータ、サーバー、またはワークステーションであってもよい。プロセッサ40は、記憶装置42に記憶されている情報処理プログラムをメモリ41にロードして実行することにより、後述する解析結果取得部401、時系列解析部402、および検出部403として機能する。
【0068】
プロセッサ40は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現することもできるし、ソフトウェアによって実現することもできる。ソフトウェアによって実現する場合、プロセッサ40は、例えばCPUで構成してもよいし、GPUで構成してもよく、これらの組み合わせで構成してもよい。また、この場合、上記ソフトウェアは、記憶装置42に保存しておく。そして、プロセッサ40は、上記ソフトウェアをメモリ41に読み込んで実行する。
【0069】
メモリ41と記憶装置42は、何れも不整脈検出装置4が使用する各種データを記憶する記憶装置である。メモリ41は記憶装置42と比べて高速でデータの書き込みおよび読出しが可能な記憶装置である。記憶装置42はメモリ41と比べてデータの記憶容量が大きい。メモリ41としては、例えばSDRAM等の高速アクセスメモリを適用することもできる。また、記憶装置42としては、例えばHDD、SSD、SDカード、あるいはeMMC等を適用することもできる。
【0070】
また、不整脈検出装置4は、外部の機器とのインタフェース(IF)として、情報処理装置IF部43および不整脈種別判定装置IF部44を備えている。これらのインタフェースは任意のものを適用可能であり、例えば、USB、HDMI(登録商標)等を適用してもよい。
【0071】
情報処理装置IF部43は、情報処理装置3と不整脈検出装置4とを通信接続するためのインタフェースである。情報処理装置IF部43は、有線通信用のものであってもよいし、無線通信用のものであってもよい。例えば、これらのIF部として、USB、LANや無線LAN等を適用することもできる。撮影装置2から上述の入力画像を取得するためのインタフェースである。また、不整脈種別判定装置IF部44は、不整脈検出装置4が出力する情報を不整脈種別判定装置1に送信するためのインタフェースである。
【0072】
不整脈検出装置4は、不整脈検出装置4が例えばインターネット等の通信ネットワーク上の各種機器(例えば、記憶装置など)と通信するためのインタフェースをさらに備えていてもよい。また、不整脈検出装置4は、上述したインタフェース以外にも例えば外付けの記憶装置(例えばハードディスク)にアクセスするためのインタフェース等を備えていてもよい。
【0073】
プロセッサ40は、上述のように解析結果取得部401、時系列解析部402、および検出部403の各部として機能する。以下、各部について説明する。
【0074】
解析結果取得部401は、情報処理装置3から出力される解析結果を取得する。解析結果は、具体的には、入力画像に含まれる各フレームの画像における、左心房、左心室、右心房、および右心室の各領域の面積である。
【0075】
時系列解析部402は、心臓の各領域の面積の時系列変化を示す信号波形を生成し、信号波形の周波数スペクトルから得られるピーク情報を含む解析結果を出力する。ピーク情報は、周波数スペクトルにおけるピーク周波数のうちピーク値が大きい上位の1または複数のピーク周波数に関する情報である。ピーク情報には、少なくとも第1ピーク情報が含まれていればよい。ピーク情報には、例えば、下記(1)および(2)が含まれていてもよい(
図9参照)。
(1)左心房、左心室、右心房、および右心室の各領域に対応する周波数スペクトルにおいて、ピーク値が最大となるピーク周波数である第1ピーク周波数とそのピーク値。
(2)左心房、左心室、右心房、および右心室の各領域に対応する周波数スペクトルにおいて、n番目に大きいピーク値のピーク周波数である第nピーク周波数とそのピーク値(nは2以上)。
【0076】
時系列解析部402は、心臓の各領域の面積の時系列変化を示す信号波形を時間周波数解析して得られる時間周波数解析データを生成可能であってもよい。時間周波数解析には、例えば、ウェーブレット解析が適用され得る。時系列解析部402は、時間周波数解析データにおける第1ピーク周波数に関する情報を含むピーク情報を出力可能であってもよい。すなわち、ピーク情報には、時間周波数解析データにおける第1ピーク周波数に関する情報が含まれていてもよい(
図11および
図12参照)。時間周波数解析データにおける第1ピーク周波数に関する情報は、不整脈の一種別である「期外収縮」を、不整脈種別判定装置1が判定する場合に利用され得る。不整脈種別判定装置1が、時間周波数解析データを用いて期外収縮を判定する方法については、後に説明する。
【0077】
検出部403は、入力画像に写る心臓に生じる不整脈を検出する。検出結果は、時系列解析部402による解析結果と共に出力される構成であってもよい。
【0078】
(情報処理装置3が実行する処理)
次に、情報処理装置3が実行する処理について、
図7を用いて説明する。
図7は、情報処理装置が行う処理の一例を説明するための図である。
【0079】
図7の最上段は、胎児の心臓を撮影した入力画像のフレーム0、1、2、3、・・・に対応する各画像が示されている。
図7の中段は、各フレームの画像において、情報処理装置3によって検出された、左心房、右心房、左心室、および右心室の各々を示す領域を、各画像に重畳して示している。情報処理装置3は、
図7の最下段に示すように、検出された各領域の面積を、フレーム毎に算出する。
【0080】
(不整脈検出装置4が行う処理)
次に、不整脈検出装置4の検出部403が不整脈を検出する処理について、
図8を用いて説明する。
図8は、各心房および各心室の面積の時系列変化を示す信号波形の一例を示す図である。
図8に示す信号波形は、情報処理装置3によって検出された、左心房、右心房、左心室、および右心室の各々の面積(size)を、時系列に沿ってグラフ化したものである。面積の単位は、mm
2等であってもよい。あるいは、面積の単位は、左心房、右心房、左心室、および右心室に対応する領域に含まれる画素数(pixel数)等であってもよい。
【0081】
不整脈が生じていない場合、左心房、右心房、左心室、および右心室の各々の面積(size)はいずれも周期的な増減パターンを繰り返す。これに対し、不整脈が生じた場合、
図8の四角枠で示した箇所のフレームに見られるように、周期的な増減パターンが乱れる。不整脈検出装置4は、左心房、右心房、左心室、および右心室の各々の面積(size)の周期的な増減パターンの乱れを検出することによって、不整脈を検出することができる。
【0082】
(ピーク情報)
不整脈種別判定装置1は、右心房、左心房、右心室、および左心室の各面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルを解析して得られるピーク情報を利用する。ここでは、不整脈種別判定装置1が利用するピーク情報について、
図9を用いて説明する。
図9は、各心房および各心室の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルから抽出されるピーク情報の例を説明するための図である。
図9では、説明の簡単化のために、右心房の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルのみを例示している。
【0083】
信号波形を周波数解析することにより、周波数スペクトルのデータが得られる。周波数スペクトルのデータは、信号波形の各周波数の成分量(図では「Amplitude」)を示したスペクトルである。
図9上段左には、指定範囲(例えば、50~500bpm)のデータを抜き出してプロットした周波数スペクトルが示されている。
【0084】
時系列解析部402は、周波数スペクトルにおいて、ピーク値が最大となるピーク周波数である第1ピーク周波数とそのピーク値、2番目に大きいピーク値のピーク周波数である第2ピーク周波数とそのピーク値、などを抽出する。
図9上段右には、周波数スペクトルにおいて、ピーク値が最大のピークA(第1ピーク)からピーク値が5番目に大きいピークE(第5ピーク)までを検出した様子を示している。なお、検出対象の「ピーク」には、周波数スペクトルにおいて上に凸、すなわち極大を呈しているピークと、下に凸、すなわち極小値を呈しているピークとを含める。
図9に示す例では、ピークA~Dは上に凸のピークであり、ピークEは下に凸のピークである。
【0085】
図9下段に、
図9の上段に示された周波数スペクトルから得られるピーク情報の一例を示す。
・「fft_value」は、第1ピークから第5ピークのそれぞれのピーク値を要素とするピーク情報である。
・「fft_freq」は、第1ピークから第5ピークのそれぞれの(ピーク位置の)周波数を要素とするピーク情報である。
・「fft_ratiо」は、第1ピークから第5ピークのそれぞれのピーク値の相対値を要素とするピーク情報である。
・「fft_q」は、第1ピークから第5ピークのそれぞれが上に凸のピークであるか、下に凸のピークであるかを示すピーク情報である。図示では、上に凸のピークには「1」が付与され、下に凸のピークには「0」が付与されている。
【0086】
続いて、不整脈種別判定装置1が期外収縮を判定する場合に利用するピーク情報について
図10を用いて説明する。
図10は、心臓の各領域の面積の時系列変化を示す信号波形を時間周波数解析して得られる時間周波数解析データのデータ構造の一例、および、時間周波数解析データから生成したヒートマップの一例を示す図である。
【0087】
心臓の各領域の面積の時系列変化を示す信号波形を時間周波数解析して得られる時間周波数解析データ(すなわち、ウェーブレット解析結果)は、
図10上段に示すように、「フレーム数(i)×周波数(j)」の行列として表され得る。各フレームの画像が撮影された時間間隔を用いれば、時間周波数解析データから、
図10の下段に示すようなヒートマップが生成される。図示のヒートマップにおいて、縦軸は周波数(bpm)が示されており、横軸は時間(秒)が示されている。図示のヒートマップにおいて、各周波数の成分量に応じて異なる色が割り当てられており、矢印で示す位置には第1ピーク周波数(f
FFT)に対応する帯状部分が確認できる。例えば、
図10下段に示す例では、破線枠で示した箇所において、第1ピーク周波数が変化している期間が存在していることが分かる。
【0088】
期外収縮が発生している期間は、第1ピーク周波数の値が所定割合以上に減少する。不整脈種別判定装置1は、時間周波数解析データにおいて所定割合(例えば10%)以上に変化した期間が存在する場合、期外収縮であると判定する。上記の構成によれば、期外収縮が発生している期間を適切に特定した上で、期外収縮であることを精度良く判定することができる。
【0089】
時間周波数解析データから生成されるヒートマップにおける、第1ピーク周波数(f
FFT)に対応する帯状部分をより明確となるように、時間周波数解析データを補正してもよい。
図11は、各心房および各心室の面積の時系列変化を示す信号波形のウェーブレット解析の結果の補正方法の一例を示す図である。この補正は、不整脈種別判定装置1の減衰部104によって行われ得る。
図11おいて、補正の強さの調整パラメータを示すαを、補正対象となる周波数fiに応じて変更してもよい。例えば、fiが100bpm未満の場合はαを1とし、170bpm以上である場合はαを0.1とし、fiが100~170bpmの場合はαを150としてもよい。このようにαを変更することにより、補正後の時間周波数解析データ(w’
i,j)において、100bpmより低周波数側の周波数の成分量は、100bpmから離れるほど減衰させ、170bpmより高周波数側の周波数の成分量は、170bpmから離れるほど減衰させることができる。一方、この補正によって、100~170bpmの範囲の周波数の成分量はほとんど影響されない。その結果、時間周波数解析データから生成されるヒートマップにおける、第1ピーク周波数(f
FFT)に対応する帯状部分をより強調することができる。これにより、時間周波数解析データから生成されるヒートマップにおいて、第1ピーク周波数が変化している期間の検出感度を向上させることができる。
【0090】
図12は、各心房および各心室の面積の時系列変化を示す信号波形のウェーブレット解析の結果に基づいて、期外収縮を判定する処理を説明するための図である。不整脈種別判定装置1(例えば、判定部102)は、第1ピーク周波数の値が所定割合以上に減少し始める時間から、減少後の値から所定割合以上に増加し終わる時間までを、期外収縮が生じている期間として特定してもよい。
図12に示す例では、右心房における期間P1、左心房における期間P2、右心室における期間P3、および左心室における期間P4において、第1ピーク周波数の減少がみられる。そこで、不整脈種別判定装置1(例えば、判定部102)は、これらの期間において生じている不整脈の種別は、期間収縮であると判定する。
【0091】
(不整脈種別判定システム100が行う処理)
次に、不整脈種別判定システム100が行う処理について、
図13を用いて説明する。
図13は、不整脈種別判定システム100が行う処理の一例を示すシーケンス図である。
【0092】
まず、情報処理装置3は、入力画像を取得し(ステップS1)、入力画像に含まれる各フレームの画像から左心房、左心室、右心房、および右心室の各領域を検出する(ステップS2)。そして情報処理装置3は、検出された各領域の面積を、フレーム毎に算出する(ステップS3)。情報処理装置3の数は、1つであってもよいし複数であってもよい。
【0093】
続いて、不整脈検出装置4は、各領域の面積の時系列変化を示す信号波形を解析し(ステップS11)、各領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルを解析する(ステップS12)。不整脈検出装置4の数は、1つであってもよいし複数であってもよい。
【0094】
次に、不整脈種別判定装置1は、心臓の各領域についての解析結果(ピーク情報)を取得し(ステップS21:取得ステップ)、不整脈の種別を判定する(ステップS22:判定ステップ)。不整脈種別判定装置1の数は、1つであってもよいし複数であってもよい。
【0095】
(判定ステップS22:不整脈の種別の大まかな分類)
不整脈種別判定装置1による判定ステップ(
図13のステップS22)について、
図14を用いて説明する。
図14は、不整脈種別判定装置1が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【0096】
不整脈種別判定装置1は、ステップS221において、第1ピーク周波数が、基準周波数帯に存在する周波数スペクトルの個数である第1個数を決定する。また、不整脈種別判定装置1は、ステップS222において、第1ピーク周波数が基準周波数帯より値が大きい周波数帯に存在する周波数スペクトルの個数である第2個数を決定する。また、不整脈種別判定装置1は、ステップS223において、第1ピーク周波数が基準周波数帯より値が小さい周波数帯に存在する周波数スペクトルの個数である第3個数を決定する。そして、不整脈種別判定装置1は、ステップS224において、第1個数、第2個数、第3個数の大小関係に基づいて、不整脈の種別を分類する。なお、ステップS221~S223の処理順はこれに限定されない。例えば、ステップS221~S223を並行して処理する構成であってもよい。
【0097】
第1個数は、0~4の値をとり得る。「第1個数が0」とは、右心房、右心室、左心房、および左心室のすべての領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数が基準周波数帯に存在しないことを意味する。一方、「第1個数が4」とは、右心房、右心室、左心房、および左心室のすべての領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数が基準周波数帯に存在することを意味する。
【0098】
第2個数は、0~4の値をとり得る。「第2個数が0」とは、右心房、右心室、左心房、および左心室のすべての領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数が基準周波数帯より値が大きい周波数帯に存在しないことを意味する。一方、「第2個数が4」とは、右心房、右心室、左心房、および左心室のすべての領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数が基準周波数帯より値が大きい周波数帯に存在することを意味する。
【0099】
第3個数は、0~4の値をとり得る。「第3個数が0」とは、右心房、右心室、左心房、および左心室のすべての領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数が基準周波数帯より値が小さい周波数帯に存在しないことを意味する。一方、「第3個数が4」とは、右心房、右心室、左心房、および左心室のすべての領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数が基準周波数帯より値が小さい周波数帯に存在することを意味する。
【0100】
この構成によれば、不整脈種別判定装置1は、発生した不整脈の種別を簡便な方法で大まかに分類することができる。
【0101】
不整脈の種別が、第1個数、第2個数、および第3個数の大小関係に基づいて、3つのグループに分類され得ることについて、
図15を用いて説明する。
図15は、不整脈種別判定装置1による不整脈の種別の分類基準の一例を示す図である。
図15における各列は、左端の列から順に、「第2個数」、「第1個数」、「第3個数」、「不整脈の種類」を示している。
【0102】
不整脈種別判定装置1は、下記のように不整脈の種別を分類する。
【0103】
・第2個数>第3個数の場合、心房粗動(AFL)および上室性頻拍(SVT)を含むグループ(図中の不整脈の種別「1」)に分類する。
【0104】
・第3個数>第2個数、かつ、第3個数≧第1個数の場合、洞性徐脈および完全房室ブロック(CAVB)を含むグループ(図中の不整脈の種別「2」)に分類する。
【0105】
・第1個数≧第2個数、かつ、第1個数≧第3個数の場合、正常、完全房室ブロック(CAVB)、上室性期外収縮(PAC)、および心室性期外収縮(PVC)を含むグループ(図中の不整脈の種別「3」)に分類する。
【0106】
上記の構成によれば、心房粗動、上室性頻拍、完全房室ブロック、洞性徐脈、期外収縮および、正常のいずれに該当する可能性があるかについて、大まかに判定することができる。
【0107】
不整脈種別判定装置1は、以下に記載する判定1~判定5を、
図15に示す処理の代わりに行ってもよい。
【0108】
(判定1:心房粗動の判定)
不整脈種別判定装置1は、下記(i)~(iii)の少なくともいずれかの場合、心房粗動の可能性があると判定してもよい。
(i)左心房および右心房の少なくとも一方の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数が、基準周波数帯の最大周波数(例えば170bpm)の所定倍(例えば、2倍)以上である。
(ii)左心房および右心房の少なくとも一方の周波数スペクトルにおける、基準周波数帯より値が大きい第1周波数帯における最大のピーク値と、第1周波数帯より値が大きい第2周波数帯における最大のピーク値と、が所定関係を満たす。ここで、第1周波数帯は、例えば、170~340bpmの周波数帯であり、第2周波数帯は、例えば、340bpm~500bpmの周波数帯であってもよい。
(iii)左心房および右心房の周波数スペクトルにおいて、第1周波数帯および第2周波数帯にピークが存在し、かつ、左心室および右心室の周波数スペクトルにおいて、第1周波数帯および第2周波数帯の少なくとも一方にピークが存在しない。
【0109】
上記(ii)における「所定関係」は、心房粗動の可能性を判定可能な判定基準となり得る関係であればよい。例えば、「所定関係」は、心房の第1周波数帯における最大のピーク値と、該心房の第2周波数帯における最大のピーク値との比較に基づいて設定され得る。この場合、「所定関係」は、例えば、「心房の第1周波数帯における最大のピーク値×0.7<該心房の第2周波数帯における最大のピーク値」であってもよい。
【0110】
あるいは、上記(ii)における「所定関係」は、下記(a)と(b)とを比較した比較結果に基づいて設定されてもよい。
(a)心房の第1周波数帯における最大のピーク値に対する該心房の第2周波数帯における最大のピーク値の割合(以下、第1割合)。
(b)心室の第1周波数帯における最大のピーク値に対する該心室の第2周波数帯における最大のピーク値の割合(以下、第2割合)。
この場合、「所定関係」は、例えば、「第1割合×0.7>第2割合」であってもよい。
【0111】
あるいは、上記(ii)における「所定関係」は、下記(c)と(d)とを比較した比較結果に基づいて設定されてもよい。
(c)各心房および各心室の周波数スペクトルにおける平均周波数(Ave)と標準偏差(SD)とに基づいて、各心房および各心室について個別に設定された比較基準。
(d)第2周波数帯における最大のピーク値。
この場合、「所定関係」は、例えば、「心房の第2周波数帯における最大のピーク値>{該心房のAve+(n×該心房のSD)}であり、かつ、心室の第2周波数帯における最大のピーク値<{該心室のAve+(n×該心室のSD)}」であってもよい。なお、一例において、nは2であってもよい。
【0112】
上記の構成によれば、不整脈種別判定装置1は、発生した不整脈が心房粗動であることを精度良く判定できる。
【0113】
(判定2:上室性頻拍の判定)
不整脈種別判定装置1は、下記(iv)~(v)の少なくともいずれかの場合、上室性頻拍の可能性があると判定してもよい。
(iv)右心房の周波数スペクトルにおける、第1周波数帯における最大のピーク値に対する、第2周波数帯における最大のピーク値の割合と、右心室の周波数スペクトルにおける、第1周波数帯における最大のピーク値に対する、第2周波数帯における最大のピーク値の割合と、が所定関係を満たす。
(v)左心房の周波数スペクトルにおける、第1周波数帯における最大のピーク値に対する、第2周波数帯における最大のピーク値の割合と、左心室の周波数スペクトルにおける、第1周波数帯における最大のピーク値に対する、第2周波数帯における最大のピーク値の割合と、が所定関係を満たす。
【0114】
上記(iv)および(v)における「所定関係」はいずれも、上室性頻拍の可能性を判定可能な判定基準となり得る関係であればよい。例えば、上記(iv)における「所定関係」は、下記(e)と(f)とを比較した比較結果に基づいて設定されてもよい。
(e)右心房の第1周波数帯における最大のピーク値に対する該右心房の第2周波数帯における最大のピーク値の割合(以下、第3割合)。
(f)右心室の第1周波数帯における最大のピーク値に対する該右心室の第2周波数帯における最大のピーク値の割合(以下、第4割合)。
この場合、「所定関係」は、例えば、「第3割合×0.7<第4割合」であってもよい。例えば、上記(v)における「所定関係」は、下記(g)と(h)とを比較した比較結果に基づいて設定されてもよい。
(g)左心房の第1周波数帯における最大のピーク値に対する該左心房の第2周波数帯における最大のピーク値の割合(以下、第5割合)。
(h)左心室の第1周波数帯における最大のピーク値に対する該左心室の第2周波数帯における最大のピーク値の割合(以下、第6割合)。
この場合、「所定関係」は、例えば、「第5割合×0.7<第6割合」であってもよい。
【0115】
あるいは、上記(iv)および(v)における「所定関係」は、下記(p)と(q)とを比較した比較結果に基づいて設定されてもよい。
(p)各心房および各心室の周波数スペクトルにおける平均周波数(Ave)と標準偏差(SD)とに基づいて、各心房および各心室について個別に設定された比較基準。
(q)第2周波数帯における最大のピーク値。
この場合、「所定関係」は、例えば、「心房および心室のいずれにおいても、第2周波数帯における最大のピーク値>{Ave+(n×SD)}」であってもよい。あるいは、上記(iv)における「所定関係」は、例えば、「右心室および左心室の少なくともいずれかにおける第2周波数帯における最大のピーク値>{Ave+(n×SD)}」であってもよい。なお、一例において、nは2であってもよい。
【0116】
なお、不整脈種別判定装置1は、フレーム毎の画像を二値化処理した二値化画像から得られる、右心房、右心室、左心房、および左心室のそれぞれの内部空間に対応する各領域の周波数スペクトルを用いた場合に、上記(iv)および(v)の少なくともいずれかに該当するか否かを参照してもよい。
【0117】
上記の構成によれば、不整脈種別判定装置1は、発生した不整脈が上室性頻拍であることを精度良く判定できる。
【0118】
(判定3:完全房室ブロックの判定)
不整脈種別判定装置1は、下記(vi)~(vii)の少なくともいずれかの場合、完全房室ブロックの可能性があると判定してもよい。
(vi)左心房および右心房の少なくとも一方の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数が基準周波数帯内に存在し、かつ、左心室および右心室の少なくとも一方の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数が基準周波数帯より値が小さい。
(vii)左心房および右心房の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数が基準周波数帯より値が小さく、かつ、左心房および右心房の周波数スペクトルにおいて、基準周波数帯内に第2ピーク周波数が存在し、かつ、左心房および右心房の少なくとも一方の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数におけるピーク値と第2ピーク周波数におけるピーク値との割合が、所定関係を満たす。
【0119】
上記(vii)における「所定関係」は、完全房室ブロックの可能性を判定可能な判定基準となり得る関係であればよい。例えば「所定関係」は、第1ピーク周波数におけるピーク値と、第2ピーク周波数におけるピーク値との比較に基づいて設定され得る。「所定関係」は、例えば、「第1ピーク周波数におけるピーク値×0.7<第2ピーク周波数におけるピーク値」であってもよい。
【0120】
あるいは、上記(vii)における「所定関係」は、下記(r)と(s)とを比較した比較結果に基づいて設定されてもよい。
(r)各心房および各心室の周波数スペクトルにおける平均周波数(Ave)と標準偏差(SD)とに基づいて、各心房および各心室について個別に設定された比較基準。
(s)第2ピーク周波数におけるピーク値。
この場合、「所定関係」は、例えば、「心房の第1ピーク周波数が正常範囲(例えば基準周波数帯)よりも低く、第2ピーク周波数が正常範囲である」、かつ、「心房の第2ピーク周波数におけるピーク値>{該心房のAve+(n×該心房のSD)}」であってもよい。なお、一例において、nは2であってもよい。
【0121】
上記の構成によれば、不整脈種別判定装置1は、発生した不整脈が完全房室ブロックであることを精度良く判定できる。
【0122】
(判定4:洞性徐脈の判定)
不整脈種別判定装置1は、下記(viii)~(ix)の少なくともいずれかの場合、洞性徐脈の可能性があると判定してもよい。
(viii)左心房および右心房の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数が基準周波数帯より値が小さく、かつ、左心室および右心室の少なくとも一方の周波数スペクトルにおいて、第2ピーク周波数が存在しない。
(ix)左心房、右心房、左心室および右心室の周波数スペクトルの各々において、第1ピーク周波数が基準周波数帯より値が小さい。
【0123】
上記の構成によれば、不整脈種別判定装置1は、発生した不整脈が洞性徐脈であることを精度良く判定できる。
【0124】
(判定5:完全房室ブロックの判定)
不整脈種別判定装置1は、下記(x)の場合、完全房室ブロックの可能性があると判定してもよい。
(x)左心房および右心房の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数が正常範囲として予め定められた基準周波数帯内に存在し、かつ、左心室および右心室の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数が基準周波数帯より値が小さく、かつ、左心室および右心室の周波数スペクトルにおいて、第1ピーク周波数におけるピーク値と正常範囲(例えば基準周波数帯)における最大のピーク値との割合が所定関係を満たす。
【0125】
上記(x)における「所定関係」は、完全房室ブロックの可能性を判定可能な判定基準となり得る関係であればよい。例えば「所定関係」は、第1ピーク周波数におけるピーク値と、基準周波数帯における最大のピーク値との比較に基づいて設定され得る。「所定関係」は、例えば、「第1ピーク周波数におけるピーク値×0.7<基準周波数帯における最大のピーク値」であってもよい。
【0126】
あるいは、上記(x)における「所定関係」は、下記(t)と(u)とを比較した比較結果に基づいて設定されてもよい。
(t)各心房および各心室の周波数スペクトルにおける平均周波数(Ave)と標準偏差(SD)とに基づいて、各心房および各心室について個別に設定された比較基準。
(u)基準周波数帯における最大のピーク値。
この場合、「所定関係」は、例えば、「心室の第1ピーク周波数が正常範囲(例えば基準周波数帯)よりも低く、第2ピーク周波数が正常範囲である」、かつ、「心室の第2ピーク周波数におけるピーク値>{該心室のAve+(n×該心室のSD)}」であってもよい。なお、一例において、nは2であってもよい。
【0127】
上記の構成によれば、不整脈種別判定装置1は、発生した不整脈が完全房室ブロックであることを精度良く判定できる。
【0128】
〔付記事項〕
不整脈種別判定装置1は、
図15のステップS224の処理によって、不整脈を下記の3グループに大まかに分類する。
・心房粗動(AFL)および上室性頻拍(SVT)を含むグループ(
図15の不整脈の種別「1」)。
・洞性徐脈および完全房室ブロック(CAVB)を含むグループ(
図15の不整脈の種別「2」)。
・正常、完全房室ブロック(CAVB)、上室性期外収縮(PAC)、および心室性期外収縮(PVC)を含むグループ(
図15の不整脈の種別「3」)。
不整脈種別判定装置1は、不整脈の種別を大まかに分類した上で、さらに、上記の判定1~判定5を行う構成であってもよい。これにより、不整脈の種別をより精密に判定することができる。このことについて、
図16および
図17を用いて説明する。
図16は、不整脈種別判定装置1による不整脈の種別を大まかに分類した結果の一例を示す図であり、
図17は、不整脈種別判定装置1による不整脈の種別の判定結果の一例を示す図である。
【0129】
図16には、医療関係者による診断を受けた被験者における診断結果に基づく不整脈の種別である「正解ラベル」と、不整脈種別判定装置1が各被検者を撮影した超音波画像に写る心臓に生じている不整脈を大まかに分類した結果(分類結果)との比較結果とが示されている。
図16によれば、不整脈種別判定装置1は、被検者の心臓に生じている不整脈の種別を概ね正確に判定できていることが分かる。
【0130】
不整脈種別判定装置1は、不整脈の種別を大まかに分類した後に、さらに不整脈の種別を個別に判定する処理(例えば判定3および/または判定4)を行うことが可能である。例えば、不整脈種別判定装置1は、洞性徐脈と完全房室ブロック(CAVB)とを含むブロック(
図15の不整脈の種別「2」)に分類された被検者に対して、さらに、上述の判定3および/または判定4を行うことができる。
図17左に示すように、大まかな分類では区別されていなかった洞性徐脈と完全房室ブロック(CAVB)とを、判定3および/または判定4を行うことによって、
図17右に示すように区別して判定できる。
【0131】
〔ソフトウェアによる実現例〕
不整脈種別判定装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特にプロセッサ10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0132】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0133】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0134】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0135】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0136】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0137】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る不整脈種別判定装置は、心臓を撮影した画像に含まれる、左心房、左心室、右心房、および右心室の各領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおけるピーク周波数のうちピーク値が大きい上位の1または複数の前記ピーク周波数に関するピーク情報を取得する取得部と、前記ピーク情報に基づいて不整脈の種別を判定する判定部と、を備える。
【0138】
本発明の態様2に係る不整脈種別判定装置は、上記態様1において、前記判定部は、ピーク値が最大となる前記ピーク周波数である前記第1ピーク周波数が、正常範囲として予め定められた基準周波数帯に存在する前記周波数スペクトルの個数である第1個数と、前記第1ピーク周波数が前記基準周波数帯より値が大きい周波数帯に存在する前記周波数スペクトルの個数である第2個数と、前記第1ピーク周波数が前記基準周波数帯より値が小さい周波数帯に存在する前記周波数スペクトルの個数である第3個数と、の大小関係に基づいて前記種別を分類してもよい。
【0139】
本発明の態様3に係る不整脈種別判定装置は、上記態様2において、前記判定部は、前記第2個数が前記第3個数より多い場合、心房粗動および上室性頻拍の少なくともいずれかの可能性があると判定し、前記第3個数が前記第2個数より多く、かつ、前記第3個数が前記第1個数以上である場合、完全房室ブロックおよび洞性徐脈の少なくともいずれかの可能性があると判定し、前記第1個数が前記第2個数以上、かつ、前記第1個数が前記第3個数以上である場合、期外収縮、完全房室ブロック、および、正常の少なくともいずれかの可能性がある、と判定してもよい。
【0140】
本発明の態様4に係る不整脈種別判定装置は、上記態様1から3のいずれかにおいて、左心房および右心房の少なくとも一方の前記周波数スペクトルにおいて、ピーク値が最大となる前記ピーク周波数である第1ピーク周波数が、正常範囲として予め定められた基準周波数帯の最大周波数の所定倍以上である場合、左心房および右心房の少なくとも一方の前記周波数スペクトルにおける、前記基準周波数帯より値が大きい第1周波数帯における最大のピーク値と、前記第1周波数帯より値が大きい第2周波数帯における最大のピーク値と、が所定関係を満たす場合、および、左心房および右心房の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1周波数帯および前記第2周波数帯にピークが存在し、かつ、左心室および右心室の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1周波数帯および前記第2周波数帯の少なくとも一方にピークが存在しない場合、の少なくともいずれかの場合、心房粗動の可能性があると判定してもよい。
【0141】
本発明の態様5に係る不整脈種別判定装置は、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記判定部は、右心房の前記周波数スペクトルにおける、正常範囲として予め定められた基準周波数帯より値が大きい第1周波数帯における最大のピーク値に対する、前記第1周波数帯より値が大きい第2周波数帯における最大のピーク値の割合と、右心室の前記周波数スペクトルにおける、前記第1周波数帯における最大のピーク値に対する、前記第2周波数帯における最大のピーク値の割合と、が所定関係を満たす場合、および、左心房の前記周波数スペクトルにおける、前記基準周波数帯より値が大きい第1周波数帯における最大のピーク値に対する、前記第1周波数帯より値が大きい第2周波数帯における最大のピーク値の割合と、左心室の前記周波数スペクトルにおける、前記第1周波数帯における最大のピーク値に対する、前記第2周波数帯における最大のピーク値の割合と、が前記所定関係を満たす場合、の少なくともいずれかの場合、上室性頻拍の可能性があると判定してもよい。
【0142】
本発明の態様6に係る不整脈種別判定装置は、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記判定部は、左心房および右心房の少なくとも一方の前記周波数スペクトルにおいて、ピーク値が最大となる前記ピーク周波数である第1ピーク周波数が正常範囲として予め定められた基準周波数帯内に存在し、かつ、左心室および右心室の少なくとも一方の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1ピーク周波数が前記基準周波数帯より小さい場合、および、左心房および右心房の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1ピーク周波数が前記基準周波数帯より小さく、かつ、左心房および右心房の前記周波数スペクトルにおいて、前記基準周波数帯内に2番目に大きいピーク値の前記ピーク周波数である第2ピーク周波数が存在し、かつ、左心房および右心房の少なくとも一方の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1ピーク周波数におけるピーク値と前記第2ピーク周波数におけるピーク値との割合が、所定関係を満たす場合、の少なくともいずれかの場合、完全房室ブロックの可能性があると判定してもよい。
【0143】
本発明の態様7に係る不整脈種別判定装置は、上記態様1から6のいずれかにおいて、前記判定部は、左心房および右心房の前記周波数スペクトルにおいて、ピーク値が最大となる前記ピーク周波数である第1ピーク周波数が正常範囲として予め定められた基準周波数帯より小さく、かつ、左心室および右心室の少なくとも一方の前記周波数スペクトルにおいて、前記基準周波数帯内に2番目に大きいピーク値の前記ピーク周波数である第2ピーク周波数が存在しない場合、および、左心房、右心房、左心室および右心室の前記周波数スペクトルの各々において、前記第1ピーク周波数が前記基準周波数帯より小さい場合、の少なくともいずれかの場合、洞性徐脈の可能性があると判定してもよい。
【0144】
本発明の態様8に係る不整脈種別判定装置は、上記態様1から7のいずれかにおいて、前記判定部は、左心房および右心房の前記周波数スペクトルにおいて、ピーク値が最大となる前記ピーク周波数である第1ピーク周波数が正常範囲として予め定められた基準周波数帯内に存在し、かつ、左心室および右心室の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1ピーク周波数が前記基準周波数帯より小さく、かつ、左心室および右心室の前記周波数スペクトルにおいて、前記第1ピーク周波数におけるピーク値と2番目に大きいピーク値との割合が所定関係を満たす場合、完全房室ブロックの可能性があると判定してもよい。
【0145】
本発明の態様9に係る不整脈種別判定装置は、上記態様1から8のいずれかにおいて、前記判定部は、前記周波数スペクトルにおいてピーク値が最大となる前記ピーク周波数である第1ピーク周波数の値が、前記信号波形を時間周波数解析して得られる時間周波数解析データにおいて所定割合以上に変化した期間が存在する場合、期外収縮であると判定してもよい。
【0146】
本発明の態様10に係る不整脈種別判定装置は、上記態様9において、前記判定部は、前記第1ピーク周波数の値が前記所定割合以上に減少し始める時間から、前記減少後の値から前記所定割合以上に増加し終わる時間までを、上記期間として特定してもよい。
【0147】
本発明の態様11に係る不整脈種別判定装置は、上記態様9または10において、前記時間周波数解析データにおける周波数成分のうち、前記第1ピーク周波数から離れた周波数ほど減衰させる減衰部をさらに備え、前記判定部は、前記減衰後の前記時間周波数解析データにおいて前記期間の有無を判定してもよい。
【0148】
本発明の態様12に係る不整脈種別判定方法は、1または複数の情報処理装置により実行される不整脈種別判定方法であって、心臓を撮影した画像に含まれる、左心房、左心室、右心房、および右心室の各領域の面積の時系列変化を示す信号波形の周波数スペクトルにおけるピーク周波数のうちピーク値が大きい上位の1または複数の前記ピーク周波数に関するピーク情報を取得する取得ステップと、前記ピーク情報に基づいて不整脈の種別を判定する判定ステップと、を含む。
【0149】
上記態様1から11に記載の不整脈種別判定装置としてコンピュータを機能させるための不整脈種別判定プログラムであって、前記取得部および前記判定部としてコンピュータを機能させるための不整脈種別判定プログラムである。
【符号の説明】
【0150】
1 不整脈種別判定装置
101 取得部
102 判定部
104 減衰部
S21 取得ステップ
S22 判定ステップ